(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】作業受発注システム、サーバ、及び作業受発注方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20230111BHJP
G06Q 10/105 20230101ALI20230111BHJP
G06Q 10/06 20230101ALI20230111BHJP
【FI】
G06Q50/08
G06Q10/10 320
G06Q10/06
(21)【出願番号】P 2018081296
(22)【出願日】2018-04-20
【審査請求日】2021-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100118049
【氏名又は名称】西谷 浩治
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 誠司
【審査官】山崎 誠也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-037605(JP,A)
【文献】特開2013-175088(JP,A)
【文献】特開2017-037685(JP,A)
【文献】特開2017-027455(JP,A)
【文献】特開2015-102996(JP,A)
【文献】特開2016-048488(JP,A)
【文献】特開2016-012217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械を遠隔操作する遠隔操作装置のオペレータに作業発注者が作業を発注するための発注者端末と、前記発注者端末に対して通信可能に接続されたサーバとを備え、
前記サーバは、
前記作業発注者が入力した、作業内容と前記作業内容に対する作業時間とを含む作業要求情報を前記発注者端末から受信する通信部と、
前記通信部が受信した前記作業要求情報における前記作業内容と前記作業時間に基づいて、
前記作業要求情報に含まれる作業内容毎の評価点を算出し、算出した前記作業内容毎の前記評価点に基づいて、前記作業発注者が前記オペレータに対して要求する前記遠隔操作の技能を示す要求技能レベルを決定する要求技能レベル決定部と、
複数のオペレータのそれぞれの技能レベルを記憶するオペレータデータベースと、
前記オペレータデータベースから、前記技能レベルが前記要求技能レベル以上のオペレータを抽出し、抽出したオペレータを前記作業発注者に提示するためのオペレータ一覧情報を生成する一覧情報生成部とを備え、
前記通信部は、前記オペレータ一覧情報を前記発注者端末に送信する作業受発注システム。
【請求項2】
前記サーバと通信可能に接続された前記遠隔操作装置を更に備え、
前記発注者端末は、前記オペレータ一覧情報に含まれるオペレータのうち、作業依頼をするオペレータの選択指示を前記作業発注者から受け付けて前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記選択指示に基づいて、前記作業発注者から前記作業依頼があったことを前記作業内容と合わせて前記オペレータに通知する作業依頼通知を生成する作業依頼生成部を更に備え、
前記通信部は、前記作業依頼通知を前記遠隔操作装置に送信する請求項1記載の作業受発注システム。
【請求項3】
前記遠隔操作装置は、前記作業依頼に承諾する承諾指示を前記オペレータから受け付けて前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記承諾指示が前記通信部により受信された場合、前記作業依頼に対応する作業を前記オペレータに許可するためのアクセスコードを発行し、前記通信部を介して前記遠隔操作装置に送信する作業許可部を更に備える請求項2記載の作業受発注システム。
【請求項4】
前記サーバは、
前記複数のオペレータのそれぞれについて、前記オペレータが前記建設機械を実際に前記遠隔操作した前記作業内容と、前記作業内容に対する作業時間とを対応付けて記憶する作業実績データベースと、
前記複数のオペレータのそれぞれについて、前記遠隔操作装置が備える遠隔操作シミュレータで前記オペレータにより実施された作業内容と、前記作業内容に対応する作業時間とを対応付けて記憶するシミュレータ実績データベースと、
前記複数のオペレータのそれぞれについて、前記作業実績データベースと前記シミュレータ実績データベースとを参照して、前記作業時間の合計値を算出し、算出した前記合計値が増大するほど値が大きくなるように前記技能レベルを算出し、前記オペレータデータベースに記憶する技能レベル算出部とを更に備える請求項1~3のいずれかに記載の作業受発注システム。
【請求項5】
前記サーバは、前記複数のオペレータのそれぞれについて、前記技能レベルが一定レベル以上であることを保証する所定の検定に対する合否結果を記憶する検定実績データベースを更に備え、
前記技能レベル算出部は、前記複数のオペレータのそれぞれについて、前記検定に合格している場合、前記検定に合格していない場合に比べて前記技能レベルを増大させ、前記オペレータデータベースに記憶する請求項4記載の作業受発注システム。
【請求項6】
前記作業要求情報は、前記作業に使用する建設機械の仕様に関する複数のパラメータを更に含み、
前記オペレータデータベースは、前記複数のオペレータのそれぞれについて、前記複数のパラメータの組み合わせ毎の前記技能レベルを記憶し、
前記一覧情報生成部は、前記作業要求情報に含まれる前記複数のパラメータの組み合わせに対する前記技能レベルが前記要求技能レベル以上のオペレータを前記オペレータデータベースから抽出する請求項1~5のいずれかに記載の作業受発注システム。
【請求項7】
建設機械を遠隔操作する遠隔操作装置のオペレータに作業発注者が作業を発注するための発注者端末に対して通信可能に接続されたサーバであって、
前記作業発注者が入力した、作業内容と前記作業内容に対する作業時間とを含む作業要求情報を前記発注者端末から受信する通信部と、
前記通信部が受信した前記作業要求情報における前記作業内容と前記作業時間に基づいて、
前記作業要求情報に含まれる作業内容毎の評価点を算出し、算出した前記作業内容毎の前記評価点に基づいて、前記作業発注者が前記オペレータに対して要求する前記遠隔操作の技能を示す要求技能レベルを決定する要求技能レベル決定部と、
複数のオペレータのそれぞれの技能レベルを記憶するオペレータデータベースと、
前記オペレータデータベースから、前記技能レベルが前記要求技能レベル以上のオペレータを抽出し、抽出したオペレータを前記作業発注者に提示するためのオペレータ一覧情報を生成する一覧情報生成部とを備え、
前記通信部は、前記オペレータ一覧情報を前記発注者端末に送信するサーバ。
【請求項8】
建設機械を遠隔操作する遠隔操作装置のオペレータに作業発注者が作業を発注するための発注者端末と、前記発注者端末に対して通信可能に接続されたサーバとを備える作業受発注システムにおける作業受発注方法であって、
作業発注者が入力した、作業内容と前記作業内容に対する作業時間とを含む作業要求情報を前記発注者端末から受信し、
受信した前記作業要求情報における前記作業内容と前記作業時間に基づいて、
