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特許7206541腔内の物体を展開し回収する方法および装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】腔内の物体を展開し回収する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/95 20130101AFI20230111BHJP
   A61F 2/01 20060101ALI20230111BHJP
   A61F 2/966 20130101ALI20230111BHJP
   A61F 2/958 20130101ALI20230111BHJP
   A61B 17/22 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A61F2/95
A61F2/01
A61F2/966
A61F2/958
A61B17/22 528
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018554478
(86)(22)【出願日】2017-05-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-08
(86)【国際出願番号】 US2017030924
(87)【国際公開番号】W WO2017192777
(87)【国際公開日】2017-11-09
【審査請求日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】62/331,291
(32)【優先日】2016-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513249035
【氏名又は名称】アディエント メディカル,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】エッガーズ, ミッチェル
(72)【発明者】
【氏名】デュラック, ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】スティール, ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】カーク, レイモンド
(72)【発明者】
【氏名】ホーガン, ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】フランクリン, デイヴィット
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-521927(JP,A)
【文献】特表2007-526087(JP,A)
【文献】特開2014-171906(JP,A)
【文献】特表2005-511112(JP,A)
【文献】特表2004-512133(JP,A)
【文献】特表2016-505323(JP,A)
【文献】特表2007-536012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/95
A61F 2/01
A61F 2/966
A61F 2/958
A61B 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管フィルタを腔内のある場所に送達し、前記場所から前記血管フィルタを回収するように構成されたシステムであって、
前記血管フィルタと、
前記血管フィルタの前記場所にかつ前記場所から前記血管フィルタを導通させるための通路を提供するように構成された案内カテーテルと、
前記腔内の前記場所において前記案内カテーテルを通じた前記血管フィルタの展開を可能にするように構成された血管フィルタ展開構成要素と、
前記血管フィルタが前記腔内にある間に前記血管フィルタを固定するように構成された保持機構と
を備え、前記保持機構が、
(i)前記血管フィルタの遠位端部の開口部を通って遠位方向に突出するように構成された遠位フィンガ群を有する外側管と、
(ii)前記外側管の前記遠位フィンガ群が窄まるのを妨げる前記外側管内の内側ロッドまたは内側管と
を備え、
前記内側ロッドまたは前記内側管が前記外側管に対して近位方向に引き込まれるのに応じて、前記外側管の前記遠位フィンガ群が、前記血管フィルタの前記遠位端部の前記開口部を通じた前記遠位フィンガ群の後退と、前記血管フィルタからの前記内側ロッドまたは前記内側管および前記外側管の後退とを可能にするように窄まり、それによって前記腔内の前記場所で前記血管フィルタを解放する、
システム。
【請求項2】
前記血管フィルタ展開構成要素が、前記場所で前記血管フィルタを拡張するように構成されたバルーンを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記腔内で前記血管フィルタの目標姿勢が達成される前における前記腔内の前記場所での前記血管フィルタの解放を妨げるように構成されたインターロック機構をさらに備え、
前記インターロック機構が、
(i)バルーン圧によってシリンダを通って進められる前記シリンダ内のピストンと、
(ii)前記ピストンによる動きに応じて解放スイッチとの係合を解除するように移動し、それによって前記腔内の前記場所での前記血管フィルタの解放を可能にするように構成された、前記ピストンに動作的に連結されたばね式トリガと
を備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記インターロック機構の作動が、前記保持機構による前記血管フィルタの前記解放を可能にし、それによって前記腔内の前記場所での前記血管フィルタの展開を可能にする、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記インターロック機構は、前記血管フィルタが所定の圧力までバルーン拡張される前における前記血管フィルタの早期解放を防止するように構成されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記インターロック機構が、前記バルーン圧を前記シリンダに伝達するように構成されたオリフィスをさらに備え、前記オリフィスが前記シリンダの直径より小さい直径を有する、請求項3に記載のシステム。
【請求項7】
前記ばね式トリガが、本体、基部、および前記本体と前記基部との間に延びる脚部を含み、前記基部が前記ピストンに動作的に連結されており、前記基部が、棚状部によって支持されており、前記ピストンによって前記棚状部から押しやられ、前記ばね式トリガに前記解放スイッチとの係合を解除させるように構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記腔内の前記場所での前記血管フィルタの展開の前または後であるが、解放に先立って、前記保持機構は、ユーザが、前記血管フィルタの前記遠位端部を近位方向に引き寄せることを可能にするように構成されており、前記血管フィルタの前記遠位端部を近位方向に引き寄せることで、前記血管フィルタをめくり返らせ、引き寄せ続けることで、前記腔から除去するために前記血管フィルタを前記案内カテーテルの中に進めさせるように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記腔が大静脈であり、前記血管フィルタが大静脈フィルタである、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
