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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】気体処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/20 20060101AFI20230111BHJP
   A61L 9/015 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A61L9/20
A61L9/015
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018204299
(22)【出願日】2018-10-30
(65)【公開番号】P2020068995
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐畠 健一
(72)【発明者】
【氏名】重田 浩平
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/030144(WO,A1)
【文献】特開2001-342139(JP,A)
【文献】特開2013-118072(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0326525(US,A1)
【文献】特開2012-000216(JP,A)
【文献】特開2008-027802(JP,A)
【文献】特開平11-300151(JP,A)
【文献】特開2008-036168(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131124(WO,A1)
【文献】特開2011-101748(JP,A)
【文献】特開2008-066095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00-9/22
H01J 9/12、61/30-61/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口から吸気された、酸素を含む処理対象ガスに対して紫外線を照射した後、前記吸気口とは異なる位置に設けられた排気口から排気する気体処理装置であって、
前記吸気口を構成する第一開口領域を有する第一端部、前記第一端部に対して第一方向に離間した位置に配置されると共に、前記排気口を構成する第二開口領域を有する第二端部、及び前記第一開口領域と前記第二開口領域とを連絡する中空部が内側に形成されている本体部を含む筐体と、
前記中空部内に配置されると共に、前記第一方向に延伸する形状を呈した管体と、第一電極と、第二電極とを有し、前記第一電極と前記第二電極との間に電圧が印加されることで前記管体から前記紫外線を放射する放電ランプと、
前記筐体の外側に配置された電源部と、
前記本体部よりも前記第一端部側を通過するように配線された、前記電源部と前記第一電極とを電気的に接続する第一給電線と、
前記本体部よりも前記第一端部側を通過するように配線された、前記電源部と前記第二電極とを電気的に接続する第二給電線とを備えたことを特徴とする気体処理装置。
【請求項2】
前記第一開口領域は、前記第二開口領域に向かって進行するにつれて、狭くなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の気体処理装置。
【請求項3】
前記筐体は、前記第一端部側において、前記第一給電線と前記第二給電線を内設することができる溝が形成されている、前記放電ランプを支持する支持部材を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の気体処理装置。
【請求項4】
前記放電ランプは、前記管体の外壁面上において、前記第一電極と前記第二電極が前記管体を介して対向するように形成され、前記第一方向に向かって見たときに、前記第一電極と前記第二電極の対向する方向と、前記放電ランプに対して前記電源部が配置されている方向とが非平行となるように配置されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の気体処理装置。
【請求項5】
前記放電ランプは、Xeを含む放電用ガスが充填されたエキシマランプであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の気体処理装置。
【請求項6】
前記電源部を収容する電源ボックスを備え、
