(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】コンデンサの寿命推定方法、その寿命推定プログラム、情報処理装置およびコンデンサ
(51)【国際特許分類】
G01R 31/00 20060101AFI20230111BHJP
G01R 27/26 20060101ALI20230111BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20230111BHJP
【FI】
G01R31/00
G01R27/26 C
H01G13/00 371Z
H01G13/00 361Z
(21)【出願番号】P 2018184290
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000228578
【氏名又は名称】日本ケミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(74)【代理人】
【識別番号】100206933
【氏名又は名称】沖田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】千才 大蔵
(72)【発明者】
【氏名】古川 敏彦
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-69834(JP,A)
【文献】特開2016-31305(JP,A)
【文献】特開2000-131362(JP,A)
【文献】特開2010-60305(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0103937(US,A1)
【文献】GASPERI,Michael L.,Life Prediction Model for Aluminum Electrolytic Capacitors,Industry Applications Society Annual Meeting (IAS),ConferenceRecord of the IEEE,Volume:3,IEEE,2002年08月06日,p.1347-1351,https://ieeexplore.ieee.org/document/559241
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/00
G01R 27/26
H01G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも駆動タイミング情報および駆動電流値情報を含む駆動条件と、コンデンサの温度変化特性情報を利用して推定発熱温度を算出し、
前記推定発熱温度を利用して、基準時間経過後のコンデンサの状態変化情報を算出し、
前記状態変化情報を利用して前記コンデンサの寿命推定値を算出し、
前記寿命推定値と、前記コンデンサの駆動環境温度情報と、該駆動環境温度情報および前記駆動条件が発生する比率情報とを利用して、複合寿命推定値を算出する、
処理を含むことを特徴とするコンデンサの寿命推定方法。
【請求項2】
少なくとも駆動タイミング情報および駆動電流値情報を含む駆動条件と、コンデンサの温度変化特性情報を利用して推定発熱温度を算出し、
前記推定発熱温度を利用して、前記コンデンサに対して駆動電流を付加する時間と該駆動電流の付加を停止した後に前記コンデンサの発熱温度が所定温度以下になるまでの時間とを含む基準時間経過後のコンデンサの状態変化情報を算出し、
前記状態変化情報を利用して前記コンデンサの寿命推定値を算出する、
処理を含むことを特徴とするコンデンサの寿命推定方法。
【請求項3】
コンデンサの前記状態変化情報を利用して、設定された駆動時間における前記コンデンサの電解液の推定蒸散値を算出し、
前記推定蒸散値と前記電解液の蒸散基準値を利用して前記寿命推定値を算出する、
処理を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンデンサの寿命推定方法。
【請求項4】
さらに、算出された前記寿命推定値が、要求寿命条件を満たすか否かを判定し、
この判定結果を利用して、前記寿命推定値、前記判定結果、前記コンデンサの寿命値改善情報のいずれか1つまたは複数を含む寿命判定情報を生成する、
処理を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のコンデンサの寿命推定方法。
【請求項5】
コンデンサの寿命推定機能を備える情報処理装置であって、
少なくとも駆動タイミング情報および駆動電流値情報を含む駆動条件が入力される入力部と、
該駆動条件およびコンデンサの温度変化特性情報を記憶する記憶部と、
前記駆動条件と、前記温度変化特性情報を利用して推定発熱温度を算出する発熱推定部、および前記推定発熱温度を利用して、基準時間経過後のコンデンサの状態変化情報を算出し、該状態変化情報を利用して前記コンデンサの寿命推定値を算出する寿命推定部を含み、前記寿命推定値と、前記コンデンサの駆動環境温度情報と、該駆動環境温度情報および前記駆動条件が発生する比率情報とを利用して、複合寿命推定値を算出する処理部と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
コンデンサの寿命推定機能を備える情報処理装置であって、
少なくとも駆動タイミング情報および駆動電流値情報を含む駆動条件が入力される入力部と、
該駆動条件およびコンデンサの温度変化特性情報を記憶する記憶部と、
前記駆動条件と、前記温度変化特性情報を利用して推定発熱温度を算出する発熱推定部、および前記推定発熱温度を利用して、前記コンデンサに対して駆動電流を付加する時間と該駆動電流の付加を停止した後に前記コンデンサの発熱温度が所定温度以下になるまでの時間をと含む基準時間経過後のコンデンサの状態変化情報を算出し、該状態変化情報を利用して前記コンデンサの寿命推定値を算出する寿命推定部を含む処理部と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項7】
前記寿命推定部は、コンデンサの前記状態変化情報を利用して、設定された駆動時間における前記コンデンサの電解液の推定蒸散値を算出し、該推定蒸散値と前記電解液の蒸散基準値を利用して前記寿命推定値を算出することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記処理部は、算出された前記寿命推定値が、要求寿命条件を満たすか否かを判定し、この判定結果を利用して、前記寿命推定値、前記判定結果、前記コンデンサの寿命値改善情報のいずれか1つまたは複数を含む寿命判定情報を生成することを特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項9】
さらに表示部を備え、
前記処理部は、少なくとも前記寿命推定値および前記駆動条件を利用した寿命推定表示画面を生成して前記表示部に表示させることを特徴とする請求項5ないし請求項8のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項10】
コンピュータにコンデンサの寿命推定処理を実行させる寿命推定プログラムであって、
少なくとも駆動タイミング情報および駆動電流値情報を含む駆動条件と、コンデンサの温度変化特性情報を利用して推定発熱温度を算出する機能と、
前記推定発熱温度を利用して、基準時間経過後のコンデンサの状態変化情報を算出する機能と、
