(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】作業機械の油圧駆動装置
(51)【国際特許分類】
F15B 11/08 20060101AFI20230111BHJP
F15B 11/17 20060101ALI20230111BHJP
F15B 11/02 20060101ALI20230111BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
F15B11/08 A
F15B11/17
F15B11/02 M
E02F9/22 K
(21)【出願番号】P 2019055180
(22)【出願日】2019-03-22
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】藤田 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】平岡 京
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-150198(JP,A)
【文献】特開2003-232303(JP,A)
【文献】特開2012-072636(JP,A)
【文献】特開平06-336750(JP,A)
【文献】特開2011-179208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00-11/22;21/14
E02F 3/42- 3/43; 3/84- 3/85; 9/20- 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体及び作業装置を備えた作業機械であって前記作業装置が当該機体に起伏可能に支持されるブームと当該ブームの先端部に回動可能に連結されるアームと当該アームの先端部に取付けられる掘削用のバケットとを含む作業機械に設けられ、前記ブーム、前記アーム及び前記バケットを油圧により駆動するための装置であって、
作動油の供給を受けることにより伸縮して前記ブームにブーム上げ動作とブーム下げ動作とを行わせるブームシリンダと、
作動油の供給を受けることにより伸縮して前記アームにアーム引き動作とアーム押し動作とを行わせるアームシリンダと、
作動油の供給を受けて前記バケットにバケット掘削動作とバケット開き動作とを行わせるバケットシリンダと、
前記ブームシリンダ及び前記バケットシリンダにそれぞれパラレルに作動油を供給するように当該ブームシリンダ及び当該バケットシリンダに接続される第1油圧ポンプと、
前記アームシリンダに作動油を供給するように当該アームシリンダに接続される第2油圧ポンプと、
前記第1油圧ポンプと前記ブームシリンダとの間に介在し、前記ブームに前記ブーム上げ動作を行わせるためのブーム上げパイロット圧及び前記ブームに前記ブーム下げ動作を行わせるためのブーム下げパイロット圧の供給を受けて前記第1油圧ポンプから前記ブームシリンダに供給される作動油の流量を変化させるように開閉動作することが可能なパイロット操作式のブーム制御弁と、
前記第2油圧ポンプと前記アームシリンダとの間に介在し、前記アームに前記アーム引き動作を行わせるためのアーム引きパイロット圧及び前記アームに前記アーム押し動作を行わせるためのアーム押しパイロット圧の供給を受けて前記第2油圧ポンプから前記アームシリンダに供給される作動油の流量を変化させるように開閉動作することが可能なパイロット操作式のアーム制御弁と、
前記第1油圧ポンプと前記バケットシリンダとの間に介在し、前記バケットに前記バケット掘削動作を行わせるためのバケット掘削パイロット圧及び前記バケットに前記バケット
開き動作を行わせるためのバケット
開きパイロット圧の供給を受けて前記第1油圧ポンプから前記バケットシリンダに供給される作動油の流量を変化させるように開閉動作することが可能なパイロット操作式のバケット制御弁と、
前記第2油圧ポンプと前記ブームシリンダとの間に介在し、前記ブーム上げパイロット圧の供給を受けて前記第2油圧ポンプから前記ブームシリンダに供給される作動油の流量を変化させるように開閉動作することが可能なパイロット操作式のブーム上げ増速制御弁と、
前記ブームに前記ブーム上げ動作及び前記ブーム下げ動作をそれぞれ行わせるためのブーム上げ操作及びブーム下げ操作を受けて当該ブーム上げ操作及び当該ブーム下げ操作にそれぞれ対応した前記ブーム上げパイロット圧及び前記ブーム下げパイロット圧を前記ブーム制御弁に与えるとともに前記ブーム上げパイロット圧を前記ブーム上げ増速制御弁に与えるブーム操作装置と、
前記アームに前記アーム引き動作及び前記アーム押し動作をそれぞれ行わせるためのアーム引き操作及びアーム押し操作を受けて当該アーム引き操作及び当該アーム押し操作にそれぞれ対応した前記アーム引きパイロット圧及び前記アーム押しパイロット圧を前記アーム制御弁に与えるアーム操作装置と、
前記バケットに前記バケット掘削動作及び前記バケット開き動作をそれぞれ行わせるためのバケット掘削操作及びバケット開き操作を受けて当該バケット掘削操作及び当該バケット開き操作にそれぞれ対応した前記バケット掘削パイロット圧及び前記バケット開きパイロット圧を前記バケット制御弁に与えるバケット操作装置と、
前記バケット操作装置と前記バケット制御弁との間に介在し、バケット掘削制限指令の入力を受けることにより当該バケット掘削制限指令に応じて前記バケット操作装置から前
記バケット制御弁に与えられる前記バケット掘削パイロット圧を制限するように作動するバケット掘削制限弁と、
前記アーム操作装置に前記アーム引き操作が与えられているときに前記アームに前記アーム引き動作を行わせるための負荷であるアーム引き負荷に対応する物理量を検出するアーム負荷検出装置と、
前記ブーム操作装置、前記アーム操作装置及び前記バケット操作装置にそれぞれ前記ブーム上げ操作、前記アーム引き操作及び前記バケット掘削操作を同時に与える複合操作が行われた時に前記バケット掘削パイロット圧を制限するように前記バケット掘削制限弁に前記バケット掘削制限指令を入力するバケット掘削制限指令部と、を備え、
前記バケット掘削制限指令部は、前記複合操作が行われているときに前記アーム負荷検出装置により検出される前記物理量が予め設定された負荷判定値よりも大きい場合には前記物理量が前記負荷判定値以下の場合に比べて前記バケット掘削制限弁による前記バケット掘削パイロット圧の制限を小さくする、作業機械の油圧駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の作業機械の油圧駆動装置であって、前記アーム負荷検出装置は、前記物理量として前記アームシリンダの推力であるアームシリンダ推力を検出する、作業機械の油圧駆動装置。
【請求項3】
請求項2記載の作業機械の油圧駆動装置であって、前記アーム負荷検出装置は、前記アームシリンダのヘッド側の作動油の圧力であるアームシリンダへッド圧を検出するアームシリンダへッド圧センサと、前記アームシリンダのロッド側の作動油の圧力であるアームシリンダロッド圧を検出するアームシリンダロッド圧センサと、前記アームシリンダへッド圧及び前記アームシリンダロッド圧に基づいて前記アームシリンダ推力を演算するアームシリンダ推力演算部と、を含む、作業機械の油圧駆動装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の作業機械の油圧駆動装置であって、前記バケット掘削制限指令部は、前記複合操作が行われているときに前記アーム負荷検出装置により検出される前記物理量が前記負荷判定値
より大きい場合には、前記バケット掘削パイロット圧の制限を最小にするように構成されている、作業機械の油圧駆動装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の作業機械の油圧駆動装置であって、前記バケット掘削制限指令部は、前記アーム引きパイロット圧が一定以下の場合には前記アーム引き負荷に対応する前記物理量の大きさに限らず前記バケット掘削制限弁による前記バケット掘削パイロット圧の制限を最小にするように構成されている、作業機械の油圧駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブーム、アーム及びバケットを含む作業装置を備えた油圧ショベル等の作業機械の当該作業装置を油圧により駆動するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベル等の作業機械における掘削用の作業装置を駆動するための装置として、特許文献1の
