(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】付加製造装置及び付加製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 3/16 20060101AFI20230111BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20230111BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20230111BHJP
B22F 12/90 20210101ALI20230111BHJP
B22F 10/60 20210101ALI20230111BHJP
【FI】
B22F3/16
B22F3/105
B22F10/28
B22F12/90
B22F10/60
(21)【出願番号】P 2018240276
(22)【出願日】2018-12-21
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田野 誠
(72)【発明者】
【氏名】長濱 貴也
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-096936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/105
B22F 10/28
B29C 64/153
B29C 64/268
B29C 64/273
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元形状を有する付加製造物を造形する造形位置に材料粉末を供給する粉末供給部と、
前記造形位置に供給された前記材料粉末を溶融する光ビームを照射する光ビーム照射部と、
前記造形位置に前記材料粉末を供給するように前記粉末供給部の作動を制御すると共に前記造形位置に前記光ビームを照射するように前記光ビーム照射部の作動を制御する制御部と、
前記造形位置の内部に空隙を有する内部欠陥が生じている欠陥部分を検出する欠陥検出部と、
前記欠陥検出部によって検出された前記欠陥部分が存在する位置に前記光ビームを再度照射して前記内部欠陥を修正する欠陥修正部と、を備え
、
前記欠陥検出部は、
前記粉末供給部が前記造形位置に前記材料粉末を供給した状態で、前記内部欠陥が生じた可能性のある欠陥候補を抽出する欠陥候補抽出部と、
前記欠陥候補抽出部によって抽出された前記欠陥候補のうち前記内部欠陥が生じている前記欠陥候補を前記欠陥部分として特定すると共に前記欠陥部分が存在する位置を特定する欠陥特定部と、を備えた
、付加製造装置。
【請求項2】
前記粉末供給部は、
供給する前記材料粉末を層状に配置して均すリコータを有しており、
前記欠陥候補抽出部は、
層状に配置された前記材料粉末の層表面において隆起した部分を前記欠陥候補として抽出し、
前記欠陥特定部は、
音波
を用いて、前記欠陥部分における前記音波
の強度変化に基づいて前記欠陥部分を特定する、請求項
1に記載の付加製造装置。
【請求項3】
前記欠陥候補抽出部は、
前記層表面を撮像した画像データを解析して輝度の高い部分を前記欠陥候補として抽出する、請求項
2に記載の付加製造装置。
【請求項4】
前記欠陥候補抽出部は、
前記光ビーム照射部が前記光ビームを照射した後であって前記リコータによって前記材料粉末が層状に配置される前の前記材料粉末の前記層表面を撮像して前記欠陥候補を抽出する、請求項
3に記載の付加製造装置。
【請求項5】
前記欠陥特定部は、
前記音波
の前記強度変化の大きさと時間差とに応じて前記欠陥部分における前記内部欠陥の大きさと深さとを判別し、
前記欠陥修正部は、
前記内部欠陥を修正するように、前記内部欠陥の大きさに応じて前記光ビームを照射する際の照射条件を変更する、請求項
2に記載の付加製造装置。
【請求項6】
前記欠陥特定部は、
前記リコータに設けられる、請求項
2乃至請求項
5のうちの何れか一項に記載の付加製造装置。
【請求項7】
三次元形状を有する付加製造物を造形する造形位置に材料粉末を供給する粉末供給部と、
前記造形位置に供給された前記材料粉末を溶融する光ビームを照射する光ビーム照射部と、
前記造形位置に前記材料粉末を供給するように前記粉末供給部の作動を制御すると共に前記造形位置に前記光ビームを照射するように前記光ビーム照射部の作動を制御する制御部と、
前記造形位置の内部に空隙を有する内部欠陥が生じている欠陥部分を検出する欠陥検出部と、
前記欠陥検出部によって検出された前記欠陥部分が存在する位置に前記光ビームを再度照射して前記内部欠陥を修正する欠陥修正部と、を備え、
前記欠陥検出部は、
音波
を用いて、前記欠陥部分における前記音波
の強度変化と時間差とに基づいて前記欠陥部分を特定
する、付加製造装置。
【請求項8】
前記欠陥検出部は、
前記音波
の前記強度変化の大きさと前記時間差とに応じて前記欠陥部分における前記内部欠陥の大きさと深さとを判別し、
前記欠陥修正部は、
前記内部欠陥を修正するように、前記内部欠陥の大きさに応じて前記光ビームを照射する際の照射条件を変更する、請求項
7に記載の付加製造装置。
【請求項9】
三次元形状を有する付加製造物を造形する造形位置に材料粉末を供給する粉末供給部と、
前記造形位置に供給された前記材料粉末を溶融する光ビームを照射する光ビーム照射部と、
前記造形位置に前記材料粉末を供給するように前記粉末供給部の作動を制御すると共に前記造形位置に前記光ビームを照射するように前記光ビーム照射部の作動を制御する制御部と、
前記造形位置の内部に空隙を有する内部欠陥が生じている欠陥部分を検出する欠陥検出部と、
前記欠陥検出部によって検出された前記欠陥部分が存在する位置に前記光ビームを再度照射して前記内部欠陥を修正する欠陥修正部と、を備え、
前記粉末供給部は、
供給する前記材料粉末を層状に配置して均すリコータを有しており、
前記欠陥検出部は、
層状に配置された前記材料粉末の層表面において隆起した部分として、前記層表面を撮像した画像データを解析して輝度の高い部分を
、前記欠陥部分として特定
する、付加製造装置。
【請求項10】
前記光ビーム照射部から、前記光ビームを照射する際の照射条件及び前記光ビームを照射する際の動作に関する動作指令を含む加工情報を取得する加工情報取得部と、
前記欠陥検出部から特定された前記内部欠陥の発生量及び前記内部欠陥の程度を含む欠陥情報を取得する欠陥情報取得部と、
前記加工情報取得部が取得した前記加工情報と前記欠陥情報取得部が取得した前記欠陥情報とを関連付けて学習する学習部と、を含んで構成される機械学習部を備えた、請求項1乃至請求項
9のうちの何れか一項に記載の付加製造装置。
【請求項11】
前記機械学習部は、
