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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】エレベーターの給油装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/12 20060101AFI20230111BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
B66B7/12 A
B66B3/00 R
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019045076
(22)【出願日】2019-03-12
(65)【公開番号】P2020147395
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142642
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 次郎
(72)【発明者】
【氏名】酒井 大輔
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-132441(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109205435(CN,A)
【文献】特開2002-145557(JP,A)
【文献】中国実用新案第207551638(CN,U)
【文献】特開平07-101649(JP,A)
【文献】特開2015-189527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/12
B66B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターのガイドレールに接触することで浸み込んでいる潤滑油を前記ガイドレールに塗布する塗布部を有し、前記ガイドレールに沿って移動する給油器と、
前記給油器とともに前記ガイドレールに沿って移動するガイドシューおよび前記ガイドレールの間の潤滑性能の低下に対応する事象を検出する検出部と、
前記ガイドレールに設けられ、前記検出部が前記事象を検出するときに前記ガイドレールを加熱する1つ以上のガイドレール加熱部と、
を備えるエレベーターの給油装置。
【請求項2】
前記1つ以上のガイドレール加熱部は、前記ガイドレールが長手方向の一部の領域として第1領域および第2領域を有する場合において、前記第2領域における配置密度より前記第1領域における配置密度が高くなるように配置される
請求項1に記載のエレベーターの給油装置。
【請求項3】
前記1つ以上のガイドレール加熱部の少なくともいずれかは、予め設定された時間帯において前記ガイドレールを加熱する
請求項1または請求項2に記載のエレベーターの給油装置。
【請求項4】
前記検出部は、
前記ガイドシューおよび前記ガイドレールの摺動によって発生する音を計測する音センサーと、
前記音センサーに計測された音に基づいて前記事象を検出する信号処理部と、
を備える
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエレベーターの給油装置。
【請求項5】
前記検出部は、
前記ガイドシューおよび前記ガイドレールの摺動によって発生する振動を計測する振動センサーと、
前記振動センサーに計測された振動に基づいて前記事象を検出する信号処理部と、
を備える
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエレベーターの給油装置。
【請求項6】
前記検出部は、
前記ガイドレールが設けられる昇降路の気温を計測する気温センサーと、
前記気温センサーに計測された気温に基づいて前記事象を検出する信号処理部と、
を備える
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエレベーターの給油装置。
【請求項7】
前記検出部は、
前記潤滑油の油温を計測する油温センサーと、
前記油温センサーに計測された油温に基づいて前記事象を検出する信号処理部と、
を備える
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエレベーターの給油装置。
【請求項8】
前記検出部は、
前記ガイドレールの温度を計測する温度センサーと、
前記温度センサーに計測された温度に基づいて前記事象を検出する信号処理部と、
を備える
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエレベーターの給油装置。
【請求項9】
