(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】インバータ制御装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20230111BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2018084583
(22)【出願日】2018-04-25
【審査請求日】2021-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】300052246
【氏名又は名称】日本電産エレシス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(74)【代理人】
【識別番号】100176692
【氏名又は名称】岡崎 ▲廣▼志
(72)【発明者】
【氏名】岩上 直記
(72)【発明者】
【氏名】黒柳 均志
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-206363(JP,A)
【文献】特開2017-60266(JP,A)
【文献】特開2015-23720(JP,A)
【文献】特開2010-104135(JP,A)
【文献】特開2013-211943(JP,A)
【文献】国際公開第2016/186089(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電流を入力する高圧部とモータに駆動電流を供給するパワー部とからなるモータ駆動用のインバータ制御装置であって、
前記高圧部の筐体正面部に配置された第1入力端子と、
前記パワー部内のパワーモジュールに配置された第2入力端子と、
前記パワー部の筐体正面部に配置された第1出力端子と、
前記高圧部の筐体内に配置され、前記第1入力端子と前記第2入力端子とを電気的に接続する第1のバスバーと、
を備え、
前記第1のバスバーのうち所定部より前記第1入力端子側に位置する第1の部位の厚さを、前記所定部より前記第2入力端子側に位置する第2の部位よりも厚くして、前記第1の部位の熱容量を前記第2の部位の熱容量よりも大きくし、
前記高圧部の筐体側面部にさらに前記第1入力端子と選択的に使用される第3入力端子としての付加端子を配置し、前記高圧部の筐体内に前記第1のバスバーと選択的に配置した第3のバスバーにより該付加端子と前記第2入力端子とを電気的に接続して、該付加端子より入力した電源電流を前記第2入力端子へ送電する、
ことを特徴とするインバータ制御装置。
【請求項2】
前記付加端子は、選択的に第2出力端子として使用され、前記第1のバスバーを所定部より分岐してなる第2のバスバーにより該付加端子と前記第2入力端子とを電気的に接続して、前記第1入力端子より入力した電源電流を前記第2入力端子と
前記第2出力端子としての該付加端子とに分配することを特徴とする請求項1に記載のインバータ制御装置。
【請求項3】
さらに、前記パワー部の筐体内に実装したコンデンサの電荷放出用抵抗器を前記高圧部の筐体内に配置し、該抵抗器で発生した熱を該高圧部の筐体に放熱することを特徴とする請求項1に記載のインバータ制御装置。
【請求項4】
前記高圧部の筐体の外部底面部および前記パワー部の筐体の外部底面部の所定位置に複数の凹部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のインバータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用電力変換装置であるインバータ制御装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年における環境対応車両として、電動モータを駆動源とする電気自動車、ハイブリッド自動車等が普及し始めている。電気自動車等には、バッテリからの直流電力を駆動モータへ供給する交流電力に変換し、モータ回転数、駆動トルク等を制御して車両の加減速を行うインバータ装置(電力変換装置)が搭載されている。
【0003】
例えば特許文献1には、車両に搭載される電力変換装置として、ケース内部で、そのケースの底部から上方の開口部に向けて突出したボス部の先端面にパワー系主回路部、制御回路部、入力フィルタ回路部等をネジ止めして配置し、収容した電力変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の電力変換装置では、金属製のバスバーで構成された制御電線、入力電線、出力電線が、外部インターフェースと接続する複数のコネクタと一体成形で構成されている。これらのコネクタは、ケースの側壁に制御回路部、入力フィルタ回路部、出力フィルタ回路部の高さに応じた高さ位置に締結具により固定されている。
【0006】
このように、特許文献1の電力変換装置は、ケースにおいてコネクタの取付け位置が固定されているので、インバータ制御装置を搭載する車両に対応して、外部電源の入力端子の位置を変更する等の対応ができない。また、特許文献1では、高圧電源を扱う電路で発生した熱を放熱する方策が採られていないため、装置の他の部位が高圧部での発熱の影響を受けるという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高圧大電流を通電する高圧部において電源用端子の配置、用途等を変更可能なインバータ制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成し、上述した課題を解決する一手段として以下の構成を備える。