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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】傾斜地作業機のエンジン搭載装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 5/12 20060101AFI20230111BHJP
   A01D 34/86 20060101ALI20230111BHJP
   F16F 9/00 20060101ALI20230111BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20230111BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20230111BHJP
【FI】
B60K5/12 A ZHV
A01D34/86
F16F9/00 B
F16F9/32 V
B60K1/04 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019040969
(22)【出願日】2019-03-06
(65)【公開番号】P2020142660
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-01-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 株式会社国際農業社 農村ニュース 第3025号 第11面 平成31年1月14日発行 株式会社国際農業社 農村ニュース 第3032号 第9面 平成31年3月4日発行 株式会社農経新報社 農経しんぽう 第3253号 第8面 平成31年1月14日発行 株式会社農経新報社 農経しんぽう 第3260号 第9面 平成31年3月4日発行 株式会社新農林社 農機新聞 第3699号 第16面 平成31年1月15日発行 株式会社新農林社 農機新聞 第3706号 第16面 平成31年3月5日発行 2019新春祝い市 平成31年2月18日開催 大規模農家向け商品説明会 平成31年2月7日開催 第14回JAふれ愛フェア・徳島 平成31年2月23日開催 自社ウェブサイトに掲載 平成31年2月28日掲載 https://atexnet.co.jp
(73)【特許権者】
【識別番号】000144980
【氏名又は名称】株式会社アテックス
(72)【発明者】
【氏名】重見 和男
(72)【発明者】
【氏名】田中 茂
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-018198(JP,A)
【文献】実開昭57-080318(JP,U)
【文献】特開2015-113065(JP,A)
【文献】特開昭58-118451(JP,A)
【文献】特開昭58-017277(JP,A)
【文献】米国特許第04750751(US,A)
【文献】米国特許第04707971(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 5/12
A01D 34/86
F16F 9/00
F16F 9/32
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機の車体(1)に設けたエンジン(2)を搭載するエンジンベース(3)を、角度変更可能に構成し、車体(1)とエンジンベース(3)との間に、電動伸縮によってエンジン(2)の搭載姿勢角度を変更する電動シリンダ(4)を設け、この電動シリンダ(4)の伸長作動に抗して車体(1)とエンジンベース(3)との間を常時押圧状態にし、該電動シリンダ(4)の伸縮作動に緩みを発生させないガスダンパー(5)を設け、前記ガスダンパー(5)は、ダンパシリンダ(6)内のガス室(7)内のガス圧力によって移動自在のフリーピストン(8)を嵌合して該ガス室(7)とオイル室(9)とに仕切ると共に、このフリーピストン(8)のオイル室(9)側には、プッシュロッド(10)の操作で開閉されるスプール弁(11)を有したピストン(12)を移動自在に嵌合して設け、前記プッシュロッド(10)を押し操作している間だけスプール弁(11)を開き、オイル室(9A)とオイル室(9B)との間のオイルの移動を可能にしてピストン(12)のロック状態を解除し、該プッシュロッド(10)の押込み操作を解除すると前記スプール弁(11)を閉じてオイル室(9A)とオイル室(9B)との間のオイル移動ができない状態にしてピストン(12)の作動をロック状態とするフリーロック形態の構成とし、このガスダンパー(5)を圧縮して所定長さに縮めた位置でロック状態にさせ、車体(1)とエンジンベース(3)との間にガスダンパー(5)を取着後、プッシュロッド(10)の押し操作によりロック状態を解除して、電動シリンダ(4)の伸縮作動に緩みを発生させない常時押圧力を働かせるよう構成したことを特徴とする傾斜地作業機のエンジン搭載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
