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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】ドリル
(51)【国際特許分類】
   B23B 51/00 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
B23B51/00 S
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022567118
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(86)【国際出願番号】 JP2022023991
【審査請求日】2022-11-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503212652
【氏名又は名称】住友電工ハードメタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 直宏
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-53783(JP,A)
【文献】特開2003-136317(JP,A)
【文献】特開昭63-237807(JP,A)
【文献】特開平6-15512(JP,A)
【文献】特開2018-114589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線の周りを回転するドリルであって、
切刃と、
前記切刃に連なるねじれ溝面と、
前記切刃の最外周端よりも回転方向後方に位置し、かつ前記切刃の直径よりも大きな直径を有する第1外周マージン面と、
前記第1外周マージン面と前記ねじれ溝面との間に位置し、前記最外周端に連なりかつ前記ねじれ溝面のリーディングエッジに沿って形成されたアプローチ面と、を備え、
前記軸線に沿った方向に見て、前記アプローチ面は、前記第1外周マージン面に対して傾斜しており、
前記軸線に平行な方向における前記アプローチ面の長さは、前記第1外周マージン面の直径の0.5倍以上であり、
前記第1外周マージン面の直径から前記切刃の直径を差し引いた値は、0.01mm以上0.08mm以下であり、
前記軸線に沿った方向に見て、前記アプローチ面の幅は、0.1mm以上0.4mm以下である、ドリル。
【請求項2】
前記軸線に沿った方向に見て、前記第1外周マージン面に対する前記アプローチ面の傾斜角は、3°以上15°以下である、請求項1に記載のドリル。
【請求項3】
前記ドリルの芯厚は、前記第1外周マージン面の直径の28%以上40%以下であり、
前記軸線に垂直な断面において、前記ねじれ溝面の中心角は、前記ねじれ溝面以外の部分の中心角の0.5倍以上1倍以下である、請求項1または請求項2に記載のドリル。
【請求項4】
前記第1外周マージン面から離間し、かつ前記第1外周マージン面よりも回転方向後方に位置する第2外周マージン面をさらに備え、
前記軸線に沿った方向に見て、前記第1外周マージン面および前記第2外周マージン面の各々の幅は、前記第1外周マージン面の直径の5%以上20%以下であり、
前記軸線に平行な方向において、前記第2外周マージン面の前端は、前記第1外周マージン面の前端よりも軸方向の後方に位置しており、前記第1外周マージン面に対する前記第2外周マージン面の後退量は、前記第1外周マージン面の直径の2%以上10%以下である、請求項1または請求項2に記載のドリル。
【請求項5】
前記切刃に連なる逃げ面と、
前記第1外周マージン面と前記第2外周マージン面との間にある外周中間面と、をさらに備え、
前記逃げ面は、第1逃げ面部と、前記第1逃げ面部よりも外周側に位置し、前記第1逃げ面部に対して傾斜し、かつ前記第1逃げ面部に連なる第1チャンファー面部とを有し、
前記第1チャンファー面部は、前記外周中間面に連なっている、請求項に記載のドリル。
【請求項6】
前記逃げ面は、前記第1逃げ面部よりも回転方向後方に位置し、かつ前記第1逃げ面部に連なる第2逃げ面部と、前記第2逃げ面部よりも回転方向後方に位置し、かつ前記第2外周マージン面に連なる第2チャンファー面部を有している、請求項に記載のドリル。
【請求項7】
前記切刃に連なる逃げ面をさらに備え、
前記逃げ面は、第1逃げ面部と、前記第1逃げ面部よりも外周側に位置し、前記第1逃げ面部に対して傾斜し、かつ前記第1逃げ面部に連なる第1チャンファー面部とを有し、
前記切刃は、前記第1逃げ面部に連なる主切刃部と、前記第1チャンファー面部に連なるチャンファー切刃部とを有し、
前記軸線の周りに前記ドリルを回転させた場合に、前記軸線を含む平面に前記切刃を投影させた回転投影面において、前記軸線の回転軌跡と前記チャンファー切刃部の回転軌跡とがなす角度は、15°以上45°以下である、請求項1または請求項2に記載のドリル。
【請求項8】
前記軸線に平行な方向における前記チャンファー切刃部の長さは、前記第1外周マージン面の直径の3%以上10%以下である、請求項に記載のドリル。
【請求項9】
前記切刃に連なる逃げ面をさらに備え、
前記逃げ面には、クーラント供給孔が設けられている、請求項1または請求項2に記載のドリル。
【請求項10】
前記第1外周マージン面から離間し、かつ前記第1外周マージン面よりも回転方向後方に位置する第2外周マージン面をさらに備え、
記軸線に沿った方向に見て、前記第1外周マージン面に対する前記アプローチ面の傾斜角は、3°以上15°以下であり、
前記軸線に沿った方向に見て、前記第1外周マージン面および前記第2外周マージン面の各々の幅は、前記第1外周マージン面の直径の5%以上20%以下であり、
