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特許7207073点検作業支援装置、点検作業支援方法及び点検作業支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】点検作業支援装置、点検作業支援方法及び点検作業支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 19/00 20110101AFI20230111BHJP
   G06T 17/20 20060101ALI20230111BHJP
   G06T 7/579 20170101ALN20230111BHJP
【FI】
G06T19/00 A
G06T17/20
G06T7/579
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019061347
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020160944
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-09
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)インフラ維持管理・更新・マネジメント技術/維持管理ロボット・災害対応ロボットの開発/二輪型マルチコプタを用いたジオタグ付近接画像を取得可能な橋梁点検支援ロボットシステムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】沢崎 直之
【審査官】板垣 有紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-168077(JP,A)
【文献】特開2018-151964(JP,A)
【文献】特開2001-222722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 19/00
G06T 17/20
G06T 7/00 - 7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の各部を撮影した部分画像を合成することで、3次元モデル画像を生成し、表示する第1の生成部と、
前記3次元モデル画像のうち、指定された検査領域について、オルソ画像を生成し、表示する第2の生成部と、
前記オルソ画像の各領域と、該各領域を形成する前記部分画像との対応関係に基づいて、表示中の前記オルソ画像においてポインティングされた位置に対応する部分画像を表示する表示部と、を有し、
前記第1の生成部が、前記3次元モデル画像を生成する際に、メッシュを形成する各パッチと、メッシュの各頂点の3次元座標と、各パッチの生成に関わる各部分画像と、各部分画像を撮影した際の撮像装置の位置姿勢情報とを対応付けて格納する格納部を更に有する点検作業支援装置。
【請求項2】
前記第2の生成部は、前記オルソ画像の各領域と、前記各パッチとの関係を示すパッチインデックス画像を生成する、請求項に記載の点検作業支援装置。
【請求項3】
前記表示部は、表示中の前記オルソ画像においてポインティングされた位置に対応するパッチを、前記パッチインデックス画像に基づいて特定し、特定したパッチに対応する1の部分画像を、前記対応関係に基づいて選択する、請求項に記載の点検作業支援装置。
【請求項4】
前記表示部は、特定したパッチに対応する部分画像のうち、特定したパッチの法線方向と、部分画像を撮影した際の撮像装置の撮影方向とのずれが、所定の設定値以下となる部分画像を抽出することで前記1の部分画像を選択する、請求項に記載の点検作業支援装置。
【請求項5】
前記表示部は、前記所定の設定値以下となる部分画像のうち、撮影距離が最も短い部分画像を、前記1の部分画像として選択する、請求項に記載の点検作業支援装置。
【請求項6】
前記表示部は、表示中の前記オルソ画像においてポインティングされた位置の3次元位置座標を算出し、算出した3次元位置座標に基づいて、表示中の前記オルソ画像においてポインティングされた位置に対応する部分画像上に、3次元点を表示する、請求項に記載の点検作業支援装置。
【請求項7】
前記表示部は、表示中の前記オルソ画像においてポインティングされた位置に対応するパッチを、前記パッチインデックス画像に基づいて特定し、特定したパッチが形成されるメッシュの各頂点の3次元座標に基づいて、表示中の前記オルソ画像においてポインティングされた位置の前記3次元位置座標を算出する、請求項に記載の点検作業支援装置。
【請求項8】
前記表示部は、表示中の前記オルソ画像においてポインティングされた位置がトレースされたことで、対応するパッチが変更され、表示する部分画像を切り替えた場合、切り替え前の部分画像におけるトレース履歴を、切り替え後の部分画像において表示する、請求項に記載の点検作業支援装置。
【請求項9】
前記第2の生成部は、表示中の前記オルソ画像においてポインティングされた場合に、ポインティングされた位置に応じたオルソ画像を生成し、表示中の前記オルソ画像を更新する、請求項に記載の点検作業支援装置。
【請求項10】
構造物の各部を撮影した部分画像を合成することで、3次元モデル画像を生成して表示し、
前記3次元モデル画像のうち、指定された検査領域について、オルソ画像を生成して表示し、
前記オルソ画像の各領域と、該各領域を形成する前記部分画像との対応関係に基づいて、表示中の前記オルソ画像においてポインティングされた位置に対応する部分画像を表示する、
処理をコンピュータが実行し、
前記3次元モデル画像を生成する際に、メッシュを形成する各パッチと、メッシュの各頂点の3次元座標と、各パッチの生成に関わる各部分画像と、各部分画像を撮影した際の撮像装置の位置姿勢情報とを対応付けて格納する処理を更に前記コンピュータが実行する点検作業支援方法。
【請求項11】
構造物の各部を撮影した部分画像を合成することで、3次元モデル画像を生成して表示し、
前記3次元モデル画像のうち、指定された検査領域について、オルソ画像を生成して表示し、
前記オルソ画像の各領域と、該各領域を形成する前記部分画像との対応関係に基づいて、表示中の前記オルソ画像においてポインティングされた位置に対応する部分画像を表示する、
処理をコンピュータに実行させ