前記筐体の側面に形成された平面上に、前記電源ボックスの一平面が接触するように配置されていることを特徴する請求項1~5のいずれか1項に記載の気体処理装置。
【請求項7】
前記電源ボックスは、冷却用吸気口と、冷却用排気口と、冷却用ファンとを備え、
前記冷却用ファンが稼働することで前記冷却用吸気口から前記電源ボックス内に取り込まれた、前記処理対象ガスとは異なる外気が、前記電源部を冷却した後、前記冷却用排気口から排気されるように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の気体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体処理装置に関し、特にガス中の酸素に紫外線を照射することで発生するオゾンによってガス処理を行う気体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
所定濃度のオゾンを含むガスは、殺菌、脱臭作用があり、種々の分野で利用されている。このようなオゾンを生成する方法として、紫外線光源を用いた光化学反応が知られている。
【0003】
しかし、オゾンは反応性が高く、気体処理装置を構成する部品がオゾンに曝されると、酸化が促進し、部品の劣化や破損を進行させてしまうことが知られている。そこで、下記特許文献1には、オゾンが外側へ漏れ出さないようするため、放電ランプが収容されている管体の吸気口と排気口に、それぞれ電磁弁を配置し、オゾンの濃度に応じて弁の開閉を制御する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-101748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
処理対象ガスに含まれる酸素に、紫外線が照射されることで発生するオゾンは、処理対象ガスに含まれる物質と反応することによって消費される。しかし、処理対象ガスに含まれる物質と反応しなかった一部のオゾンは、気体処理装置内の部品と接触し、部品の劣化や破損を進行させてしまう。
【0006】
上述の特許文献1のように、放電ランプを専用の筐体に収容し、オゾンが発生する空間を隔離して、筐体の内側と外側のオゾン濃度を制御することで、部品等が高濃度のオゾンに曝されないようにする構成が考えられる。しかしながら、放電ランプと電気的に接続される給電線は、放電ランプとは分離できないため、一部が高濃度のオゾンに曝されてしまい、劣化や破損の進行を免れられない。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑み、給電線が放電ランプから放射された紫外線によって発生したオゾンに曝されない構成とすることで、給電線の劣化の促進を抑えた気体処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る気体処理装置は、
吸気口から吸気された、酸素を含む処理対象ガスに対して紫外線を照射した後、前記吸気口とは異なる位置に設けられた排気口から排気する気体処理装置であって、
前記吸気口を構成する第一開口領域を有する第一端部、前記第一端部に対して第一方向に離間した位置に配置されると共に、前記排気口を構成する第二開口領域を有する第二端部、及び前記第一開口領域と前記第二開口領域とを連絡する中空部が内側に形成されている本体部を含む筐体と、
前記中空部内に配置されると共に、前記第一方向に延伸する形状を呈した管体と、第一電極と、第二電極とを有し、前記第一電極と前記第二電極との間に電圧が印加されることで前記管体から前記紫外線を放射する放電ランプと、
前記筐体の外側に配置された電源部と、
前記本体部よりも前記第一端部側を通過するように配線された、前記電源部と前記第一電極とを電気的に接続する第一給電線と、
前記本体部よりも前記第一端部側を通過するように配線された、前記電源部と前記第二電極とを電気的に接続する第二給電線とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の気体処理装置は、排気ダクト等に連結され、流れてくる処理対象ガスを吸気口から取り込み、排気口に向かって通流させながら、放電ランプから放射された紫外線により発生したオゾンに、処理対象ガスを接触させることよって処理を行う。
【0010】
オゾンは、処理対象ガスに含まれる酸素に、放電ランプから放射された紫外線が照射されることで発生する。紫外線が処理対象ガスに含まれる酸素に照射されると、下記(1)~(2)式の反応が進行しオゾンが生成される。(1)式において、O(1D)は、励起状態の酸素原子であり、高い反応性を示す。O(3P)は基底状態の酸素原子である。また、(1)式において、hνは、紫外線が吸収されていることを示す。(1)式で生成されたO(3P)は、処理対象ガスに含まれる酸素(O2)と反応して、(2)式に従ってオゾン(O3)を生成する。
