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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20230111BHJP
   A47C 7/40 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
B60N2/68
A47C7/40
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019057346
(22)【出願日】2019-03-25
(65)【公開番号】P2020157849
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-08-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 剛宏
(72)【発明者】
【氏名】中村 智春
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-021427(JP,U)
【文献】実開平04-079546(JP,U)
【文献】実開平04-090436(JP,U)
【文献】特開2009-184597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - B60N 2/90
A47C 7/00 - A47C 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッションのシート後端側から立設されると共に、前記シートクッションの骨格を構成する左右一対のクッションフレームとの接続部側を回転中心とされてシート前後方向に傾倒可能に支持され、着座乗員の背部を支持するシートバックの骨格を構成するシートバックフレームと、
前記シートバックフレームのシート後方側に設けられると共に上端部が前記シートバックフレームのシート後方側の上端部を形成するアッパフレームよりもシート上方側に配置され、前記シートバックの上方側から衝突荷重を入力した際にシート下方側へ変位するシートバックパネルと、
を備えた車両用シート。
【請求項2】
前記シートバックパネルは、シート下方側へ変位した際に前記シートバックフレームから脱落する請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記シートバックパネルは、前記シートバックフレームに取り付けられることにより前記シートバックパネルの上端部を前記アッパフレームよりもシート上方側に配置する第1取付部を備えた請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記シートバックパネルは、前記シートバックフレームに取り付けられることにより前記シートバックパネルの前記シートバックフレームに対するシート幅方向位置を決める第2取付部を備えた請求項1から請求項3の何れか1項に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記シートバックパネルは、前記第2取付部に形成された孔に締結部材が挿通されることにより前記シートバックフレームに取り付けられ、前記孔は、長孔かつシート上下方向の長さが前記締結部材の軸部の外径よりも長く形成された請求項4に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記シートバックパネルは、前記第1取付部に挿通された軸部の先端に、前記シートバックフレームにシート幅方向に架け渡されたワイヤを保持するための保持部を備えると共に前記シートバックパネルがシート下方側へ変位した際に、弾性変形することにより前記ワイヤから離脱する樹脂クリップにより前記シートバックフレームに取り付けられた請求項3に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記シートバックパネルのシート上方側の外縁部には、当該外縁部を覆うようにシート幅方向に沿って配置されると共に、前記シートバックパネルの上端を覆う頂部が、前記シートバックパネルのシート前方側を覆う一般部よりも肉厚に形成されたエッジガードが設けられた請求項1から請求項6の何れか1項に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、前部シートのシートバックが下部シートバックと上部シートバックに分割された車両用シート構造が開示されている。この車両用シート構造によれば、前突時に前方へ移動された後部シートの着座乗員の膝が、前席の下部シートバックに設けられたレバー部材を押圧する。