前記3次元モデル画像を生成する際に、メッシュを形成する各パッチと、メッシュの各頂点の3次元座標と、各パッチの生成に関わる各部分画像と、各部分画像を撮影した際の撮像装置の位置姿勢情報とを対応付けて格納する処理を更に前記コンピュータに実行させるための点検作業支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点検作業支援装置、点検作業支援方法及び点検作業支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、橋梁やトンネル等の構造物に対しては、定期的に、近接目視点検が行われている。近接目視点検の場合、点検作業者は、構造物の周囲に足場を設け、構造物に直接アクセスすることで目視での点検を行い、検出した損傷部の大きさを計測したり、構造物内での損傷部の位置や損傷部の画像等を記録する作業を行う。
【0003】
一方で、近接目視点検における点検作業者の作業負荷を軽減するために、無人飛行機を用いて構造物を連続撮影し、得られた画像データを利用して点検作業を行う点検作業支援装置の開発が進められている。当該点検作業支援装置によれば、3次元モデルに基づいて生成したオルソ画像から点検作業者が損傷部を検出し、検出した損傷部の大きさを算出したり、3次元モデル内での損傷部の位置や損傷部を含むオルソ画像等を記録したりすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-049152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、オルソ画像の生成においては、一般に画像の劣化が生じる(ボケが生じたり、不連続な箇所が含まれたりする)ため、オルソ画像を用いた点検作業において、高い精度を実現することは困難である。
【0006】
一つの側面では、点検作業の精度を向上させる点検作業支援装置、点検作業支援方法、点検作業支援プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様によれば、点検作業支援装置は、
構造物の各部を撮影した部分画像を合成することで、3次元モデル画像を生成し、表示する第1の生成部と、
前記3次元モデル画像のうち、指定された検査領域について、オルソ画像を生成し、表示する第2の生成部と、
前記オルソ画像の各領域と、該各領域を形成する前記部分画像との対応関係に基づいて、表示中の前記オルソ画像においてポインティングされた位置に対応する部分画像を表示する表示部と、を有し、
前記第1の生成部が、前記3次元モデル画像を生成する際に、メッシュを形成する各パッチと、メッシュの各頂点の3次元座標と、各パッチの生成に関わる各部分画像と、各部分画像を撮影した際の撮像装置の位置姿勢情報とを対応付けて格納する格納部を更に有する
【発明の効果】
【0008】
点検作業の精度を向上させる点検作業支援装置、点検作業支援方法、点検作業支援プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】点検作業支援システムのシステム構成の一例を示す第1の図である。
図2】点検作業支援装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】点検作業支援装置において実現される各種機能の概略を説明するための図である。
図4】点検作業支援装置の機能構成の一例を示す第1の図である。
図5】オルソ画像表示処理の具体例を示す図である。
図6】部分画像及びポインティング位置表示処理の具体例を示す図である。
図7】トレース処理の具体例を示す図である。
図8】点検作業支援処理の流れを示す第1のフローチャートである。
図9】点検作業支援処理の流れを示す第2のフローチャートである。
図10】点検作業支援装置の表示画面の一例を示す図である。
図11】点検作業支援装置の機能構成の一例を示す第2の図である。
図12】オルソ画像更新処理の具体例を示す図である。
図13】点検作業支援処理の流れを示す第3のフローチャートである。
図14】点検作業支援システムのシステム構成の一例を示す第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、各実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0011】
[第1の実施形態]
<点検作業支援システムのシステム構成>
はじめに、点検作業支援システムのシステム構成について説明する。図1は、点検作業支援システムのシステム構成の一例を示す第1の図である。図1に示すように、点検作業支援システム100は、点検用ドローン110と、点検作業支援装置120とを有する。
【0012】
点検用ドローン110は、撮像装置を搭載した無人飛行機である。点検用ドローン110は、橋梁130等の構造物(点検対象)の位置まで高速飛行した後、構造物の周囲を微速飛行しながら、構造物を広域にわたって連続撮影する。また、点検用ドローン110は、帰還後に、連続撮影により得られた画像データを、点検作業支援装置120に送信する。
【0013】
点検作業支援装置120は、点検用ドローン110より送信された画像データに基づいて、3次元モデル画像を生成し、点検作業者に表示する。また、点検作業支援装置120は、表示した3次元モデル画像のうち、点検作業者により指定された検査領域について、オルソ画像を生成して拡大表示する。また、点検作業支援装置120は、拡大表示したオルソ画像において、点検作業者がポインティングした損傷部の位置を受け付ける。更に、点検作業支援装置120は、ポインティングされた損傷部の位置に対応する高画質な部分画像を表示するとともに、ポインティングされた損傷部の位置に対応する3次元点を、当該高画質な部分画像上で可視化する。
【0014】
これにより、点検作業支援装置120では、3次元モデル画像と、オルソ画像と、損傷部の位置に対応する3次元点が可視化された部分画像と、を含む点検作業調書140を作成することができる。このように、点検作業支援システム100によれば、点検作業者による精度の高い点検作業に基づく点検作業調書140を作成することができる。
【0015】
<点検作業支援装置のハードウェア構成>
次に、点検作業支援装置120のハードウェア構成について説明する。図2は、点検作業支援装置のハードウェア構成の一例を示す図である。図2に示すように、点検作業支援装置120は、CPU(Central Processing Unit)201、ROM(Read Only Memory)202、RAM(Random Access Memory)203を有する。CPU201、ROM202、RAM203は、いわゆるコンピュータを形成する。
【0016】
また、点検作業支援装置120は、補助記憶装置204、表示装置205、操作装置206、I/F(Interface)装置207、ドライブ装置208を有する。なお、点検作業支援装置120の各ハードウェアは、バス209を介して相互に接続されている。
【0017】
CPU201は、補助記憶装置204にインストールされている各種プログラム(例えば、点検作業支援プログラム等)を実行する演算デバイスである。