2+ hν → O(1D) + O(3P) ‥‥(1)
O(3P) + O2 → O3 ‥‥(2)
【0011】
第一開口領域は、処理対象ガスを、気体処理装置の外側から、中空部へと導くための開口領域である。中空部には、放電ランプが収容されており、中空部に導かれた処理対象ガスは、放電ランプから紫外線が照射されることで発生したオゾンによって処理が行われる。
【0012】
第二開口領域は、気体処理装置にて処理を行ったガスを、処理対象ガスの外側へと導くための開口領域である。本発明の気体処理装置においては、第一開口領域が配置された端部が第一端部であり、第二開口領域が配置された端部が第二端部である。
【0013】
中空部は、上述のとおり、内側を第一開口領域で取り込まれた処理対象ガスに、オゾンを接触させて処理する領域である。つまり、処理対象ガスは、第一開口領域から気体処理装置の内側に取り込まれ、中空部を通過して、第二開口領域から気体処理装置の外側に排出される。処理対象ガスが通流する第一開口領域、中空部及び第二開口領域を含めた全体が本体部である。
【0014】
放電ランプは、電圧を印加する第一電極及び第二電極を備えている。第一電極及び第二電極は、それぞれ、筐体の外側に配置された電源部と給電線(第一給電線、第二給電線)を介して電気的に接続され、電源部より第一電極と第二電極の間に電圧が印加されることで、放電ランプが紫外線を放射する。
【0015】
本発明の気体処理装置は、放電ランプの第一電極と電源部を接続する第一給電線と、第二電極と電源部を接続する第二給電線のいずれもが、処理対象ガスを気体処理装置の外側から気体処理装置の内側に取り込むための第一開口領域が配置された第一端部側を通過するように構成されている。
【0016】
本体部を流れる処理対象ガスは、上述のとおり、第一開口領域で取り込まれて中空部へ向かい、第二開口領域から排出される。つまり、処理対象ガスが気体処理装置の内側に取り込まれている間は、中空部には常に第一端部側から第二端部側への気流が発生している。このため、中空部内で発生し、処理対象ガスと反応しなかったオゾンのほとんどは、第一端部側へ向かうことなく、第二端部側へと向かい、第二開口領域から排出される。
【0017】
従って、第一給電線と第二給電線のいずれもを、第一端部側を通過するように配線することで、第一給電線と第二給電線は、中空部で発生したオゾンに曝されることがなくなり、第一給電線と第二給電線の劣化や破損の進行が抑制される。
【0018】
なお、処理対象ガスには、少なからず水分も含まれる。処理対象ガス中の水分に、放電ランプが放射する紫外線が照射されると、上記(1)式と、下記(3)式の反応が進行し、ヒドロキシラジカル(・OH)も生成される。
O(1D) + H2O → ・OH + ・OH ‥‥(3)
【0019】
ヒドロキシラジカルをはじめとするラジカル生成物も、オゾンと同様に反応性が高く、部品等の劣化や破損を促進させてしまう。しかし、本発明の構成によれば、中空部で発生したラジカル生成物も、第一端部側へ向かうことなく、ほとんど全てが第二端部側へと向かい、第二開口領域から排出される。つまり、ラジカル生成物による、第一給電線及び第二給電線の劣化や破損の進行も抑制することができる。
【0020】
前記第一開口領域は、前記第二開口領域に向かって進行するにつれて、狭くなるように形成されていても構わない。
【0021】
第一開口領域が第二開口領域に向かって狭くなるように形成されると、流れてくる処理対象ガスは、第一開口領域において、圧縮されながら中空部へと導かれる。圧縮されながら中空部へと進行する処理対象ガスは、進行方向に対する圧力が高くなり、流速が速まる。従って、中空部内のガスは、より強い圧力で第二端部側へ押し出されることとなり、中空部内で発生したオゾンやラジカル生成物は、第一端部へは向かいにくくなり、第一給電線と第二給電線がオゾンやラジカル生成物に曝されるリスクが、さらに低減される。
【0022】
前記筐体は、前記第一端部側において、前記第一給電線と前記第二給電線を内設することができる溝が形成されている、前記放電ランプを支持する支持部材を備えていても構わない。
【0023】
上記構成とすることで、中空部から第一開口領域に微量のオゾンが流れ込んできた場合においても、第一給電線と第二給電線は、支持部材に内設されていることによって、オゾンと直接接触することから守られる。
【0024】