このため、レバー部材に連設する駆動ギヤが回転し、更に、上部シートバックの回転中心に設けられ、駆動ギヤと噛合する従動ギヤが回転する。従動ギヤが回転することにより、上部シートバックは、後部座席の着座乗員の頭部が描く軌跡から離れる方向へ前傾される。これにより、後部シートに着座している乗員の頭部が受ける衝撃を緩和できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-208481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された車両用シートには、シートバックフレームを分割して設ける必要があることに加えてギア等の追加部品を備える必要がある。これにより、部品点数が増加すると共に製造コストも増加する。このため、部品点数の増加を抑制した上で、後部シートに着座している乗員の頭部が受ける衝撃を緩和できる車両用シートを構成することが望ましい。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、部品点数の増加を抑制した上で、後部シートに着座している乗員の頭部が受ける衝撃を緩和できる車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の車両用シートは、着座乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッションのシート後端側から立設されると共に、前記シートクッションの骨格を構成する左右一対のクッションフレームとの接続部側を回転中心とされてシート前後方向に傾倒可能に支持され、着座乗員の背部を支持するシートバックの骨格を構成するシートバックフレームと、前記シートバックフレームのシート後方側に設けられると共に上端部が前記シートバックフレームのシート後方側の上端部を形成するアッパフレームよりもシート上方側に配置され、前記シートバックの上方側から衝突荷重を入力した際にシート下方側へ変位するシートバックパネルと、を備える。
【0007】
請求項1に記載の車両用シートによれば、シートバックフレームのシート後方側には、上端部がシートバックフレームのシート後方側の上端部を形成するアッパフレームよりもシート上方側に配置され、シートバックの上方側から衝突荷重を入力した際にシート下方側へ変位するシートバックパネルが設けられている。このため、前突時に、車両前方側へ移動された後部シートの着座乗員の頭部をシートバックパネルの上端部に接触させることができる。これにより、後部シートの着座乗員の頭部がはじめにシートバックフレームに接触する場合と比較して、着座乗員の頭部への衝撃を緩和することができる。また、シートバックパネルは、シート下方側へ変位するため、着座乗員の頭部が接触したシートバックパネルから着座乗員の頭部に対する反発力を抑制することができる。これらのことから、後部シートに着座している乗員の頭部が受ける衝撃を緩和できる。
【0008】
さらに、請求項1に記載の車両用シートによれば、シートバックフレームのシート後方側にシートバックパネルが設けられるだけの構成である。このため、部品点数の増加を抑制した上で、後部シートに着座している乗員の頭部が受ける衝撃を緩和できる車両用シートを構成することができる。
【0009】
請求項2に記載の車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前前記シートバックパネルは、シート下方側へ変位した際に前記シートバックフレームから脱落する。
【0010】
請求項2に記載の車両用シートによれば、シートバックパネルは、シート下方側へ変位した際にシートバックフレームから脱落する。このため、着座乗員の頭部が接触し、シート下方側へ変位したシートバックパネルは、シートバックフレームから脱落させることができる。これにより、シートバックパネルから着座乗員の頭部に対する反発力をより確実に抑制することができる。
【0011】
請求項3に記載の車両用シートは、請求項1又は請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記シートバックパネルは、前記シートバックフレームに取り付けられることにより前記シートバックパネルの上端部を前記アッパフレームよりもシート上方側に配置する第1取付部を備える。
【0012】
請求項3に記載の車両用シートによれば、シートバックパネルのシート上下方向位置は、第1取付部がシートバックフレームに取り付けられることにより設定される。これにより、シートバックパネルの上端部を、アッパフレームよりもシート上方側に確実に配置することができる。
