(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】空気圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 41/02 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
F04B41/02 A
(21)【出願番号】P 2018205832
(22)【出願日】2018-10-31
【審査請求日】2021-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保科 壮希
(72)【発明者】
【氏名】横田 伴義
(72)【発明者】
【氏名】圷 康輔
(72)【発明者】
【氏名】野田 貴史
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-249071(JP,A)
【文献】特開2015-169072(JP,A)
【文献】特開2013-189897(JP,A)
【文献】特開平06-050264(JP,A)
【文献】特開2018-071507(JP,A)
【文献】特開2004-116462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を圧縮する第1圧縮部,前記第1圧縮部によって圧縮された空気をさらに圧縮する第2圧縮部,前記第1圧縮部および前記第2圧縮部の駆動源であるモータ、
前記モータを冷却する冷却風を生成するファンを含む圧縮空気生成部と、
前記圧縮空気生成部によって生成された圧縮空気が貯留される複数本のタンクと、を有し、
前記第1圧縮部は、第1シリンダおよび当該第1シリンダに収容された第1ピストンを含み、
前記第2圧縮部は、第2シリンダおよび当該第2シリンダに収容された第2ピストンを含み、
前記第1ピストンおよび前記第2ピストンは、前記モータの出力軸方向と交差する第1方向に往復動し、
前記複数本のタンクが、前記圧縮空気生成部の周囲に当該圧縮空気生成部を取り囲むように配置されて
おり、
前記複数本のタンクは、第1タンク群を構成する2本のタンクと、第2タンク群を構成する他の2本のタンクと、を含み、
前記第1タンク群は、前記第1方向と直交する第2方向において、前記第2タンク群との間に前記圧縮空気生成部を挟むように配置され、
前記第1タンク群を構成する前記2本のタンクは、それぞれが前記第1方向において前記圧縮空気生成部と重なるように、前記第1方向に前記圧縮空気生成部を挟んで配置され、
前記第2タンク群を構成する前記2本のタンクは、それぞれが前記第1方向において前記圧縮空気生成部と重なるように、前記第1方向に前記圧縮空気生成部を挟んで配置されている、空気圧縮機。
【請求項2】
それぞれの前記タンクの中心軸が互いに略平行である、請求項1に記載の空気圧縮機。
【請求項3】
それぞれの前記タンクの中心軸が前記モータの出力軸と略平行である、請求項2に記載の空気圧縮機。
【請求項4】
前記第1タンク群を構成する前記2本のタンクおよび前記第2タンク群を構成する前記2本のタンクのそれぞれの中心軸は、前記出力軸方向と交差する面内において、正方形または長方形の異なる頂点にそれぞれ位置する、請求項
3に記載の空気圧縮機。
【請求項5】
前記第1圧縮部と前記第2圧縮部は、前記出力軸を挟んで互いに対向する位置に設けられている
、請求項
4に記載の空気圧縮機。
【請求項6】
前記モータを制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記第2方向において、前記第1タンク群と前記第2タンク群との間に配置されている、請求項4~
5のいずれか一項に記載の空気圧縮機。
【請求項7】
前記第1タンク群に含まれる前記タンクから圧縮空気を取り出すための第1空気取出口と、
前記第2タンク群に含まれる前記タンクから圧縮空気を取り出すための第2空気取出口と、を有し、
前記第1空気取出口は、前記第2方向において、前記制御部と前記第1タンク群との間に配置され、
前記第2空気取出口は、前記第2方向において、前記制御部と前記第2タンク群との間に配置されている、請求項
6に記載の空気圧縮機。
【請求項8】
前記圧縮空気生成部によって生成された圧縮空気は、前記第1タンク群に含まれる前記タンクを経由して前記第2タンク群に含まれる前記タンクに導入される、請求項4~