腔内のある場所から血管フィルタを回収するように構成されたシステムであって、
前記血管フィルタと、
前記腔内の前記血管フィルタの前記場所から前記血管フィルタを導通させるための通路を提供するように構成された案内カテーテルと、
前記血管フィルタの遠位端部を把持し、前記血管フィルタを取り出すための把持取出構成要素を備える取出装置カテーテルと
を備え、
前記取出装置カテーテルは、前記把持取出構成要素が前記取出装置カテーテルの遠位端部に配置され、かつ前記把持取出構成要素用のアクチュエータ制御部が前記取出装置カテーテルの近位端部に配置されるように構成されており
前記取出装置カテーテルは、前記アクチュエータ制御部が、前記取出装置カテーテルの前記近位端部に配置された滑りハンドルおよび親指グリップを備えるように構成されており、前記滑りハンドルおよび前記親指グリップが、前記把持取出構成要素に前記血管フィルタの前記遠位端部を把持させるために互いに対して押し付けられ、前記把持取出構成要素に前記血管フィルタの前記遠位端部を解放させるために互いに対して引き離されるように構成されており、
前記取出装置カテーテルが前記案内カテーテルを通って前記腔内の前記血管フィルタの前記場所まで進められるように構成されており、前記把持取出構成要素が、前記滑りハンドルおよび前記親指グリップが互いに対して押し付けられるのに応じて前記血管フィルタの前記遠位端部を把持し固定し、それにより、ユーザが、前記血管フィルタの前記遠位端部を近位方向に引き寄せて前記血管フィルタをめくり返らせ、引き寄せ続けて、前記腔から除去するために前記血管フィルタを前記案内カテーテルの中に進めさせることを可能にする、システム。
【請求項11】
前記把持取出構成要素は、前記滑りハンドルおよび前記親指グリップが互いに対して押し付けられるのに応じて前記血管フィルタの前記遠位端部を取り囲むように構成された顎部を備える、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記腔が大静脈であり、前記血管フィルタが大静脈フィルタである、請求項10に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願
[0001]本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2016年5月3日に出願された米国特許仮出願第62/331,291号明細書の優先権を主張するものである。
【0002】
[0002]本発明は、腔内の物体(例えば、大静脈フィルタ(vena cava filter))を送達し回収する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]毎年100,000~300,000人のアメリカ人が肺塞栓症(pulmonary embolism)(PE)で死亡しており、PEの死亡者数は、乳がん、AIDS、および交通事故の死亡者数の合計よりも多い。PEは、米国内での死亡原因の第3位である。PEの同様の発生は、年間死亡者が約370,000人の欧州において見られる。さらに、PEは、最初の24時間生存する外傷患者の最も多い死亡原因の第3位である。全入院患者の推定25%が何らかの形の深部静脈血栓症(deep vein thrombosis)(DVT)を有し、DVTは、PEが進展しなければ臨床的にはっきり見えないことが多い。平均すると、DVTの33%が症候性PEに進行し、症候性PEの10%が命にかかわる。
【0004】
[0004]DVTから生じるPEの危険因子は、Virchow’s Triad(ウィルヒョウの三要素)、すなわち(i)内皮損傷、(ii)凝固性亢進、および(iii)血行動態変化(鬱血または乱流)に従う。危険な状況での細目は、腰および膝の関節形成術、腹部、骨盤および四肢の手術、骨盤および長骨の骨折、主要脊柱および脳の外傷、長期臥床(長期入院、航空旅行など)、まひ、高齢、前のDVT、がん、肥満、慢性閉塞性肺疾患、糖尿病、鬱血性心不全、ならびに他の状況を含む。整形外科的処置を受ける患者は、例えば予防的治療がない場合は膝および腰の手術の後でDVTおよびPEにかかるさらに高い危険性(40~80%)を伴う可能性がある。
【0005】
[0005]American Academy of Orthopedic Surgeons(AAOS)はPE予防の指針を出している。AAOSによれば、PE予防の標準的危険性のある患者には、手術中かつ/または手術直後の機械的予防に加えて、アスピリン、低分子量ヘパリン(LMWH)、合成五糖類、またはワルファリンなどの化学予防的薬品が考慮されるべきである。
【0006】
[0006]予防期間は潜在的DVTの源に依存する。予防のための現行の推奨は、中程度から高リスクの手術に対して最短で7~10日であり、多くの整形外科手術に対して最長で28~35日である。諸研究によれば、凝固性亢進は外傷患者の約80%において負傷後の少なくとも1カ月間続く。全体として、起こり得る静脈血栓塞栓症(VTE)の予防的治療は、DVTおよびPEを組み合わせたものであり、外傷または大手術の後の最長35日間保証されることが多い。
【0007】
[0007]化学的予防の禁忌は、活動性出血、出血性素因、出血性脳卒中、神経学的手術、広範囲の外傷、血胸、頭蓋内出血を伴う骨盤または下肢の骨折、および抗凝固中断を含む。
【0008】
[0008]上述の抗凝固予防には禁忌である患者の場合、または抗凝固療法が失敗した場合、インターベンショナルラジオロジー学会、AAOS、米国内科学会、および英国血液学標準化委員会は静脈フィルタを推奨している。これらの血管内血液フィルタは通常、心臓または肺動脈循環に到達する前に下肢DVTから生じる塞栓を捕らえるために、カテーテルを介して下大静脈(IVC)の中に展開される(deployed)。さらに、British Committee of Standards in Hematologyは、抗凝固に対する禁忌を有しかつ送達の少し前に(例えば2週間以内に)広範囲のVTEを発病する妊娠患者におけるIVCフィルタの交換を推奨している。
【0009】
[0009]Eastern Association for Surgery of Traumaは、出血および長期臥床の危険性が高い外傷患者に入れられる予防的IVCフィルタをさらに推奨している。このような予防的推奨は、IVCフィルタ装着を受けた重度の多発外傷を有する患者においてPEの比率が低いのを実証する研究に従っている。外傷患者内の予防的IVCフィルタの有効性に関する系統的な研究では、相対危険度0.20のPEの一貫した低下が明らかになった。したがって、比較臨床研究では、外傷患者はIVCフィルタなしにPEになる可能性が約5倍高い。さらに、分析により、含まれている研究のいずれのIVCフィルタアーム内でも致命性PEは起きなかったが、IVCフィルタを受け入れていない407人の患者において20の致命性PEが起きたことが明らかになっている。