前記状態変化情報を利用して前記コンデンサの寿命推定値を算出する機能と、
前記寿命推定値と、前記コンデンサの駆動環境温度情報と、該駆動環境温度情報および前記駆動条件が発生する比率情報とを利用して、複合寿命推定値を算出する機能と、
を前記コンピュータによって実現させることを特徴とするコンデンサの寿命推定プログラム。
【請求項11】
コンデンサの前記状態変化情報を利用して、設定された駆動時間における前記コンデンサの電解液の推定蒸散値を算出する機能と、
前記推定蒸散値と前記電解液の蒸散基準値を利用して前記寿命推定値を算出する機能と、
を前記コンピュータによって実現させることを特徴とする請求項10に記載のコンデンサの寿命推定プログラム。
【請求項12】
さらに、算出された前記寿命推定値が、要求寿命条件を満たすか否かを判定する機能と、
この判定結果を利用して、前記寿命推定値、前記判定結果、前記コンデンサの寿命値改善情報のいずれか1つまたは複数を含む寿命判定情報を生成する機能と、
を前記コンピュータによって実現させることを特徴とする請求項10または請求項11のいずれかに記載のコンデンサの寿命推定プログラム。
【請求項13】
少なくとも駆動タイミング情報および駆動電流値情報を含む駆動条件と、コンデンサの温度変化特性情報を利用して推定発熱温度を算出し、
前記推定発熱温度を利用して、基準時間経過後のコンデンサの状態変化情報を算出し、前記状態変化情報を利用して前記コンデンサの寿命推定値を算出する処理を含むコンデンサの寿命推定方法で算出された寿命推定値情報を利用して設計されたことを特徴とするコンデンサ。
【請求項14】
少なくとも駆動タイミング情報および駆動電流値情報を含む駆動条件と、コンデンサの温度変化特性情報を利用して推定発熱温度を算出し、前記推定発熱温度を利用して、基準時間経過後のコンデンサの状態変化情報を算出し、前記状態変化情報を利用して前記コンデンサの寿命推定値を算出する処理を含むコンデンサの寿命推定方法で算出された寿命推定値情報が付されていることを特徴とするコンデンサ。
【請求項15】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のコンデンサの寿命推定方法で算出された寿命推定値情報を利用して設計されたことを特徴とするコンデンサ。
【請求項16】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のコンデンサの寿命推定方法で算出された寿命推定値情報が付されていることを特徴とするコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサの駆動条件に応じた寿命推定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサなどのコンデンサには、安全性や耐久性などを考慮した定格電流値、所謂定格リプル電流値が設定されており、この定格リプル電流値を超えた電流値が流れないように製品が設計され、または所望の電流値に対応するコンデンサが用いられる。家電製品や産業用の設備の電源に用いられる電解コンデンサには、一定の駆動電流値が継続的に長時間重畳される。
コンデンサの選択にあたり、所定の性能が発揮できる期間、すなわち寿命期間の把握は重要な要素であり、その寿命を割り出す手法が検討されている。
【0003】
電解コンデンサの寿命診断として、たとえばケースに複数の開口部を設けて電解液の拡散加速度を上げた状態で加速寿命試験を行い、重量値や静電容量の変化を検出してコンデンサの寿命を推定するものがある(たとえば、特許文献1)。また基準時点と所定期間経過後の各等価直列抵抗(ESR:Equivalent Series Resistance)の変化や、電解液の変化などを利用して電解コンデンサの劣化を予測するものがある(たとえば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-44714号公報
【文献】特開2006-78215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、自動車などの車両のEPS(Electic Power Steering)駆動回路や主動力モーター用駆動回路等に用いられる電解コンデンサには、たとえばハンドル操作や他の動作への切替えを契機に、数秒から数分の間に定格リプル電流値の数倍の駆動電流が重畳される場合がある。このような電流値が変動する使用条件下で電解コンデンサを用いる場合、一定の駆動電流が流れる場合とは電解コンデンサに与える影響や発熱状態が相違するため、単純な経年変化などに基づく寿命算出は行えない。
アルミ電解コンデンサの寿命には、たとえば使用環境の周囲温度と駆動電流による自己発熱が大きく影響する。このうち自己発熱については、たとえば電解コンデンサを搭載した車両や設備の使用条件がそれぞれ異なるため、その推移状況の把握が困難であるという課題がある。
さらに電解コンデンサの寿命把握には、たとえば搭載する車両や設備の試験機を再現し、想定される駆動条件で実際に動作させる手法が採られていた。そのため、コンデンサの利用環境が異なれば、それに合わせた実験装置の製造が必要になるという課題がある。
斯かる課題について、特許文献1、2には開示や示唆はなく、これらの課題について特許文献1、2に開示された構成で解決することはできない。
【0006】
そこで、本発明の目的は上記課題に鑑み、コンデンサに流れる駆動電流値の変動に対応したコンデンサの寿命推定を可能にすることにある。
また、本発明の他の目的は、短期間に高い駆動電流が流れる場合のコンデンサの状態を推定して、コンデンサの適用性の確認やコンデンサを用いる機器の安全性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のコンデンサの寿命推定方法の一側面は、少なくとも駆動タイミング情報および駆動電流値情報を含む駆動条件と、コンデンサの温度変化特性情報を利用して推定発熱温度を算出し、前記推定発熱温度を利用して、基準時間経過後のコンデンサの状態変化情報を算出し、前記状態変化情報を利用して前記コンデンサの寿命推定値を算出し、前記寿命推定値と、前記コンデンサの駆動環境温度情報と、該駆動環境温度情報および前記駆動条件が発生する比率情報とを利用して、複合寿命推定値を算出する処理を含む。
上記目的を達成するため、本発明のコンデンサの寿命推定方法の一側面は、少なくとも駆動タイミング情報および駆動電流値情報を含む駆動条件と、コンデンサの温度変化特性情報を利用して推定発熱温度を算出し、前記推定発熱温度を利用して、前記コンデンサに対して駆動電流を付加する時間と該駆動電流の付加を停止した後に前記コンデンサの発熱温度が所定温度以下になるまでの時間とを含む基準時間経過後のコンデンサの状態変化情報を算出し、前記状態変化情報を利用して前記コンデンサの寿命推定値を算出する処理を含む。
上記コンデンサの寿命推定方法において、コンデンサの前記状態変化情報を利用して、
設定された駆動時間における前記コンデンサの電解液の推定蒸散値を算出し、前記推定蒸
散値と前記電解液の蒸散基準値を利用して前記寿命推定値を算出する処理を含んでよい。
上記コンデンサの寿命推定方法において、さらに、算出された前記寿命推定値が、要求
寿命条件を満たすか否かを判定し、この判定結果を利用して、前記寿命推定値、前記判定
結果、前記コンデンサの寿命値改善情報のいずれか1つまたは複数を含む寿命判定情報を