前記軸線に平行な方向において、前記第2外周マージン面の前端は、前記第1外周マージン面の前端よりも軸方向の後方に位置しており、前記第1外周マージン面に対する前記第2外周マージン面の後退量は、前記第1外周マージン面の直径の2%以上10%以下である、請求項1に記載のドリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドリルに関する。
【背景技術】
【0002】
特開平6-15512号公報(特許文献1)には、マージン部が形成されたドリルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-15512号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示に係るドリルは、軸線の周りを回転するドリルであって、切刃と、ねじれ溝面と、第1外周マージン面と、アプローチ面と、を備えている。ねじれ溝面は、切刃に連なっている。第1外周マージン面は、切刃の最外周端よりも回転方向後方に位置し、かつ切刃の直径よりも大きな直径を有している。アプローチ面は、第1外周マージン面とねじれ溝面との間に位置し、最外周端に連なりかつねじれ溝面のリーディングエッジに沿って形成されている。軸線に沿った方向に見て、アプローチ面は、第1外周マージン面に対して傾斜している。軸線に平行な方向におけるアプローチ面の長さは、第1外周マージン面の直径の0.5倍以上である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、第1実施形態に係るドリルの構成を示す平面模式図である。
図2図2は、第1実施形態に係るドリルの構成を示す正面模式図である。
図3図3は、図2の領域IIIの拡大正面図である。
図4図4は、第1実施形態に係るドリルの前端部を示す斜視模式図である。
図5図5は、図1の領域Vの拡大模式図である。
図6図6は、軸線の周りにドリルを回転させた場合において、軸線を含む回転投影面に切刃を回転投影させた状態を示す模式図である。
図7図7は、図1のVII-VII線に沿った断面模式図である。
図8図8は、第2実施形態に係るドリルの構成を示す正面模式図である。
図9図9は、第2実施形態に係るドリルの構成を示す平面模式図である。
図10図10は、サンプル1に係るドリルを用いて形成した穴の径を示している。
図11図11は、サンプル2に係るドリルを用いて形成した穴の径を示している。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
本開示の目的は、高精度の穴加工が可能なドリルを提供することである。
【0007】
[本開示の効果]
本開示によれば、高精度の穴加工が可能なドリルを提供することができる。
【0008】
[本開示の実施形態の概要]
まず、本開示の実施形態の概要について説明する。
【0009】
(1)本開示に係るドリル100は、軸線Xの周りを回転するドリル100であって、切刃3と、ねじれ溝面5と、第1外周マージン面10と、アプローチ面8と、を備えている。ねじれ溝面5は、切刃3に連なっている。第1外周マージン面10は、切刃3の最外周端よりも回転方向後方に位置し、かつ切刃3の直径よりも大きな直径を有している。アプローチ面8は、第1外周マージン面10とねじれ溝面5との間に位置し、最外周端に連なりかつねじれ溝面5のリーディングエッジ7に沿って形成されている。軸線Xに沿った方向に見て、アプローチ面8は、第1外周マージン面10に対して傾斜している。軸線Xに平行な方向におけるアプローチ面8の長さは、第1外周マージン面10の直径の0.5倍以上である。
【0010】
(2)上記(1)に係るドリル100によれば、第1外周マージン面10の直径から切刃3の直径を差し引いた値は、0.01mm以上0.08mm以下であってもよい。軸線Xに沿った方向に見て、アプローチ面8の幅は、0.1mm以上0.4mm以下であってもよい。
【0011】
(3)上記(1)または(2)に係るドリル100によれば、軸線Xに沿った方向に見て、第1外周マージン面10に対するアプローチ面8の傾斜角は、3°以上15°以下であってもよい。
【0012】
(4)上記(1)から(3)のいずれかに係るドリル100によれば、ドリル100の芯厚は、第1外周マージン面10の直径の28%以上40%以下であってもよい。軸線Xに垂直な断面において、ねじれ溝面5の中心角は、ねじれ溝面5以外の部分の中心角の0.5倍以上1倍以下であってもよい。
【0013】
(5)上記(4)に係るドリル100によれば、第1外周マージン面10から離間し、かつ第1外周マージン面10よりも回転方向後方に位置する第2外周マージン面20をさらに備えていてもよい。軸線Xに沿った方向に見て、第1外周マージン面10および第2外周マージン面20の各々の幅は、第1外周マージン面10の直径の5%以上20%以下であってもよい。軸線Xに平行な方向において、第2外周マージン面20の前端は、第1外周マージン面10の前端よりも軸方向の後方に位置していてもよい。第1外周マージン面10に対する第2外周マージン面20の後退量は、第1外周マージン面10の直径の2%以上10%以下であってもよい。
【0014】
(6)上記(5)に係るドリル100によれば、切刃3に連なる逃げ面40と、第1外周マージン面10と第2外周マージン面20との間にある外周中間面4と、をさらに備えていてもよい。逃げ面40は、第1逃げ面部43と、第1逃げ面部43よりも外周側に位置し、第1逃げ面部43に対して傾斜し、かつ第1逃げ面部43に連なる第1チャンファー面部41とを有していてもよい。第1チャンファー面部41は、外周中間面4に連なっていてもよい。
【0015】
(7)上記(6)に係るドリル100によれば、逃げ面40は、第1逃げ面部43よりも回転方向後方に位置し、かつ第1逃げ面部43に連なる第2逃げ面部44と、第2逃げ面部44よりも回転方向後方に位置し、かつ第2外周マージン面20に連なる第2チャンファー面部42を有していてもよい。