【0018】
ROM202は、不揮発性メモリである。ROM202は、補助記憶装置204にインストールされている各種プログラムをCPU201が実行するために必要な各種プログラム、データ等を格納する主記憶デバイスとして機能する。具体的には、ROM202はBIOS(Basic Input/Output System)やEFI(Extensible Firmware Interface)等のブートプログラム等を格納する、主記憶デバイスとして機能する。
【0019】
RAM203は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリである。RAM203は、補助記憶装置204にインストールされている各種プログラムがCPU201によって実行される際に展開される作業領域を提供する、主記憶デバイスとして機能する。
【0020】
補助記憶装置204は、各種プログラムや、各種プログラムが実行される際に用いられる情報を格納する補助記憶デバイスである。例えば、後述する3Dモデル記憶部や、損傷3D位置・損傷画像記憶部は、補助記憶装置204において実現される。
【0021】
表示装置205は、3次元モデル画像やオルソ画像、部分画像等を含む各種表示画面を表示する表示デバイスである。操作装置206は、点検作業者が点検作業支援装置120に対して各種指示(例えば、検査領域の指定する操作、損傷部の位置をポインティングする操作等)を行う入力デバイスである。
【0022】
I/F装置207は、点検用ドローン110と無線接続され、点検用ドローン110との間で通信を行うための通信デバイスである。
【0023】
ドライブ装置208は記録媒体210をセットするためのデバイスである。ここでいう記録媒体210には、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように情報を光学的、電気的あるいは磁気的に記録する媒体が含まれる。また、記録媒体210には、ROM、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記録する半導体メモリ等が含まれていてもよい。
【0024】
なお、補助記憶装置204にインストールされる各種プログラムは、例えば、配布された記録媒体210がドライブ装置208にセットされ、該記録媒体210に記録された各種プログラムがドライブ装置208により読み出されることでインストールされる。あるいは、補助記憶装置204にインストールされる各種プログラムは、不図示のネットワークよりダウンロードされることでインストールされてもよい。
【0025】
<点検作業支援装置において実現される機能>
次に、点検作業支援装置において実現される主な機能について、概略を説明する。図3は、点検作業支援装置において実現される各種機能の概略を説明するための図である。
【0026】
図3に示すように、点検作業支援装置120は、点検用ドローン110より送信された画像データ310を受信する。なお、画像データ310に含まれる各フレーム画像は、構造物の各部を撮影した部分画像である。
【0027】
点検作業支援装置120は、画像データ310に含まれる部分画像を用いて、3次元合成処理を行い、構造物の広域を俯瞰可能な3次元モデル画像320を生成する。このとき、点検作業支援装置120では、3次元合成処理を行う際に算出されるメッシュの各頂点の3次元座標と、メッシュを形成する各パッチと、各パッチの生成に関わる各部分画像と、各部分画像を撮影した際の撮像装置の位置姿勢情報とを対応付けて管理する。
【0028】
図3のデータベース350は、3次元合成処理を行う際に算出されるメッシュの各頂点の3次元座標と、メッシュを形成する各パッチのインデックス情報と、各パッチの生成に関わる各部分画像と、撮像装置の位置姿勢情報とを対応付けたデータベースである。
【0029】
点検作業支援装置120は、生成した3次元モデル画像320を表示装置205に表示する。これにより、点検作業者は、操作装置206を用いて検査領域321を指定する。点検作業支援装置120は、指定された検査領域321を正射投影することでオルソ画像330を生成し、生成したオルソ画像330を表示装置205に拡大表示する。
【0030】
オルソ画像330が拡大表示されると、点検作業者は、操作装置206を用いて損傷部(P)の位置をポインティングする。点検作業者により損傷部(P)の位置がポインティングされると、点検作業支援装置120は、パッチインデックス画像340を参照することで、ポインティングされた損傷部(P)の位置が含まれるパッチを特定する。
【0031】
図3の例は、点検作業支援装置120が、パッチインデックス画像340を参照することで、ポインティングされた損傷部(P)の位置が含まれるパッチとして、インデックス情報=“id3”のパッチを特定した様子を示している。なお、パッチインデックス画像340とは、オルソ画像330の各領域を形成するパッチのインデックス情報を含む画像である。
【0032】
点検作業支援装置120は、ポインティングされた損傷部(P)の位置が含まれるパッチを特定すると、データベース350を参照し、特定したパッチが形成されるメッシュの各頂点の3次元座標を抽出する。そして、点検作業支援装置120は、メッシュの各頂点の3次元座標に基づいて、損傷部(P)の3次元位置座標を算出する。
【0033】
また、点検作業支援装置120は、データベース350を参照することで、特定したパッチの生成に関わる各部分画像と、各部分画像を撮影した際の撮像装置の位置姿勢情報とを抽出する。なお、パッチの生成に関わる部分画像とは、当該パッチが写っている全ての部分画像を指す。
【0034】
点検作業支援装置120は、抽出した各部分画像の中から、表示に適した部分画像を選択する。具体的には、点検作業支援装置120は、各部分画像を撮影した際の撮像装置の位置姿勢情報に基づいて、表示に適した部分画像を選択する。
【0035】
更に、点検作業支援装置120は、選択した部分画像に、損傷部(P)の3次元位置座標を投影することで、部分画像において、損傷部(P)に対応する3次元点を可視化する。
【0036】
図3において、部分画像360は、オルソ画像330において指定された損傷部(P)に対応する、部分画像360上の3次元点(P’)が表示された様子を示している。
【0037】
このように、点検作業支援装置120によれば、点検作業者がオルソ画像330において損傷部(P)の位置をポインティングすることで、対応する部分画像360を表示し、対応する3次元点(P’)を可視化することができる。これにより、オルソ画像330においてボケが生じていたり、不連続な箇所が含まれていた場合であっても、点検作業者は、高画質な部分画像360上で、損傷部を視認することができる。この結果、点検作業支援装置120によれば、点検作業者は、精度の高い点検作業を実現することができる。