生成する処理を含んでよい。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の情報処理装置の一側面は、コンデンサの寿命推定機能を備える情報処理装置であって、少なくとも駆動タイミング情報および駆動電流値情報を含む駆動条件が入力される入力部と、該駆動条件およびコンデンサの温度変化特性情報を記憶する記憶部と、前記駆動条件と、前記温度変化特性情報を利用して推定発熱温度を算出する発熱推定部、および前記推定発熱温度を利用して、基準時間経過後のコンデンサの状態変化情報を算出し、該状態変化情報を利用して前記コンデンサの寿命推定値を算出する寿命推定部を含み、前記寿命推定値と、前記コンデンサの駆動環境温度情報と、該駆動環境温度情報および前記駆動条件が発生する比率情報とを利用して、複合寿命推定値を算出する処理部とを備える。
上記目的を達成するため、本発明の情報処理装置の一側面は、コンデンサの寿命推定機能を備える情報処理装置であって、少なくとも駆動タイミング情報および駆動電流値情報を含む駆動条件が入力される入力部と、該駆動条件およびコンデンサの温度変化特性情報を記憶する記憶部と、前記駆動条件と、前記温度変化特性情報を利用して推定発熱温度を算出する発熱推定部、および前記推定発熱温度を利用して、前記コンデンサに対して駆動電流を付加する時間と該駆動電流の付加を停止した後に前記コンデンサの発熱温度が所定温度以下になるまでの時間をと含む基準時間経過後のコンデンサの状態変化情報を算出し、該状態変化情報を利用して前記コンデンサの寿命推定値を算出する寿命推定部を含む処理部とを備える。
上記情報処理装置において、前記寿命推定部は、コンデンサの前記状態変化情報を利用して、設定された駆動時間における前記コンデンサの電解液の推定蒸散値を算出し、該推定蒸散値と前記電解液の蒸散基準値を利用して前記寿命推定値を算出してよい。
上記情報処理装置において、前記処理部は、算出された前記寿命推定値が、要求寿命条件を満たすか否かを判定し、この判定結果を利用して、前記寿命推定値、前記判定結果、前記コンデンサの寿命値改善情報のいずれか1つまたは複数を含む寿命判定情報を生成してよい。
上記情報処理装置において、さらに表示部を備え、前記処理部は、少なくとも前記寿命推定値および前記駆動条件を利用した寿命推定表示画面を生成して前記表示部に表示させてよい。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のコンデンサの寿命推定プログラムの一側面は、コンピュータにコンデンサの寿命推定処理を実行させる寿命推定プログラムであって、少なくとも駆動タイミング情報および駆動電流値情報を含む駆動条件と、コンデンサの温度変化特性情報を利用して推定発熱温度を算出する機能と、前記推定発熱温度を利用して、基準時間経過後のコンデンサの状態変化情報を算出する機能と、前記状態変化情報を利用して前記コンデンサの寿命推定値を算出する機能と、前記寿命推定値と、前記コンデンサの駆動環境温度情報と、該駆動環境温度情報および前記駆動条件が発生する比率情報とを利用して、複合寿命推定値を算出する機能とを前記コンピュータによって実現させる。
上記コンデンサの寿命推定プログラムにおいて、コンデンサの前記状態変化情報を利用して、設定された駆動時間における前記コンデンサの電解液の推定蒸散値を算出する機能と、前記推定蒸散値と前記電解液の蒸散基準値を利用して前記寿命推定値を算出する機能とを含んでよい。
上記コンデンサの寿命推定プログラムにおいて、さらに、前記寿命推定値と、前記コンデンサの駆動環境温度情報と、該駆動環境温度情報および前記駆動条件が発生する比率情報とを利用して、複合寿命推定値を算出する機能を含んでよい。
上記コンデンサの寿命推定プログラムにおいて、さらに、算出された前記寿命推定値が、要求寿命条件を満たすか否かを判定する機能と、この判定結果を利用して、前記寿命推定値、前記判定結果、前記コンデンサの寿命値改善情報のいずれか1つまたは複数を含む寿命判定情報を生成する機能とを含んでよい。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のコンデンサの一側面は、少なくとも駆動タイミング情報および駆動電流値情報を含む駆動条件と、コンデンサの温度変化特性情報を利用して推定発熱温度を算出し、前記推定発熱温度を利用して、基準時間経過後のコンデンサの状態変化情報を算出し、前記状態変化情報を利用して前記コンデンサの寿命推定値を算出する処理を含むコンデンサの寿命推定方法で算出された寿命推定値情報を利用して設計される。
上記目的を達成するため、本発明のコンデンサの一側面は、少なくとも駆動タイミング情報および駆動電流値情報を含む駆動条件と、コンデンサの温度変化特性情報を利用して推定発熱温度を算出し、前記推定発熱温度を利用して、基準時間経過後のコンデンサの状態変化情報を算出し、前記状態変化情報を利用して前記コンデンサの寿命推定値を算出する処理を含むコンデンサの寿命推定方法で算出された寿命推定値情報が付される。
上記目的を達成するため、本発明のコンデンサの一側面は、上記コンデンサの寿命推定方法で算出された寿命推定値情報を利用して設計される。
上記目的を達成するため、本発明のコンデンサの一側面は、上記コンデンサの寿命推定方法で算出された寿命推定値情報が付される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、次のいずれかの効果が期待できる。
【0012】
(1) 変化する駆動電流値に対するコンデンサの自己発熱推移の解析が可能となる。
(2) コンデンサの自己発熱の推移を解析することで、車両や設備の駆動状態に近い状態でのコンデンサの寿命推定が可能となる。
(3) 短期間に定格値以上の駆動電流が流れる場合のコンデンサの状態や影響を推定することができる。
(4) 電流変動に対するコンデンサの過渡的状態変化を解析でき、コンデンサの限界条件の把握や、コンデンサの利用性および選択性の拡大が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施の形態に係るコンデンサの寿命推定装置の構成例を示す図である。
【
図5】温度変化特性情報の解析原理の一例を示したグラフである。
【
図6】Aは駆動条件の一例を示すグラフであり、Bは駆動条件に基づいて算出した基準時間の推定発熱量の一例を示すグラフであり、Cは推定発熱量に基づいて算出した基準時間の電解液の蒸散量の一例を示すグラフである。
【
図7】コンデンサの寿命推定処理例を示すフローチャートである。
【
図8】第2の実施の形態に係るコンデンサの寿命推定装置の構成例を示す図である。
【
図9】Aは環境条件と使用条件の一例を示すグラフであり、Bはコンデンサの駆動条件と使用条件の一例を示すグラフである。
【
図10】コンデンサの寿命推定処理例を示すフローチャートである。
【
図11】第3の実施の形態に係る情報処理装置のハードウェア構成例を示している。
【
図12】寿命推定結果の表示画面の一例を示す図である。
【
図13】コンデンサの寿命推定処理および寿命判定処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態に係るコンデンサの寿命推定装置の構成例を示している。
図1に示す構成は一例であり、本発明が斯かる構成に限定されない。
この寿命推定装置2は、コンピュータを利用して算出するコンデンサの寿命推定手段の一例であり、変動するコンデンサの駆動電流値により生じるコンデンサの発熱推移を解析して、コンデンサの寿命を推定する。寿命推定が行われるコンデンサは、たとえば有底筒状の外装ケース内に、電極箔やセパレータが巻回されたコンデンサ素子や電解液が入れられ、その開口部を封口板で封止した電解コンデンサである。