さらに、放電ランプは、発光時に第一電極と第二電極の間に高電圧が印加され、第一給電線と第二給電線の間には高い電圧差が生じている。この時、それぞれの給電線の被膜の素材等によっては、給電線同士が接触するだけで、電流リークが発生してしまうおそれもある。そこで、支持部材にそれぞれの給電線を独立して内設できる溝を構成することで、電流リークの抑制もできる。ただし、給電線同士の接触で、電流リークが発生しない場合には、各給電線をまとめて収容できる溝を形成するものであっても構わない。
【0025】
前記放電ランプは、前記管体の外壁面上において、前記第一電極と前記第二電極が前記管体を介して対向するように形成され、前記第一方向に向かって見たときに、前記第一電極と前記第二電極の対向する方向と、前記放電ランプに対して前記電源部が配置されている方向とが非平行となるように配置されていても構わない。
【0026】
上記構成とすることで、第一開口領域内において、第一給電線と第二給電線とで捻れが生じにくく、給電線同士を接触しにくくさせることができる。
【0027】
前記放電ランプは、Xeを含む放電用ガスが充填されたエキシマランプであっても構わない。
【0028】
エキシマランプの特徴は、オゾンを発生させるための紫外線を照射するランプであることに加え、点灯後すぐに安定した出力が得られることであり、不要時に消灯させたとしても、待機時間なく再稼働ができる。
【0029】
つまり、放電ランプをエキシマランプとすることで、処理対象ガスが流れてこない時は、消灯してオゾンやラジカル生成物が発生しない状態にすることができる。また、再稼働時に待機時間を要する場合には、その間に発生するオゾンが第一端部側へ流れ込み、第一給電線と第二給電線に接触してしまうおそれがあるが、エキシマランプであれば、待機時間を要しない。
【0030】
上記構成によれば、電源部を適宜制御することで、処理対象ガスの通流が停止している場合などに、不必要なオゾンやラジカル生成物が発生することを止めることができ、各給電線がオゾンやラジカル生成物に曝されることがないようにすることができる、
【0031】
上記気体処理装置は、
前記電源部を収容する電源ボックスを備え、
前記筐体の側面に形成された平面上に、前記電源ボックスの一平面が接触するように配置されていても構わない。
【0032】
気体処理装置が電源部を収容できる電源ボックスを備え、電源ボックスの一平面が、筐体の側面に形成された平面上に接触するように配置されることで、筐体と電源ボックスとが一体型の気体処理装置が構成できる。例えば、電源ボックスと筐体の接触する面の形状を合わせて構成し、全体として直方体形状となるように構成すれば、同一の気体処理装置をダクトの本数に併せて複数配置する場合に、積み重ねや整列が容易となり、柔軟な配置構成をとることができる。
【0033】
前記電源ボックスは、冷却用吸気口と、冷却用排気口と、冷却用ファンとを備え、
前記冷却用ファンが稼働することで前記冷却用吸気口から前記電源ボックス内に取り込まれた、前記処理対象ガスとは異なる外気が、前記電源部を冷却した後、前記冷却用排気口から排気されるように構成されていても構わない。
【0034】
上記構成とすることで、電源部を処理対象ガスではなく、外気で冷却することができる。外気によって電源部を冷却することで、電源ボックス内に配置された電源部や給電線の一部は、処理対象ガスや処理済みガスに曝され続けるよりも、清浄な状態を維持することができ、劣化や破損の進行が抑制される。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、給電線が放電ランプから放射される紫外線により発生したオゾンに曝されず、給電線の劣化の促進を抑えた気体処理装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】気体処理装置の一実施形態の模式的な全体斜視図である。
図2図1に示す気体処理装置の側面視の模式的な断面図である。
図3図1の気体処理装置を処理対象ガスの進行方向に向かって、第一端部側から見た正面視の図面である。
図4A】扁平管構造の放電ランプによる気体処理装置の側面視の模式的な断面図である。
図4B】扁平管構造の放電ランプによる気体処理装置の上面視の模式的な断面図である。
図4C】扁平管構造の放電ランプによる気体処理装置の正面視の模式的な断面図である。
図5】気体処理装置の別実施形態の側面視の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の気体処理装置について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は、いずれも模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比や個数は、実際の寸法比や個数と必ずしも一致していない。