7のいずれか一項に記載の空気圧縮機。
【請求項9】
前記第1タンク群に含まれる前記タンクの内圧が所定値を上回ると、前記第2タンク群に含まれる前記タンクに圧縮空気が導入される、請求項8に記載の空気圧縮機。
【請求項10】
前記複数本のタンクの少なくとも一部が着脱可能である、請求項1~9のいずれか一項に記載の空気圧縮機。
【請求項11】
前記圧縮空気生成部を覆う着脱可能なカバーを有する、請求項1~
10のいずれか一項に記載の空気圧縮機。
【請求項12】
前記複数本のタンクから圧縮空気を取り出すための空気取出口を有し、
前記第1タンク群を構成する前記2本のタンクは、それぞれが前記第1方向において前記空気取出口と重なるように、前記第1方向に前記空気取出口を挟んで配置され、
前記第2タンク群を構成する前記2本のタンクは、それぞれが前記第1方向において前記空気取出口と重なるように、前記第1方向に前記空気取出口を挟んで配置されている、請求項1に記載の空気圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気圧縮機に関するものであり、特に、圧縮された空気を貯留する複数本のタンクを備える空気圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の空気圧縮機は、圧縮空気生成部と、圧縮空気生成部によって生成された圧縮空気を貯留する1本または2本以上のタンクと、を有する。圧縮空気生成部は、シリンダ,シリンダ内に往復動可能に収容されたピストンおよびピストンの駆動源などから構成され、タンクの上に配置される。言い換えれば、タンクは、圧縮空気生成部を支持するベースやフレームとしても利用される。
【0003】
上記ピストンの駆動源には、例えば電動モータが用いられる。電動モータから出力される回転駆動力は、変換機構によって往復駆動力に変換されてピストンに伝達される。シリンダ内でピストンが往復動すると、シリンダの容積が変化する。具体的には、ピストンが上死点から下死点に移動すると、シリンダの容積が拡大してシリンダ内が負圧になり、シリンダ内に空気が導入される。その後、ピストンが下死点から上死点に移動すると、シリンダ内に導入された空気が圧縮され、圧力が高められる。圧縮された空気は、所定の配管を介してタンクに送られ、貯留される。2本以上のタンクを有する空気圧縮機では、それらタンク同士が配管を介して互いに接続され、各タンク内の圧力が均等に保たれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構造を有する空気圧縮機では、タンク内の圧縮空気の量が所定値を下回ると圧縮空気生成部が作動してタンクに圧縮空気が補充され、タンク内の圧縮空気の量が所定値を上回ると圧縮空気生成部が停止する。言い換えれば、空気圧縮機を連続的に使用している場合、タンク内の圧縮空気の量が所定値を下回る度に圧縮空気生成部の作動と停止とが繰り返される。当然ながら、圧縮空気生成部の作動中は動作音が発生する。また、タンクに圧縮空気が補充されている最中は、タンクから吐出される圧縮空気の圧力が低下したり、不安定になったりすることもある。よって、タンクの容量を増やして圧縮空気の補充回数をなるべく少なくすることが好ましい。
【0006】
タンクの容量を増やすためには、当該タンクの直径を拡大するか、当該タンクの全長を延長する必要がある。しかし、圧縮空気生成部が搭載されているタンクの直径を拡大すると、圧縮空気生成部およびタンクを含む空気圧縮機の全高が高くなってしまう。一方、タンクの全長を延長すると、圧縮空気生成部およびタンクを含む空気圧縮機の全長が長くなってしまう。つまり、タンクの容量を増やすと、空気圧縮機が大型化してしまう。
【0007】
本発明の目的は、空気圧縮機の大型化を回避しつつ、タンク容量の増大を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の空気圧縮機は、空気を圧縮する第1圧縮部,前記第1圧縮部によって圧縮された空気をさらに圧縮する第2圧縮部,前記第1圧縮部および前記第2圧縮部の駆動源であるモータを含む圧縮空気生成部と、前記圧縮空気生成部によって生成された圧縮空気が貯留される複数本のタンクと、を有する。前記複数本のタンクは、前記圧縮空気生成部の周囲に当該圧縮空気生成部を取り囲むように配置される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、空気圧縮機の大型化を回避しつつ、タンク容量を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】エアコンプレッサの外観を示す斜視図である。
