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特許7206912電界効果型トランジスタ、その製造方法、それを用いた無線通信装置および商品タグ
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  • 特許-電界効果型トランジスタ、その製造方法、それを用いた無線通信装置および商品タグ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】電界効果型トランジスタ、その製造方法、それを用いた無線通信装置および商品タグ
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20230111BHJP
   H10K 10/40 20230101ALI20230111BHJP
   H10K 85/00 20230101ALI20230111BHJP
   H10K 85/20 20230101ALI20230111BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
H01L29/78 617T
H01L29/78 618B
H01L29/28 100A
H01L29/28 280
H01L29/28 250E
H01L21/316 G
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2018550860
(86)(22)【出願日】2018-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2018035275
(87)【国際公開番号】W WO2019065561
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2017189900
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】崎井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 清一郎
(72)【発明者】
【氏名】脇田 潤史
【審査官】高柳 匡克
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/090559(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/116373(WO,A1)
【文献】特開2013-115162(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0347969(US,A1)
【文献】特開2016-128559(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130836(WO,A1)
【文献】特開2007-256782(JP,A)
【文献】特開2011-186069(JP,A)
【文献】国際公開第2014/142105(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 51/05
H01L 51/30
H01L 21/316
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基板と、ソース電極、ドレイン電極およびゲート電極と、前記ソース電極およびドレイン電極に接する半導体層と、前記半導体層を前記ゲート電極と絶縁するゲート絶縁層と、を備えた電界効果型トランジスタであって、
前記半導体層が、カーボンナノチューブを含有し、
前記ゲート絶縁層が、無機粒子が共有結合したポリマーを含有する、電界効果型トランジスタ。
【請求項2】
前記ゲート絶縁層の比誘電率が、5以上20以下の範囲内である、請求項1に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項3】
前記ポリマーが、ポリシロキサンを含む、請求項1または2に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項4】
前記ポリシロキサンが、少なくとも、一般式(1)で表される構造単位を有する、請求項3に記載の電界効果型トランジスタ:
【化1】
一般式(1)において、Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基、ヘテロアリール基またはアルケニル基を表す。Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはシリル基を表す。mは0または1を表す。Aは、カルボキシル基、スルホ基、チオール基、フェノール性水酸基またはそれらの誘導体を少なくとも二つ含む有機基を表す。ただし、前記誘導体が、前記カルボキシル基、スルホ基、チオール基およびフェノール性水酸基のうちの二つによる環状縮合構造である場合は、Aは当該環状縮合構造を少なくとも一つ有する有機基を表す。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブが、カーボンナノチューブ表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着したカーボンナノチューブ複合体を含む、請求項1~4のいずれかに記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項6】
前記無機粒子が、金属酸化物を含む、請求項1~5のいずれかに記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項7】
前記無機粒子の数平均粒子径が、1nm以上100nm以下の範囲内である、請求項1~6のいずれかに記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項8】
少なくとも、基板と、ソース電極、ドレイン電極およびゲート電極と、前記ソース電極およびドレイン電極に接する半導体層と、前記半導体層を前記ゲート電極と絶縁するゲート絶縁層と、を備えた電界効果型トランジスタであって、
前記半導体層が、カーボンナノチューブを含有し、
前記ゲート絶縁層が、無機粒子が共有結合したポリマーを含有し、
前記ゲート絶縁層中の前記無機粒子が、体積分率で10vol%以上60vol%以下の範囲内である、
電界効果型トランジスタ。
【請求項9】
前記ポリマーが、ポリシロキサンを含み、前記ポリシロキサンが、少なくとも、一般式(1)で表される構造単位を有する、請求項8に記載の電界効果型トランジスタ:
【化2】
一般式(1)において、Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基、ヘテロアリール基またはアルケニル基を表す。Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはシリル基を表す。mは0または1を表す。Aは、カルボキシル基、スルホ基、チオール基、フェノール性水酸基またはそれらの誘導体を少なくとも二つ含む有機基を表す。ただし、前記誘導体が、前記カルボキシル基、スルホ基、チオール基およびフェノール性水酸基のうちの二つによる環状縮合構造である場合は、Aは当該環状縮合構造を少なくとも一つ有する有機基を表す。
【請求項10】
前記無機粒子が、シリカ粒子、酸化スズ-酸化チタン複合粒子、酸化ケイ素-酸化チタン複合粒子、酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化ハフニウム、酸化スズ粒子、酸化イットリウム粒子、酸化ニオブ粒子、酸化タンタル粒子、酸化スズ-酸化ジルコニウム複合粒子、酸化ケイ素-酸化ジルコニウム複合粒子、酸化アルミニウム粒子、チタン酸バリウム粒子、チタン酸ストロンチウム粒子およびチタン酸バリウム-チタン酸ストロンチウム複合粒子から選ばれた無機粒子である、請求項1~9のいずれかに記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項11】
前記ゲート絶縁層の厚さが、10nm以上1000nm以下の範囲内である、請求項1~10のいずれかに記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項12】
前記ソース電極および/またはドレイン電極が、有機バインダーおよび導電性粉末を含む、請求項1~11のいずれかに記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項13】
オン電流が5μA以上かつリーク電流が50pA以下となる、請求項1~12のいずれかに記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載の電界効果型トランジスタの製造方法であって、
(1)基板上にゲート電極となる導電性パターンを形成する工程、
(2)少なくとも、無機粒子が共有結合したポリマーを含む溶液を、前記導電性パターンが形成された基板上に塗布および乾燥し、コーティング膜を得る工程、
(3)該コーティング膜、もしくは、それを硬化してなるゲート絶縁層の上に、カーボンナノチューブを含む半導体層、ならびに、ソース電極およびドレイン電極となる導電性パターンを、お互いに接するように形成する工程、
を含む、電界効果型トランジスタの製造方法。
【請求項15】
さらに、前記無機粒子が共有結合したポリマーを含む溶液が、感光性有機成分を含み、
(4)前記無機粒子が共有結合したポリマーおよび感光性有機成分を含む溶液を、前記導電性パターンが形成された基板上に塗布および乾燥して得られた膜に、フォトマスクを介して活性化学線を照射した後、アルカリ溶液を用いて、前記導電性パターン上に開口部を有する絶縁性パターンを形成する工程、
(5)前記絶縁性パターンを加熱して、開口部を有するゲート絶縁層を形成する工程、
を含む、請求項14に記載の電界効果型トランジスタの製造方法。
【請求項16】
前記ポリマーが、ポリシロキサンを含み、前記ポリシロキサンが、少なくとも、一般式(1)で表される構造単位を有する、請求項14または15に記載の電界効果型トランジスタの製造方法:
【化3】
一般式(1)において、Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基、ヘテロアリール基またはアルケニル基を表す。Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはシリル基を表す。mは0または1を表す。Aは、カルボキシル基、スルホ基、チオール基、フェノール性水酸基またはそれらの誘導体を少なくとも二つ含む有機基を表す。ただし、前記誘導体が、前記カルボキシル基、スルホ基、チオール基およびフェノール性水酸基のうちの二つによる環状縮合構造である場合は、Aは当該環状縮合構造を少なくとも一つ有する有機基を表す。
【請求項17】
前記無機粒子が、シリカ粒子、酸化スズ-酸化チタン複合粒子、酸化ケイ素-酸化チタン複合粒子、酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化ハフニウム、酸化スズ粒子、酸化イットリウム粒子、酸化ニオブ粒子、酸化タンタル粒子、酸化スズ-酸化ジルコニウム複合粒子、酸化ケイ素-酸化ジルコニウム複合粒子、酸化アルミニウム粒子、チタン酸バリウム粒子、チタン酸ストロンチウム粒子およびチタン酸バリウム-チタン酸ストロンチウム複合粒子から選ばれた無機粒子である、請求項14~16のいずれかに記載の電界効果型トランジスタの製造方法。
【請求項18】
請求項1~13のいずれかに記載の電界効果型トランジスタを有する無線通信装置。
【請求項19】
請求項18に記載の無線通信装置を用いた商品タグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界効果型トランジスタ、その製造方法、それを用いた無線通信装置および商品タグに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体層にカーボンナノチューブ(CNT)を用いた電界効果型トランジスタ(FET)が盛んに検討されている。CNTは有機溶媒に可溶であるので、インクジェット印刷などの塗布法による低コストの薄膜形成により、半導体層を形成することが可能である。この際、得られたFETが安定した電気特性を有するためには、平滑に塗布された均一な半導体層を形成する必要がある。
【0003】
一方、FETの重要な部材としてゲート絶縁層がある。ゲート絶縁層は、半導体層とゲート電極を隔てる部材であり、使用される絶縁層の電気特性は、リーク電流値といったFETの重要な性能に大きく影響を及ぼす。また、通常、ゲート絶縁層に接して半導体層が形成される。半導体層においてゲート絶縁層との界面近傍に電流の通り道であるチャネルが形成されるため、ゲート絶縁層表面の性質はFET特性に大きな影響を与える。
【0004】
ゲート絶縁層用の材料として、有機ポリマーなど有機溶媒に可溶な有機材料も精力的な研究がなされている。これらはスリットコートなどの塗布法による低コストの薄膜形成が可能であり、かつ低温プロセスでフレキシブル基板上に薄膜形成ができる。さらに、絶縁層における電気特性を制御するため、無機化合物を絶縁層中に添加することも検討が進んでいる。
【0005】
有機溶媒に可溶な塗布型ゲート絶縁層用材料のうち、無機化合物を添加した例としては、ポリマーおよび無機酸化物微粒子を含有するゲート絶縁層(例えば、特許文献1参照)や、重合性基を有するナノ粒子と結合したポリマーを含有するゲート絶縁層(例えば、特許文献2参照)が知られている。特許文献1は、表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着したCNT(CNT複合体)を含有する半導体層と、ポリマーおよび無機酸化物微粒子を含有するゲート絶縁層を有するFETを開示している。半導体層がCNT複合体を含有することにより、高移動度、高オンオフ比を有するFETが得られる。一方で、ターンオン電圧、ヒステリシスが高いという課題を、ポリマーおよび無機酸化物微粒子を含有するゲート絶縁層を用いることで大幅に改善できることが示されている。特許文献2には、重合性基を有するナノ粒子と結合したポリシロキサンを含有するゲート絶縁層により、FETの移動度、オンオフ比が向上し、リーク電流が低減できることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-115162号公報
【文献】米国特許公開第2016/0347969号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術では、一部の凝集した無機粒子による導電パスの形成により、リーク電流が大きくなる課題があるほか、半導体溶液の均一塗布性に乏しく、オン電流値が不十分であるという課題があった。特許文献2の技術では、オン電流値がまだ不十分であるという課題があった。また、半導体溶液の塗布性改善については言及されていなかった。
【0008】
そこで本発明は、リーク電流が低減され、さらに半導体溶液の均一塗布が可能となる電界効果型トランジスタと、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくとも、基板と、ソース電極、ドレイン電極およびゲート電極と、前記ソース電極およびドレイン電極に接する半導体層と、前記半導体層を前記ゲート電極と絶縁するゲート絶縁層と、を備えた電界効果型トランジスタであって、前記半導体層が、カーボンナノチューブを含有し、前記ゲート絶縁層が、無機粒子が結合したポリマーを含有する電界効果型トランジスタである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電界効果型トランジスタによれば、リーク電流が低減され、さらに半導体溶液の均一塗布が可能となる電界効果型トランジスタと、その製造方法を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタの一例を示す模式断面図
図2】本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタの他の一例を示す模式断面図
図3】本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタを用いた無線通信装置の一例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る電界効果型トランジスタ(FET)、その製造方法、それを用いた無線通信装置および商品タグの好適な実施の形態を詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、目的や用途に応じて種々に変更して実施することができる。
【0013】
本発明のFETは、少なくとも、基板と、ソース電極、ドレイン電極およびゲート電極と、前記ソース電極およびドレイン電極に接する半導体層と、前記半導体層を前記ゲート電極と絶縁するゲート絶縁層と、を備えた電界効果型トランジスタであって、前記半導体層が、カーボンナノチューブ(CNT)を含有し、前記ゲート絶縁層が、無機粒子が結合したポリマーを含有する。ここで、ゲート絶縁層が半導体層とゲート電極とを絶縁するとは、ゲート絶縁層によって、半導体層とゲート電極とが電気的に隔てられていることを意味する。
【0014】
<ゲート絶縁層>
(無機粒子が結合したポリマー)