【0016】
(8)上記(1)から(5)のいずれかに係るドリル100によれば、切刃3に連なる逃げ面40をさらに備えていてもよい。逃げ面40は、第1逃げ面部43と、第1逃げ面部43よりも外周側に位置し、第1逃げ面部43に対して傾斜し、かつ第1逃げ面部43に連なる第1チャンファー面部41とを有していてもよい。切刃3は、第1逃げ面部43に連なる主切刃部32と、第1チャンファー面部41に連なるチャンファー切刃部33とを有していてもよい。軸線Xの周りにドリル100を回転させた場合に、軸線Xを含む平面に切刃3を投影させた回転投影面において、軸線Xの回転軌跡とチャンファー切刃部33の回転軌跡とがなす角度は、15°以上45°以下であってもよい。
【0017】
(9)上記(8)に係るドリル100によれば、軸線Xに平行な方向におけるチャンファー切刃部33の長さは、第1外周マージン面10の直径の3%以上10%以下であってもよい。
【0018】
(10)上記(1)から(5)のいずれかに係るドリル100によれば、切刃3に連なる逃げ面40をさらに備えていてもよい。逃げ面40には、クーラント供給孔30が設けられていてもよい。
【0019】
(11)上記(1)に係るドリル100によれば、第1外周マージン面10から離間し、かつ第1外周マージン面10よりも回転方向後方に位置する第2外周マージン面20をさらに備えていてもよい。第1外周マージン面10の直径から切刃3の直径を差し引いた値は、0.01mm以上0.08mm以下であってもよい。軸線Xに沿った方向に見て、アプローチ面8の幅は、0.1mm以上0.4mm以下であってもよい。軸線Xに沿った方向に見て、第1外周マージン面10に対するアプローチ面8の傾斜角は、3°以上15°以下であってもよい。軸線Xに沿った方向に見て、第1外周マージン面10および第2外周マージン面20の各々の幅は、第1外周マージン面10の直径の5%以上20%以下であってもよい。軸線Xに平行な方向において、第2外周マージン面20の前端は、第1外周マージン面10の前端よりも軸方向の後方に位置しており、第1外周マージン面10に対する第2外周マージン面20の後退量は、第1外周マージン面10の直径の2%以上10%以下であってもよい。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、図面に基づいて本開示の実施形態(以降、本実施形態とも称する)の詳細について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0021】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係るドリル100の構成について説明する。図1は、第1実施形態に係るドリル100の構成を示す平面模式図である。図1に示されるように、第1実施形態に係るドリル100は、前端1と、後端2と、逃げ面40と、シンニング面6と、外周面9と、ねじれ溝面5と、シャンク17とを主に有している。第1実施形態に係るドリル100は、金属加工用のドリル100である。図1に示されるように、外周面9は、軸線Xの周りを螺旋状に設けられている。外周面9は、ねじれ溝面5に連なっている。ねじれ溝面5は、フルートを構成する。ねじれ溝面5は、軸線Xの周りを螺旋状に設けられている。切刃3はドリル100の前端1に近い位置に設けられている。
【0022】
ドリル100の前端1は、被削材に対向する部分である。ドリル100の後端2は、ドリル100を回転させる工具主軸に対向する部分である。シャンク17は、工具主軸に取り付けられる部分である。軸線Xは、前端1と後端2とを通っている。ドリル100は、軸線Xの周りを回転する。軸線Xに沿った方向は、軸方向である。軸方向に対して垂直な方向は、径方向である。本明細書においては、前端1から後端2に向かう方向を軸方向の後方と称する。反対に、後端2から前端1に向かう方向を軸方向の前方と称する。径方向に平行であって、軸線Xから離れる方向を外周側と称する。
【0023】
図2は、第1実施形態に係るドリル100の構成を示す正面模式図である。図2に示されるように、逃げ面40は、切刃3に連なっている。逃げ面40とねじれ溝面5との稜線は、切刃3を構成する。切刃3に近いねじれ溝面5は、すくい面として機能する。逃げ面40は、第1逃げ面部43と、第1チャンファー面部41と、第2逃げ面部44と、第2チャンファー面部42とを有している。
【0024】
第1逃げ面部43は、切刃3に連なっている。第1チャンファー面部41は、第1逃げ面部43に連なっている。第1チャンファー面部41は、第1逃げ面部43よりも外周側に位置している。第1チャンファー面部41は、第1逃げ面部43に対して傾斜している。第2逃げ面部44は、第1逃げ面部43よりも回転方向後方に位置している。第2逃げ面部44は、第1逃げ面部43に連なっている。第2逃げ面部44は、第1逃げ面部43に対して傾斜している。第2チャンファー面部42は、第2逃げ面部44よりも回転方向後方に位置している。第2チャンファー面部42は、第2逃げ面部44に連なっている。第2チャンファー面部42は、第2逃げ面部44に対して傾斜している。
【0025】
ドリル100の外周面9は、第1外周マージン面10と、第2外周マージン面20と、外周中間面4と、第1側面11と、第2側面12とを有している。第2外周マージン面20は、第1外周マージン面10から離間している。第2外周マージン面20は、第1外周マージン面10よりも回転方向後方に位置している。回転方向において、外周中間面4は、第1外周マージン面10と、第2外周マージン面20との間に位置している。第1側面11は、第1外周マージン面10および外周中間面4の各々に連なっている。径方向において、第1側面11は、第1外周マージン面10と外周中間面4との間に位置している。第2側面12は、第2外周マージン面20および外周中間面4の各々に連なっている。径方向において、第2側面12は、第2外周マージン面20と外周中間面4との間に位置している。
