IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鐵住金株式会社の特許一覧

特許7207148鉄道車両用軌道の状態評価方法及び鉄道車両用台車
<>
  • 特許-鉄道車両用軌道の状態評価方法及び鉄道車両用台車 図1
  • 特許-鉄道車両用軌道の状態評価方法及び鉄道車両用台車 図2
  • 特許-鉄道車両用軌道の状態評価方法及び鉄道車両用台車 図3
  • 特許-鉄道車両用軌道の状態評価方法及び鉄道車両用台車 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】鉄道車両用軌道の状態評価方法及び鉄道車両用台車
(51)【国際特許分類】
   B61K 9/08 20060101AFI20230111BHJP
   B61F 5/30 20060101ALI20230111BHJP
   G01B 21/00 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
B61K9/08
B61F5/30 Z
G01B21/00 R
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019091355
(22)【出願日】2019-05-14
(65)【公開番号】P2020185876
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 修
(72)【発明者】
【氏名】下川 嘉之
【審査官】藤井 浩介
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-022961(JP,A)
【文献】特開2011-163981(JP,A)
【文献】特開2013-246042(JP,A)
【文献】特開2006-088967(JP,A)
【文献】特開平6-235609(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106080661(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61K 9/08
B61F 5/30
G01B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両用の軌道の状態を評価する方法であって、
前記軌道を走行する鉄道車両用の台車が具備する前後一対の輪軸のうち前側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ非接触式の距離計を取り付けるステップと、
前記左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計のうち、前記台車が曲線軌道を走行する際の外軌側に位置する距離計で、前記曲線軌道の外軌側レールの頭部側面までの距離を測定するステップと、
前記測定した距離と、前記外軌側レールの頭部側面に摩耗が生じていない場合の基準距離との差に基づき、前記曲線軌道の前記外軌側レールの頭部側面の摩耗を評価するステップと、
を含むことを特徴とする鉄道車両用軌道の状態評価方法。
【請求項2】
鉄道車両用の軌道の状態を評価する方法であって、
前記軌道を走行する鉄道車両用の台車が具備する前後一対の輪軸のうち後側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ非接触式の距離計を取り付けるステップと、
前記左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で、前記台車が曲線軌道を走行する際の外軌側レールの頭部側面までの距離及び内軌側レールの頭部側面までの距離を測定するステップと、
前記測定した各距離の和に基づき、前記曲線軌道のスラックを評価するステップと、
を含むことを特徴とする鉄道車両用軌道の状態評価方法。
【請求項3】
鉄道車両用の軌道の状態を評価する方法であって、
前記軌道を走行する鉄道車両用の台車が具備する前後一対の輪軸を支持する前後左右4つの軸箱にそれぞれ非接触式の距離計を取り付けるステップと、
前記前後一対の輪軸のうち前側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で、前記台車が曲線軌道を走行する際の外軌側レールの頭部側面までの距離及び内軌側レールの頭部側面までの距離を測定するステップと、
前記前後一対の輪軸のうち後側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で、前記台車が前記曲線軌道を走行する際の外軌側レールの頭部側面までの距離及び内軌側レールの頭部側面までの距離を測定するステップと、
前記後側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で測定した各距離の和と、前記前側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で測定した各距離の和との差に基づき、前記曲線軌道のレールの取り付け状態を評価するステップと、
を含むことを特徴とする鉄道車両用軌道の状態評価方法。
【請求項4】
前記曲線軌道のレールの取り付け状態を評価するステップは、
前記前側輪軸の車輪に発生する横圧を測定するステップと、
前記測定した横圧を前記差で除算することで、前記曲線軌道の剛性を評価するステップと、
を含むことを特徴とする請求項3に記載の鉄道車両用軌道の状態評価方法。
【請求項5】
鉄道車両用の軌道の状態を評価する方法であって、