急傾斜地面を走行しながら草刈作業等の作業を行う傾斜地作業機において、この車体に搭載するエンジンの搭載角度姿勢を安定した作業姿勢に維持制御するものである。
【背景技術】
【0002】
河川堤防法面や、道路法面等の傾斜地面に沿って草刈機を走行させ、ブレードを高速回転させながら草刈作業を行う草刈機において、これら走行装置や草刈刃等を駆動するためのエンジンの傾斜限界角度は15~25度であるため、例えば急傾斜地面では、エンジンを使用限界角度以内になるよう傾斜設定する技術(特許文献1)が知られている。
【0003】
又、ダンプトラックのホイストシリンダが働く衝撃を抑制し、ホイストシリンダの耐久性、寿命を向上するために、フレーム側ブラケットと、荷台側の長孔を有する荷台側ブラケットとの間にダンパを設けて、減衰力発生機構を設けた技術(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017―87783号公報
【文献】特開2015―113065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
急傾斜地の草刈取を行う草刈機(無線操縦形態の草刈機にあっても同様)は、ガソリン4サイクルエンジンを使用する形態は、例えば略40度の傾斜地では、エンジンを傾斜面に対して、エンジンの使用限界角度の15~25度以内になるようエンジンの傾斜姿勢を変える必要がある。又、前記無線操縦形態の草刈機では、車体本体の傾斜を、傾斜センサーで検出しながら、電動シリンダに出力して、エンジン傾斜搭載姿勢を自動制御するように構成することが望ましい。
【0006】
しかしながら、このような電動シリンダは、一般的に、圧縮側には強度が強いが、引っ張りには弱いため、車体本体の転倒方向によっては、電動シリンダが破損する虞れがあり、安定した傾斜姿勢制御を維持し難い。そして、草刈走行時に、エンジンのガタツキや、振動が発生し易くなり、安定した刈取性能を発揮し難い。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、作業機の車体1に設けたエンジン2を搭載するエンジンベース3を、角度変更可能に構成し、車体1とエンジンベース3との間に、電動伸縮によってエンジン2の搭載姿勢角度を変更する電動シリンダ4を設け、この電動シリンダ4の伸長作動に抗して車体1とエンジンベース3との間を常時押圧状態にし、該電動シリンダ4の伸縮作動に緩みを発生させないガスダンパー5を設けたことを特徴とする傾斜地作業機のエンジン搭載装置の構成とする。
【0008】
電動シリンダ4の伸縮作動によって、車体1に対するエンジンベース2の搭載姿勢の角度が、緩、急に変更され調節されて、適切なエンジン2搭載姿勢角度に維持制御される。この電動シリンダ4の伸縮作動は、ガスダンパー5の押圧力が常時働いているため、このガスダンパー5の常時押圧力状態に抗して電動シリンダ4の伸長作動が行われることとなり、この電動シリンダ4の伸縮作動に緩みを発生しない状態に維持されて、エンジン2の傾斜姿勢の如何に拘らず、所定の搭載姿勢角度に制御する。
【0009】
又、前記ガスダンパー5は、ダンパシリンダ6内のガス室7内のガス圧力によって移動自在のフリーピストン8を嵌合して該ガス室7とオイル室9とに仕切ると共に、このフリーピストン8のオイル室9側には、プッシュロッド10の操作で開閉されるスプール弁11を有したピストン12を移動自在に嵌合して設け、前記プッシュロッド10を押し操作している間だけスプール弁11を開き、オイル室9Aとオイル室9Bとの間のオイルの移動を可能にしてピストン12のロック状態を解除し、該プッシュロッド10の押込み操作を解除すると前記スプール弁11を閉じてオイル室9Aとオイル室9Bとの間のオイル移動ができない状態にしてピストン12の作動をロック状態とするフリーロック形態の構成とし、このガスダンパー5を圧縮して所定長さに縮めた位置でロック状態にさせ、車体1とエンジンベース3との間にガスダンパー5を取着後、プッシュロッド10の押し操作によりロック状態を解除して電動シリンダ4の伸縮作動に緩みを発生させない常時押圧力を働かせるよう構成した傾斜地作業機のエンジン搭載装置とする。
