(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】ハンドルおよび離れた位置にある慣性システムを備える施錠システム
(51)【国際特許分類】
E05B 77/06 20140101AFI20230111BHJP
E05B 79/06 20140101ALI20230111BHJP
E05B 85/16 20140101ALI20230111BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20230111BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
E05B77/06 A
E05B79/06 C
E05B85/16 Z
B60J5/00 H
B60J5/04 H
(21)【出願番号】P 2020511218
(86)(22)【出願日】2018-08-17
(86)【国際出願番号】 EP2018072307
(87)【国際公開番号】W WO2019038194
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-07-20
(32)【優先日】2017-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516180070
【氏名又は名称】ユーシン イタリア ソチエタ ペル アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】アントニー ゲラン
(72)【発明者】
【氏名】シアヴァッシュ オストヴァリ‐ファー
(72)【発明者】
【氏名】アントーニオ ロッチ
(72)【発明者】
【氏名】シモーヌ イラルド
【審査官】素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-089373(JP,A)
【文献】特開2016-188515(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0322699(US,A1)
【文献】特表2010-511817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 - 85/28
B60J 5/00 - 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直面内で前縁(16)から後縁(18)まで長手方向に延びるドアリーフ(14)を備えている自動車(10)のドアリーフの施錠システム(12)であって、前記ドアリーフ(14)は、前記前縁(16)と前記後縁(18)との間で、長手方向に介在する中央部(20)を備えており、前記施錠システム(12)は、ハンドル(24)を含んでおり、前記ハンドル(24)は、
- 前記ドアリーフ(14)に固定されているフレーム(26)と、
- 少なくとも1つの休止位置と前記ドアリーフ(14)を解錠するための制御位置との間で、第1の回転軸(B)の周りに前記フレーム(26)に対して回転可能に取り付けられている把持レバー(30)と、
- 前記ドアリーフ(14)の外側に配置され、ユーザが前記把持レバー(30)を操作できるように設計されており、かつ前端部(42)と後端部(44)によって長手方向に画定されている把持部(32)と、
- 前記把持レバー(30)によって回転駆動させられる伝達レバー(34)であって、休止位置と前記伝達レバー(34)が解錠する作動位置との間で、第2の回転軸(C)の周りに前記フレーム(26)に対して枢動可能に取り付けられている伝達レバー(34)と、
- 前記フレーム(26)に取り付けられ、慣性質量(64)を支えるロッカー(58)を含む少なくとも1つの第1の慣性安全システム(28)とを備えており、
前記ロッカー(58)は、休止位置と、衝撃を受けた場合に、前記ロッカー(58)が前記伝達レバー(34)の回転を防止する阻止位置との間で、枢動可能に取り付けられている施錠システムであって、
前記把持レバー(30)の前記回転軸(B)は、前記把持部(32)の前記前端部(42)の前方で、ほぼ垂直に延びており、前記慣性質量(64)は、前記把持レバー(30)の前記回転軸(B)の前方で、
ドアリーフの長手方向に配置されていることを特徴とする施錠システム(12)。
【請求項2】
前記慣性質量(64)は、前記ドアリーフ(14)の中央部(20)と、前記把持レバー(30)の前記回転軸(B)との間で、