そこで寿命推定装置2には、たとえば
図1に示すように、入力部4、記憶部6、処理部8を備える。
【0015】
入力部4は、寿命推定装置2に対する情報入力手段の一例であり、たとえば寿命推定の対象となるコンデンサの情報や、コンデンサを動作させる駆動条件などの情報が入力される。この入力部4は、たとえば寿命推定装置2の操作者が操作する操作キーやマウスでもよく、またはコンデンサの情報や駆動条件などが記憶された記憶媒体を取り込んで情報を読み出す手段、またはネットワークを介した外部機器との通信により寿命推定に必要な情報を取り込んでもよい。
【0016】
記憶部6は、寿命推定処理に利用する情報を記憶するほか、算出された寿命推定結果を格納する手段の一例である。この記憶部6は、たとえば入力部4と接続されており、入力されたコンデンサの温度変化特性情報や駆動条件などが記憶される。そのほか、記憶部6には、寿命推定処理に用いる寿命推定プログラムなどを記憶すればよい。
【0017】
処理部8は、寿命推定プログラムを実行して、コンデンサの寿命解析処理を行う演算手段の一例であり、たとえば発熱推定部10と寿命推定部12で構成される。発熱推定部10は、駆動条件と、コンデンサの温度変化特性情報を利用して、コンデンサの推定発熱温度を算出する機能部の一例である。また寿命推定部12は、発熱推定部10で算出したコンデンサの発熱温度を利用し、駆動条件に基づいて駆動させた場合のコンデンサの寿命推定値を算出する手段の一例である。
コンデンサは、たとえば内部に封入された電解液が温度や経年などによって蒸散していくことで、コンデンサの静電容量や等価直列抵抗(ESR)、誘電正接(tanδ)、漏れ電流などの電気的特性が変動する。コンデンサの寿命推定処理では、駆動条件に基づく自己発熱値、およびこの自己発熱値による電解液の蒸散量を解析し、コンデンサの電気的特性が所定の基準を超えるときを寿命と判断している。
【0018】
図2は、記憶部の構成例を示している。
この記憶部6は、たとえば
図2に示すように、寿命推定に用いる情報が格納されるデータベース14と、寿命推定処理によって算出された情報を格納するデータ格納部16を備える。データベース14には、たとえば駆動条件22として、駆動タイミング情報18や駆動電流値情報20が記憶されている。駆動条件22は、コンデンサを動作させる条件情報の一例であり、たとえば
図3に示すように、コンデンサの開始タイミングから所定時間ずつ区分けされている。駆動電流値情報20は、駆動タイミング情報で区分けされた各タイミングでの駆動電流値が設定されている。このように駆動条件22は、コンデンサに流れる電流値のスケジュールである。
【0019】
そのほか、データベース14には、温度変化特性情報24や蒸散基準値26が格納される。温度変化特性情報24は、コンデンサの発熱状態での素子中心温度の変化状態やこの変化の過渡特性を含む情報の一例である。この温度変化特性情報24は、たとえば駆動電流値の変動によるコンデンサの自己発熱の推移状態や、その自己発熱による電解液の蒸散変化を推定する発熱シミュレーションに利用される。この温度変化特性情報24には、たとえば
図4に示すように、製品名やシリーズ名、定格の電圧値、静電容量、サイズ、周囲温度、電解液の種類、等価直列抵抗、コンデンサの放熱係数(βA)、熱抵抗(Rth)、熱容量(Cth)などが含まれる。
蒸散基準値26は、電解液の蒸散によって生じるコンデンサの特性低下の基準値であって、コンデンサの寿命を表す基準情報の一例である。すなわち、コンデンサの電解液の蒸散により、この蒸散基準値26を超えた場合、コンデンサの寿命と判断する。
またデータ格納部16には、駆動条件を利用して算出されるコンデンサの状態変化情報28や、寿命推定処理によって算出される寿命推定結果30が格納される。この寿命推定結果30は本発明の寿命推定値の一例である。またこの寿命推定結果30は、たとえば寿命推定処理の対象であるコンデンサについて、記憶部6に格納されたコンデンサの情報と関連付けされればよい。
【0020】
<発熱シミュレーション処理について>
次に、コンデンサの発熱状態の推定である発熱シミュレーション処理の一例について説明する。
駆動電流値が定常である場合のコンデンサの発熱シミュレーションでは、たとえば以下の算出方法を用いることができる。
【数1】
この式(1)において、ΔTは素子中心温度、Iは駆動電流値、ESRは等価直列抵抗値、βAは放熱係数である。このうち、ESRやβAは、コンデンサのサイズなどによる固有情報である。
また、この放熱係数βAは、式(2)で表される。
【数2】
Rthは熱抵抗であり、コンデンサの発熱による熱の上がり難さを表す値である。
これらの式(1)と式(2)を組み合せると、以下の式(3)となる。
【数3】
【0021】
次に、この駆動電流値が定常状態の場合の発熱シミュレーションに用いる式(3)に対し、時間による変化を考慮した場合には、以下の式(4)となる。
【数4】
Cthは熱容量であり、コンデンサの発熱による熱の冷めにくさを表す値である。ΔT(t)は、経過時間t後の素子中心温度を示している。この式(4)では、経過時間t
後の素子中心温度を算出するものであるため、自己発熱により温度が上昇したか低下したかを考慮した式として、以下の式(5)に変換する。
【数5】
【0022】
次に、熱抵抗Rthと熱容量Cthの解析について説明する。
熱抵抗Rthは、たとえばコンデンサの駆動電流値が定常状態の場合の発熱計算式を利用して求めることができる。すなわち、式(1)を変形した式(6)を用いる。
【数6】
この式(6)のΔTには、コンデンサの駆動電流値を
、定電流を流して駆動させたときの発熱温度を計測したデータまたは予め計測されたデータを用いる。
熱容量Cthは、たとえば式(7)を用いて算出することができる。
【数7】
式(7)に示すように、熱容量Cthは、熱抵抗Rthと反比例の関係にある。また式(7)のτはコンデンサの発熱に対する熱時定数である。この熱時定数τは、たとえば
図5に示すように、駆動電流重畳時の最終到達温度(リプルOFF時の温度)とコンデンサの初期温度との温度
差が63.2〔%〕
(つまり[1-(1/e)])ほど減少した値になるまでの時間である。
このようにコンデンサの熱容量Cth、熱抵抗Rthや熱時定数τは、コンデンサの発熱による温度変化の過渡特性を示す値であり、本発明の温度変化特性情報の一例である。
なお、熱容量Cth、熱抵抗Rthや発熱に対する熱時定数τの算出、またはこれらを利用した発熱推移の算出には、実際にコンデンサに電流を流して実験した値を利用するものに限られず、電子回路の発熱量算出などに用いるSPICE(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis)などのシミュレーションプログラムにより得た値を利用してもよい。
【0023】
そして、寿命推定装置2の発熱推定部10では、式(5)に基づき、駆動条件および温度変化特性情報を利用してコンデンサの駆動による自己発熱温度の推移を算出する。
【0024】
<寿命推定処理>
次に、コンデンサの寿命推定処理について説明する。
寿命推定部12では、たとえば以下の式(8)を利用して、基準時間に駆動した場合の電解液の蒸散量を算出する。この算出された電解液の蒸散量は、本発明の状態変化情報の一例である。
【数8】