前記軌道を走行する鉄道車両用の台車として、前後一対の輪軸のうち前側輪軸が旋回することで左右の軸距に差をつけることが可能な台車を用い、前記前後一対の輪軸を支持する前後左右4つの軸箱にそれぞれ非接触式の距離計を取り付けるステップと、
前記台車の前記前側輪軸を旋回させた状態で、前記前側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で、前記台車が直線軌道を走行する際の一方のレールの頭部側面までの距離及び他方のレールの頭部側面までの距離を測定するステップと、
前記台車の前記前側輪軸を旋回させた状態で、前記前後一対の輪軸のうち後側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で、前記台車が前記直線軌道を走行する際の一方のレールの頭部側面までの距離及び他方のレールの頭部側面までの距離を測定するステップと、
前記後側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で測定した各距離の和と、前記前側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で測定した各距離の和との差に基づき、前記直線軌道のレールの取り付け状態を評価するステップと、
を含むことを特徴とする鉄道車両用軌道の状態評価方法。
【請求項6】
前記直線軌道のレールの取り付け状態を評価するステップは、
前記前側輪軸の車輪に発生する横圧を測定するステップと、
前記測定した横圧を前記差で除算することで、前記直線軌道の剛性を評価するステップと、
を含むことを特徴とする請求項5に記載の鉄道車両用軌道の状態評価方法。
【請求項7】
鉄道車両用の軌道を走行し、前記軌道の状態を評価するための鉄道車両用の台車であって、
前記台車が具備する前後一対の輪軸のうち前側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた非接触式の距離計と、
演算部と、を備え、
前記演算部は、前記左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計のうち、前記台車が曲線軌道を走行する際の外軌側に位置する距離計で測定した前記曲線軌道の外軌側レールの頭部側面までの距離と、前記外軌側レールの頭部側面に摩耗が生じていない場合の基準距離との差に基づき、前記曲線軌道の前記外軌側レールの頭部側面の摩耗を評価する、
ことを特徴とする鉄道車両用台車。
【請求項8】
鉄道車両用の軌道を走行し、前記軌道の状態を評価するための鉄道車両用の台車であって、
前記台車が具備する前後一対の輪軸のうち後側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた非接触式の距離計と、
演算部と、を備え、
前記演算部は、前記左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で測定した、前記台車が曲線軌道を走行する際の外軌側レールの頭部側面までの距離及び内軌側レールの頭部側面までの距離の和に基づき、前記曲線軌道のスラックを評価する、
ことを特徴とする鉄道車両用台車。
【請求項9】
鉄道車両用の軌道を走行し、前記軌道の状態を評価するための鉄道車両用の台車であって、
前記台車が具備する前後一対の輪軸を支持する前後左右4つの軸箱にそれぞれ取り付けられた非接触式の距離計と、
演算部と、を備え、
前記演算部は、
前記前後一対の輪軸のうち前側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で測定した、前記台車が曲線軌道を走行する際の外軌側レールの頭部側面までの距離及び内軌側レールの頭部側面までの距離の和を算出し、
前記前後一対の輪軸のうち後側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で測定した、前記台車が前記曲線軌道を走行する際の外軌側レールの頭部側面までの距離及び内軌側レールの頭部側面までの距離の和を算出し、
前記後側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で測定した各距離の和と、前記前側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で測定した各距離の和との差に基づき、前記曲線軌道のレールの取り付け状態を評価する、
ことを特徴とする鉄道車両用台車。
【請求項10】
前記前側輪軸の車輪に発生する横圧を測定する横圧測定手段を備え、
前記演算部は、前記曲線軌道のレールの取り付け状態を評価する際に、前記横圧測定手段で測定した横圧を前記差で除算することで、前記曲線軌道の剛性を評価する、
ことを特徴とする請求項9に記載の鉄道車両用台車。
【請求項11】
鉄道車両用の軌道を走行し、前記軌道の状態を評価するための鉄道車両用の台車であって、
前記台車は、前後一対の輪軸のうち前側輪軸が旋回することで左右の軸距に差をつけることが可能であり、
前記前後一対の輪軸を支持する前後左右4つの軸箱にそれぞれ取り付けられた非接触式の距離計と、
演算部と、を備え、
前記演算部は、前記台車の前記前側輪軸が旋回した状態で、
前記前側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で測定した、前記台車が直線軌道を走行する際の一方のレールの頭部側面までの距離及び他方のレールの頭部側面までの距離の和を算出し、
前記前後一対の輪軸のうち後側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で測定した、前記台車が前記直線軌道を走行する際の一方のレールの頭部側面までの距離及び他方のレールの頭部側面までの距離の和を算出し、