本発明のFETにおけるゲート絶縁層は、無機粒子が結合したポリマーを含有する。ここで、結合とは、共有結合、イオン結合、配位結合、金属結合、水素結合、π-π相互作用による結合、イオン-双極子相互作用による結合、双極子-双極子相互作用による結合、双極子-誘起双極子相互作用による結合、疎水性相互作用による結合、電荷移動錯体形成による結合、金属-配位子錯体形成による結合、ロンドンの分散力による結合、およびファンデルワールス力による結合から選ばれた結合である。中でも、共有結合であることが、無機粒子が結合したポリマーの化学的な安定性およびFETの安定動作の観点から好ましい。
【0015】
無機粒子が結合したポリマーを用いることで、得られるFETのオン電流を増大させることができる。これは、無機粒子が結合したポリマーを用いることで、無機粒子とポリマーとを混合した場合と比較して、無機粒子の凝集が抑制され、得られるゲート絶縁層が均質な状態となり、それによって、ゲート絶縁層表面形状が、その上に半導体層を塗布形成する際に、半導体層中の導電経路となるCNTネットワークの形成に最適な形状となるためと推定される。半導体層に含有される材料がCNT以外の、例えばフラーレン等のナノカーボン材料の場合は、前記効果を得ることができない。また、無機粒子がポリマーに結合された状態では、無機粒子のアルカリ可溶性が向上するため、アルカリ現像液での残渣発生によるパターン加工性の低下を抑制することができる。
【0016】
無機粒子とポリマーとの結合の有無は、13C-NMR、29Si-NMRおよびIRなどの分析手段を組み合わせて確認することができる。例えば、13C-NMRまたは29Si-NMRを用いて、無機粒子のスペクトル、ポリマーのスペクトルおよび無機粒子が結合したポリマーのスペクトルを比較する。無機粒子が結合したポリマー中の、無機粒子に結合しているCまたはSi原子由来のピークは、ポリマーのスペクトルには存在しない化学シフトを有するピークとなるため、無機粒子とポリマーとの結合の有無を確認することができる。
【0017】
同様に、IRでも無機粒子が結合したポリマー中のCまたはSi原子由来のピークは、ポリマーのスペクトルとは異なる波数を有するピークとなるため、無機粒子とポリマーとの結合の有無を確認することができる。
【0018】
無機粒子としては、無機物質からなる粒子であれば特に制限はないが、金属化合物または半金属化合物からなる粒子が好ましい。無機粒子は熱硬化時の収縮率が小さいため、収縮応力の発生を抑制することができる。そのため、ゲート絶縁層の耐クラック性が向上し、リーク電流を低減することができる。ここで、リーク電流とは、回路上で意図しない箇所へ流れる漏れ出しの電流である。FETを低消費電力で駆動させるためには、リーク電流の値を小さくする必要がある。リーク電流値は、50pA以下が好ましく、35pA以下がより好ましく、20pA以下がさらに好ましく、10pA以下が特に好ましい。
【0019】
金属または半金属としては、例えば、ケイ素、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ランタン、セリウム、スズ、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、ニオブ、タンタルおよびアルミニウムからなる群から選ばれる元素が挙げられる。金属化合物または半金属化合物としては、例えば、上記金属もしくは半金属のハロゲン化物、酸化物、窒化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩またはメタケイ酸塩が挙げられる。これらの中でも、FETのオン電流を向上させる観点から、金属酸化物であることが好ましい。
【0020】
無機粒子の形状に特に制限はないが、ゲート絶縁層の表面を平滑に保つためには、低アスペクト比の形状が好ましく、球状であることがより好ましい。
【0021】
ゲート絶縁層のパターン加工性向上、および耐クラック性向上によるリーク電流低減の観点から、無機粒子の数平均粒子径は、1nm以上が好ましく、5nm以上がより好ましく、15nm以上がさらに好ましく、20nm以上が特に好ましい。無機粒子の数平均粒子径が上記範囲内であると、ゲート絶縁層の耐クラック性を向上させ、リーク電流を低減させることができる。一方、数平均粒子径は、100nm以下が好ましく、70nm以下がより好ましく、60nm以下がさらに好ましく、50nm以下が特に好ましい。数平均粒子径が上記範囲内であると、パターン加工性を向上させることができる。
【0022】
ここで、無機粒子の数平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、以下のように測定することで求めることができる。拡大倍率を50,000~200,000倍として、ゲート絶縁層の断面を観測する。無機粒子が真球の場合、真球の直径を測定し、その粒子の粒子径とする。無機粒子が真球でない場合、最も長い径(以下、「長軸径」)および長軸径と直交する方向において最も長い径(以下、「短軸径」)を測定し、長軸径と短軸径を平均した、二軸平均径をその粒子の粒子径とする。この粒子径測定を無作為に選んだ20個以上の粒子について行い、その算術平均を数平均粒子径とする。
【0023】
また、マトリックスの樹脂と反応しやすくするため、無機粒子はその表面にヒドロキシ基など、樹脂と反応可能な官能基を有することが好ましい。無機粒子とマトリックスの樹脂との反応性が良好であると、熱硬化時に樹脂中に無機粒子が組み込まれ、熱硬化時の収縮応力の発生が抑えられるため、ゲート絶縁層の耐クラック性が向上し、リーク電流が低減する。
【0024】
無機粒子としては、例えば、シリカ粒子、フッ化マグネシウム粒子、塩化マグネシウム粒子、臭化マグネシウム粒子、酸化マグネシウム粒子、炭酸マグネシウム粒子、硫酸マグネシウム粒子、硝酸マグネシウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、フッ化カルシウム粒子、塩化カルシウム粒子、臭化カルシウム粒子、酸化カルシウム粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸カルシウム粒子、硝酸カルシウム粒子、水酸化カルシウム粒子、フッ化ストロンチウム粒子、フッ化バリウム粒子、フッ化ランタン粒子、フッ化セリウム、酸化スズ-酸化チタン複合粒子、酸化ケイ素-酸化チタン複合粒子、酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化ハフニウム、酸化スズ粒子、酸化イットリウム粒子、酸化ニオブ粒子、酸化タンタル粒子、酸化スズ-酸化ジルコニウム複合粒子、酸化ケイ素-酸化ジルコニウム複合粒子、酸化アルミニウム粒子、チタン酸バリウム粒子、チタン酸ストロンチウム粒子、チタン酸バリウム-チタン酸ストロンチウム複合粒子等が挙げられる。後述するポリマーとの相溶性の観点から、シリカ粒子、酸化スズ-酸化チタン複合粒子、酸化ケイ素-酸化チタン複合粒子、酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化ハフニウム、酸化スズ粒子、酸化イットリウム粒子、酸化ニオブ粒子、酸化タンタル粒子、酸化スズ-酸化ジルコニウム複合粒子、酸化ケイ素-酸化ジルコニウム複合粒子、酸化アルミニウム粒子、チタン酸バリウム粒子、チタン酸ストロンチウム粒子およびチタン酸バリウム-チタン酸ストロンチウム複合粒子から選ばれた無機粒子が好ましい。
【0025】
さらに、FETのオン電流を向上させる観点から、酸化スズ-酸化チタン複合粒子、酸化ケイ素-酸化チタン複合粒子、酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化ハフニウム、酸化イットリウム粒子、酸化ニオブ粒子、酸化タンタル粒子、酸化スズ-酸化ジルコニウム複合粒子、酸化ケイ素-酸化ジルコニウム複合粒子、酸化アルミニウム粒子、チタン酸バリウム粒子、チタン酸ストロンチウム粒子およびチタン酸バリウム-チタン酸ストロンチウム複合粒子から選ばれた無機粒子がより好ましい。
【0026】
オン電流とは、あるゲート電圧値でのFET駆動時(オン時)における回路上へ流れる電流であり、FETのスイッチング特性を向上させるためには、オン電流の値を大きくする必要がある。オン電流値は、5μA以上が好ましく、20μA以上がより好ましく、50μA以上がさらに好ましく、100μA以上が特に好ましい。
【0027】
シリカ粒子としては、例えば、メタノール(MA)を分散媒としたメタノールシリカゾル、イソプロピルアルコール(IPA)を分散媒としたIPA-ST、エチレングリコール(EG)を分散媒としたEG-ST、メチルエチルケトン(MEK)を分散媒としたMEK-ST、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を分散媒としたPMA-ST、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を分散媒としたPGM-ST、分散溶液が水であるスノーテックス(登録商標)OXS、分散溶液が水であるスノーテックス(登録商標)OS、分散溶液が水であるスノーテックス(登録商標)O、分散溶液が水であるスノーテックス(登録商標)O-50(以上、何れも日産化学工業(株)製)、IPAを分散媒としたOSCAL(登録商標)-1421、IPAを分散媒としたOSCAL(登録商標)-1432、MAを分散媒としたOSCAL(登録商標)-1132、エチレングリコールモノメチルエーテル(EGME)を分散媒としたOSCAL(登録商標)-1632、EGを分散媒としたOSCAL(登録商標)-1727BM(以上、何れも日揮触媒化成工業(株)製)、分散溶液が水であるクォートロン(登録商標)PL-06L、分散溶液が水であるクォートロン(登録商標)PL-1、分散溶液が水であるクォートロン(登録商標)PL-2L、分散溶液が水であるクォートロン(登録商標)PL-3、IPAを分散媒としたクォートロン(登録商標)PL-1-IPA、IPAを分散媒としたクォートロン(登録商標)PL-2L-IPA、MAを分散媒としたクォートロン(登録商標)PL-2L-MA、PGMEを分散媒としたクォートロン(登録商標)PL-2L-PGME、ジアセトンアルコール(DAA)を分散媒としたクォートロン(登録商標)PL-2L-DAA(以上、何れも扶桑化学工業(株)製)などが、アルカリ現像液でのパターン加工性の観点から好ましく例示されるが、他の公知の材料も利用することができる。
【0028】
酸化スズ-酸化チタン複合粒子としては、例えば、オプトレイク(登録商標)TR-502またはTR-504が挙げられる(以上、何れも日揮触媒化成工業(株)製)。
【0029】
酸化ケイ素-酸化チタン複合粒子としては、例えば、オプトレイク(登録商標)TR-503、TR-513、TR-520、TR-521、TR-527、TR-528、TR-529、TR-543、TR-544またはTR-550が挙げられる(以上、何れも日揮触媒化成工業(株)製)。
【0030】
酸化チタン粒子としては、例えば、オプトレイク(登録商標)TR-505(日揮触媒化成工業(株)製)、タイノック(登録商標)A-6、M-6もしくはAM-15(以上、何れも多木化学(株)製)、nSol(登録商標)101-20I、101-20L、101-20BLもしくは107-20I(以上、何れもナノグラム(株)製)、TTO-51(A)、TTO-51(B)、TTO-55(A)、TTO-55(B)、TTO-55(C)、TTO-55(D)、TTO-V-4もしくはTTO-W-5(以上、何れも石原産業(株)製)、RTTAP15WT%-E10、RTTDNB15WT%-E11、RTTDNB15WT%-E12、RTTDNB15WT%-E13、RTTIBA15WT%-E6、RTIPA15WT%-NO8、RTIPA15WT%-NO9、RTIPA20WT%-N11、RTIPA20WT%-N13、RTIPA20WT%-N14もしくはRTIPA20WT%-N16(以上、何れもシーアイ化成(株)製)またはHT331B、HT431B、HT631B、HT731BもしくはHT830X(以上、何れも東邦チタニウム(株)製)が挙げられる。
【0031】
酸化ジルコニウム粒子としては、ナノユース(登録商標)ZR-30BL、ZR-30BS、ZR-30BH、ZR-30AL、ZR-30AHもしくはOZ-30M(以上、何れも日産化学工業(株)製)またはZSL-M20、ZSL-10T、ZSL-10AもしくはZSL-20N(以上、何れも第一稀元素化学工業(株)製)が挙げられる。
【0032】
酸化スズ粒子としては、セラメース(登録商標)S-8またはS-10(以上、何れも多木化学(株)製)が挙げられる。
【0033】
酸化ニオブ粒子としては、バイラール(登録商標)Nb-X10(多木化学(株)製)が挙げられる。
【0034】
その他の無機粒子としては、酸化スズ-酸化ジルコニウム複合粒子(触媒化成工業(株)製)、酸化スズ粒子または酸化ジルコニウム粒子(以上、何れも(株)高純度化学研究所製)が挙げられる。
【0035】
ゲート絶縁層に占める無機粒子の含有量は、体積分率で10vol%以上が好ましく、15vol%以上がより好ましく、20vol%以上が特に好ましい。また、同様に含有量は、60vol%以下が好ましく、50vol%以下がより好ましく、40vol%以下が特に好ましい。無機粒子の含有量が上記範囲内であると、ゲート絶縁層でのパターン加工性を損なうことなく、耐クラックの向上により、リーク電流を低減させることができる。
【0036】
無機粒子が結合したポリマーにおいて、ポリマーは、溶媒に可溶性のものが好ましい。ポリマーの骨格は直鎖状、環状、分岐状の何れも用いられる。また側鎖に架橋性の官能基や、極性を有する官能基や、ポリマーの種々の特性を制御する官能基が導入されていることも好ましい。これらの特性を制御したポリマーを用いることによって、FET素子の作製工程において、例えば、塗布性、表面の平坦性、耐溶剤性、透明性、他インクの良好な濡れ性などが得られる。さらにはFET素子形成後の耐久性や安定性などに優れた、良好なFET素子を得ることができる。
【0037】
本発明に用いられるポリマーとしては、FETが正常に機能する程度の絶縁性を示すものであれば特に制限はなく、例えば、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリフタルアミド、ポリエーテルニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリルアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリエステル、芳香族ポリエーテル、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、脂環式オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂等を用いることができる。また、これらのポリマーに他のポリマーを共重合もしくは混合したものを用いることもできる。これらの内、FETのオン電流の向上およびリーク電流の低減の観点から、ポリシロキサンが好ましく用いられる。
【0038】
ポリシロキサンは、一般式(1)で表される構造単位を有することが好ましい。
【0039】
【化1】
【0040】
一般式(1)において、Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基、ヘテロアリール基またはアルケニル基を表す。Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはシリル基を表す。mは0または1を表す。Aは、カルボキシル基、スルホ基、チオール基、フェノール性水酸基またはそれらの誘導体を少なくとも二つ含む有機基を表す。ただし、前記誘導体が、前記カルボキシル基、スルホ基、チオール基およびフェノール性水酸基のうちの二つによる環状縮合構造である場合は、Aは当該環状縮合構造を少なくとも一つ有する有機基を表す。
【0041】
アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などの飽和脂肪族炭化水素基を示し、置換基を有していても有していなくてもよい。置換基としては、特に制限はなく、例えば、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基等を挙げることができる。これらの置換基はさらに置換基を有していてもよい。また、アルキル基の炭素数は、特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、1以上20以下が好ましく、より好ましくは1以上8以下である。
【0042】
シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの飽和脂環式炭化水素基を示し、置換基を有していても有していなくてもよい。置換基としては、特に制限はなく、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基等を挙げることができる。これらの置換基はさらに置換基を有していてもよい。これら置換基に関する説明は、以下の記載にも共通する。シクロアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、3以上20以下の範囲が好ましい。
【0043】
複素環基とは、例えば、ピラン環、ピペリジン環、アミド環などの炭素以外の原子を環内に有する脂肪族環から導かれる基を示し、置換基を有していても有していなくてもよい。複素環基の炭素数は、特に限定されないが、2以上20以下の範囲が好ましい。
【0044】
アリール基とは、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ターフェニル基、ピレニル基などの芳香族炭化水素基を示し、置換基を有していても有していなくてもよい。アリール基の炭素数は、特に限定されないが、6~40の範囲が好ましい。