【0038】
<点検作業支援装置の機能構成>
次に、点検作業支援装置120の機能構成について説明する。図4は、点検作業支援装置の機能構成の一例を示す第1の図である。上述したとおり、点検作業支援装置120には、点検作業支援プログラムがインストールされており、当該プログラムが実行されることで、点検作業支援装置120は、第1の生成部である、3D合成処理部401、3Dモデル表示部402として機能する。また、点検作業支援装置120は、第2の生成部である、検査領域指定部403、オルソ画像生成部404、オルソ画像表示部405として機能する。更に、点検作業支援装置120は、表示部である、3D点群情報管理部406、損傷位置指定部407、パッチインデックス管理部408、損傷3D位置計算部409、部分画像選択部410、部分画像表示部411として機能する。
【0039】
3D合成処理部401は、複数の部分画像を用いて、合成処理の一例であるSfM(Structure from Motion)処理を行うことにより、3次元モデル情報を算出する。3次元モデル情報には、各部分画像を撮影した際の撮像装置の位置姿勢情報、点検対象の構造物の画像特徴点に対応する3次元座標、メッシュの各頂点の3次元座標、メッシュの各パッチ(具体的には、各パッチにマッピングするテクスチャ情報)が含まれる。なお、3D合成処理部401は、算出した3次元モデル情報を、3Dモデル記憶部421に格納する。
【0040】
3Dモデル表示部402は、3Dモデル記憶部421に格納されている3次元モデル情報から、各パッチをビュー方向に投影することで、テクスチャを描画する。これにより、3Dモデル表示部402は、3次元モデル画像を生成し、表示装置205に表示する。
【0041】
検査領域指定部403は、表示装置205に表示される3次元モデル画像において、操作装置206を用いて指定された検査領域を受け付ける。具体的には、検査領域指定部403は、検査領域の中心位置と、検査領域のサイズの設定値を受け付ける。
【0042】
オルソ画像生成部404は、3次元モデル情報から、指定された検査領域に該当する各パッチを抽出し、各パッチの法線方向から正射投影方向を決定する。なお、オルソ画像生成部404は、各パッチの法線方向の平均値または最頻値に基づいて、正射投影方向を決定する。
【0043】
また、オルソ画像生成部404は、決定した正射投影方向に基づいて、
・各パッチ(具体的には各パッチにマッピングするテクスチャ情報)を正射投影した画像(オルソ画像)と、
・各パッチを正射投影した領域を各パッチのインデックス情報で塗りつぶした画像(パッチインデックス画像)と、
を生成する。
【0044】
オルソ画像表示部405は、生成されたオルソ画像を表示装置205に表示する。
【0045】
3D点群情報管理部406は、3D合成処理部401により算出された3次元モデル情報において、各パッチにインデックス情報を付与する。また、3D点群情報管理部406は、各パッチに付与したインデックス情報に、各パッチに対応するメッシュの各頂点の3次元座標と、各パッチが写っている部分画像と、部分画像を撮影した際の撮像装置の位置姿勢情報と、を対応付ける。これにより、3D点群情報管理部406はデータベースを生成し、管理する。
【0046】
損傷位置指定部407は、表示装置205に表示されるオルソ画像において、操作装置206を用いてポインティングされた損傷部の位置(ポインティング位置)を受け付ける。損傷位置指定部407は、操作装置206のボタンイベントに基づいて、カーソル、点指定、トレースの各モードを識別して、ポインティング位置を受け付ける。
【0047】
パッチインデックス管理部408は、パッチインデックス画像を参照することで、オルソ画像上でのポインティング位置に対応するパッチを特定し、インデックス情報を出力する。
【0048】
損傷3D位置計算部409は、損傷位置指定部407が受け付けたオルソ画像上でのポインティング位置に対応する、3次元モデル画像上の3次元位置座標を算出し、出力する。
【0049】
部分画像選択部410は、1の部分画像を選択する。具体的には、
・損傷位置指定部407が受け付けたオルソ画像上でのポインティング位置に対応するパッチをパッチインデックス管理部408が特定し、
・特定されたパッチが写っている各部分画像から、各部分画像を撮影した際の撮像装置の位置姿勢情報を3D点群情報管理部406が出力、
した場合に、部分画像選択部410は、各部分画像のうち、パッチの法線方向と、部分画像を撮影した際の撮像装置の撮影方向とのずれが、設定値以下となる部分画像を抽出する。また、部分画像選択部410は、抽出した部分画像のうち、撮影距離が最も短い1の部分画像を選択する。なお、部分画像選択部410は、選択した1の部分画像と、撮像装置の位置姿勢情報とを出力する。
【0050】
部分画像表示部411は、部分画像選択部410により選択された1の部分画像を表示装置205に表示する。また、部分画像表示部411は、損傷3D位置計算部409により算出された、オルソ画像上でのポインティング位置に対応する3次元点(または3次元点列)を、選択された1の部分画像上に表示する。
【0051】
なお、損傷3D位置・損傷画像記憶部422では、損傷位置指定部407で設定されるモードが点指定の場合、オルソ画像上でのポインティング位置に対応する3次元点と、対応する部分画像の情報とを、1レコードとして記憶する。また、損傷3D位置・損傷画像記憶部422では、損傷位置指定部407で設定されるモードがトレースの場合、オルソ画像上でのポインティング位置に対応する3次元点列と、対応する部分画像の情報とを、1レコードとして記憶する。
【0052】
<点検作業支援装置により実行される処理の具体例>
次に、点検作業支援装置120の各機能ブロックにより実行される各種処理のうち、
・オルソ画像表示処理、
・部分画像及びポインティング位置表示処理、
・トレース処理、
について、具体例を説明する。
【0053】
(1)オルソ画像表示処理の具体例
はじめに、点検作業支援装置120の各機能ブロックにより実行される処理のうち、
・3D合成処理部401、
・3Dモデル表示部402、
・検査領域指定部403、
・オルソ画像生成部404、
・オルソ画像表示部405、
・3D点群情報管理部406、
により実行される、オルソ画像表示処理の具体例について説明する。図5は、オルソ画像表示処理の具体例を示す図である。
【0054】
