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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/02 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
B60N2/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019090764
(22)【出願日】2019-05-13
(65)【公開番号】P2020185854
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】松澤 剛
(72)【発明者】
【氏名】勝部 健一
(72)【発明者】
【氏名】田中 大助
【審査官】五閑 統一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-173399(JP,A)
【文献】特開2016-166020(JP,A)
【文献】特開2018-154289(JP,A)
【文献】特開2008-035999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00
A47C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の身体の一部を支持し、背面部及び両側面部が第一カバーで構成された第一支持構成部と、
前記第一支持構成部と隣り合って配置されて乗員の身体の他の一部を支持し、背面部及び両側面部が第二カバーで構成された第二支持構成部と、
前記第一支持構成部に設けられてシート幅方向に沿う第一連結軸と、前記第二支持構成部に設けられてシート幅方向に沿う第二連結軸と、前記第一支持構成部に対して前記第一連結軸の軸回りに回動可能とされると共に前記第二支持構成部に対して前記第二連結軸の軸回りに回動可能とされたリンクと、を備えて前記第一支持構成部と前記第二支持構成部とを連結するダブルヒンジと、
前記第一カバーと前記第二カバーとの間に沿って配置され、前記第一連結軸と前記第二連結軸との両方に取り付けられた中間シャッターと、
前記第一連結軸に設けられ、前記第一支持構成部と前記第二支持構成部との相対変位に伴って前記第一カバーと前記中間シャッターとの間に形成される隙間を塞ぐ第一シャッターと、
前記第二連結軸に設けられ、前記第一支持構成部と前記第二支持構成部との相対変位に伴って前記第二カバーと前記中間シャッターとの間に形成される隙間を塞ぐ第二シャッターと、
を有する車両用シート。
【請求項2】
前記第一シャッターが前記第一連結軸の軸回りに回動可能に設けられると共に、前記第二シャッターが前記第二連結軸の軸回りに回動可能に設けられている構成において、
前記リンクと前記第一シャッターとを連結して前記第一シャッターを前記中間シャッターとの重なり量が予め定めた量となる第一基準位置に付勢する第一引張ばねと、
前記第一カバーに一体又は一体的に設けられて前記第一支持構成部が前記第一連結軸の軸回りでかつ前記第一カバーの背面部と前記第二カバーの背面部との成す角度を大きくするように回動した場合に前記第一引張ばねの付勢力に抗して前記第一シャッターを押圧して前記第一シャッターにおける前記中間シャッターとの重なり量を減らすように前記第一シャッターを回動させる押圧部と、
前記リンクと前記第二シャッターとを連結して前記第二シャッターを前記中間シャッターとの重なり量が予め定めた量となる第二基準位置に付勢する第二引張ばねと、
前記第二カバーに一体又は一体的に設けられ、前記リンクが前記第二連結軸の軸回りでかつ前記第一カバーの背面部と前記第二カバーの背面部との成す角度を大きくするように回動した場合に前記第二シャッターによって当接されて前記第二シャッターの回動を制限することで前記第二シャッターにおける前記中間シャッターとの重なり量を減らす被押圧部と、
を有する、請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記押圧部は、前記第一カバーに固定されて前記第一シャッターに対して接離可能に配置された第一ゴムシートを備え、
前記被押圧部は、前記第二カバーに固定されて前記第二シャッターに対して接離可能に配置された第二ゴムシートを備える、請求項2に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートにおいては乗員の身体を支持する構成部同士がダブルヒンジで接続されている場合がある(例えば、下記特許文献1参照)。このようなダブルヒンジを備えた構成では、連結される構成部同士の成す角度の範囲を大きくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3813291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この従来技術では、連結される構成部同士の間からシート内部に異物が混入し易いので、この点において改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、ダブルヒンジを備えた構成であっても、連結される構成部同士の間からシート内部に異物が混入するのを防止又は効果的に抑制することができる車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明の車両用シートは、乗員の身体の一部を支持し、背面部及び両側面部が第一カバーで構成された第一支持構成部と、前記第一支持構成部と隣り合