【0013】
請求項4に記載の車両用シートは、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の車両用シートにおいて、前記シートバックパネルは、前記シートバックフレームに取り付けられることにより前記シートバックパネルの前記シートバックフレームに対するシート幅方向位置を決める第2取付部を備える。
【0014】
請求項4に記載の車両用シートによれば、シートバックパネルのシートバックフレームに対するシート幅方向位置は、第2取付部がシートバックフレームに取り付けられることにより設定される。このため、シートバックパネルのシート幅方向の位置を適切に設定することができると共に、着座乗員の頭部がシートバックパネルに接触した際に、シート幅方向に変位することを抑制し、シート下方側へ変位させることができる。これにより、後部シートに着座している乗員の頭部が受ける衝撃を緩和できる。
【0015】
請求項5に記載の車両用シートは、請求項4に記載の車両用シートにおいて、前記シートバックパネルは、前記第2取付部に形成された孔に締結部材が挿通されることにより前記シートバックフレームに取り付けられ、前記孔は、長孔かつシート上下方向の長さが前記締結部材の軸部の外径よりも長く形成されている。
【0016】
請求項5に記載の車両用シートによれば、シートバックパネルは、第2取付部に形成された孔に締結部材が挿通されることによりシートバックフレームに取り付けられている。ここで、孔さは、長孔かつシート上下方向の長さが締結部材の軸部の外径よりも長く形成されている。このため、着座乗員の頭部がシートバックパネルの上端部に接触した際に、シートバックパネルをシート上下方向に変位させることができる。これにより、シートバックパネルをより確実にシート下方側へ変位させることができる。
【0017】
請求項6に記載の車両用シートは、請求項3に記載の車両用シートにおいて、前記シートバックパネルは、前記第1取付部に挿通された軸部の先端に、前記シートバックフレームにシート幅方向に架け渡されたワイヤを保持するための保持部を備えると共に前記シートバックパネルがシート下方側へ変位した際に、弾性変形することにより前記ワイヤから離脱する樹脂クリップにより前記シートバックフレームに取り付けられている。
【0018】
請求項6に記載の車両用シートによれば、シートバックパネルは、第1取付部に挿通された樹脂クリップによりシートバックフレームに取り付けられている。樹脂クリップは、軸部の先端にシートバックフレームにシート幅方向に架け渡されたワイヤを保持するための保持部を備えると共にシートバックパネルがシート下方側へ変位した際に、弾性変形することによりワイヤから離脱する。このため、シートバックパネルのシートバックフレームに対するシート上下方向の位置を設定できると共に、着座乗員の頭部がシートバックパネルの上端部に接触した際に、樹脂クリップが離脱することにより、シートバックパネルを脱落させることができる。シートバックパネルから着座乗員の頭部に対する反発力をより確実に抑制することができる。
【0019】
請求項7に記載の車両用シートは、請求項1請求項6の何れか1項に記載の車両用シートにおいて、前記シートバックパネルのシート上方側の外縁部には、当該外縁部を覆うようにシート幅方向に沿って配置されると共に、前記シートバックパネルの上端を覆う頂部が、前記シートバックパネルのシート前方側を覆う一般部よりも肉厚に形成されたエッジガードが設けられている。
【0020】
請求項7に記載の車両用シートによれば、シートバックパネルのシート上方側の外縁部に設けられたエッジガードは、シートバックパネルの上端を覆う頂部が、シートバックパネルのシート前方側を覆う一般部よりも肉厚に形成されている。このため、頂部の肉厚を変化させることにより、エッジガードが設けられたシートバックパネルの上端部のシート上下方向位置を上昇させることができると共に、着座乗員の頭部がシートバックパネルに接触するタイミングを制御することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明に係る車両用シートは、部品点数の増加を抑制した上で、後部シートに着座している乗員の頭部が受ける衝撃を緩和できるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態に係るシートバックフレームに取り付けられたシートバックパネルを車両後方側から見た背面図である。
図2】本実施形態に係るシートバックパネルの車幅方向端部を車両前方側から見た斜視図である。
図3】本実施形態に係るシートバックパネルを車両後方側から見た背面図である。
