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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】積層装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20230111BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230111BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20230111BHJP
   B65H 31/26 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/052
H01M10/0585
B65H31/26
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019013242
(22)【出願日】2019-01-29
(65)【公開番号】P2020123443
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100140682
【弁理士】
【氏名又は名称】妙摩 貞茂
(72)【発明者】
【氏名】西原 寛恭
(72)【発明者】
【氏名】松本 和剛
【審査官】増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-227130(JP,A)
【文献】特開2017-120791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
B65H 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下動可能に配置され、付勢部材によって上向きに付勢されるステージと、
保持したシート体を前記ステージ上に積層して積層体を形成する移載装置であって、前記シート体を前記ステージ上に積層する際に、保持した前記シート体を介して前記付勢部材に抗して前記ステージを下向きに押圧する前記移載装置と、
前記移載装置によって前記ステージ上に積層された前記積層体を前記付勢部材の付勢力に基づいて前記ステージに向けて相対的に押圧する爪部を有し、前記ステージの上下動に伴って移動する前記積層体の移動経路内に前記爪部が位置する第1状態と、前記移動経路外に前記爪部が位置する第2状態とに、前記爪部の位置を切り替え可能である保持装置と、を備え、
前記移載装置における前記シート体の保持部は、前記シート体の積層時に、前記爪部よりも下まで下降し、
前記移載装置は、前記保持部として、前記シート体を負圧によって吸着して保持する吸着部を含み、
前記吸着部では、前記移載装置による前記ステージの押圧が開始されたときに、前記吸着部にかけられる前記負圧が停止される、積層装置。
【請求項2】
上下動可能に配置され、付勢部材によって上向きに付勢され、下向きに押圧されたときに下側に移動するステージと、
保持したシート体を前記ステージ上に積層して積層体を形成する移載装置であって、前記シート体を前記ステージ上に積層する際に、保持した前記シート体を介して前記付勢部材に抗して前記ステージを下向きに押圧する前記移載装置と、
前記移載装置によって前記ステージ上に積層された前記積層体を前記付勢部材の付勢力に基づいて前記ステージに向けて相対的に押圧する爪部を有し、前記ステージの上下動に伴って移動する前記積層体の移動経路内に前記爪部が位置する第1状態と、前記移動経路外に前記爪部が位置する第2状態とに、前記爪部の位置を切り替え可能である保持装置と、を備え、
前記移載装置における前記シート体の保持部は、前記シート体の積層時に、前記ステージ上に積層された前記積層体を押圧している前記爪部よりも下まで下降して、保持した前記シート体を介して前記ステージを下向きに押圧することにより、前記ステージを下方に移動し、前記爪部の下面を前記積層体から離間させる、積層装置。
【請求項3】
前記移載装置は、前記保持部として、前記シート体を負圧によって吸着して保持する吸着部を含み、
前記吸着部では、前記移載装置による前記ステージの押圧が開始されたときに、前記吸着部にかけられる前記負圧が停止される、請求項2に記載の積層装置。
【請求項4】
前記移載装置の押圧により前記ステージが下方に移動し、前記爪部の下面が前記積層体から離間した後、前記保持装置は前記第1状態から前記第2状態への切り替えを行う、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層装置。