前記欠陥情報取得部が取得した前記欠陥情報に基づいて決定される報酬条件を記憶する報酬条件記憶部と、
前記加工情報取得部が取得した前記加工情報と前記報酬条件記憶部が記憶している前記報酬条件とを用いて報酬を計算する報酬計算部と、
前記加工情報取得部が取得した前記照射条件と前記動作指令とについて、前記欠陥情報に含まれる前記内部欠陥の前記発生量及び前記内部欠陥の前記程度が小さくなるように、価値評価を行う価値評価部と、
前記報酬計算部によって計算された前記報酬に基づいて、前記価値評価部を更新する価値評価部更新部と、を有する、請求項
10に記載の付加製造装置。
【請求項12】
前記機械学習部は、
前記価値評価部によって最大化される価値に基づいて、前記加工情報取得部が取得した前記照射条件と前記動作指令とを決定する動作決定部、を有する、請求項
11に記載の付加製造装置。
【請求項13】
三次元形状を有する付加製造物を造形する造形位置に材料粉末を供給する粉末供給部と、
前記造形位置に供給された前記材料粉末を溶融する光ビームを照射する光ビーム照射部と、
前記造形位置に前記材料粉末を供給するように前記粉末供給部の作動を制御すると共に前記造形位置に前記光ビームを照射するように前記光ビーム照射部の作動を制御する制御部と、
前記造形位置の内部に空隙を有する内部欠陥が生じている欠陥部分を検出する欠陥検出部と、
前記欠陥検出部によって検出された前記欠陥部分が存在する位置に前記光ビームを再度照射して前記内部欠陥を修正する欠陥修正部と、
機械学習部と、を備え、
前記機械学習部は、
前記光ビーム照射部から、前記光ビームを照射する際の照射条件及び前記光ビームを照射する際の動作に関する動作指令を含む加工情報を取得する加工情報取得部と、
前記欠陥検出部から特定された前記内部欠陥の発生量及び前記内部欠陥の程度を含む欠陥情報を取得する欠陥情報取得部と、
前記加工情報取得部が取得した前記加工情報と前記欠陥情報取得部が取得した前記欠陥情報とを関連付けて学習する学習部と、を備えた、付加製造装置。
【請求項14】
層状に配置された材料粉末に光ビームを照射し、前記材料粉末を溶融した後に凝固させる又は焼結することによって三次元形状を有する付加製造物を製造する付加製造方法であって、
前記付加製造物を支持可能且つ昇降動作可能な昇降テーブルを予め設定された降下量だけ降下させる昇降テーブル降下工程と、
前記昇降テーブルの降下に伴って降下した前記付加製造物を造形する造形位置に前記材料粉末を層状に供給する粉末供給工程と、
前記粉末供給工程にて前記造形位置に前記材料粉末を層状に供給された状態で、前記造形位置の内部に空隙を有する内部欠陥が生じた可能性のある欠陥候補を抽出する欠陥候補抽出工程と、
前記欠陥候補抽出工程にて抽出された前記欠陥候補のうち前記内部欠陥が生じている欠陥部分を特定すると共に前記欠陥部分が存在する位置を特定する欠陥調査工程と、
前記欠陥調査工程にて特定された前記欠陥部分が存在する位置に前記光ビームを再度照射して前記内部欠陥を修正する欠陥修正工程と、を含んで構成された付加製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加製造装置及び付加製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
付加製造には、例えば、粉末床溶融結合(Powder Bed Fusion)方式、指向性エネルギー堆積(Directed Energy Deposition)方式等があることが知られている。粉末床溶融結合方式は、平らに敷き詰められた粉末に対して、光ビーム(レーザビーム及び電子ビーム等)を照射することで付加製造を行う。粉末床溶融結合方式には、SLM(Selective Laser Melting)、EBM(Electron Beam Melting)等が含まれる。指向性エネルギー堆積方式は、光ビームの照射と粉末材料の吐出を行うヘッドの位置を制御することで付加製造を行う。指向性エネルギー堆積方式には、LMD(Laser Metal Deposition)、DMP(Direct Metal Printing)等が含まれる。
【0003】
そして、従来から、例えば、下記特許文献1に開示された付加製造装置及び付加製造方法が知られている。従来の付加製造装置及び付加製造方法は、粉末床溶融結合方式を採用しており、付加製造物の形状データに基づき予め設定されたピッチごとに作成されたスライス像データにより薄層を形成する造形手段と、薄層を積層位置に搬送して転写定着するための転写定着手段と、を備えている。これにより、従来の付加製造装置及び付加製造方法においては、スライス像データに基づいて形成された薄層を積層位置に搬送して転写定着することで、付加製造物を形成するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の付加製造装置及び付加製造方法においては、造形手段によって形成された薄層が積層されて付加製造物が製造される。このため、造形手段によって形成される部位が適正に形成されていない薄層が積層された場合、製造された付加製造物においては空隙等の内部欠陥を生じている可能性があり、内部欠陥を生じた状態では相対密度が低下して所望の機械強度が得られない虞がある。従って、相対密度の低下した付加製造物が製造された場合には、製造のやり直しが生じる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、内部欠陥を精度よく検出すると共に検出した内部欠陥を修正することが可能な付加製造装置及び付加製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、三次元形状を有する付加製造物を造形する造形位置に材料粉末を供給する粉末供給部と、
前記造形位置に供給された前記材料粉末を溶融する光ビームを照射する光ビーム照射部と、
前記造形位置に前記材料粉末を供給するように前記粉末供給部の作動を制御すると共に前記造形位置に前記光ビームを照射するように前記光ビーム照射部の作動を制御する制御部と、
前記造形位置の内部に空隙を有する内部欠陥が生じている欠陥部分を検出する欠陥検出部と、
前記欠陥検出部によって検出された前記欠陥部分が存在する位置に前記光ビームを再度照射して前記内部欠陥を修正する欠陥修正部と、を備え、
前記欠陥検出部は、
前記粉末供給部が前記造形位置に前記材料粉末を供給した状態で、前記内部欠陥が生じた可能性のある欠陥候補を抽出する欠陥候補抽出部と、
前記欠陥候補抽出部によって抽出された前記欠陥候補のうち前記内部欠陥が生じている前記欠陥候補を前記欠陥部分として特定すると共に前記欠陥部分が存在する位置を特定する欠陥特定部と、を備えた、付加製造装置にある。