前記後側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で測定した各距離の和と、前記前側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で測定した各距離の和との差に基づき、前記直線軌道のレールの取り付け状態を評価する、
ことを特徴とする鉄道車両用台車。
【請求項12】
前記前側輪軸の車輪に発生する横圧を測定する横圧測定手段を備え、
前記演算部は、前記直線軌道のレールの取り付け状態を評価する際に、前記横圧測定手段で測定した横圧を前記差で除算することで、前記直線軌道の剛性を評価する、
ことを特徴とする請求項11に記載の鉄道車両用台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用軌道の状態評価方法及び鉄道車両用台車に関する。特に、本発明は、台車が軌道を走行しながら軌道の状態を容易に評価可能な方法及びこの方法を実行するための台車に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両が走行する軌道の状態を評価して適切なメンテナンスを施すことは、鉄道車両の走行安全性を維持するための最優先課題である。
特に、レールに側摩耗(曲線軌道の外軌側レールの頭部側面の摩耗)が生じたり、小返り(所定以上の横圧がレールに作用することでレールが軌間の外方に傾く現象)が繰り返し生じることに起因してレールの取り付け状態が悪くなる(軌道の剛性が低下する)と、鉄道車両の走行性能に大きな影響を及ぼし、最悪の場合には鉄道車両の脱線に繋がるおそれもある。
また、レールの取り付け状態が悪くなると、曲線軌道の敷設当初に設定したスラックが広がり、鉄道車両の走行性能に大きな影響を及ぼすだけではなく、鉄道車両が脱線する懸念がある。
【0003】
従来、レールの側摩耗やスラックの広がりの程度は、検査員が実地に赴き、実測して評価する必要があり、膨大な時間を要していた。
また、レールの取り付け状態(軌道の剛性)を評価するには、レール締結装置に異常が生じていないか装置を構成する部品を個々に検査したり、或いは、鉄道車両走行時に発生する横圧と同様に、左右のレールに軌間を広げる方向の荷重を負荷する必要があり、膨大な時間を要していた。
【0004】
例えば、特許文献1には、枕木やタイプレートに邪魔されずにレール摩耗量の測定が可能なレール摩耗測定器が提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載の摩耗測定器では、この摩耗測定器を設置した箇所のレール摩耗量しか測定することができない。
【0005】
特許文献2には、軌道検測車に搭載され、渦電流形センサを用いてレールの変位と摩耗を測定する装置が提案されている。
特許文献2に記載の装置によれば、軌道検測車が走行する軌道全体について、レールの変位と摩耗を測定することが可能であると考えられる。
しかしながら、特許文献2に記載の装置が備える渦電流形センサは、レールの頭頂面の上方に対向配置されている(特許文献2の図2図3等)上、渦電流形センサの原理上、レール頭頂面からのリフトオフを大きくできない。このため、鉄道車両用の通常の台車に搭載して測定することは困難であり、装置のメンテナンスも容易ではない。
【0006】
なお、特許文献3には、車輪に作用する力を検出することで輪重及び横圧を測定可能なセンサが取り付けられたPQモニタリング台車と称される台車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-121969号公報
【文献】特開2017-187384号公報
【文献】特開2014-54881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、鉄道車両用台車が鉄道車両用軌道を走行しながら軌道の状態を容易に評価可能な方法及びこの方法を実行するための台車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、第1の方法として、鉄道車両用の軌道の状態を評価する方法であって、前記軌道を走行する鉄道車両用の台車が具備する前後一対の輪軸のうち前側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ非接触式の距離計を取り付けるステップと、前記左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計のうち、前記台車が曲線軌道を走行する際の外軌側に位置する距離計で、前記曲線軌道の外軌側レールの頭部側面までの距離を測定するステップと、前記測定した距離と、前記外軌側レールの頭部側面に摩耗が生じていない場合の基準距離との差に基づき、前記曲線軌道の前記外軌側レールの頭部側面の摩耗を評価するステップと、を含むことを特徴とする鉄道車両用軌道の状態評価方法を提供する。
【0010】
曲線軌道の外軌側レールの頭部側面の摩耗(以下、適宜、「側摩耗」という)は、前側輪軸の外軌側車輪のフランジが、外軌側レールの頭部側面と強く接触することによって発生する。
本発明に係る第1の方法によれば、前側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた非接触式の各距離計のうち、台車が曲線軌道を走行する際の外軌側に位置する距離計で、曲線軌道の外軌側レールの頭部側面までの距離を測定する。