って配置されて乗員の身体の他の一部を支持し、背面部及び両側面部が第二カバーで構成された第二支持構成部と、前記第一支持構成部に設けられてシート幅方向に沿う第一連結軸と、前記第二支持構成部に設けられてシート幅方向に沿う第二連結軸と、前記第一支持構成部に対して前記第一連結軸の軸回りに回動可能とされると共に前記第二支持構成部に対して前記第二連結軸の軸回りに回動可能とされたリンクと、を備えて前記第一支持構成部と前記第二支持構成部とを連結するダブルヒンジと、前記第一カバーと前記第二カバーとの間に沿って配置され、前記第一連結軸と前記第二連結軸との両方に取り付けられた中間シャッターと、前記第一連結軸に設けられ、前記第一支持構成部と前記第二支持構成部との相対変位に伴って前記第一カバーと前記中間シャッターとの間に形成される隙間を塞ぐ第一シャッターと、前記第二連結軸に設けられ、前記第一支持構成部と前記第二支持構成部との相対変位に伴って前記第二カバーと前記中間シャッターとの間に形成される隙間を塞ぐ第二シャッターと、を有する。
【0007】
上記構成によれば、第一支持構成部は、乗員の身体の一部を支持し、背面部及び両側面部が第一カバーで構成されている。これに対して、第二支持構成部は、第一支持構成部と隣り合って配置されて乗員の身体の他の一部を支持し、背面部及び両側面部が第二カバーで構成されている。第一支持構成部と第二支持構成部とは、ダブルヒンジによって連結されている。ダブルヒンジのリンクは、第一支持構成部に対して、第一支持構成部に設けられた第一連結軸の軸回りに回動可能であると共に、第二支持構成部に対して、第二支持構成部に設けられた第二連結軸の軸回りに回動可能となっている。
【0008】
ここで、第一カバーと第二カバーとの間に沿って中間シャッターが配置されており、この中間シャッターは、第一連結軸と第二連結軸との両方に取り付けられている。一方、第一連結軸に設けられた第一シャッターは、第一支持構成部と第二支持構成部との相対変位に伴って第一カバーと中間シャッターとの間に形成される隙間を塞ぐ。また、第二連結軸に設けられた第二シャッターは、第一支持構成部と第二支持構成部との相対変位に伴って第二カバーと中間シャッターとの間に形成される隙間を塞ぐ。これらにより、第一支持構成部の第一カバーと第二支持構成部の第二カバーとの間からの異物混入が、中間シャッター、第一シャッター及び第二シャッターによって、防止又は効果的に抑制される。
【0009】
請求項2に記載する本発明の車両用シートは、請求項1に記載の構成において、前記第一シャッターが前記第一連結軸の軸回りに回動可能に設けられると共に、前記第二シャッターが前記第二連結軸の軸回りに回動可能に設けられている構成において、前記リンクと前記第一シャッターとを連結して前記第一シャッターを前記中間シャッターとの重なり量が予め定めた量となる第一基準位置に付勢する第一引張ばねと、前記第一カバーに一体又は一体的に設けられて前記第一支持構成部が前記第一連結軸の軸回りでかつ前記第一カバーの背面部と前記第二カバーの背面部との成す角度を大きくするように回動した場合に前記第一引張ばねの付勢力に抗して前記第一シャッターを押圧して前記第一シャッターにおける前記中間シャッターとの重なり量を減らすように前記第一シャッターを回動させる押圧部と、前記リンクと前記第二シャッターとを連結して前記第二シャッターを前記中間シャッターとの重なり量が予め定めた量となる第二基準位置に付勢する第二引張ばねと、前記第二カバーに一体又は一体的に設けられ、前記リンクが前記第二連結軸の軸回りでかつ前記第一カバーの背面部と前記第二カバーの背面部との成す角度を大きくするように回動した場合に前記第二シャッターによって当接されて前記第二シャッターの回動を制限することで前記第二シャッターにおける前記中間シャッターとの重なり量を減らす被押圧部と、を有する。
【0010】
上記構成によれば、第一シャッターが第一連結軸の軸回りに回動可能となっており、リンクと第一シャッターとを連結する第一引張ばねは、第一シャッターを中間シャッターとの重なり量が予め定めた量となる第一基準位置に付勢する。また、第一支持構成部が第一連結軸の軸回りでかつ第一カバーの背面部と第二カバーの背面部との成す角度を大きくするように回動した場合に、第一カバーに一体又は一体的に設けられた押圧部は、第一引張ばねの付勢力に抗して第一シャッターを押圧して第一シャッターにおける中間シャッターとの重なり量を減らすように第一シャッターを回動させる。これにより、第一カバーの背面部と第二カバーの背面部との成す角度が大きくなって第一カバーと中間シャッターとの間に隙間が形成されても当該隙間が第一シャッターによって塞がれる。
【0011】
また、第二シャッターは第二連結軸の軸回りに回動可能となっており、リンクと第二シャッターとを連結する第二引張ばねは、第二シャッターを中間シャッターとの重なり量が予め定めた量となる第二基準位置に付勢する。リンクが第二連結軸の軸回りでかつ第一カバーの背面部と第二カバーの背面部との成す角度を大きくするように回動した場合に、第二カバーに一体又は一体的に設けられた被押圧部は、第二シャッターによって当接されて第二シャッターの回動を制限することで第二シャッターにおける中間シャッターとの重なり量を減らす。これにより、第一カバーの背面部と第二カバーの背面部との成す角度が大きくなって第二カバーと中間シャッターとの間に隙間が形成されても当該隙間が第二シャッターによって塞がれる。
【0012】
請求項3に記載する本発明の車両用シートは、請求項2に記載の構成において、前記押圧部は、前記第一カバーに固定されて前記第一シャッターに対して接離可能に配置された第一ゴムシートを備え、前記被押圧部は、前記第二カバーに固定されて前記第二シャッターに対して接離可能に配置された第二ゴムシートを備える。