前記作業要求情報に含まれる作業内容毎の評価点を算出し、算出した前記作業内容毎の前記評価点に基づいて、前記作業発注者が前記オペレータに対して要求する前記遠隔操作の技能を示す要求技能レベルを決定し、
複数のオペレータのそれぞれの技能レベルを記憶するオペレータデータベースから、前記技能レベルが前記要求技能レベル以上のオペレータを抽出し、抽出したオペレータを前記作業発注者に提示するためのオペレータ一覧情報を生成し、
前記オペレータ一覧情報を前記発注者端末に送信する作業受発注方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械を遠隔操作するオペレータに対して作業を発注する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建設機械のオペレータの高齢化に伴い、オペレータ不足が深刻化しており、作業発注者がオペレータを確保することが困難になりつつある。そこで、作業現場まで出向かずにオペレータが建設機械を遠隔操作する遠隔操作システムへの期待が高まっている。
【0003】
遠隔操作システムでは国内の全地域はもとより外国からもオペレータを募ることができるため、作業発注者はオペレータの確保が容易になる。更に、遠隔操作システムでは昼間は国内のオペレータに作業を行わせ、夜間は外国のオペレータに作業を行わせるというように、時差を利用して作業を遂行することができるため、作業期間の大幅な短縮を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来、作業発注者が発注した作業に対して適切な技能レベルを持つオペレータを作業発注者に提示するような技術は存在しなかった。そのため、作業発注者は、発注した作業に適した技能レベルを持つオペレータを容易に選択できないという課題があった。
【0006】
特許文献1には、土木施工を複数の作業班のそれぞれに対する生産性を、各作業班における機械情報、人員情報、作業時間、及び施工出来高に基づいて算出する施工量管理システムが開示されているに過ぎないため、上記の課題を解決することができない。
【0007】
本発明の目的は、作業発注者が発注した作業に適した技能レベルを持つオペレータを作業発注者に容易に選択させることができる作業受発注システム等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る作業受発注システムは、建設機械を遠隔操作する遠隔操作装置のオペレータに作業発注者が作業を発注するための発注者端末と、前記発注者端末に対して通信可能に接続されたサーバとを備え、
前記サーバは、
前記作業発注者が入力した、作業内容と前記作業内容に対する作業時間とを含む作業要求情報を前記発注者端末から受信する通信部と、
前記通信部が受信した前記作業要求情報に基づいて、前記作業発注者が前記オペレータに対して要求する前記遠隔操作の技能を示す要求技能レベルを決定する要求技能レベル決定部と、
複数のオペレータのそれぞれの技能レベルを記憶するオペレータデータベースと、
前記オペレータデータベースから、前記技能レベルが前記要求技能レベル以上のオペレータを抽出し、抽出したオペレータを前記作業発注者に提示するためのオペレータ一覧情報を生成する一覧情報生成部とを備え、
前記通信部は、前記オペレータ一覧情報を前記発注者端末に送信する。
【0009】
本構成によれば、作業発注者が発注する作業に対して要求される要求技能レベル以上の技能レベルを持つオペレータがオペレータデータベースから抽出され、抽出結果に基づいて、オペレータ一覧情報が生成され、発注者端末によって作業発注者に提示される。そのため、作業発注者は、オペレータ一覧情報に含まれるオペレータを閲覧することで、発注した作業に適した技能レベルを持つオペレータを容易に選択することができる。
【0010】
上記構成において、前記サーバと通信可能に接続された前記遠隔操作装置を更に備え、
前記発注者端末は、前記オペレータ一覧情報に含まれるオペレータのうち、作業依頼をするオペレータの選択指示を前記作業発注者から受け付けて前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記選択指示に基づいて、前記作業発注者から前記作業依頼があったことを前記作業内容と合わせて前記オペレータに通知する作業依頼通知を生成する作業依頼生成部を更に備え、
前記通信部は、前記作業依頼通知を前記遠隔操作装置に送信することが好ましい。
【0011】
本構成によれば、作業発注者によって選択されたオペレータの遠隔操作装置に対して作業依頼通知が送信されるが、作業依頼通知には作業内容も含まれているため、通知を受けたオペレータは作業依頼を承諾するかの選択が容易になる。
【0012】
上記構成において、前記遠隔操作装置は、前記作業依頼に承諾する承諾指示を前記オペレータから受け付けて前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記承諾指示が前記通信部により受信された場合、前記作業依頼に対応する作業を前記オペレータに許可するためのアクセスコードを発行し、前記通信部を介して前記遠隔操作装置に送信する作業許可部を更に備えることが好ましい。
【0013】
本構成によれば、作業依頼を承諾したオペレータに対してアクセスコードが発行されるため、作業発注者が発注した作業に第三者が参加することを防止できる。
【0014】
上記構成において、前記サーバは、
前記複数のオペレータのそれぞれについて、前記オペレータが前記建設機械を実際に前記遠隔操作した前記作業内容と、前記作業内容に対する作業時間とを対応付けて記憶する作業実績データベースと、
前記複数のオペレータのそれぞれについて、前記遠隔操作装置が備える遠隔操作シミュレータで前記オペレータにより実施された作業内容と、前記作業内容に対応する作業時間とを対応付けて記憶するシミュレータ実績データベースと、
前記複数のオペレータのそれぞれについて、前記作業実績データベースと前記シミュレータ実績データベースとを参照して、前記作業時間の合計値を算出し、算出した前記合計値が増大するほど値が大きくなるように前記技能レベルを算出し、前記オペレータデータベースに記憶する技能レベル算出部とを更に備えることが好ましい。
【0015】
本構成によれば、発注された作業に実際に従事した作業時間のみならず、遠隔操作シミュレータでの作業時間が増大するほど、オペレータの技能レベルが増大し、オペレータへの作業依頼が増大するしくみを構築できる。そのため、例えば、仕事の合間をぬって、オペレータに遠隔操作シミュレータを実施して技能レベルを向上させようとするモチベーションを与えることができ、オペレータの技能レベルの全体的な嵩上げを図ることができる。
【0016】
上記構成において、前記サーバは、前記複数のオペレータのそれぞれについて、前記技能レベルが一定レベル以上であることを保証する所定の検定に対する合否結果を記憶する検定実績データベースを更に備え、
前記技能レベル算出部は、前記複数のオペレータのそれぞれについて、前記検定に合格している場合、前記検定に合格していない場合に比べて前記技能レベルを増大させ、前記オペレータデータベースに記憶することが好ましい。
【0017】
本構成によれば、検定に合格したオペレータほど技能レベルが増大するので、技能レベルの質を担保できる。