前記給油器に設けられ、前記検出部が前記事象を検出するときに前記潤滑油を加熱する潤滑油加熱部
を備える請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のエレベーターの給油装置。
【請求項10】
前記潤滑油加熱部は、予め設定された時間帯において前記潤滑油を加熱する
請求項9に記載のエレベーターの給油装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターの給油装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、エレベーターの給油装置の例を開示する。給油装置は、ケースと、塗布部材と、吸上げ部材と、伸縮体と、を備える。ケースは、潤滑油を貯留する。塗布部材は、潤滑油をガイドレールに塗布する。吸上げ部材は、ケースに貯留されている潤滑油を塗布部材に供給する。伸縮体は、内部に封入された気体の温度変化によって伸縮する。伸縮体は、気体の温度が高いときに伸張することによって、吸上げ部材を潤滑油の上方に持上げる。伸縮体は、気体の温度が低いときに収縮することによって、吸上げ部材をケースに貯留されている潤滑油に浸す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-189527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の給油装置は、吸上げ部材が潤滑油に浸る割合を調整することによって給油量を調整する。ここで、給油装置の周囲の温度が低い場合に、吸上げ部材は、粘度が高くなった潤滑油を吸い上げにくくなることがある。この場合に、ガイドレールへの給油量が不足する可能性がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされた。本発明の目的は、周囲の温度が低い場合にもガイドレールへの給油量が不足しにくいエレベーターの給油装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る給油装置は、エレベーターのガイドレールに接触することで浸み込んでいる潤滑油をガイドレールに塗布する塗布部を有し、ガイドレールに沿って移動する給油器と、給油器とともにガイドレールに沿って移動するガイドシューおよびガイドレールの間の潤滑性能の低下に対応する事象を検出する検出部と、ガイドレールに設けられ、検出部が事象を検出するときにガイドレールを加熱する1つ以上のガイドレール加熱部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、給油装置の給油器は、塗布部を有する。塗布部は、エレベーターのガイドレールに接触することで、浸み込んでいる潤滑油をガイドレールに塗布する。給油器は、ガイドレールに沿って移動する。ガイドシューは、給油器とともにガイドレールに沿って移動する。給油装置の検出部は、ガイドシューおよびガイドレールの間の潤滑性能の低下に対応する事象を検出する。検出部が当該事象を検出するときに、潤滑油またはガイドレールが加熱される。これにより、周囲の温度が低い場合にもガイドレールへの給油量が不足しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係るエレベーターの構成図である。
図2】実施の形態1に係る給油装置の構成図である。
図3】実施の形態2に係るエレベーターの構成図である。
図4】実施の形態2に係る給油装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一または相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化または省略する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るエレベーターの構成図である。
【0012】
エレベーター1は、建築物に設けられる。建築物は、複数の階床を有する。エレベーター1において、昇降路2が設けられる。昇降路2は、建築物の複数の階床の各々を貫く。エレベーター1において、複数の乗場3が設けられる。複数の乗場3の各々は、建築物の複数の階床の各々に設けられる。複数の乗場3の各々において、乗場扉4が設けられる。乗場扉4は、昇降路2に通じる扉である。
【0013】
エレベーター1において、一対のかごガイドレール5が昇降路2に設けられる。一対のかごガイドレール5の各々は、鉛直方向に延びる。一対のかごガイドレール5は、互いに平行である。一対のかごガイドレール5は、例えば左右方向において互いに対向する。一対のかごガイドレール5の各々は、ガイドレールの例である。
【0014】