【0013】
上記構成によれば、押圧部は、第一カバーに固定された第一ゴムシートで第一シャッターを押圧するので、押圧部が第一シャッターを押圧する場合の異音が抑制される。また、被押圧部においては、第二カバーに固定された第二ゴムシートに対して第二シャッターが当接するので、被押圧部が第二シャッターによって当接された場合の異音が抑制される。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の車両用シートによれば、ダブルヒンジを備えた構成であっても、連結される構成部同士の間からシート内部に異物が混入するのを防止又は効果的に抑制することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用シートを示す側面図である。
図2図2(A)は、ミドル支持構成部及びロア支持構成部が連結されて直列配置された状態のシート内部を示す斜視図である。図2(B)は、図2(A)に示される構成からミドルフレーム及びロアフレーム等を外した状態で示す斜視図である。
図3図1の車両用シートにおけるダブルヒンジ及びシャッター構造を示す斜視図である。
図4図3に示される構成部の分解斜視図である。
図5図2(B)に示されるミドルフィニッシャとロアフィニッシャとのシート右側(図2の左側)の連結部をシート幅方向内側から見て拡大した状態でかつリンクフレームを省略して示す拡大断面図である。
図6図5の6-6線に沿って切断した状態を拡大して示す拡大断面図である。
図7】ミドル支持構成部が第一連結軸の軸回りでかつミドルフィニッシャの背面部とロアフィニッシャの背面部との成す角度を大きくするように回動する場合を説明するための側断面図である。図7(A)はミドル支持構成部が回動する前の状態を示す。図7(B)はミドル支持構成部が回動した後の状態を示す。
図8】ミドル支持構成部が第一連結軸の軸回りでかつミドルフィニッシャの背面部とロアフィニッシャの背面部との成す角度を小さくするように回動する場合を説明するための側断面図である。図8(A)はミドル支持構成部が回動する前の状態を示す。図8(B)はミドル支持構成部が回動した後の状態を示す。
図9】リンクが第二連結軸の軸回りでかつミドルフィニッシャの背面部とロアフィニッシャの背面部との成す角度を大きくするように回動する場合を説明するための側断面図である。図9(A)はリンクが回動する前の状態を示す。図9(B)はリンクが回動した後の状態を示す。
図10】リンクが第二連結軸の軸回りでかつミドルフィニッシャの背面部とロアフィニッシャの背面部との成す角度を小さくするように回動する場合を説明するための側断面図である。図10(A)はリンクが回動する前の状態を示す。図10(B)はリンクが回動した後の状態を示す。
図11図7図10に示される作動が組み合わされた状態を示す側断面図である。図11(A)は、図8に示される作動と図10に示される作動とが組み合わされた状態を示す。図11(B)は、図7に示される作動と図10に示される作動とが組み合わされた状態を示す。図11(C)は、図8に示される作動と図9に示される作動とが組み合わされた状態を示す。図11(D)は、図7に示される作動と図9に示される作動とが組み合わされた状態を示す。
図12】ミドルフィニッシャの背面部とロアフィニッシャの背面部との成す角度が小さくて第一シャッター及び第二シャッターが中間シャターと最大限重なっている状態を示す斜視図である。図12(A)は、ミドルフィニッシャ及びロアフィニッシャの内面側から見た状態の斜視図である。図12(B)は、ミドルフィニッシャ及びロアフィニッシャの外面側から見た状態の斜視図である。
図13】ミドルフィニッシャの背面部とロアフィニッシャの背面部との成す角度が大きくて第一シャッター及び第二シャッターと中間シャターとの重なり量が最小となっている状態を示す斜視図である。図13(A)は、ミドルフィニッシャ及びロアフィニッシャの内面側から見た状態の斜視図である。図13(B)は、ミドルフィニッシャ及びロアフィニッシャの外面側から見た状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係る車両用シートについて図1図13を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRはシート前方側を示しており、矢印UPはシート上方側を示しており、矢印Wはシート幅方向を示している。
【0017】
(車両用シート10について)
図1には、本実施形態に係る車両用シート10が側面図で示されている。図1に示されるように、車両用シート10は、車両用シート10の下部を構成する基部12と、基部12に対して傾動可能に支持された一対のシート主部14と、一対のシート主部14のうちの一方(図中右側のシート主部14R)の先端側に連結される第一アッパ部16と、一対のシート主部14のうちの他方(図中左側のシート主部14L)の先端側に連結される第二アッパ部18と、を備えている。シート主部14、第一アッパ部16及び第二アッパ部18は、いずれも乗員の身体の一部を支持する構成部とされる。
【0018】
なお、車両用シート10は、一対のシート主部14の姿勢を変えることで、向きを変えられる。すなわち、車両用シート10は、図中右側のシート主部14(14R)を車両水平方向に沿うように配置すると共に、図中左側のシート主部14(14L)を起立させるように配置することで、図1に示される向きとは反対の向きのシートとすることができる。この車両用シート10は、自動運転が可能な車両に適用することができる。