図5に示すように、3D合成処理部401は、画像データ310に含まれる複数の部分画像を用いてSfM処理を行うことにより、3次元モデル情報を算出する。また、3D点群情報管理部406は、3D合成処理部401により算出された3次元モデル情報の各パッチにインデックス情報を付与する。また、3D点群情報管理部406は、各パッチに付与したインデックス情報に、各パッチに対応するメッシュの各頂点の3次元座標と、各パッチが写っている部分画像と、撮像装置の位置姿勢情報とを対応付けて、データベース350を生成する(矢印501参照)。
【0055】
また、3Dモデル表示部402は、3次元モデル情報に基づいて、3次元モデル画像320を生成し、表示装置205に表示する(矢印502参照)。また、検査領域指定部403は、表示装置205に表示される3次元モデル画像320において、操作装置206を介して指定された検査領域321を受け付ける(矢印503参照)。
【0056】
オルソ画像生成部404は、3次元モデル情報から、指定された検査領域321に該当する各パッチを抽出し、オルソ画像330及びパッチインデックス画像340を生成する(矢印504及び矢印505参照)。また、オルソ画像表示部405は、生成されたオルソ画像330を表示装置205に表示する。
【0057】
(2)部分画像及びポインティング位置表示処理の具体例
次に、点検作業支援装置120の各機能ブロックにより実行される処理のうち、
・3D点群情報管理部406、
・損傷位置指定部407、
・パッチインデックス管理部408、
・損傷3D位置計算部409、
・部分画像選択部410、
・部分画像表示部411、
により実行される、部分画像及びポインティング位置表示処理の具体例について説明する。図6は、部分画像及びポインティング位置表示処理の具体例を示す図である。
【0058】
図6に示すように、損傷位置指定部407は、表示装置205に表示されたオルソ画像330において、損傷部(P)についてのポインティング位置を受け付ける(矢印506参照)。パッチインデックス管理部408は、パッチインデックス画像340を参照することで、オルソ画像330上でのポインティング位置に対応するパッチを特定し(矢印507参照)、インデックス情報を出力する(矢印508参照)。図6の例は、パッチインデックス管理部408により、インデックス情報=“id3”が出力された様子を示している。
【0059】
また、損傷3D位置計算部409は、オルソ画像330上での損傷部(P)についてのポインティング位置に対応する、3次元モデル画像上の3次元点の3次元位置座標を算出し、出力する(矢印601、603参照)。なお、損傷3D位置計算部409は、パッチインデックス管理部408により出力されたインデックス情報に対応する、メッシュの各頂点の3次元座標を抽出し(矢印602参照)、抽出した3次元座標に基づいて、3次元点の3次元位置座標を算出する。
【0060】
また、部分画像選択部410は、パッチインデックス管理部408により出力されたインデックス情報に対応する、パッチが写っている各部分画像(ファイル名=img0、img1、・・・)のうち、以下の条件を満たす部分画像を抽出する。
・特定されたパッチの法線方向と、
・各部分画像を撮影した際の撮像装置の撮影方向と、
のずれが、設定値以下である。
【0061】
また、部分画像選択部410は、抽出した部分画像(例えば、ファイル名=img0、img1)のうち、撮影距離が最も短い部分画像(例えば、ファイル名=img0)を選択する(矢印604参照)。更に、部分画像選択部410は、選択した部分画像(ファイル名=img0)と、撮像装置の位置姿勢情報(C0)とを出力する。
【0062】
部分画像表示部411は、部分画像選択部410により選択された部分画像360(ファイル名=img0)を表示装置205に表示する(矢印605参照)。また、部分画像表示部411は、損傷3D位置計算部409により算出された3次元位置座標を、部分画像360(ファイル名=img0)上に投影した3次元点(P’)を、表示装置205に表示する(矢印606参照)。
【0063】
(3)トレース処理の具体例
次に、点検作業支援装置120の各機能ブロックにより実行される処理のうち、
・損傷3D位置計算部409、
・部分画像選択部410、
により実行される、トレース処理の具体例について説明する。図7は、トレース処理の具体例を示す図である。
【0064】
図7の例は、オルソ画像330上の損傷部(P)についてのポインティング位置が、パッチインデックス画像340上のインデックス情報=“id3”のパッチに含まれていた場合を示している。また、図7の例は、インデックス情報=“id3”のパッチに対応する部分画像として、部分画像選択部410が、部分画像710を選択した様子を示している(矢印701参照)。
【0065】
更に、図7の例は、オルソ画像330上で損傷部(P)のポインティング位置がトレースされたことに応じて、部分画像710上で、対応する3次元点がトレースされた様子を示している(符号711参照)。なお、損傷3D位置計算部409では、部分画像710上でトレースされた3次元点列を、損傷3D位置・損傷画像記憶部422に、トレース履歴として格納する(矢印702参照)。
【0066】
ここで、オルソ画像330上で損傷部(P)のポインティング位置がトレースされたことで、ポインティング位置がパッチインデックス画像340上のインデックス情報=“id2”のパッチに切り替わったとする。この場合、部分画像選択部410は、図7に示すように、インデックス情報=“id2”のパッチに対応する部分画像として、部分画像720を選択する(矢印703参照)。
【0067】
このとき、部分画像選択部410は、損傷3D位置・損傷画像記憶部422を参照し、トレース履歴を読み出す(矢印704参照)。これにより、部分画像選択部410は、部分画像720にトレース履歴を表示することができる(符号721参照)。
【0068】
このように、点検作業支援装置120では、オルソ画像330上でポインティング位置がトレースされたことに応じて、選択する部分画像が切り替わった場合でも、切り替え前の部分画像710におけるトレース履歴を、切り替え後の部分画像720に引き継ぐ。これにより、損傷部(P)のポインティング位置をトレースする際の視認性が向上するとともに、ポインティング位置のトレース作業を連続実行することが可能になる。
【0069】
<点検作業支援処理の流れ>
次に、点検作業支援装置120による点検作業支援処理の流れについて図8及び図9を用いて説明する。図8及び図9は、点検作業支援処理の流れを示す第1及び第2のフローチャートである。
【0070】
ステップS801において、3D合成処理部401は、点検用ドローン110より送信された画像データに含まれる部分画像を取得する。
【0071】
ステップS802において、3D合成処理部401は、3D合成処理を実行し、3次元モデル情報を生成する。
【0072】