図3に示されるものが知られている。この装置は、ブーム、アーム及びバケットをそれぞれ動かすための油圧アクチュエータであるブームシリンダ、アームシリンダ及びバケットシリンダと、これらのシリンダに作動油を供給するための第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプと、前記ブーム、アーム及びバケットをそれぞれ操作するためのブームリモコン弁、アームリモコン弁、及びバケットリモコン弁と、を備える。
【0003】
前記第1油圧ポンプは、前記ブームシリンダ及び前記バケットシリンダに対してパラレルに作動油を供給するように当該ブームシリンダ及び当該バケットシリンダにそれぞれブームコントロールバルブ及びバケットコントロールバルブを介して接続され、前記第2油圧ポンプは前記アームシリンダに作動油を供給するように当該アームシリンダにアームコントロールバルブを介して接続されるとともに、前記ブームシリンダに増速用の作動油を供給するように当該ブームシリンダにブーム合流コントロールバルブを介して接続される。前記ブームコントロールバルブ、アームコントロールバルブ、バケットコントロールバルブ及びブーム合流コントロールバルブのそれぞれはパイロット操作式の油圧切換弁により構成され、それぞれのパイロットポートに入力されるパイロット圧に応じた開度で開弁して各シリンダに供給される作動油の流量を変化させる。
【0004】
前記ブームリモコン弁、前記アームリモコン弁及び前記バケットリモコン弁のそれぞれは、オペレータによる操作を受けることにより、当該操作に対応したパイロット圧が対応するコントロールバルブのパイロットポートに入力されるのを許容するように開弁する。例えば、前記バケットリモコン弁にバケットを掘削方向(すくい方向)に動かすためのバケット掘削操作が与えられると、当該バケットリモコン弁は前記バケットコントロールバルブのバケット掘削パイロットポートに前記バケット掘削操作に対応した大きさのパイロット圧すなわちバケット掘削パイロット圧が供給されるのを許容するように開弁する。また、前記ブームリモコン弁に前記ブームをブーム上げ方向に動かすためのブーム上げ操作が与えられると、当該ブームリモコン弁は前記ブームコントロールバルブ及び前記ブーム合流コントロールバルブのそれぞれのブーム上げパイロットポートに前記ブーム上げ操作に対応した大きさのパイロット圧すなわちブーム上げパイロット圧が供給されるのを許容するように開弁する。
【0005】
前記装置は、さらに、前記バケット掘削パイロットポートに入力される前記バケット掘削パイロット圧を減圧するための電磁比例減圧弁と、当該電磁比例減圧弁に減圧指令を入力するコントローラと、を備える。前記コントローラは、前記ブームを上げ方向に動かすためのブーム上げ操作、前記アームを引き方向に動かすためのアーム引き操作、及び前記バケット掘削操作がそれぞれ前記ブームリモコン弁、アームリモコン弁及びバケットリモコン弁に与えられる複合操作時に前記電磁比例減圧弁に指令を与えて前記バケット掘削パイロットポートに与えられる前記バケット掘削パイロット圧を制限する(つまり前記バケット掘削操作に対応するパイロット圧よりも低くする)制御を実行する。
【0006】
前記制御が行われる理由は次のとおりである。前記複合操作時におけるバケット掘削動作による負荷は概してブーム上げ動作による負荷に比べて小さい。この状態で前記第1油圧ポンプから吐出される作動油は前記ブームシリンダ及び前記バケットのシリンダのうちのバケットシリンダに偏って大流量で流れてしまい、ブーム上げ動作に必要なポンプ圧を確保できなくなるおそれがある。前記制御は、このような複合操作時に前記バケット掘削パイロット圧を制限して前記バケットコントロールバルブの開口面積を絞ることにより、前記ブーム上げ動作に必要なポンプ圧を確保することを目的とする。具体的に、前記コントローラは、特許文献1の
図3及び
図4に示されるように、前記複合操作時においてブーム上げパイロット圧とアーム引きパイロット圧の和を演算し、当該パイロット圧の和が一定以上の場合、つまりブームリモコン弁及びアームリモコン弁に対して大きなブーム上げ操作及びアーム上げ操作が与えられる場合、に前記バケット掘削パイロット圧を制限する制御を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1に記載される装置は、ブーム上げ操作及びアーム引き操作の大きさに基づいてバケット掘削パイロット圧の制限の実行の要否を判断するものであるので、ブーム上げ操作が極めて小さい場合(例えばアーム引き動作とバケット掘削動作の複合による掘削作業中にブームを徐々に上げるためにブーム上げ操作が小さく抑えられる場合)やブーム上げ操作及びアーム引き操作の双方が比較的抑えられている場合にバケット掘削パイロット圧が十分に制限されず、その結果として正常なブーム上げ動作が不能となるおそれがある。また、このような不都合を回避するために前記複合操作時において前記バケット掘削パイロット圧の制限を無条件に実行することは、バケット掘削動作による負荷が大きい場合、つまりある程度の負荷で掘削作業が行われている場合、にもバケットシリンダに供給される作動油の流量を制限して当該バケット掘削動作の速度を必要以上に低下させることになる。このことは、掘削作業効率の低下を招く。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ブーム、アーム及びバケットを含む作業装置を備えた作業機械に設けられて当該作業装置を油圧により駆動する油圧駆動装置であって、前記ブーム及び前記バケットを共通の油圧ポンプにより駆動しながら掘削作業の効率の著しい低下を伴うことなくブーム上げ動作を確保することが可能な油圧駆動装置を提供することを目的とする。
【0010】
提供されるのは、機体及び作業装置を備えた作業機械であって前記作業装置が当該機体に起伏可能に支持されるブームと当該ブームの先端部に回動可能に連結されるアームと当該アームの先端部に取付けられる掘削用のバケットとを含む作業機械に設けられ、前記ブーム、前記アーム及び前記バケットを油圧により駆動するための装置であって、作動油の供給を受けることにより伸縮して前記ブームにブーム上げ動作とブーム下げ動作とを行わせるブームシリンダと、作動油の供給を受けることにより伸縮して前記アームにアーム引き動作とアーム押し動作とを行わせるアームシリンダと、作動油の供給を受けて前記バケットにバケット掘削動作とバケット開き動作とを行わせるバケットシリンダと、前記ブームシリンダ及び前記バケットシリンダにそれぞれパラレルに作動油を供給するように当該ブームシリンダ及び当該バケットシリンダに接続される第1油圧ポンプと、前記アームシリンダに作動油を供給するように当該アームシリンダに接続される第2油圧ポンプと、前記第1油圧ポンプと前記ブームシリンダとの間に介在し、前記ブームに前記ブーム上げ動作を行わせるためのブーム上げパイロット圧及び前記ブームに前記ブーム下げ動作を行わせるためのブーム下げパイロット圧の供給を受けて前記第1油圧ポンプから前記ブームシリンダに供給される作動油の流量を変化させるように開閉動作することが可能なパイロッ