【0045】
ヘテロアリール基とは、例えば、フラニル基、チオフェニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、ピリジル基、キノリニル基など、炭素以外の原子を一個または複数個環内に有する芳香族基を示し、置換基を有していても有していなくてもよい。ヘテロアリール基の炭素数は、特に限定されないが、2~30の範囲が好ましい。
【0046】
アルケニル基とは、例えば、ビニル基、アリル基、ブタジエニル基などの二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、置換基を有していても有していなくてもよい。アルケニル基の炭素数は、特に限定されないが、2以上20以下の範囲が好ましい。
【0047】
また上記で置換基として挙げたアルコキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基など、エーテル結合の一方を脂肪族炭化水素基で置換した官能基を示し、この脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルコキシ基の炭素数は、特に限定されないが、1以上20以下の範囲が好ましい。
【0048】
における有機基とは、先に挙げたアルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基、ヘテロアリール基またはアルケニル基を表す。これらの内、低ヒステリシスの観点から、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基およびアルケニル基が好ましく、アルキル基およびアリール基がより好ましく、アルキル基がさらに好ましい。
【0049】
一般式(1)で表される構造単位を有するポリシロキサンが、Aとしてカルボキシル基、スルホ基、チオール基、フェノール性水酸基またはそれらの誘導体を少なくとも二つ含む有機基を含有することで、得られたゲート絶縁層上に、CNTが平滑に塗布された均一な半導体層を形成することが可能になる。これは、絶縁層表面に存在するこれら極性官能基が、半導体溶液の濡れ性を制御し、はじきのない塗布を可能にできるためと推測される。
【0050】
また、上記誘導体が、上記カルボキシル基、スルホ基、チオール基およびフェノール性水酸基のうちの二つによる環状縮合構造である場合は、Aとして当該環状縮合構造を少なくとも一つ有する有機基を含有することで、同様の効果が得られる。
【0051】
ゲート絶縁層上への半導体溶液の塗布性は、ゲート絶縁層に対する半導体溶液の接触角を、液適法により測定することで評価できる。はじきなく均一に塗布する観点から、接触角は15°未満が好ましく、12°未満がより好ましく、10°未満がさらに好ましく、9°未満が特に好ましい。一方、FETの安定動作のために一定の膜厚が必要であることから、接触角は4°以上が好ましく、5°以上がより好ましく、6°以上がさらに好ましく、7°以上が特に好ましい。
【0052】
また、一般式(1)で表される構造単位を有するポリシロキサンが、Aを有することで、得られたゲート絶縁層の耐クラック性が増大し、リーク電流の低減が成される。
【0053】
さらに、一般式(1)で表される構造単位を有するポリシロキサンが、Aを有することで、ゲート絶縁層のリソグラフィー時に、アルカリ現像液に対する優れた溶解性を示す。これにより、パターンを設計寸法通り精度良く加工することが可能になることから、解像度が良好になる。解像度は、30μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。
【0054】
カルボキシル基、スルホ基、チオール基またはフェノール性水酸基の各誘導体のうち、非環状の縮合構造としては、炭化水素基またはシリル基とのカルボン酸エステル、スルホン酸エステル、チオエステル、チオエーテルおよびフェニルエーテル等が挙げられる。加えてカルボン酸無水物およびカルボン酸無水物とアミン化合物との反応により生じるアミド化合物またはイミド化合物等が挙げられる。
【0055】
ここで、シリル基とは、Si原子を結合点とする官能基であれば特に制限はされず、水素基、有機基およびさらにシリル基を有してよく、酸素原子を介してもよい。ポリシロキサンもまた可能である。
【0056】
カルボキシル基、スルホ基、チオール基およびフェノール性水酸基のうちの二つによる環状縮合構造としては、環状酸無水物構造、環状エステル構造、環状チオエステル構造、環状エーテル構造および環状チオエーテル構造等が挙げられる。
【0057】
縮合は、自分子内の縮合および他分子間の縮合の双方を含む。他分子間の縮合の場合、ポリシロキサン同士および他の構成材料由来とのもの双方を含む。
【0058】
一般式(1)におけるAとしては、半導体溶液の塗布性向上、およびゲート絶縁層の耐クラック性向上によるリーク電流低減の観点から、カルボキシル基またはその誘導体を少なくとも二つ、もしくは環状の酸無水物基を少なくとも一つ有する有機基が好ましい。Aとしては、一般式(2)または(3)で表される基がさらに好ましい。
【0059】
【化2】
【0060】
一般式(2)において、Xは、単結合、炭素数1~10のアルキレン基または炭素数6~15のアリーレン基を表す。RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、有機基またはシリル基を表す。一般式(3)において、Xは、単結合、炭素数1~10のアルキレン基または炭素数6~15のアリーレン基を表す。
【0061】
ポリシロキサンにおいて、全シラン構造単位に占める前記一般式(1)で表される構造単位の含有比率は、半導体溶液の塗布性向上、およびゲート絶縁層の耐クラック性向上によるリーク電流低減、およびゲート絶縁層のリソグラフィー時における解像度向上の観点から、0.5mol%以上が好ましく、1.0mol%以上がより好ましく、1.5mol%以上がさらに好ましい。また、吸湿によるリーク電流の増加を防ぐ観点から、25mol%以下が好ましく、20mol%以下がより好ましく、15mol%以下がさらに好ましい。
【0062】
ポリシロキサンにおける、全シラン構造単位に占める前記一般式(1)で表される構造単位の含有比率は、13C-NMRにより求めることができる。カルボキシル基およびその誘導体では、カルボニルの炭素原子が化学シフト170-180ppm付近に、スルホ基およびその誘導体では、S原子と結合する炭素原子が化学シフト30-40ppm付近に、チオール基およびその誘導体では、S原子と結合する炭素原子が化学シフト10-20ppm付近に、フェノール性水酸基およびその誘導体では、フェノール性水酸基由来のO原子と結合する芳香環内の炭素原子が化学シフト140-170ppm付近に、それぞれ特徴的に出現する。これらおよび他の構造単位における炭素原子とのピーク面積比から、構造単位の含有比率が求められる。
【0063】
一般式(1)で表される構造単位としては、以下のシラン化合物由来の構造単位が例示される。
【0064】
カルボキシル基またはそれらの誘導体を持つものとして、ジメトキシメチルシリルメチルコハク酸、ジエトキシメチルシリルメチルコハク酸、ジメトキシフェニルシリルメチルコハク酸、ジエトキシフェニルシリルメチルコハク酸、トリメトキシシリルメチルコハク酸、トリエトキシシリルメチルコハク酸、2-ジメトキシメチルシリルエチルコハク酸、2-ジエトキシメチルシリルエチルコハク酸、2-ジメトキシフェニルシリルエチルコハク酸、2-ジエトキシフェニルシリルエチルコハク酸、2-トリメトキシシリルエチルコハク酸、2-トリエトキシシリルエチルコハク酸、3-ジメトキシメチルシリルプロピルコハク酸、3-ジエトキシメチルシリルプロピルコハク酸、3-ジメトキシフェニルシリルプロピルコハク酸、3-ジエトキシフェニルシリルプロピルコハク酸、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸、3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸、4-ジメトキシメチルシリルブチルコハク酸、4-ジエトキシメチルシリルブチルコハク酸、4-ジメトキシフェニルシリルブチルコハク酸、4-ジエトキシフェニルシリルブチルコハク酸、4-トリメトキシシリルブチルコハク酸、4-トリエトキシシリルブチルコハク酸、5-ジメトキシメチルシリルペンチルコハク酸、5-ジエトキシメチルシリルペンチルコハク酸、5-ジメトキシフェニルシリルペンチルコハク酸、5-ジエトキシフェニルシリルペンチルコハク酸、5-トリメトキシシリルペンチルコハク酸、5-トリエトキシシリルペンチルコハク酸、6-ジメトキシメチルシリルヘキシルコハク酸、6-ジエトキシメチルシリルヘキシルコハク酸、6-ジメトキシフェニルシリルヘキシルコハク酸、6-ジエトキシフェニルシリルヘキシルコハク酸、6-トリメトキシシリルヘキシルコハク酸、6-トリエメトキシシリルヘキシルコハク酸、これらコハク酸構造を有する化合物の無水物、およびこれらコハク酸がグルタル酸となった化合物由来の構造単位が挙げられる。
【0065】
スルホ基またはそれらの誘導体を持つものとして、5-ジメトキシメチルシリルペンタン-1,2-ジスルホン酸、5-ジエトキシメチルシリルペンタン-1,2-ジスルホン酸、5-ジメトキシフェニルシリルペンタン-1,2-ジスルホン酸、5-ジエトキシフェニルシリルペンタン-1,2-ジスルホン酸、5-トリメトキシシリルペンタン-1,2-ジスルホン酸、5-トリエトキシシリルペンタン-1,2-ジスルホン酸およびこれらのメチルエステル、エチルエステル、n-プロピルエステル、イソプロピルエステル、n-ブチルエステル、sec-ブチルエステル加えてt-ブチルエステル由来の構造単位が挙げられる。
【0066】
チオール基またはそれらの誘導体を持つものとして、3-(3-ジメトキシメチルシリルプロピロキシ)プロパン-1,2-ジチオール、3-(3-ジエトキシメチルシリルプロピロキシ)プロパン-1,2-ジチオール、3-(3-ジメトキシフェニルシリルプロピロキシ)プロパン-1,2-ジチオール、3-(3-ジエトキシフェニルシリルプロピロキシ)プロパン-1,2-ジチオール、3-(3-トリメトキシシリルプロピロキシ)プロパン-1,2-ジチオール、3-(3-トリエトキシシリルプロピロキシ)プロパン-1,2-ジチオールおよびこれらのメチルチオエーテル、エチルチオエーテル、n-プロピルチオエーテル、イソプロピルチオエーテル、n-ブチルチオエーテル、sec-ブチルチオエーテル加えてt-ブチルチオエーテル由来の構造単位が挙げられる。
【0067】
フェノール性水酸基またはそれらの誘導体を持つものとして、3-ジメトキシメチルシリルプロピル基、3-ジエトキシメチルシリルプロピル基、3-ジメトキシフェニルシリルプロピル基、3-ジエトキシフェニルシリルプロピル基、3-トリメトキシシリルプロピル基または3-トリエトキシシリルプロピル基を有するカテコール、レソルシノール、ヒドロキノンまたはフロログルシノール、およびこれらのメチルエーテル、エチルエーテル、n-プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、n-ブチルエーテル、sec-ブチルエーテル加えてt-ブチルエーテル由来の構造単位が挙げられる。
【0068】
カルボキシル基、スルホ基、チオール基、フェノール性水酸基またはそれらの誘導体の内、異なる種類の基をそれぞれ一つずつ含むものとして、1-カルボキシル-2-スルホ-5-トリメトキシシリルペンタン、1-カルボキシル-2-メルカプト-5-トリメトキシシリルペンタン、1-スルホ-2-メルカプト-5-トリメトキシシリルペンタン、1-カルボキシル-2-ヒドロキシ-4-トリメトキシシリルベンゼン、1-スルホ-2-ヒドロキシ-4-トリメトキシシリルベンゼン、1-メルカプト-2-ヒドロキシ-4-トリメトキシシリルベンゼンおよびこれら置換基の位置が異なる位置異性体、加えてこれらのメチル(チオ)エステル、エチル(チオ)エステル、n-プロピル(チオ)エステル、イソプロピル(チオ)エステル、n-ブチル(チオ)エステル、sec-ブチル(チオ)エステル、t-ブチル(チオ)エステル、メチル(チオ)エーテル、エチル(チオ)エーテル、n-プロピル(チオ)エーテル、イソプロピル(チオ)エーテル、n-ブチル(チオ)エーテル、sec-ブチル(チオ)エーテル、t-ブチル(チオ)エーテル、環状(チオ)エステルおよび環状(チオ)エーテル由来の構造単位が挙げられる
中でも、半導体溶液の塗布性向上、およびゲート絶縁層の耐クラック性向上によるリーク電流低減の観点から、カルボキシル基またはその誘導体を少なくとも二つ、もしくは環状の酸無水物基を少なくとも一つ有するシラン化合物由来の構造単位が好ましく、コハク酸、コハク酸無水物構造またはそれらの誘導体を有するシラン化合物由来の構造単位がより好ましく、コハク酸またはコハク酸無水物構造をするシラン化合物由来の構造単位がさらに好ましい。具体的には、3-ジメトキシメチルシリルプロピルコハク酸、3-ジエトキシメチルシリルプロピルコハク酸、3-ジメトキシフェニルシリルプロピルコハク酸、3-ジエトキシフェニルシリルプロピルコハク酸、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸、3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸およびこれらの無水物由来の構造単位がさらに好ましく、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸、3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸およびこれらの無水物由来の構造単位が特に好ましい。
【0069】
本発明におけるゲート絶縁層中のポリシロキサンは、さらに、架橋構造の導入による耐クラック性向上とリーク電流低減の観点から、一般式(4)で表される構造単位を有することが好ましい。
【0070】
【化3】
【0071】
一般式(4)において、Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基、ヘテロアリール基またはアルケニル基を表す。Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはシリル基を表す。nは0または1を表す。Bは、アクリル基および/またはメタクリル基の付加反応構造を含む有機基を表す。
【0072】
アクリル基および/またはメタクリル基の付加反応構造を含む有機基とは、アクリル基および/またはメタクリル基を有するシラン化合物に含まれるアクリル基および/またはメタクリル基が、それら同士および/または後述のラジカル重合性化合物に含まれるアクリル基および/またはメタクリル基と付加反応したものである。付加反応は、光または熱によるラジカル重合に伴う架橋反応である。
【0073】
上記ポリシロキサンにおいて、全シラン構造単位に占める上記一般式(4)で表される構造単位の含有比率は、耐クラック性向上の観点から、5mol%以上が好ましく、15mol%以上がより好ましく、25mol%以上がさらに好ましい。また、架橋密度が過剰に高い場合、フォトリソグラフィー工程における現像等のウェットプロセスで膜が膨潤し、パターンの解像度が低下する。これを防ぐ観点から、50mol%以下が好ましく、45mol%以下がより好ましく、40mol%以下がさらに好ましい。
【0074】
一般式(4)で表される構造単位としては、以下のシラン化合物由来の構造単位が例示される。3-アクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3-メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3-アクリロキシプロピルジエトキシメチルシラン、3-メタクリロキシプロピルジエトキシメチルシラン、3-アクリロキシプロピルジメトキシフェニルシラン、3-メタクリロキシプロピルジメトキシフェニルシラン、3-アクリロキシプロピルジエトキシフェニルシラン、3-メタクリロキシプロピルジエトキシフェニルシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン由来の構造が付加反応した構造単位が、付加反応の反応性の観点から好ましく、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン由来の構造が付加反応した構造単位がより好ましく例示されるが、他の公知の材料も利用することができる。
【0075】
本発明におけるゲート絶縁層中のポリシロキサンは、さらに、高い絶縁性と耐クラック性を両立させる観点から、一般式(1)および(4)以外の構造単位を1種以上含むことが好ましい。ここで、本発明でいう絶縁性とは、電気の通しにくさの指標であり、体積抵抗率が10Ω・cm以上であることを指す。
【0076】