【0010】
[0010]装着される多くのIVCフィルタは恒久的固定具になると見込まれていた、というのは、内皮化が通常は7~10日以内に起こり、不可逆的血管損傷なしに除去するためにいくつかのモデルを非実用的なものにし、潜在的には、生命を脅かす出血、IVCの切開、および/または血栓症につながるからである。これらの恒久的フィルタはPEを防止してきたが、実際には再発性DVTの危険性を経時的に高めることが明らかになっている。例えば、1つのランダム化比較試験では、IVCフィルタコーホートでのDVTの発生率はほぼ2倍に増加した、すなわち(i)再発性DVTの2年発生率は非フィルタコーホートでの12%に対してフィルタコーホートでは21%であった(p=0.02)、(ii)再発性DVTの8年発生率は非フィルタ群での15%に対してフィルタコーホートでは36%であった(p=0.042)。フィルタはPEの発生率を減少させる。最初の12日間に、非フィルタコーホートでは5%がPEとなったのに対してフィルタコーホートでは1%しかPEにならなかった(p=0.03)。明らかに、恒久的IVCフィルタでのPE減少の初期利益はDVTの増大で相殺される。
【0011】
[0011]長期のIVCフィルタ展開でのDVTの発生率の上昇に加えて、フィルタ閉塞がいくつかのモデルで約6%~30%の発生率で報告されており、フィルタ移動(約3%~69%の発生率)、静脈不全(約5%~59%の発生率)、および血栓後症候群(約13%~41%の発生率)も報告されている。血腫、感染症、気胸、発作、空気塞栓症、誤留置、デバイス移動、静脈穿孔、動静脈フィステル、および不注意の頸動脈穿刺を含む、挿入による合併症の発生率は約4%~11%である。
【0012】
[0012]最近になって回収可能なIVCフィルタが注目されている。回収可能なIVCフィルタは、症状が消失したときに除去されるためのものであり、したがってDVTの危険性増加など、恒久的フィルタの有害な合併症の多くを回避する。回収可能なフィルタは、可撓性フック、圧縮構成要素、とげの少ないストラット、非拘束脚、および/または回収を可能にする他の特徴を特徴としている。不都合なことに、こうした特徴の多くは、例えば、フィルタ移動、骨折につながる疲労破壊、IVC貫入、肝静脈および肺動脈への破片移動、フィルタ傾斜、および金属塞栓を含む、望まれない副作用につながっている。最近の研究では、回収可能なIVCフィルタを導くことによるIVCの穿孔は、フィルタ留置後の1~880日間に得られたコンピュータ断層撮影(CT)スキャン上のフィルタの約86%がIVCを穿孔していたので、通例であり、例外ではないことが明らかになった。これらの有害事象は、Food and Drug Administration(FDA)に、「FDAは、回収可能なIVCフィルタを有する患者の長期継続ケアに責任がある植込み医師および臨床医がPEからの保護がもはや必要とされなければすぐにフィルタを除去するよう検討することを推奨する」を始める公式報道を発するよう促した。さらに、2014年に、FDAによって公表された第2の報道は、回収可能なIVCフィルタは、PEの一時的な危険性が過ぎた患者の場合、展開後の29~54日間に除去されることを推奨した。これらのタイプの回収可能なフィルタは約3カ月以内に除去されるためのものであることが多く、その期間での技術的回収成功率は、(12カ月での37%に対して)94%であるのに、いくつかの研究によれば、回収可能なフィルタを有する患者の約70%~80%がその後のフィルタ回収のために病院に戻らない。
【0013】
[0013]患者がIVCフィルタ回収のために戻すのを嫌がるのと共に、留置時間延長後の金属の回収可能IVCフィルタの実装合併症のせいで、PEの危険期間の後の数カ月、二酸化炭素および水、および/または他の材料に単純に分解することにより回収を不要にする完全に吸収性のIVCフィルタが提案されている。さらに、これらの吸収可能IVCフィルタは、IVCを穿孔し隣接する臓器を突き刺すことがあまりできないようにする従来の金属IVCフィルタよりもはるかに可撓性である。
【発明の概要】
【0014】
[0014]本発明は、一般に、(i)腔内のさやから抜いた物体の把持を意図的に解放されるまで維持し、(ii)インターロックおよび/または他の装置を使用して、腔内の物体の早期解放を防止し、かつ/または(iii)前記物体を最初にめくり返し、次いで物体を案内カテーテルから引き抜くことにより回収(例えばめくり返し(eversion)による回収)を可能にするように構成されたカテーテルを使用して、腔内の物体(例えば大静脈フィルタ)を展開し回収する方法および装置に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、可撓性大静脈フィルタを展開し回収する方法および装置に関する。かかるフィルタの一例が、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、2012年2月23日に出願された「Absorbable Vascular Filter」という名称の米国特許出願第13/403,790号明細書に記載されている。
【0015】
[0015]ほとんどの従来型IVCフィルタは、カテーテルから解放されると、外方にはね返り、IVC内の解放部位に金属棒で固定され、再配置するための機会はない。さらに、これらの先行技術の装置は、一般に、頸静脈アクセスをしばしば必要とする別個の回収システムなしに回収することができない。典型的な回収方法では、カテーテルベースの取出装置が、頸静脈内に挿入される案内カテーテルを介して頭の方に回収するためのフィルタの先端部を固定する。
【0016】
[0016]対照的に、本発明は、ユーザがIVCフィルタの把持を維持することを可能にして、フィルタのさやを抜いた後でIVCフィルタ内のフィルタの再配置を可能にするとともに、フィルタを近位方向にめくり返し、展開中に使用されたのと同じカテーテルシステム内に引き入れることによるフィルタを回収(例えばめくり返しによる回収)するための選択肢を提供する。この回収技法は、例えば、大腿静脈に通して展開されるIVCフィルタが姿勢異常のせいでかつ/または他の理由で展開の直後に回収される必要がある場合に好都合である、というのは、フィルタを回収するためにフィルタを展開するために使用されたのと同じ案内カテーテルを使用することができ、それにより頸静脈アクセスならびに/あるいは追加の構成要素および/または機器の必要性がなくなるからである。
【0017】