軸箱は曲線軌道のレールよりも外方(左右方向外方)に位置するため、この軸箱に取り付けられた距離計で測定した距離は、外軌側レールの頭部側面(左右方向外方の側面)までの距離を左右方向外方から測定したものになる。換言すれば、車輪のフランジと接触して側摩耗が生じる頭部側面とは反対側の頭部側面までの距離を測定したものになる。したがい、距離計によって測定した距離は、側摩耗が生じることで車輪が左右方向外方に移動すると、側摩耗が生じていないときに比べて、大きな値となる。すなわち、距離計によって測定した距離と、側摩耗が生じていない場合に測定されると考えられる距離との差が、側摩耗の摩耗量に相当することになる。
本発明に係る第1の方法によれば、前記測定した距離と、側摩耗が生じていない場合の基準距離との差に基づき、側摩耗を評価する(算出する)ため、精度良く側摩耗を評価可能である。また、前側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ非接触式の距離計を取り付けるだけで良いため、容易に評価可能である。
【0011】
なお、本発明の非接触式の距離計としては、レーザ距離計が好適に用いられる。レーザ距離計としては、いわゆる三角測量方式のレーザ距離計を用いてもよいし、TOF(Time Of Flight)方式のレーザ距離計を用いてもよい。
また、本発明において、「前側」とは、台車の進行方向前側を意味し、「後側」とは、台車の進行方向後側を意味する。また、本発明において、「外軌」とは、曲線軌道の外側の軌道を意味し、「内軌」とは、曲線軌道の内側の軌道を意味する。
また、本発明に係る第1の方法において、「外軌側レールの頭部側面に摩耗が生じていない場合の基準距離」としては、頭部側面に摩耗が生じていない外軌側レール(新品の外軌側レール)に対して実際に距離計によって測定した距離を用いてもよいし、外軌側レールや距離計の取り付け位置等の設計値から幾何学計算で求まる距離を用いてもよい。
【0012】
また、前記課題を解決するため、本発明は、第2の方法として、鉄道車両用の軌道の状態を評価する方法であって、前記軌道を走行する鉄道車両用の台車が具備する前後一対の輪軸のうち後側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ非接触式の距離計を取り付けるステップと、前記左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で、前記台車が曲線軌道を走行する際の外軌側レールの頭部側面までの距離及び内軌側レールの頭部側面までの距離を測定するステップと、前記測定した各距離の和に基づき、前記曲線軌道のスラックを評価するステップと、を含むことを特徴とする鉄道車両用軌道の状態評価方法を提供する。
【0013】
スラックとは、鉄道車両が曲線軌道を円滑に走行できるように、左右のレールの軌間を所定の基準値から広げる量を意味する。ここで、鉄道車両用の通常の台車が曲線軌道を走行する際、後側輪軸の外軌側車輪のフランジも内軌側車輪のフランジも、レールの頭部の側面とは接触しない。また、後側輪軸のアタック角がほぼ0であるため、後側輪軸の車輪からレールに対して作用する軌間を広げる方向の横圧がほぼ0になる。
本発明に係る第2の方法によれば、後側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた非接触式の各距離計で、曲線軌道の外軌側レールの頭部側面までの距離及び内軌側レールの頭部側面までの距離を測定する。各距離計によって測定した距離は、何れもレールの頭部側面(左右方向外方の側面)までの距離を左右方向外方から測定したものであるため、測定した各距離の和は、スラックが大きくなれば小さくなるし、スラックが小さくなれば大きくなる。また、前述のように、後側輪軸の車輪のフランジはレールの頭部の側面と接触しないため、測定した各距離は側摩耗の影響を受けない。したがって、各距離の和も側摩耗の影響を受けない。さらに、前述のように、後側輪軸の車輪からレールに対して作用する横圧がほぼ0であるため、測定した各距離の和は小返りの影響を受けない。
本発明に係る第2の方法によれば、前記測定した各距離の和に基づき、曲線軌道のスラックを評価する(算出する)ため、側摩耗や小返りの影響を受けることなく、精度良くスラックを評価可能である。また、後側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ非接触式の距離計を取り付けるだけで良いため、容易に評価可能である。
【0014】
また、前記課題を解決するため、本発明は、第3の方法として、鉄道車両用の軌道の状態を評価する方法であって、前記軌道を走行する鉄道車両用の台車が具備する前後一対の輪軸を支持する前後左右4つの軸箱にそれぞれ非接触式の距離計を取り付けるステップと、前記前後一対の輪軸のうち前側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で、前記台車が曲線軌道を走行する際の外軌側レールの頭部側面までの距離及び内軌側レールの頭部側面までの距離を測定するステップと、前記前後一対の輪軸のうち後側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で、前記台車が前記曲線軌道を走行する際の外軌側レールの頭部側面までの距離及び内軌側レールの頭部側面までの距離を測定するステップと、前記後側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で測定した各距離の和と、前記前側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で測定した各距離の和との差に基づき、前記曲線軌道のレールの取り付け状態を評価するステップと、を含むことを特徴とする鉄道車両用軌道の状態評価方法を提供する。
【0015】