【0010】
電動シリンダ4は、電動モータの駆動によって、螺合するネジ筒とネジ軸との間を回動させて、電動シリンダ4を伸長させたり、又は、縮させて、エンジン2を搭載する車体1に対して、エンジンベース3の搭載角度を変更制御する。このとき電動シリンダ4の伸縮によって拡縮回動されるエンジンベース3の回動力の内、伸長作動に抗するように、又、縮小作動については電動シリンダ4を縮める方向に加圧するようにガスダンパー5によるガス圧力が働いているため、この電動シリンダ4の伸縮作動や、この電動シリンダ4の、車体1や、エンジンベース3に対する連結機構部等における緩みや、ガタツキ等をなくして、エンジン2の搭載角度を円滑に、正確に作動することができる。このため電動シリンダ4の破損、損傷等を少くすることができる。
【0011】
前記ダンパシリンダ6内には、摺動自在に嵌合のフリーピストン8を設け、このフリーピストン8でオイルを充填するオイル室9と、ガス圧力を発生のガスを充填するガス室7との間を仕切ると共に、このオイル室9には、プッシュロッド10によってオリフィス孔13を開閉するスプール弁11を有したピストン12を摺動自在に嵌合して設けて、フリーロック形態に構成したものであるから、プッシュロッド10を押してスプール弁11を開けると、オイル室9のオイルがオイル室9Aとオイル室9Bとの間を、ピストン12のオリフィス孔13を介して流出、入して、ロック解除されて、ピストン12の移動可能状態となり、又は、プッシュロッド10の押しを離すと、ガス室7のガス圧力によりスプール弁11が閉じられて、オリフィス孔13からのオイルの流通は停止されて、ロック状態となる。このようにして、ガスダンパー5は、電動シリンダ4の伸縮作動に応じてダンパー伸縮して、電動シリンダ4の伸、縮作動に拘らず、ガスダンパー5のガス室7のガス圧力によって、フリーピストン8をオイル室9側へ常時ガス押圧して、電動シリンダ4の伸縮作用にガタツキや、緩みを生じさせない。
【0012】
前記ガスダンパー5を車体1とエンジンベース3との間に着脱するときは、前記フリーロック状態にあるガスダンパー5を所定の長さに押し縮めた状態でロックして、ガスダンパー5の両端部を、車体1や、エンジンベース3部等に着脱して、ロック解除してガスダンパー5の伸長作動によって、押開くように張圧させて固定状態とすることができる。ガスダンパー5のガス張圧作用、プッシュロッド10によるスプール弁11の開閉作動等を利用して、電動シリンダ4や、ガスダンパー5の着脱を簡単、容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明は、 作業機のエンジン2搭載姿勢の制御に使用の電動シリンダ4は、電動モータ等によってネジ軸やネジ筒等の回転で伸縮されて車体1に対してエンジンベース3の搭載角度を変更する。作業機の走行地面が急傾斜になると、この車体1の傾斜に伴って電動シリンダ4が伸、縮作動されて、前記ガスダンパー5の押圧力のもとに、電動シリンダが伸、縮されて、このガスダンパー5を伸、縮しながら、エンジンベース3の傾斜角度を緩くする方向へ回動して、エンジン2の搭載重心位置の均衡、及び作業姿勢の安定を図ることができる。
【0014】
電動シリンダ4は、伸縮制御が容易で価格も安くコンパクトなため一般的に用いられるが、油圧シリンダ等に比べ強度的には弱く、特に圧縮側には強いが、引っ張りには弱い構造である。しかし前記ガスダンパー5を設けることによって、電動シリンダ4によるエンジン2姿勢を鉛直状に円滑に行わせて、作業機が急傾斜地作業においても転倒し難くすることができ、仮りに車体が転倒しても(図7図8参照)電動シリンダ4の伸長方向に抗する方向に、すなわち強度的に弱い電動シリンダ4を引っ張る方向と反する方向に向け常にガスダンパー5の押圧力が働いているため、電動シリンダ4が破損し難く、衝撃にも耐久性を増すことができる。このように、電動シリンダ4が伸長するときも縮小するときも、更に、伸縮停止するときも、常時ガスダンパー5のガス圧力が働いているため、ガタツキ等を生じない。
【0015】
又、作業機のエンジン2の搭載姿勢を変更、調整するための電動シリンダ4に、ガスダンパー5を加設するものであるから、構成を簡単化することができ、作業機、及び作業の安全性を高めることができる。
【0016】