ステップS803において、3D合成処理部401は、生成した3次元モデル情報を、3Dモデル記憶部421に格納する。また、3Dモデル表示部402は、3次元モデル情報に基づいて、3次元モデル画像を生成し、表示装置205に表示する。
【0073】
ステップS804において、3D点群情報管理部406は、3次元モデル情報において、各パッチにインデックス情報を付与するとともに、メッシュの各頂点の3次元座標、部分画像、位置姿勢情報を対応付けて、データベースを生成する。
【0074】
ステップS805において、検査領域指定部403は、3次元モデル画像において指定された検査領域を受け付ける。
【0075】
ステップS806において、検査領域指定部403は、検査領域の指定が終了したか否かを判定する。ステップS806において、検査領域の指定が終了したと判定した場合には(ステップS806においてYesの場合には)、点検作業支援処理を終了する。
【0076】
一方、ステップS806において、検査領域の指定が終了していないと判定した場合には(ステップS806においてNoの場合には)、ステップS807に進む。ステップS807において、検査領域指定部403は、検査領域の指定があったか否かを判定し、検査領域の指定がないと判定した場合には(ステップS807においてNoの場合には)、ステップS806に戻り、検査領域の指定があるまで待機する。一方、ステップS807において、検査領域の指定があったと判定した場合には、ステップS808に進む。
【0077】
ステップS808において、オルソ画像生成部404は、指定された検査領域をオルソ画像を生成する領域に設定し、3次元モデル情報から、指定された検査領域内に該当するパッチを抽出する。
【0078】
ステップS809において、オルソ画像生成部404は、抽出したパッチの法線方向から、正射投影方向を決定する。また、オルソ画像生成部404は、決定した正射投影方向に基づいて、各パッチ(具体的には、各パッチにマッピングするテクスチャ情報)を正射投影したオルソ画像を生成する。また、オルソ画像生成部404は、決定した正射投影方向に基づいて、パッチインデックス画像を生成する。更に、オルソ画像表示部405は、生成されたオルソ画像を表示装置205に表示する。その後、図9のステップS901に進む。
【0079】
ステップS901において、損傷位置指定部407は、表示されたオルソ画像においてポインティングされた損傷部の位置を受け付ける。
【0080】
ステップS902において、損傷位置指定部407は、損傷部の位置についてのポインティングが完了したか否かを判定する。ステップS902において、損傷部の位置についてのポインティングが完了したと判定した場合には(ステップS902においてYesの場合には)、図8のステップS806に戻る。
【0081】
一方、ステップS902において、損傷部の位置についてのポインティングが完了していないと判定した場合には(ステップS902においてNoの場合には)、ステップS903に進む。
【0082】
ステップS903において、損傷位置指定部407は、損傷部の位置についてのポインティングを受け付けたか否かを判定する。ステップS903において、損傷部の位置についてのポインティングを受け付けていないと判定した場合には(ステップS903においてNoの場合には)、ステップS902に戻り、損傷部の位置についてのポインティングを受け付けるまで待機する。
【0083】
一方、ステップS903において、損傷部の位置についてのポインティングを受け付けたと判定した場合には(ステップS903においてYesの場合には)、ステップS904に進む。ステップS904において、パッチインデックス管理部408は、パッチインデックス画像を参照し、オルソ画像上でのポインティング位置に対応するパッチのインデックス情報を出力する。また、損傷3D位置計算部409は、オルソ画像上でのポインティング位置に対応する3次元位置座標を算出して、出力する。
【0084】
ステップS905において、部分画像選択部410は、パッチのインデックス情報に対応する部分画像のうち、1の部分画像を選択する。
【0085】
ステップS906において、部分画像表示部411は、選択された1の部分画像を表示装置205に表示する。また、部分画像表示部411は、オルソ画像上でのポインティング位置に対応する3次元点を、部分画像上に表示する。
【0086】
ステップS907において、部分画像表示部411は、表示された部分画像が更新されたか否かを判定する。ステップS907において、表示された部分画像が更新されていないと判定した場合には(ステップS907においてNoの場合には)、ステップS902に戻る。
【0087】
一方、ステップS907において、表示された部分画像が更新されたと判定された場合には(ステップS907においてYesの場合には)、ステップS908に進む。ステップS908において、部分画像表示部411は、損傷部のポインティング位置のトレース履歴を、更新された部分画像に表示する。
【0088】
<表示画面の説明>
次に、点検作業支援装置120に表示される表示画面について説明する。図10は、点検作業支援装置の表示画面の一例を示す図である。このうち、図10(a)は、3Dモデル表示部402により生成された3次元モデル画像1010が表示された3次元モデル画像表示画面の一例を示す図である。点検作業者は、表示された3次元モデル画像1010を、回転、移動、拡大表示等をさせながら、3次元モデル画像1010を視認する。また、点検作業者は、3次元モデル画像1010において、検査領域を指定する。
【0089】
図10(b)は、3次元モデル画像1010上において、点検作業者が、検査領域1011を指定することで、オルソ画像1020が表示されたオルソ画像表示画面の一例を示す図である。点検作業者は、オルソ画像1020上において、損傷部の位置をポインティングする。
【0090】
図10(c)は、オルソ画像1020上において、点検作業者が、損傷部の位置をポインティングすることで、部分画像1030が表示された部分画像表示画面の一例を示す図である。このように、点検作業者は、オルソ画像1020を用いて損傷部の位置をポインティングすることで、対応する高画質な部分画像1030上で、損傷部を視認することができる(なお、図10の部分画像1030では、損傷部を強調して示している)。また、点検作業者は、オルソ画像1020上でのポインティング位置に対応する3次元点を、高画質な部分画像1030において視認することができる。この結果、点検作業者は、精度の高い点検作業を行うことができる。
【0091】
以上の説明から明らかなように、第1の実施形態に係る点検作業支援装置は、構造物の各部を撮影した部分画像を合成し、3次元モデル画像を生成する。また、第1の実施形態に係る点検作業支援装置は、3次元モデル画像のうち、検査領域についてオルソ画像を生成する。また、第1の実施形態に係る点検作業支援装置は、表示中のオルソ画像において損傷部の位置がポインティングされると、オルソ画像と部分画像との対応関係に基づいて、ポインティング位置に対応する部分画像を表示する。