本発明の他の態様は、三次元形状を有する付加製造物を造形する造形位置に材料粉末を供給する粉末供給部と、
前記造形位置に供給された前記材料粉末を溶融する光ビームを照射する光ビーム照射部と、
前記造形位置に前記材料粉末を供給するように前記粉末供給部の作動を制御すると共に前記造形位置に前記光ビームを照射するように前記光ビーム照射部の作動を制御する制御部と、
前記造形位置の内部に空隙を有する内部欠陥が生じている欠陥部分を検出する欠陥検出部と、
前記欠陥検出部によって検出された前記欠陥部分が存在する位置に前記光ビームを再度照射して前記内部欠陥を修正する欠陥修正部と、を備え、
前記欠陥検出部は、
音波を用いて、前記欠陥部分における前記音波の強度変化と時間差とに基づいて前記欠陥部分を特定する、付加製造装置にある。
本発明の他の態様は、三次元形状を有する付加製造物を造形する造形位置に材料粉末を供給する粉末供給部と、
前記造形位置に供給された前記材料粉末を溶融する光ビームを照射する光ビーム照射部と、
前記造形位置に前記材料粉末を供給するように前記粉末供給部の作動を制御すると共に前記造形位置に前記光ビームを照射するように前記光ビーム照射部の作動を制御する制御部と、
前記造形位置の内部に空隙を有する内部欠陥が生じている欠陥部分を検出する欠陥検出部と、
前記欠陥検出部によって検出された前記欠陥部分が存在する位置に前記光ビームを再度照射して前記内部欠陥を修正する欠陥修正部と、を備え、
前記粉末供給部は、
供給する前記材料粉末を層状に配置して均すリコータを有しており、
前記欠陥検出部は、
層状に配置された前記材料粉末の層表面において隆起した部分として、前記層表面を撮像した画像データを解析して輝度の高い部分を、前記欠陥部分として特定する、付加製造装置にある。
本発明の他の態様は、三次元形状を有する付加製造物を造形する造形位置に材料粉末を供給する粉末供給部と、
前記造形位置に供給された前記材料粉末を溶融する光ビームを照射する光ビーム照射部と、
前記造形位置に前記材料粉末を供給するように前記粉末供給部の作動を制御すると共に前記造形位置に前記光ビームを照射するように前記光ビーム照射部の作動を制御する制御部と、
前記造形位置の内部に空隙を有する内部欠陥が生じている欠陥部分を検出する欠陥検出部と、
前記欠陥検出部によって検出された前記欠陥部分が存在する位置に前記光ビームを再度照射して前記内部欠陥を修正する欠陥修正部と、
機械学習部と、を備え、
前記機械学習部は、
前記光ビーム照射部から、前記光ビームを照射する際の照射条件及び前記光ビームを照射する際の動作に関する動作指令を含む加工情報を取得する加工情報取得部と、
前記欠陥検出部から特定された前記内部欠陥の発生量及び前記内部欠陥の程度を含む欠陥情報を取得する欠陥情報取得部と、
前記加工情報取得部が取得した前記加工情報と前記欠陥情報取得部が取得した前記欠陥情報とを関連付けて学習する学習部と、を備えた、付加製造装置にある。
【0008】
本発明の他の態様は、層状に配置された材料粉末に光ビームを照射し、材料粉末を溶融した後に凝固させる又は焼結することによって三次元形状を有する付加製造物を製造する付加製造方法であって、
付加製造物を支持可能且つ昇降動作可能な昇降テーブルを予め設定された降下量だけ降下させる昇降テーブル降下工程と、
昇降テーブルの降下に伴って降下した付加製造物を造形する造形位置に材料粉末を層状に供給する粉末供給工程と、
粉末供給工程にて造形位置に材料粉末を層状に供給された状態で、造形位置の内部に空隙を有する内部欠陥が生じた可能性のある欠陥候補を抽出する欠陥候補抽出工程と、
欠陥候補抽出工程にて抽出された欠陥候補のうち内部欠陥が生じている欠陥部分を特定すると共に欠陥部分が存在する位置を特定する欠陥調査工程と、
欠陥調査工程にて特定された欠陥部分が存在する位置に光ビームを再度照射して内部欠陥を修正する欠陥修正工程と、を含んで構成される付加製造方法にある。
【0009】
これらによれば、付加製造物の造形位置の内部に存在する内部欠陥を特定すると共に内部欠陥を随時修正して、付加製造物を製造することができる。これにより、内部欠陥を修正して所望の機械強度が得られる付加製造物を製造することができ、製造のやり直しを未然に防止することができる。従って、製造に要する時間を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図1の光ビーム照射部の構成を示す図である。
【
図3】
図1の制御部の構成を示すブロック図である。
【
図4】相対密度と機械強度との関係を示すグラフである。
【
図6】欠陥修正プログラムを示すフローチャートである。
【
図7】欠陥候補抽出部による欠陥候補の抽出を説明するための図である。
【
図8】欠陥特定部による欠陥部分(内部欠陥)の特定を説明するための図である。
【
図9】欠陥修正部による欠陥部分(内部欠陥)の修正を説明するための図である。
【
図10】欠陥部分(内部欠陥)が修正された状態を説明するための図である。
【
図11】変形例に係る制御部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1.付加製造装置1の構成)
付加製造装置1の構成について図面を参照しながら説明する。付加製造装置1は、粉末床溶融結合方式であってSLM方式を採用する。付加製造装置1は、
図1に示すように、層状に配置された(積層された)粉末材料としての金属粉末Pに光ビームを照射することを繰り返すことによって、付加製造物Wを製造する装置である。
【0012】
ここで、光ビームは、例えば、レーザビーム及び電子ビームを含み、その他に金属粉末Pを溶融することができる種々のビームを含む。又、レーザビームには、例えば、近赤外波長のレーザ、CO2レーザ(遠赤外レーザ)、半導体レーザ等、種々のレーザを適用でき、対象の金属粉末P(例えば、アルミ、ステンレス鋼、チタン、マルエージング鋼)に応じて適宜決定される。
【0013】
付加製造装置1は、
図1に示すように、チャンバ10、製造物支持装置としての造形物支持装置20、粉末供給部としての粉末供給装置30、光ビーム照射装置40、第一加熱装置50、及び、第二加熱装置60を備えている。更に、付加製造装置1は、リコートモニタリング装置70及び超音波発振装置80を備えると共に、付加製造装置1の作動を統括的に制御する制御装置100を備えている。
【0014】
チャンバ10は、内部の空気を、例えば、He(ヘリウム)や、N2(窒素)、Ar(アルゴン)等の不活性ガスに置換可能となるように構成されている。尚、チャンバ10は、内部を不活性ガスに置換することに代えて、内部を減圧可能な構成としても良い。
【0015】