【0019】
一対のシート主部14は、第一支持構成部としてのミドル支持構成部20と、ミドル支持構成部20と隣り合って配置された第二支持構成部としてのロア支持構成部24と、をそれぞれ含んで構成されている。ミドル支持構成部20は、乗員の背部の上部又は脛部を支持するための構成部とされ、ミドルクッション部ともいう。ロア支持構成部24は、乗員の背部の下部又は臀部を支持するための構成部とされ、ロアクッション部ともいう。ミドル支持構成部20は、ロア支持構成部24に対して、シート幅方向に沿った軸回りに回動可能に連結されている(詳細後述)。
【0020】
第一アッパ部16は、乗員の頭部又は足先を支持するための構成部とされ、アッパクッション部ともいう。第一アッパ部16は、図中右側のミドル支持構成部20(20R)と隣り合って配置され、ミドル支持構成部20(20R)に対してシート幅方向に沿った軸回りに回動可能に連結されている。第二アッパ部18は、図中左側のミドル支持構成部20(20L)と隣り合って配置された板状部18Aと、板状部18Aの先端側(図中左側)に連結されたクッション部18Bと、を備えている。板状部18Aは、例えば図1に示される状態で乗員の足置として機能し、ミドル支持構成部20(20L)に対してシート幅方向に沿った軸回りに回動可能に連結される。また、クッション部18Bは、乗員の頭部又は足先を支持するための構成部とされ、アッパクッション部ともいう。クッション部18Bは、板状部18Aに対してシート幅方向に沿った軸回りに回動可能に連結されている。以上の説明から分かるように、車両用シート10は、多関節を備えたシートとして把握することができる。
【0021】
(ミドル支持構成部20及びロア支持構成部24について)
図2(A)には、ミドル支持構成部20及びロア支持構成部24が連結されて直列配置された状態のシート内部が斜視図で示されている。図2(A)に示されるように、ミドル支持構成部20は、その骨格部を構成するミドルフレーム21と、ミドルフレーム21を乗員支持面20S(図1参照)の側とは反対側から覆ってミドルフレーム21に固定された第一カバーとしての樹脂製のミドルフィニッシャ22と、を備えている。ミドルフレーム21は、ミドル支持構成部20の乗員支持面20S(図1参照)の側に配置されるパッド(図示省略)等を支持する。また、ロア支持構成部24は、その骨格部を構成するロアフレーム25と、ロアフレーム25を乗員支持面24S(図1参照)の側とは反対側から覆ってロアフレーム25に固定された第二カバーとしての樹脂製のロアフィニッシャ26と、を備えている。ロアフレーム25は、ロア支持構成部24の乗員支持面24S(図1参照)の側に配置されるパッド(図示省略)等を支持する。
【0022】
図2(B)には、図2(A)に示される構成からミドルフレーム21及びロアフレーム25等が外された状態の斜視図が示されている。図2(B)に示されるように、ミドルフィニッシャ22は、乗員支持面20S(図1参照)の側に開口する略ボックス状のカバーであり、背板部22A及び左右一対の側板部22Bを備えている。ミドルフィニッシャ22の背板部22Aの背面部22X(図13(B)参照)は、ミドル支持構成部20の背面部を構成する。ミドルフィニッシャ22の側板部22Bのシート幅方向外側の両側面部22Yは、ミドル支持構成部20の側面部を構成する。また、ロアフィニッシャ26は、乗員支持面24S(図1参照)の側に開口する略ボックス状のカバーであり、背板部26A及び左右一対の側板部26Bを備えている。ロアフィニッシャ26の背板部26Aの背面部26X(図13(B)参照)は、ロア支持構成部24の背面部を構成する。ロアフィニッシャ26の側板部26Bのシート幅方向外側の両側面部26Yは、ロア支持構成部24の側面部を構成する。
【0023】
(ダブルヒンジ30について)
図2(A)に示されるように、互いに隣り合うミドル支持構成部20とロア支持構成部24とは、ダブルヒンジ30によって(言い換えればリクライニング機構を介して)連結されている。ダブルヒンジ30は、第一連結軸32、第二連結軸34及びリンク36を備えている。なお、図2においては、便宜上、第一連結軸32及び第二連結軸34は、その外形線のみを二点鎖線で図示している(図3図12(A)及び図13(A)も同様)。第一連結軸32は、ミドル支持構成部20に設けられてシート幅方向に沿って配置される。第二連結軸34は、ロア支持構成部24に設けられてシート幅方向に沿って配置される。また、リンク36は、車両用シート10のシート幅方向の両サイドに設けられ、ミドルフィニッシャ22の左右一対の側板部22B及びロアフィニッシャ26の左右一対の側板部26Bよりも若干シート幅方向内側に配置される。リンク36は、全体として長尺板状とされてシート幅方向を厚み方向として配置される。
【0024】
第一連結軸32のシート幅方向の端部は、リンク36の一端側に貫通形成された第一連結孔36A(図2(B)参照)に挿通された状態でリンク36に固定されると共に、ミドルフレーム21側に対して回動可能に取り付けられている。これにより、リンク36は、ミドル支持構成部20に対して第一連結軸32の軸回りに回動可能とされる。そして、第一連結軸32は、ミドルフレーム21側に固定された図示しないモータの正逆回転に応じて、第一連結軸32の軸線回りに回転するようになっている。
【0025】
