(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】歪補償装置および歪補償方法
(51)【国際特許分類】
H03F 1/32 20060101AFI20230111BHJP
H04B 1/04 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
H03F1/32 158
H04B1/04 R
(21)【出願番号】P 2018170216
(22)【出願日】2018-09-12
【審査請求日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2017211099
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロズキン アレクサンダー ニコラビッチ
(72)【発明者】
【氏名】石川 広吉
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0129257(US,A1)
【文献】特開2005-086440(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101547178(CN,A)
【文献】特開2008-258713(JP,A)
【文献】特表2012-531095(JP,A)
【文献】特開2001-211135(JP,A)
【文献】特開2011-188093(JP,A)
【文献】特開2006-157256(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105207628(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/32
H04B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号に対して周波数毎に割り当てられた複数のサブキャリア信号を入力し、前記複数のサブキャリア信号にそれぞれ複数のフィルタ係数を重畳するフィルタ部と、
前記複数のフィルタ係数がそれぞれ重畳された前記複数のサブキャリア信号を周波数領域から時間領域に変換し、入力信号として出力する第1信号変換部と、
前記入力信号に歪補償係数を重畳して出力信号として出力する歪補償部と、
前記出力信号を増幅して出力する電力増幅器と、
前記入力信号又は前記複数のサブキャリア信号と前記電力増幅器からのフィードバック信号と
の差分をそれぞれ複数の誤差信号として生成する誤差信号生成部と、前記複数の誤差信号と前記複数のサブキャリア信号とを用いた演算式により前記複数のフィルタ係数を生成
するフィルタ係数生成部とを有し、前記複数のフィルタ係数を前記フィルタ部に出力
し、且つ、前記入力信号と前記複数の誤差信号の合計値とを用いた演算式により前記歪補償係数を生成して前記歪補償部に出力する制御部と、
を有することを特徴とする歪補償装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記フィードバック信号を時間領域から周波数領域に変換する第2信号変換部
をさらに有し、
前記誤差信号生成部は、前記複数のサブキャリア信号と前記周波数領域に変換された信号との差分をそれぞれ前記複数の誤差信号として
生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の歪補償装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記フィードバック信号に対して特定の周波数帯域の信号を通過させる帯域制限部と、
前記帯域制限部を通過した前記フィードバック信号に対して間引きを行ない、前記間引きが行なわれた前記フィードバック信号を前記第2信号変換部に出力するデシメーション部と、
を有することを特徴とする請求項2に記載の歪補償装置。
【請求項4】
前記誤差信号生成部は、前記入力信号と前記フィードバック信号との差分を示す誤差信号を生成し、
前記制御部は、
前記誤差信号を時間領域から周波数領域に変換して、複数の誤差信号を生成する第2信号変換部
をさらに有する
ことを特徴とする請求項1に記載の歪補償装置。
【請求項5】
前記入力信号のピーク電力を抑圧する抑圧部をさらに有し、
前記制御部は、前記抑圧部によってピーク電力が抑圧された入力信号と前記複数の誤差信号の合計値とを用いた演算式により前記歪補償係数を生成する、
ことを特徴とする
請求項1に記載の歪補償装置。
【請求項6】
前記複数のサブキャリア信号であるN個のサブキャリア信号は、隣接するX個のサブキャリア毎にMグループに分けられ(N、X、Mは、M=N/Xを満たす整数)、
前記制御部は、
Mを用いた演算式により、前記複数の誤差信号として、各グループにおいて前記隣接するX個のサブキャリア毎に同じ値に設定されたM個の誤差信号を生成し、
前記M個の誤差信号と前記Mグループのサブキャリア信号とを用いた演算式により、前記複数のフィルタ係数としてM個のフィルタ係数を生成し、
前記フィルタ部は、前記Mグループのサブキャリア信号にそれぞれ前記M個のフィルタ係数を重畳する、
ことを特徴とする請求項
1から5のいずれか一項に記載の歪補償装置。
【請求項7】
前記フィルタ部は、
各グループ内の乗算積がマッピングされたM個のテーブル、
を有し、
前記制御部は、前記M個のフィルタ係数をそれぞれ前記M個のテーブルに格納し、
前記フィルタ部は、前記制御部により更新された前記M個のテーブルを参照して、前記Mグループのサブキャリア信号にそれぞれ前記M個のフィルタ係数を重畳する、
ことを特徴とする請求項
6に記載の歪補償装置。
【請求項8】
前記フィルタ部は、
サブキャリア信号の振幅に対応するフィルタ係数を記憶し、前記複数のサブキャリア信号それぞれの振幅に対応して記憶されたフィルタ係数を出力する記憶部を含み、
前記複数のサブキャリア信号にそれぞれ前記記憶部から出力されるフィルタ係数を重畳する
ことを特徴とする請求項1に記載の歪補償装置。
【請求項9】
フィルタ機構に、送信信号に対して周波数毎に割り当てられた複数のサブキャリア信号を入力し、前記複数のサブキャリア信号にそれぞれ複数のフィルタ係数を重畳
させ、
前記複数のフィルタ係数がそれぞれ重畳された前記複数のサブキャリア信号を周波数領域から時間領域に変換し、
前記時間領域に変換された信号に対してオーバーサンプリングを行ない、入力信号として出力し、
歪補償機構に、前記入力信号に歪補償係数を重畳して出力信号として電力増幅器に出力
する処理を行わせ、
前記入力信号又は前記複数のサブキャリア信号と前記電力増幅器からのフィードバック信号と
の差分をそれぞれ複数の誤差信号として生成する誤差信号生成部と、前記複数の誤差信号と前記複数のサブキャリア信号とを用いた演算式により前記複数のフィルタ係数を生成
し、
前記複数のフィルタ係数を前記フィルタ機構に出力し、且つ、前記入力信号と前記複数の誤差信号の合計値とを用いた演算式により前記歪補償係数を生成して前記歪補償機構に出力する、
処理を実行することを特徴とする歪補償方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歪補償装置および歪補償方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マルチメディアサービス等の需要により、ネットワークを介して伝送される情報量が増大しているため、大容量の伝送方式が求められている。そして、伝送容量を大きくするための技術の1つとして、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)を用いる無線通信システムが実用化されている。OFDMを用いる無線通信システムは、例えば、第4世代の移動通信システム、または、4Gシステムとも呼ばれる。4Gシステムの標準規格としては、LTE(Long Term Evolution)やLTE-Advanced(LTE-A)などが挙げられる。OFDMを用いる無線通信システムでは、互いに直交するサブキャリアに対して用途に応じた様々な多値変調方式の信号を重畳して伝送する。
【0003】
上記無線通信システムにおいて、信号を送信する送信側には電力増幅器が使用される。電力増幅器の入出力特性は、出力が小さい場合は線形性を有し、出力が大きくなると飽和して非線形性を有する。例えば、電力増幅器を飽和領域近くの高効率で動作させる場合、電力増幅器の入出力特性は非線形性を有する。この非線形性により、相互変調歪(IMD:InterModulation Distortion)が生じる。IMDは、振幅変調-振幅変調(AM-AM)型の歪(すなわち、「振幅歪」)、および、振幅変調-位相変調(AM-PM)型の歪(すなわち、「位相歪」)で規定される。IMDが生じると、隣接チャネルへ不要な歪成分が漏洩し、送信信号の周波数帯域内および帯域外に歪が発生する(以後、送信信号の周波数帯域内を「帯域内」、送信信号の周波数帯域外を「帯域外」と記載する)。その結果、混信の原因になる。
【0004】
そこで、電力増幅器のIMDを補償する手法として、ディジタルプリディストーション(DPD;Digital Pre-Distortion)が挙げられる。DPDとは、電力増幅器に入力される前の信号に対して、電力増幅器の非線形性の歪特性とは逆特性の歪成分として、歪補償係数を重畳する処理である。歪補償係数は、電力増幅器に入力される信号の瞬時電力に基づいて、LUT(Look Up Table)から参照される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】L. Ding et al, “A Robust Digital Baseband Predistorter Constructed Using Memory Polynomials,” IEEE TRANSACTIONS ON COMMUNICATIONS, VOL. 52, NO. 1, pp. 159-165, January 2004.