エレベーター1において、一対のおもりガイドレール6が昇降路2に設けられる。一対のおもりガイドレール6の各々は、鉛直方向に延びる。一対のおもりガイドレール6は、互いに平行である。一対のおもりガイドレール6は、例えば左右方向において互いに対向する。一対のおもりガイドレール6の各々は、ガイドレールの例である。
【0015】
エレベーター1は、巻上機7と、主ロープ8と、かご9と、釣合いおもり10と、制御盤11と、を備える。
【0016】
巻上機7は、例えば昇降路2の上部に設けられる。巻上機7は、駆動力を発生させる装置である。
【0017】
主ロープ8は、巻上機7に巻きかけられる。主ロープ8は、巻上機7が発生させる駆動力によって移動する機器である。主ロープ8の一端は、例えばかご9に設けられる。主ロープ8の他端は、例えば釣合いおもり10に設けられる。
【0018】
かご9は、昇降路2に設けられる。かご9は、主ロープ8の移動に追従して昇降路2の内部を鉛直方向に走行することで、建築物の複数の階床の間で利用者などを輸送する装置である。かご9は、複数のかごガイドシュー12と、かご扉13と、を備える。
【0019】
かごガイドシュー12は、かご9の走行を一対のかごガイドレール5に沿って案内する装置である。かごガイドシュー12は、例えば上面視でコの字状の部材である。この例において、複数のかごガイドシュー12は、かご9の上部およびかご9の下部に一対ずつ配置される。かご9の上部およびかご9の下部の各々において、一対のかごガイドシュー12の一方は、かご9の左側に配置される。かご9の上部およびかご9の下部の各々において、一対のかごガイドシュー12の他方は、かご9の右側に配置される。左側のかごガイドシュー12は、左側のかごガイドレール5を前後方向および右方向から囲い込むように配置される。右側のかごガイドシュー12は、右側のかごガイドレール5を前後方向および左方向から囲い込むように配置される。複数のかごガイドシュー12の各々は、ガイドシューの例である。
【0020】
かご扉13は、利用者などがかご9に乗降しうるようにかご9が複数の階のいずれかに停止しているときに開閉する装置である。かご扉13は、停止している階床の乗場3に設けられる乗場扉4を連動して開閉させうるように、例えば乗場扉4に係り合う部材を備える。
【0021】
釣合いおもり10は、昇降路2に設けられる。釣合いおもり10は、主ロープ8を通じて巻上機7の一側にかかるかご9の重量による負荷と、主ロープ8を通じて巻上機7の他側にかかる負荷と、の釣合いを取る装置である。釣合いおもり10は、主ロープ8の移動に追従して昇降路2の内部をおもりガイドレール6に沿って走行しうるように、複数のおもりガイドシュー14を備える。
【0022】
おもりガイドシュー14は、釣合いおもり10の走行を一対のおもりガイドレール6に沿って案内する装置である。おもりガイドシュー14は、例えば上面視でコの字状の部材である。この例において、複数のおもりガイドシュー14は、釣合いおもり10の上部および釣合いおもり10の下部に一対ずつ配置される。釣合いおもり10の上部および釣合いおもり10の下部の各々において、一対のおもりガイドシュー14の一方は、釣合いおもり10の左側に配置される。釣合いおもり10の上部および釣合いおもり10の下部の各々において、一対のおもりガイドシュー14の他方は、釣合いおもり10の右側に配置される。左側のおもりガイドシュー14は、左側のおもりガイドレール6を前後方向および右方向から囲い込むように配置される。右側のおもりガイドシュー14は、右側のおもりガイドレール6を前後方向および左方向から囲い込むように配置される。複数のおもりガイドシュー14の各々は、ガイドシューの例である。
【0023】
制御盤11は、例えば昇降路2の上部に設けられる。制御盤11は、エレベーター1の動作を制御する装置である。エレベーター1の動作は、例えばかご9の走行を含む。
【0024】
エレベーター1は、給油装置15を備える。給油装置15は、ガイドシューおよびガイドレールの間に潤滑油を供給する装置である。
【0025】
図2は、実施の形態1に係る給油装置の構成図である。
【0026】
給油装置15は、給油器16と、検出部17と、潤滑油加熱部18と、スイッチ19と、制御部20と、を備える。
【0027】
給油器16は、例えば左右の各々のかごガイドシュー12の上部に設けられる。給油器16は、タンク21と、灯心22と、塗布部23と、を備える。タンク21は、潤滑油を貯留する容器である。タンク21の形状は、例えば上面視でコの字状である。灯心22は、潤滑油を例えば毛細管現象などによって吸い上げるひも状の部材である。灯心22は、少なくとも一部がタンク21に貯留されている潤滑油に浸るように、タンク21の内部に配置される。塗布部23は、ガイドレールに接触することで当該ガイドレールに潤滑油を塗布する部分である。塗布部23は、潤滑油が浸み込む例えばフェルトなどの材質で形成される。塗布部23は、灯心22の一端に接続される。塗布部23は、例えばかごガイドレール5に接触するように、タンク21の上部からかごガイドレール5に向けて露出する。