【0092】
これにより、第1の実施形態に係る点検作業支援装置によれば、点検作業者は、3次元モデル画像において検査領域を指定し、オルソ画像において損傷部の位置をポインティングすることで、対応する高画質な部分画像上で、損傷部を視認することができる。この結果、第1の実施形態に係る点検作業支援装置によれば、精度の高い点検作業を実現することができる。
【0093】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、3次元モデル画像において指定された検査領域についてオルソ画像を生成し、生成したオルソ画像において損傷部の位置がポインティングされるものとして説明した。一方で、指定された検査領域が、例えば、構造物の曲面の一部であった場合には、ポインティング位置によっては、表示中のオルソ画像を更新した方がよい場合もある。
【0094】
そこで、第2の実施形態では、表示中のオルソ画像において損傷部の位置がポインティングされる場合において、ポインティングされた損傷部の位置に応じて、適宜、オルソ画像を更新する処理について説明する。以下、第2の実施形態について、上記第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0095】
<点検作業支援装置の機能構成>
はじめに、第2の実施形態に係る点検作業支援装置の機能構成について説明する。図11は、点検作業支援装置の機能構成の一例を示す第2の図である。図4を用いて説明した機能構成との相違点は、オルソ画像更新判断部1101である。
【0096】
オルソ画像更新判断部1101は、損傷位置指定部407により、現在のオルソ画像上でのポインティング位置(あるいはその近傍)に対応する、3次元モデル情報のパッチの法線方向と、現在表示されているオルソ画像の正射投影方向とを比較する。また、オルソ画像更新判断部1101は、比較の結果、差分が大きいと判定した場合(差分が基準値以上であると判定した場合)、現在のポインティング位置を中心とする部分画像を用いてオルソ画像を生成するよう、オルソ画像生成部404に指示する。
【0097】
<オルソ画像更新処理の具体例>
次に、点検作業支援装置120の各機能ブロックにより実行される処理のうち、
・オルソ画像生成部404、
・オルソ画像表示部405、
・損傷位置指定部407、
・パッチインデックス管理部408、
・オルソ画像更新判断部1101、
により実行される、オルソ画像更新処理の具体例について説明する。図12は、オルソ画像更新処理の具体例を示す図である。
【0098】
オルソ画像更新判断部1101は、オルソ画像表示部405が現在表示中のオルソ画像330の正射投影方向を識別する(矢印1201参照)。また、オルソ画像更新判断部1101は、オルソ画像330上における現在のポインティング位置(または近傍)のパッチの法線方向を識別する(矢印1202~1204参照)。更に、オルソ画像更新判断部1101は、識別した正射投影方向と、識別した法線方向との差分が基準値以上であるか否かを判定する。
【0099】
オルソ画像更新判断部1101は、基準値以上であると判定した場合、オルソ画像生成部404に対して、現在のポインティング位置を中心としたオルソ画像を生成するよう指示する(矢印1205参照)。
【0100】
このように、オルソ画像更新判断部1101が、ポインティング位置に応じて、オルソ画像を更新することで、例えば、符号1200に示すように、構造物の曲面部分をオルソ画像として表示している場合に、より歪みのないオルソ画像を表示することができる。
【0101】
<点検作業支援処理の流れ>
次に、点検作業支援装置120による点検作業支援処理の流れについて図13を用いて説明する。図13は、点検作業支援処理の流れを示す第3のフローチャートである。図9に示した第2のフローチャートとの相違点は、ステップS1301~S1303である。
【0102】
ステップS1301において、オルソ画像更新判断部1101は、現在表示中のオルソ画像の正射投影方向と、現在のポインティング位置に対応するパッチの法線方向とを比較する。
【0103】
ステップS1302において、オルソ画像更新判断部1101は、比較の結果、差分が基準値以上であるか否かを判定する。ステップS1302において、差分が基準値未満であると判定した場合には(ステップS1302においてNoの場合には)、ステップS904に戻る。
【0104】
一方、ステップS1302において、差分が基準値以上であると判定した場合には(ステップS1302においてYesの場合には)、ステップS1303に進む。ステップS1303において、オルソ画像生成部404は、現在のポインティング位置を中心としたオルソ画像を生成する。また、オルソ画像表示部405は、生成したオルソ画像を表示する。
【0105】
以上の説明から明らかなように、第2の実施形態に係る点検作業支援装置は、構造物の各部を撮影した部分画像を合成し、3次元モデル画像を生成する。また、第2の実施形態に係る点検作業支援装置は、3次元モデル画像のうち、検査領域についてオルソ画像を生成する。更に、第2の実施形態に係る点検作業支援装置は、ポインティング位置に応じて、表示中のオルソ画像を更新する。
【0106】
これにより、第2の実施形態に係る点検作業支援装置によれば、上記第1の実施形態と同様の効果を奏するとともに、更に、ポインティング位置に応じた、より歪みのないオルソ画像を表示することができる。
【0107】
[第3の実施形態]
上記第1及び第2の実施形態では、点検用ドローン110より画像データを受信する点検作業支援装置120に、点検作業支援プログラムを実行させるものとして説明した。しかしながら、点検作業支援プログラムは、他の装置において実行されてもよい。
【0108】
図14は、点検作業支援システムのシステム構成の一例を示す第2の図である。図14に示すように、点検作業支援システム1400は、点検用ドローン1410_1~1410_nと、情報処理装置1420_1~1420_nとを有する。また、点検作業支援システム1400は、画像データ格納部1430と、サーバ装置1440と、情報処理装置1450とを有する。なお、点検作業支援システム1400において、情報処理装置1420_1~1420_nと、画像データ格納部1430と、サーバ装置1440と、情報処理装置1450とは、ネットワーク1460を介して、通信可能に接続される。
【0109】
点検用ドローン1410_1~1410_nは、撮影により得られた画像データを、情報処理装置1420_1~1420_nに送信する。
【0110】