ドアリーフの長手方向に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の施錠システム(12)。
【請求項3】
前記把持部(32)は、その前端部(42)から後端部(44)まで長手方向に延びる細長い形状をしていることを特徴とする請求項1または2に記載の施錠システム(12)。
【請求項4】
前記伝達レバー(34)の前記第2の回転軸(C)は、前記把持レバー(30)の前記回転軸(B)に対して、横方向に直角に伸びていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の施錠システム(12)。
【請求項5】
前記ロッカー(58)は、後端部(60)から、前記慣性質量(64)を支え、かつ
、衝撃を受けた場合に、前記伝達レバー(34)の回転に対抗するために前記伝達レバー(34)によって画定されている阻止面(68)と協働するように設計された阻止フィンガ(66)を備えている前端部(62)まで長手方向に伸びており、前記ロッカー(58)は、前記ロッカー(58)の前記後端部(60)と前記前端部(62)との間に設けられた第3の垂直回転軸(D)の周りに枢動可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の施錠システム(12)。
【請求項6】
前記ドアリーフ(14)は、自動車の外側に配置されたトリミング外面(22)によって画定されており、前記把持レバー(30)がその休止位置を占めるとき、前記把持部(32)は、前記ドアリーフ(14)の前記トリミング外面(22)と同一面上にあることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の施錠システム(12)。
【請求項7】
ハンドル(24)は、慣性質量(76)を支えるロッカー(74)を含む第2の慣性安全システム(72)を備えており、ロッカー(74)は、休止位置と、衝撃を受けた場合に、ロッカーが伝達レバー(34)の回転を防止する阻止位置との間で、枢動可能に取り付けられており、第2の
慣性安全システム(72)の慣性質量(76)は、前記把持部(32)の前端部(42)の前方で、長手方向に配置されており、さらに、第2の
慣性安全システム(72)および第1の慣性安全システム(28)のそれぞれは、異なる範囲の衝撃強度に応じて作動するように設計されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の施錠システム(12)。
【請求項8】
自動車(10)のドアリーフ(14)のドアハンドルであって、前記ドアハンドルは、
- 前記ドアリーフ(14)に固定されているフレーム(26)と、
- 少なくとも1つの休止位置と前記ドアリーフ(14)を解錠するための制御位置との間で、第1の回転軸(B)の周りに前記フレーム(26)に対して回転可能に取り付けられている把持レバー(30)と、
- 前記ドアリーフ(14)の外側に配置され、ユーザが前記把持レバー(30)を操作できるように設計されており、かつ前端部(42)と後端部(44)によって長手方向に画定されている把持部(32)と、
- 前記把持レバー(30)によって回転駆動させられる伝達レバー(34)であって、休止位置と前記伝達レバー(34)が解錠する作動位置との間で、第2の回転軸(C)の周りに前記フレーム(26)に対して枢動可能に取り付けられている伝達レバー(34)と、
- 前記フレーム(26)に取り付けられ、慣性質量(64)を支えるロッカー(58)を含む少なくとも1つの第1の慣性安全システム(28)とを備えており、
前記ロッカー(58)は、休止位置と、衝撃を受けた場合に、前記ロッカー(58)が前記伝達レバー(34)の回転を防止する阻止位置との間で、枢動可能に取り付けられているドアハンドルであって、
前記把持レバー(30)の前記回転軸(B)は、前記把持部(32)の前記前端部(42)の前方で、ほぼ垂直に延びており、前記慣性質量(64)は、前記把持レバー(30)の前記回転軸(B)の前方で、
ドアリーフの長手方向に配置されていることを特徴とするドアハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアリーフおよびオフセット慣性安全システムを装備したハンドルを備える施錠システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ドアリーフに固定されたフレーム、把持レバーおよび伝達レバーを備える自動車のドアリーフのハンドルは、周知である。
【0003】
把持レバーは、ドアリーフを開けるためにユーザが把持することができるドアリーフの外側に配置された把持部を備えている。