第二連結軸34のシート幅方向の端部は、リンク36の他端側に貫通形成された第二連結孔36B(図2(B)参照)に挿通された状態でリンク36に固定されると共に、ロアフレーム25側に対して回動可能に取り付けられている。これにより、リンク36は、ロア支持構成部24に対して第二連結軸34の軸回りに回動可能とされる。そして、第二連結軸34は、ロアフレーム25側に固定された図示しないモータの正逆回転に応じて、第二連結軸34の軸線回りに回転するようになっている。
【0026】
図3には、ダブルヒンジ30及びその周囲のシャッター構造が斜視図で示され、図4には、図3に示される構成部の分解斜視図が示されている。リンク36は、リンクフレーム36Fの一部にリンクカバー36Cが被せられて構成される。すなわち、リンクフレーム36Fのシート幅方向外側の大部分及びシート幅方向内側の長手方向中間部の一部には、リンクカバー36Cが被せられている。前述したリンク36の第一連結孔36Aは、リンクフレーム36Fの第一貫通孔36A1と、リンクカバー36Cの第一貫通孔36A2と、で形成されている。リンク36の第二連結孔36Bは、リンクフレーム36Fの第二貫通孔36B1と、リンクカバー36Cの第二貫通孔36B2と、で形成されている。リンクカバー36Cにおいて、第一貫通孔36A2は第一筒状部36C1の貫通部とされ、第二貫通孔36B2は第二筒状部36C2の貫通部とされている。
【0027】
図3に示されるように、リンクカバー36Cの長手方向中間部において第一筒状部36C1の側には、バネ係止用の第一ピン38A(図4では図示省略)が固定されている。また、リンクカバー36Cの長手方向中間部において第二筒状部36C2の側には、バネ係止用の第二ピン38B(図4では図示省略)が固定されている。第一ピン38A及び第二ピン38Bは、リンクカバー36Cに対してシート幅方向内側に突出するように配置されている。
【0028】
(中間シャッター40について)
図12には、ミドルフィニッシャ22の背面部22Xとロアフィニッシャ26の背面部26Xとの成す角度が小さい状態の斜視図が示され、図13には、ミドルフィニッシャ22の背面部22Xとロアフィニッシャ26の背面部26Xとの成す角度が大きい状態の斜視図が示されている。図12(A)及び図13(A)は、ミドルフィニッシャ22及びロアフィニッシャ26の内面側から見た状態の斜視図であり、図12(B)及び図13(B)は、ミドルフィニッシャ22及びロアフィニッシャ26の外面側から見た状態の斜視図である。
【0029】
図12(B)及び図13(B)に示されるように、ミドルフィニッシャ22とロアフィニッシャ26との間に沿って中間シャッター40が配置されている。図4に示されるように、中間シャッター40は、全体として略U字状(略コ字状)に形成され、背板部40A及び左右一対の側板部40Bを備えている。図12(B)及び図13(B)に示されるように、ミドルフィニッシャ22の背板部22Aとロアフィニッシャ26の背板部26Aとの間に沿って中間シャッター40の背板部40Aが配置される。また、ミドルフィニッシャ22の側板部22Bとロアフィニッシャ26の側板部26Bとの間に沿って中間シャッター40の側板部40Bが配置される。中間シャッター40の側板部40Bは、シート幅方向の左右両側に形成され、ミドルフィニッシャ22の左右一対の側板部22B及びロアフィニッシャ26の左右一対の側板部26Bよりも若干シート幅方向内側に配置される。
【0030】
図4に示されるように、中間シャッター40における側板部40Bの延出方向先端側の部位には、リンクカバー36Cの第一貫通孔36A2に対応する部位に第一取付孔40Cが貫通形成されている。第一取付孔40Cには、リンクカバー36Cの第一筒状部36C1及び第一連結軸32(図3参照)が挿通されている。また、中間シャッター40における側板部40Bの延出方向先端側の部位には、リンクカバー36Cの第二貫通孔36B2に対応する部位に第二取付孔40Dが貫通形成されている。図6(後述する図5の6-6線に沿った拡大断面図)に示されるように、第二取付孔40Dには、リンクカバー36Cの第二筒状部36C2及び第二連結軸34が挿通されている。以上説明したように、図3に示される中間シャッター40は、第一連結軸32と第二連結軸34との両方に取り付けられている。
【0031】
図4に示されるように、中間シャッター40における背板部40Aは、シート側面視で略V字状とされている。より具体的には、背板部40Aにおいてミドル支持構成部20(図2参照)の側に配置される第一半部40A1は、シート側面視で第一取付孔40Cの中心を円弧中心とする円弧状に形成され、背板部40Aにおいてロア支持構成部24(図2参照)の側に配置される第二半部40A2は、シート側面視で第二取付孔40Dの中心を円弧中心とする円弧状に形成されている。
【0032】
(第一シャッター42について)
中間シャッター40の左右一対の側板部40B同士の間で第一半部40A1の内面側には、第一シャッター42が設けられている。第一シャッター42は、全体として略U字状(略コ字状)に形成され、背板部42A及び左右一対の側板部42Bを備えている。
【0033】
第一シャッター42における側板部42Bの延出方向先端側の部位には挿通孔42Hが貫通形成されている。挿通孔42Hには、リンクカバー36Cの第一筒状部36C1が挿通されると共に、第一連結軸32(図3参照)が挿通されている。これにより、第一シャッター42は、第一連結軸32(図3参照)の軸回りに回動可能に設けられている。第一シャッター42における背板部42Aは、図中の上端部を除いて、シート側面視で挿通孔42Hの中心を円弧中心とする円弧状に形成されている。そして、第一シャッター42は、図2(A)に示されるミドル支持構成部20とロア支持構成部24との相対変位に伴って図13(B)に示されるミドルフィニッシャ22と中間シャッター40との間に形成される隙間G1を塞ぐように設定されている。なお、図13(B)において、隙間G1の範囲は、第一シャッター42の露出範囲と同様の範囲である。