又、傾斜地における作業では、エンジン2の搭載姿勢角度が大きく傾斜すると、電動シリンダ4の伸縮制御によって、エンジンベース3の搭載角度を鉛直方向線Dに沿う傾向に制御して、作業機のエンジン2の搭載姿勢を安定させることができる。この電動シリンダ4の伸長は、ガスダンパー5のガス室7のガス圧力に抗して行われるため、電動シリンダ4の伸縮、及び両端部のエンジンベース3に対する取付連結部を、ガス室7の発生するガス圧力によって常時張圧するようにして、これら連結、取付部の緩みや、ガタツキを少くする。
【0017】
前記ガスダンパー5のガス圧力による張圧力は、電動シリンダ4が伸する方向へ作動しても、又縮小方向へ作動しても、ガス室7のガス圧力によって常に一定の方向へ張圧していて、逆方向へ張圧力を無くして、電動シリンダ4や、この電動シリンダ4のエンジンベース3等に対する連結部における緩みや、ガタツキを少くすることができ、破損、損傷等を軽減することができる。
【0018】
又、電動シリンダ4が縮小(短縮)されるときは、このガスダンパー5のガス圧力が、電動シリンダ4の縮小力に加勢する方向に張圧作用しているため、この電動シリンダ4が縮作動したり、縮小停止したときも常時ガスダンパー5のガス圧力が作用していて、電動シリンダ4の伸縮、停止、作用に緩み(ガタツキ)を生じさせないで、常時与圧力を働かせているため、引張方向の衝撃にも安全性を増すことができる。このため、電動シリンダ4が破損する虞れを少くすることができる。
【0019】
更に、フリーロック形態のガスダンパー5は、その長さを任意の長さでロック状態に保持可能であり、ガスダンパー5の脱着が容易で、電動シリンダ4が故障して作動しなくなった際にも、電動シリンダ4をエンジンベース3から取り外せば、エンジン2の搭載姿勢を手動で任意の角度に傾動乃至固定することができ、エンジン2の傾斜角度を手動で使用限度角度以下に調整して固定することが容易でエンジン2の焼損も防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】草刈機の平面図。
図2】その側面図。
図3】エンジンベース部を示す平面図。
図4】その背面図(イ)と、エンジンのローリング状態を示す背面図(ロ)。
図5】ガスダンパー部の作動状態を示す側断面図。
図6】電動シリンダの側断面図。
図7】草刈機の転倒状態を示す背面図。
図8】その一部の拡大背面図。
図9】ガスダンパー部の取り付け状態を示す拡大背面図(イ)、(ロ)。
図10】傾斜地面でのエンジンのローリング状態を示す背面図。
図11】無線送信機の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面に基づいて、無線操縦形態の草刈機は、左右一対のクローラ14を装着した車体1の上側に4サイクル形態のエンジン2を搭載し、このエンジン2によって駆動される発電機20によって生ずる電気を充電する充電器、及びリチウムイオンバッテリ16等を配置搭載し、車体1の後端部には、前記リチウムイオンバッテリ16からの電力で駆動されるモータ17によって伝動ケース18内の伝動機構を介して、前記クローラ14の駆動スプロケット19を回転して、クローラ14走行できる形態に構成している。21は燃料タンクである。
【0022】
車体1上には、車幅中央部に位置するセンタラインLに沿うローリング軸22の周りに、エンジン2や、発電器20、及び燃料タンク21等を搭載したエンジンベース3の左右幅中央部を回動自在に支持させている。これら車体1の上側部には、エンジンベース3上のエンジン2や、発電器20、及び燃料タンク21等の上側部を覆う形態のカバー52や、ガードフレーム23を設けている。又、前記車体1の底部には、モアデッキ24を前後四点平行リンク機構25を介して昇降調節可能に吊設している。
【0023】
前記モアデッキ24に上下方向のブレード軸を介して回転Cされるブレード51を配置して、このブレード51の回転Cにより、前記モアデッキ24の前端口部から案内される芝草を刈取りしながら、刈取跡地面に拡散排出することができる。前記モアデッキ24のブレード軸は、前記エンジン2から駆動される伝動機構等によって伝動回転して草刈作業を行う。
【0024】
前記車体1後端部の伝動ケース18上には、コントロールボックス26を設けており、無線送信機60から操作信号を受信して左右各クローラ14の駆動スプロケット19への伝動を行う。無線送信機60には、前後進レバー27A、操向レバー27Bや、コントロールボックス26の受信機と信号を送受信するアンテナ28、各種操作データを表示する表示器29を設けてある。更には、電源スイッチ30、走行速度調整ボリューム31S、刈高さ調整ボリューム31T、エンジンスタートスイッチ32S、エンジン停止スイッチ32T、刈刃クラッチ入切スイッチ33、エンジン傾斜自動手動切替スイッチ34等を配置する。