レールの取り付け状態を評価するには、前述のように、左右のレールに軌間を広げる方向の荷重を負荷する必要がある。ここで、鉄道車両が曲線軌道を走行する際、前側輪軸の車輪には、外軌側車輪のフランジと外軌側レールの頭部側面とが接触することで、比較的大きな横圧が発生する(その反作用として、前側輪軸が走行するレールには軌間を広げる方向に比較的大きな横圧が作用する)一方、後側輪軸の車輪に発生する横圧はほぼ0である(後側輪軸が走行するレールには軌間を広げる方向の横圧が殆ど作用しない)。
本発明に係る第3の方法によれば、前側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた非接触式の各距離計で、曲線軌道の外軌側レールの頭部側面までの距離及び内軌側レールの頭部側面までの距離を測定する。そして、これら測定した各距離の和(以下、適宜「前側距離和」という)を算出する。また、後側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた非接触式の各距離計で、曲線軌道の外軌側レールの頭部側面までの距離及び内軌側レールの頭部側面までの距離を測定する。そして、これら測定した各距離の和(以下、適宜「後側距離和」という)を算出する。
前側輪軸を支持する軸箱に取り付けられた距離計で測定した外軌側レールの頭部側面までの距離は側摩耗の影響を受けるものの、前側距離和は側摩耗の影響が相殺されることになる。したがい、前側距離和は、スラック及び小返りの影響を受けることになる。一方、後側距離和は、第2の方法で説明したように、側摩耗及び小返りの影響を受けない。したがい、後側距離和は、スラックの影響を受けることになる。このため、後側距離和と前側距離和との差は、スラックの影響が相殺され、小返りの影響だけを受けることになる。
本発明に係る第3の方法によれば、後側距離和と前側距離和との差に基づき、曲線軌道のレールの取り付け状態を評価するため、小返りに起因したレールの取り付け状態の悪化を精度良く評価可能である。また、前後一対の輪軸を支持する前後左右4つの軸箱にそれぞれ非接触式の距離計を取り付けるだけで良いため、容易に評価可能である。
【0016】
本発明に係る第3の方法において、前記曲線軌道のレールの取り付け状態を評価するステップは、前記前側輪軸の車輪に発生する横圧を測定するステップと、前記測定した横圧を前記差で除算することで、前記曲線軌道の剛性を評価するステップと、を含むことが好ましい。
【0017】
上記の好ましい方法によれば、前側輪軸の車輪に発生する横圧を、差(後側距離和と前側距離和との差)で除算する。換言すれば、前側輪軸が走行するレールに作用する横圧を、小返りによって生じる軌間の広がりで除算するため、曲線軌道の剛性を精度良く評価可能である。
なお、前側輪軸の車輪に発生する横圧は、例えば、前側輪軸として、輪重及び横圧を測定可能な公知のPQ輪軸を用いたり、台車として、特許文献3に記載のように、輪重及び横圧を測定可能なセンサが取り付けられた公知のPQモニタリング台車を用いることで測定可能である。
【0018】
以上に述べた本発明に係る第1~第3の方法は、いずれも曲線軌道の状態を評価する方法である。第1の方法の評価対象である側摩耗と、第2の方法の評価対象であるスラックは、曲線軌道のみが問題となる。これに対し、第3の方法の評価対象であるレールの取り付け状態(軌道の剛性)は、直線軌道でも問題となる。直線軌道に対しても第3の方法と同様にレールの取り付け状態を評価するには、前側輪軸が走行する左右のレールに軸間を広げる方向の荷重を負荷すればよい。前側輪軸が走行する左右のレールに軸間を広げる方向の荷重を負荷するには、前側輪軸が旋回することで左右の軸距に差をつけることが可能な台車を用い、前側輪軸を旋回させた状態で、第3の方法と同様のステップを実行すればよい。
すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、第4の方法として、鉄道車両用の軌道の状態を評価する方法であって、前記軌道を走行する鉄道車両用の台車として、前後一対の輪軸のうち前側輪軸が旋回することで左右の軸距に差をつけることが可能な台車を用い、前記前後一対の輪軸を支持する前後左右4つの軸箱にそれぞれ非接触式の距離計を取り付けるステップと、前記台車の前記前側輪軸を旋回させた状態で、前記前側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で、前記台車が直線軌道を走行する際の一方のレールの頭部側面までの距離及び他方のレールの頭部側面までの距離を測定するステップと、前記台車の前記前側輪軸を旋回させた状態で、前記前後一対の輪軸のうち後側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で、前記台車が前記直線軌道を走行する際の一方のレールの頭部側面までの距離及び他方のレールの頭部側面までの距離を測定するステップと、前記後側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で測定した各距離の和と、前記前側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で測定した各距離の和との差に基づき、前記直線軌道のレールの取り付け状態を評価するステップと、を含むことを特徴とする鉄道車両用軌道の状態評価方法を提供する。
【0019】
本発明に係る第4の方法によれば、直線軌道についても、レールの取り付け状態を精度良く評価可能である。
なお、「前側輪軸が旋回することで左右の軸距に差をつけることが可能な台車」としては、例えば、操舵台車を用いることができる。ただし、これに限るものではなく、前側輪軸が旋回した状態で固定されている台車を用いることも可能である。