ト操作式のブーム制御弁と、前記第2油圧ポンプと前記アームシリンダとの間に介在し、前記アームに前記アーム引き動作を行わせるためのアーム引きパイロット圧及び前記アームに前記アーム押し動作を行わせるためのアーム押しパイロット圧の供給を受けて前記第2油圧ポンプから前記アームシリンダに供給される作動油の流量を変化させるように開閉動作することが可能なパイロット操作式のアーム制御弁と、前記第1油圧ポンプと前記バケットシリンダとの間に介在し、前記バケットに前記バケット掘削動作を行わせるためのバケット掘削パイロット圧及び前記バケットに前記バケット開き動作を行わせるためのバケット開きパイロット圧の供給を受けて前記第1油圧ポンプから前記バケットシリンダに供給される作動油の流量を変化させるように開閉動作することが可能なパイロット操作式のバケット制御弁と、前記第2油圧ポンプと前記ブームシリンダとの間に介在し、前記ブーム上げパイロット圧の供給を受けて前記第2油圧ポンプから前記ブームシリンダに供給される作動油の流量を変化させるように開閉動作することが可能なパイロット操作式のブーム上げ増速制御弁と、前記ブームに前記ブーム上げ動作及び前記ブーム下げ動作をそれぞれ行わせるためのブーム上げ操作及びブーム下げ操作を受けて当該ブーム上げ操作及び当該ブーム下げ操作にそれぞれ対応した前記ブーム上げパイロット圧及び前記ブーム下げパイロット圧を前記ブーム制御弁に与えるとともに前記ブーム上げパイロット圧を前記ブーム上げ増速制御弁に与えるブーム操作装置と、前記アームに前記アーム引き動作及び前記アーム押し動作をそれぞれ行わせるためのアーム引き操作及びアーム押し操作を受けて当該アーム引き操作及び当該アーム押し操作にそれぞれ対応した前記アーム引きパイロット圧及び前記アーム押しパイロット圧を前記アーム制御弁に与えるアーム操作装置と、前記バケットに前記バケット掘削動作及び前記バケット開き動作をそれぞれ行わせるためのバケット掘削操作及びバケット開き操作を受けて当該バケット掘削操作及び当該バケット開き操作にそれぞれ対応した前記バケット掘削パイロット圧及び前記バケット開きパイロット圧を前記バケット制御弁に与えるバケット操作装置と、前記バケット操作装置と前記バケット制御弁との間に介在し、バケット掘削制限指令の入力を受けることにより当該バケット掘削制限指令に応じて前記バケット操作装置から前記バケット制御弁に与えられる前記バケット掘削パイロット圧を制限するように作動するバケット掘削制限弁と、前記アーム操作装置に前記アーム引き操作が与えられているときに前記アームに前記アーム引き動作を行わせるための負荷であるアーム引き負荷に対応する物理量を検出するアーム負荷検出装置と、前記ブーム操作装置、前記アーム操作装置及び前記バケット操作装置にそれぞれ前記ブーム上げ操作、前記アーム引き操作及び前記バケット掘削操作を同時に与える複合操作が行われているときに前記バケット掘削パイロット圧を制限するように前記バケット掘削制限弁に前記バケット掘削制限指令を入力するバケット掘削制限指令部と、を備える。さらに、当該バケット掘削制限指令部は、前記複合操作が行われているときに前記アーム負荷検出装置により検出される前記物理量が予め設定された負荷判定値よりも大きい場合には前記物理量が前記負荷判定値以下の場合に比べて前記バケット掘削制限弁による前記バケット掘削パイロット圧の制限を小さくする。
【0011】
なお、ここでいう「バケット掘削パイロット圧の制限を小さくする」態様には、当該制限を最小にする(すなわち実質上当該バケット掘削パイロット圧の制限を解除する)ことも包含される。
【0012】
前記装置における前記バケット掘削制限指令部は、前記アーム引き負荷に相当する物理量に基づき、前記複合操作の際にバケット掘削パイロット圧を制限するか否かの判断を適正に行うことができる。具体的に、前記アーム引き負荷に対応する前記物理量が前記負荷判定値以下である状態(例えば地面の上方において前記バケットが空中動作する状態)、すなわち低アーム引き負荷状態、で前記複合操作が行われているときには前記バケット掘削パイロット圧を相対的に大きく制限して前記バケット制御弁の開弁度合いを抑える、つまりバケットシリンダに供給される作動油の流量を制限する、ことにより、前記第1油圧ポンプから吐出される作動油の大部分が前記バケットシリンダに流れることによる当該第1油圧ポンプの吐出圧(ポンプ圧)の低下を抑えてブーム上げ動作に必要な当該第1油圧ポンプのポンプ圧を確保することができる。一方、前記アーム引き負荷に対応する前記物理量が前記負荷判定値よりも大きい状態(例えばバケットが地面から抵抗を受けながら掘削動作を行っている状態)、すなわち高アーム引き負荷状態、で前記複合操作が行われているときには前記バケット掘削パイロット圧の制限を小さくしてバケットシリンダに供給される作動油の流量を十分に確保することにより、バケット掘削動作の速度の著しい低下及びこれに伴う掘削作業等の効率の低下を抑えることができる。つまり、前記アーム引き負荷に相当する物理量を指標とすることにより、前記バケット掘削パイロット圧の制限の必要性を的確に判定することができる。このことは、作業効率の著しい低下を伴うことなく確実にブーム上げ動作を行うことを可能にする。
【0013】
前記アーム負荷検出装置は、前記物理量として前記アームシリンダの推力であるアームシリンダ推力を検出するものが、好適である。このことは、前記バケット掘削制限指令部が前記アーム引き負荷に直接対応する前記アームシリンダ推力に基づいてより適正な判断(バケット掘削パイロット圧の制限についての判断)を行うことを可能にする。
【0014】
具体的に、前記アーム負荷検出装置は、前記アームシリンダのヘッド側の作動油の圧力であるアームシリンダへッド圧を検出するアームシリンダへッド圧センサと、前記アームシリンダのロッド側の作動油の圧力であるアームシリンダロッド圧を検出するアームシリンダロッド圧センサと、前記アームシリンダへッド圧及び前記アームシリンダロッド圧に基づいて前記アームシリンダ推力を演算するアームシリンダ推力演算部と、を含むものが好適である。
【0015】
前記バケット掘削制限指令部は、前記複合操作が行われているときに前記アーム負荷検出装置により検出される前記物理量が前記負荷判定値より大きい場合には、前記バケット掘削パイロット圧の制限を最小にする(例えば、前記バケット掘削制限弁を全開にして実質上前記バケット掘削パイロット圧の制限を解除する)ように構成されているのが、よい。このことは、前記アーム引き負荷が大きい場合に前記バケット掘削動作の速度を最大限確保することを可能にする。
【0016】
前記油圧駆動装置は、前記第2油圧ポンプから前記ブームシリンダへの作動油の供給を許容する前記ブーム上げ増速制御弁を含むので、同じく前記第2油圧ポンプに接続される前記アーム制御弁に与えられる前記アーム引きパイロット圧が小さいとき、つまり、前記アームシリンダに供給されるべき作動油の流量が小さいとき、は前記バケット掘削パイロット圧を制限しなくても前記第2油圧ポンプから前記ブーム上げ増速制御弁を通じて前記ブームシリンダに供給される作動油によって正常なブーム上げ動作を確保することが可能である。換言すれば、当該態様では、前記ブーム上げ動作に必要な作動油を前記第2油圧ポンプから吐出される作動油で賄うことにより、前記バケット掘削パイロット圧の制限すなわち前記バケット掘削動作の速度の制限を不要にすることが可能である。従って、この態様において、前記バケット掘削制限指令部は、前記アーム引きパイロット圧が一定以下の場合には前記アーム引き負荷に対応する前記物理量の大きさに限らず前記バケット掘削制限弁による前記バケット掘削パイロット圧の制限を最小にするように構成されているのが、好ましい。このことは、前記バケット掘削動作の速度の不必要な制限を抑えて作業効率をさらに高めることを可能にする。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、ブーム、アーム及びバケットを含む作業装置を備えた作業機械に設けられて当該作業装置を油圧により駆動する油圧駆動装置であって、前記ブーム及び前記バケットを共通の油圧ポンプにより駆動しながら掘削作業の効率の著しい低下を伴うことなくブーム上げ動作を確保することが可能な油圧駆動装置が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る油圧式作業機械である油圧ショベルを示す側面図である。
【
図2】前記油圧ショベルに搭載される油圧駆動装置の構成要素を含む油圧回路及びコントローラを示す図である。
【
図3】前記コントローラの機能構成を示すブロック図である。
【
図4】前記コントローラにより行われる演算制御動作を示すフローチャートである。
【
