(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
F01P 11/10 20060101AFI20230111BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20230111BHJP
E02F 9/00 20060101ALI20230111BHJP
B66C 13/52 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
F01P11/10 B
F01P11/10 K
B60K11/04 E
E02F9/00 M
B66C13/52 Z
(21)【出願番号】P 2019009178
(22)【出願日】2019-01-23
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】川田 北斗
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-210929(JP,A)
【文献】特開2001-140647(JP,A)
【文献】特開2006-206034(JP,A)
【文献】特開2011-241695(JP,A)
【文献】特開平11-240342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 5/06
F01P 11/10
E02F 9/00
B60K 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱型構造の上部フレームと、
前記上部フレームの内部に配置されたエンジンと、
前記エンジンに接続されたファンであって、前記上部フレームの内部かつ前記エンジンの後側に配置されたファンと、
前記上部フレームの内部かつ前記ファンの後方に配置された熱交換器と、
外気を取り込むためのダクトであって、前記上部フレームの内部かつ前記熱交換器の後側に配置されたダクトと、
前記ダクトの内部に配置されたルーバーであって、前記ファンの回転により当該開口部から取り込まれた前記外気が前記熱交換器に向かうように前記外気の流れを変化させるルーバーと、
前記エンジン、前記ファン、前記熱交換器、および前記ダクトを囲うガードであって、前記上部フレームに取り付けられたガードと、
を備える、建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記ルーバーが前記ダクトの内部の後部に配置されている、建設機械。
【請求項3】
請求項1または2に記載の建設機械において、
前記ダクトが前記上部フレームに取り外し可能に取り付けられている、建設機械。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の建設機械において、
前記ルーバーが前記ダク
トに取り外し可能に取り付けられている、建設機械。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の建設機械において、
前記ダクトは、後方から順に、前記ルーバーが内部に配置された第1ダクト部と、当該第1ダクト部よりも上端が高い第2ダクト部と、を有する、建設機械。
【請求項6】
請求項5に記載の建設機械において、
前記エンジンからの排気ガスは、前記上部フレームの上方へ向かって排出され、
前記エンジンの上下方向の中心よりも、前記第1ダクト部の上下方向の中心の方が低くされている、建設機械。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の建設機械において、
前記ルーバーが、上下方向に並列配置された複数の板状体で構成されている、建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンなどの建設機械の吸気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、例えば特許文献1に記載のものがある。特許文献1の
図2、
図3に記載の吸気構造は、ファンおよび熱交換器を囲うガードの後端部の上側および下側にそれぞれ開口部を設けて、この開口部から外気を取り込むというものである。また、特許文献1の段落0049、
図9には、上記ガードの後端部(熱交換器の真後ろ)に開口部を設けると共に、この開口部にL字状断面の吸音ルーバーを配置することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の上記吸気構造には、次の改善すべき点がある。
まず、熱交換器へ効率よく冷却風を当てるには、特許文献1の
図2、
図3に記載されているような、熱交換器の後方斜め上や後方斜め下から外気を取り込む吸気構造は基本的に適さない。また、エンジンからの高温の排気ガスは、排気管を通じて上方へ向かって排出されることが一般的であり、熱交換器の後方斜め上から外気を取り込む構造であると、熱交換器の冷却に不適切な上記排気ガスを多く取り込んでしまうことが懸念される。
【0005】
一方、特許文献1の