【0028】
検出部17は、ガイドシューおよびガイドレールの間の潤滑性能の低下に対応する事象を検出する部分である。ここで、潤滑性能の低下に対応する事象は、例えば潤滑性能に影響する温度などの環境要因の変化、および潤滑性能の低下によって発生する現象などを含む。検出部17は、例えば音センサー24、振動センサー25、気温センサー26、または油温センサー27などを計測装置として備える。計測装置は、潤滑性能に関する量を計測する装置である。音センサー24は、音を計測する装置である。音センサー24は、例えばかごガイドシュー12に設けられる。振動センサー25は、機械的な振動を計測する装置である。振動センサー25は、例えばかごガイドシュー12に設けられる。気温センサー26は、昇降路2の気温を計測する装置である。気温センサー26は、例えばかご9の上部に設けられる。油温センサー27は、潤滑油の油温を計測する装置である。油温センサー27は、例えばタンク21の内部に設けられる。検出部17は、信号処理部28を備える。信号処理部28は、計測装置が計測した量に基づいて、潤滑性能の低下に対応する事象を検出する部分である。
【0029】
潤滑油加熱部18は、例えば電力などのエネルギーの供給を受けて発熱することで潤滑油を加熱する部分である。潤滑油加熱部18は、例えば左右の各々のかごガイドシュー12の上部において、給油器16に設けられる。潤滑油加熱部18は、例えば投げ込み式の電気ヒーターである。潤滑油加熱部18は、例えばかご9の上部に設けられる電源から電力の供給を受ける。
【0030】
スイッチ19は、回路を開閉することによって潤滑油加熱部18による発熱の有無を切り替える部分である。この例において、スイッチ19は、潤滑油加熱部18に直列に接続される。スイッチ19は、外部からの制御信号によって開閉する例えばリレーであってもよい。
【0031】
制御部20は、給油装置15の動作を制御する部分である。給油装置15の動作は、例えば潤滑油加熱部18による発熱の有無である。制御部20は、潤滑性能の低下に対応する事象の検出を表す信号を取得しうるように、検出部17の信号処理部28に接続される。制御部20は、制御信号を出力しうるようにスイッチ19に接続される。
【0032】
続いて、給油装置15の動作を説明する。
【0033】
エレベーター1の通常運転時において、巻上機7は、制御盤11による制御に基づいて駆動力を発生させる。主ロープ8は、巻上機7が発生させる駆動力によって移動する。かご9は、主ロープ8の移動に追従して昇降路2の内部をかごガイドレール5に沿って走行する。釣合いおもり10は、主ロープ8の移動に追従して昇降路2の内部をおもりガイドレール6に沿ってかご9の反対の方向に走行する。このとき、かごガイドシュー12は、かご9を案内しながらかごガイドレール5に沿って移動する。おもりガイドシュー14は、釣合いおもり10を案内しながらおもりガイドレール6に沿って移動する。
【0034】
この例においてかごガイドシュー12の上部に設けられる給油器16は、かごガイドレール5に沿って移動する。このとき、塗布部23は、かごガイドレール5に接触しながらかごガイドレール5に沿って移動する。塗布部23は、浸み込んでいる潤滑油をかごガイドレール5の表面に塗布する。灯心22は、タンク21に貯留されている潤滑油を吸い上げることによって、塗布部23に潤滑油を供給する。
【0035】
ここで、例えば冬季などの環境温度が低い時期において、潤滑油の油温は低くなる。このとき、潤滑油の粘度は高くなる。これにより、タンク21から灯心22に吸い上げられることで塗布部23に供給される潤滑油の量が減る。塗布部23に供給される潤滑油の量が減ると、かごガイドレール5に塗布される潤滑油の量が減る。かごガイドレール5に塗布される潤滑油の量が減ると、かごガイドシュー12とかごガイドレール5との間の摩擦が大きくなる。このとき、かごガイドシュー12とかごガイドレール5との摺動によって音および機械的な振動が発生する。すなわち、かごガイドシュー12とかごガイドレール5との摺動による音または振動の発生は、潤滑性能の低下に対応する事象の例である。また、油音の低下は、潤滑性能の低下に対応する事象の例である。環境温度である昇降路2の気温の低下は、潤滑性能の低下に対応する事象の例である。
【0036】