【請求項5】
前記保持装置では、前記第1状態から第2状態への切り替えにおいて、前記爪部が水平方向に移動する、請求項1~3のいずれか一項記載の積層装置。
【請求項6】
前記保持装置では、前記第1状態から第2状態への切り替えにおいて、前記爪部が斜め上方に向かって移動する、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2には、シート体を積層台に搬送する吸着部と、積層台に積層される積層体の周囲を押さえる押さえ部材とを有する積層装置が記載されている。特許文献1に記載された積層装置の押さえ部材は、軸部の周りを回転することによって、積層体を押さえる状態と積層体の周囲から退避した状態との切り替えを行う。また、特許文献2に記載の積層装置の押さえ部材は、上下方向及び水平方向に移動することによって、積層体を押さえる状態と積層体の周囲から退避した状態との切り替えを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-116807号公報
【文献】特開2014-196177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような積層装置では、押さえ部材による積層体の押圧と吸着部による積層体の押圧とによって、積層体の位置ずれを抑制している。また、押さえ部材による積層体の押圧と吸着部による積層体の押圧とは、交互に切り替えられている。この場合、例えば、押さえ部材による押圧状態から吸着部による押圧状態に移行する場合に、吸着部による押圧状態が十分でないうちに、押さえ部材による押圧状態が解除されると、一時的に積層体の押圧が不十分となり、位置ずれが生じる虞がある。ここで、吸着部による押圧状態が十分ではない、とは、必ずしもタイミングの問題ではなく、位置的な要因による場合も含む。シート体は、厚みのバラツキや反りをもつ。シート体が数十枚積層された状態では、前述のバラツキや反りが累積される為、吸着部が押さえ部材の下面と同じ高さで停止しても、積層体を押さえる荷重(積層体に作用する圧力)は、吸着部と押さえ部材とで異なる場合がある。吸着部と積層体との間に作用する荷重が小さな場合に、押さえ部材を外すと、位置ずれが生じることがある。
【0005】
本発明の一形態は、積層体の位置ずれの発生を抑制できる積層装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る積層装置は、上下動可能に配置され、付勢部材によって上向きに付勢されるステージと、保持したシート体をステージ上に積層して積層体を形成する移載装置であって、シート体をステージ上に積層する際に、保持したシート体を介して付勢部材に抗してステージを下向きに押圧する移載装置と、移載装置によってステージ上に積層された積層体を付勢部材の付勢力に基づいてステージに向けて相対的に押圧する爪部を有し、ステージの上下動に伴って移動する積層体の移動経路内に爪部が位置する第1状態と、移動経路外に爪部が位置する第2状態とに、爪部の位置を切り替え可能である保持装置と、を備え、移載装置におけるシート体の保持部は、シート体の積層時に、爪部よりも下まで下降する。
【0007】
上記積層装置では、爪部が第1状態となっているときに、ステージ上の積層体が爪部によって相対的に押圧され得る。これにより、ステージ上の積層体の位置ずれが抑制される。積層体上にさらにシート体が積層される場合、爪部が第1状態のままで、シート体を保持したアームによって積層体と共にステージが下向きに押圧される。これにより、ステージが下側に移動するため、爪部と積層体との間に間隙が生じる。このとき、積層体がアームとステージによって挟持された状態となるので、積層体の位置ずれは抑制されている。この状態で、爪部が第2状態に切り替わることにより、爪部はシート体を傷つけることなく積層体から離間する。これにより、既存の積層体上に新たなシート体が積層された状態となる。このような積層装置では、爪部による積層体の押圧状態からアームによる積層体の押圧状態への切り替えが、アームでの積層体の押圧によるステージの移動によって開始される。そのため、付勢部材の付勢力に基づいて、爪部又はアームのいずれかによって常に積層体が押圧されていることになる。したがって、積層体の位置ずれの発生が抑制される。
【0008】
また、移載装置の押圧によりステージが下方に移動し、爪部の下面が積層体から離間した後、保持装置は第1状態から第2状態への切り替えを行ってもよい。この構成では、爪部の移動によって積層体の上面に傷ができることが抑制される。