図9に記載されている吸気構造は、ファンおよび熱交換器を囲うガードの後端部(熱交換器の真後ろ)に設けた開口部から外気を取り込む吸気構造であり、外気を取り込む向きの観点では上記のような問題はないが、吸音ルーバーが配置された上記開口部へ至るまでの流路において空気抵抗が大きく、外気を取り込みにくい。その結果、熱交換器へ効率よく冷却風が当たりにくい。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱交換器に冷却風がより当たりやすい吸気構造を備える建設機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る建設機械は、箱型構造の上部フレームと、前記上部フレームの内部に配置されたエンジンと、前記エンジンに接続されたファンであって、前記上部フレームの内部かつ前記エンジンの後側に配置されたファンと、前記上部フレームの内部かつ前記ファンの後方に配置された熱交換器と、外気を取り込むためのダクトであって、前記上部フレームの内部かつ前記熱交換器の後側に配置されたダクトと、前記ダクトの内部に配置されたルーバーであって、前記ファンの回転により当該開口部から取り込まれた前記外気が前記熱交換器に向かうように前記外気の流れを変化させるルーバーと、前記エンジン、前記ファン、前記熱交換器、および前記ダクトを囲うガードであって、前記上部フレームに取り付けられたガードと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、上記構成のうちの特に上記ダクトおよび上記ルーバーにより、ファンの回転により取り込まれた外気が冷却風として熱交換器により当たりやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る建設機械の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本発明の建設機械は、例えば移動式クレーンである。
図1および
図2は、本発明の一実施形態を示す。建設機械1は、上部フレーム2、運転室を構成するキャブ4、ウインチ12、エンジン13、カウンタウエイト3などを備える。
【0011】
上部フレーム2は、下部走行体(不図示)の上に旋回装置(不図示)を介して旋回可能に搭載される。この上部フレーム2は、側壁を構成する左右一対の主フレーム3と、これら左右一対の主フレーム3の前端部同士を連結する前端フレーム4と、後端部同士を連結する後端フレーム5とを備える。また、左右一対の主フレーム3の中途部同士は横梁部材6、7で連結される。例えばこのようにして、上部フレーム2は箱型構造とされる。
【0012】
上記前端フレーム4の前面にブーム支持部8が取り取り付けられ、このブーム支持部8に起伏部材としてのブーム(不図示)の基端部が回動可能に取り付けられる。また、前端フレーム4の上面にマスト支持部9が取り取り付けられ、このマスト支持部9に起伏部材としてのマスト(不図示)の基端部が回動可能に取り付けられる。また、前端フレーム4の幅方向の一端部に部材10を介して上記キャブ4が取り付けられる。
【0013】
上記後端フレーム5の上面に下部スプレッダ支持部材11が取り取り付けられ、この下部スプレッダ支持部材11に下部スプレッダ(不図示)が取り付けられる。この下部スプレッダと、上記マストの先端部に設けられたシーブ(滑車)とにワイヤロープ(不図示)が掛け回され、このワイヤロープが、上記ウインチ12により巻取りおよび繰出しされることでマストが起伏する。マストの起伏によりブームが起伏する。
【0014】
また、上記主フレーム3の後端部の両側に、吊荷とのバランスをとるための上記カウンタウエイト3が配置される。
【0015】
上部フレーム2の内部の後部に上記エンジン13が配置される。エンジン13には油圧ポンプ(不図示)が接続され、この油圧ポンプはエンジン13により回転されて、上記ウインチ12の油圧駆動装置、下部走行体の油圧駆動装置など、各所の油圧機器へ圧油を送る。このエンジン13に出力軸13aを介してファン14が接続される。このファン14は、上部フレーム2の内部かつエンジン13の後側に配置される。なお、上部フレーム2の内部とは、左右一対の主フレーム3、前端フレーム4、および後端フレーム5等で周囲が囲まれた部分のことをいう。なお、エンジン13に下側には各種の配管(不図示)等を敷設するスペースSが必要なため、このスペースSを確保すべくエンジン13は少し上方に配置される。エンジン13からの高温の排気ガスは、排気管(不図示)を通じて上部フレーム2の上方へ向かって排出される。
【0016】
上記ファン14の後方に熱交換器15が配置される。熱交換器15は、ラジエータ、オイルクーラ、およびインタークーラなど、水や油を冷却するための熱交換器であり、上部フレーム2の内部に配置される。
【0017】
外気を取り込むためのダクト16が上部フレーム2の内部かつ上記熱交換器15の後側に配置されると共に、このダクト16の後端の開口部16aの内部にルーバー19が配置される。ルーバー19は、上記ファン14の回転により開口部16aから取り込まれた外気が熱交換器15に向かうように外気の流れを変化させるものであり、上下方向に並列配置された複数の板状体19a~19dで構成される。所定の間隔をあけて配置されたこれら複数の板状体19a~19dは、前方(熱交換器15側)へ向かって斜め上方に傾斜配置される。
【0018】