Wt(t)は所定期間での電解液蒸散量であり、Wsは周囲温度下での電解液蒸散量、Taは周囲温度、K1、K2は温度加速度である。また式(8)においてΔT(t)は、発熱シミュレーションで算出した自己発熱による変化温度である。
この電解液蒸散量Wt(t)の算出に用いる基準時間tは、駆動条件によりコンデンサに電流値が付加される時間と、この電流値の付加が終了した後、コンデンサ素子の発熱温度が低下して安定するまでの時間が含まれる。発熱温度の安定とは、たとえば既述の発熱シミュレーションまたは予め実験などによって求めた情報から、コンデンサの発熱温度が所定値として、たとえば3〔℃〕以下、より好ましくは、1〔℃〕以下になる状態である。すなわち、電解液蒸散量Wt(t)の算出では、駆動条件に基づくコンデンサの発熱状態に加え、駆動電流がカットされた後の発熱温度の低下中の電解液の蒸散も想定している。
ここで、コンデンサは、駆動に伴う自己発熱以外に、周囲温度Taによっても電解液が蒸散する。したがって、式(8)では、周囲温度に基づく電解液の蒸散量が考慮されている。そして右辺の温度加速度K1の項は、温度による加速度であって、自己発熱に対し、時間の推移による蒸散量の変化度合いを規定している。温度加速度K1、K2は、たとえばアレニウス則を利用した推定式であって、電解液や電極箔の種類などによって値が設定されればよい。そして、この温度による加速度の項は、たとえば自己発熱による温度変化ΔT(t)と温度加速度K2との割合を指数とし、温度加速度K1を底とする温度加速度となる。たとえばK1=2、K2=7.5であって、自己発熱による温度変化ΔT(t)が7.5℃下がると、電解液蒸散量Wt(t)は少なくなり、コンデンサの寿命が2倍に延びることを示す。
【0025】
次に、式(8)に対して、
電解液蒸散量Wt(t)を積分することで、蒸散値を算出する。この算出式は、式(9)となる。
【数9】
このTは、設定された駆動時間としてたとえば、駆動条件の1サイクルに設定される駆動タイミングのトータル時間を示している。そして算出された1サイクルの蒸散値が本発明の推定蒸散値の一例である。
なお、この駆動時間は、たとえば実使用の条件を基に設定されてもよく、また複数回繰り返されるプロファイルのうちの1サイクルの時間を利用してもよく、複数回繰り返される電流プロファイルの合計時間であってもよい。
【0026】
次に、推定寿命時間の算出として、以下の式(10)を利用する。
【数10】
この式(10)において、Woはコンデンサの寿命として設定した電解液の蒸散基準値である。この式(10)では、
1サイクルの駆動で変化する電解液の蒸散値に対する蒸散基準値
Woの割合を算出し、この割合に1サイクルの時間を倍数することで、この電流プロファイルで駆動させたときに蒸散基準値Woとなるまでの寿命推定値(時間)Lxが算出できる。
【0027】
図6は、駆動条件に基づく寿命推定値Lxの算出処理によるデータの変換状態例を示す図である。
図6に示す構成は一例である。
寿命推定処理では、たとえば
図6のAおよび
図6のBに示すように、コンデンサの駆動条件に対して、発熱シミュレーションを行い、駆動電流値Iの変化(
図6のA)に応じた推定発熱温度(
図6のB)を算出する。
寿命推定処理では、推定発熱値を利用して、単位時間当たりの蒸散量を算出する(
図6のC)。
そして、算出された単位時間当たりの蒸散量に対し、予め設定され、または実験により求められた蒸散基準値Woとなるまでの寿命推定値(時間)を算出する。
【0028】
<コンデンサの寿命推定処理>
図7は、コンデンサの寿命推定処理例を示している。
図7に示す寿命推定処理は、本発明のコンデンサの寿命推定方法または寿命推定プログラムの一例であり、本発明が斯かる処理内容または処理手順に限定されない。
処理部8は、発熱推定処理(F1)として、コンデンサの温度変化特性情報を設定する(S11)とともに、駆動条件を読み出して発熱推定部10に設定する(S12)。そして、推定発熱温度を算出し、発熱推移を割り出す(S13)。コンデンサの温度変化特性情報は、たとえば予め設定された情報を記憶部6や入力部4を通じて外部のデータベースなどから読み出してもよく、または寿命推定の対象となるコンデンサに対して所定の駆動電流値を流したときの計測温度を利用してもよい。
【0029】
処理部8は、コンデンサの状態変化情報の算出処理(F2)として、算出した推定発熱温度を利用して基準時間の電解液の推定蒸散量を算出する(S14)。この処理では、駆動条件に対する電流プロファイルに設定された1サイクルの駆動時間と、電流をOFFにした後に発熱温度が所定温度以下に達するまで時間を合せた時間の電解液の蒸散量を求める。
そして、処理部8は、寿命推定処理(F3)として、コンデンサの寿命を示す蒸散基準値Woを記憶部から読み出し(S15)、算出した1サイクルの推定蒸散量と蒸散基準値Woとを利用して寿命推定値を算出する(S16)。
そして処理部8は、たとえば表示画面や音声などを利用して寿命推定値を提示する(S17)。この寿命推定値の提示は、たとえば情報処理装置50の表示部58に表示するほか、寿命推定値情報として、寿命推定処理の対象となった製品であるコンデンサの表面やパッケージ、その他コンデンサに関連する仕様書やガタログ、顧客に提示するデータなどに付してもよい。
【0030】
<第1の実施の形態の効果>
斯かる構成によれば、以下のような効果が期待できる。
(1) 熱抵抗Rthや熱容量Cth、熱時定数τによる時間的要素を考慮した温度変化特性情報を利用して発熱状態を推定するため、短期間に高い駆動電流が流れた場合のコンデンサの温度状態を推定することができる。
(2) 駆動電流の変動によるコンデンサの自己発熱に対し、コンデンサ素子の温度変化特性を考慮することで、コンデンサを搭載した車両や設備の運転状態に対するコンデンサの寿命推定精度が向上する。
(3) 想定したコンデンサの駆動条件に対するコンデンサの発熱状態の把握が容易となる。
(4) 短期間に定格値以上の駆動電流が流れる場合のコンデンサの状態や影響を推定することができる。
(5) 電流変動に対するコンデンサの過渡的状態変化を解析でき、コンデンサの限界条件の把握や、コンデンサの利用性および選択性の拡大が図れる。
【0031】
〔第2の実施の形態〕
図8は、第2の実施の形態に係るコンデンサの寿命推定装置の構成例を示している。
図8に示す構成は一例であり、本発明が斯かる構成に限定されない。また、
図8において、
図1と同一の構成には同一符号を付している。
この実施の形態では、複数の駆動条件でコンデンサを動作させる場合の寿命推定について説明する。この寿命推定装置2には、たとえば
図8に示すように、記憶部6に複数の駆動条件22-1、22-2、・・・22-Nや環境条件40、および使用条件42が記憶されている。
駆動条件22-1、22-2、・・・22-Nは、それぞれ設定された駆動タイミング情報および駆動電流値情報を含む電流プロファイル(ED1、ED2、・・・EDN)であり、駆動タイミングの全体時間や基準時間が電流プロファイル間で同じ値に設定されてもよく、またはそれぞれ異なってもよい。
環境条件40は、コンデンサを動作させる周囲の環境条件の一例であって、複数の環境条件40-1、40-2、40-3が設定される。環境条件40の設定数は、駆動条件22と同数にしてもよく、または異なってもよい。
使用条件42は、駆動条件や環境条件におけるコンデンサの使用比率を示す条件の一例である。すなわち使用条件42には、たとえば