【0018】
上記構成において、前記作業要求情報は、前記作業に使用する建設機械の仕様に関する複数のパラメータを更に含み、
前記オペレータデータベースは、前記複数のオペレータのそれぞれについて、前記複数のパラメータの組み合わせ毎の前記技能レベルを記憶し、
前記一覧情報生成部は、前記作業要求情報に含まれる前記複数のパラメータの組み合わせに対する前記技能レベルが前記要求技能レベル以上のオペレータを前記オペレータデータベースから抽出することが好ましい。
【0019】
本構成によれば、作業発注者が要求する建設機械の複数の仕様の組み合わせに適したオペレータを作業発注者に提示できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、作業発注者は、オペレータ一覧情報に一覧表示されたオペレータを閲覧することで、発注した作業に適した技能レベルを持つオペレータを容易に選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態に係る作業受発注システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図2】作業発注者が作業を発注する際に発注者端末に表示される作業エントリー画面の一例を示す図である。
【
図3】土木工事の作業内容入力画面の一例を示す図である。
【
図4】解体工事の作業内容入力画面の一例を示す図である。
【
図7】オペレータデータベースの構成を示す図である。
【
図8】オペレータリスト画面の一例を示す図である。
【
図10】機械レンジ、ATT種類、及び先端ATT種類を纏めた表である。
【
図11】オファーリスト画面の一例を示す図である。
【
図12】作業実績データベースの構成を示す図である。
【
図13】シミュレータ実績データベースの構成を示す図である。
【
図14】検定実績データベースの構成を示す図である。
【
図15】データベース管理部による処理を模式的に示す図である。
【
図16】本発明の実施の形態に係る作業受発注システムの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の実施の形態に係る作業受発注システムの全体構成を示すブロック図である。作業受発注システムは、サーバ10、発注者端末200、及びマスター30を備える。発注者端末200は、マスター30のオペレータに作業発注者が作業を発注するための装置である。サーバ10は、作業発注者が発注した作業にマッチするオペレータを作業発注者に提示する装置である。
【0023】
マスター30は、建設機械50を遠隔操作する遠隔操作装置の一例である。本実施の形態では、マスター30は建設機械50の操縦席を模擬した操作装置で構成されており、建設機械50の操作レバーと同様の操作レバーが建設機械50と同様のポジションで配置されている。また、マスター30は、オペレータが着座するシートと、シートの前方に配置され、建設機械50の周囲画像を表示する表示装置とを備え、オペレータは表示装置に表示された周囲画像を見ながら、操作レバーを操作して建設機械50を遠隔操作する。
【0024】
スレーブ40は、建設機械50の操縦席に配置され、マスター30が受け付けた操作量に基づいて建設機械50の操縦席に設けられた操作レバーを直接操作する従操作装置である。スレーブ40は、いわばオペレータのダミーとなって建設機械50を操作する機械である。建設機械50は、油圧ショベル、油圧クレーン等の遠隔操作対象となる建設機械である。
【0025】
サーバ10と、発注者端末200、マスター30、及びスレーブ40とのそれぞれは、ネットワークNT1を介して相互に通信可能に接続されている。ネットワークNT1としては、インターネット及び携帯電話通信網等から構成される長距離通信網が採用できる。
【0026】
マスター30及びスレーブ40は通信路NT2を介して相互に通信可能に接続されている。通信路NT2としては、特定省電力無線、及びブルーツース(登録商標)といったマスター30及びスレーブ40を数十m~数百m程度の距離で無線通信させる通信路が採用される。但し、これは一例であり、マスター30及びスレーブ40は、ネットワークNT1を介して接続されてもよい。この場合、マスター30及びスレーブ40は長距離通信が可能となる。或いは、通信路NT2としては、有線が採用されてもよい。
【0027】
発注者端末200は、オペレータに作業を発注する作業発注者が所持するパーソナルコンピュータ等のコンピュータで構成されている。ここで、作業発注者は、工事等の作業を立案してオペレータに発注する人物であり、例えば、作業発注会社に所属する社員が該当する。オペレータは作業請負会社に雇用された社員であってもよいし、作業請負会社に直接雇用されていない個人経営者であってもよい。
【0028】
発注者端末200は、表示部201、制御部202、操作部203、及び通信部204を備える。表示部201は、例えば、液晶ディスプレイで構成される。制御部202は例えば、CPU等のプロセッサで構成され、発注者端末200の全体制御を司る。操作部203は、例えば、キーボード及びマウスであり、作業発注者が入力する作業要求情報を受け付ける。通信部204は、発注者端末200をネットワークNT1に接続する通信装置で構成され、操作部203が受け付けた作業要求情報をネットワークNT1を介してサーバ10に送信する。
【0029】
図2は、作業発注者が作業を発注する際に発注者端末200に表示される作業エントリー画面G1の一例を示す図である。作業エントリー画面G1は、2つの表H1,H2で構成されている。表H1は発注する作業の全体像を入力するための表であり、表H2は発注する作業に使用する建設機械50の仕様を入力するための表である。
【0030】
表H1には、「発注者」、「工事名」、「内容」、「開始日」、「完了日」、及び「現場住所」の欄が設けられている。「発注者」の欄には発注者の名称が入力される。「工事名」の欄には、作業に対する名称が入力される。「内容」の欄には、例えば、作業の大まかな内容が入力される。作業の大まかな内容としては、例えば、土木工事及び解体工事があり、土木工事を発注する場合、「内容」の欄には「土木」が入力され、解体工事を発注する場合、「内容」の欄には「解体」が入力される。「開始日」の欄には、作業の開始日が入力される。「完了日」の欄には、作業の完了日が入力される。「現場住所」の欄には、作業現場の住所が入力される。
【0031】
図2の例では、「○○建設」の作業発注者によって、2018年4月1日から2018年4月30日までの期間において広島市で行われる、工事名「五日市湾宅地造成」の土木工事が入力されている。
【0032】
表H2には、「機種レンジ」、「ATT種類」、及び「先端ATT種類」の欄が設けられている。「機種レンジ」の欄には、作業で使用する建設機械50の重量が入力される。「ATT種類」の欄には作業で使用する建設機械50が備えるアタッチメントの種類が入力される。「ATT種類」は、例えば、標準、ロングレンジ、セパレート、3つ折れ、及びショートアームというような、建設機械50が備えるアタッチメントの種類を示す。例えば、ATT種類が「標準」のアタッチメントは、ブーム及びアームにより構成される。「先端ATT種類」の欄には先端アタッチメントの種類が入力される。「先端ATT種類」は、例えば、バケット、回転グラップル、機械式グラップル、小割ニブラ、大割ニブラというような、アタッチメントの先端に取り付けられる先端アタッチメントの種類を示す。なお、「機種レンジ」、「ATT種類」、及び「先端ATT種類」は建設機械50の仕様に関する複数のパラメータの一例である。