[0017]開示された、めくり返し方法および装置によるIVCフィルタの展開および回収は、吸収性フィラメント、ポリマー、金属合金、および/または他の材料などの可撓性材料から製作されたフィルタに適している。吸収可能なフィルタが例えば、それがIVCに吸収されている前に回収されなければならない場合、本発明は、フィルタの尾方にある位置および/または他の位置からの効率的な回収を可能にする。例えば、吸収可能フィルタが大腿静脈からIVCの中にカテーテル展開される場合、吸収可能フィルタは、本発明のシステムを使用して、フィルタ先端部を把持し近位方向に、すなわち尾の方に、ソックスを裏返しに引っ張るように引いて可撓性フィルタをIVC内でめくり返させ、フィルタを案内カテーテル内に引き入れることにより容易に回収することができる。案内カテーテル内に固定されると、案内カテーテルを含む組立体および逸脱して配置された(例えば)IVCフィルタは、例えば患者から大腿静脈を通じて除去され得る。
【0018】
[0018]いくつかの実施形態では、めくり返し方法は、本発明のシステムで、IVCフィルタ、ガイドワイヤ、ステント、コイル、心臓リード線や他の破折したインプラントなどの医療装置、および/または他の物体を含む脈管系から様々な物体を回収するために使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】カテーテルベースの取出装置を使用して可撓性IVCフィルタをフィルタの尾部側の位置、または同等にオペレータに近い側の位置から(例えばめくり返しによって)回収する方法を列挙した一連の図(図1図5)の1番目の切取等角図である。ここで取出装置は案内カテーテルの遠位端部に配置される。
図2】カテーテルベースの取出装置を使用して可撓性IVCフィルタをフィルタの尾部側の位置、またはオペレータに近い側の位置から(例えばめくり返しによって)回収する方法を列挙した一連の図(図1図5)の2番目の切取等角図である。ここで取出装置はフィルタの先端部を把持するために開放され適切な位置にある。
図3】カテーテルベースの取出装置を使用して可撓性IVCフィルタをフィルタの尾部側の位置、および/またはオペレータに近い側の位置から(例えばめくり返しによって)回収する方法を列挙した一連の図(図1図5)の3番目の切取等角図である。ここで取出装置はフィルタの先端部を固定しており、オペレータはフィルタを案内カテーテル内の近位方向に引き込んで可撓性IVCフィルタにめくり返しを開始させる。
図4】カテーテルベースの取出装置を使用して可撓性IVCフィルタをフィルタの尾部側の位置、またはオペレータに近い側の位置から(例えばめくり返しによって)回収する方法を列挙した一連の図(図1図5)の4番目の切取等角図である。ここで取出装置はオペレータがフィルタをめくり返しているときに案内カテーテル内にある。
図5】カテーテルベースの取出装置を使用して可撓性IVCフィルタをフィルタの尾部側の位置、またはオペレータに近い側の位置から(めくり返しによって)回収する方法を列挙した一連の図(図1図5)の5番目の切取等角図である。ここで取出装置は、めくり返されたIVCフィルタが案内カテーテル内に固定され、身体から一体型ユニットとしていつでも除去されるように、案内カテーテル内に適切に配置される。
図6】取出カテーテルの遠位端部を作動させてIVCフィルタの把持を行うために使用されるハンドルを特徴とする取出装置の近位端部の図である。
図7】遠位端部で可撓性IVCフィルタがバルーンの上に圧縮され与圧をかけられた状態の送達システムの図である。図7はまた、IVCフィルタを随意に膨らますための、送達システムに連結される圧力計付きシリンジを、案内カテーテルおよび/または導入器および拡張器を含む補助構成要素と共に示す。
図8】IVCフィルタ展開の第1のステップ、すなわちフィルタをさやから抜くステップ中の送達システムの図である。
図9】IVCフィルタ展開の第2のステップ、すなわちフィルタを膨らませて大静脈付着圧着(caval apposition)を達成するステップ中の送達システムの図である。
図10】フィルタが意図的に解放されるまでフィルタを遠位端部に保持する機構を示す、IVCフィルタ解放前の送達システムの遠位端部の拡大図である。
図11】大静脈付着圧着が達成される前にフィルタが展開されるのを妨げるインターロック機能を示す、ハンドル内での送達システムの内部機械仕事の図である。図示の状態は、フィルタ解放スライドスイッチ内のピンが、ユーザがフィルタを解放するのを妨げる「ロック状態」である。
図12】大静脈付着圧着が達成される前にフィルタが展開されるのを妨げるインターロック機能を示す、ハンドル内での送達システムの内部機械仕事の図である。図示の状態は、ピンが、スイッチの近位摺動がフィルタを解放するのをもはや妨げない「ロック解除状態」である。
図13】IVCフィルタ展開の第3のステップ、すなわちフィルタを解放するステップ中の送達システムの図である。
図14】解放状態の保持機構を示す、IVCフィルタの解放後の送達システムの遠位端部の拡大図である。
図15】フィルタを解放する段階的なプロセスを示す図であり、複数の順次位置のうちの1番目の位置での保持機構を示す。
図16】フィルタを解放する段階的なプロセスを示す図であり、複数の順次位置のうちの2番目の位置での保持機構を示す。
図17】フィルタを解放する段階的なプロセスを示す図であり、複数の順次位置のうちの3番目の位置での保持機構を示す。
図18】フィルタを解放する段階的なプロセスを示す図であり、複数の順次位置のうちの4番目の位置での保持機構を示す。
図19】送達システムで物体を体腔内のある場所に送達し体腔内のその場所から物体を回収する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[0035]次に、本発明の諸実施形態について、当業者が本発明を実施することを可能にするように例示的な実施形態として提供される図面を参照しながら詳細に説明する。とりわけ、下記の図および例は、本発明の範囲を単一の実施形態に限定するものではなく、記載または図示された要素の一部または全部を置き換えることにより他の実施形態が考えられる。好都合であれば、同じ参照番号は、図面を通じて同じまたは同様の部分を参照するために使用される。これらの実施形態のいくつかの要素が既知の構成要素を使用して部分的にまたは完全に実施され得る場合、そのような既知の構成要素の、本発明の理解のために必要な部分についてのみ説明し、そのような既知の構成要素の他の部分の詳細な説明は本発明を不明瞭にしないように省略する。本明細書では、単数の構成要素を示す実施形態は限定するものと見なされるべきでない。むしろ、本発明は、本明細書に特に明記されていない限り、複数の同じ構成要素を含む他の実施形態を包含するものであり、その逆も同じである。さらに、出願人は、それなりに明示的に述べられていない限り、本明細書または特許請求の範囲における任意の用語に対して、珍しいまたは特別な意味を帰することを意図するものではない。さらに、本発明は、例として本明細書で言及される構成要素の現在および将来の既知の等価物を包含する。「近位の(proximal)」および「遠位の(distal)」という用語は、取出装置のオペレータに関連して使用される。特に、遠位端部は取り出す物体の最も近くにあるのに対して、近位端部はオペレータの最も近くにある。
【0021】