一般式(1)および(4)以外の構造単位としては、以下のシラン化合物由来の構造単位が例示される。ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p-トリルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、α-ナフチルトリメトキシシラン、β-ナフチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシラン、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリフルオロエチルトリメトキシシラン、トリフルオロエチルトリエトキシシラン、トリフルオロエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリイソプロポキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリイソプロポキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロエチルメチルジメトキシシラン、トリフルオロエチルメチルジエトキシシラン、トリフルオロエチルメチルジイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジイソプロポキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジイソプロポキシシラン、トリデカフルオロオクチルメチルジメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルメチルジエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルメチルジイソプロポキシシラン、トリフルオロエチルエチルジメトキシシラン、トリフルオロエチルエチルジエトキシシラン、トリフルオロエチルエチルジイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルエチルジメトキシシラン、トリルオロプロピルエチルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルエチルジイソプロポキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルエチルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルエチルジエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルエチルジイソプロポキシシラン、トリデカフルオロオクチルエチルジエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルエチルジメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルエチルジイソプロポキシシラン、p-トリフルオロフェニルトリエトキシシランなどに由来する構造単位が挙げられる。
【0077】
(無機粒子が結合したポリマーの製造方法)
本発明に用いられる無機粒子が結合したポリマーは、例えば次の方法で得ることができる。ここでは、ポリシロキサンの場合を例にする。溶媒中に全シラン化合物および無機粒子を投入した後、撹拌し、ここに酸触媒および水を1~180分かけて添加した後、15~80℃で1~180分加水分解反応させる。加水分解反応時の温度は、15~55℃がより好ましい。得られた反応液を、さらに50℃以上、溶媒の沸点以下で1~100時間加熱し、縮合反応を行うことにより、無機粒子が結合したポリシロキサンを得ることができる。このように、無機粒子の存在下で、シラン化合物を加水分解し、脱水縮合させる方法が挙げられる。
【0078】
加水分解反応における各種条件は、反応スケール、反応容器の大きさ、形状などを考慮して、例えば、酸濃度、反応温度、反応時間などを設定することによって、目的とする用途に適した物性を得ることができる。
【0079】
シラン化合物の加水分解反応に利用される酸触媒としては、蟻酸、蓚酸、塩酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、リン酸、ポリリン酸、多価カルボン酸あるいはその無水物、イオン交換樹脂などの酸触媒が挙げられる。酸触媒の含有量は、ポリシロキサンの原料である全シラン化合物100質量部に対して0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましい。また、酸触媒の含有量は、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。酸触媒の含有量が、0.05質量部以上であれば加水分解反応が十分進行し、また、10質量部以下であれば、急激な反応を抑制することができる。
【0080】
ポリシロキサンは保存安定性の観点から、上記酸触媒を含有しないことが好ましいため、加水分解反応後に触媒を除去しても構わない。触媒を除去する方法としては、操作の簡便さおよび除去性の観点から、水洗浄又はイオン交換樹脂による処理が好ましい。ここで水洗浄とは、ポリシロキサンの溶液を適当な疎水性溶剤で希釈した後、水で数回洗浄し、得られた有機層をエバポレーターなどで濃縮する方法をいう。またイオン交換樹脂による処理とは、得られたポリシロキサンの溶液をイオン交換樹脂に接触させる方法をいう。
【0081】
加水分解反応に用いられる溶媒としては、有機溶媒が好ましく、エタノール、プロパノール、ブタノール、3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル類;メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;エチルアセテート、エチルセロソルブアセテート、3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノールアセテートなどのアセテート類;トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの芳香族あるいは脂肪族炭化水素のほか、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどを挙げることができる。溶媒の量は、ポリシロキサンの原料である全シラン化合物100質量部に対して、50質量部以上500質量部以下の範囲が好ましい。50質量部以上であれば、急激な反応を抑制でき、500質量部以下であれば、加水分解を十分進行させることができる。
【0082】
また、加水分解に用いられる水としては、イオン交換水が好ましい。水の量は、任意に選択可能であるが、シラン化合物中のアルコキシ基と当量モルの水に加えて、酸無水物基やエポキシ基などの加水分解する構造を有するシラン化合物を用いる場合は、加水分解する官能基と当量モル以上の水をさらに添加するのがよい。ポリシロキサンの重合度を上げるために、再加熱もしくは塩基触媒の添加を行うことも可能である。
【0083】
ポリシロキサンが一般式(1)および/または(4)で表される構造単位を含むことは、元素分析、核磁気共鳴分析、赤外分光分析等の各種有機分析手法を単独または複数組み合わせることにより判定することができる。
【0084】
本発明におけるゲート絶縁層は、ポリシロキサンを1種または2種以上含んでもよい。また、1種以上のポリシロキサンと1種以上の前記シラン化合物を混合して用いてもよい。
【0085】
(その他の成分)
本発明におけるゲート絶縁層は、さらに、感光性有機成分としてラジカル重合性化合物の付加反応体を含むことができる。
【0086】
ラジカル重合性化合物とは、分子中に複数のエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物をいう。UV光の照射により、後述する光重合開始剤から発生するラジカルによって、ラジカル重合性化合物のラジカル重合が進行し、ゲート絶縁層の架橋密度が向上し、硬度を向上させることができる。
【0087】
ラジカル重合性化合物としては、ラジカル重合の進行しやすい、(メタ)アクリル基を有する化合物が好ましい。UV光の照射時の感度向上およびゲート絶縁層の硬度向上の観点から、(メタ)アクリル基を分子内に二つ以上有する化合物がより好ましい。
【0088】
ラジカル重合性化合物としては、UV光の照射時の感度向上および硬化膜の耐クラック性向上の観点から、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、1,3,5-トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌル酸もしくは9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]フルオレンまたはそれらの酸変性体、エチレンオキシド変性体もしくはプロピレンオキシド変性体が好ましく例示される。
【0089】
本発明におけるゲート絶縁層は、さらに感光性有機成分として、UV光の照射によって結合開裂および/または反応してラジカルを発生する化合物(以下、「光重合開始剤」)を含むことができる。
【0090】
光重合開始剤を含むことで、前述したラジカル重合性化合物のラジカル重合が進行し、UV光の照射時の付加反応を促進することができる。
【0091】
光重合開始剤としては、例えば、ベンジルケタール系光重合開始剤、α-ヒドロキシケトン系光重合開始剤、α-アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、アクリジン系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、芳香族ケトエステル系光重合開始剤または安息香酸エステル系光重合開始剤が好ましい。UV光の照射時の感度向上の観点から、α-ヒドロキシケトン系光重合開始剤、α-アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、アクリジン系光重合開始剤またはベンゾフェノン系光重合開始剤がより好ましく、α-アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤がさらに好ましい。
【0092】
光重合開始剤の具体的な例としては、オキシムエステル系光重合開始剤として、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン-1,2-ジオン-2-(O-ベンゾイル)オキシムおよび1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(O-アセチル)オキシムが挙げられるが、他の公知の光重合開始剤も利用することができる。
【0093】
本発明におけるゲート絶縁層は、さらに感光性有機成分として、光により酸を発生する化合物(以下、「光酸発生剤」)を含有してもよい。光酸発生剤としては、オニウム塩化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、スルホンイミド化合物などを例として挙げることができる。
【0094】
ジアゾケトン化合物の具体的な例としては、1,3-ジケト-2-ジアゾ化合物、ジアゾベンゾキノン化合物、ジアゾナフトキノン化合物などが挙げられる。中でもジアゾナフトキノン化合物が、パターン加工精度や得られるゲート絶縁層の耐クラック性の観点から好ましい。好ましいジアゾケトン化合物は1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸と2,2,3,4,4’-ペンタヒドロキシベンゾフェノンとのエステル、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸と1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンとのエステルなどを挙げることができる。
【0095】
さらに、光重合開始剤および光酸発生剤は、感光性有機成分である増感剤と組み合わせて用いられることが好ましい。増感剤は、光退色反応で着色を生じないため、ゲート絶縁層中でも、高い透明性を維持しつつ、高感度化を達成できる。増感剤としては特に制限はなく公知の増感剤を用いることができるが、9,10-二置換アントラセン系化合物が特に好ましい。
【0096】
本発明におけるゲート絶縁層は、さらに感光性有機成分として、連鎖移動剤の付加反応体を含むことができる。
【0097】
連鎖移動剤とは、UV光の照射時のラジカル重合により得られるポリマー鎖の、ポリマー生長末端からラジカルを受け取り、他のポリマー鎖へのラジカル移動を介することが可能な化合物をいう。
【0098】
連鎖移動剤を含むことで、UV光の照射時の感度を向上させることができる。これは、UV光の照射によって発生したラジカルが、連鎖移動剤によって他のポリマー鎖へラジカル移動することで、膜の深部にまでラジカル架橋をするためであると推測される。連鎖移動剤としては、チオール系連鎖移動剤が好ましい。
【0099】
本発明におけるゲート絶縁層は、さらに感光性有機成分として、重合禁止剤を含むことができる。
【0100】
重合禁止剤とは、UV光の照射時に発生したラジカル、または、UV光照射時のラジカル重合により得られるポリマー鎖の、ポリマー生長末端のラジカルを捕捉し、安定ラジカルとして保持することで、ラジカル重合を停止することが可能な化合物をいう。
【0101】
重合禁止剤を適量含有させることで、UV光照射時に発生する過剰量のラジカルを抑制し、ラジカル重合を制御することができる。重合禁止剤としては、フェノール系重合禁止剤が好ましい。
【0102】
本発明におけるゲート絶縁層は、無機粒子が結合したポリマーに加えて、さらに、ポリマーが結合していない無機粒子をさらに含有してもよい。ポリマーが結合していない無機粒子の好ましい材質や形状としては、上述のポリマーが結合された無機粒子と同様である。
【0103】
本発明におけるゲート絶縁層は、必要に応じて、粘度調整剤、界面活性剤、安定化剤などを含有することができる。また、残留溶媒を含有していても構わない。
【0104】
界面活性剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、アクリル系界面活性剤などを挙げることができる。
【0105】
フッ素系界面活性剤の具体的な例としては、メガファックF142D、同F172、同F173、同F183(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、NBX-15、FTX-218、DFX-18((株)ネオス製)などを挙げることができる。また、シリコーン系界面活性剤としては、BYK-333(ビックケミー・ジャパン(株)製)などが挙げられる。
【0106】
本発明におけるゲート絶縁層は、比誘電率が5以上であることが好ましく、7以上であることがより好ましく、8.5以上であることがさらに好ましく、10以上であることが特に好ましい。比誘電率が上記の範囲であることにより、FETのオン電流を大きくすることができる。また、比誘電率は20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、13.5以下であることがさらに好ましく、12以下であることが特に好ましい。比誘電率が上記の範囲であることにより、ゲート絶縁層による過剰な誘電損失を防ぐことができ、特に100MHz以上の高周波帯域の電波により駆動するFETでは、正確な動作を行うことができる。ゲート絶縁層の比誘電率εは、下記の(a)式を用いて算出することができる。
【0107】
ε=C・D/(S・ε) (a)
ただしC(F)はゲート絶縁層の静電容量、D(m)はゲート絶縁層の厚さ、S(m)はゲート絶縁層を挟む電極の面積、εは真空の誘電率(8.85×10-12F/m)である。
【0108】
本発明におけるゲート絶縁層の厚さは10nm以上が好ましく、25nm以上がより好ましく、50nm以上が特に好ましい。また、ゲート絶縁層の厚さは、1000nm以下が好ましく、750nm以下がより好ましく、500nm以下が特に好ましい。この範囲の厚さにすることにより、均一な薄膜形成が容易になり、リーク電流が低減する。さらにゲート電圧によって制御できないソース・ドレイン間電流が抑制され、FETのオンオフ比をより高くすることができる。ゲート絶縁層の厚さは、光干渉式膜厚測定装置により、基板上の面内10点以上を測定し、その算術平均から求めることができる。
【0109】
本発明におけるゲート絶縁層は、アルカリ金属やハロゲンイオンの濃度が少ないことが好ましい。具体的には、アルカリ金属やハロゲンイオンがいずれもゲート絶縁層全体の100ppm以下が好ましく、より好ましくは1ppm以下、さらに好ましくは0.1ppm以下である。
【0110】
本発明におけるゲート絶縁層は、単層、もしくは複数層から構成される。複数層の場合には、前述の好ましいゲート絶縁層を複数積層してもよいし、該好ましいゲート絶縁層と公知のゲート絶縁層を積層してもよい。
【0111】
また、ゲート絶縁層と後述の半導体層の間に配向性層を設けることもできる。配向性層の材料としては、シラン化合物、チタン化合物、有機酸、ヘテロ有機酸など、公知の材料を用いることができ、特に有機シラン化合物が好ましい。
【0112】
<第2絶縁層>
本発明のFETは、後述の半導体層に対してゲート絶縁層と反対側に第2絶縁層を有してもよい。ここで、半導体層に対してゲート絶縁層と反対側とは、例えば、半導体層の上側にゲート絶縁層を有する場合は半導体層の下側を指す。これにより、しきい値電圧やヒステリシスを低減することができ、高性能なFETが得られる。第2絶縁層に用いられる材料としては特に限定されないが、具体的には酸化シリコン、アルミナ等の無機材料;ポリイミドやその誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサンやその誘導体、ポリビニルフェノールやその誘導体等などのポリマー材料;あるいは無機材料粉末とポリマー材料の混合物や有機低分子材料とポリマー材料の混合物を挙げることができる。ポリシロキサンを含む絶縁層の材料としては、前記の好ましい絶縁層と同じものも含まれる。これらの中でも、インクジェット等の塗布法で作製できるポリマー材料を用いることが好ましい。特に、ポリフルオロエチレン、ポリノルボルネン、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、またはこれらの誘導体、あるいは、これらを含む共重合体を用いると、しきい値電圧およびヒステリシス低減効果がより大きくなるため好ましい。ポリアクリル酸誘導体、ポリメタクリル酸誘導体、またはこれらを含む共重合体が特に好ましい。