【0033】
図2の例では、機種レンジ「20t」、ATT種類「標準」、及び先端ATT種類「バケット」の建設機械50が入力されている。
【0034】
作業エントリー画面G1への入力が終了すると、発注者端末200は、作業発注者に発注する作業の作業内容を入力させる作業内容入力画面G2,G3を表示させる。作業内容とは、例えば掘削、積込、及び平地整地等の作業内容である。
【0035】
図3は、土木工事の作業内容入力画面G2の一例を示す図である。作業内容入力画面G2は、「作業内容」、「ベース加点」、「作業時間」、及び「評価点」の欄を備える表形式の画面である。なお、作業内容入力画面G2は、作業エントリー画面G1において、「内容」の欄に「土木」が入力された場合に表示される。
【0036】
「作業内容」の欄には作業内容が表示されており、ここでは、「掘削・積込」、「平地整地」、「平地整形」、「のり面整地」、及び「のり面整形」の5の作業内容が登録されている。
【0037】
「掘削・積込」とは、土、地盤、及び岩盤を掘り、ダンプカーに積み込む作業内容である。「平地整地」とは、「平地整形」によって整形された平地を整える作業内容である。「平地整形」とは、地面の凹凸を取り除き、平らな地面を作る作業内容である。「のり面整地」とは、「のり面整形」によって整形されたのり面を整える作業内容である。「のり面整形」とは、切土又は盛土により作られる人工的な斜面であるのり面を整形する作業内容である。なお、
図3に挙げられた作業内容は一例にすぎず、他の作業内容が含まれていてもよい。
【0038】
「ベース加点」とは、「作業時間」の欄に入力された作業時間に乗じられる予め定められた係数である。ここでは、難易度の高い作業内容ほどベース加点が高くなるようにベース加点の値は設定されている。「作業時間」とは、作業発注者によって入力され、作業内容別に作業発注者が要求する作業時間である。「評価点」とは、各作業内容におけるベース加点と作業時間との積によって表される数値である。評価点が高いほど、作業の難易度が高くなるので、オペレータに要求される技能レベルも高くなる。
【0039】
作業発注者は、操作部203を操作することで、「作業時間」の欄に各作業内容に対する作業時間を入力していく。
図3において、発注者端末200は、作業内容及びベース加点は事前に表示しており、作業発注者が作業時間を入力すると、入力した作業時間にベース加点を乗じることで評価点を算出し、「評価点」の欄に表示する。
【0040】
図3の例では、「掘削・積込」の作業時間として60時間が入力されているので、「評価点」として「60」が表示されている。
【0041】
図4は、解体工事の作業内容入力画面G3の一例を示す図である。作業内容入力画面G3は、作業エントリー画面G1において、「内容」の欄に「解体」が入力された場合に表示される。
【0042】
作業内容入力画面G3は、解体工事であるため、「作業内容」の欄には解体工事に関する作業内容が表示されている。ここでは、「作業内容」の欄には「瓦礫積込」、「小割」、「木造解体」、「ビル解体(6m以下)」、及び「ビル解体(6m以上)」といった作業内容が表示されている。また、解体工事においても、土木工事と同様、作業内容の難易度が高くなるにつれて、ベース加点も高くされている。それ以外、作業内容入力画面G3の各欄の内容は、作業内容入力画面G2と同じである。
【0043】
そして、作業発注者は、
図2~
図4に示す各種画面に対する入力が終了すると、図略の送信ボタンを押す。これにより、発注者端末200は、作業要求情報の入力を受け付けて、サーバ10に送信する。作業要求情報は、
図2の表H1,H2の各欄に入力された情報と、
図3又は
図4で入力された、作業内容別に作業時間と評価点とが対応付けられた情報とで構成される。ここでは、評価点は、発注者端末200が算出するとして説明したが、サーバ10が算出してもよい。この場合、サーバ10は、発注者端末200から送信された作業時間にベース加点を乗じて評価点を算出し、発注者端末200に送信して「評価点」の欄に表示させればよい。
【0044】
図1に参照を戻す。サーバ10は、CPU等のプロセッサとメモリと通信機能とを備えるコンピュータで構成され、通信部11、要求技能レベル決定部12、一覧情報生成部13、作業依頼生成部14、作業許可部15、技能レベル算出部16、データベース管理部17、オペレータデータベース18、作業実績データベース19、シミュレータ実績データベース20、及び検定実績データベース21を備える。
図1に示す各種データベースはサーバ10が備えるメモリに記憶されている。また、
図1において、要求技能レベル決定部12~データベース管理部17は、例えば、CPUがプログラムを実行することで実現される。
【0045】
通信部11は、例えば、サーバ10をネットワークNT1に接続させる通信装置で構成され、発注者端末から送信された作業要求情報を受信する。
【0046】
要求技能レベル決定部12は、通信部11が受信した作業要求情報に基づいて、作業発注者がオペレータに対して要求する遠隔操作の技能を示す要求技能レベルを決定する。要求技能レベル決定部12は、作業要求情報に含まれる作業内容毎の評価点の合計値を算出し、その合計値と
図5に示すランク決定テーブルT3とを比較することで、要求技能レベルを決定する。
【0047】
図5は、ランク決定テーブルT3の一例を示す図である。ランク決定テーブルT3はサーバ10のメモリーに事前に登録されており、「評価点」及び「ランク」の欄を備える。
図5の例では、ランクは技能レベルが高い順にF、A、B、C、Dの5つにランク分けされている。そのため、ランク決定テーブルT3の「ランク」の欄にはF~Dが順に登録されている。「評価点」の欄には、F~Dの各ランクに対する評価点の範囲が登録されている。例えば、
図3の例では、評価点の合計値が410であるため、要求技能レベルはFになる。要求技能レベルが決定されると、決定結果が発注者端末200に送信される。
【0048】
図6は、作業エントリー最終画面G4を示す図である。作業エントリー最終画面G4は、要求技能レベルの決定結果を受信した発注者端末200が表示する画面であり、作業発注者に作業が受注された旨を報知するための画面である。
【0049】
作業エントリー最終画面G4は、
図2で説明した表H1,H2の他、要求技能レベルの表示欄H3を備えている。表示欄H3には、サーバ10によって決定された要求技能レベルが表示されている。ここでは、作業要求情報に含まれる評価点の合計値が201以上であったため、表示欄H3には、「B以上」と表示されている。
【0050】
このように、要求技能レベルの決定結果を表示することで、作業発注者は、自身が発注した作業に対する難易度の客観的な値を認識することができる。
【0051】
図1に参照を戻す。一覧情報生成部13は、オペレータデータベース18を参照することで、技能レベルが要求技能レベル以上のオペレータを抽出し、抽出したオペレータを作業発注者に提示するためのオペレータ一覧情報を生成する。