【0020】
本発明に係る第4の方法において、前記直線軌道のレールの取り付け状態を評価するステップは、前記前側輪軸の車輪に発生する横圧を測定するステップと、
前記測定した横圧を前記差で除算することで、前記直線軌道の剛性を評価するステップと、を含むことが好ましい。
【0021】
上記の好ましい方法によれば、直線軌道の剛性を精度良く評価可能である。
【0022】
また、前記課題を解決するため、本発明は、第1の方法を実行するための第1の手段として、鉄道車両用の軌道を走行し、前記軌道の状態を評価するための鉄道車両用の台車であって、前記台車が具備する前後一対の輪軸のうち前側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた非接触式の距離計と、演算部と、を備え、前記演算部は、前記左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計のうち、前記台車が曲線軌道を走行する際の外軌側に位置する距離計で測定した前記曲線軌道の外軌側レールの頭部側面までの距離と、前記外軌側レールの頭部側面に摩耗が生じていない場合の基準距離との差に基づき、前記曲線軌道の前記外軌側レールの頭部側面の摩耗を評価する、ことを特徴とする鉄道車両用台車を提供する。
【0023】
また、前記課題を解決するため、本発明は、第2の方法を実行するための第2の手段として、鉄道車両用の軌道を走行し、前記軌道の状態を評価するための鉄道車両用の台車であって、前記台車が具備する前後一対の輪軸のうち後側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた非接触式の距離計と、演算部と、を備え、前記演算部は、前記左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で測定した、前記台車が曲線軌道を走行する際の外軌側レールの頭部側面までの距離及び内軌側レールの頭部側面までの距離の和に基づき、前記曲線軌道のスラックを評価する、ことを特徴とする鉄道車両用台車を提供する。
【0024】
また、前記課題を解決するため、本発明は、第3の方法を実行するための第3の手段として、鉄道車両用の軌道を走行し、前記軌道の状態を評価するための鉄道車両用の台車であって、前記台車が具備する前後一対の輪軸を支持する前後左右4つの軸箱にそれぞれ取り付けられた非接触式の距離計と、演算部と、を備え、前記演算部は、前記前後一対の輪軸のうち前側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で測定した、前記台車が曲線軌道を走行する際の外軌側レールの頭部側面までの距離及び内軌側レールの頭部側面までの距離の和を算出し、前記前後一対の輪軸のうち後側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で測定した、前記台車が前記曲線軌道を走行する際の外軌側レールの頭部側面までの距離及び内軌側レールの頭部側面までの距離の和を算出し、前記後側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で測定した各距離の和と、前記前側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で測定した各距離の和との差に基づき、前記曲線軌道のレールの取り付け状態を評価する、ことを特徴とする鉄道車両用台車を提供する。
【0025】
本発明に係る第3の手段において、前記前側輪軸の車輪に発生する横圧を測定する横圧測定手段を備え、前記演算部は、前記曲線軌道のレールの取り付け状態を評価する際に、前記横圧測定手段で測定した横圧を前記差で除算することで、前記曲線軌道の剛性を評価することが好ましい。
【0026】
さらに、前記課題を解決するため、本発明は、第4の方法を実行するための第4の手段として、鉄道車両用の軌道を走行し、前記軌道の状態を評価するための鉄道車両用の台車であって、前記台車は、前後一対の輪軸のうち前側輪軸が旋回することで左右の軸距に差をつけることが可能であり、前記前後一対の輪軸を支持する前後左右4つの軸箱にそれぞれ取り付けられた非接触式の距離計と、演算部と、を備え、前記演算部は、前記台車の前記前側輪軸が旋回した状態で、前記前側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で測定した、前記台車が直線軌道を走行する際の一方のレールの頭部側面までの距離及び他方のレールの頭部側面までの距離の和を算出し、前記前後一対の輪軸のうち後側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で測定した、前記台車が前記直線軌道を走行する際の一方のレールの頭部側面までの距離及び他方のレールの頭部側面までの距離の和を算出し、前記後側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で測定した各距離の和と、前記前側輪軸を支持する左右一対の軸箱にそれぞれ取り付けられた前記各距離計で測定した各距離の和との差に基づき、前記直線軌道のレールの取り付け状態を評価する、ことを特徴とする鉄道車両用台車を提供する。
【0027】
本発明に係る第4の手段において、前記前側輪軸の車輪に発生する横圧を測定する横圧測定手段を備え、前記演算部は、前記直線軌道のレールの取り付け状態を評価する際に、前記横圧測定手段で測定した横圧を前記差で除算することで、前記直線軌道の剛性を評価することが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、鉄道車両用台車が鉄道車両用軌道を走行しながら軌道の状態を容易に評価可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1実施形態に係る鉄道車両用台車の概略構成を示す模式図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る鉄道車両用台車の概略構成を示す模式図である。