[0036]本明細書では、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈上、そうでないとする明確な指示がない限り、複数形の照応を含む。本明細書では、2つ以上の部分または構成要素が「連結される(coupled)」という言い方は、関連が起こる限り、それらの部分が直接間接を問わず、すなわち1つまたは複数の部分または構成要素を介して接合されるまたは共に動作することを意味するものとする。本明細書では、「直接連結される」は、2つの要素が互いに直接接触していることを意味する。本明細書では、「固定して連結される」は、2つの要素が互いに対して一定の向きを維持しながら一体となって動くように連結されることを意味する。
【0022】
[0037]本明細書では、「単一の(unitary)」という語は、構成要素が単一の片またはユニットとして作られることを意味する。すなわち、別々に作られ、次いで互いに一体として連結される片を含む構成要素は「単一の」構成要素または本体ではない。本明細書では、2つ以上の部分または構成要素が互いに「係合する(engage)」という言い方は、それらの部分が互いに対して直接または1つまたは複数の中間の部分または構成要素を介して力を及ぼすことを意味するものとする。本明細書では、「数(number)」という用語は、1または1より大きい整数(例えば複数)を意味するものとする。
【0023】
[0038]本明細書で使用される方向を示す語句、例えば制限なく、上部、下部、左、右、上方、下方、前、後、およびそれらの派生語は、図面に示されている要素の向きに関連し、特許請求の範囲に明示的に記載されていない限り、特許請求の範囲を限定するものではない。
【0024】
[0039]本発明は、一般に、(i)腔内のさやから抜いた物体の把持を意図的に解放されるまで維持し、(ii)インターロックを使用して、腔内の物体の早期解放を防止し、かつ/または(iii)前記物体を最初にめくり返し、次いで物体を案内カテーテルから引き抜くことにより回収(例えばめくり返しによる回収)を可能にするように構成されたカテーテルを使用して、腔内の物体(例えば大静脈フィルタ)を展開し回収する方法および装置に関する。
【0025】
[0040]本発明は、腔内に多数の埋込み型医療装置を展開し回収するために使用することができるが、肺塞栓症(PE)を防止するためのものである可撓性IVCフィルタの展開および回収は、本発明の方法および装置の詳細を説明するために、本明細書に一実施形態例として図示および記載されている。この種のIVCフィルタの可撓性は展開中の風船様拡大をしばしば必要とし、このことは、新たな課題とその課題に付随する送達システムの機会の両方をもたらす。例えば、吸収可能IVCフィルタの可撓性が増大することで、本明細書に記載されているめくり返し方法による回収が可能になる(例えば、フィルタが吸収前に回収されなければならない場合)。したがって、可撓性IVCフィルタおよび/または他のフィルタの独特な特徴に適合するとともにこの特徴を利用することができる、本明細書に記載されている新規な送達システムに対する現行需要がある。
【0026】
[0041]まず、外転方法および装置による回収は、展開の後で可撓性IVCフィルタを取り出すために小型把持鉗子を使用することで説明される。かかる説明に続いて、可撓性IVCフィルタの展開および回収を共に可能する送達システムの方法および装置は、早期フィルタ解放を防止するために特徴付きインターロック機構で詳細に説明される。これらの説明が幾分別々に扱われるが、これらの説明は共に、本発明のシステム100の構成要素および動作を指すことに留意すべきである。
【0027】
[0042]図1図5を参照すると、下大静脈(IVC)などの血管および/または腔5ならびに/あるいは他の血管および/または腔が、(i)フィルタをIVC5内に(例えば、IVCの壁に押し付けることにより)配置し続けるために(例えば)可撓性フィラメントの高密度織物からなる下「ステント」部50と血栓を捕獲するために(例えば)可撓性フィラメントからなる低密度織物を備える上「捕獲かご」51とを備えるIVCフィルタ4、(ii)フィルタ4を配置するためのIVC5内の場所52までの通路として機能する、典型的には大腿静脈(ただしこれは限定するものではない)内に挿入することにより大静脈5内に配置される案内カテーテル1(例えば、システム100の一部分)、および(iii)カテーテル2の遠位端部3にある取出または把持構成要素および/または装置53と近位端部54にあるアクチュエータ制御部(図1図5には示されていない)とを収容する取出装置カテーテル2(例えば、システム100の別の部分)、を収容するように示されている。
【0028】
[0043]図1は、案内カテーテル1の遠位端部55の位置に進められた閉姿勢にある取出装置53の遠位端部3(例えば、完全に畳まれた顎)を示す。取出装置カテーテル2は、図2に示されているように、(例えば、部分50および51の内部を通って)IVCフィルタ4の中にさらに進められて56、IVCフィルタ4の(例えば遠位の)端部または先端部6に到達する。取出装置53の遠位端部57がIVCフィルタ4の(例えば遠位の)先端部6の近位側にあると、制御部(図2には示されていない)は、取出装置カテーテル2の近位端部54で取出装置53の顎7を開放してIVCフィルタ4の先端部6を把持するようにオペレータによって作動される。あるいは、取出装置53の遠位端部57は、脚58またはストラット59、すなわちフィルタ4の他方の端部を把持することもできる。
【0029】
[0044]IVCフィルタ4の先端部6の確実な把持に続いて、取出装置カテーテル2は、図3に示されているように、オペレータの方へ(例えば端部54の方へ)徐々に近位方向に引っ張られてIVCフィルタ4をめくり返す60。めくり返し中60、IVCフィルタ4のステント部50の領域が、領域8に示されているように(例えば、部分51も通過した後で)IVCフィルタ4のステント部50の外周領域の内側に引っ張られることになる。オペレータが取出装置カテーテル2を引き寄せ続けると、IVCフィルタ4の完全なめくり返し60が容易になり、フィルタ捕獲かご51はこのとき、図4に示されているようにフィルタ4のステント部50に対して下位になり、この姿勢はフィルタ4の元の姿勢52とは約180°反対である。すなわち、IVCフィルタ4はこのとき、先端部6および/または捕獲かご51が近位側に配置され、ステント部50が遠位側に配置される。同じく図4に示されているように、可撓性IVCフィルタのステント部50は、ステント部50が案内カテーテル1に入るときに領域9内で圧縮される。
【0030】
[0045]図5は、完全にめくり返され案内カテーテル1内に固定されたIVCフィルタ4を示す。領域10は、案内カテーテル1内で圧縮されたIVCフィルタ4のステント部50を示す。オペレータはこのとき、身体(例えば大静脈5)から案内カテーテル1および取出装置カテーテル2を含む全組立体を捕獲されかつ/または装着されたIVCフィルタ4と共に除去することができる。
【0031】
[0046]図6は、滑りハンドル20、親指グリップ21、および/または他の構成要素を備える取出装置カテーテル2の近位端部25を示す。一実施形態では、滑りハンドル20および親指グリップ21は、取出装置カテーテル2の遠位端部57で顎7(図2)を閉じるために互いに対して押し付けられ62、滑りハンドル20および親指グリップ21を互いに対して引き離される63ことで顎7を開放する。把持機構(例えば取出装置53)を開閉するための作動は、ケーブルまたは可撓性ロッド、および/または当技術分野で知られている他の方法で構築することができる。