音センサー24は、かごガイドシュー12およびかごガイドレール5の摺動によって発生する音を計測する。信号処理部28は、音センサー24に計測された音に基づいて、潤滑性能の低下に対応する事象を例えば次のように検出する。信号処理部28は、例えば計測された音の大きさが予め設定される閾値より大きいときに、潤滑性能の低下に対応する事象を検出する。あるいは、信号処理部28は、例えば計測された音の周波数が予め設定される範囲に含まれるときに、潤滑性能の低下に対応する事象を検出する。このとき、信号処理部28は、計測された音の例えばピーク周波数に基づいて当該事象の検出を行ってもよい。
【0037】
また、振動センサー25は、かごガイドシュー12およびかごガイドレール5の摺動によって発生する振動を計測する。信号処理部28は、例えば音センサー24に計測された音に対する処理と同様の処理により、振動センサー25に計測された振動に基づいて、潤滑性能の低下に対応する事象を検出する。
【0038】
また、油温センサー27は、潤滑油の油温を計測している。信号処理部28は、油温センサー27に計測された油温に基づいて、潤滑性能の低下に対応する事象を例えば次のように検出する。信号処理部28は、例えば計測された油温が予め設定される閾値より低いときに、潤滑性能の低下に対応する事象を検出する。
【0039】
また、気温センサー26は、昇降路2の気温を計測している。信号処理部28は、気温センサー26に計測された気温に基づいて、潤滑性能の低下に対応する事象を例えば次のように検出する。信号処理部28は、例えば計測された気温が予め設定される閾値より低いときに、潤滑性能の低下に対応する事象を検出する。
【0040】
検出部17が潤滑性能の低下に対応する事象を検出するときに、制御部20は、潤滑油加熱部18の発熱を開始させる制御信号をスイッチ19に出力する。スイッチ19は、入力された制御信号によって回路を閉じる。潤滑油加熱部18は、電源から電力の供給を受けて発熱する。潤滑油加熱部18は、潤滑油を加熱する。潤滑油の油温は高くなる。このとき、潤滑油の粘度は低くなる。これにより、タンク21から灯心22に吸い上げられることで塗布部23に供給される潤滑油の量が増える。塗布部23に供給される潤滑油の量が増えると、かごガイドレール5に塗布される潤滑油の量が増える。かごガイドレール5に塗布される潤滑油の量が増えると、かごガイドシュー12とかごガイドレール5との間の摩擦が小さくなる。
【0041】
制御部20は、潤滑性能の低下に対応する事象が継続している間、潤滑油加熱部18の発熱を継続させてもよい。あるいは、制御部20は、潤滑性能の低下に対応する事象が検出されてから予め設定された時間が経過するまで潤滑油加熱部18の発熱を継続させてもよい。
【0042】
制御部20は、潤滑性能の低下に対応する事象が予め設定された時間帯において検出されるときに、潤滑油加熱部18を発熱させてもよい。予め設定された時間帯は、例えば駅などに設けられるエレベーター1において、通勤時間帯の前の時間帯などである。なお、制御部20は、潤滑性能の低下に対応する事象の検出とは独立して、予め設定された時間帯において潤滑油加熱部18を発熱させてもよい。
【0043】
以上に説明したように、実施の形態1に係る給油装置15は、給油器16と、検出部17と、潤滑油加熱部18と、を備える。給油機は、塗布部23を有する。塗布部23は、エレベーター1のガイドレールに接触することで、浸み込んでいる潤滑油をガイドレールに塗布する。給油器16は、ガイドレールに沿って移動する。ガイドシューは、給油器16とともにガイドレールに沿って移動する。検出部17は、ガイドシューおよびガイドレールの間の潤滑性能の低下に対応する事象を検出する。潤滑油加熱部18は、給油器16に設けられる。潤滑油加熱部18は、検出部17が潤滑性能の低下に対応する事象を検出するときに潤滑油を加熱する。
【0044】
潤滑性能の低下に対応する事象が検出されるときに、潤滑油の粘度は、潤滑油加熱部18の加熱によって低くなる。これにより、ガイドレールに塗布される潤滑油の量が増える。このため、周囲の温度が低い場合にもガイドレールへの給油量が不足しにくい。また、潤滑油の粘度が低下することによって、潤滑油そのものの潤滑性能も高まる。このため、周囲の温度が低い場合にも、ガイドシューとガイドレールとの間の摩擦が小さくなる。
【0045】
また、潤滑油加熱部18は、予め設定された時間帯において潤滑油を加熱する。
【0046】
これにより、エレベーター1の運転が行われる前に潤滑油の油温の低下を予防できる。また、例えば夜間などの気温が低下する時間帯にエレベーター1の運転が行われない場合に、潤滑油加熱部18による電力などの消費が抑制される。
【0047】
また、検出部17は、音センサー24と、信号処理部28と、を備える。音センサー24は、ガイドシューおよびガイドレールの摺動によって発生する音を計測する。信号処理部28は、音センサー24に計測された音に基づいて潤滑性能の低下に対応する事象を検出する。
【0048】