【0026】
図2に示されるように、軸線Xに沿った方向に見て、第1外周マージン面10の幅は、第1幅W1とする。第1幅W1は、たとえば第1外周マージン面10の直径の5%以上20%以下である。軸線Xに沿った方向に見て、第1外周マージン面10の形状は、円弧状である。第1外周マージン面10の幅は、円弧状の第1外周マージン面10の両端を繋ぐ線分の長さである。第1幅W1の下限は、特に限定されないが、たとえば第1外周マージン面10の直径の7%以上であってもよいし、9%以上であってもよい。第1幅W1の上限は、特に限定されないが、たとえば第1外周マージン面10の直径の18%以下であってもよいし、16%以下であってもよい。
【0027】
図2に示されるように、軸線Xに沿った方向に見て、第2外周マージン面20の幅は、第2幅W2とする。第2幅W2は、たとえば第1外周マージン面10の直径の5%以上20%以下である。軸線Xに沿った方向に見て、第2外周マージン面20の形状は、円弧状である。第2外周マージン面20の幅は、円弧状の第2外周マージン面20の両端を繋ぐ線分の長さである。第2幅W2の下限は、特に限定されないが、たとえば第1外周マージン面10の直径の7%以上であってもよいし、9%以上であってもよい。第2幅W2の上限は、特に限定されないが、たとえば第1外周マージン面10の直径の18%以下であってもよいし、16%以下であってもよい。
【0028】
第1外周マージン面10は、第1チャンファー面部41に連なっている。第1チャンファー面部41は、第1逃げ面部43および第2逃げ面部44の各々に連なっている。第1チャンファー面部41は、外周中間面4に連なっていてもよい。第2外周マージン面20は、第2チャンファー面部42に連なっている。第2チャンファー面部42は、外周中間面4に連なっていてもよい。逃げ面40には、クーラント供給孔30が設けられていてもよい。クーラント供給孔30は、第2逃げ面部44において開口していてもよい。
【0029】
図2に示されるように、切刃3は、ねじれ溝面5に連なっている。切刃3は、シンニング切刃部31と、主切刃部32と、チャンファー切刃部33とを有している。主切刃部32は、シンニング切刃部31に連なっている。主切刃部32は、シンニング切刃部31の外周側に位置している。チャンファー切刃部33は、主切刃部32に連なっている。チャンファー切刃部33は、主切刃部32の外周側に位置している。主切刃部32は、第1逃げ面部43に連なっている。チャンファー切刃部33は、第1チャンファー面部41に連なっている。
【0030】
図3は、図2の領域IIIの拡大正面図である。第1実施形態に係るドリル100は、アプローチ面8を有している。アプローチ面8は、切刃3の最外周端において、チャンファー切刃部33に連なっている。図3に示されるように、軸線Xに沿った方向に見て、アプローチ面8は、チャンファー切刃部33に対して傾斜している。アプローチ面8は、チャンファー切刃部33よりも回転方向後方に位置している。第1外周マージン面10は、アプローチ面8に連なっている。第1外周マージン面10は、アプローチ面8よりも回転方向後方に位置している。第1外周マージン面10は、切刃3の最外周端よりも回転方向後方に位置している。アプローチ面8は、切刃3の最外周端と第1外周マージン面10との間に位置している。
【0031】
図3に示されるように、軸線Xに沿った方向に見て、切刃3の直径は、第2直径D2とする。第1外周マージン面10の直径は、第1直径D1とする。第1直径D1は、第2直径D2よりも大きい。軸線Xに沿った方向に見て、第2直径D2は、切刃3の最外周端と軸線Xとの距離の2倍である。軸線Xに沿った方向に見て、第1直径D1は、第1外周マージン面10と軸線Xとの距離の2倍である。
【0032】
第1直径D1から第2直径D2を差し引いた値は、たとえば0.01mm以上0.08mm以下である。第1直径D1から第2直径D2を差し引いた値の下限は、特に限定されないが、たとえば0.02mm以上であってもよいし、0.03mm以上であってもよい。第1直径D1から第2直径D2を差し引いた値の下限は、特に限定されないが、たとえば0.06mm以下であってもよいし、0.05mm以下であってもよい。
【0033】
軸線Xに沿った方向に見て、チャンファー切刃部33とアプローチ面8との境界部は、第1境界部51とする。回転方向において、第1境界部51は、アプローチ面8の前方端部である。第1境界部51は、切刃3の最外周端に対応する。軸線Xに沿った方向に見て、アプローチ面8と第1外周マージン面10との境界部は、第2境界部52とする。回転方向において、第2境界部52は、アプローチ面8の後方端部であり、かつ第1外周マージン面10の前方端部である。軸線Xに沿った方向に見て、第1外周マージン面10と第1側面11との境界部は、第3境界部53とする。回転方向において、第3境界部53は、第1外周マージン面10の後方端部である。
【0034】
図3に示されるように、軸線Xに沿った方向に見て、アプローチ面8は、第1外周マージン面10に対して傾斜している。言い換えれば、軸線Xに沿った方向に見て、第1境界部51と第2境界部52とを通る直線は、第2境界部52での第1外周マージン面10の接線に対して傾斜している。軸線Xに沿った方向に見て、軸線Xと第2境界部52との距離は、軸線Xと第1境界部51との距離よりも大きい。
【0035】
軸線Xに沿った方向に見て、第1外周マージン面10に対するアプローチ面8の傾斜角は、第1角度θ1とする。具体的には、第1角度θ1は、第2境界部52での第1外周マージン面10の接線に対する第1境界部51と第2境界部52とを通る直線の傾斜角である。第1角度θ1は、たとえば3°以上15°以下である。第1角度θ1の下限は、特に限定されないが、たとえば5°以上であってもよいし、7°以上であってもよい。第1角度θ1の上限は、特に限定されないが、たとえば12°以下であってもよいし、8°以下であってもよい。