【0004】
この目的を達成するために、把持レバーは、少なくとも1つの休止位置とドアリーフを解錠するための制御位置との間で、第1の軸の周りにフレームに対して回転可能に取り付けられている。
【0005】
また、伝達レバーは、休止位置と伝達レバーが解錠する作動位置との間で、第2の回転軸の周りにフレームに対して枢動可能に取り付けられており、伝達レバーは、把持レバーによって回転駆動させられる。
【0006】
安全上の配慮から、自動車が衝撃を受けた場合に、ハンドルが誤作動しないように、慣性安全システムをハンドルに設けることは知られている。
【0007】
特に、特許文献1に記載されている慣性安全システムは知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【0009】
この慣性安全システムは、慣性質量を支える第1端部から阻止フィンガを形成する第2端部まで延びるロッカーを含んでいる。
【0010】
ロッカーは、休止位置と、ロッカーの阻止フィンガが作動レバーの経路上に配置されている阻止位置との間で枢動可能に取り付けられており、これにより、阻止フィンガは、作動レバーの阻止面と協働して、伝達レバーの回転、したがってドアリーフの開放を防止している。
【0011】
ロッカーの旋回は、自動車が衝撃を受けた場合に、慣性質量に加えられる加速力によって引き起こされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載されているハンドルは、効果的な慣性システムを有しているけれども、慣性システムの応答性を向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のために、本発明は、垂直面内で前縁から後縁まで長手方向に延びるドアリーフを備えている自動車のドアリーフの施錠システムに関し、前記ドアリーフは、前記前縁と前記後縁との間で、長手方向に介在する中央部を備えており、前記施錠システムは、ハンドルを含んでおり、前記ハンドルは、
- 前記ドアリーフに固定されているフレームと、
- 少なくとも1つの休止位置と前記ドアリーフを解錠するための制御位置との間で、第1の軸の周りに前記フレームに対して回転可能に取り付けられている把持レバーと、
- 前記ドアリーフの外側に配置され、ユーザが前記把持レバーを操作できるように設計されており、かつ前端部と後端部によって長手方向に画定されている把持部と、
- 前記把持レバーによって回転駆動させられる伝達レバーであって、休止位置と前記伝達レバーが解錠する作動位置との間で、第2の回転軸の周りに前記フレームに対して枢動可能に取り付けられている伝達レバーと、
- 前記フレームに取り付けられ、慣性質量を支えるロッカーを含む少なくとも1つの第1の慣性安全システムとを備えており、
前記ロッカーは、休止位置と、衝撃を受けた場合に、前記ロッカーが前記伝達レバーの回転を防止する阻止位置との間で、枢動可能に取り付けられている施錠システムであって、
前記慣性質量が前記把持部の前記前端部の前方で、長手方向に配置されていることを特徴としている。
【0014】
慣性質量を把持部の前方に位置させることにより、慣性質量をドアリーフの中央部に近づけることができる。
【0015】
尚、自動車と障害物との激しい衝撃の際に、ドアリーフの中央部は、ドアリーフの周辺部よりも柔軟性がより大きいため、ドアリーフの周辺部よりも速く変形する。
【0016】
言い換えると、ドアリーフの中央部は、ドアリーフの周辺部よりも大きい加速度を有しており、慣性安全システムのロッカーがすばやく応答するようになる。
【0017】
したがって、慣性安全システムの慣性質量がドアリーフの中央部の近くに位置しているほど、慣性安全システムは、ドアリーフの開放機構の開放をすばやく阻止するようになる。
【0018】
別の特徴によれば、前記把持レバーの前記回転軸は、通常、前記把持部の前端部の前方で、垂直に延在し、前記慣性質量は、前記把持レバーの前記回転軸の前方で、長手方向に配置されている。
【0019】
この配置の特徴により、慣性質量をドアリーフの中央部に近づけることができる。
【0020】
別の特徴によれば、前記慣性質量は、前記ドアリーフの中央部と、前記把持レバーの前記回転軸との間で、長手方向に配置されている。
【0021】
また、この配置の特徴により、慣性質量をドアリーフの中央部に近づけることができる。
【0022】
別の特徴によれば、前記把持部は、その前端部から後端部まで長手方向に延びる細長い形状をしている。
【0023】