すなわち、本願の例示的な第1の発明は、電源電流を入力する高圧部とモータに駆動電流を供給するパワー部とからなるモータ駆動用のインバータ制御装置であって、前記高圧部の筐体正面部に配置された第1入力端子と、前記パワー部内のパワーモジュールに配置された第2入力端子と、前記パワー部の筐体正面部に配置された第1出力端子と、前記高圧部の筐体内に配置され、前記第1入力端子と前記第2入力端子とを電気的に接続する第1のバスバーとを備え、前記第1のバスバーのうち所定部より前記第1入力端子側に位置する第1の部位の厚さを、前記所定部より前記第2入力端子側に位置する第2の部位よりも厚くして、前記第1の部位の熱容量を前記第2の部位の熱容量よりも大きくしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、付加端子を設けることで、外部電源から入力した高圧電流の経路をインバータ制御装置の高圧部内で選択的に変えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は本発明の実施形態に係るインバータ制御装置が搭載された車両の概略構成である。
【
図2】
図2は駆動モータとギアを組み合わせて一体化したインバータ制御装置の外観図である。
【
図3】
図3はインバータ制御装置における電気的な接続部(コネクタ端子)の配置を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3に対応する各コネクタ端子と電源供給路を模式的に示す図である。
【
図5a】
図5aは高圧部の付加端子を電源出力端子として使用する例を示す図である。
【
図5b】
図5bは付加端子を外部電源の入力端子として使用する例を示す図である。
【
図6】
図6はインバータ制御装置の高圧部内に設けられたバスバーの構成を示す図である。
【
図7】
図7はインバータ制御装置におけるコンデンサからの電荷放出構成を示す図である。
【
図8】
図8は筐体の外部底面部の所定位置に設けた複数の凹部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るインバータ制御装置が搭載された車両の概略構成である。
図1において電動モータ15は、例えば三相交流モータであって、車両の駆動力源である。電動モータ15の回転軸は減速機6とディファレンシャルギア7に連結されており、電動モータ15の駆動力(トルク)は、これら減速機6、ディファレンシャルギア7、ドライブシャフト(駆動軸)8を介して一対の車輪5a,5bに伝達される。
【0012】
インバータ制御装置10のインバータ部20は、電動モータ15に駆動電力を供給するパワーモジュールユニット13と、パワーモジュールユニット13に駆動信号を出力するパワーモジュール制御部12と、パワーモジュール制御部12に制御信号を出力するインバータ制御部11と、平滑用のコンデンサ14とを備える。インバータ部20は、車両全体の制御を司る制御装置3からの制御信号により制御される。
【0013】
パワーモジュールユニット13は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等のパワースイッチング素子を、U相、V相、W相毎に2個(上アームのパワースイッチング素子と下アームのパワースイッチング素子)、計6個のパワースイッチング素子を接続してなるブリッジ回路(電力変換回路)を有している。
【0014】
パワーモジュールユニット13は、パワーモジュール制御部12からの駆動信号(PWM制御信号)により、パワースイッチング素子のオン/オフを切り替えることで、バッテリBTからの直流電力を交流電力(三相交流電力)に変換し、それにより電動モータ15を駆動する。
【0015】
バッテリ(BT)は、車両の動力源である電気エネルギーの供給元であり、例えば、複数の二次電池で構成される。インバータ部20には、バッテリ(BT)との接続部にコンデンサ14が配置されている。コンデンサ14は、高電位ライン(正極電位B+)と低電位ライン(負極電位B-(GND))間に接続されており、バッテリBTからの入力電圧を平滑化する大容量の平滑コンデンサ(フィルムコンデンサ)である。
【0016】
図2は、インバータ制御装置10の外観図であり、インバータ制御装置10と駆動モータ15とギア7を組み合わせて一体化された状態を示している。インバータ制御装置10の筐体31は、例えばアルミダイキャストを成形してなる。インバータ制御装置10は、外部バッテリ(
図1のバッテリ(BT))からの高圧電流の入力部である高圧部10aと、駆動モータに駆動電流を供給するパワー部10bとで構成される。
【0017】
高圧部10aとパワー部10bは、筐体31の内部において隔壁18を介して分離されている。高圧部10aとパワー部10bそれぞれの上面部は、例えばアルミニウム等の金属からなる平板状の部材からなるカバー39a,39bで覆われている。
【0018】
なお、
図8に示すようにインバータ制御装置10の高圧部10aの筐体の外部底面部、およびパワー部10bの筐体の外部底面部それぞれの所定位置には、複数の凹部(凹部61a~61c)が設けられている。これらの凹部により、製造設備、製造ラインにおけるインバータ制御装置の位置決めが容易になり、作業効率が向上する。
【0019】
図3は、インバータ制御装置10における電気的な接続部であるコネクタ端子の配置を示す斜視図である。インバータ制御装置10の高圧部10aは、その高圧部10aの筐体正面部37に配置され外部電源(バッテリ)を接続して高圧電流を入力する外部電源入力端子23と、筐体側面部38に配置された付加端子29とを有する。
【0020】
インバータ制御装置10のパワー部10bは、高圧部10aの外部電源入力端子23より入力された高圧電流を高圧部10a内に設けられた一対のバスバー42,43を介して受電するパワー部入力端子25と、パワー部10bの筐体正面部36に配置され、駆動モータへ電源電流を供給する出力端子27とを有する。