【0032】
[0047]図7図18は、可撓性IVCフィルタを展開し回収することを示す。例えば、図7図18は、(i)IVC内のさやから抜いたフィルタの把持を意図的に解放されるまで維持すること、(ii)IVC内のフィルタの早期解放を防止するインターロックすること、および(iii)前記フィルタを最初にめくり返し、次いでフィルタを案内カテーテルに通して引き込むこと(例えばめくり返しによる回収)を示す。
【0033】
[0048]図7は、送達システム100および補助構成要素を示し、補助構成要素は、案内カテーテルおよび/または導入器200(例えば、上述した案内カテーテル1と類似かつ/または同一のもの)、IVCフィルタ展開用のガイドワイヤ201の上で導入器200内に挿入される拡張器299、弁119、送達システム100内の液体(例えば、プランジャ122によって送達システム100に押し込まれる対照液および/または他の液体)の圧力を示す圧力計120、流体を圧力計120およびプランジャ122から本発明のシステムの他の構成要素(例えば本明細書に記載されている)に導く管類222、本発明のシステムの1つまたは複数の構成要素を互いにかつ/またはシステムの外側に取外し可能に連結するように構成された様々なルアー取付具107および/または他の連結構成要素109、ならびに/あるいは他の構成要素を含む。送達システム100は、ハンドル104、安全解放インジケータ105(例えばロック位置で示される)、フィルタ解放スイッチ106、さやから抜くバレルスライド103、外側カテーテル102、与圧をかけられた可撓性IVCフィルタ101(例えば、上述したフィルタ4と類似かつ/または同一のもの)、および/または他の構成要素を含む。
【0034】
[0049]送達システム100を用いたフィルタの展開はバレルスライド103を(例えばオペレータが)近位方向に引っ張ること204を含み、バレルスライド103は、図7および図8に示されているように、外側カテーテル102および導入器200を効果的に近位方向に引っ張って204、フィルタ101をさやから抜く。導入器200は、バレルスライド103が近位方向に引っ張られると204、導入器200および外側カテーテル102がもはや圧縮済みIVCフィルタ101の上に配置されないようにバレルスライド103に連結されることに留意すべきである。
【0035】
[0050]送達システム100を用いたフィルタの展開は、図9に示されているように、圧縮された可撓性IVCフィルタ101を「膨らませること」(例えば、バルーンの上に圧縮されたIVCフィルタ101の直径を拡張させてIVC壁に対してぴったり合うようにすること)を含む。図9に示されているように、希釈対照液および/または他の材料で満たされたシリンジ121のプランジャ122が(例えばオペレータによって)遠位方向に押されて220、対照液を(例えば、管類220および/またはカテーテル200に含まれる管類を経由して)バルーン130の中に押し込み、それによってIVC内のフィルタ101の直径を拡張させて例えば大静脈付着圧着を確実にする。大静脈付着圧着が達成されると(かつ/または他のときに)、セミコンプライアント(例えば)バルーン130は、フルオロスコープおよび/または他の機器(例えば)で見られる「ドッグボーン」形状132を形成することができる。
【0036】
[0051]図10の拡大図に示されているように、フィルタ101は、風船様拡大ステップ中、IVCフィルタ101の遠位先端部170が下流側に移動するのを妨げる保持フィンガ群151を有する保持管150によって保持される。バルーン130(図9)が大静脈付着圧着を示す「ドッグボーン」形状(例えば)を形成すると、続いて、バルーン130はプランジャ122(図9)を近位方向に引っ張ることにより真空にすることができる。
【0037】
[0052]送達システム100(図9)のハンドル104(図9)内のインターロック機構300が図11および図12に示されている。インターロック機構300は、IVCフィルタ101(図9)の早期解放、すなわち大静脈付着圧着が達成される前にフィルタ101を解放することの防止を可能にするように構成される。図11は、解放スイッチ106が解放スイッチ106に凹設されるピン180によって近位方向に摺動する250(図12)のを妨げられる「ロック」状態301のインターロック機構を示す。解放スイッチ106は、フィルタ101を送達システム100と共に保持し、それによって早期解放を防止する(例えば以下で説明される)インターロックロッド155(以下で説明される)および保持管150(以下で説明される)に連結される。
【0038】
[0053]図12は、バルーン130(図9)が大静脈付着圧着に対応する指定圧力(例えば)、典型的には例えばIVCフィルタ応用例のための約15psiおよび/または他の圧力に達したときに起こる「ロック解除」状態302のインターロック機構300を示す。風船様拡大プロセス中、インターロック機構300につながる管186(上述の管類222と類似かつ/または同一のもの)の中のバルーン圧の上昇187が、ピストン184を押しやってシリンダ308内で摺動させ306、それにより、ばね式トリガ182が落ちる310、というのは、トリガ182の一部314が変換器183を介してピストン184と間接的に接触する棚状部(ledge)312上に配置されるからである。ばね式トリガ182(ばね181に留意)が落ちると310(かつ/またはばね181によって押されると)、ピン180は解放スイッチ106から離脱して、IVCフィルタが解放されることが可能になる。変換器183は、ピストン184からの力を棚状部312上に配置されたトリガ182の下部(例えば)に加えるように構成される。
【0039】
[0054]いくつかの実施形態では、ばね式トリガ182は、本体361、基部363、本体361と基部363との間に延びる脚部365、および/または他の構成要素を含む。いくつかの実施形態では、本体361は、ピン180の端部を受け入れるように構成されたスリーブ、溝、および/または他構成要素367を含む。基部363は、変換器183を介してピストン184に動作的に連結される。基部363は棚状部312によって支持され、ピストン184によって(変換器183を介して)棚状部312から押しやられ、(例えば、本体361、脚部365、および基部363が落ちる310(かつ/またはばね181によって押されるときに))ばね式トリガ182に解放スイッチ106との係合を解除させるように構成される。いくつかの実施形態では、棚状部312はシリンダ308の一部によって形成される。いくつかの実施形態では、棚状部312は、オリフィス185(以下で説明される)の反対側にあるシリンダ308の一部によって形成される。いくつかの実施形態では、脚部365は、基部363が図示および記載されているように棚状部312上に載るように本体361から棚状部312に向かって延びる。