図4図1に示された4-4線に沿って切断された樹脂クリップの縦断面図である。
図5】本実施形態に係る車両用シートに車両後方側から荷重が負荷された状態を示す側面図である。
図6A】本実施形態に係る孔部の第1変形例である。
図6B】本実施形態に係る孔部の第2変形例である。
図6C】本実施形態に係る孔部の第3変形例である。
図6D】本実施形態に係る孔部の第4変形例である。
図6E】本実施形態に係る孔部の第5変形例である。
図6F】本実施形態に係る孔部の第6変形例である。
図7】本実施形態に係る孔部の第7変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図1図7を用いて、本発明の実施形態の一例である車両用シート10について説明する。以下の図において、矢印FRはシート前方側を示し、矢印UPはシート上方側を示し、矢印Wはシート幅方向を示している。なお、本実施形態では、車両用シート10の前方側、上方側及び幅方向は、車両の前方側、上方側及び幅方向と一致している。
【0024】
図1には、車両用シート10を構成するシートバックフレーム12のシート上方側が背面図にて示されている。図5に示されるように、車両用シート10は、乗員の臀部及び大腿部を支持するためのシートクッション(図示省略)と、乗員の背部を支持するためのシートバック14と、を含んで構成されている。シートバック14は、シートクッションのシート後端側から立設されると共にクッションフレームとの接続部側を回転中心とされてシート前後方向に傾倒可能に支持されている。シートクッションのシート後端側から立設されたシートバック14は、その骨格を構成するシートバックフレーム12に、バックパッド18が取り付けられて構成されている。
【0025】
図1に示されるように、シートバックフレーム12は、そのシート下方側にシート幅方向両端に設けられた左右一対のバックサイドフレーム(図示省略)と、シート上方側に設けられたアッパフレームとしてのアッパパイプ20と、を含んで構成されている。バックサイドフレームは、シート幅方向を板厚方向とする鋼板により構成され、シート上下方向に延在されている。
【0026】
アッパパイプ20は、金属材料により筒状に形成されている。アッパパイプ20は、シート上方側においてシート幅方向に延在され、シート上方側のシート幅方向両端部からシート下方側へ延在されている。また、シート下方側に延在されたアッパパイプ20の下端部は、左右一対のバックサイドフレームの上端部にそれぞれ連結されている。
【0027】
ッパパイプ20のシート幅方向両端部に亘ってシートバックスプリング24が設けられている。シートバックスプリング24は、アッパパイプ20の上端部からシート下方側に亘って複数のワイヤが架け渡された縦ワイヤ部26と、アッパパイプ20のシート幅方向両端部に亘って複数のワイヤが架け渡されたワイヤとしての横ワイヤ部28により構成されている。また、アッパパイプ20のシート幅方向両端部のシート上方側には、バックパッド18を取り付けるためのワイヤを備えたクッション取付部32が設けられている。
【0028】
アッパパイプ20のシート後方側には、シートバックパネルとしてのバックボード40が配置されている。バックボード40は、アッパパイプ20のシート幅方向両端部に亘ってシート幅方向に沿って略板状に形成されている。このため、アッパパイプ20の背面(シート後方側の面)全体が覆い隠されている。
【0029】
バックボード40は、樹脂により弾性変形可能かつ軽量に構成されている。なお、バックボード40は、樹脂に限らず、弾性変形可能かつ軽量に形成できるものであればよく、例えば、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタン合金等の金属やゴム等により構成されてもよい。
【0030】
バックボード40は、その上端部が、シートバックフレーム12のシート後方側の上端部を形成するアッパパイプ20の上端部よりもシート上方側となるように配置されている。また、バックボード40の上縁部42(シート上方側の外縁部)には、上縁部42のシート上方側をシート前方側から後方側にかけて覆うようにシート幅方向に沿って形成された樹脂製のエッジガード48が配置されている。エッジガード48は、バックボード40の上端を覆う頂部48Aがバックボード40のシート前方側を覆う一般部48Bよりも肉厚に形成されている。なお、エッジガード48は、樹脂に限らず、弾性変形可能かつ軽量に形成できるものであればよく、軽金属、ゴム等により構成されてもよい。
【0031】