情報処理装置1420_1~1420_nは、点検用ドローン1410_1~1410_nの所有者それぞれが使用する装置である。情報処理装置1420_1~1420_nは、受信した画像データを、画像データ格納部1430に格納する。
【0111】
サーバ装置1440は点検作業支援装置の一例である。サーバ装置1440には、点検作業支援プログラムがインストールされており、当該プログラムが実行されることで、サーバ装置1440は、点検作業支援サービス部1441として機能する。これにより、サーバ装置1440は、点検作業支援サービスを提供することができる。なお、点検作業支援サービス部1441は、図4で示した機能構成または図11で示した機能構成と同様の機能構成を有するものとする。
【0112】
情報処理装置1450は、例えば、点検作業者が使用する装置である。情報処理装置1450は、所定の構造物を指定して、サーバ装置1440が提供する点検作業支援サービスを利用することで、点検作業調書1451を作成する。
【0113】
このように、点検作業支援システム1400によれば、画像データ格納部1430の管理者は、点検用ドローン1410_1~1410_nの所有者に、各構造物の撮影を依頼し、点検作業者に、点検作業調書の作成を依頼する。そして、点検作業者が、サーバ装置1440により提供される点検作業支援サービスを利用して、点検作業調書1451を作成する。
【0114】
これにより、画像データ格納部1430の管理者は、点検作業調書を取得することができる。
【0115】
[その他の実施形態]
上記第1の実施形態では、オルソ画像においてポインティング位置をトレースした際、部分画像において、3次元点列を表示するものとして説明したが、オルソ画像上にポインティング位置のトレース結果を表示するように構成してもよい。
【0116】
なお、開示の技術では、以下に記載する付記のような形態が考えられる。
(付記1)
構造物の各部を撮影した部分画像を合成することで、3次元モデル画像を生成し、表示する第1の生成部と、
前記3次元モデル画像のうち、指定された検査領域について、オルソ画像を生成し、表示する第2の生成部と、
前記オルソ画像の各領域と、該各領域を形成する前記部分画像との対応関係に基づいて、表示中の前記オルソ画像においてポインティングされた位置に対応する部分画像を表示する表示部と
を有する点検作業支援装置。
(付記2)
前記第1の生成部が、前記3次元モデル画像を生成する際に、メッシュを形成する各パッチと、メッシュの各頂点の3次元座標と、各パッチの生成に関わる各部分画像と、各部分画像を撮影した際の撮像装置の位置姿勢情報とを対応付けて格納する格納部を更に有する、付記1に記載の点検作業支援装置。
(付記3)
前記第2の生成部は、前記オルソ画像の各領域と、前記各パッチとの関係を示すパッチインデックス画像を生成する、付記2に記載の点検作業支援装置。
(付記4)
前記表示部は、表示中の前記オルソ画像においてポインティングされた位置に対応するパッチを、前記パッチインデックス画像に基づいて特定し、特定したパッチに対応する1の部分画像を、前記対応関係に基づいて選択する、付記3に記載の点検作業支援装置。
(付記5)
前記表示部は、特定したパッチに対応する部分画像のうち、特定したパッチの法線方向と、部分画像を撮影した際の撮像装置の撮影方向とのずれが、所定の設定値以下となる部分画像を抽出することで前記1の部分画像を選択する、付記4に記載の点検作業支援装置。
(付記6)
前記表示部は、前記所定の設定値以下となる部分画像のうち、撮影距離が最も短い部分画像を、前記1の部分画像として選択する、付記5に記載の点検作業支援装置。
(付記7)
前記表示部は、表示中の前記オルソ画像においてポインティングされた位置の3次元位置座標を算出し、算出した3次元位置座標に基づいて、表示中の前記オルソ画像においてポインティングされた位置に対応する部分画像上に、3次元点を表示する、付記3に記載の点検作業支援装置。
(付記8)
前記表示部は、表示中の前記オルソ画像においてポインティングされた位置に対応するパッチを、前記パッチインデックス画像に基づいて特定し、特定したパッチが形成されるメッシュの各頂点の3次元座標に基づいて、表示中の前記オルソ画像においてポインティングされた位置の前記3次元位置座標を算出する、付記7に記載の点検作業支援装置。
(付記9)
前記表示部は、表示中の前記オルソ画像においてポインティングされた位置がトレースされたことで、対応するパッチが変更され、表示する部分画像を切り替えた場合、切り替え前の部分画像におけるトレース履歴を、切り替え後の部分画像において表示する、付記8に記載の点検作業支援装置。
(付記10)
前記第2の生成部は、表示中の前記オルソ画像においてポインティングされた場合に、ポインティングされた位置に応じたオルソ画像を生成し、表示中の前記オルソ画像を更新する、付記9に記載の点検作業支援装置。
(付記11)
構造物の各部を撮影した部分画像を合成することで、3次元モデル画像を生成して表示し、
前記3次元モデル画像のうち、指定された検査領域について、オルソ画像を生成して表示し、
前記オルソ画像の各領域と、該各領域を形成する前記部分画像との対応関係に基づいて、表示中の前記オルソ画像においてポインティングされた位置に対応する部分画像を表示する、
処理をコンピュータが実行する点検作業支援方法。
(付記12)
構造物の各部を撮影した部分画像を合成することで、3次元モデル画像を生成して表示し、
前記3次元モデル画像のうち、指定された検査領域について、オルソ画像を生成して表示し、
前記オルソ画像の各領域と、該各領域を形成する前記部分画像との対応関係に基づいて、表示中の前記オルソ画像においてポインティングされた位置に対応する部分画像を表示する、
処理をコンピュータに実行させるための点検作業支援プログラム。
【0117】
なお、上記実施形態に挙げた構成等に、その他の要素との組み合わせ等、ここで示した構成に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0118】
100 :点検作業支援システム
110 :点検用ドローン
120 :点検作業支援装置
130 :橋梁
401 :3D合成処理部
402 :3Dモデル表示部
403 :検査領域指定部
404 :オルソ画像生成部
405 :オルソ画像表示部
406 :3D点群情報管理部
407 :損傷位置指定部
408 :パッチインデックス管理部
409 :損傷3D位置計算部
410 :部分画像選択部
411 :部分画像表示部
1101 :オルソ画像更新判断部
1430 :画像データ格納部
1440 :サーバ装置
1441 :点検作業支援サービス部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14