図9のAに示すように、コンデンサの寿命推定において、コンデンサが使用されると想定した複数の環境条件に対して、その使用比率が設定されている。ここでは、環境条件として、たとえば40〔℃〕のときの使用比率が6.4〔%〕、80〔℃〕の使用比率が17.4〔%〕、100〔℃〕の使用比率が40.0〔%〕、110〔℃〕の使用比率が28.5〔%〕、120〔℃〕の使用比率が7.7〔%〕の5パターンを示している。また、使用条件42には、たとえば
図9のBに示すように、複数の駆動条件である電流プロファイル(ED1~ED11)を組み合せて設定する駆動スケジュール(ドライブサイクル)において、各駆動条件の使用比率が設定されている。ここでは、一例として電流プロファイルED1に対する使用比率が10.4〔%〕、電流プロファイルED2に対する使用比率が1.2〔%〕、電流プロファイルED3に対する使用比率が11.9〔%〕、電流プロファイルED4に対する使用比率が9.7〔%〕、電流プロファイルED5に対する使用比率が7.7〔%〕、電流プロファイルED6に対する使用比率が4.9〔%〕、電流プロファイルED7に対する使用比率が16.2〔%〕、電流プロファイルED8に対する使用比率が13.4〔%〕、電流プロファイルED9に対する使用比率が7.8〔%〕、電流プロファイルED10に対する使用比率が8.8〔%〕、電流プロファイルED11に対する使用比率が8.0〔%〕の場合を示している。
【0032】
そして処理部8では、これらの駆動条件22、環境条件40、使用条件42の一部または全部を記憶部6から読み出し、複数の条件を組み合せた場合のコンデンサの発熱推定処理および寿命推定処理を行う。
【0033】
<複数の条件を組み合せた寿命推定処理>
ここでは、複合寿命推定値の算出処理について説明する。この複合寿命推定値は、複数の駆動条件とその使用比率を組み合せて算出した寿命推定値や、この寿命推定値に環境温度に対する使用比率を組み合せた寿命推定値である。
まず、複数の駆動条件を組み合せたドライブサイクルの寿命時間の算出を行う。
上記第1の実施の形態で説明したように、駆動条件(電流プロファイルED1~ED11)毎でコンデンサを動作させた場合の寿命推定値を算出し、その算出結果を利用して複数の駆動条件を組み合せる場合の寿命推定値を算出する。
ここでは周期的負荷に対する複合寿命推定値の計算処理として、所謂マイナーズルール(Miner's rule)を利用する場合を示す。マイナーズルールでは、以下の式(11)を利用する。
【数11】
この式(11)において、「Lcycle」は、全ての駆動条件(電流プロファイルED1~ED11)を組み合せた寿命推定値であり、Lmは各駆動条件に基づいて算出した寿命推定値である。またRmは使用条件として設定される使用比率である。
【0034】
<駆動条件を組み合せた寿命推定値>
そこで、式(11)を利用して、環境温度毎に、全ての駆動条件を組み合せた寿命推定値を算出する。この環境温度は、本発明の駆動環境温度情報の一例である。なお、以下に示す算出結果の値は一例である。
a) 1/Lcycle(40℃)=0.104/L(ED1)+0.012/L(ED2)
+・・・=1/810448〔1/時間〕
b) 1/Lcycle(80℃)=0.104/L(ED1)+0.012/L(ED2)
+・・・=1/70932〔1/時間〕
c) 1/Lcycle(100℃)=0.104/L(ED1)+0.012/L(ED2)
+・・・=1/17913〔1/時間〕
d) 1/Lcycle(110℃)=0.104/L(ED1)+0.012/L(ED2)
+・・・=1/9866〔1/時間〕
e) 1/Lcycle(120℃)=0.104/L(ED1)+0.012/L(ED2)
+・・・=1/5288〔1/時間〕
第1の実施の形態で示すように、コンデンサの寿命推定処理では、自己発熱温度と環境温度を利用して寿命推定値を算出する。従って、上記のa)~e)に示すように、各周囲温度での寿命推定値が異なる。
【0035】
<環境条件を考慮した寿命推定値>
次に、駆動条件を組み合せた寿命推定値に対し、環境条件の使用比率を考慮した寿命推定値を算出する。この算出処理でも、マイナーズルール(式(11))を利用する。その算出処理は以下の式(12)のようになる。
【数12】
ここで、「Lcomb」は、駆動条件および環境条件の全てを考慮した複合寿命推定値を示している。
【0036】
なお、複数の駆動条件および環境条件を組み合せた複合寿命推定値の算出手法は、マイナーズルールを利用するものに限られず、複数の値に対して使用割合を考慮した平均値の算出手法を利用してもよい。
【0037】
<コンデンサの寿命推定処理>
図10は、コンデンサの寿命推定処理例を示している。
図10に示す寿命推定処理は、本発明のコンデンサの寿命推定方法または寿命推定プログラムの一例であり、本発明が斯かる処理内容または処理手順に限定されない。
処理部8は、各駆動条件(電流プロファイルED1~ED11)での寿命推定値の算出処理を行う(S21)。この寿命推定値の算出処理は、既述の第1の実施の形態で示すように、駆動条件および温度変化特性情報を利用したコンデンサの推定発熱温度の算出(発熱シミュレーション)処理(F1)を行い、算出した推定発熱温度からコンデンサの状態変化情報として基準時間の電解液蒸散量の算出(F2)を行う。そして、寿命推定処理として、蒸散基準値Woに達するまでの寿命推定値を算出する(F3)。これにより寿命推定装置2には、たとえば設定した駆動条件の数に応じた寿命推定値が記憶される。
【0038】
次に、処理部8は、環境条件および使用条件を設定する(S22)。環境条件や使用条件は、記憶部6から読み出して設定すればよい。そのほか、環境条件や使用条件は、入力部4を通じて入力されてもよく、または図示しない外部のデータベースから読み出してもよい。
なお、この寿命推定処理において、コンデンサを使用する環境条件が単一の場合には、駆動条件に対する使用条件のみを設定すればよい。
【0039】
そして、複数の駆動条件、環境条件およびそれらの使用条件を利用して複合寿命推定値を算出し(S23)、その算出した複合寿命推定値が表示部などを利用して提示される(S24)。また、この複合寿命推定値は、寿命推定値情報として、たとえば寿命推定処理の対象となった製品であるコンデンサの表面やパッケージ、その他コンデンサに関連する仕様書やガタログ、顧客に提示するデータなどに付してもよい。
【0040】
<第2の実施の形態の効果>
斯かる構成によれば、以下のような効果が得られる。
(1) 複数の駆動条件でコンデンサを利用する場合を想定した寿命推定処理が得られる。
(2) 車両など移動を伴う設備に搭載される場合に対し、コンデンサの周囲環境が変化する条件も考慮したコンデンサの寿命推定を行うことができ、実際の使用状態に近い寿命推定が行える。
(3) 複数の駆動条件に使用頻度を設定して寿命推定を行うことで、変動する運転状況に対するコンデンサの性能耐久性などの寿命解析でき、駆動条件に合わせたコンデンサの選択精度を高めることができる。
【0041】
〔第3の実施の形態〕
図11は、第3の実施の形態に係る情報処理装置の構成例を示している。
図11に示す構成は一例である。
この情報処理装置50は、本発明のコンデンサの寿命推定装置の一例であり、たとえば設定された駆動条件に基づいてコンデンサの寿命推定値を算出する機能や、この算出した寿命推定値に基づき、要求されている寿命基準を満たすか否かの判定機能を備えてもよい。さらに、情報処理装置50は、この判定機能による結果を利用したコンデンサの選択機能、コンデンサを構成する部品のカスタマイズ機能、または顧客に対するコンデンサの利用や製品選択に関するアドバイス機能を備える。情報処理装置50は、たとえば