造形物支持装置20は、チャンバ10の内部に設けられ、付加製造物Wを造形(付加製造)するための支持部材により構成されている。造形物支持装置20は、造形用容器21、昇降テーブル22及びベース23を備えている。造形用容器21は、上側に開口部を有し、上下方向の軸線に平行な内壁面を有している。昇降テーブル22は、造形用容器21の内部にて内壁面に沿うように上下方向に昇降動作可能に設けられる。ベース23は、昇降テーブル22の上面に着脱可能に載置され、ベース23の上面が付加製造物Wを造形するための部位となる。即ち、ベース23は、昇降テーブル22の降下に伴って上面に層状に金属粉末Pを配置すると共に、付加製造時に付加製造物Wを支持可能とされている。
【0016】
粉末供給装置30は、チャンバ10の内部であって、造形物支持装置20に隣接して設けられている。粉末供給装置30は、粉末収納容器31、供給テーブル32及びリコータ33を備えている。粉末収納容器31は上側に開口部を有しており、粉末収納容器31の開口部の高さは造形用容器21の開口部の高さと同一に設けられている。粉末収納容器31は、上下方向の軸線に平行な内壁面を有している。供給テーブル32は、粉末収納容器31の内部にて内壁面に沿うように上下方向に移動可能に設けられている。そして、粉末収納容器31内において、供給テーブル32の上側領域に、金属粉末Pが収納されている。
【0017】
リコータ33は、造形用容器21の開口部及び粉末収納容器31の開口部の全領域に亘って、両開口部の上面に沿って往復移動可能に設けられている。リコータ33は、例えば、
図1の左右方向にて右側から左側に移動するとき、即ち、粉末収納容器31の開口部から造形用容器21の開口部に向けて移動するときに、粉末収納容器31の開口部から盛り出ている金属粉末Pを造形用容器21に運搬する。
【0018】
更に、リコータ33は、後述するように降下した昇降テーブル22と共に降下したベース23の上面にて運搬した金属粉末Pを均し、ベース23の上面にて同種の金属粉末Pを層状に配置する、即ち、リコートする。ここで、「同種」とは、材料粉末である金属粉末Pの材質が同一であり、金属粉末Pの平均粒径等が所定の範囲内に含まれることを意味する。
【0019】
光ビーム照射装置40は、
図1に示すように、チャンバ10の外部に配置されており、ベース23の上面に層状に配置された同種の金属粉末Pの表面にチャンバ10の外部から光ビーム40aを照射する。光ビーム40aは、上述したように、レーザビーム及び電子ビーム等である。光ビーム照射装置40は、リコートされた金属粉末Pに光ビーム40aを照射することにより金属粉末Pを金属粉末Pの融点以上の温度に加熱する。これにより、金属粉末Pは溶融してその後凝固し(又は焼結し)、一体化された層からなる付加製造物Wが造形(製造)される。即ち、隣接する金属粉末P同士は、溶融接合によって一体化される。
【0020】
又、光ビーム照射装置40は、後述するように、付加製造物Wを造形する造形位置の内部に空隙である内部欠陥Hが検出された場合、造形位置にて付加製造物Wを造形している表層の金属を金属の融点以上の温度に再加熱する。これにより、付加製造物Wにおいて、内部欠陥Hが存在する部分に対応する表層の金属は溶融し、溶融した金属が内部欠陥Hを埋める。従って、光ビーム照射装置40は、欠陥修正部として機能し、付加製造物Wの内部欠陥Hを除去する。
【0021】
光ビーム照射装置40は、予め設定されたプログラムに従って、光ビーム40aの照射位置を移動すると共に、ビーム強度を変更することができる。光ビーム40aの照射位置を移動することにより、三次元形状を有する付加製造物Wを造形することができる。又、光ビーム40aのビーム強度を変化させることにより、リコートされた金属粉末Pの被照射部分における投入エネルギー(被照射部分に流入する入熱量)が変化し、金属粉末Pの溶融状態を変化させることができる。ここで、光ビーム40aは、第一加熱装置50及び第二加熱装置60により加熱される範囲よりも狭い範囲に対して照射可能である。
【0022】
光ビーム照射装置40は、
図1及び
図2に示すように、レーザ発振器41及びレーザヘッド42を備えている。又、光ビーム照射装置40は、レーザ発振器41から発振された光ビーム40a(近赤外レーザ光)をレーザヘッド42に伝送する光ファイバ43を備えている。
【0023】
レーザ発振器41は、波長が予め設定された所定の赤外波長となるように発振させて連続波の近赤外レーザ光を光ビーム40aとして生成する。レーザヘッド42は、チャンバ10内に層状に配置された金属粉末Pの表面から所定の距離を隔てて配置される。レーザヘッド42は、
図2に示すように、コリメートレンズ42a、ミラー42b、ガルバノスキャナ42c及びfθレンズ42dからなる光学系を備えている。
【0024】
これにより、レーザヘッド42においては、光ファイバ43を介して入射された近赤外レーザ(光ビーム40a)がコリメートレンズ42aによってコリメートされて平行光に変換される。コリメートされた近赤外レーザ(光ビーム40a)は、
図2に示すように、ガルバノスキャナ42cに入射されるようにミラー42bによって進行方向が変更される。
【0025】
そして、レーザヘッド42においては、ガルバノスキャナ42cが近赤外レーザ(光ビーム40a)の進行方向即ち照射角度を自在に変更する。これにより、fθレンズ42dによって集光された近赤外レーザ(光ビーム40a)は、リコートされた金属粉末Pの層表面にて所定の位置に照射される。即ち、レーザヘッド42は、光ビーム40aを、左右方向及び左右方向に直交する方向、換言すれば、リコートされた金属粉末Pの層表面においてこれらの方向を含む水平方向に移動させることができる。
【0026】
尚、金属粉末Pの層表面とは、ベース23の上面にて層状に配置された即ちリコートされた金属粉末Pにおける上側に露出した面である。又、光ビーム40aは、チャンバ10の上側に設けられる透明なガラス又は樹脂を通してチャンバ10内に照射されるようになっている。
【0027】
第一加熱装置50は、チャンバ10内において、ベース23の上面に対向する位置に配置されている。第一加熱装置50は、放射熱により金属粉末Pを直接加熱するものであり、例えば、赤外線ヒータ等を適用できる。第一加熱装置50による加熱範囲は、光ビーム40aの照射範囲より広い範囲に設定されており、光ビーム40aの照射範囲を一部に含む範囲に設定されている。ここで、第一加熱装置50は、光ビーム40aのように、金属粉末Pを溶融させることはない。
【0028】
第二加熱装置60は、昇降テーブル22に内蔵される。第二加熱装置60は、ベース23を介して付加製造物Wを加熱するためのヒータであり、昇降テーブル22を介してベース23の全体を加熱する。第二加熱装置60は、例えば、コイルヒータ、カートリッジヒータ、ノズルヒータ、面状ヒータ等、種々のヒータを適用できる。第二加熱装置60による加熱範囲は、第一加熱装置50による加熱範囲よりも広い範囲であって、光ビーム40aの照射範囲及び第一加熱装置50による加熱範囲を一部に含む範囲に設定されている。ここで、第二加熱装置60は、第一加熱装置50と同様に、光ビーム40aのように金属粉末Pを溶融させることはない。