図3】本発明の第3実施形態に係る鉄道車両用台車の概略構成及び軌道の状態評価方法の手順を説明する模式図である。
図4】本発明の第4実施形態に係る鉄道車両用台車の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の実施形態に係る鉄道車両用台車及びこれを用いた鉄道車両用軌道の状態評価方法について説明する。
【0031】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る鉄道車両用台車の概略構成を示す模式図である。図1(a)は台車が曲線軌道を走行している状態を示す平面図であり、図1(b)は距離計によって側摩耗が生じていないレールまでの距離を測定している状態を示す正面図であり、図1(c)は距離計によって側摩耗が生じているレールまでの距離を測定している状態を示す正面図である。なお、図1(a)は、台車枠の下方を透視した状態で図示している。
第1実施形態に係る台車100は、外軌側レールR1及び内軌側レールR2を具備する鉄道車両用の曲線軌道を走行し、この曲線軌道の状態を評価するための台車である。
【0032】
台車100は、前側輪軸1と、後側輪軸2と、台車枠3と、前側輪軸1を支持する左右一対の軸箱41a、41bと、後側輪軸2を支持する左右一対の軸箱42a、42bと、を備える。軸箱41a、41b、42a、42bは、それぞれ軸ばね(図示せず)を介して台車枠3に接続されている。
【0033】
第1実施形態に係る台車100は、前側輪軸1を支持する左右一対の軸箱41a、41bにそれぞれ取り付けられた非接触式の距離計5a、5bを備える。本実施形態では、距離計5a、5bとして、レーザ距離計が用いられている。
図1(b)及び図1(c)に示すように、距離計5aは、軸箱41aの下面に取り付けられており、外軌側レールR1の頭部R11の側面に向けて、左右方向(外軌側レールR1と内軌側レールR2の軌間方向)外方から、点線の矢符で示すレーザ光を照射する。これにより、外軌側レールR1の頭部R11の側面までの距離を左右方向外方から測定可能である。図示を省略するが、同様にして、距離計5bは、軸箱41bの下面に取り付けられており、内軌側レールR2の頭部の側面に向けて、左右方向外方からレーザ光を照射する。これにより、内軌側レールR2の頭部の側面までの距離を左右方向外方から測定可能である。
本実施形態の距離計5a、5bで測定される距離は、270mm~330mm程度である。
なお、距離計5a、5bから照射されるレーザ光は、水平方向に対して角度θを成す方向から照射されているため、外軌側レールR1の頭部R11の側面までの水平方向の距離は、距離計5a、5bで測定した距離にcosθを乗算した値となる。θの値は、距離計5a、5bの取り付け位置等を用いた幾何学計算によって算出可能である。ただし、本実施形態では、角度θが、20°~25 °程度であって小さいため、この角度θの影響を無視して(θ=0°とみなして)、距離計5a、5bで測定した距離をそのまま水平方向の距離として扱っても支障がない。
【0034】
また、台車100は、各距離計5a、5bに電気的に接続された演算部7を備える。演算部7は、新設してもよいし、一般的な台車又は車体に設けられて各種の制御を行う制御部を演算部7として併用することも可能である。演算部7には、各距離計5a、5bで測定した距離が入力される。また、演算部7には、公知の手段(図示せず)によって検知された台車100が現在走行している軌道の情報(曲線軌道と直線軌道の区別など)が入力される。本実施形態の演算部7は、台車枠3に取り付けられている。しかしながら、本発明はこれに限るものではなく、鉄道車両の車体(図示せず)など、他の箇所に取り付けることも可能である。
【0035】
演算部7は、入力された軌道情報に基づき、台車100の現在位置を認識し、これにより各距離計5a、5bのうち現在外軌側に位置する距離計を認識可能である。図1(a)に示す状態では、距離計5aが外軌側に位置する距離計として認識されることになる。そして、演算部7には、認識した台車100の現在位置における外軌側レールR1の頭部R11側面に摩耗(側摩耗)が生じていない場合の基準距離L0(図1(b)参照)が予め記憶されている。演算部7は、外軌側に位置する距離計5aで測定した外軌側レールR1の頭部R11側面までの距離L(図1(c)参照)と、基準距離L0との差(L-L0)を算出する。距離計5aによって測定した距離Lは、側摩耗WE(図1(c)参照)が生じることで車輪1aが左右方向外方(図1(b)の紙面右側)に移動すると、側摩耗WEが生じていないときの距離L0に比べて、大きな値となる。したがい、演算部7は、この差(L-L0)に基づき、側摩耗WEを評価可能である。具体的には、演算部7が行う評価としては、算出した差(L-L0)を摩耗量としてそのまま出力してもよいし、差(L-L0)が所定のしきい値を超えればアラームを出力するなど、種々の態様を採用可能である。
なお、距離計5bが外軌側に位置する距離計として認識された場合、演算部7は、外軌側に位置する距離計5bで測定した外軌側レールの頭部側面までの距離を用いて、上記と同様の評価を行う。
【0036】