【0025】
草刈機は、傾斜地面Bを等高線に沿う方向に亘ってクローラ14走行しながら、底部のモアデッキ24のブレード51の回転Cによって芝草の刈取を行う。このため、車体1に搭載のエンジン2は、エンジン2を傾斜させる機構のない作業機では、傾斜地面Bに対して垂直方向に起立することとなるが、このエンジン2が起立した状態から傾斜地面Bの上位側傾面に向け傾動(鉛直姿勢になるように傾動)するための電動シリンダ4を、エンジンベース3後端に取付け固定したブラケット35の上端部と、車体1右側部のブラケット36との間に亘って回動自在にして、電動シリンダ4の基端部の穴37aをボルト37で車体1側ブラケット36に枢着し、シリンダロッド53先端部の穴38aをボルト38で枢着連結し、この電動シリンダ4の電動モータ80の回転によって、この電動シリンダ4のシリンダロッド53部をネジ螺合によって伸縮して、前記ボルト37、38間の間隔部を伸縮するとでエンジン2の搭載姿勢を制御できる。
【0026】
このような電動シリンダ4は、電動モータ80の駆動によって、ギヤ減速部70を介してシリンダロッド53内のネジ軸71が回転されて、このネジ軸71に螺合するシリンダロッド53と一体的なボールネジナット73が伸出、入移動されて、これらネジ軸71とボールネジナット73との螺合部や、電動シリンダ4の車体1部、及びエンジンベース3部に対する各連結部等においては、連結緩みや、ガタツキ等を生じ易い状態にあっても、この電動シリンダ4を押圧する方向に常時押圧力を働かせるようにガスダンパー5が作用しているため、これらのガタツキの発生を少なく抑えることができる。又、走行時のエンジン2等のガタツキをも少なくすることができる。
【0027】
図4(ロ)の状態において、電動シリンダ4を伸長させて、車体1に対してエンジンベース3を押し圧縮側に作動する場合は、ガスダンパー5のガス圧力の作用によって強く安定した押圧制御を行わせることができる。又、電動シリンダ4を縮小させてエンジンベース3、及びエンジン2の傾斜角度を電動シリンダ4側へ向け傾動させるよう回動制御するときも、該ガスダンパー5のガス圧力による押圧力が働いているため、電動シリンダ4の伸縮や、伸、縮作動の切替作動時、更には、この電動シリンダ4と、車体1部や、エンジンベース3との間の連結部の引き寄せ作動におけるこれらの機構部の引っ張り作用には、ガスダンパー5による同方向の押圧力が働いており、連結部に急激な緩みや、ガタツキ等が発生し難く、破損、損傷を少なくし、耐久性、安全性を高めることができる。
【0028】
ガスダンパー5は、前記ブラケット35と、車体1左側部のブラケット39との間に亘って回動自在にしてボルト40、41間の間隔部に応じて伸縮しながら、前記電動シリンダ4の伸縮に常時押圧力を負荷する構成としている。このガスダンパー5の構成は、ガス室7に例えば窒素ガスを充填しており、基端部の穴40aをボルト40で車体1側ブラケット39に枢着するダンパシリンダ6と、このダンパシリンダ6内に嵌合挿通して先端部のブラケット54の穴41aをボルト41でエンジンベース3側のブラケット35に枢着するピストンロッド42とから成り、このダンパーシリンダ6内に形成されるガス室7のガス圧力によって、先端部側のピストンロッド42を常時押し出すように押圧している。
【0029】
前記ガスダンパー5のダンパシリンダ6内には、ガス室7内のガス圧力によって移動自在のフリーピストン8を嵌合して該ガス室7とオイル室9とに仕切ると共に、このフリーピストン8のオイル室9側には、プッシュロッド10の操作で開閉されるスプール弁11を有したピストン12を移動自在に嵌合して設け、前記プッシュロッド10を押し操作している間だけ、スプール弁11を開き、オイル室9Aとオイル室9Bとの間のオイルの移動を可能にしてピストン12のロック状態を解除し、該プッシュロッド10の押し操作を解除すると前記スプール弁11を閉じてピストン12の作動をロック状態とするフリーロック形態のガスダンパー5を構成し、前記電動シリンダ4の伸縮作動に抗して常時押圧して伸縮作動に緩みを発生させないように構成する前記ガスダンパー5を、所定長さに圧縮した位置にロックさせて取付け、この取付後にプッシュロッド10の押し操作によりロック状態を解除して、電動シリンダ4の伸縮作動に常時押圧力を働かせるエンジン搭載装置の構成としている。
【0030】