【0029】
リコートモニタリング装置70は、リコータ33によってリコートされた層表面に存在する凹凸部分を内部欠陥Hに起因して生じた可能性のある欠陥候補Kとして検出する。具体的に、リコートモニタリング装置70は、撮像機能を有しており、リコートされた層表面を撮像する。そして、リコートモニタリング装置70は、撮像された画像データにおいて、リコートされた層表面における光の反射による輝度の違いに基づき、リコートされた層表面に存在する隆起した凹凸部分(即ち欠陥候補K)を検出する。リコートモニタリング装置70は、検出した凹凸部分(欠陥候補K)が存在する位置を水平方向における座標に変換し、制御装置100に出力するようになっている。
【0030】
超音波発振装置80は、リコータ33に組み付けられている。超音波発振装置80は、超音波を発振すると共に、リコートされた金属粉末Pによって反射された超音波(反射波)を検出するものである。超音波発振装置80は、リコータ33が金属粉末Pをリコートして原位置に戻る際、リコートモニタリング装置70によって検出された欠陥候補Kにおいて超音波を発振しリコートされた金属粉末Pによって反射された超音波の強度の違いと超音波が戻るまでの時間差とに基づいて、欠陥候補Kに内部欠陥Hが存在するか否かを検出する。
【0031】
制御装置100は、CPU、ROM、RAM、インターフェース等を主要構成部品とするマイクロコンピュータである。制御装置100は、
図3に示すように、データ記憶部101、昇降テーブル作動制御部102、粉末供給制御部103、光ビーム照射制御部104、加熱制御部105、欠陥候補抽出部106、欠陥特定部107及び欠陥修正部としての欠陥修正部108を備えている。ここで、欠陥候補抽出部106及び欠陥特定部107は、協働して作動することにより、欠陥検出部109を構成する。
【0032】
データ記憶部101は、付加製造物Wを含む空間全体を所定の厚さで分割した分割層ごとのデータに含まれていて、分割層における形状を表す形状データを含む各種データを記憶している。ここで、形状データは、例えば、
図3にて詳細な図示を省略するCAD(Computer Aided Design)端末から供給されるようになっている。
【0033】
昇降テーブル作動制御部102は、昇降テーブル22を昇降させる駆動装置(図示省略)の作動を制御する。昇降テーブル作動制御部102は、粉末供給装置30が金属粉末Pを供給する際において、予め設定された降下量となるように昇降テーブル22を降下させる。
【0034】
粉末供給制御部103は、粉末供給装置30の作動を制御するものである。具体的に、粉末供給制御部103は、供給テーブル32を上下方向に移動させて粉末収納容器31に収容された金属粉末Pを粉末収納容器31の開口部から盛り出させると共に、リコータ33を往復移動するように制御する。
【0035】
光ビーム照射制御部104は、光ビーム照射装置40の作動を制御するものである。具体的に、光ビーム照射制御部104は、光ビーム照射装置40が照射する光ビーム40aの照射位置(照射軌跡)及びビーム強度を、データ記憶部101に記憶されている形状データに基づいて制御する。
【0036】
加熱制御部105は、第一加熱装置50及び第二加熱装置60の作動を制御するものである。加熱制御部105は、上述した第一加熱装置50の移動や加熱の制御、及び、第二加熱装置60の加熱の制御を行う。尚、加熱制御部105による第一加熱装置50及び第二加熱装置60の作動制御の詳細については、本発明に直接関係しないため、その説明を省略する。
【0037】
欠陥候補抽出部106は、リコートモニタリング装置70の作動を制御し、リコートされた層表面に存在する凹凸部分を欠陥候補Kとして抽出するものである。欠陥候補抽出部106は、リコートモニタリング装置70によって撮像された層表面の画像データに基づき、層表面における輝度の違いを検出する。そして、欠陥候補抽出部106は、層表面において、輝度が他部分よりも大きくなる凹凸部分を欠陥候補Kとして抽出する。欠陥候補抽出部106は、抽出した欠陥候補Kについて、層表面即ち水平方向における座標に変換し、この座標を表す座標データを欠陥特定部107に出力するようになっている。
【0038】
欠陥特定部107は、超音波発振装置80の作動を制御し、欠陥候補抽出部106によって抽出された欠陥候補Kが内部欠陥Hによって生じたものであるか否かを調査するものである。欠陥特定部107は、欠陥候補抽出部106から出力された座標データに基づき、欠陥候補Kが存在する位置にて超音波発振装置80に音波である超音波を発振させる。そして、欠陥特定部107は、金属粉末Pによって反射された超音波(反射波)の強度が大きくなる欠陥候補Kにおいて内部欠陥Hが存在すると判別する。欠陥特定部107は、内部欠陥Hが存在する即ち欠陥部分Sの位置を表す座標データを一時的に記憶すると共に欠陥修正部108に出力する。
【0039】
欠陥修正部108は、欠陥特定部107から出力された座標データに基づいて光ビーム照射装置40の作動を制御し、欠陥部分S即ち内部欠陥Hを修正する。欠陥修正部108は、内部欠陥Hが存在する位置又はその周辺に光ビーム40aを再度照射して内部欠陥Hの周囲における金属粉末Pを溶融させて内部欠陥Hを除去して修正する。
【0040】
(2.付加製造物Wにおける機械強度と相対密度との相関関係)
付加製造物Wにおける降伏応力等の機械強度と金属粉末Pが溶融して凝固した状態における相対密度(或いは、比重)との間には相関関係が成立する。即ち、
図4に示すように、相対密度が高くなる程(高相対密度になる程)機械強度は大きくなり、相対密度が低くなる程(低相対密度になる程)機械強度は小さくなる相関関係が成立する。
【0041】
一方、付加製造においては、金属粉末Pに光ビーム40aを照射することによって金属粉末Pの一部を要求させ付加製造物Wを造形する。この場合、
図5に概略的に示すように、照射される光ビーム40aの強度やリコートされた金属粉末Pの層表面に対する光ビーム40aの入射角度等によって溶融した金属粉末Pが飛散し、その結果、付加製造物Wの内部に空隙、所謂、内部欠陥Hが生じる場合がある。内部欠陥Hが生じた場合、付加製造物Wの相対密度は低くなる。従って、機械強度と相対密度との関係を鑑みれば、付加製造物Wの製造(造形)においては、内部欠陥Hを特定し、特定した内部欠陥Hを除去することが肝要である。
【0042】
(3.欠陥修正方法(付加製造方法))
次に、付加製造装置1を用いた欠陥修正方法(付加製造方法)について、