【
図2】エアコンプレッサの構造を示す一部省略の斜視図である。
【
図3】エアコンプレッサの構造を示す断面図である。
【
図5】(a)はエアコンプレッサの平面図であり、(b)はエアコンプレッサの底面図である。
【
図6】(a)はエアコンプレッサの右側面図であり、(b)はエアコンプレッサの左側面図である。
【
図8】クランクケースの支持構造を示す分解斜視図である。
【
図9】クランクケースの支持構造を示す部分断面図である。
【
図10】エアコンプレッサの一変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の空気圧縮機の実施形態の一例について説明する。本実施形態に係る空気圧縮機は、空気を2段階で圧縮する圧縮空気生成部を有するレシプロ型エアコンプレッサである。本実施形態に係るエアコンプレッサの用途は特に限定されないが、圧縮空気の圧力によって釘やネジを木材などに打ち込む空気工具に圧縮空気を供給する供給源としての利用に適している。以下、本実施形態に係るエアコンプレッサについて図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1に示されるように、エアコンプレッサ1Aは、圧縮空気生成部10と、圧縮空気生成部10の周囲に当該圧縮空気生成部10を取り囲むように配置された複数本のタンク51,52,53,54と、を有する。タンク51,52,53,54は、実質的に同一の形状および寸法を有する。そこで、以下の説明では、タンク51,52,53,54を特に区別しないときには、これらを「タンク50」と総称する場合がある。
【0013】
図2,
図3に示されるように、圧縮空気生成部10は、第1圧縮部11,第2圧縮部12,クランクケース13,モータ14,プロペラファン15およびターボファン16を有する。第1圧縮部11は、第1シリンダ20,第1シリンダヘッド21および第1シリンダ20内に往復動可能に収容された第1ピストン22を含む。第2圧縮部12は、第2シリンダ30,第2シリンダヘッド31および第2シリンダ30内に往復動可能に収容された第2ピストン32を含む。第1圧縮部11に含まれる第1ピストン22および第2圧縮部12に含まれる第2ピストン32は、モータ14によって駆動される。つまり、モータ14は、第1圧縮部11および第2圧縮部12の共通の駆動源である。
【0014】
図2,
図3に示されるように、第1圧縮部11と第2圧縮部12は、クランクケース13の両側(上下)に設けられている。具体的には、
図3に示されるように、第1圧縮部11と第2圧縮部12は、クランクケース13を貫通するモータ14の出力軸14aを挟んで互いに対向する位置に設けられている。より具体的には、第1圧縮部11と第2圧縮部12は、出力軸14aの回転方向において180度異なる位置に配置され、クランクケース13を挟んで互いに対向している。言い換えれば、第1圧縮部11と第2圧縮部12との間にクランクケース13が設けられている。
【0015】
図3に示されるように、クランクケース13を貫通している出力軸14aは、複数の軸受によって回転自在に支持されている。プロペラファン15は、クランクケース13から突出している出力軸14aの一端に装着され、ターボファン16は、クランクケース13から突出している出力軸14aの他端に装着されている。プロペラファン15は、主に圧縮空気生成部10(モータ14やクランクケース13など)を冷却するための冷却風を生成する。一方、ターボファン16は、主に制御部17を冷却するための冷却風を生成する。制御部17は、
図2,
図3に示されている金属製のボックス17aと、当該ボックス17aに収容されている制御基板と、を含む。制御基板には、モータ14をインバータ制御するために必要な半導体素子の他、エアコンプレッサ1Aを統括的に制御するために必要な各種電子部品などが搭載されている。
【0016】