【0038】
図1は、気体処理装置の一実施形態の模式的な全体斜視図である。本実施形態における気体処理装置1は、処理対象ガスが通流する筐体10と、電源部15が収容された電源ボックス16が積み重なって、全体として直方体形状をなしている。筐体10及び電源ボックス16の構造の詳細な説明は後述される。
【0039】
図2は、図1に示す気体処理装置1の側面視の模式的な断面図である。図2に示すように、筐体10は、中空部12bを含む本体部12と、本体部12の両端側に位置する第一端部12d及び第二端部12eを備える。第一端部12dは、中空部12bに連絡された第一開口領域12aを備える。第二端部12eは、第一開口領域12aとは反対側の位置において、中空部12bに連絡された第二開口領域12cを備える。中空部12bの内部には、本体部12の管軸に沿うように放電ランプ11が配置されている。
【0040】
図2に示すように、電源ボックス16内には電源部15が配置されている。放電ランプ11は、電源部15から電圧が印加されて紫外線L1を照射する。処理対象ガスG1は、気体処理装置1の外側から第一開口領域12aを通じて取り込まれると、中空部12bへと導かれる。中空部12b内を通流してきた処理対象ガスG1は、放電ランプ11から紫外線L1が照射されることで生成されたオゾンやラジカル生成物と反応し、処理対象ガスG1に含まれる物質(処理対象物質)が処理される。このようにして処理された後の処理済みガスG2は、第二開口領域12c側から気体処理装置1の外部へと排出される。放電ランプ11の構造については、後述される。
【0041】
さらに、図2に示す気体処理装置1は、第一端部12dと第二端部12eの位置において、中空部12b内に配置された放電ランプ11を支持するための支持部材13が備えられている。
【0042】
第一開口領域12aと第二開口領域12cは、いずれも中空部12bに向かって進行するにつれて狭くなるように形成されている。第一開口領域12aが、第二開口領域12cに向かって進行するにつれて狭くなることで、中空部12bを通流する処理対象ガスG1の進行方向に向かう圧力が高まり、処理対象ガスG1の流速が速まる。従って、放電ランプ11から放射された紫外線L1によって発生したオゾンを、第二開口領域12c側へと押し出す効果が高まる。
【0043】
気体処理装置1は、例えば建物の空調用ダクトや、工場の排気処理用ダクトに直接連結させて使用される場合が想定される。この場合、第一開口領域12aと第二開口領域12cは、第一端部12d及び第二端部12eにおける開口径は、空調ダクトの径と同じサイズで構成することが好ましく、多くは開口径が約15cmで構成される。
【0044】
中空部12bは、処理対象ガスG1が、オゾンに接触するように、できる限り放電ランプ11を構成する管体21の外壁面と筐体10の当該中空部12bの箇所における内壁面との隙間が狭くなるように構成される。その隙間は、約1cm程度であることが好ましい。中空部12b内に配置される放電ランプ11は、具体的には、管体21の直径又は幅は約3cm~5cmで構成され、筐体10の中空部12bの開口径は、約4cm~6cmで構成される。
【0045】
また、本実施形態では、上述したように、電源部15は、専用の電源ボックス16に収容されている。この電源ボックス16は、筐体10の外壁面を構成する平面上に接触するように配置されている。さらに、電源ボックス16は、電源部15を冷却するための冷却風W1を取り込むための冷却用吸気口17aと、冷却風W1を排気するための冷却用排気口17bと、冷却風W1を送風するための冷却用ファン18とを備えている。本実施形態では、冷却用ファン18は、冷却用排気口17bに配置されているが、冷却用吸気口17aに配置されていても構わない。
【0046】
電源ボックス16に収容されている電源部15は、冷却用吸気口17aを通して取り込まれた外気によって冷却されるため、電源部15は処理対象ガスG1や処理済みガスG2によって冷却される場合と比較すると、より清浄な状態を長期間保つことができる。
【0047】
放電ランプ11と電源部15は、第一給電線14aと第二給電線14bによって電気的に接続される。電源部15から第一給電線14aと第二給電線14bとの間に電圧が印加されることで、放電ランプ11から紫外線L1が放射される。
【0048】