【0021】
図4、
図5aおよび
図5bは、インバータ制御装置10における上記各コネクタ端子および電源供給路について説明するための図である。
図4は、
図3に対応する各コネクタ端子と電源供給路を模式的に示している。すなわち、外部電源入力端子23とパワー部入力端子25は、バスバー42,43を介して相互に電気的に接続されている。
【0022】
バスバー42,43は、高圧部10aとパワー部10bとの隔壁18を通過して、インバータ部20に配置されたパワー部入力端子25に終端されている。また、
図4は、高圧部10aの付加端子29に電気的な接続がなされていない状態を示している。付加端子29の形成に際しては、外部電源入力端子23と同じ金型を使用できる。
【0023】
図5aは、高圧部10aの付加端子29を電源出力端子として使用する例を示している。ここでは、一対のバスバー44,45に分岐を設け、バスバー44,45が外部電源入力端子23とパワー部入力端子25間のみならず、付加端子29とも接続されている。このような構成とすることで、外部電源入力端子23に接続された外部電源からの高圧電流を、パワー部入力端子25と付加端子29の双方に送電できる。
【0024】
よって、
図5aに示す構成によれば、付加端子29が高圧部10aにおける第2のコネクタとして機能し、付加端子29を他の機器への電源供給用端子として使用できる。したがって、別途、電源端子を用意することなく、インバータ制御装置10に接続された外部電源の供給先、用途等を拡大できる。
【0025】
図5bは、付加端子29を外部電源の入力端子として使用する例を示している。すなわち、付加端子29とパワー部入力端子25間に一対のバスバー46,47を配置することで、付加端子29を外部電源入力端子23の代替端子として使用できる。また、インバータ制御装置10を搭載する車両の仕様変更に対応して、外部電源の入力端子の位置を、外部電源入力端子23から付加端子29に変更できる。
【0026】
図6は、インバータ制御装置10の高圧部10a内に設けられたバスバー42,43の構成を示している。
図6に示すようにバスバー42は、外部電源入力端子23側に位置するバスバー42aと、パワー部入力端子25側に位置するバスバー42bとからなり、これらバスバー42a,42bの一方端部同士が中継用ネジ40により相互に接続されている。
【0027】
同様にバスバー43も、外部電源入力端子23側に位置するバスバー43aと、パワー部入力端子25側に位置するバスバー43bとからなり、それらの一方端部同士が中継用ネジ41により相互に接続されている。
【0028】
バスバー42aの厚さt1は、バスバー42bの厚さt2よりも厚く形成されている(t1>t2)。バスバー43aとバスバー43bの厚さについても同様である。これにより、高圧部10aにおいて高圧大電流によってバスバーで発生した熱を、隔壁18から離れた、より熱容量の大きい外部電源入力端子23側のバスバー42a,43aに効率的に放熱できる。その結果、パワー部10b内のインバータ部20に対する、高圧部10a内で発生した熱の影響を回避できる。
【0029】
図7は、インバータ制御装置におけるコンデンサからの電荷放出構成を示している。高圧部10aの筐体内には、
図7に示すように、ワイヤーハネス53を介してコンデンサ14と電気的に接続された電荷放出用抵抗器51が配置されている。
【0030】
コンデンサ14内の電荷が電荷放出用抵抗器51に放出された場合、電荷放出用抵抗器51は発熱するが、電荷放出用抵抗器51は高圧部10aの筐体にネジ54で固定され、熱伝導可能に構成されている。そのため、電荷放出用抵抗器51で発生した熱は高圧部10aの筐体に放熱される。これにより、インバータ制御装置10の保守・点検時等において、コンデンサ14からの電荷放出が容易になり、保守・点検作業の安全性を確保できる。
【0031】
以上説明したように本実施の形態に係るインバータ制御装置において、電源電流を入力する高圧部の筐体正面部に第1入力端子を配置し、モータに駆動電流を供給するパワー部内のパワーモジュールに第2入力端子を配置し、パワー部の筐体正面部に第1出力端子を配置し、さらに高圧部の筐体側面部に付加端子が配置した構成を有する。
【0032】
このような構成により、外部電源入力端子としての第1入力端子に接続された外部電源からの高圧電流を、パワー部入力端子としての第2入力端子と付加端子の双方に送電する態様と、付加端子を高圧部における第2のコネクタとして機能させる、すなわち、付加端子を第1入力端子の代替端子として使用し、その付加端子を他の機器への電源供給用端子として使用する態様を実現できる。
【0033】
また、第1入力端子と第2入力端子間を電気的に接続するバスバーのうち、第1入力端子側のバスバーの厚さを第2入力端子側のバスバーよりも厚く形成することで、高圧大電流を扱う高圧部のバスバーで発生した熱を、第2入力端子側よりも熱容量の大きい第1入力端子(外部電源入力端子)側のバスバーに効率的に放熱できる。
【符号の説明】
【0034】
3 制御装置
5a,5b 車輪
6 減速機
7 ディファレンシャルギア
8 ドライブシャフト(駆動軸)
10 インバータ制御装置
10a 高圧部
10b パワー部
11 インバータ制御部
12 パワーモジュール制御部
13 パワーモジュールユニット
14 平滑用コンデンサ
15 電動モータ
18 隔壁
23 外部電源入力端子
25 パワー部入力端子
27 出力端子
29 付加端子
36 筐体正面部
37 筐体正面部
38 筐体側面部
40 中継用ネジ
42~45,42a,42b,43a,43b バスバー
51 電荷放出用抵抗器
53 ワイヤーハネス
BT バッテリ