【0113】
第2絶縁層の膜厚は、一般的には50nm~10μm、好ましくは100nm~3μmである。第2絶縁層は単層でも複数層でもよい。また、1つの層を複数の絶縁性材料から形成してもよいし、複数の絶縁性材料を積層して形成しても構わない。
【0114】
上記第2絶縁層の形成方法としては、特に限定されず、抵抗加熱蒸着、電子線蒸着、スパッタリング、CVDなど乾式の方法を用いることも可能であるが、製造コストや大面積への適合の観点から塗布法を用いることが好ましい。塗布法としては、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコート法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法などの公知の塗布方法が挙げられる。
【0115】
<半導体層>
本発明における半導体層は、CNTを含有する。CNTは、キャリア移動度が高く、低コストで簡便な塗布プロセスが適用できる点で優れている。
【0116】
CNTとしては、1枚の炭素膜(グラフェン・シート)が円筒状に巻かれた単層CNT、2枚のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた2層CNT、複数のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた多層CNTのいずれを用いてもよく、これらを2種以上用いてもよい。半導体の特性を示すという観点から単層CNTを用いることが好ましい。単層CNTが半導体型単層CNTを90質量%以上含むことがより好ましい。さらに好ましくは単層CNTが半導体型単層CNTを95質量%以上含むことである。
【0117】
半導体型単層CNTの含有比率は、可視-近赤外吸収スペクトルの吸収面積比により算出できる。CNTは、アーク放電法、化学気相成長法(CVD法)、レーザー・アブレーション法等の方法により得ることができる。
【0118】
さらに、CNT表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着した、CNT複合体は、溶液中での分散安定性に優れ、低ヒステリシスが得られるため、特に好ましい。
【0119】
共役系重合体がCNTの表面の少なくとも一部に付着した状態とは、CNT表面の一部、あるいは全部を共役系重合体が被覆した状態を意味する。共役系重合体がCNTを被覆できるのはそれぞれの共役系構造に由来するπ電子雲が重なることによって相互作用が生じるためと推測される。CNTが共役系重合体で被覆されているか否かは、被覆されたCNTの反射色が被覆されていないCNTの色から共役系重合体の色に近づくことで判別できる。定量的には元素分析やX線光電子分光法などによって付着物の存在とCNTに対する付着物の質量比を同定することができる。また、CNTに付着させる共役系重合体は、分子量、分子量分布や構造に関わらず用いることができる。
【0120】
共役系重合体をCNTに付着させる方法は、(I)溶融した共役系重合体中にCNTを添加して混合する方法、(II)共役系重合体を溶媒中に溶解させ、この中にCNTを添加して混合する方法、(III)CNTを溶媒中で予め超音波等で予備分散しておいた所に共役系重合体を添加し混合する方法、(IV)溶媒中に共役系重合体とCNTを入れ、この混合系に超音波を照射して混合する方法等が挙げられる。複数の方法を組み合わせてもよい。
【0121】
CNTの長さは、ソース電極とドレイン電極間の距離(チャネル長)よりも短いことが好ましい。CNTの平均長さは、チャネル長によるが、好ましくは2μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。一般に市販されているCNTは長さに分布があり、チャネル長よりも長いCNTが含まれることがあるため、CNTをチャネル長よりも短くする工程を加えることが好ましい。例えば、硝酸、硫酸などによる酸処理、超音波処理、または凍結粉砕法などにより短繊維状にカットする方法が有効である。またフィルターによる分離を併用することは、純度を向上させる点でさらに好ましい。
【0122】
また、CNTの直径は特に限定されないが、1nm以上100nm以下が好ましく、より好ましくは50nm以下である。
【0123】
CNTを溶媒中に均一分散させ、分散液をフィルターによってろ過する工程を設けることが好ましい。フィルター孔径よりも小さいCNTを濾液から得ることで、チャネル長よりも短いCNTを効率よく得られる。この場合、フィルターとしてはメンブレンフィルターが好ましく用いられる。ろ過に用いるフィルターの孔径は、チャネル長よりも小さければよく、0.5~10μmが好ましい。
【0124】
上記のCNTを被覆する共役系重合体としては、ポリチオフェン系重合体、ポリピロール系重合体、ポリアニリン系重合体、ポリアセチレン系重合体、ポリ-p-フェニレン系重合体、ポリ-p-フェニレンビニレン系重合体、チオフェンユニットとヘテロアリールユニットを繰り返し単位中に有するチオフェン-ヘテロアリーレン系重合体などが挙げられ、これらを2種以上用いてもよい。上記重合体は、単一のモノマーユニットが並んだもの、異なるモノマーユニットをブロック共重合したもの、ランダム共重合したもの、また、グラフト重合したものなどを用いることができる。
【0125】
また、半導体層は、CNT複合体と有機半導体を混合して用いてもよい。有機半導体中にCNT複合体を均一に分散させることにより、有機半導体そのものの特性を維持しつつ、低ヒステリシスを実現することが可能となる。
【0126】
CNT複合体と有機半導体を含む半導体層中のCNT複合体の含有量は、有機半導体100質量部に対して0.01質量部以上3質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましい。
【0127】
有機半導体としては、具体的には、ポリ-3-ヘキシルチオフェン、ポリベンゾチオフェンなどのポリチオフェン類;ポリ(2,5-ビス(2-チエニル)-3,6-ジペンタデシルチエノ[3,2-b]チオフェン)、ポリ(4,8-ジヘキシル-2,6-ビス(3-ヘキシルチオフェン-2-イル)ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン)、ポリ(4-オクチル-2-(3-オクチルチオフェン-2-イル)チアゾール)、ポリ(5,5’-ビス(4-オクチルチアゾール-2-イル)-2,2’-ビチオフェン)などのチオフェンユニットを主鎖中に含む化合物;ポリピロール類;ポリ(p-フェニレンビニレン)などのポリ(p-フェニレンビニレン)類;ポリアニリン類;ポリアセチレン類;ポリジアセチレン類;ポリカルバゾール類;ポリフラン、ポリベンゾフランなどのポリフラン類;ピリジン、キノリン、フェナントロリン、オキサゾール、オキサジアゾールなどの含窒素芳香環を構成単位とするポリヘテロアリール類;アントラセン、ピレン、ナフタセン、ペンタセン、ヘキサセン、ルブレンなどの縮合多環芳香族化合物;フラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ピリジン、キノリン、フェナントロリン、オキサゾール、オキサジアゾールなどの複素芳香族化合物;4,4’-ビス(N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ)ビフェニルに代表される芳香族アミン誘導体;ビス(N-アリルカルバゾール)またはビス(N-アルキルカルバゾール)などのビスカルバゾール誘導体;ピラゾリン誘導体;スチルベン系化合物;ヒドラゾン系化合物;銅フタロシアニンなどの金属フタロシアニン類;銅ポルフィリンなどの金属ポルフィリン類;ジスチリルベンゼン誘導体;アミノスチリル誘導体;芳香族アセチレン誘導体;ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸ジイミド、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸ジイミドなどの縮合環テトラカルボン酸ジイミド類;メロシアニン、フェノキサジン、ローダミンなどの有機色素;などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0128】
半導体層は、他のカーボン材料を含んでもよい。ここで用いられる他のカーボン材料としては、グラフェン、フラーレンなどが挙げられる。
【0129】
半導体層は、さらに絶縁性材料を含んでもよい。ここで用いられる絶縁性材料としては、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどのポリマー材料が挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0130】
半導体層は単層でも複数層でもよい。半導体層の膜厚は1nm以上200nm以下が好ましく、100nm以下がさらに好ましい。この範囲の膜厚にすることにより、均一な薄膜形成が容易になり、さらにゲート電圧によって制御できないソース・ドレイン間電流を抑制し、FETのオンオフ比をより高くすることができる。膜厚は、原子間力顕微鏡やエリプソメトリ法などにより測定できる。
【0131】
<基板>
基板に用いる材料としては、少なくとも電極系が配置される面が絶縁性であればいかなる材質のものでもよい。例えば、シリコンウェハー、ガラス、サファイア、アルミナ焼結体等の無機材料;ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサン、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリパラキシレン等の有機材料などが好適に用いられる。
【0132】
また、例えばシリコンウェハー上にPVP膜を形成したものや、ポリエチレンテレフタレート上にポリシロキサン膜を形成したものなど、複数の材料が積層されたものであってもよい。
【0133】
<電極>
ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極に用いる材料としては、例えば、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)などの導電性金属酸化物;白金、金、銀、銅、鉄、錫、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、パラジウム、モリブデン、アモルファスシリコンやポリシリコンなどの金属やこれらの合金;ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質;ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン;ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体;ヨウ素などのドーピングなどで導電率を向上させた導電性ポリマーなど;炭素材料などの導電体が挙げられる。これらの材料は、単独で用いてもよいし、複数の材料を積層または混合して用いてもよい。
【0134】
導電体としては、銀、銅、金、白金、鉛、錫、ニッケル、アルミニウム、タングステン、モリブデン、酸化ルテニウム、クロム、チタン、カーボンおよびインジウムから選ばれた少なくとも1種を含む導電体が好ましく、中でも導電性粉末が好ましい。導電性粉末は単独、合金、あるいは混合粉末として用いることができる。
【0135】
これらの中でも導電性の観点から銀、銅および金が好ましく、コスト、安定性の観点から銀がより好ましい。加えて、塗布膜の低温キュア時の抵抗率低減の観点からは、銀とカーボンブラックを併用することがさらに好ましい。
【0136】
導電性粉末の体積平均粒子径は0.02μm以上10μm以下が好ましく、より好ましくは0.02μm以上5μm以下であり、さらに好ましくは0.02μm以上2μm以下である。
【0137】
体積平均粒子径が0.02μm以上であると導電性粉末同士の接触確率が向上し、作製される導電パターンの比抵抗値、および断線確率を低くすることができる。さらに、露光時の活性光線が膜中をスムーズに透過することができるため、微細なパターニングが容易となる。
【0138】
また体積平均粒子径が10μm以下であれば印刷後の回路パターンの表面平滑度、パターン精度、寸法精度が向上する。また、パターンの薄膜化には、粒子径の低減が必要である。例えば膜厚2μmのアンテナを形成する場合、導電性粉末の粒子径も2μm以下でなければならない。
【0139】
なお、体積平均粒子径は、電極断面の3D-走査型電子顕微鏡(SEM)や3D-透過型電子顕微鏡(TEM)像から算出することができる。
【0140】
さらに、各電極は導電性粉末および有機バインダーを含むことが好ましい。有機バインダーは感光性有機成分を含むことが、さらに好ましい。
【0141】
有機バインダーを有することで、電極上における半導体溶液の塗布性が向上し、有機半導体およびカーボン材料が平滑に塗布された、より均一な半導体層を形成することが可能になる。また、有機バインダーが感光性有機成分を含むことで、レジストを用いずフォトリソグラフィーによる電極のパターン加工ができ、より生産性を向上させることが可能になる。
【0142】
電極が有機バインダーを有する場合、導電性粉末の含有量は、電極材料の全質量に対し、70質量%以上95質量%以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上90質量%以下である。含有量が70質量%以上であることにより、導電性粉末同士の接触面積が増大し、作製される導電パターンの比抵抗値、および断線確率を低くすることができる。また、含有量が95質量%以下であることにより、特に露光時の活性光線が膜中をスムーズに透過することができ、微細なパターニングが容易となる。
【0143】
感光性有機成分は、分子内に重合性不飽和基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマーおよび/またはこれらの付加反応体を含むものである。
【0144】
分子内に重合性不飽和基を有するモノマーとしては、活性な炭素-炭素不飽和二重結合を有する化合物を用いることができる。官能基として、ビニル基、アリル基、アクリレート基、メタクリレート基およびアクリルアミド基から選ばれた基を有する単官能化合物および多官能化合物が応用できる。これらを1種または2種以上使用することができる。
【0145】
上記モノマーは、電極材料の全質量部に対し、1質量%~15質量%の範囲で含まれることが好ましく、より好ましくは、2質量%~10質量%の範囲内である。上記モノマーが1質量%未満の場合、感度が低下し、良好なパターン形成が困難になる。一方、上記モノマー15質量%を越えると、乾燥膜にタックが生じ、露光時にフォトマスクが接触し、フォトマスクが汚れる問題や塗膜表面が乱れる問題を生じる。
【0146】
分子内に重合性不飽和基を有するオリゴマーもしくはポリマーは、オリゴマーもしくはポリマーに対して、重合性不飽和基を側鎖または分子末端に付加させることによって得ることができる。
【0147】
好ましい重合性不飽和基は、エチレン性不飽和基を有するものである。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。
【0148】
このような側鎖をオリゴマーもしくはポリマーに付加させる方法としては、オリゴマーもしくはポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドを付加反応させて作る方法がある。グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドは、オリゴマーもしくはポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して0.05モル等量~1モル等量付加させることが好ましい。
【0149】
電極付き基板を折り曲げた際のパターン剥がれを抑制する効果をより高める観点から、前記オリゴマーもしくはポリマーは、水酸基を側鎖に持つオリゴマーもしくはポリマーにイソシアネート基を有する化合物を反応させたウレタン変性化合物を含むことが好ましい。
【0150】
分子内に重合性不飽和基を有するオリゴマーもしくはポリマーは、質量平均分子量(Mw)が2000~200000の範囲内、数平均分子量(Mn)が1000~50000の範囲内であることが好ましく、より好ましくはMwが5000~100000の範囲内、Mnが1000~30000の範囲内である。MwおよびMnが上記範囲内であることで、取扱性が良好で、光硬化時に均一な硬化性を得ることができる。
【0151】
電極材料は光硬化するために、光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤は、光硬化に使用される光源によって選択され、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤等が使用できる。
【0152】