【0009】
また、保持装置では、第1状態から第2状態への切り替えにおいて、爪部が水平方向に移動してもよい。この構成では、爪部を上下方向に移動させないため、爪部の動作機構を容易に構成できる。
【0010】
また、保持装置では、第1状態から第2状態への切り替えにおいて、爪部が斜め上方に向かって移動してもよい。この構成では、例えば、シート体の周縁が捲り上がっているような場合であっても、積層されたシート体を爪部によって保持しやすい。
【0011】
また、移載装置は、保持部として、シート体を負圧によって吸着して保持する吸着部を含み、吸着部では、移載装置によるステージの押圧が開始されたときに、吸着部にかけられる負圧が停止されてもよい。この構成では、早いタイミングで負圧を停止するため、次の工程に早期に移行できる。これにより、シート体の積層にかかる時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一側面によれば、積層体の位置ずれの発生を抑制できる積層装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】蓄電装置の内部を示す断面図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3】積層装置を説明する概略図であって、移載装置がシート体を搬送している状態を示す。
図4】積層装置を説明する概略図であって、図3の状態から移載装置によって積層体が押圧されたところを示す。
図5】積層装置を説明する概略図であって、図4の状態から保持装置のクランプが第2状態となったところを示す。
図6】積層装置を説明する概略図であって、図5の状態から保持装置のクランプが第1状態となったところを示す。
図7】積層装置を説明する概略図であって、図6の状態から移載装置が上方に移動したところを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、一実施形態に係る積層装置を適用して製造される電極の積層体を用いた蓄電装置の内部を示す断面図である。図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。一例として、蓄電装置1は、積層型の電極組立体を有するリチウムイオン二次電池である。
【0016】
蓄電装置1は、例えば略直方体形状のケース2と、このケース2内に収容された電極組立体3とを備えている。ケース2は、例えばアルミニウム等の金属により形成されている。ケース2の内部には、図示はしないが、例えば非水系(有機溶媒系)の電解液が注液されている。ケース2上には、正極端子4及び負極端子5が互いに離間して配置されている。正極端子4は、絶縁リング6を介してケース2に固定され、負極端子5は、絶縁リング7を介してケース2に固定されている。また、電極組立体3とケース2の内側の側面及び底面との間には絶縁フィルムが配置されており、絶縁フィルムによってケース2と電極組立体3との間が絶縁されている。図1では便宜上、電極組立体3の下端とケース2の底面との間には僅かな隙間が設けられているが、実際には電極組立体3の下端が絶縁フィルムを介してケース2の内側の底面に接触している。また、電極組立体3の積層方向において、電極組立体3のガタツキを低減するために、電極組立体3とケース2との間の隙間に、数枚のスペーサが配置されている。スペーサの枚数は、電極組立体3の厚みに応じて適宜調整される。
【0017】
電極組立体3は、複数の正極8と複数の負極9とが袋状のセパレータ10を介して交互に積層された構造を有している。正極8は、袋状のセパレータ10に包まれている。袋状のセパレータ10に包まれた状態の正極8は、セパレータ付き正極11として構成されている。従って、電極組立体3は、複数のセパレータ付き正極11と複数の負極9とが交互に積層された構造を有している。なお、電極組立体3の両端に位置する電極は、負極9である。
【0018】
正極8は、例えばアルミニウム箔からなる正極集電体である金属箔14と、この金属箔14の両面に形成された正極活物質層15とを有している。金属箔14は、平面視矩形状の箔本体部14aと、この箔本体部14aと一体化されたタブ14bとを有している。タブ14bは、箔本体部14aの長手方向の一端部近傍の縁から突出している。そして、タブ14bは、セパレータ10を突き抜けている。複数の正極8より延びる複数のタブ14bは、集箔された状態で導電部材12に接続(溶接)され、導電部材12を介して正極端子4に接続されている。なお、図2では、便宜上タブ14bを省略している。