【0034】
図5には、図2(B)に示されるミドルフィニッシャ22とロアフィニッシャ26とのシート右側(図2(B)の左側)の連結部をシート幅方向内側から見て拡大した状態でかつリンクフレーム36Fの図示を省略した拡大断面図が示されている。なお、図を見易くする便宜上、図7図11においても、リンクフレーム36Fの図示を省略する。図5に示されるように、第一シャッター42の背板部42Aは、中間シャッター40の背板部40Aの第一半部40A1と重なって配置可能な円弧部42A1と、第一半部40A1と重ならない直板部42A2と、を備える。第一シャッター42の背板部42Aの大部分は、円弧部42A1とされている。直板部42A2は、中間シャッター40の背板部40Aの第一半部40A1に対して第二半部40A2の側とは反対側の端末からはみ出すように延出し、円弧部42A1の延長位置(図示省略)よりも外側(背面側)に位置している。
【0035】
また、図4に示されるように、第一シャッター42の側板部42Bの内面において基端側(延出方向先端側とは反対側)の部位からはピン部42Pが突出形成されている。ピン部42Pは左右一対の側板部42Bにそれぞれ形成されている。なお、図4では図中右側の側板部42Bのピン部42Pの図示を省略している。図5に示されるように、第一シャッター42のピン部42Pには、第一引張ばねとしての第一引張コイルばね46の一端側が係止されている。第一引張コイルばね46の他端側は、リンクカバー36Cに設けられた第一ピン38Aに係止されている。これにより、第一引張コイルばね46は、リンク36と第一シャッター42とを連結して第一シャッター42を中間シャッター40との重なり量が予め定めた量となる第一基準位置42Xに付勢する。
【0036】
(第二シャッター44について)
図4に示される中間シャッター40における左右一対の側板部40B同士の間で第二半部40A2の内面側には、第二シャッター44が設けられている。第二シャッター44は、全体として略U字状(略コ字状)に形成され、背板部44A及び左右一対の側板部44Bを備えている。
【0037】
第二シャッター44における側板部44Bの延出方向先端側の部位には挿通孔44Hが貫通形成されている。図6に示されるように、挿通孔44Hには、リンクカバー36Cの第二筒状部36C2が挿通されると共に、第二連結軸34が挿通されている。これにより、第二シャッター44は、第二連結軸34の軸回りに回動可能に設けられている。図4に示されるように、第二シャッター44における背板部44Aは、図中の下端部を除いて、シート側面視で挿通孔44Hの中心を円弧中心とする円弧状に形成されている。そして、第二シャッター44は、図2(A)に示されるミドル支持構成部20とロア支持構成部24との相対変位に伴って図13(B)に示されるロアフィニッシャ26と中間シャッター40との間に形成される隙間G2を塞ぐように設定されている。なお、図13(B)において、隙間G2の範囲は、第二シャッター44の露出範囲と同様の範囲である。
【0038】
図5に示されるように、第二シャッター44の背板部44Aは、中間シャッター40の背板部40Aの第二半部40A2と重なって配置可能な円弧部44A1と、第二半部40A2と重ならない直板部44A2と、を備える。第二シャッター44の背板部44Aの大部分は、円弧部44A1とされている。直板部44A2は、中間シャッター40の背板部40Aの第二半部40A2に対して第一半部40A1の側とは反対側の端末からはみ出すように延出し、円弧部44A1の延長位置(図示省略)よりも外側(背面側)に位置している。
【0039】
また、図4に示されるように、第二シャッター44の側板部44Bの内面において基端側(延出方向先端側とは反対側)の部位からはピン部44Pが突出形成されている。ピン部44Pは左右一対の側板部44Bにそれぞれ形成されている。なお、図4では図中右側の側板部44Bのピン部44Pの図示を省略している。図5に示されるように、第二シャッター44のピン部44Pには、第二引張ばねとしての第二引張コイルばね48の一端側が係止されている。第二引張コイルばね48の他端側は、リンクカバー36Cに設けられた第二ピン38Bに係止されている。これにより、第二引張コイルばね48は、リンク36と第二シャッター44とを連結して第二シャッター44を中間シャッター40との重なり量が予め定めた量となる第二基準位置44Xに付勢する。
【0040】
(押圧部50について)
ミドルフィニッシャ22には、第一シャッター42の直板部42A2を押圧可能な押圧部50が設けられている。押圧部50は、ミドルフィニッシャ22の背板部22Aの端部に固定された第一ゴムシート50Aを備える。ミドルフィニッシャ22に一体的に設けられた第一ゴムシート50Aは、ミドルフィニッシャ22の背板部22Aに沿ってシート幅方向に延在され、第一シャッター42の直板部42A2に対して接離可能に配置されている。
【0041】
ミドル支持構成部20が第一連結軸32の軸回りでかつミドルフィニッシャ22の背面部22Xとロアフィニッシャ26の背面部26Xとの成す角度を大きくするように回動した場合、すなわち、例えば、図7(A)に示されるミドル支持構成部20が図中の矢印R1方向に回動した場合に、図7(B)に示されるように、押圧部50は、第一引張コイルばね46の付勢力に抗して第一シャッター42の背板部42Aにおける直板部42A2を押圧して第一シャッター42における中間シャッター40との重なり量を減らすように第一シャッター42を回動させる(矢印R2参照)。なお、図中の矢印Aは、第一引張コイルばね46が引き伸ばされる方向を示している。