これにより、潤滑性能の低下の結果として発生する音に基づいて、給油装置15は、潤滑性能の低下を感知できる。潤滑性能の低下を感知したときに潤滑油を加熱することによって、給油装置15は、低下した潤滑性能を回復させられる。音の発生によって潤滑性能を回復させるので、異音の発生による不快感を利用者に与えにくくなる。
【0049】
また、検出部17は、振動センサー25と、信号処理部28と、を備える。振動センサー25は、ガイドシューおよびガイドレールの摺動によって発生する振動を計測する。信号処理部28は、振動センサー25に計測された振動に基づいて潤滑性能の低下に対応する事象を検出する。
【0050】
これにより、潤滑性能の低下の結果として発生する振動に基づいて、給油装置15は、潤滑性能の低下を感知できる。潤滑性能の低下を感知したときに潤滑油を加熱することによって、給油装置15は、低下した潤滑性能を回復させられる。振動センサー25は機械的な振動を計測するため、給油装置15は、暗騒音が大きい場合においても潤滑性能の低下を精度よく感知できる。
【0051】
また、検出部17は、気温センサー26と、信号処理部28と、を備える。気温センサー26は、ガイドレールが設けられる昇降路2の気温を計測する。信号処理部28は、気温センサー26に計測された気温に基づいて潤滑性能の低下に対応する事象を検出する。
【0052】
これにより、潤滑性能の変化の原因となる気温の変化に基づいて、給油装置15は、潤滑性能の低下を予見できる。潤滑性能の低下を予見したときに潤滑油を加熱することによって、給油装置15は、潤滑性能の低下を予防できる。
【0053】
また、検出部17は、油温センサー27と、信号処理部28と、を備える。油温センサー27は、潤滑油の温度を計測する。信号処理部28は、油温センサー27に計測された油温に基づいて潤滑性能の低下に対応する事象を検出する。
【0054】
これにより、潤滑性能の変化の原因となる油温の変化に基づいて、給油装置15は、潤滑性能の低下を予見できる。潤滑性能の低下を予見したときに潤滑油を加熱することによって、給油装置15は、潤滑性能の低下を予防できる。
【0055】
なお、給油器16は、左右の各々のおもりガイドシュー14の上部に設けられてもよい。潤滑油加熱部18は、例えば左右の各々のおもりガイドシュー14の上部において、給油器16に設けられてもよい。
【0056】
また、音センサー24は、おもりガイドシュー14に設けられてもよい。振動センサー25は、おもりガイドシュー14に設けられてもよい。振動センサー25は、かごガイドレール5またはおもりガイドレール6に設けられてもよい。気温センサー26は、例えば昇降路2の壁面に設けられてもよい。このとき、気温センサー26は、計測した気温を表す情報を例えば無線通信によって発信してもよい。
【0057】
また、検出部17は、音センサー24、振動センサー25、油温センサー27、気温センサー26、またはその他のセンサーのいずれかを単一の計測装置として備えてもよい。検出部17は、音センサー24、振動センサー25、油温センサー27、気温センサー26、またはその他のセンサーの少なくともいずれかを複数の計測装置として備えてもよい。信号処理部28は、複数の計測装置に計測された量を組み合わせて潤滑性能の低下に対応する事象を検出してもよい。
【0058】
また、信号処理部28は、制御部20と一体のハードウェアで構成されてもよい。信号処理部28は、独立したハードウェアで構成されてもよい。信号処理部28は、音センサー24、振動センサー25、油温センサー27、気温センサー26、またはその他のセンサーのいずれかと一体のハードウェアで構成されてもよい。
【0059】
また、潤滑油加熱部18に供給される電力は、かご9または釣合いおもり10の制動のときに回収される回生電力であってもよい。これにより、エレベーター1においてエネルギーが有効に利用される。
【0060】
実施の形態2.
実施の形態2では、実施の形態1で開示された例と相違する点について詳しく説明する。実施の形態2で説明しない特徴については、実施の形態1で開示された例のいずれの特徴が採用されてもよい。
【0061】
図3は、実施の形態2に係るエレベーターの構成図である。
【0062】
一対のかごガイドレール5の各々は、長手方向の一部の領域として第1領域R1および第2領域R2を有する。第1領域R1は、例えば基準階の高さに対応する領域である。第2領域R2は、例えば基準階より高い階床の高さに対応する領域である。
【0063】
給油装置15は、1つ以上のガイドレール加熱部29を備える。この例において、給油装置15は、複数のガイドレール加熱部29を備える。
【0064】