図5】前記コントローラに入力されるアーム引きパイロット圧と当該コントローラから出力されるバケット掘削制限指令電流との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、前記実施の形態に係る油圧ショベルを示す。なお、本発明が適用される作業機械は前記油圧ショベルに限らない。本発明は、機体と、当該機体に起伏可能に支持されるブームと、当該ブームの先端部に回動可能に連結されるアームと、当該アームの先端部に取付けられる作業アタッチメントと、を備えた作業機械に広く適用され得る。
【0021】
前記油圧ショベルは、地面Gの上を走行可能な下部走行体10と、前記下部走行体10に搭載される上部旋回体12と、前記上部旋回体12に搭載される作業装置14と、前記作業装置14を油圧により駆動する油圧駆動装置と、を備える。
【0022】
前記下部走行体10及び前記上部旋回体12は、前記作業装置14を支持する機体を構成する。前記上部旋回体12は、旋回フレーム16と、その上に搭載される複数の要素と、を有する。当該複数の要素は、エンジンを収容するエンジンルーム17や運転室であるキャブ18を含む。
【0023】
前記作業装置14は、掘削作業その他の必要な作業のための動作を行うことが可能であり、ブーム21、アーム22及びバケット24を含む。前記ブーム21は、前記旋回フレーム16の前端に起伏可能すなわち水平軸回りに回動可能に支持される基端部と、その反対側の先端部と、を有する。前記アーム22は、前記ブーム21の先端部に水平軸回りに回動可能に取付けられる基端部と、その反対側の先端部と、を有する。前記バケット24は、先端アタッチメントに相当するものであり、前記アーム22の先端部に回動可能に取付けられる。当該バケット24は、前記地面Gの掘削を行うことが可能であり、当該掘削のための刃先を構成する先端25を有する。
【0024】
前記油圧駆動装置は、前記ブーム21、前記アーム22及び前記バケット24のそれぞれを動かすための油圧アクチュエータ、すなわち、一対のブームシリンダ26、アームシリンダ27及びバケットシリンダ28を含む。これらのシリンダ26~28のそれぞれは、作動油の供給を受けて伸縮する油圧シリンダにより構成される。
【0025】
前記一対のブームシリンダ26のそれぞれは、前記上部旋回体12と前記ブーム21との間に介在し、当該ブーム21に起伏動作、すなわちブーム上げ動作及びブーム下げ動作、を行わせるように伸縮する。当該ブームシリンダ26は、
図2に示されるへッド側室26h及びロッド側室26rを有し、当該へッド側室26hに作動油が供給されることにより伸長して前記ブーム21をブーム上げ方向に動かすとともに前記ロッド側室26r内の作動油を排出する一方、前記ロッド側室26rに作動油が供給されることにより収縮して前記ブーム21をブーム下げ方向に動かすとともに前記へッド側室26h内の作動油を排出する。なお、本発明に係るブームシリンダは、ブーム幅方向の中央に配置された単一の油圧シリンダであってもよい。
【0026】
前記アームシリンダ27は、前記ブーム21と前記アーム22との間に介在し、当該アーム22に回動動作、すなわちアーム引き動作及びアーム押し動作、を行わせるように伸縮する。具体的に、当該アームシリンダ27は、
図2に示されるへッド側室27h及びロッド側室27rを有し、当該へッド側室27hに作動油が供給されることにより伸長して前記アーム22をアーム引き方向(当該アーム22の先端がブーム21に近づく方向)に動かすとともに前記ロッド側室27r内の作動油を排出する一方、前記ロッド側室27rに作動油が供給されることにより収縮して前記アーム22をアーム押し方向(当該アーム22の先端がブーム21から離れる方向)に動かすとともに前記へッド側室27h内の作動油を排出する。
【0027】
前記バケットシリンダ28は、前記アーム22と前記バケット24との間に介在し、当該バケット24に回動動作、すなわちバケット掘削動作及びバケット開き動作、を行わせるように伸縮する。具体的に、当該バケットシリンダ28は、伸長することにより前記バケット24をバケット掘削方向(当該バケット24の先端25がアーム22に近づく方向;すくい方向)に回動させる一方、収縮することにより前記バケット24をバケット開き方向(当該バケット24の先端25がアーム22から離れる方向)に回動させる。
【0028】
図2は、前記油圧ショベルに搭載される油圧回路及びこれに電気的に接続されるコントローラ60を示す。
図2は、より詳しくは、当該油圧回路のうち前記ブーム21、前記アーム22及び前記バケット24を油圧により駆動しかつその駆動を制御するための要素を示す。
【0029】
前記油圧回路は、前記ブームシリンダ26、前記アームシリンダ27及び前記バケットシリンダ28に加え、第1油圧ポンプ31と、第2油圧ポンプ32と、ブーム1速制御弁36と、アーム制御弁37と、バケット制御弁38と、ブーム上げ2速制御弁39と、第1操作器41と、第2操作器42と、を含む。
【0030】
前記第1及び第2油圧ポンプ31,32は、駆動源である図略のエンジンに接続され、当該エンジンが出力する動力によりそれぞれ駆動されて作動油を吐出する。
【0031】
前記ブーム1速制御弁36は、前記第1油圧ポンプ31と前記一対のブームシリンダ26との間に介在するブーム制御弁であり、当該第1油圧ポンプ31から当該ブームシリンダ26に供給される作動油の流量であるブーム流量を変化させるように開閉動作する。具体的に、当該ブーム1速制御弁36は、ブーム上げパイロットポート36a及びブーム下げパイロットポート36bを有するパイロット操作式の3位置方向切換弁からなり、前記第1油圧ポンプ31からタンクに至る第1センターバイパスラインCL1の途中に配置される。
【0032】
前記ブーム1速制御弁36は、前記ブーム上げ及びブーム下げパイロットポート36a,36bのいずれにもパイロット圧が入力されないときは中立位置に保たれ、前記第1センターバイパスラインCL1を開通して前記第1油圧ポンプ31と前記ブームシリンダ26との間を遮断し、これにより前記ブームシリンダ26を停止状態に保つ。前記ブーム1速制御弁36は、前記ブーム上げパイロットポート36aにブーム上げパイロット圧Pbrが入力されるとそのブーム上げパイロット圧Pbrの大きさに対応したストロークで前記中立位置からブーム上げ位置に切換えられ、前記第1センターバイパスラインCL1から分岐する第1供給ラインSL1を通じて前記第1油圧ポンプ31から前記一対のブームシリンダ26のそれぞれのへッド側室26hに前記ストロークに応じた流量(ブーム流量)で作動油が供給されることを許容するとともに、当該一対のブームシリンダ26のそれぞれのロッド側室26rからタンクに作動油が戻ることを許容するように、開弁する。これにより、前記ブームシリンダ26は前記ブーム上げパイロット圧Pbrに対応した速度で前記ブーム上げ方向に駆動される。前記ブーム1速制御弁36は、逆に、前記ブーム下げパイロットポート36bにブーム下げパイロット圧Pblが入力されるとそのブーム下げパイロット圧Pblの大きさに対応したストロークで前記中立位置からブーム下げ位置に切換えられ、前記第1供給ラインSL1を通じて前記第1油圧ポンプ31から前記一対のブームシリンダ26のそれぞれのロッド側室26rに前記ストロークに応じた流量で作動油が供給されることを許容するとともに、当該一対のブームシリンダ26のそれぞれのへッド側室26hからタンクに作動油が戻ることを許容するように、開弁する。これにより、前記ブームシリンダ26は前記ブーム下げパイロット圧Pblに対応した速度で前記ブーム下げ方向に駆動される。
【0033】
前記アーム制御弁37は、前記第2油圧ポンプ32と前記アームシリンダ27との間に介在し、当該第2油圧ポンプ32から当該アームシリンダ27に供給される作動油の流量であるアーム流量を変化させるように開閉動作する。具体的に、当該アーム制御弁37は、アーム引きパイロットポート37a及びアーム押しパイロットポート37bを有するパイロット操作式の3位置方向切換弁からなり、前記第2油圧ポンプ32に接続された第2センターバイパスラインCL2の途中に配置される。
【0034】