図3を参照する。出力軸14aの回転運動を第1ピストン22の往復運動に変換するために、第1ピストン22には、第1コネクティングロッド23の一端側が結合されており、第1コネクティングロッド23の他端側は、出力軸14a上に設けられている偏心カムに回転可能に結合されている。すなわち、第1コネクティングロッド23は、クランクケース13と第1シリンダ20とに跨り、出力軸14aと第1ピストン22とを連結している。また、出力軸14aの回転運動を第2ピストン32の往復運動に変換するために、第2ピストン32には、第2コネクティングロッド33の一端側が結合されており、第2コネクティングロッド33の他端側は、出力軸14a上に設けられている他の偏心カムに回転可能に結合されている。すなわち、第2コネクティングロッド33は、クランクケース13と第2シリンダ30とに跨り、出力軸14aと第2ピストン32とを連結している。
【0017】
モータ14の出力軸14aの回転運動は、上記偏心カムやコネクティングロッドなどからなる変換機構によって往復運動に変換されて第1ピストン22および第2ピストン32に伝達される。言い換えれば、モータ14から出力される回転駆動力は、変換機構によって往復駆動力に変換され、第1ピストン22および第2ピストン32に入力される。この結果、第1ピストン22および第2ピストン32は、出力軸14aの方向(
図3の紙面左右方向)と交差する第1方向に往復動する。具体的には、第1ピストン22および第2ピストン32は、
図3の紙面上下方向に往復動する。
【0018】
以下の説明では、出力軸14aの方向(出力軸方向)を「前後方向」と定義する。また、第1ピストン22および第2ピストン32の移動方向である第1方向を「上下方向」と定義する。つまり、出力軸方向と直交する2方向のうち、第1ピストン22および第2ピストン32の移動方向に沿う方向を「上下方向」と定義する。さらに、前後方向および上下方向の双方と直交する第2方向を「左右方向」と定義する。つまり、出力軸方向と直交する2方向のうち、上下方向とは異なる他の一方向を「左右方向」と定義する。理解を容易にするために、ここで定義された各方向を
図1に示す。
【0019】
再び
図3を参照する。上記2つの偏心カムは、第1ピストン22および第2ピストン32の移動方向に関して互いに同じ向きに偏心している。したがって、第1ピストン22が第1シリンダ20の上室を圧縮する方向に移動するとき、第2ピストン32は第2シリンダ30の上室に気体(空気)が吸入される方向に移動する。一方、第2ピストン32が第2シリンダ30の上室を圧縮する方向に移動するとき、第1ピストン22は第1シリンダ20の上室に気体(空気)が吸入される方向に移動する。
【0020】
第1シリンダヘッド21および第2シリンダヘッド31の内部には、それぞれバッファ室が設けられている。さらに、第1シリンダ20の上室と第1シリンダヘッド21内のバッファ室との間、第2シリンダ30の上室と第2シリンダヘッド31内のバッファ室との間には、それぞれ逆止弁が設けられている。第1ピストン22が第1シリンダ20の上室を圧縮する方向に移動し、当該上室内の空気の圧力が所定圧力よりも高くなると、第1シリンダ20の上室とバッファ室との間にある逆止弁が開く。すると、第1ピストン22によって圧縮された空気は、第1シリンダ20と第2シリンダ30とを連通させている配管18を介して第2シリンダ30の上室に送られる。
【0021】
その後、第2ピストン32が第2シリンダ30の上室を圧縮する方向に移動し、当該上室内の空気の圧力が所定圧力よりも高くなると、第2シリンダ30の上室とバッファ室との間にある逆止弁が開く。すると、第2ピストン32によって圧縮された空気は、第2シリンダ30とタンク51とを連通させている配管19(
図6(a))を介してタンク51に送られる。尚、
図1に示されている4本のタンク51,52,53,54は、配管を介して互いに連通している。よって、圧縮空気生成部10によって生成され、配管19(
図6(a))を介してタンク51に送られた圧縮空気は、タンク51に送られた後、他のタンク52,53,54に自動的かつ同時に分配される。この結果、全てのタンク50の内圧は均等に保たれる。尚、各タンク50を接続している配管の詳細については後述する。
【0022】
図2,
図3に示される第1シリンダ20には、クランクケース13に設けられている吸入口を介して外気が導入される。すなわち、第1シリンダ20内の第1ピストン22は外気を圧縮し、第2シリンダ30内の第2ピストン32は、第1ピストン22によって圧縮された外気(空気)をさらに圧縮する。つまり、第1シリンダ20および第1ピストン22を含む第1圧縮部11は、低圧用の圧縮部であり、第2シリンダ30および第2ピストン32を含む第2圧縮部12は、高圧用の圧縮部である。このように、本実施形態に係るエアコンプレッサ1Aは、空気を2段階で圧縮する。具体的には、第1圧縮部11において1.0[MPa]前後の圧縮空気を生成し、第2圧縮部12において4.5[MPa]程度の圧縮空気を生成する。