【0042】
(被押圧部52について)
図5に示されるロアフィニッシャ26には、後述する所定時に第二シャッター44の直板部44A2によって押圧される被押圧部52が設けられている。被押圧部52は、ロアフィニッシャ26の背板部26Aの端部に固定された第二ゴムシート52Aを備える。ロアフィニッシャ26に一体的に設けられた第二ゴムシート52Aは、ロアフィニッシャ26の背板部26Aに沿ってシート幅方向に延在され、第二シャッター44に対して接離可能に配置されている。
【0043】
リンク36が第二連結軸34の軸回りでかつミドルフィニッシャ22の背面部22Xとロアフィニッシャ26の背面部26Xとの成す角度を大きくするように回動した場合、すなわち、例えば、図9(A)に示されるリンク36が図中の矢印R5方向に回動した場合に、図9(B)に示されるように、被押圧部52は、第二シャッター44の背板部44Aにおける直板部44A2によって当接されて第二シャッター44の回動を制限することで第二シャッター44における中間シャッター40との重なり量を減らすように構成されている。なお、図中の矢印R6は、中間シャッター40の回動方向を示し、図中の矢印Cは、第二引張コイルばね48が縮まろうとする力の方向を示している。
【0044】
(実施形態の作用・効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0045】
本実施形態では、図12(B)及び図13(B)に示されるように、ミドルフィニッシャ22とロアフィニッシャ26との間に沿って中間シャッター40が配置されている。この中間シャッター40は、図13(A)に示される第一連結軸32と第二連結軸34との両方に取り付けられている。また、第一連結軸32に設けられた第一シャッター42は、ミドル支持構成部20とロア支持構成部24との相対変位に伴って図13(B)に示されるミドルフィニッシャ22と中間シャッター40との間に形成される隙間G1を塞ぐ。さらに、図13(A)に示される第二連結軸34に設けられた第二シャッター44は、ミドル支持構成部20とロア支持構成部24との相対変位に伴って図13(B)に示されるロアフィニッシャ26と中間シャッター40との間に形成される隙間G2を塞ぐ。これらにより、ミドル支持構成部20のミドルフィニッシャ22とロア支持構成部24のロアフィニッシャ26との間からの異物混入が、中間シャッター40、第一シャッター42及び第二シャッター44によって、防止又は効果的に抑制される。
【0046】
また、本実施形態では、図5に示される第一シャッター42が第一連結軸32の軸回りに回動可能となっている。そして、リンク36と第一シャッター42とを連結する第一引張コイルばね46は、第一シャッター42を中間シャッター40との重なり量が予め定めた量となる第一基準位置42Xに付勢する。また、ミドル支持構成部20が第一連結軸32の軸回りでかつミドルフィニッシャ22の背面部22Xとロアフィニッシャ26の背面部26Xとの成す角度を大きくするように図7(A)の矢印R1方向に回動した場合に、図7(B)に示されるように、ミドルフィニッシャ22に設けられた押圧部50は、第一引張コイルばね46の付勢力に抗して(第一引張コイルばね46を引き伸ばしながら)第一シャッター42の直板部42A2を押圧して第一シャッター42における中間シャッター40との重なり量を減らすように図中の矢印R2方向に第一シャッター42を回動させる。
【0047】
これにより、図13(B)に示されるように、ミドルフィニッシャ22の背面部22Xとロアフィニッシャ26の背面部26Xとの成す角度が大きくなってミドルフィニッシャ22と中間シャッター40との間に隙間G1が形成されても当該隙間G1が第一シャッター42によって塞がれる。また、本実施形態では、第一シャッター42をそのように作動させるための動力を別途設ける必要もない。
【0048】
また、本実施形態では、図5に示されるように、押圧部50は、ミドルフィニッシャ22に固定されて第一シャッター42に対して接離可能に配置された第一ゴムシート50Aを備える。このため、図7(B)に示されるように、押圧部50は、ミドルフィニッシャ22に固定された第一ゴムシート50Aで第一シャッター42を押圧するので、押圧部50が第一シャッター42を押圧する場合の異音が抑制される。
【0049】
また、図5に示されるミドル支持構成部20が第一連結軸32の軸回りでかつミドルフィニッシャ22の背面部22Xとロアフィニッシャ26の背面部26Xとの成す角度を小さくするように図8(A)の矢印R3方向に回動した場合に、図8(B)に示されるように、ミドルフィニッシャ22の背板部22Aは、中間シャッター40の背板部40Aよりも外側(図中の右側)の空間を通って図中の矢印R4方向に回動する。このとき、第一シャッター42は、第一引張コイルばね46の付勢力(矢印B参照)によって中間シャッター40と接触した第一基準位置42Xに保持される。
【0050】