前記アーム制御弁37は、前記アーム引き及びアーム押しパイロットポート37a,37bのいずれにもパイロット圧が入力されないときは中立位置に保たれ、前記第2センターバイパスラインCL2を開通して前記第2油圧ポンプ32と前記アームシリンダ27との間を遮断し、これにより、前記アームシリンダ27を停止状態に保つ。前記アーム制御弁37は、前記アーム引きパイロットポート37aにアーム引きパイロット圧Parが入力されるとそのアーム引きパイロット圧Parの大きさに対応したストロークで前記中立位置からアーム引き位置に切換えられ、前記第2センターバイパスラインCL2から分岐する第2供給ラインSL2を通じて前記第2油圧ポンプ32から前記アームシリンダ27のへッド側室27hに前記ストロークに応じた流量(アーム流量)で作動油が供給されることを許容するとともに、当該アームシリンダ27のロッド側室27rからタンクに作動油が戻ることを許容するように、開弁する。これにより、前記アームシリンダ27は前記アーム引きパイロット圧Parに対応した速度で前記アーム引き方向に駆動される。前記アーム制御弁37は、逆に、前記アーム押しパイロットポートにアーム押しパイロット圧Papが入力されるとそのアーム押しパイロット圧Papの大きさに対応したストロークで前記中立位置からアーム押し位置に切換えられ、前記第2油圧ポンプ32から前記第2供給ラインSL2を通じて前記アームシリンダ27のロッド側室27rに前記ストロークに応じた流量(アーム流量)で作動油が供給されることを許容するとともに、当該アームシリンダ27のへッド側室27hからタンクに作動油が戻ることを許容するように、開弁する。これにより、前記アームシリンダ27は前記アーム押しパイロット圧Papに対応した速度で前記アーム押し方向に駆動される。
【0035】
前記バケット制御弁38は、前記第1油圧ポンプ31と前記バケットシリンダ28との間に介在し、当該第1油圧ポンプ31から当該バケットシリンダ28に供給される作動油の流量であるバケット流量を変化させるように開閉動作する。具体的に、当該バケット制御弁38は、バケット掘削パイロットポート38a及びバケット開きパイロットポート38bを有するパイロット操作式の3位置方向切換弁からなり、前記第1センターバイパスラインCL1において前記ブーム1速制御弁36の下流側に配置される。
【0036】
前記バケット制御弁38は、前記バケット掘削及びバケット開きパイロットポート38a,38bのいずれにもパイロット圧が入力されないときは中立位置に保たれ、前記第1センターバイパスラインCL1を開通して前記第1油圧ポンプ31と前記バケットシリンダ28との間を遮断し、これにより、前記バケットシリンダ28を停止状態に保つ。前記バケット制御弁38は、前記バケット掘削パイロットポート38aにバケット掘削パイロット圧Pkeが入力されるとそのバケット掘削パイロット圧Pkeの大きさに対応したストロークで前記中立位置からバケット掘削位置に切換えられ、前記第1センターバイパスラインCL1から分岐する前記第1供給ラインSL1を通じて前記第1油圧ポンプ31から前記一対のバケットシリンダ28のへッド側室28hに前記ストロークに応じた流量(バケット流量)で作動油が供給されることを許容するとともに、当該バケットシリンダ28のそれぞれのロッド側室28rからタンクに作動油が戻ることを許容するように、開弁する。これにより、前記バケットシリンダ28は前記バケット掘削パイロット圧Pkeに対応した速度で前記バケット掘削方向に駆動される。前記バケット制御弁38は、逆に、前記バケット開きパイロットポート38bにバケット開きパイロット圧Pkoが入力されるとそのバケット開きパイロット圧Pkoの大きさに対応したストロークで前記中立位置からバケット開き位置に切換えられ、前記第1供給ラインSL1を通じて前記第1油圧ポンプ31から前記バケットシリンダ28のそれぞれのロッド側室28rに前記ストロークに応じた流量で作動油が供給されることを許容するとともに、当該バケットシリンダ28のそれぞれのへッド側室28hからタンクに作動油が戻ることを許容するように、開弁する。これにより、前記バケットシリンダ28は前記バケット開きパイロット圧Pkoに対応した速度で前記バケット開き方向に駆動される。
【0037】
従って、前記第1油圧ポンプ31は前記ブームシリンダ26及び前記バケットシリンダ28に対して作動油をパラレルに供給するように前記制御弁36,38に接続される。
【0038】
前記ブーム上げ2速制御弁39は、前記第2供給ラインSL2と前記一対のブームシリンダ26との間に介在するブーム増速制御弁であり、前記第2油圧ポンプ32から吐出される作動油の一部が前記第1油圧ポンプ31から吐出される作動油と合流して前記一対のブームシリンダ26のそれぞれのへッド側室26hに供給されることを許容するように開弁動作する。具体的に、当該ブーム上げ2速制御弁39は、ブーム上げパイロットポート39aを有するパイロット操作式の2位置切換弁により構成される。当該ブーム上げ2速制御弁39は、前記ブーム上げパイロットポート39aに前記一定以上のブーム上げパイロット圧Parが供給されないときは合流阻止位置に保持されて前記第2供給ラインSL2と前記ブームシリンダ26との間を遮断することにより前記合流を阻止する一方、前記ブーム上げパイロットポート39aに前記一定以上のブーム上げパイロット圧Pbrが供給されるとそのブーム上げパイロット圧Parの大きさに対応したストロークで合流許容位置に切換えられて前記第2供給ラインSL2から前記ブームシリンダ26のへッド側室26hへの作動油の供給(すなわち第1油圧ポンプ31からの作動油への第2油圧ポンプ32からの作動油の合流)を許容する。従って、前記第2油圧ポンプ32は、前記アームシリンダ27及び前記ブームシリンダ26にパラレルに作動油を供給するように前記アーム制御弁37及び前記ブーム2速制御弁39に接続される。
【0039】
この実施の形態に係る前記ブーム上げ2速制御弁39の開弁特性(ブーム上げパイロットポート39aに入力される前記ブーム上げパイロット圧Pbrに対する開弁ストロークの特性)は、前記ブーム1速制御弁36のそれと異なるように設定されている。具体的に、当該ブーム1速制御弁36の開弁が開始されるブーム上げパイロット圧Pbr1よりも大きなブーム上げパイロット圧Pbr2(>Pbr1)が前記ブーム上げパイロットポート39aに入力されるまでは前記ブーム上げ2速制御弁39が開弁を開始しないように、設定されている。換言すれば、前記ブーム上げパイロット圧Pbrの上昇に伴い、前記ブーム1速制御弁36の開弁開始から遅れて前記ブーム上げ2速制御弁39の開弁が開始されるように、当該ブーム1速及び2速制御弁36,39の開弁特性が、設定されている。
【0040】
前記第1操作器41は、ブーム操作を受けるブーム操作装置としての機能と、バケット操作を受けるバケット操作装置としての機能と、を併有する。
【0041】
前記ブーム操作は、前記ブーム21を動かすためにオペレータから前記第1操作器41に与えられる操作であって、当該ブーム21に前記ブーム上げ動作を行わせるためのブーム上げ操作と、当該ブーム21に前記ブーム下げ動作を行わせるためのブーム下げ操作と、を含む。前記ブーム操作装置としての機能は、前記ブーム上げ操作または前記ブーム下げ操作を受けることにより当該ブーム上げ操作または当該ブーム下げ操作に対応した前記ブーム上げパイロット圧Pbrまたは前記ブーム下げパイロット圧Pboを前記ブーム1速制御弁36及び前記ブーム上げ2速制御弁39のそれぞれに入力する機能である。
【0042】
前記バケット操作は、前記バケット24を動かすためにオペレータから前記第1操作器41に与えられる操作であって、前記バケット24に前記バケット掘削動作を行わせるためのバケット掘削操作と、前記バケット24に前記バケット開き動作を行わせるためのバケット開き操作と、を含む。前記バケット操作装置としての機能は、前記バケット掘削操作及び前記バケット開き操作のいずれかを受けることにより当該バケット掘削操作または当該バケット開き操作に対応した前記バケット掘削パイロット圧Pkeまたは前記バケット開きパイロット圧Pkoを前記バケット制御弁38に入力する機能である。
【0043】
具体的に、前記第1操作器41は、ブーム操作部材及びバケット操作部材として機能する第1操作レバー41aと、ブーム指令部及びバケット指令部として機能する第1パイロット弁41bと、を有する。