【文献】L. Ding et al, “A MEMORY POLYNOMIAL PREDISTORTER IMPLEMENTED USING TMS320C67XX,” Proceedings of Texas Instruments Developer Conference, 2004.
【文献】O. Hammi et al, “Digital Sub-band Filtering Predistorter Architecture for Wireless Transmitters,” IEEE TRANSACTIONS ON MICROWAVE THEORY AND TECHNIQUES, VOL. 53, NO. 5, pp. 1643-1652, MAY 2005.
【文献】Hsin-Hung Chen et al, “Joint Polynomial and Look-Up-Table Predistortion Power Amplifier Linearization,” IEEE TRANSACTIONS ON CIRCUITS AND SYSTEMS-II: EXPRESS BRIEFS, VOL. 53, NO. 8, 612-616, AUGUST 2006.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電力増幅器のIMDには、瞬時電力に基づいた帯域内および帯域外のIMDだけでなく、メモリ効果から生じる帯域内のIMDが存在する。これは、電力増幅器の出力が、電力増幅器に現在入力される信号(瞬時電力)の値だけでなく、電力増幅器に過去に入力された信号の値(履歴)に依存することにより生じる歪である。そこで、メモリ効果から生じる歪も補償するために、DPDにメモリ多項式を採用する場合がある(非特許文献1~4を参照)。しかし、DPDにメモリ多項式を採用する場合、歪を補償するときの演算量が膨大になり、演算等の信号処理による消費電力が増大する。
【0007】
本願に開示の技術は、歪を補償するときの信号処理による消費電力の増大を抑制する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの態様では、歪補償装置は、フィルタ部と、第1信号変換部と、オーバーサンプリング部と、歪補償部と、電力増幅器と、制御部と、を有する。フィルタ部は、送信信号に対して周波数毎に割り当てられた複数のサブキャリア信号を入力し、複数のサブキャリア信号にそれぞれ複数のフィルタ係数を重畳する。第1信号変換部は、複数のフィルタ係数がそれぞれ重畳された複数のサブキャリア信号を周波数領域から時間領域に変換する。オーバーサンプリング部は、時間領域に変換された信号に対してオーバーサンプリングを行ない、入力信号として出力する。歪補償部は、入力信号に歪補償係数を重畳して出力信号として出力する。電力増幅器は、出力信号を増幅して出力する。制御部は、入力信号又は複数のサブキャリア信号と電力増幅器からのフィードバック信号との差分をそれぞれ複数の誤差信号として生成する誤差信号生成部と、複数の誤差信号と複数のサブキャリア信号とを用いた演算式により複数のフィルタ係数を生成するフィルタ係数生成部とを有し、複数のフィルタ係数をフィルタ部に出力し、且つ、入力信号と複数の誤差信号の合計値とを用いた演算式により歪補償係数を生成して歪補償部に出力する。
【発明の効果】
【0009】
1つの側面では、歪を補償するときの信号処理による消費電力の増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施例1に係る送信装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施例1に係る歪補償装置のサブバンドFIRフィルタの構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施例1に係る歪補償装置のサブバンドFIRフィルタの構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施例1に係る歪補償装置の制御部の構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施例1に係る歪補償装置の処理(歪補償方法)の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施例2に係る歪補償装置の制御部の構成の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施例3に係る歪補償装置の制御部の構成の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施例5に係る歪補償装置において、グループ分けされたサブキャリア信号の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施例5に係る歪補償装置において、グループ分けされたサブキャリア信号の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、実施例5に係る歪補償装置のサブバンドFIRフィルタの構成の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、QPSKコンスタレーションの一例を示す図である。
【
図12】
図12は、16QAMコンスタレーションの一例を示す図である。
【
図13】
図13は、実施例6に係るLUTのアドレスの一例を示す図である。
【
図14】
図14は、実施例6に係る歪補償装置のサブバンドFIRフィルタの構成の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、実施例7に係る歪補償装置のサブバンドFIRフィルタの構成の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、16QAMで変調されたシンボルの振幅を示す図である。
【
図17】
図17は、実施例7に係るLUTの一例を示す図である。
【
図18】
図18は、送信装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図19】
図19は、参考例における送信装置の構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本願の開示する歪補償装置および歪補償方法の実施例を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例は開示の技術を限定するものではない。
【0012】
ここで、本実施例に係る歪補償装置について説明する前に、参考例における歪補償装置について説明する。
【0013】
[参考例]
図19は、参考例における送信装置300の構成の一例を示すブロック図である。送信装置300は、送信信号に発生するIMDを補償する歪補償装置を備える。
【0014】
図19に示すように、送信装置300は、逆フーリエ変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)部301、および、オーバーサンプリング部302を有する。更に、送信装置300は、メモリ多項式を用いたディジタルプリディストーション(DPD)部303を有する。以下、メモリ多項式を用いたDPD部303を「M-P DPD部303」と記載する。
【0015】