【0052】
図7は、オペレータデータベース18の構成を示す図である。オペレータデータベース18は、オペレータテーブルT1と、技能レベルテーブルT2とを備えている。オペレータテーブルT1は、事前にエントリーされているオペレータの個人情報が登録されたテーブルである。技能レベルテーブルT2は、エントリーされたオペレータ毎に存在するテーブルである。
【0053】
詳細には、オペレータテーブルT1は、「オペレータID」、「名前」、「国籍」、及び「通信アドレス」の欄を備えている。「オペレータID」は、エントリーされた各オペレータを一意的に識別するための識別子である。「名前」はオペレータの名前を示す。「国籍」は日本、ドイツといった、オペレータが居住する国籍を示す。「通信アドレス」はオペレータが使用するマスター30の通信アドレスを示す。
【0054】
技能レベルテーブルT2は、「機械レンジ」、「ATT種類」、「先端ATT種類」、及び「技能レベル」の欄を備えており、「機械レンジ」、「ATT種類」、及び「先端ATT種類」の組み合わせに対するオペレータの「技能レベル」が登録されている。すなわち、技能レベルテーブルT2には、建設機械50の仕様に関する複数のパラメータの組み合わせ毎の技能レベルが登録されている。「機械レンジ」は、3t~5t、6t~13tといった予め区分された建設機械50の重量範囲を示す。「ATT種類」及び「先端ATT種類」は、予め定められたアタッチメント及び先端アタッチメントの種類を示す。
【0055】
図7の技能レベルテーブルT2に示すオペレータは、機械レンジ「3t~5t」、ATT種類「標準」、先端ATT種類「バケット」の技能レベルが「F」であったため、1行目のレコードの「技能レベル」の欄にはFが登録されている。
【0056】
図7に示す技能レベルは、後述する技能レベル算出部16によって、オペレータの過去の作業実績等から事前に算出されて技能レベルテーブルT2に登録されたものである。
【0057】
一覧情報生成部13は、通信部11が受信した作業要求情報に含まれる、「機械レンジ」、「ATT種類」、及び「先端ATT種類」の組み合わせと同じ組み合わせを持つレコードを技能レベルテーブルT2から抽出し、抽出したレコードに登録された技能レベルが要求技能レベル以上であれば、該当するオペレータは、要求技能レベルを満たすオペレータと判定する。
【0058】
一覧情報生成部13は、エントリーされた全オペレータに対して上述の処理を実行することで、要求技能レベル以上の技能レベルを持つオペレータを抽出する。そして、一覧情報生成部13は、抽出したオペレータを含むオペレータ一覧情報を生成し、通信部11に渡し、通信部11が発注者端末200に送信する。発注者端末200は、送信されたオペレータ一覧情報からオペレータリスト画面を生成し、表示部201に表示する。
【0059】
図8は、オペレータリスト画面G150の一例を示す図である。オペレータリスト画面G150には、サーバ10で抽出されたオペレータが技能レベルが高い順で表示されている。オペレータリスト画面G150は、「おすすめ順番」、「オペレータID」、「ランク」、「報酬額」、「支払条件」、「詳細」、及び「オファー」の欄を備える。
【0060】
「おすすめ順番」は、抽出されたオペレータを技能レベルが高い順に並べたときの順番を示す。「オペレータID」はオペレータの識別子である。「ランク」はオペレータの技能レベルを示す。「報酬額」は作業発注者からオペレータに支払われる報酬額である。「支払条件」は、工事完了翌月一括払いといった報酬額の支払いの条件である。「詳細」の欄にはオペレータの詳細画面を表示させるボタンが表示されており、このボタンをクリックすると、オペレータの詳細画面が表示される。「オファー」の欄には、作業発注ボタンが表示されている。作業発注者は、オペレータリスト画面G150に表示されたオペレータのうち、あるオペレータに作業依頼をする場合、そのオペレータの「報酬額」及び「支払条件」の欄に報酬額及び支払条件を入力し、「オファー」欄に表示された作業発注ボタンをクリックする。これにより、発注者端末200は、オペレータリスト画面G150に含まれるオペレータのうち、作業依頼をするオペレータの選択指示を作業発注者から受け付けてサーバ10に送信する。オペレータリスト画面G150には、技能レベルが要求レベル以上のオペレータが技能レベルと合わせて一覧表示されているので、作業発注者はオペレータの選択が容易になる。
【0061】
図9は、オペレータの詳細画面G100を示す図である。この詳細画面G100は、オペレータリスト画面G150の「詳細」欄に表示されたボタンがクリックされると表示される。詳細画面G100には、オペレータの個人情報の表示欄H101と、オペレータの作業実績を示す実績情報の表示欄H102とが含まれる。表示欄H101には、選択したオペレータについてのオペレータIDと氏名と技能レベルを示すランクと所在する国とが表示されている。表示欄H102には機種レンジ、ATT種類、及び先端ATT種類のそれぞれについて作業実績の内訳が円グラフで表示されている。このように、実績情報を表示することで、作業発注者は、オペレータがどのような作業が得意であるかを容易に知ることができる。
【0062】
図1に参照を戻す。作業依頼生成部14は、通信部11が受信した選択指示に基づいて、作業発注者から作業依頼があったことを作業内容と合わせてオペレータに通知する作業依頼通知を生成する。この作業依頼通知は通信部11により作業依頼先のオペレータのマスター30に送信される。詳細には、作業依頼通知には、作業発注者が作業エントリー画面G1(
図2)で入力した各種情報と、オペレータリスト画面G150(
図8)で入力した報酬額及び支払条件等の情報が含まれる。
【0063】
作業依頼通知を受信したスレーブ40は、作業依頼通知に基づいて、
図11に示すオファーリスト画面G160を生成し、図略の表示部に表示する。
図11は、オファーリスト画面G160の一例を示す図である。
【0064】
オファーリスト画面G160は、あるオペレータに対する作業依頼を一覧表示する画面であり、「No」、「発注者」、「工事名」、「内容」、「開始日」、「完了日」、「現場住所」、「機種」、「ATT」、「先端ATT」、「報酬額」、「支払条件」、「承諾」、及び「オファー期限」の欄を備える。
【0065】
「No」は作業依頼を特定するための番号である。
図11の例では、4件の作業依頼(オファー)を受けているため、4件の作業依頼が表示されている。
【0066】
「発注者」~「現場住所」の欄には、
図2に示す作業エントリー画面G1の表H1に入力された情報が表示されている。「機種」、「ATT」、「先端ATT」の欄には、
図2に示す作業エントリー画面G1の表H2の「機種レンジ」、「ATT種類」、「先端ATT種類」の欄に入力された情報が表示されている。「報酬額」及び「支払条件」の欄には、オペレータリスト画面G150(
図8)の「報酬額」及び「支払条件」の欄に入力された情報が表示されている。「承諾」の欄には、承諾ボタンが表示されている。「オファー期限」の欄には、オペレータが作業依頼を承諾可能な期限が表示されている。
【0067】