【0044】
前記第1操作レバー41aは、前記運転室内においてオペレータにより前記ブーム操作及び前記バケット操作を受けることが可能となるように配置される。前記ブーム操作は、前記第1操作レバー41aを所定のブーム操作方向に回動させる操作であり、前記ブーム上げ操作及び前記ブーム下げ操作は前記第1操作レバー41aを互いに逆向きに回動させる操作である。前記バケット操作は、前記第1操作レバー41aを前記ブーム操作方向と直交するバケット操作方向に回動させる操作であり、前記バケット掘削操作及び前記バケット開き操作は前記第1操作レバー41aを互いに逆向きに回動させる操作である。また、当該第1操作レバー41aは、前記ブーム操作方向と前記バケット操作方向とが複合された方向に操作を受けることも可能であり、この操作は前記ブーム操作と前記バケット操作とが混合された操作、すなわち、前記ブーム21と前記バケット24とを同時に動かすブーム-バケット複合操作、に相当する。
【0045】
前記第1パイロット弁41bは、図示されないパイロット油圧源(例えばパイロットポンプ)と、前記ブーム1速制御弁36、前記ブーム上げ2速制御弁39及び前記バケット制御弁38のそれぞれのパイロットポートと、の間に介在する。
【0046】
前記第1パイロット弁41bは、前記第1操作レバー41aに与えられる前記ブーム操作に連動して開弁することにより、前記ブーム1速制御弁36のパイロットポート36a,36bのうち前記ブーム操作の方向に対応するパイロットポートに対して当該ブーム操作の大きさに対応した大きさのブーム上げパイロット圧Pbrまたはブーム下げパイロット圧Pblが前記パイロット油圧源から入力されることを許容するように開弁する。例えば、当該第1パイロット弁41bは、前記第1操作レバー41aに前記ブーム上げ操作が与えられると、前記ブーム1速制御弁36のブーム上げパイロットポート36aさらには前記ブーム上げ2速制御弁39のブーム上げパイロットポート39aに対して前記ブーム上げ操作の大きさに対応したブーム上げパイロット圧Parがブーム上げパイロットライン46,49をそれぞれ通じて供給されるのを許容するように開弁する。
【0047】
また、前記第1パイロット弁41bは、前記第1操作レバー41aに与えられる前記バケット操作に連動して開弁することにより、前記バケット制御弁38のパイロットポート38a,38bのうち前記バケット操作の方向に対応するパイロットポートに対して当該バケット操作の大きさに対応した大きさのバケット掘削パイロット圧Pkeまたはバケット開きパイロット圧Pkoが前記パイロット油圧源から入力されることを許容するように開弁する。例えば、当該第1パイロット弁41bは、前記第1操作レバー41aに前記バケット掘削操作が与えられると、前記バケット掘削パイロットポート38aに対して前記バケット掘削操作の大きさに対応したバケット掘削パイロット圧Pkeがバケット掘削パイロットライン48を通じて供給されるのを許容するように開弁する。
【0048】
前記第2操作器42は、アーム操作を受けるアーム操作装置としての機能を有する。前記アーム操作は、前記アーム22を動かすためにオペレータから前記第2操作器42に与えられる操作であって、当該アーム22に前記アーム引き動作を行わせるためのアーム引き操作と、当該アーム22に前記アーム押し動作を行わせるためのアーム押し操作と、を含む。前記アーム操作装置としての機能は、前記アーム引き操作及び前記アーム押し操作のいずれかを受けることにより当該アーム引き操作または当該アーム押し操作に対応した前記アーム引きパイロット圧Parまたは前記アーム押しパイロット圧Pbpを前記アーム制御弁37に入力する機能である。
【0049】
具体的に、前記第1操作器41は、アーム操作部材として機能する第2操作レバー42aと、アーム指令部として機能する第2パイロット弁42bと、を有する。
【0050】
前記第2操作レバー42aは、前記運転室内においてオペレータにより前記アーム操作を受けることが可能となるように配置される。前記アーム操作は、前記第2操作レバー42aを所定のアーム操作方向に回動させる操作であり、前記アーム引き操作及び前記アーム押し操作は前記第2操作レバー42aを互いに逆向きに回動させる操作である。
【0051】
前記第2パイロット弁42bは、前記パイロット油圧源と、前記アーム制御弁37のパイロットポート37a,37bと、の間に介在する。当該第2パイロット弁42bは、前記第2操作レバー42aに与えられる前記アーム操作に連動して開弁し、前記パイロットポート37a,37bのうち前記アーム操作の方向に対応するパイロットポート(アーム引きパイロットポート37aまたはアーム押しパイロットポート37b)に対して当該アーム操作の大きさに対応した大きさのアーム引きパイロット圧Pacまたはアーム押しパイロット圧Papが前記パイロット油圧源から入力されることを許容するように開弁する。例えば、当該第2パイロット弁42bは、前記第2操作レバー42aに前記アーム引き操作が与えられると、前記アーム引きパイロットポート37aに対して前記アーム引き操作の大きさに対応したアーム引きパイロット圧Parがアーム引きパイロットライン47を通じて供給されるのを許容するように開弁する。
【0052】
前記バケット掘削制限弁50は、前記バケット掘削パイロットライン48の途中に設けられて、前記のようにバケット操作装置として機能する前記第1操作器41と前記バケット制御弁38の前記バケット掘削パイロットポート38aとの間に介在し、前記コントローラ60から入力されるバケット掘削制限指令に応じて、当該第1操作器41から最終的に前記バケット掘削パイロットポート38aに供給される前記バケット掘削パイロット圧Pkeの大きさを制限するように、作動する。具体的に、この実施の形態に係る前記バケット掘削制限弁50は、ソレノイド52を有する電磁逆比例減圧弁により構成され、前記ソレノイド52に流される励磁電流、すなわち前記バケット掘削制限指令に相当するバケット掘削制限指令電流Irke、が大きいほど当該バケット掘削制限弁50の二次圧、すなわち最終的に前記バケット掘削パイロットポート38aに入力されるバケット掘削パイロット圧Pke、の最大値をより小さい値に抑える(つまり当該バケット掘削パイロット圧Pkeを制限する)ように、開弁作動する。
【0053】
前記油圧回路は、複数の圧力センサをさらに含む。当該複数の圧力センサのそれぞれは、検出対象圧力に対応する電気信号である圧力検出信号を生成して前記コントローラ60に入力する。当該複数の圧力センサは、
図3にも示されるアームシリンダへッド圧センサ54H、アームシリンダロッド圧センサ54R、ブーム上げパイロット圧センサ56、アーム引きパイロット圧センサ57及びバケット掘削パイロット圧センサ58を含む。
【0054】
前記アームシリンダへッド圧センサ54Hは、前記アームシリンダ27の前記へッド側室27h内の作動油の圧力、すなわちアームシリンダへッド圧Pach、を検出し、前記アームシリンダロッド圧センサ54Rは、前記アームシリンダ27の前記ロッド側室27r内の作動油の圧力、すなわちアームシリンダロッド圧Pacr、を検出する。前記アームシリンダへッド圧Pach及び前記アームシリンダロッド圧Parhは、後述のように、前記アームシリンダ27の推力であるアームシリンダ推力Facを算定するための情報として取得される。
【0055】
前記パイロット圧センサ56,57,58は、それぞれ、前記ブーム上げ操作、前記アーム引き操作及び前記バケット掘削操作の大きさを検出するために装備される。具体的に、前記ブーム上げパイロット圧センサ56は、前記第1操作器41から前記ブーム1速制御弁36及び前記ブーム上げ2速制御弁39の前記ブーム上げパイロットポート36a,39aにそれぞれ入力される前記ブーム上げパイロット圧Pbrを検出する。前記アーム引きパイロット圧センサ57は、前記第2操作器42から前記アーム制御弁37の前記アーム引きパイロットポート37aに入力される前記アーム引きパイロット圧Parを検出する。前記バケット掘削パイロット圧センサ58は、前記第1操作器41から前記バケット制御弁38の前記バケット掘削パイロットポート38aに入力される前記バケット掘削パイロット圧Pkeを検出する。