【0036】
軸線Xに平行な方向に見て、第1幅W1は、第2境界部52と第3境界部53とを繋ぐ線分の長さである。軸線Xに平行な方向に見て、アプローチ面8の幅は、第4幅W4とする。第4幅W4は、第1境界部51と第2境界部52とを繋ぐ線分の長さとする。軸線Xに沿った方向に見て、第4幅W4は、たとえば0.1mm以上0.4mm以下である。第4幅W4の下限は、特に限定されないが、たとえば0.15mm以上であってもよいし、0.20mm以上であってもよい。第4幅W4の上限は、特に限定されないが、たとえば0.35mm以下であってもよいし、0.30mm以下であってもよい。
【0037】
図4は、第1実施形態に係るドリル100の前端部を示す斜視模式図である。図4に示されるように、アプローチ面8は、第1外周マージン面10とねじれ溝面5との間に位置している。アプローチ面8は、切刃3の最外周端に連なっている。アプローチ面8は、ねじれ溝面5のリーディングエッジ7に沿って形成されている。別の観点から言えば、リーディングエッジ7は、アプローチ面8とねじれ溝面5との稜線により構成されている。アプローチ面8は、第1外周マージン面10に沿って、第1チャンファー面部41から後端2に向かって延在している。
【0038】
図1に示されるように、軸線Xに平行な方向におけるアプローチ面8の長さは、第3長さL3とする。第3長さL3は、第1直径D1の0.5倍以上である。第3長さL3の下限は、特に限定されないが、たとえば第1直径D1の1倍以上であってもよいし、2倍以上であってもよい。第3長さL3の上限は、特に限定されないが、たとえば第1直径D1の20倍以下であってもよいし、10倍以下であってもよい。
【0039】
図5は、図1の領域Vの拡大模式図である。図5に示されるように、軸線Xに平行な方向において、第2外周マージン面20の前端は、第1外周マージン面10の前端よりも軸方向の後方に位置している。言い換えれば、第2外周マージン面20は、第1外周マージン面10の前端とドリル100の後端2との間に位置している。軸線Xに平行な方向において、第1外周マージン面10の前端と第2外周マージン面20の前端との距離は、第1外周マージン面10に対する第2外周マージン面20の後退量L1とする。後退量L1は、たとえば第1直径D1の2%以上10%以下である。後退量L1の下限は、特に限定されないが、たとえば第1直径D1の3%以上であってもよいし、4%以上であってもよい。後退量L1の上限は、特に限定されないが、たとえば第1直径D1の9%以下であってもよいし、8%以下であってもよい。
【0040】
図5に示されるように、軸線Xに平行な方向におけるチャンファー切刃部33の長さは、第2長さL2とする。第2長さL2は、たとえば第1直径D1の3%以上10%以下である。第2長さL2の下限は、特に限定されないが、たとえば第1直径D1の4%以上であってもよいし、第1直径D1の5%以上であってもよい。第2長さL2の上限は、特に限定されないが、たとえば第1直径D1の9%以下であってもよいし、第1直径D1の8%以下であってもよい。
【0041】
図5に示されるように、シンニング面6は、ねじれ溝面5に連なっている。シンニング切刃部31は、シンニング面6に連なっている。図4および図5に示されるように、シンニング面6と第1逃げ面部43との稜線は、シンニング切刃部31を構成する。ねじれ溝面5は、主切刃部32およびチャンファー切刃部33の各々に連なっている。ねじれ溝面5と第1逃げ面部43との稜線は、主切刃部32を構成する。ねじれ溝面5と第1チャンファー面部41との稜線は、チャンファー切刃部33を構成する。
【0042】
図6は、軸線Xの周りにドリル100を回転させた場合において、軸線Xを含む回転投影面に切刃3を回転投影させた状態を示す模式図である。図6に示されるように、切刃3の回転投影軌跡130は、第1投影軌跡131と、第2投影軌跡132と、第3投影軌跡133とを有している。第1投影軌跡131は、シンニング切刃部31を回転投影面に投影した軌跡である。第2投影軌跡132は、主切刃部32を回転投影面に投影した軌跡である。第3投影軌跡133は、チャンファー切刃部33を回転投影面に投影した軌跡である。
【0043】
回転投影面において、軸線Xの投影軌跡134と、チャンファー切刃部33の第3投影軌跡133とがなす角度は、第2角度θ2とする。第2角度θ2は、たとえば15°以上45°以下である。第2角度θ2の下限は、特に限定されないが、たとえば17°以上であってもよいし、19°以上であってもよい。第2角度θ2の上限は、特に限定されないが、たとえば43°以下であってもよいし、41°以下であってもよい。
【0044】
図7は、図1のVII-VII線に沿った断面模式図である。図7に示される断面は、軸線Xに対して垂直である。軸線Xに沿った方向において、図7に示される断面とドリル100の前端1との距離は、第1直径D1と同じである。
【0045】
図7に示されるように、ドリル100の芯厚は、第3直径D3とする。第3直径D3は、たとえば第1直径D1の28%以上40%以下である。第3直径D3の下限は、特に限定されないが、たとえば第1直径D1の30%以上であってもよいし、32%以上であってもよい。第3直径D3の上限は、特に限定されないが、たとえば38%以下であってもよいし、36%以下であってもよい。なお、ドリル100の芯厚は、軸線Xに対して垂直な断面において、軸線Xとねじれ溝面5との間の最短距離の2倍である。
【0046】