バックボード40の下縁部44(シート下方側の外縁部)には、横ワイヤ部28とシート前後方向に対向する位置に、バックボード40の板厚方向(シート前後方向)に沿って孔が貫通形成された複数(2箇所)の第1取付部50が設けられている。複数(2箇所)の第1取付部50は、略同一のシート上下方向位置となるようにシート幅方向に沿って形成されている。具体的には、第1取付部50には、バックボード40の板厚方向に沿って略円形状の開口を有する第1孔部50Aが貫通形成されている。また、図3に示されるように、第1孔部50Aのシート幅方向外側かつシート上下方向略中間部からシート幅方向外側にかけてシート正面視で略長方形状の開口を有する溝部50Bが、バックボード40の板厚方向に沿って貫通形成されている。溝部50Bの開口のシート幅方向の長さは、後述する樹脂クリップ60の軸部60Bの外径と略同一に形成されている。
【0032】
バックボード40の下縁部44は、シート後方側から第1取付部50に挿通された樹脂クリップ60を介してアッパパイプ20に架け渡された横ワイヤ部28に取り付けられている。
【0033】
第1孔部50Aから横ワイヤ部28に取り付けられた樹脂クリップ60は、溝部50B側へ横ワイヤ部28に沿ってスライドされる。これにより、横ワイヤ部28に取り付けられたバックボード40のシート上下方向位置を安定させることができる。また、溝部50Bの開口は、樹脂クリップ60の軸部60Bの外径よりも長くシート幅方向に延在されている。これにより、バックボード40において、シート幅方向に沿って設けられた複数の(2箇所)の第1取付部50の間でバックボード40がシート前後方向に撓まない(弾性変形しない)ように、樹脂クリップ60のシート幅方向の位置を調整することができる。
【0034】
図4に示されるように、樹脂クリップ60は、頭部60Aと、頭部60Aからその軸方向に延在された軸部60Bと、軸部60Bの先端部に弾性変形可能に形成された保持部60Cと、を備えて構成されている。
【0035】
保持部60Cは、樹脂クリップ60の先端部から頭部60A側に向けて延在され、弾性変形可能に形成された係合部60C1を備えている。係合部60C1は、樹脂クリップ60が第1取付部50に挿通されることにより横ワイヤ部28に当接され、弾性変形して軸部60Bの径方向外側へ開く。さらに、横ワイヤ部28が、保持部60Cの内側(頭部60A側)まで移動され、横ワイヤ部28が係合部60C1に殆ど当接しなくなると、弾性回復により軸部60Bの径方向内側へ変形する。これにより、樹脂クリップ60は、横ワイヤ部28を保持することができる。
【0036】
図3に示されるように、バックボード40の第1取付部50とシート上下方向に離れた部分に、バックボード40をアッパパイプ20に取り付けるための第2取付部54が設けられている。具体的には、バックボード40の上縁部42(シート上方側の外縁部)において、アッパパイプ20と対向する部分に、第2取付部54が設けられている。また、第2取付部54とは別個に、バックボード40の上縁部42とシート幅方向両縁部46には、アッパパイプ20と対向する部分と対向する部分に沿ってバックボード40をアッパパイプ20に取り付けるための第3取付部58が設けられている。バックボード40は、第2取付部54と第3取付部58を介して、締結部材としてのビス64で固定されることによりアッパパイプ20に取り付けられている。
【0037】
図3に示されるように、第2取付部54には、バックボード40の板厚方向に沿って孔としての第2孔部54Aが貫通形成されている。第2孔部54Aは、シート正面視で略長方形状の開口を有する長孔に形成されている。また、第2孔部54Aの開口のシート上下方向の長さL1は、ビス64の軸部64Aの外径D1よりも所定の長さL2だけ長く形成されている。このため、バックボード40の上縁部42にシート下方側へ向けた荷重が作用した場合に、バックボード40の上縁部42側を、第2孔部54Aの所定の長さL2に応じてシート下方側へ変位させることができる。
【0038】
第3取付部58には、バックボード40の板厚方向に沿って第3孔部58Aが貫通形成されている。第3孔部58Aは、シート正面視で略長方形状の開口を有する。第3孔部58Aの開口のシート上下方向の長さは、ビス64の軸部64Aの外径D1よりも所定の長さL2だけ長く形成されている。このため、バックボード40の上縁部42にシート下方側へ向けた荷重が作用した場合に、バックボード40の上縁部42側を、第3孔部58Aの開口のシート上下方向の長さに応じて介してシート下方側へ変位させることができる。
【0039】
第2取付部54の第2孔部54Aの開口のシート幅方向の長さは、ビス64の軸部64Aの外径D1と略同一に形成されている。また、第2取付部54の第2孔部54Aの開口のシート幅方向の長さは、第3取付部58の第3孔部58Aの開口のシート幅方向の長さよりも短く形成されている。このため、第2孔部54Aを介してアッパパイプ20に取り付けられたバックボード40のシート幅方向位置を安定させることができる。