【0023】
次に、主に
図4~
図7を参照しつつ、エアコンプレッサ1Aが備える4本のタンク51,52,53,54の配置について説明する。
図4は、エアコンプレッサ1Aの正面図である。
図5(a)は、エアコンプレッサ1Aの平面図であり、同図(b)は、エアコンプレッサ1Aの底面図である。
図6(a)は、エアコンプレッサ1Aの右側面図であり、同図(b)は、エアコンプレッサ1Aの左側面図である。
図7は、エアコンプレッサ1Aの背面図である。
【0024】
図4~
図7に示されるように、4本のタンク51,52,53,54は、それぞれの中心軸a,b,c,dが互いに平行または略平行となるように圧縮空気生成部10の周囲に配置され、圧縮空気生成部10を取り囲んでいる。具体的には、タンク51の中心軸aは、他のタンク52,53,54のそれぞれの中心軸b,c,dと略平行である。同様に、タンク52の中心軸bは、他のタンク51,53,54のそれぞれの中心軸a,c,dと平行である。タンク53の中心軸cは、他のタンク51,52,54のそれぞれの中心軸a,b,dと平行である。タンク54の中心軸dは、他のタンク51,52,53のそれぞれの中心軸a,b,cと平行である。
【0025】
また、
図3に示されるように、タンク53,54の中心軸c,dは、モータ14の出力軸14aと平行または略平行である。このことは、
図4~
図7に示されるタンク51,52の中心軸a,bも、モータ14の出力軸14aと平行または略平行であることを意味する。つまり、全てのタンク51,52,53,54の中心軸a,b,c,dは、出力軸14aと平行または略平行である。
【0026】
図1,
図4に示されるように、2本のタンク51,52は、左右方向において出力軸14a(
図3)の一側(右側)に配置され、第1タンク群50aを構成している。一方、他の2本のタンク53,54は、左右方向において出力軸14a(
図3)の他側(左側)に配置され、第2タンク群50bを構成している。言い換えれば、2本のタンク51,52は、左右方向において出力軸14aの一側に配置された複数本のタンクによって構成される第1タンク群50aに含まれるタンクである。また、他の2本のタンク53,54は、左右方向において出力軸14aの他側に配置された複数本のタンクによって構成される第2タンク群50bに含まれるタンクである。
【0027】
図4および
図7に示されるように、タンク51,52,53,54の中心軸a,b,c,dは、出力軸方向と交差する面内において、四角形(正方形または長方形)の異なる頂点にそれぞれ位置している。具体的には、タンク51,52,53,54の中心軸a,b,c,dは、出力軸方向と直交する面内において、正方形60の各頂点A,B,C,Dにそれぞれ位置している。より具体的には、タンク51の中心軸aの位置は、正方形60の頂点Aの位置と一致している。同様に、タンク52の中心軸bの位置は、正方形60の頂点Bの位置と一致し、タンク53の中心軸cの位置は、正方形60の頂点Cの位置と一致し、タンク54の中心軸dの位置は、正方形60の頂点Dの位置と一致している。
【0028】
図5(a)に示されるように、第1タンク群50aを構成するタンク52は、第1圧縮部11の一側(右側)に配置され、第2タンク群50bを構成するタンク54は、第1圧縮部11の他側(左側)に配置されている。言い換えれば、第1圧縮部11は、第1タンク群50aを構成する2本のタンクのうちの1本(タンク52)と、第2タンク群50bを構成する2本のタンクのうちの1本(タンク54)と、の間に配置されている。
【0029】
また、
図5(b)に示されるように、第1タンク群50aを構成するタンク51は、第2圧縮部12の一側(右側)に配置され、第2タンク群50bを構成するタンク53は、第2圧縮部12の他側(左側)に配置されている。言い換えれば、第2圧縮部12は、第1タンク群50aを構成する2本のタンクのうちの1本(タンク51)と、第2タンク群50bを構成する2本のタンクのうちの1本(タンク53)と、の間に配置されている。
【0030】
要するに、