図6に示す欠陥修正プログラムのフローチャートを参照して説明する。制御装置100(光ビーム照射制御部104)は、付加製造物Wの形状データに基づいて、光ビーム照射装置40を作動させて光ビーム40aの照射を開始する。即ち、光ビーム照射制御部104は、図示省略の所定のプログラムを実行することにより、形状データに基づいて光ビーム40aを走査して金属粉末Pの融点以上の温度で金属粉末Pを加熱する。ここで、光ビーム照射制御部104は、光ビーム40aの強度、走査速度、走査間隔及び走査パターン等、適宜変更可能な照射条件に従って、光ビーム40aを走査させる。
【0043】
光ビーム40aが照射されることにより、金属粉末Pは溶融しその後凝固する。このように、光ビーム40aが照射された位置は、強固な力によって一体化されて付加製造物Wが製造(造形)される。そして、この付加製造物Wの製造(造形)において、制御装置100は、
図6の欠陥修正プログラムを実行し、付加製造物Wに発生した欠陥部分S(内部欠陥H)を修正する。
【0044】
制御装置100(マイクロコンピュータを構成するCPU)は、ステップS10にて付加製造プログラムの実行を開始し、続くステップS11にて、制御装置100(昇降テーブル作動制御部102)は、昇降テーブル22を予め設定された降下量だけ降下させる(昇降テーブル降下工程)。これにより、昇降テーブル22に載置されたベース23も予め設定された降下量だけ降下する。制御装置100(昇降テーブル作動制御部102)は、昇降テーブル22及びベース23を降下させると、ステップS12に進む。
【0045】
ステップS12においては、制御装置100(粉末供給制御部103)は、ベース23の上面に金属粉末Pを供給すると共にリコートする(粉末供給工程)。具体的に、粉末供給制御部103は、粉末供給装置30における供給テーブル32を上昇させて、所望量の金属粉末Pが粉末収納容器31の開口部から盛り出た状態とする。尚、粉末供給装置30においては、供給テーブル32を下方に位置させた状態で粉末収納容器31内に金属粉末Pが予め収納されている。
【0046】
そして、粉末供給制御部103は、リコータ33を粉末供給装置30側である原位置からベース23の他端側である造形物支持装置20側に向かって移動させる。これにより、リコータ33は、ベース23の上面に金属粉末Pを供給しつつリコートする。リコータ33は、ベース23の他端側まで前進すると停止する。そして、制御装置100(粉末供給制御部103)は、ベース23の上面にて金属粉末Pを供給してリコートすると、ステップS13に進む。
【0047】
ステップS13においては、制御装置100(欠陥候補抽出部106)は、リコートモニタリング装置70を作動させて、欠陥候補Kを抽出する(欠陥候補抽出工程)。具体的に、欠陥候補抽出部106は、リコートモニタリング装置70を作動させて、
図7に示すように、ベース23の上面、即ち、リコータ33によってリコートされた表層面を撮像して画像データを取得する。
【0048】
そして、欠陥候補抽出部106は、取得した画像データに基づいて、隆起した凹凸部分であって輝度の大きい部分を欠陥候補Kとして抽出する。又、欠陥候補抽出部106は、抽出した欠陥候補Kが存在する位置を座標変換し、変換した座標を表す座標データを欠陥特定部107に出力する。制御装置100(欠陥候補抽出部106)は、欠陥候補Kを表す座標データを出力すると、ステップS14に進む。
【0049】
ステップS14においては、制御装置100(欠陥特定部107)は、欠陥候補Kに内部欠陥Hが存在する欠陥部分Sであるか否かを調査して判別する(欠陥調査工程)。具体的に、ステップS17においては、
図8に示すように、粉末供給制御部103の制御により、リコータ33が原位置に向けて後進する。これに合わせて、欠陥特定部107は、超音波発振装置80を作動させて、前記ステップS16にて抽出された欠陥候補Kに内部欠陥Hが存在するか否かを判別する。
【0050】
欠陥特定部107は、前記ステップS13にて取得した欠陥候補Kを表す座標データに基づき、抽出された欠陥候補Kにて超音波発振装置80に超音波を発振させ、反射された超音波(反射波)の強度と時間差とを取得する。ここで、反射波の強度は、欠陥候補Kの密度に依存する。即ち、欠陥候補Kの密度が高い場合、換言すれば、空隙である内部欠陥Hが存在しない或いは小さい場合には反射波の強度は小さくなる。一方、欠陥候補Kの密度が低い場合、換言すれば、内部欠陥Hが存在する或いは大きい(及び/又は、深い)場合には反射波の強度は大きくなる。又、超音波が戻るまでの時間差は、内部欠陥Hが存在する或いは大きい(及び/又は、深い)場合には、長くなる。
【0051】
従って、欠陥特定部107は、反射波の強度が予め設定された基準強度よりも大きい及び(又は)反射波の時間差が予め設定された基準時間差よりも大きい場合に欠陥候補Kに内部欠陥Hが存在すると判定し、欠陥候補Kを欠陥部分Sとして判別する。そして、欠陥特定部107は、内部欠陥Hが存在する欠陥部分Sを判別すると、欠陥部分S(内部欠陥H)の位置を表す座標データを欠陥修正部108に出力する。制御装置100(欠陥特定部107)は、欠陥部分S(内部欠陥H)の位置を表す座標データを出力すると、ステップS15に進む。
【0052】
ステップS15においては、制御装置100(欠陥修正部108)は、前記ステップS14にて特定された欠陥部分S即ち内部欠陥Hを除去するために、光ビーム照射装置40を作動させて特定された内部欠陥Hに光ビーム40aを再度照射する(欠陥修正工程)。具体的に、欠陥修正部108は、前記ステップS17にて取得した欠陥部分(内部欠陥H)の位置を表す座標データに基づき、光ビーム照射装置40のガルバノスキャナ42cによって光ビーム40aの照射角度等を調整し、
図9に示すように、内部欠陥H又は内部欠陥Hの周囲に向けて光ビーム40aを照射する。このように、内部欠陥H又はその周囲に光ビーム40aが照射されることにより、
図10に示すように、内部欠陥Hに周囲に存在する金属粉末Pが溶融して内部欠陥Hを埋め、その後凝固する。
【0053】
これにより、付加製造物Wに発生した内部欠陥Hは、再度照射された光ビーム40aによって除去され、内部欠陥Hが修正される。制御装置100(欠陥修正部108)は、光ビーム40aを再度照射すると、ステップS16に進む。
【0054】
ところで、欠陥特定部107(欠陥検出部109)は、上述したように、超音波発振装置80が発生する超音波の反射波の強度と時間差とに基づき、欠陥部分Sにおける内部欠陥Hの大きさと深さとを判別することができる。従って、欠陥修正部108が光ビーム照射装置40から内部欠陥Hに向けて光ビーム40aを再照射する場合、内部欠陥Hの大きさに応じて光ビーム40aの照射条件(例えば、光ビーム40aの強度、走査速度等)を変更することが可能である。これにより、内部欠陥Hをより確実に修正することができる。