【0019】
正極活物質層15は、箔本体部14aの表裏両面に形成されている。正極活物質層15は、正極活物質とバインダとを含んで形成された多孔質の層である。正極活物質としては、例えば複合酸化物、金属リチウムまたは硫黄等が挙げられる。複合酸化物には、例えばマンガン、ニッケル、コバルト及びアルミニウムの少なくとも1つとリチウムとが含まれる。
【0020】
負極9は、例えば銅箔からなる負極集電体である金属箔16と、この金属箔16の両面に形成された負極活物質層17とを有している。金属箔16は、平面視矩形状の箔本体部16aと、この箔本体部16aと一体化されたタブ16bとを有している。タブ16bは、箔本体部16aの長手方向の一端部近傍の縁から突出している。タブ16bは、導電部材13を介して負極端子5に接続されている。なお、図2では、便宜上タブ16bを省略している。
【0021】
負極活物質層17は、箔本体部16aの表裏両面に形成されている。負極活物質層17は、負極活物質とバインダとを含んで形成された多孔質の層である。負極活物質としては、例えば黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、金属化合物、SiOx(0.5≦x≦1.5)等の金属酸化物またはホウ素添加炭素等が挙げられる。
【0022】
セパレータ10は、平面視矩形状を呈している。セパレータ10の形成材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、或いはポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布または不織布等が例示される。本実施形態におけるセパレータ10は、前述の形成材料よりなる二枚のシートを重ね、外周縁で溶着することで、袋状とされている。
【0023】
次に、実施形態に係る積層装置100について説明する。図3図7は、積層装置100を説明するための概略図である。積層装置100は、複数のセパレータ付き正極11及び負極9を交互に積層することで積層体20を形成する装置である。なお、以降の説明では、セパレータ付き正極11及び負極9を区別することなく、シート体21と称する。
【0024】
積層装置100は、ステージ110と、移載装置120と、保持装置130とを備える。ステージ110は、上下動可能に配置され、付勢部材112によって上向きに付勢される。図示例では、ステージ110は、矩形板状をなしている。ステージ110は、基準面114に固定された付勢部材112上に固定されている。基準面114は、例えば、ステージ110を配置するための載置台の上面であってよい。付勢部材112は、例えば圧縮コイルバネであってよい。なお、付勢部材112は圧縮コイルバネに限定されない。付勢部材112は、ステージ110を上向きに付勢する機能を有していればよく、ゴム等の弾性部材、空気ばね等であってもよい。図示例では、ステージ110の下面の四隅に圧縮コイルバネからなる付勢部材112がそれぞれ配置されている。
【0025】
移載装置120は、ステージ110の上にシート体21を順次積み上げることによって、積層体20を形成する。すなわち、移載装置120は、ステージ110上、又は、ステージ110上に既に積層されている積層体20の上に、新たなシート体21を積層する。移載装置120は、シート体21を保持するアーム122を有し、アーム122によって保持したシート体21をステージ110上に積層する。アーム122は、その先端に保持部としての吸着パッド(吸着部)124を備えている。吸着パッド124は、負圧によってシート体21を吸着して保持する。一例として、吸着パッド124の下面124aは、吸引ポンプ(不図示)に接続された複数の吸気孔が形成された吸着面であってよい。吸気孔から空気を吸引することで、負圧によって吸着面に吸着力が発生する。また、吸着パッド124は、シート体21を保持している状態で負圧の発生が停止されることによって、シート体21を解放する。アーム122は、いわゆるロボットハンドであり、吸着パッド124を上下方向及び左右方向に移動させ得る。一例として、吸着パッド124は、平面視において、矩形の四隅に切欠状部分が形成された平板状をなしている。
【0026】
移載装置120のアーム122は、新たなシート体21を積層する際に、ステージ110を付勢部材112に抗して下向きに押圧する。すなわち、ステージ110上に積層体20が形成されていない場合には、アーム122は、吸着パッド124が保持したシート体21を介してシート体21上からステージ110を押圧する。ステージ110上に積層体20が形成されている場合には、アーム122は、吸着パッド124が保持したシート体21を積層体20上に重ねた状態で、シート体21上から積層体20及びステージ110を押圧する。ステージ110がアーム122によって下向きに押圧されると、ステージ110は付勢部材112に抗して下側に移動する。