図1に示されるように、圧縮空気生成部10の下部両側にタンク51,53が配置され、圧縮空気生成部10の上部両側にタンク52,54が配置されている。この結果、
図4および
図7に示されるように、エアコンプレッサ1Aを正面または背面から見たとき、圧縮空気生成部10の大部分は、A,B,C,Dを頂点とする正方形60の内側に収まっている。つまり、圧縮空気生成部10の大部分は、4本のタンク51,52,53,54の内側に収まっている。
【0031】
上記のように配置されているタンク51,52,53,54は、複数の連結フレームを介して、直接的または間接的に連結されている。
図5(a)に示されるように、タンク52とタンク54とは、一対の上側横連結フレーム55a,55bを介して互いに連結されている。
図5(b)に示されるように、タンク51とタンク53とは、一対の下側横連結フレーム56a,56bを介して互いに連結されている。
図6(a)に示されるように、タンク51とタンク52とは、右側縦連結フレーム57を介して互いに連結されている。
図6(b)に示されるように、タンク53とタンク54とは、左側縦連結フレーム58を介して互いに連結されている。
【0032】
図4~
図7に示さるように、タンク51,52,53には、一対の金属製の固定部59a,59bがそれぞれ設けられている。さらに、タンク51,53に設けられている固定部59a,59bには、ゴム脚80がそれぞれ装着されている。つまり、エアコンプレッサ1Aの底部には、4つのゴム脚80が設けられている(
図5(b)参照)。通常、エアコンプレッサ1Aは、4つのゴム脚80が載置面(地面や床など)に接するように縦置きされる。このとき、
図3に示されるように、第1ピストン22および第2ピストン32の往復動方向(摺動方向)は、載置面Xに対して垂直または略垂直になる。
【0033】
もっとも、タンク53の固定部59a,59bに装着されているゴム脚80をタンク52の固定部59a,59bに付け替えることができる。また、タンク51,53の固定部59a,59bに装着されているゴム脚80に加えて、タンク52の固定部59a,59bにもゴム脚80を装着することができる。これらの場合、タンク51の固定部59a,59bに装着されている2つのゴム脚80およびタンク52の固定部59a,59bに装着されている2つのゴム脚80が載置面X(
図3)に接するようにエアコンプレッサ1Aを横置きすることができる。この場合、
図3に示される第1ピストン22および第2ピストン32の往復動方向(摺動方向)は、載置面Xに対して平行または略平行になる。
【0034】
図1に示されるように、制御部17は、左右方向において第1タンク群50aと第2タンク群50bとの間に配置されている。また、制御部17は、前後方向において圧縮空気生成部10の前方に配置されている。
図1,
図2に示されるように、ボックス17aの上面は上側横連結フレーム55aにボルト留めされ、ボックス17aの下面は下側横連結フレーム56aにボルト留めされており、上下のタンク50を支持する補助フレームとしての役割、或いは共振抑制の役割を担うことができる。
【0035】
図1に示されるように、エアコンプレッサ1Aは、タンク50から圧縮空気を取り出すための第1空気取出口および第2空気取出口を有する。具体的には、第1空気取出口としてのカプラ61,62が左右方向において制御部17と第1タンク群50aとの間に設けられ、第2空気取出口としてのカプラ63,64が左右方向において制御部17と第2タンク群50bとの間に設けられている。本実施形態では、カプラ61,62を介して第1タンク群50aに含まれるタンク51,52から圧縮空気が取り出され、カプラ63,64を介して第2タンク群50bに含まれるタンク53,54から圧縮空気が取り出される。
【0036】
カプラ61,62の近傍には、これらカプラ61,62から吐出される圧縮空気の圧力を調節する減圧弁65が設けられており、カプラ63,64の近傍には、これらカプラ63,64から吐出される圧縮空気の圧力を調節する減圧弁66が設けられている。減圧弁65,66によって調節された圧縮空気の圧力は、それぞれの減圧弁65,66の近傍に設けられている圧力計67,68によって計測され、表示される。
【0037】
図6(a)に示されるように、エアコンプレッサ1Aには、タンク50内の圧力が所定値よりも高くなると自動的に開く安全弁70が設けられている。また、エアコンプレッサ1Aには、タンク50内のドレンを排出させるドレン排出機構が設けられており、