光重合開始剤は、電極材料の全質量部に対し、0.05質量%~10質量%の範囲内で含まれることが好ましく、より好ましくは、0.1質量%~10質量%である。光重合開始剤の量が少なすぎると光硬化不足となり、光重合開始剤の量が多すぎる場合には相溶性が不良になる恐れがある。
【0153】
光重合開始剤と共に増感剤を使用することで感度を向上させ、反応に有効な波長範囲を拡大することができる。電極材料が増感剤を含む場合、その含有量は感光性有機成分に対して0.05質量%~10質量%が好ましく、より好ましくは0.1質量%~10質量%である。増感剤の量が少なすぎれば光硬化を向上させる効果が発揮されず、増感剤の量が多すぎれば、相溶性が不良になる恐れがある。
【0154】
電極材料は、その所望の特性を損なわない範囲で、有機バインダーとして、分子内に不飽和二重結合を有しない非感光性ポリマー、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、シランカップリング剤、消泡剤、顔料等の添加剤を含むこともできる。非感光性ポリマーの具体例としてはエポキシ樹脂、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド前駆体、ポリイミドなどが挙げられる。
【0155】
電極の形成方法としては、抵抗加熱蒸着、電子線ビーム、スパッタリング、メッキ、CVD、イオンプレーティングコーティング、インクジェット、印刷などの公知技術を用いた方法や、前記有機成分および導電体を含むペーストをスピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法などの公知の技術で絶縁基板上に塗布し、オーブン、ホットプレート、赤外線などを用いて乾燥を行い形成する方法などが挙げられる。導通を取ることができれば特に制限されない。
【0156】
電極をペーストの塗布により形成する場合、ペースト形成のために、有機溶剤を含有しても構わない。有機溶剤を用いることで、ペーストの粘度調整を行うことができ、塗布膜の表面平滑性を向上できる。
【0157】
電極の幅、厚み、間隔は任意である。電極幅は5μm~1mm、厚みは0.01μm~100μm、電極の間隔は1μm~500μmが好ましいが、これらに限られない。
【0158】
電極をパターン状に形成する方法としては、上記方法で作製した電極薄膜を公知のフォトリソグラフィー法などで所望の形状にパターン形成してもよいし、あるいは電極、配線および接続部物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターン形成してもよい。また、インクジェットや印刷法を用いて直接パターンを形成してもよい。
【0159】
電極パターンは、それぞれ別々に加工して形成してもよいし、それらのうちの少なくとも2つを一括して加工して形成してもよい。加工工程の低減、およびパターンの接続の観点からは、電極パターンを一括して加工することが好ましい。
【0160】
<電界効果型トランジスタ>
図1および図2は、本発明の実施の形態に係るFETの例を示す模式断面図である。図1では、ゲート絶縁層3で覆われたゲート電極2を有する基板1上に、ソース電極5およびドレイン電極6が形成され、さらにその上に半導体層4が形成されている。図2では、ゲート絶縁層3で覆われたゲート電極2を有する基板1上に半導体層4が形成され、さらにその上にソース電極5およびドレイン電極6が形成されている。
【0161】
FETは、ソース電極とドレイン電極との間に流れる電流を、ゲート電圧を変化させることによって制御することができる。FETの移動度は、下記の(b)式を用いて算出することができる。
【0162】
μ=(δId/δVg)L・D/(W・ε・ε・Vsd) (b)
ただしId(A)はソース・ドレイン間の電流、Vsd(V)はソース・ドレイン間の電圧、Vg(V)はゲート電圧、D(m)は絶縁層の厚み、L(m)はチャネル長、W(m)はチャネル幅、εはゲート絶縁層の比誘電率、εは真空の誘電率(8.85×10-12F/m)である。
【0163】
Vg=-20VにおけるIdの値を、オン電流とした。
【0164】
また、あるマイナスのゲート電圧におけるIdの値と、あるプラスのゲート電圧におけるIdの値の比からオンオフ比を求めることができる。
【0165】
ヒステリシスは、Vgを正から負へと印加した際のId=10-8Aにおけるゲート電圧Vgと、Vgを負から正へと印加した際のId=10-8Aにおけるゲート電圧Vgとの差の絶対値|Vg-Vg|から求めることができる。
【0166】
しきい値電圧は、Id-Vgグラフにおける線形部分の延長線とVg軸との交点から求めることができる。また、Vg=-20Vにおけるゲート電流値をリーク電流とした。
【0167】
<FETの製造方法>
本発明のFETの製造方法は、
(1)基板上にゲート電極となる導電性パターンを形成する工程、
(2)少なくとも、無機粒子が結合したポリマーを含む溶液を、前記導電性パターンが形成された基板上に塗布および乾燥し、コーティング膜を得る工程、
(3)該コーティング膜、もしくは、それを硬化してなるゲート絶縁層の上に、カーボンナノチューブを含む半導体層、ならびに、ソース電極およびドレイン電極となる導電性パターンを、お互いに接するように形成する工程、
を含む。
【0168】
また、本発明のFETの製造方法は、さらに、上記無機粒子が結合したポリマーを含む溶液が、感光性有機成分を含み、
(4)前記無機粒子が結合したポリマーおよび感光性有機成分を含む溶液を、前記導電性パターンが形成された基板上に塗布および乾燥して得られた膜に、フォトマスクを介して活性化学線を照射した後、アルカリ溶液を用いて、前記導電性パターン上に開口部を有する絶縁性パターンを形成する工程、
(5)前記絶縁性パターンを加熱して、開口部を有するゲート絶縁層を形成する工程、
を含むことが好ましい。
【0169】
以下に、図1の構成で示されるFETの製造方法を説明する。なお、製造方法は下記に限定されるものではない。
【0170】
まず、基板1上にゲート電極2となる導電性パターンを形成する。形成方法は、例えば金属蒸着やスピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコート法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法などの公知の方法が挙げられる。なお、導電性パターンを形成するにあたっては、マスクなどを用いて直接パターン形成してもよいし、形成したゲート電極上にレジストを塗布し、レジスト膜を所望のパターンに露光および現像した後、エッチングすることによりゲート電極をパターニングすることも可能である。さらに、感光性有機成分を有する導電性ペーストを用いる場合、レジストを用いなくても、フォトリソグラフィーによりゲート電極をパターニングすることが可能である。
【0171】
次に上記導電性パターンが形成された基板上にゲート絶縁層3を形成する。ゲート絶縁層3の形成方法としては、少なくとも、無機粒子が結合したポリマーを含む溶液を、基板上に塗布し、乾燥してコーティング膜を得た後、該コーティング膜を加熱して硬化させることにより、ゲート絶縁層3を形成することができる。
【0172】
無機粒子が結合したポリマーを含む溶液を塗布する方法としては、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコート法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法などの公知の塗布方法が挙げられる。
【0173】
無機粒子が結合したポリマーを含む溶液は、塗布工程に供するにあたって、溶媒を含むことができる。溶媒としては、特に限定されないが、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノt-ブチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、乳酸エチル等のアセテート類;アセチルアセトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノンのケトン類;3-メチル-3-メトキシブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。これら溶媒は単独あるいは2種以上含まれても構わない。
【0174】
コーティング膜を得る際の、乾燥温度は50~150℃が好ましく、60~140℃がより好ましく、70℃~130℃がさらに好ましく、80℃~120℃が特に好ましい。乾燥温度がこの範囲であることにより、コーティング膜からの溶媒の除去、および、後述のパターニング時に所望の形状に加工することがより容易になる観点から好ましい。乾燥時間は0.5~5分が好ましく、1~3分がより好ましい。乾燥時間がこの範囲であることにより、コーティング膜からの溶媒の除去、および、後述のパターニング時に所望の形状に加工することがより容易になる観点から好ましい。
【0175】
さらに、コーティング膜を硬化させてゲート絶縁層を得るための、コーティング膜の熱処理の温度は、100~300℃の範囲が好ましく、120~250℃がより好ましく、140℃~200℃がさらに好ましく、150℃~180℃が特に好ましい。熱処理温度がこの範囲であることにより、十分に硬化したゲート絶縁層が得られ、かつ、プラスチック基板上への絶縁層の形成という観点から、200℃以下であることがさらに好ましい使用時における基板の収縮をより抑制することができる。コーティング膜の熱処理の時間は、0.5~60分が好ましく、5~30分がより好ましい。熱処理時間がこの範囲であることにより、十分に硬化したゲート絶縁層が得られ、かつ、プラスチック基板上への絶縁層の形成という観点から、短時間の熱処理であることがさらに好ましい使用時における基板の収縮をより抑制することができる。
【0176】
上記のようにしてゲート絶縁層を得る過程で、必要に応じて、コーティング膜または絶縁層にパターニングを施すことができる。本発明のFETを組み合わせた回路を形成する際は、絶縁層下部に存在する導電性パターンから導通を取るために、導電性パターン上に開口部(コンタクトホール)を有するパターンを形成する必要がある場合がある。
【0177】
感光性有機成分を含有する組成物を用いたコーティング膜のパターン形成方法について説明する。コーティング膜の上方から所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射(露光)する。露光に用いられる化学線としては、紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を利用することが好ましい。次に、露光したコーティング膜を現像する。現像液としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、トリエチルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。これらのアルカリ性化合物を、1種あるいは2種以上含有してもよい。また、これらのアルカリ水溶液に、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン等の極性溶媒、イソプロパノール等のアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、シクロペンタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などを混合して用いることも可能である。現像後は通常、水でリンス処理するが、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類等を水に加えてリンス処理してもよい。
【0178】
またゲート絶縁層上にレジストを塗布し、レジスト膜を所望のパターンに露光および現像した後、フッ酸等のエッチング液で処理することによりゲート絶縁層をパターニングすることも可能である。この方法であれば、ゲート絶縁層が感光性有機成分を含有しない組成物からなる場合であってもパターニングが可能である。しかし、工程数が増加するため、感光性有機成分を有する絶縁層材料を用いてゲート絶縁層をパターニングする方が、生産性に優れる観点から好ましい。さらに、得られるゲート絶縁層の耐クラック性向上の観点から、感光性有機成分は、光によりラジカルを発生する化合物およびラジカル重合性化合物、または光により酸を発生する化合物としてジアゾナフトキノン化合物を含むことが好ましい。
【0179】
次に、ゲート絶縁層上にソース電極5およびドレイン電極6となる導電性パターンを形成する。ソース電極5およびドレイン電極6を形成する方法としては、ゲート電極2同様、例えば金属蒸着、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコート法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法などの公知の方法が挙げられる。なお、導電性パターンを形成するにあたっては、マスクなどを用いて直接パターン形成してもよいし、形成した電極上にレジストを塗布し、レジスト膜を所望のパターンに露光および現像した後、エッチングすることによりソース電極およびドレイン電極をパターニングすることも可能である。さらに、感光性有機成分を有する導電性ペーストを用いる場合、レジストを用いず導電性ペーストのみから、フォトリソグラフィーによりゲート電極をパターニングすることもまた可能である。
【0180】
次に、ソース電極およびドレイン電極を形成したゲート絶縁層上に半導体層4を形成することにより、FETが得られる。半導体層4の形成方法としては、抵抗加熱蒸着、電子線、スパッタリング、CVDなど乾式の方法を用いることも可能であるが、製造コストや大面積への適合の観点から塗布法を用いることが好ましい。塗布法としては、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコート法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法などの公知の塗布方法が挙げられる。塗膜厚み制御や配向制御など、得ようとする塗膜特性に応じて塗布方法を選択できる。これらの方法を用いて、半導体層と、ソース電極5およびドレイン電極6となる導電性パターンとが、お互いに接するように半導体層を形成する。
【0181】
特に、CNTを含有する半導体層を形成する場合は、CNTを含む溶液を塗布法を用いて、ゲート絶縁層上に塗布することが好ましい。この場合、塗布法の中でも、インクジェット法を用いることが、溶液の使用量を削減し、生産性を高めることができる点で優れている。CNTを含む溶液は、超音波ホモジナイザーなど公知の分散装置を用いた撹拌処理によって、CNTを溶媒中で撹拌することにより作製することができる。
【0182】
半導体層を塗布法を用いて形成する場合、形成した塗膜に対して、大気下、減圧下または不活性ガス(窒素やアルゴン)雰囲気下で乾燥処理を行う。乾燥温度は50~150℃が好ましい。
【0183】
ゲート絶縁層3と半導体層4の間に配向性層を、上記ゲート絶縁層材料のコーティング膜を形成する方法と同様の方法にて形成する工程を追加してもよい。また、半導体層4に対してゲート絶縁層3と反対側に第2絶縁層を、前記半導体層4と同様の方法にて形成する工程を追加してもよい。
【0184】
本発明のFETは、薄膜FET、光起電力素子、スイッチング素子、これらを用いたディスプレイ、無線通信装置、商品タグなどの各種デバイスに有利に用いることができる。
【0185】
<無線通信装置>
本発明のFETを有する無線通信装置について説明する。この無線通信装置は、例えば、非接触型タグであるRFID(Radio Frequency IDentification)のような、リーダ/ライタに搭載されたアンテナから送信される搬送波を受信することで電気通信を行う装置である。具体的な動作は、例えばリーダ/ライタに搭載されたアンテナから送信された無線信号を、RFIDタグのアンテナが受信し、整流回路により直流電流に変換されRFIDタグが起電する。次に、起電されたRFIDタグは、無線信号からコマンドを受信し、コマンドに応じた動作を行う。その後、コマンドに応じた結果の回答をRFIDタグのアンテナからリーダ/ライタのアンテナへ無線信号として送信する。なお、コマンドに応じた動作は復調回路、制御回路、変調回路等によって実行される。
【0186】
本発明の無線通信装置は、上述のFETと、アンテナと、を少なくとも有するものである。より具体的な構成としては、例えば図3に示すように、アンテナ10で受信した外部からの変調波信号の整流を行い、各部に電源を供給する電源生成部15、上記変調波信号を復調して制御回路へ送る復調回路11、制御回路から送られたデータを変調してアンテナに送り出す変調回路13、復調回路11で復調されたデータの記憶回路14への書込みおよび記憶回路14からデータを読み出して変調回路13への送信を行う制御回路12で構成され、各回路部が電気的に接続された無線通信装置が挙げられる。前記復調回路、制御回路、変調回路、記憶回路は上述のFETから構成され、さらにコンデンサ、抵抗素子、ダイオード等を含んでいても良い。なお前記記憶回路は、さらにEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、FeRAM(Ferroelectric Randam Access Memory)等の不揮発性の書換え可能な記憶部を有していてもよい。なお、前記電源生成部はコンデンサおよびダイオードから構成される。
【0187】