第一給電線14aと第二給電線14bは、いずれも第一端部12d側を通過するように配線されている。この点について、図3も参照しながら説明する。図3は、図1の気体処理装置1を放電ランプ11の管軸方向に向かって、第一端部12d側から見た正面視の図面である。図3に示すように、支持部材13には、2本の溝13aが形成されており、各給電線(14a,14b)が独立して内設されている。これにより、万一、中空部12bで発生したオゾンやラジカル生成物が、第一開口領域12aに流れ込んできた場合でも、給電線(14a,14b)と接触しにくくさせることができる。
【0049】
また、それぞれの給電線(14a,14b)を溝13a内に独立して内設させることで、両者を一定距離以上離間させることができる。これにより、放電ランプ11の点灯時に高い電圧が印加されている場合であっても、給電線(14a,14b)間に発生するリーク電流を抑制できるという効果も得られる。給電線(14a,14b)は、高電圧が印加されると、各給電線(14a,14b)の被膜の素材や厚さにも依存するが、両者が接触するだけでリーク電流が発生する場合がある。このため、両給電線(14a,14b)を離間させて配線するのが好ましく、上述したように溝13aを利用して配線することで、その離間距離が確保できる。
【0050】
なお、給電線(14a,14b)を支持部材13に内設する構成は、溝13aの他に、支持部材13の内側に空洞を形成し、その中に給電線(14a,14b)を配線するものであっても構わない。
【0051】
図2に示すように、放電ランプ11は、円筒状の管体21内において、管軸に沿って延伸する円筒状の第一電極22aと、網目状に管体21の外壁面を覆う第二電極22bで構成され、管体21の内部は、Xeを含む放電用ガスが充填されている。ここで、第一電極22aと第二電極22bは、第一端部12d側においてそれぞれ第一給電線14aと第二給電線14bと電気的に接続されている。
【0052】
また、放電ランプ11は、いわゆる二重管構造の放電ランプ11であっても構わない。二重管構造の放電ランプ11は、二重円筒構造を有すると共に、内管の内壁面に一方の電極22aが配設され、外管の外壁面に他方の電極22bが配設されてなる放電ランプ11である。
【0053】
さらに、放電ランプ11は、いわゆる扁平管構造の放電ランプ11であっても構わない。扁平管構造の放電ランプ11については、図4A図4B及び図4Cを参照しながら説明する。図4Aは、扁平管構造の放電ランプ11による気体処理装置1の側面視の模式的な断面図である。図4Bは、扁平管構造の放電ランプ11による気体処理装置1の上面視の模式的な断面図である。図4Aに示すように、扁平管構造の放電ランプ11は、矩形管形状を呈する管体21を有すると共に、管体21の向かい合う一対の外壁のうちの、一方の外壁に電極22aが設けられ、他方の外壁に電極22bが設けられることで、両電極(22a,22b)が離間して設けられた放電ランプ11である。また、図4Bに示すように、扁平管構造の放電ランプ11の両電極(22a,22b)は、いずれも網目状に構成されている。
【0054】
図4Cは、扁平管構造の放電ランプ11による気体処理装置1の正面視の模式的な断面図である。図4Cに示すように、扁平管構造の放電ランプ11は、管体21の管軸方向から見たときに、第一電極22aと第二電極22bの対向方向41aと、放電ランプ11に対する電源部15の配置方向41bとが直交するように配置されている。放電ランプ11が、このように配置されることで、図4Bに示すように、各給電線(14a,14b)が互いに離間するように配線され、第一給電線14aと第二給電線14bとで捻れが生じにくく、給電線(14a,14b)同士を接触しにくくさせることができ、給電線(14a,14b)間の電流リークを抑制することができる。
【0055】
放電ランプ11が、Xeを含む放電用ガスが充填されているエキシマランプである場合において、図2図4Cに示す構造はあくまで一例であって、この形状には限られない。また、放電ランプ11が放射する紫外線L1によってオゾンが発生するためには、短波長の紫外線L1であることが好ましく、具体的には、波長が200nm以下の紫外線L1を照射できるランプであることが好ましい。
【0056】
放電ランプ11と電源部15とは、各給電線(14a,14b)によって接続されている。放電ランプ11内で、給電線14aが、第一開口領域12a側で電極22aと電気的に接続され、放電ランプ11外で、給電線14bが、第一開口領域12a側で電極22bと電気的に接続されている。電源部15から出力される電圧が、給電線(14a,14b)を通して、各電極(22a,22b)に印加されることで、放電ランプ11が発光し、処理対象ガスG1に対して紫外線L1が放射される。
【0057】