【0055】
又、欠陥特定部107(欠陥検出部109)は、上述したように、特定した欠陥部分Sの位置である座標データを履歴として記憶することができる。このため、付加製造物Wの製造(造形)に際して、光ビーム照射制御部104は、欠陥特定部107(欠陥検出部109)が記憶している履歴である座標データに基づき、欠陥部分Sの座標データに対応する造形位置に光ビーム40aを照射する場合、光ビーム40aを照射する照射条件(光ビーム40aの強度、走査速度、走査間隔及び走査パターン等)を変更することができる。これにより、付加製造物Wの製造(造形)において内部欠陥Hが発生することを抑制することができる。
【0056】
ステップS16においては、制御装置100は、前記ステップS14にて特定された欠陥部分S(内部欠陥H)の修正が完了したか否かを判定する。即ち、制御装置100は、欠陥部分S(内部欠陥H)の修正が完了していれば「Yes」と判定してステップS17に進む。制御装置100は、ステップS17において、欠陥修正プログラムの実行を終了する。一方、制御装置100は、欠陥部分S(内部欠陥H)の修正が完了していなければ「No」と判定してステップS15に戻り、ステップS16にて「Yes」と判定されるまでステップS15のステップ処理を繰り返し実行する。
【0057】
以上の説明からも理解できるように、上記実施形態の付加製造装置1は、三次元形状を有する付加製造物Wを造形する造形位置に材料粉末としての金属粉末Pを供給する粉末供給部としての粉末供給装置30と、造形位置に供給された金属粉末Pを溶融する光ビーム40aを照射する光ビーム照射部としての光ビーム照射装置40と、造形位置に金属粉末Pを供給するように粉末供給装置30の作動を制御すると共に造形位置に光ビーム40aを照射するように光ビーム照射装置40の作動を制御する制御部としての制御装置100と、造形位置の内部に空隙を有する内部欠陥Hが生じている欠陥部分Sを検出する欠陥検出部109を備える。ここで、欠陥検出部109は、粉末供給装置30が造形位置に金属粉末Pを供給した状態で、内部欠陥Hが生じた可能性のある欠陥候補Kを抽出する欠陥候補抽出部106と、欠陥候補抽出部106によって抽出された欠陥候補Kのうち内部欠陥Hが生じている欠陥候補Kを欠陥部分Sとして特定すると共に欠陥部分Sが存在する位置を特定する欠陥特定部107と、から構成される。又、制御装置100は、欠陥検出部109(即ち、欠陥候補抽出部106及び欠陥特定部107)によって特定された欠陥部分Sが存在する位置に光ビーム40aを再度照射して内部欠陥Hを修正する欠陥修正部108と、を備える。
【0058】
これによれば、付加製造物Wの造形位置の内部に存在する内部欠陥Hを特定すると共に内部欠陥Hを随時修正して、付加製造物Wを製造することができる。これにより、内部欠陥Hを有することなく所望の機械強度が得られる付加製造物Wを製造することができ、製造のやり直しを未然に防止することができる。従って、製造に要する時間を大幅に低減することができる。
【0059】
又、欠陥検出部109を、欠陥候補抽出部106及び欠陥特定部107から構成することができる。これによれば、より精度良く欠陥部分S即ち内部欠陥Hを特定することができる。従って、より確実に内部欠陥Hを修正することができる。
【0060】
この場合、粉末供給装置30は、供給する金属粉末Pを層状に配置して均すリコータ33を有しており、欠陥候補抽出部106は、層状に配置された金属粉末Pの層表面において隆起した部分を欠陥候補Kとして抽出することができる。この場合、欠陥候補抽出部106は、層表面を撮像した画像データを解析して輝度の高い部分を欠陥候補Kとして抽出することができる。これらによれば、効率良く欠陥候補Kを抽出することができ、その結果、効率良く且つ精度良く欠陥部分S即ち内部欠陥Hを特定することができる。
【0061】
これらの場合、欠陥特定部107を、リコータ33に設けることができる。これによれば、付加製造装置1の構造を簡略化することが可能であり、ひいては、付加製造装置1の小型化を達成することができる。
【0062】
又、これらの場合、欠陥特定部107は、音波及び電磁波のうちの音波を出力する超音波発振装置80を用いて、欠陥部分Sにおける超音波の強度変化に基づいて欠陥部分Sを特定することができる。これによれば、汎用の超音波発振装置80を用いることができ、付加製造装置1の構造を簡略化して付加製造装置1の小型化を達成することができると共に製造コストを低減することができる。
【0063】
(4.実施形態の変形例)
機械学習により内部欠陥Hの発生頻度、発生場所等を学習し、学習結果に基づいて光ビーム40aの照射条件を変更するように実施することも可能である。以下、上記実施形態の変形例を説明する。
【0064】
この変形例においては、
図11に示すように、制御装置100が機械学習部110を備えている。機械学習部110は、
図12に示すように、加工情報取得部111、欠陥情報取得部112、学習部113、報酬条件記憶部114、報酬計算部115、価値評価部116、価値評価部更新部117、動作決定部118を有している。
【0065】
加工情報取得部111は、光ビーム照射制御部104から光ビーム照射装置40を作動させて光ビーム40aを照射する際の照射条件(例えば、レーザ発振器41による光ビーム40aの照射強度、ガルバノスキャナ42cによる光ビーム40aの照射角度等)、及び、光ビーム照射装置40を動作させる装置動作指令(例えば、レーザ発振器41によるレーザ発振動作させる指令、ガルバノスキャナ42cを作動させる図示省略のモータを動作させる指令等)を加工情報Tとして取得する。
【0066】
欠陥情報取得部112は、欠陥特定部107から欠陥部分Sを表す座標データ、成形(造形)に欠陥部分Sの発生量及び欠陥部分Sにおける内部欠陥Hの程度(大きさ)を欠陥情報Fとして取得する。学習部113は、加工情報取得部111が取得した加工情報Tと欠陥情報取得部112が取得した欠陥情報Fとを互いに関連付ける即ち学習するものである。そして、学習部113は、学習した結果を光ビーム照射制御部104に出力する。
【0067】
報酬条件記憶部114は、欠陥情報取得部112が取得した欠陥情報Fに基づいて決定される報酬条件Xを記憶する。具体的に、報酬条件記憶部114は、欠陥情報Fに基づき、例えば、欠陥部分Sの発生量が大きいほど少なくなり、欠陥部分Sの発生量が小さいほど大きくなるように設定された報酬条件Xを記憶する。報酬計算部115は、加工情報取得部111が取得した加工情報Tと報酬条件記憶部114が記憶している報酬条件Xとを用いて報酬Yを計算する。
【0068】