【0027】
保持装置130は、クランプ(爪部)132を有する。クランプ132は、移載装置120によってステージ110上に積層されたシート体21の積層体20をステージ110に向けて相対的に押圧する。図示例では、左右一対のクランプ132が示されている。クランプ132は、下面132aによって積層体20の最上層を構成するシート体21の上面を下向きに相対的に押圧し得る。保持装置130は、一対のクランプ132を第1状態と第2状態とに切り替えることができる。
【0028】
第1状態は、ステージ110の上下動に伴って移動する積層体20の移動経路R内にクランプ132が位置する状態である。第2状態は、積層体20の移動経路R外にクランプ132が待避する状態である。積層体20は、ステージ110の上下動に伴ってステージ110と共に上下動する。すなわち、積層体20の移動経路Rは、上下方向における積層体20の投影領域であり、平面視において積層体20が配置されている領域である。本実施形態では、保持装置130は、第1状態と第2状態との切り替えにおいて、クランプ132を水平方向に移動させる。例えば、第1状態から第2状態に切り替わる場合、クランプ132は、水平面内において互いに離間する方向に移動する。第2状態から第1状態に切り替わる場合、クランプ132は、水平面内において互いに近付く方向に移動する。
【0029】
続いて、図3図7を参照して、積層装置の動作について説明する。上述の通り、図3図7は、積層装置を説明するための概略図である。これら図3図7は、積層装置によってステージ上に積層体が形成される一連の流れを示している。
【0030】
図3は、移載装置120がシート体21を搬送している状態を示す。この状態では、アーム122の吸着パッド124に保持されたシート体21が、ステージ110上に積層された積層体20の上方に搬送されている。吸着パッド124の下面124aの高さ位置は、クランプ132の下面132aの高さ位置よりも上になっている。移載装置120がシート体21を搬送している状態では、保持装置130のクランプ132が第1状態となるように制御されている。この場合、ステージ110が付勢部材112によって上向きに付勢されているので、ステージ110上の積層体20はクランプ132に向かって上向きに押圧されている。換言すると、積層体20は、クランプ132の下面132aによって相対的に下向きに押圧されている。これにより、積層体20はステージ110とクランプ132とによって挟持されることになる。なお、ステージ110上に積層体20がない場合には、付勢部材112によって上向きに付勢されたステージ110の上面がクランプに当接することになる。
【0031】
図4は、図3の状態から移載装置120によって積層体20が下向きに押圧されたところを示す。すなわち、図4は、図3の状態からアーム122が下方に移動した状態を示す。この状態では、吸着パッド124の下面124aの高さ位置は、クランプ132の下面132aの高さ位置よりも下になっている。この場合、吸着パッド124の下面124aによって、新たなシート体21、積層体20及びステージ110が下向きに押圧される。吸着パッド124による押圧の力は付勢部材112の付勢力よりも大きいので、ステージ110は付勢部材112に抗して下側に移動する。これにより、クランプ132の下面132aに当接していた積層体20の上面は、クランプ132の下面132aから離間する。この状態では、新たなシート体21及び積層体20は、ステージ110と吸着パッド124とによって挟持されていることになる。なお、クランプ132は第1状態であるため、新たなシート体21の周縁の一部は、クランプ132の一部を上側から覆っている。
【0032】
一例として、アーム122の吸着パッド124では、アーム122による積層体20及びステージ110の押圧が開始されたときに、負圧の発生が停止されてもよい。すなわち、吸着パッド124の下面124aの高さ位置がクランプ132の下面132aよりも低くなったときに、負圧の発生が停止されてもよい。なお、負圧を停止するタイミングは、アーム122による積層体20及びステージ110の押圧が開始されたときから、アーム122が上昇を開始するまでの間であればよい。
【0033】