図7に示されるように、軸線Xに垂直な断面において、ねじれ溝面5の中心角は、第1中心角θ3とし、かつ、ねじれ溝面5以外の部分の中心角は、第2中心角θ4とする。第1中心角θ3は、回転方向前方におけるねじれ溝面5の端部と軸線Xとを繋ぐ線分と、回転方向後方におけるねじれ溝面5の端部と軸線Xとを繋ぐ線分とがなす角度である。回転方向前方におけるねじれ溝面5の端部は、第2外周マージン面20とねじれ溝面5との境界である。回転方向後方におけるねじれ溝面5の端部は、アプローチ面8とねじれ溝面5との境界である。切刃3の数がNとされる場合、第2中心角θ4は、360°をNで除した値から第1中心角θ3を差し引いた値とされる。切刃3の数が2の場合、第2中心角θ4は、180°から第1中心角θ3を差し引いた値である。
【0047】
軸線Xに垂直な断面において、第1中心角θ3は、たとえば第2中心角θ4の0.5倍以上1倍以下である。軸線Xに垂直な断面において、第1中心角θ3の下限は、特に限定されないが、たとえば第2中心角θ4の0.55倍以上であってもよいし、第2中心角θ4の0.60倍以上であってもよい。軸線Xに垂直な断面において、第1中心角θ3の上限は、特に限定されないが、たとえば第2中心角θ4の0.95倍以下であってもよいし、第2中心角θ4の0.90倍以下であってもよい。
【0048】
第1実施形態に係るドリル100においては、1つの切刃3について、第1外周マージン面10を形成するマージン部と、第2外周マージン面20を形成するマージン部とが設けられている。具体的には、第1実施形態に係るドリル100は、2つの切刃3と、2つのアプローチ面8と、4つのマージン部と、2つのねじれ溝面5と、2つの逃げ面40とを有している。軸線Xに沿った方向に見て、ドリル100の形状は、軸線Xに対して実質的に回転対称である。ドリル100の切刃の数がNとされる場合、ドリルの100の形状は、軸線Xに対して実質的にN回対称である。ドリル100の切刃3の数が2の場合、ドリル100の形状は、軸線Xに対して2回対称である。
【0049】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るドリル100の構成について説明する。第2実施形態に係るドリル100は、第3外周マージン面60を有する点において、第1実施形態に係るドリル100と異なっており、その他の点については、第1実施形態に係るドリル100と実質的に同じである。以下、第1実施形態に係るドリル100と異なる点を中心に説明する。
【0050】
図8は、第2実施形態に係るドリル100の構成を示す正面模式図である。図8に示される正面模式図は、図2に示される正面模式図に対応している。図8に示されるように、第2実施形態に係るドリル100は、第3外周マージン面60を有している。ドリル100の回転方向において、第3外周マージン面60は、第1外周マージン面10と、第2外周マージン面20との間に位置している。第3外周マージン面60は、第1外周マージン面10および第2外周マージン面20の各々から離間している。
【0051】
図8に示されるように、軸線Xに沿った方向に見て、第3外周マージン面60の幅は、第3幅W3とする。第3幅W3は、たとえば第1外周マージン面10の直径の5%以上20%以下である。軸線Xに沿った方向に見て、第3外周マージン面60の形状は、円弧状である。第3外周マージン面60の幅は、円弧状の第3外周マージン面60の両端を繋ぐ線分の長さである。
【0052】
図9は、第2実施形態に係るドリル100の構成を示す平面模式図である。図9に示される平面模式図は、図5に示される平面模式図に対応している。図9に示されるように、第2実施形態に係るドリル100の外周面9は、第3側面63と、第4側面64とを有している。第3側面63は、第3外周マージン面60に連なっている。第3側面63は、第3外周マージン面60に対して回転方向前方に位置している。第4側面64は、第3外周マージン面60に連なっている。第4側面64は、第3外周マージン面60に対して回転方向後方に位置している。
【0053】
外周中間面4は、第1中間領域61と、第2中間領域62とを有している。第1中間領域61は、第1側面11および第3側面63の各々に連なっている。第1中間領域61は、第1側面11に対して回転方向後方に位置し、かつ、第3側面63に対して回転方向前方に位置している。第2中間領域62は、第2側面12および第4側面64の各々に連なっている。第2中間領域62は、第4側面64に対して回転方向後方に位置し、かつ、第2側面12に対して回転方向前方に位置している。
【0054】
第2実施形態に係るドリル100においては、1つの切刃3について、第1外周マージン面10を形成するマージン部と、第2外周マージン面20を形成するマージン部と、第3外周マージン面60を形成するマージン部とが設けられている。具体的には、第2実施形態に係るドリル100は、2つの切刃3と、2つのアプローチ面8と、6つのマージン部と、2つのねじれ溝面5と、2つの逃げ面40とを有している。
【0055】
なお上記において、ドリル100が2つの切刃3を有する場合について説明したが、切刃3の数は、2つに限定されない。切刃3の数は、3つであってもよいし、4つ以上であってもよい。被削材は、たとえばステンレス材(SUS)などの金属である。被削材は、炭素鋼であってもよいし、合金鋼であってもよいし、難削材であってもよい。
【0056】
次に、本実施形態に係るドリル100の作用効果について説明する。