図11のAに示すように、コンピュータで構成されており、プロセッサ52、メモリ54、操作入力部56、表示部58、入出力部(I/O)60を備える。
プロセッサ52は、情報処理装置50で実行するプログラムの演算手段の一例であり、基本動作制御を行うOS(Operating System)のほか、コンデンサの寿命推定プログラムの演算処理を行う。プロセッサ52は、寿命推定プログラムの実行により、本発明の処理部8として機能し、発熱シミュレーションや寿命推定処理、複合寿命推定値の算出処理のほか、コンデンサの発熱状態を示す画面や、寿命推定表示画面の生成を行ってもよい。
メモリ54は、たとえばROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)で構成されており、本発明の記憶部を構成する。
このメモリ54は、OSや寿命推定プログラムを記憶するほか、たとえば
図11のBに示すように、コンデンサに付加する電流値やその付加タイミングである駆動条件22、複数のコンデンサの性能などが格納されたコンデンサデータベース62-1、62-2、62-3・・・62-Nが記憶されている。このコンデンサデータベース62-1、62-2、62-3・・・62-Nは、たとえば静電容量や仕様環境、形状や大きさなどを基準に組立てられたそれぞれのコンデンサの性能や温度変化特性情報24、蒸散基準値26などの情報のほか、コンデンサを構成する箔や電解液、ケース毎などの部品について、材質や大きさなどの種別毎の性能なども記憶されている。また、メモリ54には、データ格納部16を備えており、算出された寿命推定結果30とともに、この推定結果が寿命基準条件を満たすか否かを判定した寿命判定情報の一例である判定結果64が記憶される。この判定に用いられる寿命基準条件は、本発明の要求寿命条件の一例であり、たとえば製品に搭載されたコンデンサに求められる性能条件である。寿命基準条件は、たとえば寿命推定処理を行うコンデンサが選択されたときや駆動条件の入力時に設定される。
そのほか、コンデンサの判定結果には、たとえば寿命基準条件を満たさなかった場合に、他のコンデンサを選択するための情報や、コンデンサを構成する電解液や箔の種類、電解液の搭載量を変更するためのアドバイス情報を含む。このアドバイス情報は、本発明のコンデンサの寿命値改善情報の一例である。アドバイス情報の生成では、たとえば寿命推定値の算出式を利用して、寿命基準条件を満たすコンデンサやその部品の条件を割り出してもよい。
情報処理装置50は、コンデンサの寿命推定プログラムの実行により、寿命の判定処理を行うとともに、この寿命推定値、判定結果、アドバイス情報のいずれか1つまたは複数を含む寿命判定情報を生成する。そしてアドバイス情報の生成処理では、コンデンサデータベース62-1、62-2、62-3・・・62-Nの情報を利用し、寿命推定処理を行ったコンデンサを基準にして、他のコンデンサやその部品の選択情報を提示してもよい。
【0042】
操作入力部56は、たとえばキーボードやマウス、その他の操作ボタンなどを備えており、駆動条件や温度変化特性情報、環境条件や使用条件などの入力などに用いられる。また操作入力部56は、たとえば表示部58に搭載されたタッチセンサーを利用し、表示部58への作業者の接触位置などで入力処理を行うタッチパネルであってもよい。
表示部58は、コンデンサの寿命推定処理の操作画面や入力されるデータを表示するほか、算出された寿命推定値の表示を行う手段の一例である。この表示部58には、たとえば
図12のAに示すように、入力された駆動条件である「Mission Profile」やその算出結果である「Simulation」を含む状態変化情報画面66が表示される。この状態変化情報画面66には、たとえば駆動タイミング情報18であるステップ毎の経過時間である「Time」情報や駆動電流値情報20である「Ripple」情報が含まれる。また、寿命推定結果として、算出したコンデンサの素子中心温度や状態変化情報である電解液の蒸散量などが含まれる。
表示部58には、たとえば
図12のBに示すように、寿命算出結果画面68が表示される。この寿命算出結果画面68は、本発明の寿命推定表示画面の一例であり、たとえば駆動条件の1サイクルの時間や算出した発熱温度、蒸散基準値とともに、推定寿命時間などが含まれる。
また、表示部58には、たとえば
図12のCに示すように、寿命推定シミュレーション画面70として、駆動電流値の変化状態や発熱温度変化、寿命時間などを含むグラフが表示されてもよい。
【0043】
I/O60は、情報処理装置50の外部に対する入力または出力手段の一例であり、プロセッサ52により制御されている。情報処理装置50は、たとえば図示しない外部メモリや外部の端末装置と接続して、コンデンサの寿命推定処理に利用する駆動条件や温度変化特性情報、その他の情報を取り込んでもよく、また算出した寿命推定結果を出力してもよい。その他、情報処理装置50は、たとえば通信機能を備えてもよい。
【0044】
<コンデンサの寿命推定処理および寿命判定処理>
図13は、コンデンサの寿命推定処理および寿命判定処理例を示している。
図13に示す処理は、本発明のコンデンサの寿命推定方法または寿命推定プログラムの一例である。
図13に示す処理内容や処理手順は一例であって、斯かる内容に本発明は限定されない。
情報処理装置50は、設定された駆動条件に基づいて、コンデンサの寿命推定値の算出を行う(S31)。この寿命推定値の算出処理は、上記第1の実施の形態や第2の実施の形態に示す処理内容と同様に行えばよい。
情報処理装置50は、寿命基準条件を設定して(S32)、算出された寿命推定値の寿命判定処理を行い(S33)、寿命推定値が寿命基準条件を満たすか否か(S34)を判断する。この寿命基準条件は、たとえば寿命推定値に対する比較基準値の一例であって、たとえば算出した寿命推定値と対比できる値として、時間情報や電解液の蒸散量、もしくはコンデンサに残留する量などの情報である。この寿命推定基準条件は、たとえばコンデンサの設計者、もしくはコンデンサの購入または設計を希望するユーザなどが設定する製品寿命についての性能条件である。
情報処理装置50は、寿命基準条件を満たすと判定した場合(S34のYES)、たとえば寿命判定情報として、表示部58に寿命推定値を提示する(S35)。この寿命判定処理では、たとえば寿命推定値と寿命基準条件との差分値を算出すればよい。さらに、寿命判定処理では、算出された差分値に対し、ランク付け処理を含んでもよい。このランク付け処理では、たとえば差分値の大きさに応じて寿命基準条件に対する一致度などが設定される。そして、情報処理装置50は、たとえば寿命推定値の提示において、設定されたランク情報も合せて提示してもよい。さらに、情報処理装置50は、この寿命推定値の提示において、ランク情報を利用して選定した別のコンデンサまたはコンデンサを構成する部品の提案情報を表示してもよい。この差分値算出によるランク付けは、寿命推定の対象としたコンデンサの寿命推定値と要求される寿命基準条件とのマッチング判断の一例である。つまり、情報処理装置50は、差分値によるランクが高い場合、ユーザが希望する寿命条件に対してコンデンサの性能が過度であると判断し、コンデンサやその構成部品のスペックを低下させる変更案を提示する機能を備えてもよい。