【0040】
[0055]オリフィス185は、大静脈付着圧着が定常状態の圧力約15psi(例えば)で達成されるよりもかなり前にオペレータがシリンジプランジャ122(図9)を不意に押してバルーン圧の一時的スパイクを引き起こした場合にインターロック機構300の誤トリガリングの回避を可能にするように構成される。オリフィス185の直径370は、インターロック機構300を不注意にトリガし得るそのような圧力スパイクを防止するようにサイズを定められる。いくつかの実施形態では、オリフィス185は、シリンダ308の直径372より小さい直径370とシリンダ308の長さ376より短い長さ374とを有する円筒形断面を有する。いくつかの実施形態では、直径370は最大約5mmである。いくつかの実施形態では、直径370は約0.25mm~約1mmである。いくつかの実施形態では、直径370は約0.5mmである。いくつかの実施形態では、直径372は最大約20mmである。いくつかの実施形態では、直径372は約5mm~約20mmである。いくつかの実施形態では、直径372は約10mmである。
【0041】
[0056]いくつかの実施形態では、オリフィス185およびシリンダ308は、長さ374および長さ376が軸線378に沿って延びるようにハンドル104の第1の軸線378に沿って方向づけられる。いくつかの実施形態では、ばね式トリガ182、ばね181、およびピン180は、ハンドル104の第2の軸線392に沿って方向づけられた第2のシリンダ390を占める。いくつかの実施形態では、第2の軸線392および第1の軸線378は互いに略垂直である。いくつかの実施形態では、ばね式トリガ182は、トリガ182の基部314が変換器183およびピストン184によって押されたときに棚状部312から滑り落ちる310に応じて、シリンダ390内を落下する(かつ/またはばね181によって押される)。
【0042】
[0057]送達システム100(図9)は、インターロック機構300との係合が解除されるやいなや(図12)解放スイッチ106を近位方向に摺動させる250(図12)ことにより、フィルタ101(図9)を解放することを可能にする。いくつかの実施形態では、送達システム100は、インターロック機構300の係合解除(および/または逆に係合)が送達システム100のハンドル104および/または他の構成要素上のインジケータによって表示されるように構成される。例えば、図13は、ロック解除済み南京錠シンボル105を示す(機構300が係合した場合にロックされて示すことになる)。インジケータは、インターロック機構300のトリガリングによって略同時に作動されるばね荷重滑りレバーでロック済みシンボルからロック解除済みシンボルに変わることができる(両シンボルはレバー上に印刷されている)。ハンドル104が「ロック解除された」状態の保持管150および保持フィンガ群151の拡大図が図14に示されている。ここで保持管150は、IVCフィルタ101の遠位先端部170に対して近位方向に引っ張られており350、それによってもはやフィルタ101と接触していない。
【0043】
[0058]一連の拡大図(図15図18)は、フィルタ解放スイッチ106(図9)を近位方向に摺動させるかつ/またはその他の方法で動かす250(図12)ことによる送達システム100からのIVCフィルタ101の順次解放を示す(図7図9)。フィルタ解放スイッチ106が近位方向に動かされると250、第1の内部ロックロッド155が近位方向に摺動しかつ/またはその他の方法で動いて360、保持フィンガ群151の窄み362(例えば、互いの方に向かってはさんで締め付けること)を可能にするかつ/またはその他の方法で可能にする。保持管150上の保持フィンガ群151は、例えば図16および図17に詳細に示されているように、保持フィンガ群151がIVCフィルタ101のセンタ穴364を通って遠位先端部170を近位方向に横切るときに窄まる。いくつかの実施形態では、バルーン管160などの別の管が、保持管150およびロックロッド155が近位方向に引っ張られる360間にIVCフィルタ101の近位挙動を妨げるバックストップ366を設ける。保持フィンガ群151がIVCフィルタ101の遠位先端部170の近位側に配置されると、フィルタ101は図18に示されているように容易に解放される。いくつかの実施形態では、保持管150および/またはロックロッド155は、例えば、ステンレス鋼(および/または他の材料)ハイポチューブ(および/または他の装置)でありかつ/またはこれを含むことができる。
【0044】
[0059]いくつかの実施形態では、例えば、姿勢異常や不適切なサイズ設定のせいでかつ/または他の理由でIVCフィルタをIVC内に挿入した直後に回収することが望ましいとき、例えば、保持管150の保持フィンガ群151によって代表される保持機構を、例えばめくり返しおよび/または他の方法による回収を可能にするためにロック位置にあるロックロッド155(例えば図10図15)と共に使用することが可能である。このような実施形態では、導入器200は送達システムバレル103から切り離すことができ(図13)、送達システムハンドル104は、導入器200が略静止状態に保持されている間、近位方向に引っ張ることができる。保持フィンガ群はロック位置でフィルタ終板170より遠位側にとどまるので、この努力により、可撓性IVCフィルタ101(例えば、保持機構によって送達システム100に装着される)はめくり返り、導入器200に引き込まれて、追加の構成要素または要件を必要とせずに容易に除去される。
【0045】
[0060]本明細書に記載されている形状(例えば円筒形など)および寸法は限定するものではないことに留意されるべきである。本発明のシステムの構成要素は、それらの構成要素が本明細書に記載されているように機能することを可能にする任意の形状および/またはサイズを有することができる。
【0046】
[0061]図19は、送達システムで物体を体腔内のある場所に送達し体腔内のその場所から物体を回収する方法400を示す。送達システムは、案内カテーテル、物体展開構成要素、インターロック機構、保持機構、および/または他の構成要素を備える。以下に提示される方法400の各操作は例示するためのものである。いくつかの実施形態では、方法400は、記載されていない1つまたは複数の追加操作と共に、かつ/または論じられる操作のうちの1つまたは複数なしに実現され得る。さらに、方法400の操作が図19に示され、以下に記載されている順番は限定するものではない。
【0047】
[0062]操作402で、場所に対して行き来するための通路が体腔内の物体のために形成される。いくつかの実施形態では、操作402は、案内カテーテル1(図1に示され本明細書に記載されている)および/または案内カテーテル200(図7に示され本明細書に記載されている)と類似かつ/または同一の案内カテーテルによって行われる。
【0048】