本実施形態に係るドリル100によれば、第1外周マージン面10は、切刃3の最外周端よりも回転方向後方に位置し、かつ切刃3の直径よりも大きな直径を有している。第1外周マージン面10を有するマージン部で穴の内面をバニッシュすることで、穴径を広げて穴の内面(穴面)を仕上げることができる。そのため、穴面の粗さを低減することができる。また本実施形態に係るドリル100によれば、軸線Xに沿った方向に見て、第1外周マージン面10に対して傾斜しているアプローチ面8を有している。アプローチ面8は、第1外周マージン面10とねじれ溝面5との間に位置し、最外周端に連なりかつねじれ溝面5のリーディングエッジ7に沿って形成されている。これにより、アプローチ面8がない場合と比較して、リーディングエッジ7から第1外周マージン面10にかけて直径が緩やかに変化する。そのため、バニッシュによって発生する摩擦熱によって外周マージン面に被削材が溶着することを抑制することができる。軸線Xに平行な方向におけるアプローチ面8の長さは、第1外周マージン面10の直径の0.5倍以上である。これにより、切刃3を再研削した場合であってもアプローチ面8を残すことができる。そのため、ドリル100の寿命を延ばすことができる。
【0057】
また本実施形態に係るドリル100によれば、第1外周マージン面10の直径から切刃3の直径を差し引いた値は、0.01mm以上0.08mm以下であってもよい。第1外周マージン面10の直径から切刃3の直径を差し引いた値を0.01mm以上とすることにより、バニッシュ効果を高めることができる。そのため、穴面の粗さをさらに低減することができる。第1外周マージン面10の直径から切刃3の直径を差し引いた値を0.08mm以下とすることにより、バニッシュによる摩擦抵抗が大幅に上昇してドリル100が摩耗することを抑制することができる。
【0058】
さらに本実施形態に係るドリル100によれば、軸線Xに沿った方向に見て、アプローチ面8の幅は、0.1mm以上0.4mm以下であってもよい。アプローチ面8の幅を0.1mm以上とすることにより、切屑が溶着することをさらに抑制することができる。アプローチ面8の幅を0.4mm以下とすることにより、外周マージン面を切刃3に近い位置に設けることができる。これにより、穴径の精度が悪化することを抑制することができる。
【0059】
さらに本実施形態に係るドリル100によれば、軸線Xに沿った方向に見て、第1外周マージン面10に対するアプローチ面8の傾斜角は、3°以上15°以下であってもよい。第1外周マージン面10に対するアプローチ面8の傾斜角を3°以上とすることにより、第1外周マージン面10の直径と切刃3の直径との差を大きくすることができる。第1外周マージン面10に対するアプローチ面8の傾斜角を15°以下とすることにより、第1外周マージン面10に対するアプローチ面8の角度が過度に大きくなることにより被削材の溶着が発生することを抑制することができる。
【0060】
さらに本実施形態に係るドリル100によれば、ドリル100の芯厚は、切刃3の直径の28%以上40%以下であってもよい。軸線Xに垂直な断面において、ねじれ溝面5の中心角は、ねじれ溝面5以外の部分の中心角の0.5倍以上1倍以下であってもよい。ドリル100の芯厚を大きくすることにより、ドリル100の剛性を高めることができる。ねじれ溝面5の中心角を大きくすることにより、切屑排出性を向上することができる。ドリル100の芯厚を第1外周マージン面10の直径の28%以上40%以下とし、かつ、ねじれ溝面5の中心角はねじれ溝面5以外の部分の中心角の0.5倍以上1倍以下とすることにより、ドリル100の剛性を高めつつ、切屑排出性を向上することができる。
【0061】
さらに本実施形態に係るドリル100によれば、軸線Xに沿った方向に見て、第1外周マージン面10および第2外周マージン面20の各々の幅は、第1外周マージン面10の直径の5%以上20%以下であってもよい。第1外周マージン面10および第2外周マージン面20の各々の幅を第1外周マージン面10の直径の5%以上とすることにより、バニッシュ効果を高めることができる。第1外周マージン面10および第2外周マージン面20の各々の幅を20%以下とすることにより、バニッシュ過剰によりドリル100が摩耗することを抑制することができる。
【0062】
さらに本実施形態に係るドリル100によれば、軸線Xに平行な方向において、第2外周マージン面20は、第1外周マージン面10の前端とドリル100の後端2との間に位置していてもよい。第1外周マージン面10に対する第2外周マージン面20の後退量は、第1外周マージン面10の直径の2%以上10%以下であってもよい。
【0063】
さらに本実施形態に係るドリル100によれば、切刃3は、第1逃げ面部43に連なる主切刃部32と、第1チャンファー面部41に連なるチャンファー切刃部33とを有していてもよい。これにより、穴に形成されたバリを除去することができる。そのため、仕上げのリーマ加工が不要となる。
【0064】
さらに本実施形態に係るドリル100によれば、逃げ面40には、クーラント供給孔30が設けられていてもよい。これにより、バニッシュによってドリル100が高温になった場合においても、クーラント供給孔30からクーラントを供給することにより、ドリル100を冷却することができる。結果として、穴面の粗さをさらに低減することができる。
【実施例1】
【0065】
(サンプル準備)
まず、サンプル1および2のドリル100を準備した。サンプル1のドリル100は、比較例である。サンプル2のドリル100は、実施例である。サンプル2のドリル100は、アプローチ面8を有している。第1外周マージン面10に対するアプローチ面8の傾斜角(第1角度θ1)は、7°とした。アプローチ面8の幅(第4幅W4)は、0.3mmとした。サンプル1のドリル100は、アプローチ面8を有していない。サンプル1のドリル100の第1直径D1は、7.993mmとした。サンプル2のドリル100の第1直径D1は、8.003mmとした。
【0066】
(評価方法)
次に、サンプル1および2のドリル100を用いて穴径の拡大代を評価した。サンプル1および2のドリル100を用いて被削材に穴を形成した。被削材は、S50Cとした。穴の深さは、24mmとした。穴の数は、5個とした。穴の入口および穴奥の各々における穴径を測定した。5個の穴径の最小値、最大値および平均値を求めた。穴の形成は、4種類の切削条件を用いて実施された。切削速度Vcは、80m/分または120m/分とした。送り量fは、0.15mm/回転または0.25mm/回転とした。