【0056】
前記コントローラ60は、前記複数の圧力センサから入力される圧力検出信号に基づいて前記バケット掘削制限指令を生成し、当該バケット掘削制限指令を前記バケット掘削制限弁50に入力することにより、前記バケット掘削パイロットポート38aに最終的に入力される前記バケット掘削パイロット圧Pkeの制限、すなわち、前記第1操作器41に与えられるバケット掘削操作に対応する前記バケット制御弁38の開弁ストロークの制限、を制御する。前記制御を行うための機能として、前記コントローラ60は、
図3に示されるアームシリンダ推力演算部62及びバケット掘削制限指令部64を有する。
【0057】
前記アームシリンダ推力演算部62は、前記アームシリンダへッド圧センサ54H及び前記アームシリンダロッド圧センサ54Rによりそれぞれ検出されるアームシリンダへッド圧Pach及びアームシリンダロッド圧Pacrに基づき、前記アームシリンダ27の推力である前記アームシリンダ推力Facを演算する。当該アームシリンダ推力Facは、前記アームシリンダ27によって前記アーム22にアーム引き動作を行わせるための負荷であるアーム引き負荷に相当する物理量である。
【0058】
前記バケット掘削制限指令部64は、前記ブーム上げパイロット圧センサ56、前記アーム引きパイロット圧センサ57及び前記バケット掘削パイロット圧センサ58から入力されるパイロット圧検出信号と、前記アームシリンダ推力演算部62により演算される前記アームシリンダ推力Facと、に基づいて、実際にバケット制御弁38に入力されるべきバケット掘削パイロット圧Pkeの制限の要否の判断及びこれに基づくバケット掘削制限指令の生成を行い、当該バケット掘削制限指令に相当するバケット掘削制限指令電流Irkeを前記バケット掘削制限弁50のソレノイド52に与える。
【0059】
次に、前記コントローラ60により行われる具体的な演算制御動作を
図4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0060】
前記コントローラ60は、まず、前記ブーム上げパイロット圧センサ56、前記アーム引きパイロット圧センサ57及び前記バケット掘削パイロット圧センサ58から入力される圧力検出信号(パイロット圧検出信号)に基づき、ブーム上げ操作、バケット掘削操作及びアーム引き操作のそれぞれの有無を判定する(ステップS1~S3)。
【0061】
前記第1操作器41に前記ブーム上げ操作が与えられていない場合(ステップS1でNO)、ブーム上げ動作を行うためにバケットシリンダ28への作動油の供給流量を制限する必要はないので、前記バケット掘削制限指令部64はバケット掘削制限弁50のソレノイド52に与えるバケット掘削制限指令電流Irkeを最小電流Irkoにする(ステップS4)。これにより、当該バケット掘削制限弁50の開度は最大となり、当該バケット掘削制限弁50によるバケット掘削パイロット圧の制限は最小となる。すなわち、当該バケット掘削パイロット圧の制限は実質上解除される。従って、前記第1操作器41にバケット掘削操作が与えられた場合、前記バケット制御弁38には当該バケット掘削操作にそのまま対応したバケット掘削パイロット圧Pkeが与えられ、当該バケット制御弁38は当該バケット掘削操作に対応したストロークで開弁して前記バケット24が前記バケット掘削操作に対応した速度でバケット掘削方向に駆動されることを許容する。
【0062】
同様に、前記第1操作器41に前記バケット掘削操作が与えられていない場合も(ステップS2でNO)、前記バケット掘削パイロット圧を制限する必要がないので、前記バケット掘削制限指令部64は前記バケット掘削制限指令電流Irkeを最小電流Irkoにする(ステップS4)。
【0063】
また、前記第2操作器42に前記アーム引き操作が与えられていない場合(ステップS3でNO)、前記第2油圧ポンプ32から吐出される作動油の全量が前記一対のブームシリンダ26に供給されることが可能であり、特に前記バケット掘削パイロット圧を制限しなくても前記第2油圧ポンプ32からの作動油で前記ブーム21に前記ブーム上げ動作を行わせることが可能であるため、前記バケット掘削制限指令部64はやはり前記バケット掘削制限指令電流Irkeを最小電流Irkoにする(ステップS4)。
【0064】
一方、前記ブーム上げ操作及び前記バケット掘削操作の双方が前記第1操作器41に与えられると同時に前記アーム引き操作が前記第2操作器42に与えられている場合(ステップS1,S2及びS3のそれぞれにおいてYES)、すなわち、前記ブーム上げ操作、前記バケット操作及び前記アーム引き操作をそれぞれ前記ブーム操作装置、前記バケット操作装置及び前記アーム操作装置に同時に与える複合操作が行われているとき、前記コントローラ60の前記アームシリンダ推力演算部62は、前記アームシリンダへッド圧センサ54H及び前記アームシリンダロッド圧センサ54Rによりそれぞれ検出されるアームシリンダへッド圧Pach及び前記アームシリンダロッド圧Pacrに基づいて、前記アームシリンダ推力Fac、より具体的にはアーム引き方向(この実施の形態では伸長方向)のアームシリンダ27の推力、を演算する(ステップS5)。当該アームシリンダ推力Facは、前記アームシリンダ27における前記へッド側室27hの断面積及び前記ロッド側室27hの断面積をそれぞれAach,Aacrとすると、次式により与えられる。
【0065】
Fac=Pach×Aach-Pacr×Aacr
前記バケット掘削制限指令部64は、前記アームシリンダ推力Facと、これについて予め設定された負荷判定値Facoと、の比較を行い、当該比較の結果に基づいて最終的なバケット掘削パイロット圧Pkeの制限の要否を判定する(ステップS6)。前記負荷判定値Facoは、当該負荷判定値Facoと実際の前記アームシリンダ推力Facとの大小関係に基づいてバケット24が地盤からバケット掘削動作に対する一定以上の抵抗を受けているか否か、例えば掘削動作が行われているか否か、の判定を行うことができるように設定された値である。つまり、当該負荷判定値Facoの具体的な大きさは前記判定を行うことを可能にするという観点から設定される。
【0066】
前記アームシリンダ推力Facが前記負荷判定値Facoよりも大きい場合(ステップS6でNO)、例えば、一定以上のアーム引き負荷を要するような前記バケット24による掘削動作が行われている場合、前記バケット掘削制限指令部64は前記バケット掘削指令電流Irkeを最小電流Irkoに設定する(ステップS4)。すなわちバケット掘削パイロット圧Pkeの制限を実質上解除する。なぜならば、このような掘削動作時にはバケット掘削動作に対して地盤から大きな抵抗が与えられていてバケットシリンダ28の駆動のために比較的大きな負荷が発生しているので、特にバケット掘削パイロット圧Pkeを制限しなくても(つまりバケット制御弁38の開度を制限しなくても)、前記ブーム上げ動作に必要な第1油圧ポンプ31のポンプ圧を確保することが可能であるからである。換言すれば、前記のように実際のバケットシリンダ28の駆動のための負荷が大きい掘削動作時には前記バケット掘削パイロット圧Pkeの制限を解除することにより、前記バケット24がバケット掘削方向に迅速に動くことを許容して作業効率の低下を回避することができる。また、キャビテーション防止のためにバケット制御弁38のメータアウト側の開口が絞られている場合、前記掘削作業時のようにバケットシリンダ28の負荷が大きいにもかかわらず前記バケット掘削パイロット圧Pkeを大きく制限すると、大きな背圧が発生してバケット掘削力の著しい低下を招くのに対し、前記掘削動作時における最終的な前記バケット掘削パイロット圧Pkeの制限の解除はそのようなバケット掘削力の低下も防ぐことも可能にする。
【0067】