別の特徴によれば、前記伝達レバーの前記第2の回転軸は、前記把持レバーの前記回転軸に対して、横方向に直角に伸びている。
【0024】
別の特徴によれば、前記ロッカーは、後端部から、前記慣性質量を支え、かつ、衝撃を受けた場合に、前記伝達レバーの回転に対抗するために前記伝達レバーによって画定されている阻止面と協働するように設計された阻止フィンガを備えている前端部まで長手方向に伸びており、前記ロッカーは、前記ロッカーの前記後端部と前記前端部との間に設けられた第3の垂直回転軸の周りに枢動可能に取り付けられている。
【0025】
別の特徴によれば、前記ドアリーフは、自動車の外側に配置されたトリミング外面によって画定されており、前記把持レバーがその休止位置を占めるとき、前記把持部は、前記ドアリーフの前記トリミング外面と同一面上にある。
【0026】
別の特徴によれば、ハンドルは、慣性質量を支えるロッカーを含む第2の慣性安全システムを備えており、ロッカーは、休止位置と、衝撃を受けた場合に、ロッカーが伝達レバーの回転を防止する阻止位置との間で、枢動可能に取り付けられており、第2の安全システムの慣性質量は、前記把持部の前端部の前方で、長手方向に配置されており、さらに、第2の慣性安全システムおよび第1の慣性安全システムのそれぞれは、異なる範囲の衝撃強度に応じて作動するように設計されている。
【0027】
この特徴により、幅広い用途の施錠システムを提案することができる。
【0028】
本発明は、また、前述のタイプの施錠システムを備えるドアハンドルに関する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明による施錠システムに関するハンドルおよび自動車のドアリーフの模式的な斜視図である。
【
図2】ハンドルのフレームと共に、休止位置における
図1のハンドルの把持レバーおよび第1の慣性安全システムの正面図である。
【
図3】フレームを表示しない、休止位置における伝達レバーの背面図である。
【
図4】フレームを表示しない、作動位置における伝達レバーの背面図である。
【
図5】フレームを表示しない、制御位置における伝達レバーの背面図である。
【
図6】制御位置にある把持レバーおよび作動位置にある伝達レバーの詳細斜視図である。
【
図7】休止位置におけるロッカーおよび休止位置における伝達レバーの詳細斜視図である。
【
図8】休止位置におけるロッカーおよび作動位置における伝達レバーの詳細斜視図である。
【
図9】阻止位置におけるロッカーおよび休止位置における伝達レバーの詳細斜視図である。
【
図10】阻止位置におけるロッカーおよび被阻止位置における伝達レバーの詳細斜視図である。
【
図13】本発明による第2の慣性安全システムの詳細斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の他の特徴および利点は、添付図面を参照して、本発明を理解するための以下の詳細な説明から明らかになると思う。
【0031】
本明細書では、「頂部の」、「底部の」、「上方の」、「下方の」、「水平の」、「垂直の」という用語、およびそれらの派生語は、構成要素の位置または方向を指しており、この位置または方向は、自動車が水平の地上で使用状態にあるときのものである。
【0032】
さらに、明細書および特許請求の範囲を明確にするために、図に示す三軸L、V、Tをもって、それぞれ、長手方向、垂直方向、および横方向を、非限定的に示している。
【0033】
これらの図のすべてにおいて、同一または類似の符号は、同一または類似の部材、または部材の集まりを表している。
【0034】
本明細書において、「前」および「後」という語は、自動車の長手方向、すなわち、
図1において左から右方向である。
【0035】
図1は、本発明によるドアリーフの施錠システム12を備える自動車10を示している。
【0036】
施錠システム12は、垂直面内で前縁16から後縁18まで長手方向に延びるドアリーフ14を備えており、このドアリーフ14は、前縁16と後縁18との間に長手方向に設置された中央部20を備えている。
【0037】
ドアリーフ14は、自動車の外側に配置されたトリミング外面22によって画定されている。
【0038】
また、ドアリーフ14は、
図1に示す閉位置と、ドアリーフ14の前縁16の近傍で、垂直方向を向く開閉軸Aの周りの開位置との間で枢動可能に取り付けられている。
【0039】
図2~
図4を参照すると、施錠システム12は、フレーム26を備えるハンドル24、ドアリーフ14の錠36の解錠機構、第1の慣性安全システム28を含んでおり、これらは、障害物によって自動車10に激しい衝撃が生じた場合に、ドアリーフ14が妄りに開くのを防ぐことを目的としている。