ガイドレール加熱部29は、例えば電力などのエネルギーの供給を受けて発熱することでガイドレールを加熱する部分である。ガイドレール加熱部29は、例えば電気ヒーターである。ガイドレール加熱部29は、例えば磁石、ネジ止め、またはガイドレールをつかむ構造などによってガイドレールに取り付けられる。この例において、複数のガイドレール加熱部29は、例えば左側のかごガイドレール5の左側面に並んで設けられる。また、複数のガイドレール加熱部29は、例えば右側のかごガイドレール5の右側面に並んで設けられる。
【0065】
複数のガイドレール加熱部29の一部は、ガイドレールの第1領域R1において鉛直方向に並んで配置される。複数のガイドレール加熱部29の一部は、ガイドレールの第2領域R2において鉛直方向に並んで配置される。第1領域R1におけるガイドレール加熱部29の配置密度は、第2領域R2におけるガイドレール加熱部29の配置密度より高い。ここで、配置密度は、例えばガイドレールの単位長さ当たりに配置されているガイドレール加熱部29の数である。
【0066】
図4は、実施の形態2に係る給油装置の構成図である。
【0067】
給油装置15の検出部17は、1つ以上の温度センサー30を計測装置として備える。1つ以上の温度センサー30の各々は、ガイドレールの温度を計測する装置である。この例において、検出部17は、複数の温度センサー30を備える。複数の温度センサー30の一部は、例えば左側のかごガイドレール5の左側面に設けられる。複数の温度センサー30の一部は、例えば右側のかごガイドレール5の右側面に設けられる。
【0068】
この例において、スイッチ19は、複数のガイドレール加熱部29に直列に接続される。スイッチ19は、図示されない潤滑油加熱部18に直列に接続されてもよい。
【0069】
続いて、給油装置15の動作を説明する。
【0070】
例えば冬季などの環境温度が低い時期において、ガイドレールの温度は低下する。ガイドレールの温度が低下すると、ガイドレールに塗布されている潤滑油の温度が低下する。潤滑油の温度が低下すると、潤滑油の粘度が高くなる。潤滑油の粘度が高くなることによって、潤滑油そのものの潤滑性能は低くなる。このとき、ガイドシューとガイドレールとの間の摩擦が大きくなる。すなわち、ガイドレールの温度の低下は、潤滑性能の低下に対応する事象の例である。
【0071】
ここで、複数の温度センサー30の各々は、かごガイドレール5の温度を計測している。信号処理部28は、複数の温度センサー30の各々に計測された温度に基づいて、潤滑性能の低下に対応する事象を例えば次のように検出する。信号処理部28は、例えば複数の温度センサー30の各々によって計測された温度から代表温度を導出する。信号処理部28は、代表温度が予め設定される閾値より低いときに、潤滑性能の低下に対応する事象を検出する。このとき、信号処理部28は、例えば複数の温度センサー30の各々に計測される温度の最高値を代表温度として当該事象の検出を行ってもよい。あるいは、信号処理部28は、例えば複数の温度センサー30の各々に計測される温度の平均値を代表温度として当該事象の検出を行ってもよい。あるいは、信号処理部28は、例えば第1領域R1に配置される温度センサー30に計測される温度を代表温度として当該事象の検出を行ってもよい。
【0072】
検出部17が潤滑性能の低下に対応する事象を検出するときに、制御部20は、ガイドレール加熱部29および潤滑油加熱部18の発熱を開始させる制御信号をスイッチ19に出力する。スイッチ19は、入力された制御信号によって回路を閉じる。複数のガイドレール加熱部29の各々は、電源から電力の供給を受けて発熱する。複数のガイドレール加熱部29の各々は、例えば一対のかごガイドレール5の各々を加熱する。一対のガイドレールの各々の温度は高くなる。ガイドレールの温度が高くなると、ガイドレールに塗布されている潤滑油の温度が高くなる。潤滑油の温度が高くなると、潤滑油の粘度が低下する。潤滑油の粘度が低下することによって、潤滑油そのものの潤滑性能は高くなる。このとき、ガイドシューとガイドレールとの間の摩擦が小さくなる。
【0073】
制御部20は、潤滑性能の低下に対応する事象が継続している間、複数のガイドレール加熱部29の各々の発熱を継続させてもよい。あるいは、制御部20は、潤滑性能の低下に対応する事象が検出されてから予め設定された時間が経過するまで複数のガイドレール加熱部29の各々の発熱を継続させてもよい。
【0074】
制御部20は、潤滑性能の低下に対応する事象が予め設定された時間帯において検出されるときに、複数のガイドレール加熱部29の各々を発熱させてもよい。予め設定された時間帯は、例えば駅などに設けられるエレベーター1において、通勤時間帯の前の時間帯などである。制御部20は、複数のガイドレール加熱部29の一部を発熱させてもよい。発熱させられるガイドレール加熱部29は、例えば第1領域R1に配置されるガイドレール加熱部29であってもよい。なお、制御部20は、潤滑性能の低下に対応する事象の検出とは独立して、予め設定された時間帯において複数のガイドレール加熱部29の各々を発熱させてもよい。