更に、送信装置300は、デジタルアナログ変換器(DAC)304、アップコンバータ305、高電力増幅器(HPA)306、方向性結合器307、ダウンコンバータ308、アナログデジタル変換器(ADC)309、および、制御部310を有する。
【0016】
IFFT部301は、マッピングされた送信信号(ベクトル)dを入力する。送信信号dは、デジタル信号であり、かつ、周波数の異なるN個のサブキャリアに割り当てられた信号(以下、「サブキャリア信号」と記載する)である。ここで、N個のサブキャリア信号dをサブキャリア信号d0~dN-1と記載する。
【0017】
IFFT部301は、N個のサブキャリア信号d0~dN-1の変調シンボルに対して、IFFTを行なう。これにより、N個のサブキャリア信号のシンボルが、周波数領域の変調シンボルから、時間領域の有効シンボルに変換される。IFFT部301は、IFFTが行なわれた信号をOFDM信号としてオーバーサンプリング部302に出力する。
【0018】
オーバーサンプリング部302は、IFFT部301から出力されたOFDM信号を入力し、入力したOFDM信号に対して係数L(例えばL=4)でオーバーサンプリングを行なう。オーバーサンプリング部302は、オーバーサンプリングを行なったOFDM信号を入力信号x(n)としてM-P DPD部303および制御部310に出力する。
【0019】
ここで、入力信号x(n)は、式(1)により表される。式(1)において、jは、虚数単位を表す。Δfは、サブキャリア間隔であり、1/NTを表す。NTは、シンボル長を表す。
【0020】
【0021】
M-P DPD部303は、オーバーサンプリング部302から出力された入力信号x(n)を入力し、入力した入力信号x(n)に対して、メモリ多項式を用いたDPDを行なう(非特許文献1~4を参照)。
【0022】
具体的には、M-P DPD部303は、制御部310から出力された歪補償係数akqを受け取る。そして、M-P DPD部303は、入力信号x(n)に歪補償係数akqを重畳(乗算)する。歪補償係数akqは、HPA306の非線形性の歪特性とは逆特性の歪成分に相当する。M-P DPD部303は、歪補償係数akqが重畳された入力信号x(n)を出力信号z(n)としてDAC304に出力する。
【0023】
ここで、出力信号z(n)は、式(2)により表される。式(2)において、akqは、上述の歪補償係数である。Kは、仮定する非線形歪の最高次の次数であり、Qは、メモリの深さ(時間軸方向)を表す。メモリ多項式を用いたDPDにおいて、例えば、Q=2、K=5である(非特許文献1)。
【0024】
【0025】
また、式(2)を展開した場合、出力信号z(n)は、式(3)により表される。
【0026】
【0027】
DAC304は、M-P DPD部303から出力されたデジタル信号である出力信号z(n)を入力する。DAC304は、入力した出力信号z(n)をアナログ信号に変換し、アップコンバータ305に出力する。
【0028】
アップコンバータ305は、DAC304から出力された信号を入力する。アップコンバータ305は、入力した信号をアップコンバートすることにより、無線周波数(RF)の信号に変換し、HPA306に出力する。
【0029】
HPA306は、アップコンバータ305から出力された信号の電力を増幅し、方向性結合器307に出力する。ここで、HPA306では相互変調歪(IMD)が発生するが、M-P DPD部303(Q=2)が、オーバーサンプリング後の入力信号x(n)に歪補償係数akqを重畳している。このため、HPA306から出力される信号は、瞬時電力に基づいた帯域内および帯域外のIMDと、メモリ効果から生じる帯域内のIMDとが補償された信号となる。
【0030】
方向性結合器307は、HPA306から出力された信号をアンテナに出力する。アンテナは、方向性結合器307から出力された信号を送信する。また、方向性結合器307は、HPA306から出力された信号を分配し、ダウンコンバータ308に出力する。
【0031】
ダウンコンバータ308は、方向性結合器307から出力された信号を入力する。ダウンコンバータ308は、入力した信号をダウンコンバートし、ADC309に出力する。
【0032】
ADC309は、ダウンコンバータ308から出力された信号を入力する。ADC309は、入力した信号をデジタル信号に変換し、フィードバック信号y(n)として制御部310に出力する。
【0033】
制御部310は、オーバーサンプリング部302から出力された入力信号x(n)を入力し、ADC309から出力されたフィードバック信号y(n)を入力する。制御部310は、入力した入力信号x(n)とフィードバック信号y(n)との差分を算出し、誤差信号ε(n)として生成する。
【0034】
ここで、誤差信号ε(n)は、式(4)により表される。
【0035】
【0036】
制御部310は、LMS(Least Mean Square)アルゴリズム等を用いた適応信号処理によって誤差信号ε(n)が最小となるように、歪補償係数akqを算出する。制御部310は、算出した歪補償係数akqをM-P DPD部303に出力する。
【0037】
ここで、歪補償係数akqは、式(5)により表される。式(5)において、*は、複素共役であり、μkは、アルゴリズムの収束速度と残留誤差との間のトレードオフを制御するために用いられるステップサイズパラメータである。
【0038】
【0039】
このように、M-P DPD部303および制御部310は、送信装置300の送信信号に発生するIMDを補償する。すなわち、参考例における歪補償装置は、少なくともM-P DPD部303および制御部310を含む。ここで、HPA306のような電力増幅器のIMDには、瞬時電力に基づいた帯域内および帯域外のIMDだけでなく、メモリ効果から生じる帯域内のIMDが存在する。これは、電力増幅器の出力が、電力増幅器に現在入力される信号(瞬時電力)の値だけでなく、電力増幅器に過去に入力された信号の値(履歴)に依存することにより生じる歪である。そこで、メモリ効果から生じる歪も補償するために、参考例における歪補償装置のように、DPDにメモリ多項式を採用する場合がある。しかし、DPDにメモリ多項式を採用する場合、歪を補償するときの演算量が膨大になり、演算等の信号処理による消費電力が増大する。
【0040】
そこで、本実施例に係る歪補償装置では、帯域内のIMDが高域側と低域側とでインバランスであることに着目し、送信信号に対して周波数毎に重みを重畳する。例えば、後述のサブバンド有限インパルス応答(FIR)フィルタが、送信信号に対して周波数毎に割り当てられた複数のサブキャリア信号を入力し、複数のサブキャリア信号に対して、重みとしてフィルタ係数を重畳する。これにより、結果的に、メモリ効果から生じる帯域内のIMDを補償することができる。
【0041】
また、本実施例に係る歪補償装置では、メモリ効果から生じる帯域内のIMDを後述のサブバンドFIRフィルタが補償することにより、歪を補償するときの演算量が低減される。これにより、本実施例に係る歪補償装置では、参考例における歪補償装置と比べて、すなわち、DPDにメモリ多項式を採用する場合と比べて、演算等の信号処理による消費電力を低減することが可能である。
【0042】
また、本実施例に係る歪補償装置では、後述のメモリレス(すなわち、メモリ効果レス)のDPD部が入力信号x(n)に歪補償係数akqを重畳することにより、瞬時電力に基づいた帯域内および帯域外のIMDを補償する。これにより、本実施例に係る歪補償装置では、参考例における歪補償装置と同レベルのエラーベクトル振幅(EVM)および隣接チャネル漏洩電力比(ACLR:Adjacent Channel Leakage Ratio)を維持することができる。