【0040】
フレーム26は、通常、ドアリーフ14の平面内に位置し、例えばネジ(図示せず)によってドアリーフの構造体(図示せず)に固定されるプレート状をしている。
【0041】
錠36の解錠機構は、把持レバー30、把持部32、および伝達レバー34を備えている。
【0042】
図2および
図3に示す休止位置と、
図4および
図5に示すドアリーフ14の錠36を解錠するための制御位置との間で、把持レバー30は、垂直な第1の回転軸Bの周りにフレーム26に対して回転可能に取り付けられている。
【0043】
把持レバー30は、把持レバー30の回転軸Bの周りに垂直に延在しており、フレーム26に連結されたコイルバネ38によって、その休止位置に向かって弾性的に付勢されている。
【0044】
相補的に、把持部32は、ユーザが把持レバー30を作動することができるように設計されている。
【0045】
この目的を達成するために、
図1に示すように、把持部32は、ドアリーフ14のトリミング外面22によって形成されているハウジング40内のドアリーフ14の外側に配置されており、ユーザが把持部32を作動させて把持レバー30を回転駆動させるために、把持部32は、把持レバー30に固定されている。
【0046】
把持部32は、前端部42から後端部44まで長手方向に延びる細長いハンドルの形状をしている。
【0047】
図2および
図4~
図6では、把持部32は、トリミングキャップなしで示されているが、このトリミングキャップは、把持レバー30が休止位置を占めるときに、ドアリーフのトリミング外面22と同一面上にあることに留意されたい。
【0048】
また、ドアリーフ14を解錠するために、把持レバー30は、その動きにより伝達レバー34を駆動するようになっている。
【0049】
この目的のために、伝達レバー34は、
図2および
図3に示す休止位置と
図4および
図5に示す作動位置との間で、第2の回転横軸Cの周りに、フレーム26に対して枢動可能に取り付けられており、伝達レバー34は、ドアリーフ14を解錠する。
【0050】
さらに、
図6に示すように、把持レバー30の前端部48は、通常、球状のプロフィール51を有するカム50を画定している。
【0051】
相補的に、伝達レバー34の後端部52は、カム50の向かい側に横方向に延びる軸受面56を画定する従動子54を含んでいる。
【0052】
カム50および従動子54は、垂直の回転軸Bの周りの把持レバー30の回転運動を、横軸Cの周りの伝達レバー34の回転運動に変換するために配置されている。
【0053】
本発明の好ましい実施形態によれば、ハンドル24は、「フラッシュ」ハンドルとも呼ばれるフラッシュタイプのものである。すなわち、把持レバー30が休止位置を占めるとき、把持部32は、ドアリーフ14のトリミング外面22と同一面上にあり、ドアリーフ14のトリミング外面22と視覚的に融合している。
【0054】
このタイプのハンドル24は、欧州特許出願公開第3106596号明細書に記載されているので、さらなる詳細についてはこれを参照されたい。
【0055】
別の態様によれば、慣性安全システム28は、後端部60から慣性質量64を支える前端部62まで、長手方向に延びる
図11および12に詳細に表されているロッカー58を含んでいる。
【0056】
ロッカー58の前端部62は、前方へ長手方向に突出し、ロッカー58の第3の回転軸Dに対して、半径方向かつ直角方向に延びる阻止面67を画定する阻止フィンガ66を備えている。
【0057】
図10に示すように、自動車10に衝撃が生じた場合に、伝達レバー34が休止位置から作動位置へ回転することに対抗させるため、ロッカー58の阻止面67は、通常、ロッカー58の阻止面67と平行をなす伝達レバー34によって画定された阻止面68と協働するように設計されている。
【0058】
この目的を達成するために、ロッカー58は、
図7および
図8に示す休止位置と、ロッカー58の阻止フィンガ66が伝達レバー34の経路上に位置している
図9および
図10に示す阻止位置との間で、第3の垂直回転軸Dの周りに枢動可能に取り付けられている。これにより伝達レバー34の阻止面68がロッカー58の阻止フィンガ66に当接し、伝達レバー34の回転が妨げられ、ドアリーフ14の開放を阻止するようになる。
【0059】
ロッカー58の回転軸Dは、ロッカー58の後端部60と前端部62との間に設けられている。
【0060】