なお、ここで提示する変更案は、たとえば同等な駆動条件による寿命推定値の算出が行われたコンデンサやその部品の情報を利用してもよい。また、情報処理装置50は、たとえば提示した変更案が選択された場合、ステップS31に戻り、その変更案によるコンデンサの寿命推定処理を行ってもよい。
【0045】
また、情報処理装置50は、寿命推定値が寿命基準条件を満たさないと判定した場合(S34のNO)、寿命判定情報として、判定結果を表示する(S36)とともに、コンデンサやその部品の条件の変更案の提示を行う(S37)。このとき情報処理装置50は、新たなコンデンサやその部品の選択候補をコンデンサデータベース62-1、62-2、62-3・・・63-Nから読み出して提示すればよい。情報処理装置50は、たとえば寿命判定処理において、寿命推定値と寿命基準条件との差分値を算出し、この差分値に対してランク付け処理を行ってもよい。このランク付けは、寿命基準条件に対するコンデンサの不足能力の割り出しである。そして、情報処理装置50は、このランク情報を利用して、選択されているコンデンサは利用できない旨の判定結果を提示してもよく、またはこのランク情報を利用して、別のコンデンサまたはその部品の変更案を選定してもよい。
そして、情報処理装置50は、たとえば新たに設定されたコンデンサまたはその部品について、寿命推定値の算出処理(S31)を実行すればよい。
【0046】
<第3の実施の形態の効果>
斯かる構成によっても、上記第1の実施の形態および第2の実施の形態と同様に、駆動条件に基づき、コンデンサの利用状態に応じた発熱状態のシミュレーションや寿命推定を行うことができる。さらに、情報処理装置50の表示画面には、入力情報や算出した寿命推定値を数値やグラフなどを利用して表示させることができ、駆動条件に対するコンデンサの動作状態の認識性を高めることができる。また、コンデンサの熱抵抗や熱容量、熱時定数による時間的な要素を含む温度変化特性を考慮することで、実際の運転状態において定格値以上の駆動電流値が流れる場合の状態解析精度が高められる。そして、このような精度の高いシミュレーションが可能になることで、駆動条件に合わせた実験機作成やその動作実験などを行わずに、コンデンサの状態解析や選定可否などの判断が行え、コンデンサを使用する顧客への利便性が高められる。さらに、算出された寿命推定値について、要求寿命条件を満たすか否かを判定した結果を示すほか、要求寿命条件を満たさない場合や選択したコンデンサの性能がオーバースペックである場合に、コンデンサやその部品の代替情報を提示することで、製品に適用可能または適切なレベルのコンデンサを設計して、提供することができる。これにより製品に対するコンデンサの信頼性の向上が図れるとともに、コンデンサを購入または利用するユーザの利便性の向上が図れる。
【0047】
以上説明した実施の形態について、その特徴事項や変形例を以下に列挙する。
(1) 本発明は、短時間のリプル電流が重畳されるコンデンサの寿命を推定するコンデンサ推定寿命算出の方法に関するものである。この推定寿命算出では、たとえば熱抵抗と熱容量とから、時間を考慮した素子中心温度を推定するステップを含む。
(2) また推定寿命算出で推定した素子中心温度から、電解液の蒸散量を推定するステップ、推定した電解液の蒸散量と、過去のライフ試験等から得た寿命を迎える電解液の蒸散量とから寿命を推定するステップを含む。
さらに、マイナー則を用いて複数の使用条件を複合するステップを含む。
【0048】
(3) 上記実施の形態では、与えられた駆動条件に基づいて発熱温度の推移を解析して、寿命推定値を算出するものを示したがこれに限らない。本発明の寿命推定処理を利用して、設定寿命時間に対する駆動電流値や駆動タイミング条件を割り出して駆動条件を設定してもよい。
(4) 本発明のコンデンサの寿命推定方法では、想定されるまたは設定された動作条件とコンデンサの自己発熱状態の推移や寿命推定結果に基づいて、使用条件に合わせたコンデンサを選択し、顧客に提示するようにしてもよい。
(5) 上記実施の形態では、コンデンサの温度変化特性情報に関し、熱時定数τの算出として、最終到達温度(リプルOFF時の温度)とコンデンサの初期温度との温度差が63.2〔%〕ほど減少した値になるために必要な時間を求めたがこれに限らない。熱時定数τの算出では、たとえば所定温度から所定の到達温度(リプルON時の温度)になるまでの変化時間を利用してもよい。
【0049】
(6) 上記実施の形態では、予め設定された駆動条件に対する寿命を算出したが、これに限らない。本発明の寿命推定装置、寿命推定方法、寿命推定プログラムは、たとえば、コンデンサを搭載する車両や機器などに用いてもよい。つまり、車両や機器は、寿命推定プログラムなどを実行することで本発明の寿命推定装置として機能させる。そして、車両や機器は、コンデンサに付加される駆動電流値や、それまでに記録した蓄積駆動電流値に基づいて、現在までの使用状態に対する寿命推定処理を実行してもよい。
【0050】
(7) 上記実施の形態では、コンデンサの寿命判断として蒸散基準値を利用したがこれに限らない。寿命推定処理では、たとえば算出した蒸散量を利用して算出または推定したコンデンサの重さなどを利用してもよい。
【0051】
(8) 上記実施の形態では、駆動条件に従ってコンデンサ素子の推定発熱温度を算出し、この推定発熱温度に基づいて寿命推定処理を行う場合を示したがこれに限らない。処理部8は、たとえば算出した推定発熱温度に対して上限閾値を設定し、推定発熱温度が上限閾値を超える結果が出た場合には、アラーム報知を行ってもよい。この寿命推定処理では、温度変化特性情報を利用することで、高い駆動電流値が流れた場合の発熱推移を算出することができる。このとき、たとえばコンデンサケースの耐熱温度や電解液の変質温度、またはコンデンサを搭載する車両などの耐熱温度を上限閾値として設定し、この上限閾値に達するおそれがある駆動条件を割り出してもよい。これにより、このコンデンサの寿命推定方法は、使用条件や使用環境に応じてコンデンサの安全性を確保することができるとともに、使用条件に応じたコンデンサの選択性を高めることができる。
【0052】
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施の形態等について説明した。本発明は、上記記載に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載され、または発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、コンデンサの熱抵抗や熱容量、その熱時定数などを含む温度変化特性情報を利用して発熱温度を推定し、その発熱状態によるコンデンサの状態変化情報から寿命推定値を算出することで、短時間に高電流が流れる駆動条件に対し、コンデンサの寿命推定を行うことが可能となり、有用である。
【符号の説明】
【0054】
2 寿命推定装置
4 入力部
6 記憶部
8 処理部
10 発熱推定部
12 寿命推定部
14 データベース
16 データ格納部
18 駆動タイミング情報
20 駆動電流値情報
22、22-1、22-2、22-3、・・・22-N 駆動条件
24 温度変化特性情報
26 蒸散基準値
28 状態変化情報
30 寿命推定結果
40、40-1、40-2、40-3 環境条件
42 使用条件
50 情報処理装置
52 プロセッサ
54 メモリ
56 操作入力部
58 表示部
60 入出力部(I/O)
62-1、62-2、62-3・・・62-N コンデンサデータベース
64 判定結果
66 状態変化情報画面
68 寿命算出結果画面
70 寿命推定シミュレーション画面