【実施例1】
【0043】
図1は、実施例1に係る送信装置100の構成の一例を示すブロック図である。
【0044】
図1に示すように、送信装置100は、サブバンドFIRフィルタ101、IFFT部102、オーバーサンプリング部103、および、CFR(Crest Factor Reduction)部104を有する。サブバンドFIRフィルタ101は、「フィルタ部」の一例である。IFFT部102は、「第1信号変換部」の一例である。
【0045】
更に、送信装置100は、メモリレスのDPD部105を有する。メモリレスのDPD部105は、メモリ効果の影響を補償しない通常のDPDを行なう。以下、メモリレスのDPD部105を「M-L DPD部105」と記載する。M-L DPD部105は、「歪補償部」の一例である。
【0046】
更に、送信装置100は、DAC106、アップコンバータ107、HPA108、方向性結合器109、ダウンコンバータ110、ADC111、および、制御部112を有する。この送信装置100は、送信信号に発生するIMDを補償する歪補償装置を備える。すなわち、送信装置100は、少なくともサブバンドFIRフィルタ101、M-L DPD部105および制御部112を含む歪補償装置を備える。
【0047】
サブバンドFIRフィルタ101は、マッピングされた送信信号(ベクトル)dを入力する。マッピングされた送信信号dは、デジタル信号であり、かつ、周波数の異なるN個のサブキャリアに割り当てられた信号(以下、「サブキャリア信号」と記載する)である。ここで、N個のサブキャリア信号dをサブキャリア信号d0~dN-1と記載し、k番目のサブキャリア信号dをサブキャリア信号dkと記載する。
【0048】
また、サブバンドFIRフィルタ101は、制御部112から出力された重みであるN個のフィルタ係数wを入力する。ここで、N個のフィルタ係数wをフィルタ係数w0~wN-1と記載し、k番目のフィルタ係数wをフィルタ係数wkと記載する。
【0049】
サブバンドFIRフィルタ101は、N個のサブキャリア信号d0~dN-1にそれぞれN個のフィルタ係数w0~wN-1を重畳(乗算)する。
【0050】
図2および
図3は、実施例1に係る歪補償装置のサブバンドFIRフィルタ101の構成の一例を示す図である。
【0051】
サブバンドFIRフィルタ101は、
図2に示すような1タップ構成である。この場合、サブバンドFIRフィルタ101は、N個の乗算器120を有する。例えば、N個の乗算器120のうちのk番目の乗算器120は、N個のサブキャリア信号d
0~d
N-1のうちのk番目のサブキャリア信号d
kと、N個のフィルタ係数w
0~w
N-1のうちのk番目のフィルタ係数w
kとを入力する。そして、k番目の乗算器120は、k番目のサブキャリア信号d
kにk番目のフィルタ係数w
kを乗算する。
【0052】
または、サブバンドFIRフィルタ101は、
図3に示すようなmタップ構成でもよい。この場合、サブバンドFIRフィルタ101は、mタップの乗算器121、(m-1)個の遅延器122、および、(m-1)個の加算器123を有している。mタップの乗算器121は、0番目から(m-1)番目まで並列に設けられている。(m-1)個の遅延器122は、直列に接続され、信号を時間τで遅延する。(m-1)個の遅延器122の出力は、それぞれ、mタップの乗算器121のうちの1番目から(m-1)番目までの乗算器121の入力に接続されている。(m-1)個の加算器123は直列に接続されている。k番目のサブキャリア信号d
kには、m個の乗算器121によりフィルタ係数w
kとしてフィルタ係数w
k(0)~w
k(m-1)が乗算され、m個の乗算器121の出力は(m-1)個の加算器123により合成される。
【0053】
図1において、サブバンドFIRフィルタ101は、N個のフィルタ係数w
0~w
N-1がそれぞれ重畳されたN個のサブキャリア信号d
0~d
N-1をIFFT部102に出力する。
【0054】
IFFT部102は、サブバンドFIRフィルタ101から出力されたN個のサブキャリア信号を入力する。IFFT部102は、N個のサブキャリア信号の変調シンボルに対して、IFFTを行なう。これにより、N個のサブキャリア信号のシンボルが、周波数領域の変調シンボルから、時間領域の有効シンボルに変換される。IFFT部102は、IFFTが行なわれた信号をOFDM信号としてオーバーサンプリング部103に出力する。
【0055】
オーバーサンプリング部103は、IFFT部102から出力されたOFDM信号を入力し、入力したOFDM信号に対して係数Lでオーバーサンプリングを行なう。オーバーサンプリング部103は、オーバーサンプリングを行なったOFDM信号を入力信号x(n)として、CFR部104を介してM-L DPD部105および制御部112に出力する。入力信号x(n)がCFR部104を通過することにより、入力信号x(n)のピーク電力がクリッピング等により抑圧される。
【0056】
M-L DPD部105は、オーバーサンプリング部103からCFR部104を介して出力された入力信号x(n)を入力し、入力した入力信号x(n)に歪補償係数akを重畳する。
【0057】
具体的には、M-L DPD部105は、制御部112から出力された歪補償係数akを受け取る。そして、M-L DPD部105は、入力信号x(n)に歪補償係数akを重畳(乗算)する。歪補償係数akは、HPA108の非線形性の歪特性とは逆特性の歪成分に相当する。M-L DPD部105は、歪補償係数akが重畳された入力信号x(n)を出力信号z(n)としてDAC106に出力する。
【0058】
ここで、メモリレスのDPDでは、上述の式(2)のQは0となるため(Q=0)、本実施例では、上述の式(2)、(3)の歪補償係数akqを歪補償係数akと記載する。
【0059】
DAC106は、M-L DPD部105から出力されたデジタル信号である出力信号z(n)を入力する。DAC106は、入力した出力信号z(n)をアナログ信号に変換し、アップコンバータ107に出力する。
【0060】
アップコンバータ107は、DAC106から出力された信号を入力する。アップコンバータ107は、入力した信号をアップコンバートすることにより、無線周波数(RF)の信号に変換し、HPA108に出力する。
【0061】
HPA108は、アップコンバータ107から出力された信号の電力を増幅し、方向性結合器109に出力する。ここで、HPA108では相互変調歪(IMD)が発生するが、サブバンドFIRフィルタ101が、N個のサブキャリア信号d0~dN-1にそれぞれN個のフィルタ係数w0~wN-1を重畳している。このため、HPA108から出力される信号は、結果的に、メモリ効果から生じる帯域内のIMDが補償された信号となる。また、M-L DPD部105(Q=0)が、オーバーサンプリング後の入力信号x(n)に歪補償係数akを重畳している。このため、HPA108から出力される信号は、瞬時電力に基づいた帯域内および帯域外のIMDが補償された信号となる。
【0062】
方向性結合器109は、HPA108から出力された信号をアンテナに出力する。アンテナは、方向性結合器109から出力された信号を送信する。また、方向性結合器109は、HPA108から出力された信号を分配し、ダウンコンバータ110に出力する。
【0063】
ダウンコンバータ110は、方向性結合器109から出力された信号を入力する。ダウンコンバータ110は、入力した信号をダウンコンバートし、ADC111に出力する。
【0064】