オペレータは、オファーリスト画面G160に表示された作業依頼のうち、承諾する作業依頼の「承諾」の欄に表示された承諾ボタンをクリックする。これにより、マスター30は、作業依頼に承諾する承諾指示をオペレータから受け付けてサーバ10に送信する。オファーリスト画面G160には、作業依頼に対応する作業に関する情報に加えて、報酬額及び支払条件といった情報も表示されているので、オペレータは作業依頼に対して承諾するか否かの判断が容易になる。
【0068】
図1に参照を戻す。作業許可部15は、承諾指示が通信部11により受信された場合、オペレータが承諾した作業依頼に対応する作業をオペレータに許可するためのアクセスコードを発行する。このアクセスコードは通信部11によりマスター30及びスレーブ40に送信される。
【0069】
アクセスコードを受信したマスター30及びスレーブ40はそのアクセスコードを図略のメモリーに記憶する。オペレータは、マスター30を遠隔操作して承諾した作業を行う場合、アクセスコードの入力が要求される。マスター30はオペレータにより入力されたアクセスコードをメモリーに記憶したアクセスコードと照合し、一致していれば、そのアクセスコードをスレーブ40に送信する。スレーブ40は、受信したアクセスコードをメモリーに記憶したアクセスコードと照合し、一致していれば、アクセス許可通知をマスター30に送信する。これにより、オペレータは、マスター30による建設機械50の遠隔操作が可能となる。
【0070】
ここで、アクセスコードはオペレータの顔画像の特徴量であってもよい。この場合、マスター30は図略のカメラによってオペレータの顔画像を取得して顔画像の特徴量を抽出し、メモリーに記憶された特徴量と一致すれば、その特徴量をスレーブ40に送信する。スレーブ40はメモリーに記憶された特徴量と送信された特徴量とが一致すれば、アクセス許可通知をマスター30に送信する。アクセスコードを文字列で構成すると、その文字列を盗んだ第三者はその文字列を入力することでマスター30による遠隔操作が可能となる。一方、顔の特徴量をアクセスコードとして採用すれば、このような権限のない第三者による遠隔操作を防止できる。
【0071】
また、アクセスコードは有効期限が定められてたものであってもよい。有効期限としては、作業の完了日が採用できる。これにより、作業が完了しているにも拘わらず、オペレータが作業で使用した建設機械50を遠隔操作する事態を回避できる。
【0072】
技能レベル算出部16は、エントリーされたオペレータのそれぞれについて、作業実績データベース19とシミュレータ実績データベース20と検定実績データベース21とを参照して、作業内容別に評価点の合計値を算出し、算出した評価点の合計値とランク決定テーブルT3とを照合することで技能レベルを算出し、オペレータデータベース18に登録する。
【0073】
以下、技能レベルの算出の詳細について説明する。
図12は、作業実績データベース19の構成を示す図である。作業実績データベース19は、エントリーしたオペレータのそれぞれに対して、「機種レンジ」、「ATT種類」、及び「先端ATT」の組み合わせ毎に存在し、過去の作業実績が登録されたデータベースである。
図12の例では、「機種レンジ」が「3t~t5」、「ATT種類」が「標準」、「先端ATT種類」が「バケット」における作業実績データベース19が示されている。なお、該当するオペレータにおいて、「機種レンジ」が「3t~t5」、「ATT種類」が「標準」、「先端ATT種類」が「バケット」以外の組み合わせに対する作業実績があれば、その組み合わせに対する作業実績データベース19も存在する。ここで、「作業実績」とは、作業発注者により発注された作業に対する実績であり、実際の作業現場において建設機械50を遠隔操作した実績である。
【0074】
図10は、機械レンジ、ATT種類、及び先端ATT種類を纏めた表である。表141に示すように、本実施の形態では、機械レンジは、「3t~5t」、「6t~13t」、・・・、「50t以上」というように5つに区分されている。表142に示すように、本実施の形態では、ATT種類は、「標準」、「ロングレンジ」、「セパレート」、「3つ折れ」、「ショートアーム」の5つに区分されている。表143に示すように、本実施の形態では、先端ATT種類は、「バケット」、「回転グラップル」、「機械式グラップル」、「小割ニブラ」、「大割ニブラ」の5つに区分されている。
【0075】
例えば、あるオペレータが、機械レンジ、ATT種類、及び先端ATT種類について、例えば、「3t~5t」、「標準」、及び「バケット」の組み合わせに作業実績があり、「3t~5t」、「ロングレンジ」、及び「バケット」の組み合わせに作業実績があるとすると、これら2つの組み合わせに対応して2つの作業実績データベース19が存在することになる。
【0076】
図12に参照を戻す。作業実績データベース19は、「作業内容」、「ベース加点」、「作業時間」、及び「評価点」の欄を備える。「作業時間」の欄には、オペレータが作業実績のある作業に対する作業内容別の累積作業時間が登録されている。「ベース加点」及び「評価点」は、
図3で説明したものと同じである。
【0077】
技能レベル算出部16は、作業実績データベース19において、作業内容別に、作業時間にベース加点を乗じて評価点を算出し、「評価点」の欄に登録する。なお、
図12では、「掘削・積込」~「のり面整形」の5つの土木工事に関する作業内容が登録されているが、これは、これらの作業内容に対してオペレータの作業実績があるからである。例えば、オペレータが解体作業に対する作業実績があれば、解体作業に関する作業内容も登録される。このように、作業実績データベース19には、作業実績のある作業内容と、その作業内容に対する実際の作業時間の累積値とが対応付けて登録される。
【0078】
図13は、シミュレータ実績データベース20の構成を示す図である。シミュレータ実績データベース20は、エントリーしたオペレータのそれぞれに対して存在し、オペレータがマスター30が備えるシミュレータ301を使って遠隔操作のトレーニングをした実績が登録されたデータベースである。シミュレータ実績データベース20は、「作業内容」、「ベース加点」、「作業時間」、及び「評価点」の欄を備える。「作業内容」の欄には、オペレータがシミュレータ301でトレーニングした作業内容が登録されている。「作業時間」の欄には、オペレータがシミュレータ301でトレーニングした作業内容別のトレーニング時間の累積値が登録されている。「ベース加点」及び「評価点」は、
図3で説明したものと同じである。
【0079】
技能レベル算出部16は、シミュレータ実績データベース20において、作業内容別に、作業時間にベース加点を乗じて評価点を算出し、「評価点」の欄に登録する。なお、
図13では、「掘削・積込」~「のり面整形」の5つの土木工事に関する作業内容が登録されているが、これは、これらの作業内容に対してオペレータのトレーニング実績があるからである。このように、シミュレータ実績データベース20には、トレーニング実績のある作業内容と、その作業内容に対する実際のトレーニング時間の累積値と、その作業内容に対する評価点とが対応付けて登録されている。
【0080】