給電線(14a,14b)の被膜素材としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、テフロン(登録商標)がある。ポリ塩化ビニルやポリエチレンは、これらのオゾンやラジカル生成物に対する耐性が非常に弱く、高濃度のオゾンやラジカル生成物に曝されると、短期間で劣化や破損が生じてしまう。また、テフロン(登録商標)はポリ塩化ビニルやポリエチレンと比較すると耐性は強いが、僅かながらにも劣化は進行してしまう。
【0058】
放電ランプ11の近傍では、処理対象ガスG1が通流し、放電ランプ11が紫外線L1を放射している間は、常にオゾンやラジカル生成物が発生し続けている。そして、中空部12b内で発生したオゾンやラジカル生成物は、上流から流れてくる処理対象ガスG1によって、下流である第二開口領域12c側へと押し流される。
【0059】
第一給電線14aと第二給電線14bは、中空部12bの上流である第一開口領域12a側に配線されており、中空部12bで発生したオゾンやラジカル生成物に曝されることなく、オゾンやラジカル生成物による劣化や破損の進行は抑制される。
【0060】
[別実施形態]
以下、気体処理装置1の別実施形態について説明する。
【0061】
〈1〉 図5は、気体処理装置1の側面視の模式的な断面図である。図5に示すように、本体部12内の処理対象ガスG1、処理済みガスG2、及び中空部12bで発生したオゾンやラジカル生成物が、常に第二開口領域12cに向かって流れるように、第一開口領域12a、若しくは第二開口領域12cに送風用ファン31を備えていてもよい。
【0062】
なお、送風用ファン31は、第二開口領域12cに配置すると、中空部12b内で発生したオゾンやラジカル生成物に曝されてしまう。従って、送風用ファン31が劣化してしまうことを防止する観点から、第一開口領域12aに送風用ファン31を設けることが好ましい。
【0063】
〈2〉 中空部12bで発生したオゾンやラジカル生成物が、第一開口領域12aへと流れないように、第一開口領域12aと中空部12bの間に弁を備えていてもよい。
【0064】
〈3〉 上述した気体処理装置1が備える構成は、あくまで一例であり、本発明は、図示された各構成に限定されない。
【0065】
例えば、本体部12は第一端部12dから第二端部12eまで、同じ開口径であっても構わない。また、給電線(14a,14b)も、支持部材13に形成された溝13aに内設されていなくても構わない。
【0066】
図1及び図2では、電源ボックス16の一面が、筺体10の面に接触するように配置されている場合を例示したが、両者が離れた位置に配置されていても構わない。更に、図1及び図2では、電源部15が電源ボックス16によって覆われた空間内に配置されている場合が図示されているが、電源部15は、筺体10の外側の位置において露出されていても構わない。この場合、冷却用給気口17a、冷却用排気口17b、及び冷却用ファン18は必ずしも必要ではない。
【0067】
〈4〉 上記実施形態では、図4Cに示すように、扁平管構造の放電ランプ11の場合は、管体21の管軸方向から見たときに、第一電極22aと第二電極22bの対向方向41aと、放電ランプ11に対する電源部15の配置方向41bとが直交するように配置されているものとした。しかし、対向方向41aと配置方向41bがなす角度は、少なくとも非平行であればよく、好ましくは60°以上120°以下、より好ましくは70°以上110°以下である。対向方向41aと配置方向41bがなす角度を、当該角度範囲内となるように設計することで、給電線(14a,14b)同士が、捻れにくく、離間距離(絶縁距離)を確保するように配線しやすくなり、給電線(14a,14b)間の電流リークを抑制することができる。装置設計の観点から、電源部15をこのように配置することが望ましい。
【符号の説明】
【0068】
1 : 気体処理装置
10 : 筐体
11 : 放電ランプ
12 : 本体部
12a : 第一開口領域
12b : 中空部
12c : 第二開口領域
12d : 第一端部
12e : 第二端部
13 : 支持部材
14a : 第一給電線
14b : 第二給電線
15 : 電源部
16 : 電源ボックス
17a : 冷却用吸気口
17b : 冷却用排気口
18 : 冷却用ファン
21 : 管体
22a : 第一電極
22b : 第二電極
31 : 送風用ファン
41a : 対向方向
41b : 配置方向
G1 : 処理対象ガス
G2 : 処理済みガス
L1 : 紫外線
W1 : 冷却風
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5