価値評価部116は、加工情報取得部111が取得した加工情報Tのうち、光ビーム40aを照射する照射条件と、光ビーム照射装置40のレーザ発振器41及びガルバノスキャナ42cを動作させる装置動作指令と、の価値評価を行うものである。価値評価部116は、例えば、欠陥部分Sの発生量が小さくなるように光ビーム照射装置40が光ビーム40aを照射した場合に価値Qを最大化する。価値評価部更新部117は、報酬計算部115によって計算された報酬Yに基づいて、価値評価部116の更新を行う。
【0069】
動作決定部118は、価値評価部116によって最大化される価値Qに基づいて、光ビーム40aを照射する照射条件と、光ビーム照射装置40のレーザ発振器41及びガルバノスキャナ42cを動作させる装置動作指令と、を決定する。動作決定部118は、決定した照射条件及び装置動作指令を、光ビーム照射制御部104に出力する。
【0070】
このように、制御装置100が機械学習部110を有する第一変形例においては、機械学習部110が、上記実施形態と同様に制御装置100によって内部欠陥Hが特定されて修正されるごとに、付加製造装置1において内部欠陥Hが生じやすい加工情報Tと欠陥情報Fとの関連付けを学習することができる。
【0071】
具体的に、機械学習部110は、例えば、製造(造形)に際して、ベース23の上面に光ビーム照射装置40が光ビーム40aを照射した場合、層表面に対する光ビーム40aの照射角度が大きい程、光ビーム40aが集光されて(所謂、スポットが小さく)照射されるため金属粉末Pが溶融しやすく、且つ、欠陥部分S(即ち、内部欠陥H)の発生量が小さくなる傾向を学習する。一方、層表面に対する光ビーム40aの照射角度が小さい程、光ビーム40aが拡散されて(所謂、スポットが大きく)照射されるため金属粉末Pが溶融しにくく、且つ、欠陥部分S(即ち、内部欠陥H)の発生量が大きくなる傾向を学習する。
【0072】
このような機械学習部110による学習に基づいて、制御装置100においては、例えば、光ビーム照射制御部104が、動作決定部118によって決定された照射条件及び装置動作指令に従い、光ビーム40aの照射角度が小さくなる場合には、製造(造形)に際して照射条件である光ビーム40aの照射強度を大きくする。これにより、製造(造形)において、内部欠陥Hが生じやすい造形位置であっても、光ビーム40aの照射強度を大きいため金属粉末Pを確実に溶融させることができ、その結果、内部欠陥Hが生じることを抑制することができる。即ち、機械学習部110による学習が深まる程、上記実施形態にて説明したような、欠陥候補Kの抽出、欠陥部分Sの特定及び欠陥部分Sの修正の頻度を少なくすることができ、その結果、付加製造物Wが均一な相対密度を有すると共に製造(造形)に要する時間を短縮することが可能となる。
【0073】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態及び上記変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0074】
例えば、上記実施形態及び上記変形例においては、超音波発振装置80が発振する音波である超音波を用いて、欠陥候補Kのうちから欠陥部分即ち内部欠陥Hを特定するようにした。これに代えて、又は、加えて、例えば、渦電流発生装置が発生する電磁波である渦電流を用いて、欠陥候補Kのうちから欠陥部分即ち内部欠陥Hを特定することも可能である。渦電流発生装置を用いた場合、欠陥特定部107は、渦電流の変化に基づいて、内部欠陥Hの有無を判別することができるため、上記実施形態及び上記変形例と同様の効果が得られる。
【0075】
又、上記実施形態及び上記変形例においては、欠陥検出部109を欠陥候補抽出部106及び欠陥特定部107から構成するようにした。これに代えて、欠陥検出部109を、例えば、欠陥候補抽出部106のみから構成し、欠陥検出部109が隆起した部分(即ち、上記実施形態及び上記変形例における欠陥候補K)を欠陥部分Sとして特定することも可能である。この場合には、上記実施形態及び上記変形例に比べて、若干、欠陥部分Sの特定精度が低下するものの、欠陥修正部108による修正により上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0076】
又、上記実施形態及び上記変形例においては、欠陥検出部109を欠陥候補抽出部106及び欠陥特定部107から構成するようにした。これに代えて、欠陥検出部109を、例えば、欠陥特定部107のみから構成し、欠陥検出部109が超音波発振装置80又は渦電流発生装置を作動させて即ち音波又は電磁波を用いて欠陥部分Sとして特定することも可能である。この場合には、上記実施形態及び上記変形例に比べて、若干、欠陥部分Sを特定するための時間を要するものの、欠陥修正部108による修正により上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0077】
更に、上記実施形態及び上記各変形例においては、欠陥検出部109の欠陥候補抽出部106がリコートモニタリング装置70を用いてリコータ33がリコートした後に欠陥候補Kを抽出するようにした。これに代えて、欠陥候補抽出部106は、光ビーム照射装置40が光ビーム40aを照射した後であってリコータ33によってリコートされる前、即ち、金属粉末Pを層状に配置する前の層表面(或いは、造形面)をリコートモニタリング装置70が撮像して欠陥候補Kを抽出するようにすることも可能である。この場合にも、上記実施形態及び上記各変形例と同様の効果が期待できる。
【符号の説明】
【0078】
1…付加製造装置、10…チャンバ、20…造形物支持装置、21…造形用容器、22…昇降テーブル、23…ベース、30…粉末供給装置、31…粉末収納容器、32…供給テーブル、33…リコータ、40…光ビーム照射装置、40a…光ビーム、41…レーザ発振器、42…レーザヘッド、42a…コリメートレンズ、42b…ミラー、42c…ガルバノスキャナ、42d…レンズ、43…光ファイバ、50…第一加熱装置、60…第二加熱装置、70…リコートモニタリング装置、80…超音波発振装置、100…制御装置、101…データ記憶部、102…昇降テーブル作動制御部、103…粉末供給制御部、104…光ビーム照射制御部、105…加熱制御部、106…欠陥候補抽出部、107…欠陥特定部、108…欠陥修正部、109…欠陥検出部、110…機械学習部、111…加工情報取得部、112…欠陥情報取得部、113…学習部、114…報酬条件記憶部、115…報酬計算部、116…価値評価部、117…価値評価部更新部、118…動作決定部、H…内部欠陥、K…欠陥候補、S…欠陥部分、P…金属粉末、F…欠陥情報、T…加工情報、W…付加製造物、X…報酬条件、Y…報酬、Q…価値