前記プッシュロッド10は、ピストンロッド42の内側に嵌合挿通して、この下端部スプール弁11の摺動部43の上端面に接圧させて、上端部はピストンロッド42の上端部に突出させている。このプッシュロッド10の上端部を押込操作することによってスプール弁11を押し下げて、オリフィス孔13を上部と下部のオイル室9A,9B間に亘って連通することができ、このスプール弁11の開きによって、ピストンロッド42が伸長する際には上部オイル室9A内のオイルを下部オイル室9B内へ逃がすことができる。従って、プッシュロッド10を押込むと、スプール弁11が開かれて、オイル室9Aとオイル室9Bとの間のオイルがオリフィス孔13を通して移動可能となり、ピストン12、及びピストンロッド42の移動が可能になり、ロック状態が解除される又、プッシュロッド10の押込み操作を解放すると、ガス室7のガス圧力によって、スプール弁11は閉鎖されて、上部、下部のオイル室9A,9B間のオイルは流通できないので、ピストンロッド42の移動ができないロック状態になる。
【0031】
プッシュロッド10を押込んでいる間だけピストンロッド42のロックが解除され、プッシュロッド10の押込みを離すとロックすることができ、ピストンロッド42の伸出長さ、およびガスダンパー5のストロークを無段階に調整できる。従って、エンジンベース3のローリング軸22周りに傾斜角度を変更する場合に、前記ガスダンパー5の伸縮作用によって、電動シリンダ4によるエンジンベース3の傾斜姿勢の修正角度を円滑に、的確に制御することができる。
【0032】
前記ピストン42の先端部には、階段状に屈曲した取付座金44を設けて、この取付座金44の先端面側に、L字状に屈曲して先端部にフック穴45を形成したフックプレート46を重合させて、着脱可能で、ボルト47、ナット48により一体的に取付固定可能に構成している。又、この取付座金44の先端側には、下端縁側のヒンジ49周りに開閉回動自在の開閉アーム50を設け、この開閉アーム50をピストンロッド42側へ回動操作Gして、プッシュロッド10の先端部を押込むことによって、スプール弁11を開いてロック解除状態として、ピストンロッド42の伸縮移動を自由に行わせることができる。このロック解除状態は、前記フックプレート46のフック穴45を開閉アーム50の先端部に係合させた状態に取付固定することによって、このロック解除状態を維持することができ、又、フックプレート46を取外すことによって、ロック状態に戻すことができる(図5図8参照)。
【0033】
前記電動シリンダ4によるエンジン2の搭載姿勢制御は、例えば、車体1の左右方向傾斜角度を検出する傾斜センサを設けて、この傾斜センサが車体1の所定角度以上の横側傾斜を検出することによって、コントロールボックス26からの出力により、電動シリンダ4を伸縮作動して、エンジン2を支持したエンジンベース3を、ローリング軸22の周りに、該エンジン2、乃至車体1の傾斜とは反対側へ向けてローリングA回動して、エンジン2の搭載姿勢を鉛直方向線Dに沿うように姿勢制御することができるもので、車体1の重芯位置を傾斜地面Bの上位側に偏倚させて、車体1作業走行の安定性を図り、横転倒を防止して、機体の破損、損傷を防止する。尚、エンジン2、及びエンジンベース3のローリングA角度が左右片側で20度までしか傾動できなかったとしても、エンジン2の使用傾斜限界角度が25度であれば合計で45度までの傾斜地面Bに対応可能となるので、必ずしもエンジン2を鉛直方向線Dに沿う角度まで起立させる必要はなく、エンジン2自体の使用傾斜限界角度以下で草刈作業を行えればよい。
【0034】
このようなエンジン2搭載姿勢制御においては、前記ガスダンパー5の作用が働くため、電動シリンダ4によるエンジン2の搭載姿勢を円滑に行わせて、車体1の転倒を防止することができるものであるが、何らかの原因で、車体1が横転して、傾斜地面Bから水平地面Eに転落したような場合(図7図8参照)には、エンジンベース3上に搭載のエンジン2等の重量荷重が横方向Fへ転倒放擲される状態にあって、この水平地面Eに横転接地したクローラ14の接地衝撃力Wは大きいものであるが、このような衝撃力Wは大部分ガスダンパー5によって吸収、緩和されて、特に引っ張り方向の強度の弱い電動シリンダ4や、草刈機体の連動、連結部等に、ガタツキや、狂い、損傷等を発生し難く、エンジン2の搭載姿勢を円滑に、正確に行わせることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 車体
2 エンジン
3 エンジンベース
4 電動シリンダ
5 ガスダンパー
6 ダンパシリンダ
7 ガス室
8 フリーピストン
9 オイル室
9A オイル室
9B オイル室
10 プッシュロッド
11 スプール弁
12 ピストン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11