図7に示されているドレンコック71を操作すると、タンク50内のドレンが圧縮空気と一緒に排出される。
【0038】
既述のとおり、タンク51,52,53,54は、配管を介して互いに連通している。具体的には、
図4に示されるように、タンク51とタンク54とは配管72を介して、タンク53とタンク52とは配管73を介して、タンク52とタンク54とは配管74を介して連通している。また、
図7に示されるように、タンク51とタンク53とは配管75を介して連通している。よって、圧縮空気生成部10によって生成された圧縮空気は、配管19(
図6(a))を介してタンク51に導入され、その後、配管72,73,74,75(
図4,
図7)を介して他のタンク52,53,54に自動的かつ同時に導入される。つまり、圧縮空気生成部10によって生成された圧縮空気は、第1タンク群50aに含まれるタンク51を経由して、第1タンク群50aに含まれる他のタンク52および第2タンク群50bに含まれるタンク53,54に自動的かつ同時に導入される。
【0039】
図8,
図9に示されるように、クランクケース13の下面の四隅には、環状の取付け部13aがそれぞれ突設されている。また、クランクケース13の上面の四隅にも、環状の取付け部13bがそれぞれ突設されている。以下の説明では、クランクケース13の下面に設けられている取付け部13aを「下方取付け部13a」と呼び、クランクケース13の上面に設けられている取付け部13bを「上方取付け部13b」と呼ぶ場合がある。
【0040】
ここで、下方取付け部13aが設けられているクランクケース13の下面は、エアコンプレッサ1Aが縦置きされたときに載置面X(
図3)と対向する面である。また、上方取付け部13bが設けられているクランクケース13の上面は、出力軸14a(
図3)を挟んでクランクケース13の下面とは反対側に位置し、かつ、クランクケース13の下面に対して平行な面である。
【0041】
図8,
図9に示されるように、クランクケース13の下方取付け部13aには支持部材90がそれぞれ装着され、上方取付け部13bには変位抑制部材91がそれぞれ装着されている。支持部材90および変位抑制部材91は、ゴムなどの弾性材料によって形成されている点、中空の円筒部を備えている点において共通しているが、支持部材90は変位抑制部材91よりも硬度が低い。
【0042】
それぞれの支持部材90の軸方向一端側は、ボルト95aによってクランクケース13の下部に固定され、それぞれの支持部材90の軸方向他端側は、ボルト95bによってタンク51,53に固定されている。具体的には、各支持部材90における円筒部の下端面が当該下端面を貫通するボルト95bによってタンク51,53に設けられている固定用ブラケット92に固定されている。
【0043】
それぞれの変位抑制部材91の一端側は、ボルト96によってクランクケース13の上部に固定され、それぞれの変位抑制部材91の他端側は、タンク52,54に連結されている。具体的には、各変位抑制部材91における円筒部の上部がタンク52,54に設けられている抑制用ブラケット93に形成されている挿入穴93aに遊嵌されている。よって、クランクケース13を含む圧縮空気生成部10の揺動が、各変位抑制部材91の円筒部と挿入穴93aとの干渉によって抑制される。
【0044】
図8,
図9から理解できるように、支持部材90における円筒部の中心軸は、第1ピストン22および第2ピストン32(
図3)の往復動方向と平行または略平行である。よって、第1ピストン22および第2ピストン32の往復動に伴って発生する振動が各支持部材90(特に、各支持部材90の円筒部)の弾性変形によって効果的に吸収され、または減衰される。
【0045】
以上のように、本実施形態に係るエアコンプレッサ1Aは4本のタンク50を備えており、各タンク50の容量は約3リットルである。つまり、エアコンプレッサ1Aは、最大で約12リットル(3リットル×4本)の圧縮空気を貯留する能力を備えている。同程度の貯留能力を2本のタンクで実現するためには、それぞれが約6リットルの容量を有するタンクを用意する必要がある。しかし、容量が6リットルのタンクは、本実施形態に係るエアコンプレッサ1Aが備えるタンク50よりも大径になってしまうか、又は全長が長くなってしまう。つまり、本実施形態に係るエアコンプレッサ1Aは、同程度の圧縮空気貯留能力を備える従来のエアコンプレッサに比べて小型化されている。言い換えれば、本実施形態に係るエアコンプレッサ1Aを従来のエアコンプレッサと同程度の大きさとした場合、従来のエアコンプレッサよりも格段に大きな圧縮空気貯留能力を得ることができる。