【0075】
以上に説明したように、実施の形態2に係る給油装置15は、給油器16と、検出部17と、1つ以上のガイドレール加熱部29と、を備える。給油機は、塗布部23を有する。塗布部23は、エレベーター1のガイドレールに接触することで、浸み込んでいる潤滑油をガイドレールに塗布する。給油器16は、ガイドレールに沿って移動する。ガイドシューは、給油器16とともにガイドレールに沿って移動する。検出部17は、ガイドシューおよびガイドレールの間の潤滑性能の低下に対応する事象を検出する。1つ以上のガイドレールの各々は、ガイドレールに設けられる。1つ以上のガイドレールの各々は、検出部17が潤滑性能の低下に対応する事象を検出するときにガイドレールを加熱する。
【0076】
潤滑性能の低下に対応する事象が検出されるときに、ガイドレールに塗布されている潤滑油の粘度は、ガイドレールの加熱によって低くなる。これにより、潤滑油そのものの潤滑性能が高まる。このため、周囲の温度が低い場合にも、ガイドシューとガイドレールとの間の摩擦が小さくなる。また、加熱されたガイドレールによって、当該ガイドレールに接触している塗布部23に浸み込んでいる潤滑油の温度も高くなる。このとき、塗布部23に浸み込んでいる潤滑油の粘度が低くなる。これにより、ガイドレールに塗布される潤滑油の量が増える。このため、周囲の温度が低い場合にもガイドレールへの給油量が不足しにくい。
【0077】
また、ガイドレールは、長手方向の一部の領域として第1領域R1および第2領域R2を有する。この場合において、1つ以上のガイドレール加熱部29は、第2領域R2における配置密度より第1領域R1における配置密度が高くなるように配置される。
【0078】
例えば基準階などの運転頻度が高い部分のガイドレールが重点的に加熱される。これにより、運転頻度が高い部分においても、潤滑性能の低下による異音などの発生が抑制される。なお、第1領域R1は、基準階以外の運転頻度が高い部分であってもよい。あるいは、第1領域R1は、個々のエレベーター1において異音が発生しやすい箇所を含む部分であってもよい。あるいは、第1領域R1は、環境温度が低い箇所を含む部分であってもよい。環境温度が低い箇所は、例えば駅などに設けられるエレベーター1において、プラットホーム階の高さを含む箇所である。
【0079】
また、1つ以上のガイドレール加熱部29の少なくともいずれかは、予め設定された時間帯においてガイドレールを加熱する。
【0080】
これにより、エレベーター1の運転が行われる前にガイドレールの温度の低下を予防できる。また、例えば夜間などの気温が低下する時間帯にエレベーター1の運転が行われない場合に、ガイドレール加熱部29による電力などの消費が抑制される。
【0081】
また、検出部17は、温度センサー30と、信号処理部28と、を備える。温度センサー30は、ガイドレールの温度を計測する。信号処理部28は、温度センサー30に計測された温度に基づいて潤滑性能の低下に対応する事象を検出する。
【0082】
これにより、潤滑性能の変化の原因となるガイドレールの温度の変化に基づいて、給油装置15は、潤滑性能の低下を予見できる。潤滑性能の低下を予見したときにガイドレールを加熱することによって、給油装置15は、潤滑性能の低下を予防できる。
【0083】
なお、温度センサー30は、おもりガイドレール6に設けられてもよい。温度センサー30は、1つのガイドレールに対して1つのみ配置されてもよい。
【0084】
また、この例において、給油装置15は、潤滑油加熱部18を備えなくてもよい。給油装置15は、潤滑油加熱装置と1つ以上のガイドレール加熱装置との両方を備えてもよい。
【0085】
また、複数のガイドレール加熱部29は、ガイドレールの長手方向において均等に並んで配置されてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 エレベーター、 2 昇降路、 3 乗場、 4 乗場扉、 5 かごガイドレール、 6 おもりガイドレール、 7 巻上機、 8 主ロープ、 9 かご、 10 釣合いおもり、 11 制御盤、 12 かごガイドシュー、 13 かご扉、 14 おもりガイドシュー、 15 給油装置、 16 給油器、 17 検出部、 18 潤滑油加熱部、 19 スイッチ、 20 制御部、 21 タンク、 22 灯心、 23 塗布部、 24 音センサー、 25 振動センサー、 26 気温センサー、 27 油温センサー、 28 信号処理部、 29 ガイドレール加熱部、 30 温度センサー、 R1 第1領域、 R2 第2領域
図1
図2
図3
図4