ADC111は、ダウンコンバータ110から出力された信号を入力する。ADC111は、入力した信号をデジタル信号に変換し、フィードバック信号y(n)として制御部112に出力する。
【0065】
制御部112は、CFR部104から出力された入力信号x(n)を入力する。また、制御部112は、ADC111から出力されたフィードバック信号y(n)を入力する。制御部112は、上述の式(4)を用いて、入力信号x(n)とフィードバック信号y(n)との差分を算出し、誤差信号ε(n)として生成する。そして、制御部112は、LMSアルゴリズム等を用いた適応信号処理によって誤差信号ε(n)が最小となるように、上述の式(5)を用いて、歪補償係数akを算出する。制御部112は、算出した歪補償係数akをM-L DPD部105に出力する。
【0066】
ここで、メモリレスのDPDでは、上述の式(2)のQは0となるため(Q=0)、本実施例では、上述の式(5)の歪補償係数akqを歪補償係数akと記載する。
【0067】
また、制御部112は、マッピングされた送信信号(ベクトル)dを入力する。上述のように、送信信号dは、周波数の異なるN個のサブキャリアに割り当てられたサブキャリア信号d0~dN-1である。そして、制御部112は、送信信号dであるN個のサブキャリア信号d0~dN-1と、フィードバック信号y(n)とを用いた演算式(後述の式(6)、式(7))により、N個のフィルタ係数w0~wN-1を生成する。
【0068】
制御部112は、例えば、
図4に示す構成により、N個のフィルタ係数w
0~w
N-1を生成する。
【0069】
図4は、実施例1に係る歪補償装置の制御部112の構成の一例を示す図である。
図4に示すように、制御部112は、フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)部131、誤差信号生成部132、および、フィルタ係数生成部133を有する。FFT部131は、「第2信号変換部」の一例である。
【0070】
FFT部131は、ADC111から出力されたフィードバック信号y(n)を入力する。そして、FFT部131は、フィードバック信号y(n)を時間領域から周波数領域に変換し、周波数領域に変換された信号d^
0~d^
N-1を誤差信号生成部132に出力する。
【0071】
誤差信号生成部132は、送信信号dであるN個のサブキャリア信号d0~dN-1を入力する。また、誤差信号生成部132は、FFT部131から出力された信号d^
0~d^
N-1を入力する。この誤差信号生成部132は、N個の減算器を有する。N個の減算器は、N個のサブキャリア信号d0~dN-1と信号d^
0~d^
N-1との差分を算出し、それぞれN個の誤差信号ε0(n)~εN-1(n)として出力する。
【0072】
ここで、N個の誤差信号ε0(n)~εN-1(n)のうちのk番目の誤差信号εk(n)は、式(6)により表される。
【0073】
【0074】
フィルタ係数生成部133は、送信信号dであるN個のサブキャリア信号d0~dN-1を入力する。また、フィルタ係数生成部133は、誤差信号生成部132から出力されたN個の誤差信号ε0(n)~εN-1(n)を入力する。フィルタ係数生成部133は、N個の誤差信号ε0(n)~εN-1(n)とN個のサブキャリア信号d0~dN-1とを用いた演算式により、N個のフィルタ係数w0~wN-1を生成する。フィルタ係数生成部133は、生成したN個のフィルタ係数w0~wN-1をサブバンドFIRフィルタ101に出力する。
【0075】
ここで、N個のフィルタ係数w0~wN-1のうちのk番目のフィルタ係数wkは、式(7)により表される。式(7)において、*は、複素共役であり、μkは、アルゴリズムの収束速度と残留誤差との間のトレードオフを制御するために用いられるステップサイズパラメータである。
【0076】
【0077】
図5は、実施例1に係る歪補償装置の処理(歪補償方法)の一例を示すフローチャートである。
【0078】
まず、FIRフィルタ処理(ステップS101)が行なわれる。この処理において、サブバンドFIRフィルタ101は、送信信号dに対して周波数毎に割り当てられたN個のサブキャリア信号d0~dN-1を入力し、N個のサブキャリア信号d0~dN-1にそれぞれN個のフィルタ係数w0~wN-1を重畳する。
【0079】
次に、IFFT処理(ステップS102)が行なわれる。この処理において、IFFT部102は、N個のフィルタ係数w0~wN-1がそれぞれ重畳されたN個のサブキャリア信号d0~dN-1を周波数領域から時間領域に変換する。
【0080】
次に、オーバーサンプリング処理(ステップS103)が行なわれる。この処理において、オーバーサンプリング部103は、時間領域に変換された信号に対してオーバーサンプリングを行ない、入力信号x(n)として、CFR部104を介してM-L DPD部105および制御部112に出力する。
【0081】
次に、DPD処理(ステップS104)が行なわれる。この処理において、M-L DPD部105は、入力信号x(n)に歪補償係数akを重畳して出力信号z(n)としてDAC106に出力する。
【0082】
次に、増幅出力処理(ステップS105)が行なわれる。この処理において、DAC106は、出力信号z(n)をアナログ信号に変換し、アップコンバータ107を介してHPA108に出力する。HPA108は、アップコンバータ107から出力された信号の電力を増幅して出力する。方向性結合器109は、HPA108から出力された信号をアンテナに出力すると共に、ダウンコンバータ110を介してADC111に出力する。ADC111は、ダウンコンバータ110から出力された信号をデジタル信号に変換し、フィードバック信号y(n)として制御部112に出力する。
【0083】
次に、係数生成処理(ステップS106)が行なわれる。この処理において、制御部112は、N個のサブキャリア信号d0~dN-1とフィードバック信号y(n)とを用いた演算式(上述の式(6)、式(7)を参照)により、N個のフィルタ係数w0~wN-1を生成して、サブバンドFIRフィルタ101に出力する。制御部112は、入力信号x(n)とフィードバック信号y(n)とを用いた演算式(上述の式(4)、式(5)を参照)により歪補償係数akを生成してM-L DPD部105に出力する。
【0084】
以上の説明により、実施例1に係る歪補償装置では、サブバンドFIRフィルタ101が、送信信号dに対して周波数毎に割り当てられたN個のサブキャリア信号d0~dN-1を入力し、N個のサブキャリア信号d0~dN-1にそれぞれフィルタ係数w0~wN-1を重畳する。これにより、結果的に、メモリ効果から生じる帯域内のIMDを補償することができる。
【0085】
また、実施例1に係る歪補償装置では、メモリ効果から生じる帯域内のIMDをサブバンドFIRフィルタ101が補償することにより、歪を補償するときの演算量が低減される。これにより、実施例1に係る歪補償装置では、参考例における歪補償装置300と比べて、すなわち、DPDにメモリ多項式を採用する場合と比べて、演算等の信号処理による消費電力を低減することができる。
【0086】
また、実施例1に係る歪補償装置では、M-L DPD部105が、オーバーサンプリング後の入力信号x(n)に歪補償係数akを重畳することにより、瞬時電力に基づいた帯域内および帯域外のIMDを補償する。これにより、実施例1に係る歪補償装置では、参考例における歪補償装置と同レベルのEVMおよびACLRを維持することができる。
【実施例2】
【0087】
実施例1に係る歪補償装置では、制御部112は、
図4に示す構成により、N個のフィルタ係数w
0~w