図14は、検定実績データベース21の構成を示す図である。検定実績データベース21は、エントリーしたオペレータのそれぞれに対して存在し、作業内容別に実施される所定の検定に対する合否結果が登録されたデータベースである。検定は、所定の作業内容に関してオペレータの技能レベルが一定レベル以上であることを保証するものである。
【0081】
検定実績データベース21は、「検定内容」、「ベース加点」、「合否結果」、及び「評価点」の欄を備える。「検定内容」の欄には、検定が実施される作業内容が登録されている。ここでは、「掘削・積込」、「平地整形」、及び「のり面整形」の3つの作業内容に対する検定が実施されるので、「検定内容」の欄には、これら3つ作業内容が登録されている。「合否結果」の欄には、検定に対する合否結果が登録されており、合格の場合は「1」が登録され、合格していない場合は「0」が登録されている。「ベース加点」及び「評価点」は、
図3で説明したものと同じである。但し、ベース加点については、
図12に示す作業実績データベース19及び
図13に示すシミュレータ実績データベース20の評価点とのスケールを合わせるために、
図12及び
図13の評価点に比べて50倍の値が設定されている。
【0082】
技能レベル算出部16は、作業実績データベース19における作業内容別の評価点と、シミュレータ実績データベース20における作業内容別の評価点と、検定実績データベース21における作業内容別の評価点との合計値を算出する。例えば、作業実績データベース19の評価点の合計値は、410(=60+20+60+45+225)であり、シミュレータ実績データベース20の評価点の合計値は、275(=82+54+45+24+70)であり、検定実績データベース21の評価点の合計値は200(=50+150)である。したがって、「機種レンジ:3t~t5」、「ATT種類:標準」、「先端ATT種類:バケット」の組み合わせに対する評価点の最終合計値は885(=410+275+200)と算出される。そして、技能レベル算出部16は、ランク決定テーブルT3を参照すると最終合計値「858」は、ランクが「F」であるため、このオペレータについて、「機種レンジ:3t~t5」、「ATT種類:標準」、「先端ATT種類:バケット」の組み合わせに対する技能レベルをFと算出する。更に、技能レベル算出部16は、該当するオペレータについて、「機種レンジ」、「ATT種類」、及び「先端ATT種類」の他の組み合わせに対する作業実績があれば、その組み合わせに対しても評価点の合計値を算出して技能レベルを算出する。
【0083】
なお、技能レベル算出部16は、作業実績データベース19、シミュレータ実績データベース20、及び検定実績データベース21のいずれか1つのデータが更新される度に技能レベルを算出する処理を実行し、オペレータデータベース18に登録された技能レベルを更新すればよい。
【0084】
図1に参照を戻す。データベース管理部17は、作業実績データベース19、シミュレータ実績データベース20、及び検定実績データベース21を管理する。
【0085】
図15は、データベース管理部17による処理を模式的に示す図である。データベース管理部17は、シミュレータ301(
図1)のトレーニング実績を取得する度に、シミュレータ実績データベース20を更新する。シミュレータ301は、マスター30に設けられたコンピュータプログラムで構成されており、例えば、遠隔操作の技能レベルを向上させる目的で、実作業の合間にオペレータによって実行される。
【0086】
シミュレータ301は、実際の作業現場を模擬した3次元モデルからなる仮想現場環境をコンピュータ空間内に構築し、その仮想現場環境に、実際の建設機械を模擬した建設機械モデルを配置する。そして、シミュレータ301は、オペレータが建設機械モデルの操縦席に座ったときに操縦席ごしに見える仮想現場環境の画像を生成してマスター30の表示部に表示させる。ここで、シミュレータ301は、オペレータがマスター30の操作レバーを操作すると、その操作に応じて建設機械モデルのアタッチメント、先端アタッチメント、及び上部旋回体の姿勢を変化させ、その変化に応じて仮想現場環境の画像も変化させる。また、シミュレータ301は、実際の作業現場と同様、仮想現場環境において、オペレータによる操作レバーの操作に応じて掘削及び積込といった作業内容を実現する。
【0087】
シミュレータ301は、起動されると、オペレータに作業内容を選択させ、その作業内容を仮想現場環境内でオペレータに実施させることで、オペレータをトレーニングする。シミュレータ301は、トレーニングが終了すると、作業内容とトレーニング時間とが対応付けられたシミュレーション結果をサーバ10に送信する。
【0088】
データベース管理部17は、シミュレーション結果を取得すると、そのシミュレーション結果にしたがってシミュレータ実績データベース20を更新する。これによって、オペレータが実施したシミュレーションの履歴がシミュレータ実績データベース20に蓄積されていく。
【0089】
また、データベース管理部17は、オペレータがある作業内容に対する検定の合否結果を取得すると、その合否結果にしたがって、検定実績データベース21を更新する。検定は、例えば、本作業受発注システムの提供者によって提供される試験である。オペレータはマスター30の検定実行部302を起動させることでこの検定を受けることができる。この検定は、例えば、実際の教習場に配置された実際の建設機械50をマスター30を用いてオペレータに操作させることで実現される。
【0090】
オペレータは、例えば、マスター30を操作して検定実行部302を起動させて、所望する作業内容に関する検定を実施する旨の検定依頼を入力すると、その検定依頼がサーバ10に送信される。検定依頼を受信したサーバ10は、教習場の所定の建設機械50に搭載されたスレーブ40をマスター30と通信接続させて所定の建設機械50をマスター30により遠隔操作可能な状態にした後、検定を開始する。この検定の合否は、例えば、遠隔操作によって教習場で実際に行われる作業を試験官が遠隔的又は直接的に目視することで決定される。そして、試験官により合否が決定されると、その合否結果が試験官の端末からサーバ10に送信される。データベース管理部17は、この合否結果を受信すると、該当するオペレータの検定実績データベース21を更新する。
【0091】
これにより、オペレータは、シミュレータ301によって提供される仮想現場環境においてある程度練習して、技能レベルを向上させてから、検定に望むことが可能となる。
【0092】
また、データベース管理部17は、実作業に対する作業実績を取得すると、その作業実績で作業実績データベース19を更新する。作業実績には、オペレータがマスター30の操作レバーに入力した操作量の情報が含まれている。ここで、建設機械50によって行われる作業内容は、種別毎に、アタッチメント、先端アタッチメント、及び上部旋回体の姿勢の変化パターンがある程度決まっているので、作業内容の種別はオペレータが操作レバーに対して入力した操作量の情報に基づいて特定可能である。そこで、データベース管理部17は、作業実績に含まれる操作量の情報から、作業内容と作業時間とを特定し、該当するオペレータの作業実績データベース19に登録すればよい。
【0093】