上記ダクト16は、後方から順に、ルーバー19が内部に配置される第1ダクト部17と、この第1ダクト部17よりも上端が高い第2ダクト部18とを有する。第2ダクト部18の上下方向の寸法H2は、第1ダクト部17の上下方向の寸法H1よりも大きい。また、第1ダクト部17の上下方向の中心C1は、上記エンジン13の上下方向の中心C2よりも低い。
【0019】
なお、ダクト16は、上部フレーム2に取り外し可能に取り付けられ、ルーバー19は、ダクト16または上部フレーム2に取り外し可能に取り付けられる。
【0020】
また、上部フレーム2には、各部の開口部を覆うガードとしてのガード板20、21、22等が取り付けられ、上記エンジン13、上記ファン14、上記熱交換器15、および上記ダクト16は、上記ガード板20、22で囲われる。
【0021】
上記ファン14と、上記ダクト16と、上記ルーバー19とで吸気構造を構成し、この
吸気構造は次のように機能する。
【0022】
エンジン13が駆動されるとファン14が回転し、ダクト16の後端の開口部16aからダクト16内へ外気(空気)が流れ込む。ダクト16内へ流れ込んだ空気の多くは、ルーバー19部分でその流れの向きが斜め上方に変化し、熱交換器15へと向かう。なお、開口部16aの下端部に流れ込んだ空気のように、流れの向きがあまり変わらないで熱交換器15へと向かう空気の流れもある。上記空気が熱交換器15に当たり、熱交換器15内部を流れる油や水が冷却される。
【0023】
上記構成の吸気構造は次のような作用・効果を有する。
熱交換器15の後側に外気(空気)を取り込むためのダクト16が配置されることで、熱交換器15へスムーズに外気が導かれる。また、外気の流れを変化させるルーバー19がダクト16の内部に配置されることで、当該ルーバー19により熱交換器15全体へ空気を当てることが可能となる。また、上記ルーバー19の存在により、ダクト16の開口部16aを真後ろから見たときの開口面積が小さくなるので(熱交換器15がまる見えにならないので)、エンジン13等で発生する騒音が開口部16aから外部へ漏れることを抑制することができる。さらには、上部フレーム2の真後ろから外気が取り込まれるので、エンジン13からの高温の排気ガスがダクト16内に取り込まれにくい。
【0024】
ダクト16の内部かつその後部に上記ルーバー19が配置されることで、ルーバー19と熱交換器15との間に適度な間隔をあけることができ、熱交換器15全体へ空気をより当てやすくなる。
【0025】
上部フレーム2に取り外し可能にダクト16が取り付けられることで、上部フレーム2にダクト16を取り付けた状態にて、エンジン13を上部フレーム2に搭載するなどの建設機械1の組立を行うことができ、建設機械1の組立性が改善される。また、ダクト16とエンジン13とが連結されていないので、エンジン13の振動がダクト16に伝わることを抑制でき、エンジン13の振動によるダクト16の損傷を抑制することができる。
【0026】
ダクト16に加えてルーバー19も取り外し可能とされている。ダクト16の内面や、ルーバー19を構成する板状体19a~19dの表面等には吸音材(不図示)が張られるところ、この構成によると、ルーバー19を取り外すことで、吸音材の張替を行いやすい。また、作業員は、上記開口部16aから上部フレーム2の内部に入って熱交換器15のメンテナンス(清掃等)を行うことができ、熱交換器15のメンテナンス性も向上する。
【0027】
ダクト16が、後方から順に、第1ダクト部17と、第1ダクト部17よりも上端が高い第2ダクト部18とを有することで、上部フレーム2を構成する後端フレーム5を避けたダクト配置とすることができる。
【0028】
第1ダクト部17の上下方向の中心C1が、エンジン13の上下方向の中心C2よりも低いことで、エンジン13からの高温の排気ガスがより取り込まれにくい。
【0029】
上下方向に並列配置された複数の板状体19a~19dでルーバー19が構成されるので、ルーバー19の製作が容易である。
【0030】
上記の実施形態は次のように変更可能である。
ガード板20、22にダクト16が取り外し可能に取り付けられていてもよい。
【0031】
ダクト16の内部の後部に代えて、ダクト16の内部の前部、例えば、ダクト16を構成する第2ダクト部18の内部にルーバー19が配置されてもよい。
【0032】
ルーバー19を構成する板状体19a~19dは、4枚に限定されることはなく、3枚以下であってもよいし、5枚以上であってもよい。
【0033】
エンジン13は、上部フレーム2の内部においてその下部に配置されてもよい。
【0034】
ダクト16の内面や、ルーバー19を構成する板状体19a~19dの表面等に吸音材が張られていなくてもよい。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、その他に、当業者が想定できる範囲で種々の変更を行えることは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
1:建設機械
2:上部フレーム
13:エンジン
14:ファン
15:熱交換器
16:ダクト
17:第1ダクト部
18:第2ダクト部
19:ルーバー
19a~19d:板状体
20:ガード板(ガード)
22:ガード板(ガード)
C1:第1ダクト部の上下方向の中心
C2:エンジンの上下方向の中心