[0063]操作404で、物体の展開が可能にされる。いくつかの実施形態では、展開は物体展開構成要素で可能にされる。いくつかの実施形態では、物体展開構成要素は、上記場所で物体を拡張するように構成されたバルーン、圧力計、流体、プランジャ、および/または他の構成要素を備える。いくつかの実施形態では、操作404は、送達システム100、拡張器299、ガイドワイヤ201、ハンドル104、バルーン130、圧力計120、希釈対照液で満たされたシリンジ121、プランジャ122(図7図13に示され本明細書に記載されている)、および/または他の構成要素と同一または類似の物体展開構成要素によって行われる。
【0049】
[0064]操作406で、目標姿勢が達成される前の上記場所での物体の解放が妨げられる。いくつかの実施形態では、操作406は、インターロック機構300(図11および図12に示され本明細書に記載されている)と類似かつ/または同一のインターロック機構によって実行される。いくつかの実施形態では、操作406は、インターロック機構で、物体が所定の圧力にバルーン拡張される前の物体の早期解放を防止することを含む。いくつかの実施形態では、インターロック機構は、バルーン圧によってシリンダを通って進められるシリンダ内のピストンと、ピストンによる動きに応じて動いて解放スイッチとの係合を解除し、それによって腔内の場所での物体の解放を可能にするように構成された、ピストンに動作的に連結されたばね式トリガと、を備える。いくつかの実施形態では、インターロック機構はオリフィスおよび/または他の構成要素を備える。オリフィスは、バルーン圧をシリンダに伝達するように構成される。いくつかの実施形態では、オリフィスは、シリンダの直径より小さい直径およびシリンダの長さより短い長さを有する。いくつかの実施形態では、ばね式トリガは、本体、基部、および本体と基部との間に延びる脚部を含む。基部はピストンに動作的に連結される。いくつかの実施形態では、基部は棚状部によって支持されており、ピストンによって棚状部から押しやられ、ばね式トリガに解放スイッチとの係合を解除させるように構成される。
【0050】
[0065]操作408で、物体は、物体が腔内にある間固定される。いくつかの実施形態では、操作408は、保持管150および保持フィンガ群151(図10図14、および図15図18に示され本明細書に記載されている)によって形成される保持機構と類似かつ/または同一の保持機構によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、保持機構はインターロック機構によって作動して腔内の場所で物体を解放する。いくつかの実施形態では、保持機構は、物体の遠位端部の開口部を通って遠位方向に突出する遠位フィンガ群を有する外側管と、外側管状の遠位フィンガ群が窄まるのを妨げる外側管内の内側ロッドまたは管と、を備える。いくつかの実施形態では、内側ロッドが外側管に対して近位方向に引き込まれるのに応じて、物体の(例えば遠位の)端部の開口を通じた遠位フィンガ群の後退と、物体からの内側ロッドおよび外側管の後退とを可能にするように外側管の遠位フィンガ群が窄まり、それによって腔内の上記場所で物体を解放する。
【0051】
[0066]操作410で、物体は把持され腔内の上記場所から取り出される。いくつかの実施形態では、操作410は、物体が腔内の上記場所で展開された後で行われる。いくつかの実施形態では、操作410は、取出装置カテーテル2、取出装置53、および/または滑りハンドル20および親指グリップ21(図1図6に示され本明細書に記載されている)と類似かつ/または同一の把持取出装置によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、取出装置カテーテルは、把持取出構成要素が取出装置カテーテルの遠位端部に配置され、把持取出構成要素のためのアチュエータ制御部(例えば滑りハンドル20および/または親指グリップ21)が取出装置カテーテルの近位端部に配置されるように構成される。いくつかの実施形態では、取出装置カテーテルは、アクチュエータ制御部が取出装置カテーテルの近位端部に配置される滑りハンドルおよび親指グリップを備えるように構成される。いくつかの実施形態では、操作410は、滑りハンドルおよび親指グリップを互いに対して押し付けて把持取出構成要素に物体を把持させること、および、滑りハンドルおよび親指グリップを互いに対して引き離して把持取出構成要素に物体を解放させること、を含む。
【0052】
[0067]いくつかの実施形態では(例えば、物体が腔内の上記場所で完全に展開される前に)、操作410は、保持フィンガ群151付き保持管150と内部ロック管155とを組み合わせたものを使用して装置の把持を保持することによって引き起こされ、このような把持は、前述したようにめくり返しによる取出しを可能にするほど強い。
【0053】
[0068]いくつかの実施形態では、把持取出構成要素は、滑りハンドルおよび親指グリップが互いに対して押し付けられるのに応じて大静脈フィルタの(例えば遠位の)端部を取り囲むように構成された顎を備える。いくつかの実施形態では、物体は大静脈フィルタであり、操作410は、取出装置カテーテルを案内カテーテルに通して物体の場所まで進めること、滑りハンドルおよび親指グリップが互いに対して引き離されるのに応じて物体を把持し固定すること、および、ユーザが大静脈フィルタの端部を近位方向に引き寄せて大静脈フィルタをめくり返させ、引き寄せ続けて、大静脈フィルタを案内カテーテルの中に進めて腔から除去することを可能にすること、を含む。
【0054】
[0069]特許請求の範囲では、括弧の間に置かれた参照符号があれば、これは特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。「comprising」または「including」という用語は、請求項に記載されているもの以外の要素またはステップの存在を除外しない。いくつかの手段を列挙する装置請求項では、これらの手段のうちのいくつかは、全く同一のハードウェアアイテムによって具現化され得る。要素の前に置く「a」または「an」という語は、複数のかかる要素の存在を除外するものではない。いくつかの手段を列挙するいずれの装置請求項でも、これらの手段のうちのいくつかは、全く同一のハードウェアアイテムによって具現化され得る。いくつかの要素が相互に異なる従属請求項に記載されているというだけで、これらの要素が組み合わせて使用できないことを示すものではない。
【0055】
[0070]上に提供された記述は、現在最も実践的で好ましい実施形態であると見なされることに基づいて説明のための詳細を提供するが、かかる詳細が単に説明のためのものであり、本開示は明示的に開示された実施形態に限定されるものではなく、それどころか、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内にある修正形態および均等物を網羅するものであることを理解すべきである。例えば、本開示は、可能な限り、任意の実施形態の1つまたは複数の特徴が他の実施形態の1つまたは複数の特徴と組み合わせされ得ることを検討する理解すべきである。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9-10】
図11
図12
図13-14】
図15
図16
図17
図18
図19