N-1を生成しているが、これに限定されない。例えば、実施例2に係る歪補償装置では、制御部112は、以下の構成により、N個のフィルタ係数w
0~w
N-1を生成してもよい。実施例2では、実施例1と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0088】
図6は、実施例2に係る歪補償装置の制御部112の構成の一例を示す図である。
図6に示すように、制御部112は、
図4の構成に対して、更に、バンドパスフィルタ(BPF)134、および、デシメーション部135を有する。BPF134は、「帯域制限部」の一例である。
【0089】
BPF134は、ADC111から出力されたフィードバック信号y(n)を入力する。そして、BPF134は、フィードバック信号y(n)に対して特定の周波数帯域の信号を通過させ、それ以外の周波数帯域の信号を減衰させる。
【0090】
デシメーション部135は、BPF134を通過したフィードバック信号y(n)に対して間引きを行なう。そして、デシメーション部135は、間引きが行なわれたフィードバック信号y(n)をFFT部131に出力する。
【0091】
FFT部131は、デシメーション部135から出力されたフィードバック信号y(n)を入力する。そして、FFT部131は、フィードバック信号y(n)を時間領域から周波数領域に変換し、周波数領域に変換された信号d^
0~d^
N-1を誤差信号生成部132に出力する。誤差信号生成部132は、送信信号dであるN個のサブキャリア信号d0~dN-1と、FFT部131から出力された信号d^
0~d^
N-1との差分を算出し、それぞれN個の誤差信号ε0(n)~εN-1(n)として出力する。フィルタ係数生成部133は、送信信号dであるN個のサブキャリア信号d0~dN-1と、誤差信号生成部132から出力されたN個の誤差信号ε0(n)~εN-1(n)とを用いた演算式(上述の式(7))により、N個のフィルタ係数w0~wN-1を生成する。フィルタ係数生成部133は、生成したN個のフィルタ係数w0~wN-1をサブバンドFIRフィルタ101に出力する。
【0092】
信号がオーバーサンプリングされたままである場合、サンプリング周波数が高く、その後の信号処理の規模がオーバーサンプリングしない場合よりも大きくなる。このため、BPF134を通過したフィードバック信号y(n)に対して間引きが行なわれる。これにより、
図6に示す制御部112は、
図4の構成に対して、FFT部131のサイズを低減することができる。
【実施例3】
【0093】
実施例1、2に係る歪補償装置では、制御部112は、
図4、6に示す構成により、N個のフィルタ係数w
0~w
N-1を生成しているが、これに限定されない。例えば、実施例3に係る歪補償装置では、制御部112は、以下の構成により、N個のフィルタ係数w
0~w
N-1を生成してもよい。実施例3では、実施例1、2と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0094】
図7は、実施例3に係る歪補償装置の制御部112の構成の一例を示す図である。
図7に示すように、制御部112は、誤差信号生成部141、FFT部142、および、フィルタ係数生成部143を有する。FFT部142は、「第2信号変換部」の一例である。
【0095】
誤差信号生成部141は、オーバーサンプリング部103から出力された入力信号x(n)を入力する。また、誤差信号生成部141は、ADC111から出力されたフィードバック信号y(n)を入力する。この誤差信号生成部141は、減算器である。誤差信号生成部141は、入力信号x(n)とフィードバック信号y(n)との差分を算出し、誤差信号εとして出力する。
【0096】
FFT部142は、誤差信号生成部141から出力された誤差信号εを入力する。そして、FFT部142は、誤差信号εを時間領域から周波数領域に変換し、周波数領域に変換されたN個の信号ε0(n)~εN-1(n)を誤差信号としてフィルタ係数生成部143に出力する。
【0097】
フィルタ係数生成部143は、送信信号dであるN個のサブキャリア信号d0~dN-1を入力する。また、フィルタ係数生成部143は、FFT部142から出力されたN個の誤差信号ε0(n)~εN-1(n)を入力する。フィルタ係数生成部143は、N個の誤差信号ε0(n)~εN-1(n)とN個のサブキャリア信号d0~dN-1とを用いた演算式(上述の式(7)を参照)により、N個のフィルタ係数w0~wN-1を生成する。フィルタ係数生成部143は、生成したN個のフィルタ係数w0~wN-1をサブバンドFIRフィルタ101に出力する。
【実施例4】
【0098】
実施例1~3に係る歪補償装置では、制御部112は、入力信号x(n)とフィードバック信号y(n)とを用いた演算式(上述の式(4)、式(5))により、歪補償係数akを生成しているが、これに限定されない。例えば、実施例4に係る歪補償装置では、制御部112は、実施例1~3に示したN個の誤差信号ε0(n)~εN-1(n)を用いて、歪補償係数akを生成してもよい。実施例4では、実施例1~3と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0099】
この場合、制御部112は、誤差信号生成部132(
図4、
図6)またはFFT部142(
図7)により生成されたN個の誤差信号ε
0(n)~ε
N-1(n)の合計値を誤差信号ε(n)として生成する。
【0100】
ここで、誤差信号ε(n)は、上述の式(4)に代えて、式(8)により表される。
【0101】
【0102】
そして、制御部112は、LMSアルゴリズム等を用いた適応信号処理によって誤差信号ε(n)が最小となるように、上述の式(5)を用いて、歪補償係数akを算出する。
【実施例5】
【0103】
実施例1~4に係る歪補償装置では、サブバンドFIRフィルタ101は、例えば1タップ構成である場合、N個の乗算器120を有している。この場合、乗算器120の数Nが多ければ多いほど、制御部112からN個の乗算器120にN個のフィルタ係数w0~wN-1を供給する信号の数も多くなり、サブバンドFIRフィルタ101の回路規模が増大する。実施例5に係る歪補償装置では、サブバンドFIRフィルタ101の回路規模を削減する方法について説明する。
【0104】
まず、実施例5に係る歪補償装置では、サブバンドFIRフィルタ101の回路規模を削減するために、フィルタ係数の数を削減する。
【0105】
図8および
図9は、実施例5に係る歪補償装置において、グループ分けされたサブキャリア信号の一例を示す図である。
図8および
図9において、横軸は、周波数fであり、サブキャリアの数Nを表す。縦軸は、サブキャリア信号を表す。
【0106】
一般的に、各サブキャリアには、すなわち、各サブキャリア信号d0~dN-1には、独自のフィルタ係数が割り当てられる。しかしながら、サブキャリア間の周波数間隔(サブキャリア間隔)は比較的小さい。例えば、LTE信号におけるサブキャリア間隔は15kHzである。したがって、隣接サブキャリアの重みには相関性があり、隣接サブキャリアに同じ値のフィルタ係数を割り当て可能であることは想定できる。
【0107】
そこで、実施例5に係る歪補償装置では、
図8に示すように、N個のサブキャリア、すなわち、N個のサブキャリア信号d
0~d
N-1を、隣接するX個のサブキャリア毎にMグループに分ける。この場合、N、X、Mは、M=N/Xを満たす整数である。そして、実施例5に係る歪補償装置では、Mグループの各々において隣接するX個のサブキャリア毎に同じ値に設定されたM個のフィルタ係数w[0]~w[M-1]を生成する。