このように、本実施の形態では、オペレータは実作業のみならず、シミュレータ301によるトレーニングをするほど技能レベルが向上し、且つ、検定に合格するほど技能レベルが向上し、より多くの作業依頼を受注できるしくみになっている。そのため、実作業の空き時間を利用してシミュレータ及び検定を受けて技能レベルを向上させようとするモチベーションをオペレータに付与することができ、オペレータの技能レベルの全体的な嵩上げを図ることができる。
【0094】
図1に参照を戻す。マスター30は、シミュレータ301(遠隔操作シミュレータの一例)、検定実行部302、及び通信部303を備える。シミュレータ301は、上述したオペレータをトレーニングするためのシミュレーションを実行する。検定実行部302は、オペレータが検定を受ける際に起動される。通信部303は、マスター30をネットワークNT1及び通信路NT2に接続するための通信装置で構成されている。
【0095】
図16は、本発明の実施の形態に係る作業受発注システムの処理を示すフローチャートである。S101では、発注者端末200の操作部203は、作業発注者によって入力された作業要求情報を受け付ける。S102では、制御部202は、操作部203が受け付けた作業要求情報を通信部303に渡し、通信部303は作業要求情報をサーバ10に送信する。ここでは、
図2の作業エントリー画面G1、
図3の作業内容入力画面G2又は
図4の作業内容入力画面G3を用いて入力された各種情報が作業要求情報として送信される。
【0096】
S201では、サーバ10の通信部11は、作業要求情報を受信する。S202では、サーバ10の要求技能レベル決定部12は、通信部11が受信した作業要求情報から要求技能レベルを算出する。例えば、
図3に示すような、各作業内容に対する作業時間を含む作業要求情報が受信されたとすると、各作業内容の評価点の合計値「410」が算出され、ランク決定テーブルT3を参照することで要求技能レベルはFに決定される。
【0097】
S202では、通信部11は、S202で算出された要求技能レベルを発注者端末200に送信する。S103では、発注者端末200の通信部204は、要求技能レベルを受信する。これにより、発注者端末200には
図6に示す作業エントリー最終画面G4が表示され、要求技能レベルが作業発注者に通知される。
【0098】
S203では、一覧情報生成部13は、オペレータデータベース18にエントリーされたオペレータのうち、技能レベルが要求技能レベル以上のオペレータを抽出する。例えば、「機械レンジン:3t~5t」、「ATT種類:標準」、「先端ATT種類:バケット」を含む作業要求情報が受信され、要求技能レベルが「A」であったとする。この場合、一覧情報生成部13は、「機械レンジン:3t~5t」、「ATT種類:標準」、「先端ATT種類:バケット」の組み合わせに対する技能レベルが「A」以上のオペレータをオペレータデータベース18から抽出する。
【0099】
S204では、サーバ10において、一覧情報生成部13は、S203で抽出したオペレータを作業発注者に提示するためのオペレータ一覧情報を生成して通信部204に渡し、通信部204はオペレータ一覧情報を発注者端末200に送信する。
【0100】
S104では、発注者端末200において、通信部204はオペレータ一覧情報を受信し、制御部202はオペレータリスト画面G150(
図8)を生成し、表示部201に表示する。
【0101】
S105では、発注者端末200において、操作部203は、オペレータリスト画面G150を閲覧した作業発注者から作業依頼をするオペレータの選択指示を受け付ける。
【0102】
S106では、発注者端末200において、制御部202は、操作部203が受け付けた選択指示を通信部204に渡し、通信部204は選択指示をサーバ10に送信する。
【0103】
S205では、サーバ10の通信部11は、選択指示を受信する。S206では、サーバ10において、作業依頼生成部14は、通信部11が受信した選択指示に基づいて、作業依頼通知を生成し、通信部11に渡し、通信部11は作業依頼通知をマスター30に送信する。
【0104】
S301では、マスター30の通信部303は、作業依頼通知を受信する。S302では、マスター30は、通信部303が受信した作業依頼通知に基づいて、オファーリスト画面G160を生成して、オファーリスト画面G160を閲覧したオペレータから作業依頼に対する承諾指示を受け付ける。S303では、マスター30の通信部303は、承諾指示をサーバ10に送信する。
【0105】
S207では、サーバ10の通信部11は、承諾指示を受信する。S208では、サーバ10において、作業許可部15は、オペレータが承諾した作業依頼に対応する作業をオペレータに許可するアクセスコードを発行して通信部11に渡し、通信部11はアクセスコードをマスター30に送信する。S304では、マスター30の通信部303はアクセスコードを受信する。
【0106】
このように、本実施の形態によれば、作業発注者が発注する作業に対して要求される要求技能レベル以上の技能レベルを持つオペレータがオペレータデータベースから抽出され、抽出結果に基づいて、オペレータ一覧情報が生成され、発注者端末200によって作業発注者に提示される。そのため、作業発注者は、オペレータ一覧情報に含まれるオペレータを閲覧することで、発注した作業に適した技能レベルを持つオペレータを容易に選択することができる。
【0107】
本実施の形態は以下の変形例が採用できる。
【0108】
(1)
図5に示すランク決定テーブルは、5段階のランクを規定しているが、このランクは4段階以下、6段階以上であってもよい。
【0109】
(2)本実施の形態では、作業発注者は、
図8に示すオペレータリスト画面G150をクリックすることでオペレータを選択すると作業依頼が該当するオペレータのマスター30に送信される。そして、該当するオペレータは、オファーリスト画面G160から承諾指示を入力すると、作業発注者とオペレータとの契約が成立する態様、すなわち、オンラインにて両者の契約が成立する態様が採用されている。本発明は、これに限定されず、作業発注者とオペレータとの契約はオンラインではなく、書面のやりとりにより行われてもよい。
【0110】
(3)上記実施の形態では、作業発注者情報に含まれる「機械レンジ」、「ATT種類」、及び「先端ATT種類」の組み合わせに対する技能レベルが要求技能レベル以上のオペレータがオペレータデータベース18から抽出されている。本発明はこれに限定されず、「機械レンジ」、「ATT種類」、及び「先端ATT種類」の組み合わせを考慮することなく要求技能レベルが要求レベル以上のオペレータをオペレータデータベース18から抽出してもよい。この場合、オペレータデータベース18は、「機械レンジ」、「ATT種類」、及び「先端ATT種類」の組み合わせ毎にオペレータの技能レベルを記憶しなくて済む。
【符号の説明】
【0111】
10 サーバ
11 通信部
12 要求技能レベル決定部
13 一覧情報生成部
14 作業依頼生成部
15 作業許可部
16 技能レベル算出部
17 データベース管理部
18 オペレータデータベース
19 作業実績データベース
20 シミュレータ実績データベース
21 検定実績データベース
30 マスター
50 建設機械
200 発注者端末
T1 オペレータテーブル
T2 技能レベルテーブル
T3 ランク決定テーブル