また、本実施形態では、図5に示される第二シャッター44が第二連結軸34の軸回りに回動可能となっている。そして、リンク36と第二シャッター44とを連結する第二引張コイルばね48は、第二シャッター44を中間シャッター40との重なり量が予め定めた量となる第二基準位置44Xに付勢する。また、リンク36が第二連結軸34の軸回りでかつミドルフィニッシャ22の背面部22Xとロアフィニッシャ26の背面部26Xとの成す角度を大きくするように図9(A)に示される矢印R5方向に回動した場合に、図9(B)に示されるように、ロアフィニッシャ26に設けられた被押圧部52は、第二シャッター44の直板部44A2によって当接されて第二シャッター44の回動を制限することで第二シャッター44における中間シャッター40との重なり量を減らし、第二引張コイルばね48は、引き伸ばされる。言い換えれば、中間シャッター40は、第二シャッター44との重なり量を減らしながら、リンク36、第一シャッター42、第一引張コイルばね46及びミドルフィニッシャ22と一体となって図中の矢印R6方向に回動する。
【0051】
これにより、図13(B)に示されるように、ミドルフィニッシャ22の背面部22Xとロアフィニッシャ26の背面部26Xとの成す角度が大きくなってロアフィニッシャ26と中間シャッター40との間に隙間G2が形成されても当該隙間G2が第二シャッター44によって塞がれる。また、本実施形態では、第二シャッター44をそのように作動させるための動力を別途設ける必要もない。
【0052】
また、本実施形態では、図5に示されるように、被押圧部52は、ロアフィニッシャ26に固定されて第二シャッター44に対して接離可能に配置された第二ゴムシート52Aを備える。このため、図9(B)に示されるように、被押圧部52においては、ロアフィニッシャ26に固定された第二ゴムシート52Aに対して第二シャッター44の直板部44A2が当接するので、被押圧部52が第二シャッター44によって当接された場合の異音が抑制される。
【0053】
また、図5に示されるリンク36が第二連結軸34の軸回りでかつミドルフィニッシャ22の背面部22Xとロアフィニッシャ26の背面部26Xとの成す角度を小さくするように図10(A)に示される矢印R7方向に回動した場合に、図10(B)に示されるように、中間シャッター40の第二半部40A2等及び第二シャッター44がロアフィニッシャ26の内側を通り、ミドル支持構成部20が図中の矢印R8方向に回動する。このとき、第二シャッター44は、第二引張コイルばね48の付勢力(矢印D参照)によって中間シャッター40と接触した第二基準位置44Xに保持される。
【0054】
また、図11には、上記において説明した図7図10に示される作動が組み合わされた状態が示されている。図11(A)では、図8に示される作動と図10に示される作動とが組み合わされた状態が示され、図11(B)では、図7に示される作動と図10に示される作動とが組み合わされた状態が示されている。また、図11(C)では、図8に示される作動と図9に示される作動とが組み合わされた状態が示され、図11(D)では、図7に示される作動と図9に示される作動とが組み合わされた状態が示されている。図7図11に示されるように、第一シャッター42及び第二シャッター44は、ダブルヒンジ30の複雑な動作と広範な作動範囲に対応して、それぞれ独立して作動する。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用シート10によれば、ダブルヒンジ30を備えた構成であっても、連結される構成部同士の間からシート内部に異物が混入するのを防止又は効果的に抑制することができる。また、本実施形態では、外観品質を損なうこともない。
【0056】
(実施形態の補足説明)
なお、上記実施形態では、図5等に示される第一引張コイルばね46及び押圧部50が設けられているが、上記実施形態の変形例として、これらが設けられずに中間シャッターと第一シャッターとの重なり量が電子制御機器等によって制御されるような構成でもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、第二引張コイルばね48及び被押圧部52が設けられているが、上記実施形態の変形例として、これらが設けられずに中間シャッターと第二シャッターとの重なり量が電子制御機器等によって制御されるような構成でもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、押圧部50は、第一カバーとしてのミドルフィニッシャ22に一体的に設けられた第一ゴムシート50Aを備えるが、上記実施形態の変形例として、押圧部は、第一カバーに一体に設けられた(つまり一体に形成された)部位もよい。
【0059】
また、上記実施形態では、被押圧部52は、第二カバーとしてのロアフィニッシャ26に一体的に設けられた第二ゴムシート52Aを備えるが、上記実施形態の変形例として、被押圧部は、第二カバーに一体に設けられた(つまり一体に形成された)部位もよい。
【0060】
なお、上記実施形態及び上述の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
【0061】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0062】
10 車両用シート
20 ミドル支持構成部(第一支持構成部)
22 ミドルフィニッシャ(第一カバー)
24 ロア支持構成部(第二支持構成部)
26 ロアフィニッシャ(第二カバー)
30 ダブルヒンジ
32 第一連結軸
34 第二連結軸
36 リンク
40 中間シャッター
42 第一シャッター
42X 第一基準位置
44 第二シャッター
44X 第二基準位置
46 第一引張コイルばね(第一引張ばね)
48 第二引張コイルばね(第二引張ばね)
50 押圧部
50A 第一ゴムシート
52 被押圧部
52A 第二ゴムシート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13