アンテナ、コンデンサ、抵抗素子、ダイオードおよび不揮発性の書き換え可能な記憶部は一般的に使用されるものであればよく、用いられる材料および形状は特に限定はされない。またそれぞれを電気的に接続する材料も、一般的に使用されうる導電材料であればいかなるものでもよい。接続方法も電気的に導通を取ることができれば、いかなる方法でもよく、接続部の幅および厚みは任意である。
【0188】
<商品タグ>
本発明の無線通信装置を用いた商品タグについて説明する。この商品タグは、例えば基体と、この基体によって被覆された上記無線通信装置を有している。
【0189】
基体は、例えば、平板状に形成された紙などの非金属材料によって形成されている。例えば、基体は2枚の平板状の紙を貼り合わせた構造をしており、この2枚の紙の間に上記無線通信装置が配置されている。上記無線記憶装置の記憶回路に、例えば商品を個体識別する個体識別情報が予め格納されている。
【0190】
この商品タグとリーダ/ライタとの間で、無線通信を行う。リーダ/ライタとは、無線により商品タグに対するデータの読み取りおよび書き込みを行う装置であり、商品の流通過程や決済時に、商品タグとデータのやり取りを行うものである。リーダ/ライタは公知のものが利用でき、例えば、携帯型のものや、レジに設置される固定型のものがある。
【0191】
具体的には、商品タグは個体識別情報の送信を要求する所定のリーダ/ライタからのコマンドに応じ、記憶している個体識別情報を無線により返信する識別情報返信機能を備えている。これにより、例えば商品の精算レジにおいて、非接触で多数の商品を同時に識別することが可能となり、バーコードでの識別と比較すると決済処理の容易化や迅速化を図ることができる。
【0192】
例えば、商品の会計の際には、リーダ/ライタが商品タグから読み取った商品情報をPOS(Pointof sale system、販売時点情報管理)端末に送信すると、POS端末においてその商品情報によって特定される商品の販売登録がなされるといったことが可能となる。
【実施例
【0193】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されない。なお、実施例中における各評価法を以下の(1)~(9)で説明する。
【0194】
(1)コーティング膜の作製
6インチシリコンウェハー、5cmガラス基板および5cmアルミ基板上に、ゲート絶縁材料をスピンコーターを用いて、乾燥後の膜厚が特に断りがない限り400nmとなるように塗布し、次いでホットプレ-トを用いて、110℃で2分乾燥し、コーティング膜を得た。
【0195】
(2)-1 ゲート絶縁層の作製(a)
絶縁材料のうち、ラジカル重合性化合物を有さない材料については、以下の方法でゲート絶縁層を作製した。上記(1)記載の方法で作製した各基板上に形成されたコーティング膜を、2.38質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液(三菱ガス化学(株)製、ELM-D)で60秒現像し、次いで純水でリンスした。ホットプレ-トを用いて180℃60分加熱処理することにより、ゲート絶縁層を得た。
【0196】
(2)-2 ゲート絶縁層の作製(b)
絶縁材料のうち、ラジカル重合性化合物を有する材料を用いた場合については、以下の方法でゲート絶縁層を作製した。上記(1)記載の方法で作製した各基板上に形成されたコーティング膜を、i線ステッパー(GCA製DSW-8000)にセットし、100~800mJ/cmの露光量にてコーティング膜全面を露光した。露光後、2.38質量%のTMAH水溶液(三菱ガス化学(株)製、ELM-D)で60秒現像し、次いで純水でリンスした。この膜を、ホットプレ-トを用いて180℃60分加熱処理することにより、ゲート絶縁層を得た。
【0197】
(3)元素分析
測定したい膜に超高真空中において軟X線を照射し、表面から放出される光電子を検出するX線光電子分光(PHI社製 QuanteraSXM)により膜中の元素情報および元素量を分析した。
【0198】
(4)ゲート絶縁層の比誘電率の測定
上記(2)記載の方法で作製したアルミ基板上の絶縁層上に、さらに直径5mmの円形のアルミ電極を蒸着形成した。この膜を、精密インピーダンスアナライザー(Agilent製、4294A型)を使用し、25℃、1MHzで静電容量を測定した。以上の条件と測定値を元に、(a)式に従いゲート絶縁層の比誘電率εを求めた。
【0199】
(5)無機粒子の数平均粒子径の測定
上記(2)記載の方法で作製したシリコンウェハー上の絶縁層について、基板を割ることで絶縁層の断面を露出させ、走査型電子顕微鏡(SEM、(株)日立ハイテクノロジーズ社製 S-4800)を使用し、拡大倍率を200,000倍として、絶縁層断面を直接観察することにより以下のように測定した。粒子の最も長い径(以下、「長軸径」)および長軸径と直交する方向において最も長い径(以下、「短軸径」)を測定し、長軸径と短軸径を平均した、二軸平均径をその粒子の粒子径とする。この粒子径測定を無作為に選んだ20個の粒子について行い、その算術平均を数平均粒子径として求めた。
【0200】
(6)無機粒子の体積分率の測定
精密電子天秤を利用した密度測定に基づき、以下のように体積分率を測定した。まず、無機粒子が結合したポリマーの合成時、無機粒子を未添加のポリマーも合成し、それぞれのポリマーを別々に用いて上記(2)記載の方法で絶縁層を作製した。この際、塗布前後の基板の質量変化差分と塗布面積/絶縁層の厚さから膜の密度を求めた。その後、無機粒子が結合していないポリマーを使用した絶縁層の密度と、無機粒子そのものの密度と、無機粒子が結合したポリマーを使用した絶縁層の密度から、無機粒子の体積分率を計算した。
【0201】
(7)ゲート絶縁層の厚さの測定
光干渉式膜厚測定装置であるラムダエースSTM-602(大日本スクリーン製造(株)製)を使用し、屈折率1.70で基板上の面内10点を測定し、その算術平均をゲート絶縁層の厚さとして求めた。
【0202】
(8)半導体溶液塗布性の評価
接触角計(協和界面科学(株)製、CA-D型)を使用し、室温下で直径1.5mmの、半導体溶液の液滴を針先に作り、これを、上記(2)記載の方法で作製した6インチシリコンウェハー上のゲート絶縁層に触れさせて、液滴を作った。この時に生ずる液滴と面との角度を測定し、接触角とした。これを下記のように判定し、A+、A、BおよびCを半導体溶液の塗布性良好につき合格とした。
A+:接触角が7°以上9°未満
A:接触角が6°以上7°未満または9°以上10°未満
B:接触角が5°以上6°未満または10°以上12°未満
C:接触角が4°以上5°未満または12°以上15°未満
D:接触角が3°以上4°未満または15°以上20°未満
E:接触角が3°未満または20°以上。
【0203】
(9)FET特性の評価
作製したFETについて、ゲート電圧(Vg)を変えたときのソース・ドレイン間電流(Id)-ソース・ドレイン間電圧(Vsd)特性を測定した。測定には半導体特性評価システム4200-SCS型(ケースレーインスツルメンツ(株)製)を用い、大気中(気温20℃、湿度35%)で測定した。Vg=-20Vにおけるドレイン電流値からオン電流を求めた。これを下記のように判定し、A+、A、BおよびCを高オン電流につき合格とした。
A+:オン電流が100μA以上
A:オン電流が100μAより小さく、50μA以上
B:オン電流が50μAより小さく、20μA以上
C:オン電流が20μAより小さく、5μA以上
D:オン電流が5μAより小さく、1μA以上
E:オン電流が1μAより小さい。
また、Vg=-20Vにおけるゲート電流値からリーク電流を求めた。これを下記のように判定し、A+、A、BおよびCを低リーク電流につき合格とした。
A+:リーク電流が10pA以下
A:リーク電流が10pAより大きく、20pA以下
B:リーク電流が20pAより大きく、35pA以下
C:リーク電流が35pAより大きく、50pA以下
D:リーク電流が50pAより大きく、100pA以下
E:リーク電流が100pAより大きい。
【0204】
実施例1
(1)半導体溶液の作製
ポリ-3-ヘキシルチオフェン(P3HT、アルドリッチ社製、レジオレギュラー、数平均分子量(Mn):13000)0.10gをクロロホルム5mlの入ったフラスコの中に加え、超音波洗浄機(井内盛栄堂(株)製US-2、出力120W)中で超音波撹拌することによりP3HTのクロロホルム溶液を得た。次いでこの溶液をスポイトにとり、メタノール20mlと0.1規定塩酸10mlの混合溶液の中に0.5mlずつ滴下して、再沈殿を行った。固体になったP3HTを0.1μm孔径のメンブレンフィルター(PTFE社製:4フッ化エチレン)によって濾別捕集し、メタノールでよくすすいだ後、真空乾燥により溶媒を除去した。さらにもう一度溶解と再沈殿を行い、90mgの再沈殿P3HTを得た。
【0205】
次に、CNT(CNI社製、単層CNT、純度95%)1.5mgと、上記P3HT1.5mgを15mlのクロロホルム中に加え、氷冷しながら超音波ホモジナイザー(東京理化器械(株)製VCX-500)を用いて出力250Wで30分間超音波撹拌した。超音波照射を30分行った時点で一度照射を停止し、P3HTを1.5mg追加し、さらに1分間超音波照射することによって、CNTの表面にP3HTが付着したCNT複合体を含むCNT分散液A(溶媒に対するCNT複合体濃度0.1g/l)を得た。
【0206】
次に、半導体層4を形成するための半導体溶液の作製を行った。上記CNT分散液Aをメンブレンフィルター(孔径10μm、直径25mm、ミリポア社製オムニポアメンブレン)を用いてろ過を行い、長さ10μm以上のCNT複合体を除去した。得られたろ液5mlにジクロロベンゼン45mlを加え、半導体溶液A(溶媒に対するCNT複合体濃度0.01g/l)とした。
【0207】
(2)無機粒子が結合したポリシロキサン(PS-01)の合成
三口フラスコにメチルトリメトキシシラン(MeSi)を10.90g(0.08mol)、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物(SucSi)を5.25g(0.02mol)、1-ナフチルトリメトキシシラン(NapSi)を24.84g(0.10mol)、20.6質量%の酸化チタン-酸化ケイ素複合粒子メタノール分散液である“オプトレイク(登録商標)”TR-550(日揮触媒化成(株)製)を133.68g(オルガノシランが完全縮合した場合の質量(27.54g)100質量部に対して、粒子含有量100質量部)、ジアセトンアルコール(DAA、沸点168℃)を102.28g仕込み、室温で撹拌しながら水11.16gにリン酸0.205g(仕込みモノマーに対して0.50質量%)を溶かしたリン酸水溶液を10分間かけて添加した。その後、フラスコを40℃のオイルバスに浸けて60分間撹拌した後、オイルバスを30分間かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱撹拌した(内温は100~110℃)。加熱撹拌して得られた樹脂溶液を氷浴にて冷却した後、陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂を、それぞれ樹脂溶液に対して2重量%加えて12時間撹拌した。撹拌後、陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂をろ過して除去し、無機粒子が結合したポリシロキサン(PS-01)の溶液を得た。なお、昇温および加熱撹拌中、窒素を0.05l(リットル)/分で流した。反応中に副生成物であるメタノール、水が合計121.19g留出した。得られた、無機粒子が結合したポリシロキサンの溶液PS-01の固形分濃度は33質量%であった。
【0208】
(3)ナフトキノンジアジド化合物(QD-01)の合成
乾燥窒素気流下、Ph-cc-AP-MF(商品名、本州化学工業(株)製)15.32g(0.05mol)と5-ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド37.62g(0.14mol)を1,4-ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4-ジオキサン50gと混合させたトリエチルアミン15.58g(0.154mol)を系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間撹拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、濾液を水に投入した。その後、析出した沈殿を濾過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、下記構造のキノンジアジド化合物(QD-01)を得た。
【0209】
(4)絶縁材料溶液の作製
無機粒子が結合したポリシロキサンの溶液(PS-01)69.49g、キノンジアジド化合物(QD-01)2.06g、DFX-18(フッ素系界面活性剤、(株)ネオス製)を100ppm、DAA100.06g、PGMEA36.65gを黄色灯下で混合、撹拌して均一溶液とした後、0.20μmのフィルターで濾過して絶縁材料溶液(固形分濃度12質量%)を得た。
【0210】
【化4】
【0211】
(5)FETの作製
図1に示すFETを作製した。ガラス製の基板1(膜厚0.7mm)上に、抵抗加熱法により、マスクを通して金を50nm真空蒸着し、ゲート電極2を形成した。次に上記(4)に記載の方法で作製した絶縁材料溶液を上記ゲート電極2が形成されたガラス基板上にスピンコート塗布(800rpm×20秒)し、110℃で2分間熱処理後、2.38質量%のTMAH水溶液(三菱ガス化学(株)製、ELM-D)で60秒現像した。次いで純水でリンスし、ホットプレ-トを用いて180℃60分加熱処理することによって、膜厚400nmのゲート絶縁層3を形成した。次に、ゲート絶縁層3上に、抵抗加熱法により、金を膜厚50nmになるように真空蒸着し、その上にフォトレジスト(商品名「LC140-10cP」、ローム・アンド・ハース(株)製)をスピンコート塗布(1000rpm×20秒)し、100℃で10分加熱乾燥した。作製したフォトレジスト膜をパラレルライトマスクアライナー(キヤノン(株)製PLA-501F)を用いて、マスクを介してパターン露光した後、自動現像装置(滝沢産業(株)製AD-2000)を用いて2.38質量%TMAH水溶液であるELM-D(商品名、三菱ガス化学(株)製)で60秒間シャワー現像し、次いで水で30秒間洗浄した。その後、AURUM-302(商品名、関東化学(株)製)で5分間エッチング処理した後、水で30秒間洗浄した。AZリムーバ100(商品名、メルクパフォーマンスマテリアルズ(株)製)に5分間浸漬してレジストを剥離し、水で30秒間洗浄後、120℃で20分間加熱乾燥することでソース電極5およびドレイン電極6を形成した。
【0212】
これら両電極の幅(チャネル幅)は100μm、両電極の間隔(チャネル長)は10μmとした。電極が形成された基板上に上記(1)に記載の方法で作製した半導体溶液Aをインクジェット装置(クラスターテクノロジー(株)製)を用いて400pl滴下し、ホットプレート上で窒素気流下、150℃で30分の熱処理を行い、半導体層4を形成し、FETを得た。得られたFETを用い、上記評価法(1)~(9)に従い評価を行った。
【0213】
実施例2
無機粒子が結合したポリシロキサンを、以下に示す手順で合成し用いた以外は、実施例1と同様にしてFETを作製し、評価した。
【0214】
三口フラスコにMeSiを10.90g(0.08mol)、SucSiを5.25g(0.02mol)、NapSiを24.84g(0.10mol)、20.6質量%のTR-550を33.42g(オルガノシランが完全縮合した場合の質量(27.54g)100質量部に対して、粒子含有量25質量部)、DAAを63.93g仕込み、室温で撹拌しながら水11.16gにリン酸0.205g(仕込みモノマーに対して0.50質量%)を溶かしたリン酸水溶液を10分間かけて添加した。その後、フラスコを40℃のオイルバスに浸けて60分間撹拌した後、オイルバスを30分間かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱撹拌した(内温は100~110℃)。加熱撹拌して得られた樹脂溶液を氷浴にて冷却した後、陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂を、それぞれ樹脂溶液に対して2重量%加えて12時間撹拌した。撹拌後、陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂をろ過して除去し、無機粒子が結合したポリシロキサン(PS-02)の溶液を得た。なお、昇温および加熱撹拌中、窒素を0.05l(リットル)/分で流した。反応中に副生成物であるメタノール、水が合計45.16g留出した。得られた、無機粒子が結合したポリシロキサンの溶液PS-02の固形分濃度は33質量%であった。
【0215】
実施例3
無機粒子が結合したポリシロキサンを、以下に示す手順で合成し用いた以外は、実施例1と同様にしてFETを作製し、評価した。
【0216】