【0040】
第2取付部54とバックボード40の上縁部42側の第3取付部58は、バックボード40の上端に隣接する部分に形成されている。このため、バックボード40において、第2取付部54及びバックボード40の上縁部42側の第3取付部58のシート上方側からバックボード40の上端にかけての部分は、他の部分に比べて脆弱に形成されている。
【0041】
なお、ここでは、バックボード40は、第2取付部54と第3取付部58を介して、アッパパイプ20にビス64で固定されることにより取り付けられているとして説明したが、これに限らず、リベット等の他の締結部材により取り付けられてもよい。
【0042】
(作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0043】
図5に示されるように、後部シートの着座乗員Pは、車両の前突時に、車両前方側へ上半身が倒れるように移動される。着座乗員Pの上半身の傾斜に伴い、着座乗員Pの頭部Hは、前席側の車両用シート10へ向けて移動し、シートバック14のシート上方側に衝突する。このため、着座乗員Pの頭部Hから車両用シート10のシート上方側の作用点PAに荷重が負荷される。
【0044】
本実施形態に係る車両用シート10によれば、シートバック14の骨格を構成するアッパパイプ20のシート後方側には、バックボード40が配置されている。バックボード40は、第1取付部50に挿通された樹脂クリップ60が横ワイヤ部28に取り付けられることによりアッパパイプ20に対するシート上下方向位置が定められ、その上端部がアッパパイプ20の上端部よりもシート上方側に配置されている。また、バックボード40のアッパパイプ20に対するシート幅方向位置は、バックボード40が第2取付部54を介してアッパパイプ20に取り付けられることにより定められる。このため、前突時に、車両前方側へ移動された後部シートの着座乗員Pの頭部Hがバックボード40に接触した際に、バックボード40のシート幅方向への変位を抑制した上で、上縁部42に接触させることができる。さらに、エッジガード48を設けたことにより、シートバック14の上端部のシート上下方向位置を上昇させることができると共に頂部48Aの肉厚を変化させて着座乗員Pの頭部Hがバックボード40に接触するタイミングを制御することができる。これらのことから、後部シートの着座乗員Pの頭部Hが最初にアッパパイプ20に接触する場合と比較して、着座乗員Pの頭部Hへの衝撃を緩和することができる。
【0045】
また、本実施形態に係る車両用シート10によれば、バックボード40の第2取付部54の第2孔部54A及び第3取付部58の第3孔部58Aの開口のシート上下方向の長さL1は、アッパパイプ20に取り付けるためのビス64の軸部64Aの外径D1よりも長く形成されている。このため、着座乗員Pの頭部Hがバックボード40の上端部に接触した際に、バックボード40をシート上下方向に変位させることができる。これにより、後部シートの着座乗員Pの頭部Hが受ける衝撃を緩和できる。
【0046】
さらに、本実施形態に係る車両用シート10によれば、バックボード40において、第2取付部54及びバックボード40の上縁部42側の第3取付部58のシート上方側からバックボード40の上端にかけての部分は、他の部分に比べて脆弱に形成されている。また、第1取付部50は、変形可能な樹脂クリップ60が、横ワイヤ部28に取り付けられている。このため、着座乗員Pの頭部Hが接触したバックボード40は、シート下方側へ変位させると共にアッパパイプ20から離脱させることができる。これにより、バックボード40から着座乗員Pの頭部Hに対する反発力をより確実に抑制することができる。
【0047】
さらに、本実施形態に係る車両用シート10は、シートバックフレーム12のシート後方側にバックボード40を設けるだけの構成である。このため、部品点数の増加を抑制した上で、後部シートの着座乗員Pの頭部Hが受ける衝撃を緩和できる車両用シート10を構成することができる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用シート10は、部品点数の増加を抑制した上で、後部シートの着座乗員Pの頭部Hが受ける衝撃を緩和できる。
【0049】
(第1変形例及び第2変形例)
次に、図6A及び図6Bを用いて、本実施形態に係る孔の第1変形例及び第2変形例について説明する。なお、前述した本実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0050】