一方、前記アームシリンダ推力Facが前記負荷判定値Faco以下である場合(ステップS6でYES)、例えばバケット24が地面Gよりも上方の位置で空中動作をしているような場合、前記バケット掘削制限指令部64は原則として前記バケット掘削パイロット圧Pkeの制限を実行すべく前記アーム引きパイロット圧Parに対応するバケット掘削制限指令電流Irkeを演算する(ステップS7)。なぜならば、このような空中動作時にはバケット掘削動作に対する抵抗が非常に小さく、バケットシリンダ28の駆動のための負荷が非常に軽いため、原則として前記バケット掘削パイロット圧Pkeを制限して前記バケット制御弁38の開度を制限しなければ、ブーム上げ動作に必要な第1油圧ポンプ31のポンプ圧を確保することができないからである。
【0068】
具体的に、この実施の形態に係る前記バケット掘削制限指令部64は、
図5に示されるようなマップ、すなわち前記アーム引きパイロット圧Parに基づいて決定されるべきバケット掘削制限指令電流Irkeを特定するマップ、を格納しており、前記アームシリンダ推力Facが前記負荷判定値Faco以下である場合(ステップS6でYES)には前記マップに基づいて前記アーム引きパイロット圧Parに対応した前記バケット掘削制限指令電流Irkeを決定する。
【0069】
前記マップにおける前記アーム引きパイロット圧Parと前記バケット掘削制限指令電流Irkeとの関係は次の通りである。
【0070】
i)アーム引きパイロット圧Parが予め設定された制限解除判定値Par1以下である場合(Par≦Par1):Irke=Irko(最小電流)
ii)アーム引きパイロット圧Parが前記制限解除判定値Par1よりも大きな値であって予め設定された最大制限判定値Par2(>Par1)以上である場合(Par≧Par2):Irke=Irk1(最大電流)
iii)アーム引きパイロット圧Parが前記制限解除判定値Par1よりも大きくかつ前記最大制限判定値Par2よりも小さい場合(Par1<Par<Par2):前記最小電流Irkoから前記最大電流Irk1に至るまでの範囲内で前記アーム引きパイロット圧Parの増大に伴って増大する値(中間電流)。
【0071】
従って、前記バケット掘削制限指令部64は、前記アームシリンダ推力Facが前記負荷判定値Faco以下であって前記アーム引きパイロット圧Parが前記最大制限判定値Par2以上の場合には、前記バケット掘削制限指令電流Irkeを最大電流Irk1に設定し、これにより、前記バケット掘削制限弁50による前記バケット掘削パイロット圧Pkeの制限を最大にする(例えば当該バケット掘削制限弁50を全閉にする)。このことは、前記バケットシリンダ28の負荷が非常に小さい場合でも前記ブーム上げ動作に必要な第1油圧ポンプ31のポンプ圧を確保することを可能にする。
【0072】
一方、この実施の形態に係る前記バケット掘削制限指令部64は、前記アームシリンダ推力Facが前記負荷判定値Faco以下であっても前記アーム引きパイロット圧Parが前記制限解除判定値Par1以下である場合には、前記バケット掘削制限指令電流Irkeを最小電流Irkoに設定して前記バケット掘削パイロット圧Pkeの制限を実質上解除する。このようにアーム引きパイロット圧Parが小さい場合(例えば第1操作器41に対してアーム引き方向にハーフレバー操作が与えられている場合)、前記アーム制御弁37の開度が小さくて前記アーム流量が小さいために、前記第2油圧ポンプ32から前記ブーム2速制御弁39を通じて前記一対のブームシリンダ26のそれぞれに十分な圧力及び流量で作動油を供給することが可能であり、これにより、前記バケット掘削パイロット圧Pkeを制限しなくても第2油圧ポンプ32からの吐出油によって前記ブームシリンダ26による正常なブーム上げ動作を確保することが可能であるからである。
【0073】
以上説明した油圧駆動装置では、アーム引き負荷に対応するアームシリンダ推力Facに基づいて、作業装置14が実際に行っている動作がバケットシリンダ28に大きな負荷を生じさせる動作(一般には掘削動作)であるか否かを適正に判定することができる。このことは、作業装置14の実際の動作状態に対応した適正なバケット掘削パイロット圧Pkeの制限を実行することを可能にする。
【0074】
もし仮に、前記アーム引き負荷に代えて前記アーム引きパイロット圧Parに基づいて前記バケット掘削パイロット圧Pkeの制限の要否が判定されるとすると、その判定が必ずしも適正でない場合が生じ得る。例えば、前記バケット24が空中動作をしている時であってもアーム引き操作が大きい場合、つまり前記アーム引きパイロット圧Parが大きい場合、には前記バケット掘削パイロット圧Pkeが制限されないために正常なブーム上げ動作が不能となるおそれがある。逆に、掘削動作時であっても前記アーム引き操作が小さい場合には前記バケット掘削パイロット圧Pkeが制限されるために必要なバケット掘削力を確保できなくなるおそれがある。これに対し、前記アーム引き負荷の大小に基づくことにより、前者の場合には前記バケット掘削パイロット圧Pkeを確実に制限してブーム上げ動作を確保することができ、後者の場合には前記バケット掘削パイロット圧Pkeの制限を解除(または緩和)して必要なバケット掘削力を確保することができる。
【0075】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されない。本発明は、例えば次のような態様を包含する。
【0076】
(A)アーム引き負荷に相当する物理量について
アーム引き負荷に相当する物理量は、前記アームシリンダ推力Facに限定されない。当該物理量は、例えば、前記アームシリンダ27の入口圧(この実施の形態ではアームシリンダへッド圧Pach;あるいは前記第2油圧ポンプ32の吐出圧(ポンプ圧)が代用されてもよい。)が前記物理量に採用されてもよい。ただし、前記アームシリンダ推力Facの採用は、実際のアーム引き負荷により即した情報に基づいてより適正なバケット掘削パイロット圧Pkeの制限を行うことを可能にする。
【0077】
(B)アーム引きパイロット圧とバケット掘削パイロット圧の制限との関係について
本発明において設定されるべきバケット掘削制限指令とアーム引きパイロット圧との関係は
図5に示すようなものに限定されない。例えば、前記アーム引きパイロット圧Parが前記制限解除判定値Par1よりも大きな範囲ではその全域にわたり当該アーム引きパイロット圧Parの増大に伴って増大するようなバケット掘削制限指令が設定されてもよい。つまり、前記アーム引きパイロット圧Parが大きいほどバケット掘削パイロット圧Pkeの制限を大きくするような制御が行われてもよい。あるいは、前記アーム引きパイロット圧Parに関係なく前記バケット掘削制限指令電流Irkeが常に一定の値(例えば前記最大電流Irk1に設定されてもよい。
【0078】
(C)それぞれの操作装置について
本発明に係るブーム操作装置及びバケット操作装置は、前記実施の形態のように共通の第1操作器41により構成されるものに限られず、それぞれ別の操作器(リモコン弁)により構成されてもよい。逆に、アーム操作装置が他の操作装置とともに単一の操作器として構成されてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10 下部走行体(機体)
12 上部旋回体(機体)
14 作業装置
21 ブーム
22 アーム
24 バケット
26 ブームシリンダ
27 アームシリンダ
27h アームシリンダのへッド側室
27r アームシリンダのロッド側室
28 バケットシリンダ
31 第1油圧ポンプ
32 第2油圧ポンプ
36 ブーム1速制御弁(ブーム制御弁)
36a ブーム上げパイロットポート
37 アーム制御弁
37a アーム引きパイロットポート
38 バケット制御弁
38a バケット掘削パイロットポート
39 ブーム上げ2速制御弁(ブーム上げ増速制御弁)
39a ブーム上げパイロットポート
41 第1操作器(ブーム操作装置及びバケット操作装置)
41a 第1操作レバー
41b 第1パイロット弁
42 第2操作器(アーム操作装置)
42a 第2操作レバー
42b 第2パイロット弁
50 バケット掘削制限弁
54H アームシリンダへッド圧センサ
54R アームシリンダロッド圧センサ
56 ブーム上げパイロット圧センサ
57 アーム引きパイロット圧センサ
58 バケット掘削パイロット圧センサ
60 コントローラ
62 アームシリンダ推力演算部
64 バケット掘削制限指令部