【0108】
例えば、LTE信号が20MHzの信号である場合、
図9に示すように、N、X、Mは、それぞれ、1200、150、8である。すなわち、1200個のサブキャリア信号d
0~d
N-1は、隣接する150個のサブキャリア毎に8グループに分けられる。この場合、各グループにおいて隣接する150個のサブキャリア毎に同じ値に設定された8個のフィルタ係数w[0]~w[7]が生成される。
【0109】
そこで、制御部112が実施例1、2に示す構成である場合を想定する。この場合、誤差信号生成部132は、上記Mと、Mグループのサブキャリア信号dkと、Mグループ毎にFFT部131により周波数領域に変換された信号d^
kとを用いた演算式により、M個の誤差信号εk(n)を生成する。
【0110】
ここで、M個の誤差信号εk(n)は、式(9)により表される。式(9)において、誤差信号εk(n)は、X隣接サブキャリア(-X/2からX/2までのサブキャリアインデックス)毎に同じ重み(同じ値)となる。
【0111】
【0112】
フィルタ係数生成部133は、M個の誤差信号εk(n)とMグループのサブキャリア信号dkとを用いた演算式(上述の式(7))により、上述のN個のフィルタ係数w0~wN-1として、M個のフィルタ係数w[0]~w[M-1]を生成する。フィルタ係数生成部133は、生成したM個のフィルタ係数w[0]~w[M-1]をサブバンドFIRフィルタ101に出力する。
【0113】
サブバンドFIRフィルタ101は、送信信号dに対して周波数毎に割り当てられたN個のサブキャリア信号d0~dN-1を入力する。N個のサブキャリア信号d0~dN-1は、隣接するX個のサブキャリア毎にMグループに分けられている。また、サブバンドFIRフィルタ101は、制御部112から出力されたM個のフィルタ係数w[0]~w[M-1]を入力する。そして、サブバンドFIRフィルタ101は、Mグループのサブキャリア信号dkにそれぞれM個のフィルタ係数w[0]~w[M-1]を重畳(乗算)する。
【0114】
図10は、実施例5に係る歪補償装置のサブバンドFIRフィルタ101の構成の一例を示す図である。
図10に示すように、X=2とした場合、サブバンドFIRフィルタ101は、グループ内のサブキャリア信号d
k-1、d
k、d
k+1に同じ値のフィルタ係数w
kを重畳(乗算)する。
【0115】
以上の説明により、実施例5に係る歪補償装置では、フィルタ係数の数をN個からM個に減らすことにより、フィルタ係数の数をX倍削減することができる。例えば、フィルタ係数の数が1200個から8個に減るため、フィルタ係数の数が150倍削減される。このため、実施例5に係る歪補償装置では、サブバンドFIRフィルタ101の回路規模を削減することができる。
【実施例6】
【0116】
実施例6に係る歪補償装置では、実施例5に示すサブバンドFIRフィルタ101における各グループの乗算器120をLUTに置き換えることにより、サブバンドFIRフィルタ101の回路規模を更に削減する。
【0117】
送信信号d、すなわち、サブキャリア信号d
kは、振幅を有する。その振幅値は、変調に依存する。QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調用のサブキャリア信号d
k、および、16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)変調用のサブキャリア信号d
kをそれぞれ
図11および
図12に示す。
【0118】
図11は、QPSKコンスタレーションの一例を示す図である。
図11において、横軸は、サブキャリア信号d
kのI成分であり、縦軸は、サブキャリア信号d
kのQ成分である。
図11に示すように、QPSK変調においては、サブキャリア信号d
kは、d
k={I,Q}={±1,±1}により、合計4個の組み合わせが可能である。
【0119】
図12は、16QAMコンスタレーションの一例を示す図である。
図12において、横軸は、サブキャリア信号d
kのI成分であり、縦軸は、サブキャリア信号d
kのQ成分である。
図12に示すように、16QAM変調においては、サブキャリア信号d
kは、d
k={I,Q}={±3,±3}で、合計16個の組み合わせが可能である。
【0120】
したがって、実施例6に係る歪補償装置では、Mグループの各々の乗算積について、全ての組み合わせ(QPSK変調では4個、16QAM変調では16個)を事前に算出しておき、その後、サブキャリア信号dkに適用することができる。
【0121】
例えば、各グループMxにおいて隣接する150個のサブキャリア(X=150)のフィルタ係数をw[Mx]とし、送信信号dとしてQPSK変調用のサブキャリア信号dkを仮定する。この場合、乗算積dk・w[Mx]は、以下の4つの乗算積により表すことができる。
P1=dk・w={+1,+1}・w
P2=dk・w={+1,-1}・w
P3=dk・w={-1,+1}・w
P4=dk・w={-1,-1}・w
【0122】
グループMx内の150個のサブキャリアの乗算積dk・w[Mx]は、事前に算出された4個の信号P={P1、P2、P3、P4}を用いて、サブキャリア信号dkにより選択可能である。4個の信号Pは、LUTに書き込み可能である。この場合、LUTのアドレスAddrは、以下の式により算出することができる。
Addr=((2・I+Q)+3)/2
【0123】
図13は、実施例6に係るLUTのアドレスの一例を示す図である。上式により、送信信号d、すなわち、サブキャリア信号d
kのI成分、Q成分がそれぞれ-1、-1である場合、LUTのアドレスAddrは「0」となる。同様に、I成分、Q成分がそれぞれ-1、+1である場合、LUTのアドレスAddrは「1」となる。I成分、Q成分がそれぞれ+1、-1である場合、LUTのアドレスAddrは「2」となる。I成分、Q成分がそれぞれ+1、+1である場合、LUTのアドレスAddrは「3」となる。
【0124】
したがって、実施例6に係る歪補償装置では、サブバンドFIRフィルタ101における各グループMxの乗算器120をLUTに置き換えることができる。グループMx毎の乗算数は、QPSK変調では4個であり、16QAM変調では16個であり、64QAM変調では64個である。
【0125】
図14は、実施例6に係る歪補償装置のサブバンドFIRフィルタ101の構成の一例を示す図である。サブバンドFIRフィルタ101は、M個のLUT150を有する。M個のLUT150の各々には、各グループMx内の乗算積d
k・w[Mx]がマッピングされている。
【0126】
ここで、各グループMxにおいて、新たにフィルタ係数w[Mx]が得られた場合、LUT150の内容が更新される。
【0127】
そこで、制御部112が実施例1、2に示す構成である場合を想定する。この場合、誤差信号生成部132は、上記Mと、Mグループのサブキャリア信号dkと、Mグループ毎にFFT部131により周波数領域に変換された信号d^
kとを用いた演算式(上述の式(9))により、M個の誤差信号εk(n)を生成する。
【0128】
フィルタ係数生成部133は、M個の誤差信号εk(n)とMグループのサブキャリア信号dkとを用いた演算式(上述の式(7))により、M個のフィルタ係数w[Mx]を生成する。フィルタ係数生成部133は、生成したM個のフィルタ係数w[Mx]をそれぞれサブバンドFIRフィルタ101のM個のLUT150に格納する。これにより、LUT150の内容が更新される。
【0129】