【0046】
さらに、本実施形態に係るエアコンプレッサ1Aでは、複数本のタンク50が圧縮空気生成部10の周囲に当該圧縮空気生成部10を取り囲むように配置されている。かかるタンク50のレイアウトは、エアコンプレッサ1Aの小型化に寄与するだけでなく、圧縮空気生成部10の動作音を遮音する効果も奏する。具体的には、タンク50は金属製(本実施形態ではアルミニウム製)であり、樹脂製のカバーなどよりも遮音効果が高い。よって、圧縮空気生成部10を複数本のタンク50で取り囲むことにより、圧縮空気生成部10の動作音を効果的に遮断することができる。
【0047】
小型化や静粛性に関する上記作用効果は、複数本のタンク50が圧縮空気生成部10の周囲に当該圧縮空気生成部10を取り囲むように配置されていることによって得られるものである。よって、圧縮空気生成部10における第1ピストン22および第2ピストン32の移動方向は、
図1に示される上下方向に限定されず、例えば、左右方向であってもよい。つまり、本発明の技術的範囲には、圧縮空気生成部を構成するピストンが載置面に対して垂直に往復動する空気圧縮機のみでなく、ピストンが載置面に対して平行に往復動する空気圧縮機も含まれる。
【0048】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施形態では、圧縮空気生成部10で生成された圧縮空気が全てのタンク50に自動的かつ同時に導入される。しかし、所定のタンクの内圧が所定値を上回ると、他のタンクに圧縮空気が導入される実施形態もある。言い換えれば、所定のタンクの内圧が所定値を上回るまでは、他のタンクに圧縮空気が導入されない実施形態もある。例えば、第1タンク群50aに含まれるタンク51,52の内圧が所定値を上回ると、第2タンク群50bに含まれるタンク53,54に対する圧縮空気の導入が開始される実施形態もある。また、複数本のタンクの少なくとも一部が着脱可能な実施形態もある。
【0049】
図10に示されるように、圧縮空気生成部10を取り囲んでいる複数本のタンク50間の隙間を覆うカバー95が設けられる実施形態もある。図示されているカバー95は、タンク50や圧縮空気生成部10(
図1)に対して着脱可能な樹脂製カバーである。また、カバー95には、カプラ61~64、減圧弁65,66、圧力計67,68などに対するアクセスを確保するための開口部が適宜形成されている。
図10に示されている実施形態では、圧縮空気生成部10(
図1)がタンク50およびカバー95によって実質的に完全に覆われている。よって、圧縮空気生成部10の動作音がより一層遮断され、静粛性がさらに向上する。また、圧縮空気生成部10の一部はタンク50によって覆われるので、カバー95は、タンク50によって覆われていない残部を覆うために必要な面積を有していればよい。よって、カバー95の面積を、圧縮空気生成部の全部を覆う従来の樹脂製カバーに比べて縮小させることができる。
【符号の説明】
【0050】
1A…エアコンプレッサ、10…圧縮空気生成部、11…第1圧縮部、12…第2圧縮部、13…クランクケース、13a…取付け部(下方取付け部)、13b…取付け部(上方取付け部)、14…モータ、14a…出力軸、15…プロペラファン、16…ターボファン、17…制御部、17a…ボックス、18,19…配管、20…第1シリンダ、21…第1シリンダヘッド、22…第1ピストン、23…第1コネクティングロッド、30…第2シリンダ、31…第2シリンダヘッド、32…第2ピストン、33…第2コネクティングロッド、50,51,52,53,54…タンク、50a…第1タンク群、50b…第2タンク群、55a,55b…上側横連結フレーム、56a,56b…下側横連結フレーム、57…右側縦連結フレーム、58…左側縦連結フレーム、59a,59b…固定部、60…正方形、61~64…カプラ、65,66 …減圧弁、67,68…圧力計、70…安全弁、71…ドレンコック、72~75…配管、80…ゴム脚、90…支持部材、91…変位抑制部材、92…固定用ブラケット、93…抑制用ブラケット、93a…挿入穴、95…カバー、95a,95b,96…ボルト、A,B,C,D…頂点、X…載置面、a,b,c,d…中心軸