図5は、図4の状態から保持装置130のクランプ132が第2状態となったところを示す。この状態では、クランプ132が水平移動することによって、クランプ132が積層体20の移動経路Rから待避する。新たなシート体21と積層体20との間に位置していたクランプ132が移動することにより、ステージ110上には、元々載置されていた積層体20よりもシート体21が1層増加した積層体20が形成される。図4の状態から図5の状態までに、アーム122の位置に変化はない。そのため、新たな積層体20は、ステージ110と吸着パッド124とによって挟持されている。
【0034】
図6は、図5の状態から保持装置130のクランプ132が第1状態となったところを示す。この状態では、クランプ132が水平移動することによって、クランプ132が積層体20の移動経路R内に位置する。図5の状態から図6の状態までに、アーム122の位置に変化はない。そのため、新たな積層体20は、ステージ110と吸着パッド124とによって挟持されている。また、積層体20の上面の高さ位置、すなわち、吸着パッド124の下面124aの高さ位置は、クランプ132の下面132aの高さ位置よりも低い。そのため、クランプ132の下面132aは、積層体20の上面から離間している。
【0035】
図7は、図6の状態から移載装置120のアーム122が上方に移動したところを示す。この状態では、吸着パッド124の下面124aの高さ位置は、クランプ132の下面132aの高さ位置よりも上になっている。図6の状態から図7の状態に移行する際、吸着パッド124の上昇に伴って、ステージ110は付勢部材112によって上側に移動する。ステージ110が上側に移動している間、積層体20は、付勢部材112の付勢力によってステージ110と吸着パッド124とに挟持されている必要がある。例えば、吸着パッド124の上昇する速度が大き過ぎる場合、付勢部材112によって上側に移動するステージ110が吸着パッド124の上昇に追いつかないことが考えられる。そのため、吸着パッド124の上昇する速度は所定の速度以下に制限される。
【0036】
吸着パッド124の上昇に伴って、吸着パッド124の下面124aの高さ位置がクランプ132の下面132aよりも高くなったときに、吸着パッド124の下面124aは積層体20の上面から離間する。このとき、積層体20の上面はクランプ132の下面132aに当接されている。すなわち、積層体20はステージ110とクランプ132とによって挟持されることになる。以下、再び、移載装置120によって新たなシート体21が搬送され図3の状態に戻る。
【0037】
以上説明したように、積層装置100では、クランプ132が第1状態となっているときに、ステージ110上の積層体20がクランプ132によって相対的にステージ110向きに押圧され得る。これにより、ステージ110上の積層体20の位置ずれが抑制される。積層体20上にさらにシート体21が積層される場合、クランプ132が第1状態のままで、シート体21を保持したアーム122によって積層体20と共にステージ110が下向きに押圧される。これにより、ステージ110が下側に移動するため、クランプ132と積層体20との間に間隙が生じる。このとき、積層体20がアーム122とステージ110によって挟持された状態となっているので、積層体20の位置ずれは抑制されている。
【0038】
この状態で、クランプ132が第2状態に切り替わることにより、クランプ132はシート体21を傷つけることなく積層体20から離間する。これにより、既存の積層体20上に新たなシート体21が積層された状態となる。積層装置100では、クランプ132による積層体20の押圧状態からアーム122による積層体20の押圧状態への切り替えが、アーム122での積層体20の押圧によるステージ110の移動によって開始される。そのため、付勢部材112の付勢力に基づいて、クランプ132又はアーム122のいずれかによって積層体20が押圧され続ける。したがって、積層体20の位置ずれの発生が抑制される。
【0039】
また、図6及び図7に示すように、クランプ132が再び第1状態に切り替わった後に、アーム122が上昇することによって、ステージ110に積層された積層体20がクランプ132に相対的に下向き押圧される。この場合、アーム122による積層体20の押圧状態からクランプ132による積層体20の押圧状態への切り替えは、クランプ132による積層体20の押圧によって開始される。そのため、付勢部材112の付勢力に基づいて、アーム122又はクランプ132のいずれかによって積層体20が押圧され続ける。したがって、積層体20の位置ずれの発生が抑制される。