サブバンドFIRフィルタ101は、制御部112により更新されたM個のテーブル150を参照して、Mグループのサブキャリア信号dkにそれぞれM個のフィルタ係数w[Mx]を重畳(乗算)する。
【0130】
以上の説明により、実施例6に係る歪補償装置では、サブバンドFIRフィルタ101における各グループの乗算器120をLUTに置き換えることにより、サブバンドFIRフィルタ101の回路規模を更に削減することができる。
【実施例7】
【0131】
実施例1~5に係る歪補償装置では、サブバンドFIRフィルタ101は、サブキャリア信号の振幅に関わらず、N個のサブキャリア信号d0~dN-1にそれぞれフィルタ係数w0~wN-1を重畳しているが、これに限定されない。実施例7に係る歪補償装置では、サブバンドFIRフィルタ101は、N個のサブキャリア信号d0~dN-1に、それぞれのサブキャリア信号の振幅に応じたフィルタ係数w0,i~wN-1,iを重畳する。
【0132】
図15は、実施例7に係る歪補償装置のサブバンドFIRフィルタ101の構成の一例を示す図である。
図15において、
図1及び
図2と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0133】
実施例7では、サブバンドFIRフィルタ101がLUT160を有する。LUT160は、サブキャリア信号dkの振幅に対応付けてフィルタ係数wk,iを記憶する。そして、LUT160は、サブバンドFIRフィルタ101へN個のサブキャリア信号d0~dN-1が入力されると、それぞれの振幅に対応するフィルタ係数w0,i~wN-1,iを対応する乗算器120へ出力する。
【0134】
サブキャリア信号dkの変調方式がBPSK(Binary Phase Shift Keying)又はQPSKである場合にはサブキャリア信号dkの振幅は不変であるが、16QAM及び64QAMなどの変調多値数が大きい変調方式が用いられる場合、サブキャリア信号dkの振幅は常に同じではない。
【0135】
具体的には、例えば
図16に示すように、変調方式が16QAMの場合、変調によって得られるシンボルの振幅は|d
k|
0、|d
k|
1、|d
k|
2の3通りである。同様に、変調方式が例えば64QAMの場合、変調によって得られるシンボルの振幅は10通りである。このように、変調方式によっては、サブキャリア信号d
kの振幅が変化するため、LUT160は、それぞれの振幅に対応するフィルタ係数を記憶する。
【0136】
図17は、LUT160の一例を示す図である。
図17は、サブキャリア信号d
kの変調方式が16QAMである場合のLUT160の一例を示す。上述したように、変調方式が16QAMである場合には、変調により得られるシンボルの振幅は3通りであるため、3つの異なる振幅|d
k|
0、|d
k|
1、|d
k|
2にそれぞれフィルタ係数w
k,0、w
k,1、w
k,2が対応付けて記憶されている。そして、LUT160は、入力されたサブキャリア信号d
kの振幅に応じたフィルタ係数を乗算器120へ出力する。
【0137】
また、実施例7に係る制御部112は、入力されたサブキャリア信号d0~dN-1それぞれの振幅に対応するフィルタ係数w0,i~WN-1,iを生成し、サブキャリア信号d0~dN-1それぞれの振幅に対応付けてLUT160に格納する。制御部112がフィルタ係数w0,i~WN-1,iを生成する方法は、実施例1~6と同様である。
【0138】
以上の説明により、実施例7に係る歪補償装置では、サブキャリア信号の振幅ごとにフィルタ係数を記憶しており、サブキャリア信号の振幅に応じたフィルタ係数をサブキャリア信号に重畳する。このため、サブキャリア信号の特性に応じて歪補償をすることができ、変調多値数が大きい変調方式が用いられる場合の歪補償性能を向上することができる。すなわち、例えば16QAM、64QAM又は256QAMなどの変調方式が用いられる場合に、EVM及びACLRを改善することができる。
【0139】
[他の実施例]
本実施例で図示した各部の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【0140】
さらに、各装置で行われる各種処理は、CPU(Central Processing Unit)(又はMPU(Micro Processing Unit)、MCU(Micro Controller Unit)等のマイクロ・コンピュータ)上で、その全部又は任意の一部を実行するようにしてもよい。また、各種処理は、CPU(又はMPU、MCU等のマイクロ・コンピュータ)で解析実行するプログラム上、又はワイヤードロジックによるハードウェア上で、その全部又は任意の一部を実行するようにしてもよい。
【0141】
本実施例の歪補償装置を備える送信装置は、例えば、次のようなハードウェア構成により実現することができる。
【0142】
図18は、歪補償装置を備える送信装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図18に示すように、送信装置200は、プロセッサ201と、メモリ202と、アナログ回路203とを有している。プロセッサ201の一例としては、CPU、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等が挙げられる。また、メモリ202の一例としては、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等のRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等が挙げられる。
【0143】
そして、実施例の送信装置100で行われる各種処理は、不揮発性記憶媒体等の各種メモリに格納されたプログラムをプロセッサで実行することによって実現されてもよい。すなわち、送信装置100のデジタル処理部によって実行される各処理に対応するプログラムがメモリ202に記録され、各プログラムがプロセッサ201で実行されてもよい。送信装置100のデジタル処理部は、例えば、サブバンドFIRフィルタ101、IFFT部102、オーバーサンプリング部103、CFR部104、M-L DPD部105、および、制御部112を含む。この場合、送信装置100のDAC106、アップコンバータ107、HPA108、方向性結合器109、ダウンコンバータ110、および、ADC111は、アナログ回路203によって実現される。
【0144】
なお、ここでは、実施例の送信装置100で行われる各種処理がプロセッサ201によって実行されるものとしたが、これに限定されるものではなく、複数のプロセッサによって実行されてもよい。
【符号の説明】
【0145】
100 送信装置
101 サブバンドFIRフィルタ
102 IFFT部
103 オーバーサンプリング部
104 CFR部
105 M-L DPD部
106 DAC
107 アップコンバータ
108 HPA
109 方向性結合器
110 ダウンコンバータ
111 ADC
112 制御部
120 乗算器
121 乗算器
122 遅延器
123 加算器
131 FFT部
132 誤差信号生成部
133 フィルタ係数生成部
134 BPF
135 デシメーション部
141 誤差信号生成部
142 FFT部
143 フィルタ係数生成部
150 LUT
160 LUT
200 送信装置
201 プロセッサ
202 メモリ
203 アナログ回路
300 送信装置
301 IFFT部
302 オーバーサンプリング部
303 M-P DPD部
304 DAC
305 アップコンバータ
306 HPA
307 方向性結合器
308 ダウンコンバータ
309 ADC
310 制御部