図6Aに示されるように、第1変形例に係る孔としての第2孔部54Aの開口70及び第3孔部58Aの開口70は、シート正面視で角形状に形成されている。また、図6Bに示されるように、第2変形例に係る孔としての第2孔部54Aの開口74及び第3孔部58Aの開口74は、正面視で逆三角形状に形成されている。
【0051】
第1変形例及び第2変形例によれば、バックボード40の第2取付部54の第2孔部54A及び第3取付部58の第3孔部58Aの開口70、74のシート上下方向の長さは、アッパパイプ20に取り付けるためのビス64の軸部64Aの外径D1よりも長く形成されている。このため、着座乗員Pの頭部Hがバックボード40の上端部に接触した際に、バックボード40をシート上下方向に変位させることができる。これにより、後部シートの着座乗員Pの頭部Hが受ける衝撃を緩和できる。
【0052】
(第3変形例から第5変形例)
次に、図6Cから図6Eを用いて、本実施形態に係る孔の第3変形例から第5変形例について説明する。なお、前述した本実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0053】
図6Cに示されるように、第3変形例に係る孔としての第2孔部80及び第3孔部82は、バックボード40の上端が切り欠かれることにより、その開口84がシート上方側に開放されたシート正面視略U字状に形成されている。図6Dに示される第4変形例に係る孔としての第2孔部86及び第3孔部88は、バックボード40の上端が切り欠かれることにより、その開口90がシート上方側に開放されたシート正面視略長方形状に形成されている。また、図6Eに示される第5変形例に係る孔としての第2孔部92及び第3孔部94は、バックボード40の上端が切り欠かれることにより、その開口96がシート上方側に開放されたシート正面視略V字状に形成されている。
【0054】
本変形例に係る孔80、82、86、88、92、94によれば、着座乗員Pの頭部Hが接触し、シート下方側へ変位したバックボード40をアッパパイプ20から確実に脱落させることができる。これにより、バックボード40から着座乗員Pの頭部Hに対する反発力をより確実に抑制することができる。
【0055】
(第6変形例)
次に、図6Fを用いて、本実施形態に係る孔の第6変形例について説明する。なお、前述した本実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0056】
本変形例に係る孔としての第2孔部100及び第3孔部102は、そのシート上方側からバックボード40の上端までを切り欠いた溝部104が形成されている。
【0057】
本変形例に係る孔100、102によれば、着座乗員Pの頭部Hが接触し、シート下方側へ変位したバックボード40をアッパパイプ20から確実に脱落させることができる。これにより、バックボード40から着座乗員Pの頭部Hに対する反発力をより確実に抑制することができる。
【0058】
(第7変形例)
次に、図7を用いて、本実施形態に係る孔の第7変形例について説明する。なお、前述した本実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0059】
本変形例に係る孔としての第2孔部108及び第3孔部110は、開口112の外周部にバックボード40の他の部分と比べて、例えば、板厚が薄く形成される、複数の孔が貫通形成される等によって剛性が低下された脆弱部114が形成されている。
【0060】
本変形例に係る孔108、110によれば、バックボード40に脆弱部114を設けることにより、着座乗員Pの頭部Hが接触し、シート下方側へ変位したバックボード40をアッパパイプ20から確実に脱落させることができる。これにより、バックボード40から着座乗員Pの頭部Hに対する反発力をより確実に抑制することができる。
【符号の説明】
【0061】
10 車両用シート
12 シートバックフレーム
14 シートバック
20 アッパパイプ(アッパフレーム)
28 横ワイヤ部(ワイヤ)
40 バックボード(シートバックパネル)
48 エッジガード
50 第1取付部
54 第2取付部
54A 第2孔部(孔)
60 樹脂クリップ
60C 保持部
64 ビス(締結部材)
64A 軸部
70 開口
74 開口
80 第2孔部(孔)
84 開口
86 第2孔部(孔)
90 開口
92 第2孔部(孔)
96 開口
100 第2孔部(孔)
108 第2孔部(孔)
112 開口
D1 外径
P 着座乗員
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7