【0040】
また、上述のとおり、積層装置100では、新たなシート体21を保持したアーム122が下降することによって、押圧されたステージ110が下側に移動するため、クランプ132と積層体20との間に間隙が生じる。すなわち、クランプ132は、積層体20に対して相対的に上昇している。そのため、新たなシート体21を積層体20上に積層してから、クランプ132を待避させるまでの間に、クランプ132を上昇させる必要がない。押圧されたステージ110が下方に移動し、クランプ132の下面が積層体20から離間した後に、第1状態から第2状態への切り替えが行われることにより、クランプ132が積層体20の上面を損傷することが抑制される。
【0041】
そこで、保持装置130では、第1状態から第2状態への切り替えにおいて、クランプ132が水平方向のみに移動してもよい。この構成では、クランプ132を上下方向に移動させないため、クランプ132の動作機構を容易に構成できる。また、クランプを上昇させる工程を独立して設ける必要がないため、新しいシート体の積層からクランプを待避させるまでの工程を短時間で行うことができる。これにより、装置の高速化を図ることができる。
【0042】
また、アーム122は、シート体21を負圧によって吸着して保持する吸着パッド124を含み、吸着パッド124では、アーム122による積層体20及びステージ110の押圧が開始されたときに、吸着パッド124にかけられる負圧が停止されてもよい。負圧によって吸着力を制御する場合、負圧を停止してから実際に吸着力が失われるまでに時間差が生じる場合がある。この場合には、実際に吸着力が失われるのを待ってから次工程に進む必要がある。本実施形態では、早いタイミングで負圧を停止するため、次工程に早期に移行できる。これにより、装置の高速化を図ることができる。
【0043】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではない。
【0044】
例えば、第1状態から第2状態への切り替えにおいて、クランプ132が水平方向に移動する例を示したが、クランプの動作機構はこれに限定されない。一例として、保持装置では、第1状態から第2状態への切り替えにおいて、一対のクランプが上昇した後に水平方向に互いに離れる方向移動してもよい。
【0045】
また、保持装置では、第1状態から第2状態への切り替えにおいて、一対のクランプが斜め上方に向かって互いに離れるように移動してもよい。この構成では、例えば、シート体の周縁が捲り上がっているような場合であっても、第2状態となったクランプの下面がシート体よりも高い位置となり得る。これにより、再び第1状態に戻った際に、積層されたシート体をクランプによって保持しやすい。
【0046】
また、保持装置では、積層時、吸着パッドが下降を停止した後、保持装置が第1状態から第2状態に移行する例を示したが、これに限定されない。一例として、吸着パッドによる積層時、吸着パッドの下面の高さ位置が、クランプの下面の高さ位置よりも低くなった後であって、吸着パッドが下降を停止する前に、保持装置の移行を開始してもよい。
【0047】
また、一対のクランプ132を備える保持装置130に代えて、水平面内を回転する押さえ部材(爪部)を備えた保持装置によって積層体が保持される構成であってもよい。この場合、一例として、保持装置は、上下方向に沿った回転軸回りに移動する板状の押さえ部材を有していてよい。押さえ部材は、回転軸回りに回転することによって、積層体の移動経路R内に押さえ部材が位置する第1状態と、移動経路R外に押さえ部材が位置する第2状態とに切り替えられる。
【0048】
また、図示例では、上下方向に沿って移動するステージ110が付勢部材112のみによって支持されている例を示したが、例えば、ステージ110には上下方向の移動をガイドするガイド機構が設けられていてもよい。なお、図示例のように、ガイド機構が設けられていない場合には、ステージ110が水平方向に対して傾斜することが許容され得る。例えば、シート部材の厚さのばらつきによって、ステージ上の積層体の上面に傾きが生じることが考えられる。この場合であっても、当該傾きに応じてステージが傾斜し得るため、積層体が的確に保持される。
【符号の説明】
【0049】
20…積層体、21…シート体、100…積層装置、110…ステージ、112…付勢部材、120…移載装置、122…アーム、124…吸着パッド(吸着部)、130…保持装置、132…クランプ(爪部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7