本発明の好ましい実施形態によれば、慣性安全システム28は、可逆的である。すなわち、慣性安全システム28の作動に続いて、短時間でドアリーフ14を開くことができるようにするために、ロッカー58は、一時的に阻止位置を占めている。
【0061】
この目的のため、
図11を参照すると、ロッカー58は、ロッカー58の回転軸Dの周りに延在し、フレームと協働して、ロッカー58を阻止位置から休止位置へ弾性的に付勢するコイルバネ70を備えている。
【0062】
したがって、ロッカー58に加えられた加速度がゼロになると、ロッカー58は、初期の休止位置へ弾性的に付勢される。
【0063】
慣性質量64の加速度が、例えば5G~15Gの間に含まれる第1の値の範囲内にあるとき、ロッカー58は、その休止位置から阻止位置まで駆動するように設計されている。なお、加速度単位Gは、9.80665ms-2である。
【0064】
したがって、第1の慣性安全システム28は、非常に応答が早く、阻止位置へ素早く移行する。
【0065】
本発明の別の態様によれば、
図2、
図3および
図5に示すように、ロッカー58の慣性質量64は、把持部32の前端部42の前方で長手方向に配置されている。
【0066】
より具体的には、ロッカー58の慣性質量64は、把持レバー30の回転軸Bの前方で長手方向に配置されており、把持レバー30の回転軸Bは、把持部32の前端部42の前方に配置されている。
【0067】
一般に、
図1に示すように、慣性質量64は、ドアリーフ14の中央部20と把持レバー30の回転軸Bとの間で、長手方向に配置されている。
【0068】
実際、自動車と障害物との激しい衝撃により、ドアリーフ14の中央部20は、ドアリーフ14の周辺部よりも柔軟性がより大きいため、ドアリーフ14の周辺部よりも速い速度で変形する。
【0069】
したがって、慣性安全システム28の慣性質量64がドアリーフ14の中央部20の近くに位置しているほど、慣性安全システム28は、ドアリーフ14の開放機構の開放をすばやく阻止するようになる。
【0070】
図13に示す本発明の代替実施形態によれば、ハンドル24は、慣性質量76を支えるロッカー74を備える第2の慣性安全システム72を含んでいる。
【0071】
ロッカー74が伝達レバー34の作動位置までの回転を可能にする
図13に示す休止位置と、衝撃が生じた場合に、ロッカー74が伝達レバー34の回転を防止する阻止位置(図示せず)との間で、ロッカー74は、垂直の回転軸Eの周りに枢動可能に取り付けられている。
【0072】
第2の慣性安全システム72の慣性質量76は、第1の慣性安全システム28について前述したことと同じ理由で、把持部32の前端部42の前方に長手方向に配置されている。
【0073】
さらに、第2の慣性安全システム72および第1の慣性安全システム28のそれぞれは、異なる範囲の衝撃強度に応答して作動するように設計されている。
【0074】
好ましいことに、第2の慣性安全システム72は、不可逆的タイプのシステムである。すなわち、ロッカー74は、加速度を受けた後、その阻止位置に留まっている。
【0075】
このタイプの不可逆的慣性システムの詳細については、国際公開第2006/003197号を参照のこと。
【0076】
本発明の上記の説明は、非限定的な実施例に基づくものである。
【0077】
機械的な構成要素を単に移動させることは、本発明に含まれるものであることを理解するべきである。
【0078】
例えば、第1の慣性安全システム28のロッカー58は、把持レバー30の回転、または伝達レバー34の回転、またはドアリーフ14の開放の運動学的連鎖の他の要素を、相互に無関係に阻止することができる。
【0079】
第1の慣性安全システム28のロッカー58の回転軸D、把持レバー30の回転軸B、および第2の慣性安全システム72のロッカー74の回転軸Eは、すべて平行である。
【符号の説明】
【0080】
10 自動車
12 施錠システム
14 ドアリーフ
16 前縁
18 後縁
20 中央部
22 トリミング外面
24 ハンドル
26 フレーム
28 第1の慣性安全システム
30 把持レバー
32 把持部
34 伝達レバー
36 錠
38 コイルバネ
40 ハウジング
42 前端部
44 後端部
48 前端部
50 カム
51 プロフィール
52 後端部
54 従動子
56 軸受面
58 ロッカー
60 後端部
62 前端部
64 慣性質量
66 阻止フィンガ
67 阻止面
68 阻止面
70 コイルバネ
72 第2の慣性安全システム
74 ロッカー
76 慣性質量
A 開閉軸
B 第1の回転軸
C 第2の回転軸
D 第3の回転軸
E 回転軸