三口フラスコにMeSiを10.90g(0.08mol)、SucSiを5.25g(0.02mol)、NapSiを24.84g(0.10mol)、20.6質量%のTR-550を200.52g(オルガノシランが完全縮合した場合の質量(27.54g)100質量部に対して、粒子含有量150質量部)、DAAを127.85g仕込み、室温で撹拌しながら水11.16gにリン酸0.205g(仕込みモノマーに対して0.50質量%)を溶かしたリン酸水溶液を10分間かけて添加した。その後、フラスコを40℃のオイルバスに浸けて60分間撹拌した後、オイルバスを30分間かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱撹拌した(内温は100~110℃)。加熱撹拌して得られた樹脂溶液を氷浴にて冷却した後、陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂を、それぞれ樹脂溶液に対して2重量%加えて12時間撹拌した。撹拌後、陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂をろ過して除去し、無機粒子が結合したポリシロキサン(PS-03)の溶液を得た。なお、昇温および加熱撹拌中、窒素を0.05l(リットル)/分で流した。反応中に副生成物であるメタノール、水が合計171.88g留出した。得られた無機粒子が結合したポリシロキサンの溶液PS-03の固形分濃度は33質量%であった。
【0217】
実施例4
無機粒子が結合したポリシロキサンを、以下に示す手順で合成し用いた以外は、実施例1と同様にしてFETを作製し、評価した。
【0218】
三口フラスコにMeSiを10.90g(0.08mol)、SucSiを5.25g(0.02mol)、NapSiを24.84g(0.10mol)、20.6質量%のTR-550を267.36g(オルガノシランが完全縮合した場合の質量(27.54g)100質量部に対して、粒子含有量200質量部)、DAAを153.42g仕込み、室温で撹拌しながら水11.16gにリン酸0.205g(仕込みモノマーに対して0.50質量%)を溶かしたリン酸水溶液を10分間かけて添加した。その後、フラスコを40℃のオイルバスに浸けて60分間撹拌した後、オイルバスを30分間かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱撹拌した(内温は100~110℃)。加熱撹拌して得られた樹脂溶液を氷浴にて冷却した後、陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂を、それぞれ樹脂溶液に対して2重量%加えて12時間撹拌した。撹拌後、陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂をろ過して除去し、無機粒子が結合したポリシロキサン(PS-04)の溶液を得た。なお、昇温および加熱撹拌中、窒素を0.05l(リットル)/分で流した。反応中に副生成物であるメタノール、水が合計222.56g留出した。得られた、無機粒子が結合したポリシロキサンの溶液PS-04の固形分濃度は33質量%であった。
【0219】
実施例5
無機粒子が結合したポリシロキサンを、以下に示す手順で合成し用いた以外は、実施例1と同様にしてFETを作製し、評価した。
【0220】
三口フラスコにMeSiを10.90g(0.08mol)、SucSiを5.25g(0.02mol)、NapSiを24.84g(0.10mol)、20.6質量%のTR-550を401.03g(オルガノシランが完全縮合した場合の質量(27.54g)100質量部に対して、粒子含有量300質量部)、DAAを204.57g仕込み、室温で撹拌しながら水11.16gにリン酸0.205g(仕込みモノマーに対して0.50質量%)を溶かしたリン酸水溶液を10分間かけて添加した。その後、フラスコを40℃のオイルバスに浸けて60分間撹拌した後、オイルバスを30分間かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱撹拌した(内温は100~110℃)。加熱撹拌して得られた樹脂溶液を氷浴にて冷却した後、陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂を、それぞれ樹脂溶液に対して2重量%加えて12時間撹拌した。撹拌後、陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂をろ過して除去し、無機粒子が結合したポリシロキサン(PS-05)の溶液を得た。なお、昇温および加熱撹拌中、窒素を0.05l(リットル)/分で流した。反応中に副生成物であるメタノール、水が合計323.93g留出した。得られた、無機粒子が結合したポリシロキサンの溶液PS-05の固形分濃度は33質量%であった。
【0221】
実施例6
無機粒子が結合したポリシロキサンを、以下に示す手順で合成し用いた以外は、実施例1と同様にしてFETを作製し、評価した。
【0222】
三口フラスコにMeSiを16.34g(0.12mol)、NapSiを19.87g(0.08mol)、20.6質量%のTR-550を108.80g(オルガノシランが完全縮合した場合の質量(22.41g)100質量部に対して、粒子含有量100質量部)、DAAを83.24g仕込み、室温で撹拌しながら水10.80gにリン酸0.181g(仕込みモノマーに対して0.50質量%)を溶かしたリン酸水溶液を10分間かけて添加した。その後、フラスコを40℃のオイルバスに浸けて60分間撹拌した後、オイルバスを30分間かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱撹拌した(内温は100~110℃)。加熱撹拌して得られた樹脂溶液を氷浴にて冷却した後、陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂を、それぞれ樹脂溶液に対して2重量%加えて12時間撹拌した。撹拌後、陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂をろ過して除去し、無機粒子が結合したポリシロキサン(PS-06)の溶液を得た。なお、昇温および加熱撹拌中、窒素を0.05l(リットル)/分で流した。反応中に副生成物であるメタノール、水が合計103.21g留出した。得られた、無機粒子が結合したポリシロキサンの溶液PS-06の固形分濃度は33質量%であった。
【0223】
実施例7
無機粒子が結合したポリシロキサンを、以下に示す手順で合成し用いた以外は、実施例1と同様にしてFETを作製し、評価した。
【0224】
三口フラスコにMeSiを8.17g(0.06mol)、SucSiを10.49g(0.04mol)、NapSiを24.84g(0.10mol)、20.6質量%のTR-550を147.67g(オルガノシランが完全縮合した場合の質量(30.42g)100質量部に対して、粒子含有量100質量部)、DAAを112.99g仕込み、室温で撹拌しながら水11.52gにリン酸0.218g(仕込みモノマーに対して0.50質量%)を溶かしたリン酸水溶液を10分間かけて添加した。その後、フラスコを40℃のオイルバスに浸けて60分間撹拌した後、オイルバスを30分間かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱撹拌した(内温は100~110℃)。加熱撹拌して得られた樹脂溶液を氷浴にて冷却した後、陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂を、それぞれ樹脂溶液に対して2重量%加えて12時間撹拌した。撹拌後、陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂をろ過して除去し、無機粒子が結合したポリシロキサン(PS-07)の溶液を得た。なお、昇温および加熱撹拌中、窒素を0.05l(リットル)/分で流した。反応中に副生成物であるメタノール、水が合計131.30g留出した。得られた、無機粒子が結合したポリシロキサンの溶液PS-07の固形分濃度は33質量%であった。
【0225】
実施例8
四口フラスコに、水を54.68g、エタノールを2.77g、25.0質量%のTR-550(ただし、エバポレーターを用いてメタノールからエタノールへ溶媒置換を行ったもの)を332.84g(後述のアクリルモノマー合計100質量部に対し、無機粒子固形分が100質量部)、25質量%アンモニア水溶液を11.89g、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを3.72g(3mol%)仕込み、フラスコを55℃のオイルバスに浸けて、2時間加熱還流下で撹拌した。次に、室温まで冷却した後、フラスコにメタクリル酸メチルを8.51g(17mol%)、メタクリル酸を12.91g(30mol%)、メタクリル酸2-[2-(2-メトキシ)エトキシ]エトキシエチルを58.07g(50mol%)、エタノールを2.46g仕込み、しばらく撹拌して、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、オイルバスに浸けて昇温し内温が70℃に到達した時点で、10質量%の過硫酸アンモニウム水溶液を11.41g添加し、窒素雰囲気下、5時間加熱還流下で撹拌した。その後、エバポレーターを用いて重合時の混合溶媒からDAAへ溶媒置換して、アクリル樹脂溶液(AC-TR550)を得た。得られたアクリル樹脂溶液(AC-TR550)には、固形分濃度が33質量%になるようにDAAを添加した。無機粒子が結合したポリマーとしてAC-TR550を用いる以外は、実施例1と同様にしてFETを作製し、評価した。
【0226】
実施例9
TR-550に代わり、22.5質量%の酸化ケイ素粒子メタノール分散液である“クォートロン(登録商標)”PL-2L-MA(扶桑化学工業(株)製)を用いて無機粒子が結合したポリシロキサン(PS-8)の溶液を得る以外は、実施例1と同様にしてFETを作製し、評価した。
【0227】
実施例10
TR-550に代わり、酸化ケイ素粒子メタノール分散液である“OSCAL(登録商標)”1727BM(日揮触媒化成工業(株)製)を用いて無機粒子が結合したポリシロキサン(PS-9)の溶液を得る以外は、実施例1と同様にしてFETを作製し、評価した。
【0228】
実施例11
無機粒子が結合したポリシロキサンを、以下に示す手順で合成した。
【0229】
三口フラスコに3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(AcrSi)を18.75g(0.08mol)、SucSiを5.25g(0.02mol)、NapSiを24.84g(0.10mol)、20.6質量%のTR-550を171.78g(オルガノシランが完全縮合した場合の質量(35.39g)100質量部に対して、粒子含有量100質量部)、DAAを131.44g仕込み、室温で撹拌しながら水11.16gにリン酸0.244g(仕込みモノマーに対して0.50質量%)を溶かしたリン酸水溶液を10分間かけて添加した。その後、フラスコを40℃のオイルバスに浸けて60分間撹拌した後、オイルバスを30分間かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱撹拌した(内温は100~110℃)。加熱撹拌して得られた樹脂溶液を氷浴にて冷却した後、陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂を、それぞれ樹脂溶液に対して2重量%加えて12時間撹拌した。撹拌後、陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂をろ過して除去し、無機粒子が結合したポリシロキサン(PS-10)の溶液を得た。なお、昇温および加熱撹拌中、窒素を0.05l(リットル)/分で流した。反応中に副生成物であるメタノール、水が合計148.73g留出した。得られた、無機粒子が結合したポリシロキサンの溶液PS-10の固形分濃度は33質量%であった。
【0230】
その後、QD-01に代わり、DPHA(「KAYARAD(登録商標)」、日本化薬(株)製;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)を2.29g、OXE-01(「イルガキュア(登録商標)」、BASF(株)製)を0.34g用いて、絶縁材料溶液を得た。本溶液中の上記DPHAの含有量は、ポリシロキサン100質量部に対して10質量部であった。また、本溶液中の上記OXE01の含有量は、ポリシロキサン100質量部に対して1.5質量部であった。得られた絶縁材料溶液を用い、ラジカル重合性化合物を含むことから、前記「(2)-2 ゲート絶縁層の作製(b)」に従い、それ以外は実施例1と同様にゲート絶縁層およびFETを作製し、評価した。
【0231】
実施例12
半導体溶液の調製時、P3HTを用いずにCNTのみの溶液を用意し、これを半導体溶液Bとして半導体層の形成に用いる以外は、実施例1と同様にゲート絶縁層およびFETを作製し、評価した。
【0232】
実施例13
電極の作製を、感光性有機成分を含む導電性ペーストにて、以下のように行った。100mlクリーンボトルにアクリルポリマーSPCR-69X(商品名、昭和電工(株)製、質量平均分子量15000)を20g、光重合開始剤OXE-01(BASFジャパン株式会社製)4g、酸発生剤SI-110(三新化学工業株式会社製)を0.6g、γ-ブチロラクトン(三菱ガス化学株式会社製)を10g入れ、自転-公転真空ミキサー“あわとり練太郎”(登録商標)(ARE-310;(株)シンキー製)で混合し、感光性樹脂溶液46.6g(固形分78.5質量%)を得た。得られた感光性樹脂溶液8.0gと平均粒子径2μmのAg粒子を42.0g混ぜ合わせ、3本ローラー“EXAKTM-50”(商品名、EXAKT社製)を用いて混練し、50gの感光性AgペーストAを得た。
【0233】
感光性AgペーストAをスクリーン印刷でガラス基板上に塗布し、乾燥オーブンで100℃、10分でプリベークを行った。その後、露光装置“PEM-8M”(商品名、ユニオン光学(株)製)を用いて、電極に対応するマスクパターンを有するフォトマスクを介して露光量70mJ/cm(波長365nm換算)で全線露光を行い、0.5%Na-CO-3溶液で30秒間浸漬現像を行い、超純水でリンス後、乾燥オーブンで140℃、30分間キュアを行い、ゲート電極を作製した。同様の手順にて、ソース電極およびドレイン電極パターンも作製した。これらの以外は実施例1と同様にゲート絶縁層およびFETを作製し、評価した。
【0234】
実施例14
無機粒子が結合したポリシロキサンとしてPS-03を用いた以外は、実施例13と同様にFETを作製し、評価した。
【0235】
実施例15
絶縁材料溶液のスピンコート塗布時、塗布条件を200rpm×15秒として厚めに塗布を行う以外は、実施例1と同様にゲート絶縁層およびFETを作製し、評価した。
【0236】
比較例1
以下に示す手順で、無機粒子が結合していないポリマーを得て、これを用い絶縁材料溶液を得る以外は、実施例1と同様にしてFETを作製し、評価した。
【0237】
三口フラスコにMeSiを10.90g(0.08mol)、SucSiを5.25g(0.02mol)、NapSiを24.84g(0.10mol)、DAAを51.14g仕込み、室温で撹拌しながら水11.16gにリン酸0.205g(仕込みモノマーに対して0.50質量%)を溶かしたリン酸水溶液を10分間かけて添加した。その後、フラスコを40℃のオイルバスに浸けて60分間撹拌した後、オイルバスを30分間かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱撹拌した(内温は100~110℃)。加熱撹拌して得られた樹脂溶液を氷浴にて冷却した後、陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂を、それぞれ樹脂溶液に対して2重量%加えて12時間撹拌した。撹拌後、陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂をろ過して除去し、ポリシロキサン(PS-11)の溶液を得た。なお、昇温および加熱撹拌中、窒素を0.05l(リットル)/分で流した。反応中に副生成物であるメタノール、水が合計19.82g留出した。得られた、無機粒子が結合していないポリシロキサンの溶液PS-11の固形分濃度は33質量%であった。
【0238】
比較例2
無機粒子が結合していないポリマー(PS-11)100質量部に対し、同じく100質量部のTR-550(ただし、エバポレーターを用いてメタノールからDAAへ溶媒置換を行ったもの)を添加して絶縁材料溶液を得る以外は、比較例1と同様にしてFETを作製し、評価した。
【0239】
比較例3
比較例2で用いたTR-550のDAA分散液を、ゲート電極2が形成されたガラス基板上に直接スピンコート塗布することにより、ゲート絶縁層を形成した。ただし、非常に膜が脆いためゲート絶縁層上に電極を形成することができず、比誘電率の評価およびFET特性の評価は実施できなかった。
【0240】
比較例4
半導体溶液の調製時、CNTを用いずにP3HTのみの溶液を用意し、これを半導体溶液Cとして半導体層の形成に用いる以外は、実施例1と同様にゲート絶縁層およびFETを作製し、評価した。
【0241】
比較例5
半導体溶液の調製時、CNTを用いずにフラーレン(富士フイルム和光純薬(株)製、C60、純度99.95%)のみの溶液を用意し、これを半導体溶液Dとして半導体層の形成に用いる以外は、実施例1と同様にゲート絶縁層およびFETを作製し、評価した。
【0242】
実施例1~15および比較例1~5の、FET作製時に使用した材料および各種評価結果を、表1~4に示した。
【0243】
【表1】
【0244】
【表2】
【0245】
【表3】
【0246】
【表4】
【符号の説明】
【0247】
1 基板
2 ゲート電極
3 ゲート絶縁層
4 半導体層
5 ソース電極
6 ドレイン電極
10 アンテナ
11 復調回路
12 制御回路
13 変調回路
14 記憶回路
15 電源生成部
図1
図2
図3