【0067】
(評価結果)
図10は、サンプル1に係るドリル100を用いて形成した穴の径を示している。図11は、サンプル2に係るドリル100を用いて形成した穴の径を示している。表1は、サンプル1および2に係るドリル100を用いて形成した穴の径を示している。図10および図11において、破線で示されている位置は、ドリル100の第1直径D1に対応している。図10および図11に示されるように、同じ切削条件で比較した場合、サンプル2に係るドリル100を用いて穴を形成した場合の穴径の拡大代は、サンプル1に係るドリル100を用いて穴を形成した場合の穴径の拡大代よりも小さかった。以上の結果より、実施例のドリル100は、比較例のドリル100と比較して、穴径の拡大代を低減可能であることが実証された。
【0068】
【表1】
【実施例2】
【0069】
(評価方法)
次に、サンプル1および2のドリル100を用いて切削抵抗のスラスト分力を評価した。被削材は、S50Cとした。穴の深さは、24mmとした。穴の形成は、4種類の切削条件を用いて実施された。切削速度Vcは、80m/分または120m/分とした。送り量fは、0.15mm/回転または0.25mm/回転とした。サンプル1および2のドリル100を用いて被削材に穴を形成しながら切削抵抗のスラスト分力を測定した。
【0070】
(評価結果)
【0071】
【表2】
【0072】
表2は、サンプル1および2に係るドリル100の切削抵抗のスラスト分力を示している。表2に示されるように、同じ切削条件で比較した場合、サンプル2に係るドリル100の切削抵抗のスラスト分力は、サンプル1に係るドリル100の切削抵抗のスラスト分力と同程度であることが確認された。
【実施例3】
【0073】
(評価方法)
次に、サンプル1および2のドリル100を用いて穴面の粗さを評価した。被削材は、S50Cとした。穴の深さは、24mmとした。穴の形成は、4種類の切削条件を用いて実施された。切削速度Vcは、80m/分または120m/分とした。送り量fは、0.15mm/回転または0.25mm/回転とした。サンプル1および2のドリル100を用いて被削材に形成した穴の表面において、算術平均粗さ(Ra)を測定した。
【0074】
(評価結果)
【0075】
【表3】
【0076】
表3は、サンプル1および2に係るドリル100を用いて形成された穴の表面のRaを示している。表3に示されるように、同じ切削条件で比較した場合、サンプル2に係るドリル100を用いて形成された穴の表面のRaは、サンプル1に係るドリル100用いて形成された穴の表面のRaよりも小さかった。以上の結果より、実施例のドリル100は、比較例のドリル100と比較して、穴面の粗さを低減可能であることが実証された。
【実施例4】
【0077】
(評価方法)
次に、サンプル1および2のドリル100を用いて穴面の粗さを評価した。被削材は、S50Cとした。穴の深さは、24mmとした。切削速度Vcは、80m/分とした。送り量fは、0.25mm/回転とした。切削長が23.6m経過した後に形成された穴の表面において、算術平均粗さ(Ra)および最大高さ粗さ(Rz)を測定した。
【0078】
(評価結果)
【0079】
【表4】
【0080】
表4は、切削長23.6m経過後に形成された穴の表面のRaおよびRzを示している。表4に示されるように、サンプル2に係るドリル100を用いて形成された穴の表面のRaおよびRzは、サンプル1に係るドリル100用いて形成された穴の表面のRaおよびRzよりも小さかった。以上の結果より、切削長23.6m経過後においても、実施例のドリル100は、比較例のドリル100と比較して、穴面の粗さを低減可能であることが実証された。
【0081】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
1 前端、2 後端、3 切刃、4 外周中間面、5 ねじれ溝面、6 シンニング面、7 リーディングエッジ、8 アプローチ面、9 外周面、10 第1外周マージン面、11 第1側面、12 第2側面、17 シャンク、20 第2外周マージン面、30 クーラント供給孔、31 シンニング切刃部、32 主切刃部、33 チャンファー切刃部、40 逃げ面、41 第1チャンファー面部、42 第2チャンファー面部、43 第1逃げ面部、44 第2逃げ面部、51 第1境界部、52 第2境界部、53 第3境界部、60 第3外周マージン面、61 第1中間領域、62 第2中間領域、63 第3側面、64 第4側面、100 ドリル、130 回転投影軌跡、131 第1投影軌跡、132 第2投影軌跡、133 第3投影軌跡、134 投影軌跡、D1 第1直径、D2 第2直径、D3 第3直径、L1 後退量、L2 第2長さ、L3 第3長さ、W1 第1幅、W2 第2幅、W3 第3幅、W4 第4幅、X 軸線、θ1 第1角度、θ2 第2角度、θ3 第1中心角、θ4 第2中心角。
【要約】
ドリルは、切刃と、ねじれ溝面と、第1外周マージン面と、アプローチ面と、を有している。ねじれ溝面は、切刃に連なっている。第1外周マージン面は、切刃の最外周端よりも回転方向後方に位置し、かつ切刃の直径よりも大きな直径を有している。アプローチ面は、第1外周マージン面とねじれ溝面との間に位置し、最外周端に連なりかつねじれ溝面のリーディングエッジに沿って形成されている。軸線に沿った方向に見て、アプローチ面は、第1外周マージン面に対して傾斜している。軸線に平行な方向におけるアプローチ面の長さは、第1外周マージン面の直径の0.5倍以上である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11