本実施形態に係る台車100及びこれを用いた軌道の状態評価方法によれば、測定した距離Lと、側摩耗WEが生じていない場合の基準距離L0との差に基づき、側摩耗WEを評価するため、精度良く側摩耗WEを評価可能である。また、前側輪軸1を支持する左右一対の軸箱41a、41bにそれぞれ非接触式の距離計5a、5bを取り付けるだけで良いため、容易に評価可能である。
【0037】
<第2実施形態>
図2は、本発明の第2実施形態に係る鉄道車両用台車の概略構成を示す模式図である。図2(a)は台車が曲線軌道を走行している状態を示す平面図であり、図2(b)は演算部が実行する演算内容を説明する平面図である。なお、図2(a)は、台車枠の下方を透視した状態で図示している。
第2実施形態に係る台車100Aも、第1実施形態に係る台車100と同様に、外軌側レールR1及び内軌側レールR2を具備する鉄道車両用の曲線軌道を走行し、この曲線軌道の状態を評価するための台車である。
【0038】
台車100Aも、台車100と同様に、前側輪軸1と、後側輪軸2と、台車枠3と、前側輪軸1を支持する左右一対の軸箱41a、41bと、後側輪軸2を支持する左右一対の軸箱42a、42bと、を備える。軸箱41a、41b、42a、42bは、それぞれ軸ばね(図示せず)を介して台車枠3に接続されている。
【0039】
第2実施形態に係る台車100Aは、後側輪軸2を支持する左右一対の軸箱42a、42bにそれぞれ取り付けられた非接触式の距離計6a、6bを備える。本実施形態では、距離計6a、6bとして、レーザ距離計が用いられている。
距離計6a、6bの取り付け位置や測定する距離等の具体的な内容は、第1実施形態の距離計5a、5bと同様であり、後側輪軸2を支持する軸箱42a、42bに取り付けるか、前側軸軸1を支持する軸箱41a、41bに取り付けるかの違いしかないため、ここでは詳しい説明を省略する。
【0040】
また、台車100Aは、各距離計6a、6bに電気的に接続された演算部7を備える。演算部7は、新設してもよいし、一般的な台車又は車体に設けられて各種の制御を行う制御部を演算部7として併用することも可能である。演算部7には、各距離計6a、6bで測定した距離が入力される。また、演算部7には、公知の手段(図示せず)によって検知された台車100Aが現在走行している軌道の情報(曲線軌道と直線軌道の区別など)が入力される。本実施形態の演算部7は、台車枠3に取り付けられている。しかしながら、本発明はこれに限るものではなく、鉄道車両の車体(図示せず)など、他の箇所に取り付けることも可能である。
【0041】
演算部7は、入力された軌道情報に基づき、台車100Aが曲線軌道のどの地点を現在走行しているのかを認識可能である。図2(b)に示すように、演算部7は、外軌側に位置する距離計(図2(a)に示す状態では、距離計6a)で測定した外軌側レールR1の頭部R11側面までの距離L1と、内軌側に位置する距離計(図2(a)に示す状態では、距離計6b)で測定した内軌側レールR2の頭部R21側面までの距離L2との和(L1+L2)を算出する。そして、演算部7は、和(L1+L2)に基づき、曲線軌道のスラックを評価する。
【0042】
スラックとは、鉄道車両が曲線軌道を円滑に走行できるように、左右のレールR1、R2の軌間を所定の基準値から広げる量を意味する。台車100Aが曲線軌道を走行する際、後側輪軸2の外軌側車輪のフランジも内軌側車輪のフランジも、レールR1、R2の頭部の側面とは接触しない。また、前側輪軸1は所定のアタック角(図2(a)に実線の矢符で示す輪軸の進行方向と破線の矢符で示す軌道の方向とが成す角)αを有するが、後側輪軸のアタック角はほぼ0である。このため、後側輪軸2の車輪からレールR1、R2に対して作用する軌間を広げる方向の横圧がほぼ0になる。
各距離計6a、6bによって測定した距離L1、L2は、何れもレールR1、R2の頭部側面(左右方向外方の側面)までの距離を左右方向外方から測定したものであるため、測定した各距離の和(L1+L2)は、スラックが大きくなれば小さくなるし、スラックが小さくなれば大きくなる。また、後側輪軸2の車輪のフランジはレールR1、R2の頭部の側面と接触しないため、測定した各距離は側摩耗の影響を受けない。したがって、各距離の和(L1+L2)も側摩耗の影響を受けない。さらに、前述のように、後側輪軸2の車輪からレールR1、R2に対して作用する横圧がほぼ0であるため、測定した各距離の和(L1+L2)は小返りの影響を受けない。演算部7は、測定した各距離の和(L1+L2)に基づき、曲線軌道のスラックを評価するため、側摩耗や小返りの影響を受けることなく、精度良くスラックを評価可能である。また、後側輪軸2を支持する左右一対の軸箱42a、42bにそれぞれ非接触式の距離計6a、6bを取り付けるだけで良いため、容易に評価可能である。
【0043】
具体的には、図2(b)に示すように、外軌側レールR1と内軌側レールR2とのレール間距離(軌間距離)をWとし、各距離計6a、6bの取り付け位置間の距離をW0とし、各距離計6a、6bから照射されるレーザ光が水平方向から照射されるとみなすと(図1(b)に示す角度θと同様の角度が0°であるとみなすと)、レール間距離Wは、W=W0-(L1+L2)で算出可能である。レール間距離Wは、所定の基準値とスラックとの和であり、この基準値は既知であるため、レール間距離Wから基準値を減算することで、スラックを算出可能である。
より具体的には、例えば、取り付け位置間の距離W0を固定値として予め演算部7に記憶させておき、演算部7が入力された軌道情報からレール間距離Wの基準値を参照すれば、演算部7は、以下の式(1)によってスラックを算出可能である。
スラック=W0-(L1+L2)-基準値 ・・・(1)
演算部7が行う評価としては、算出したスラックをそのまま出力してもよいし、算出したスラックが所定のしきい値を超えればアラームを出力するなど、種々の態様を採用可能である。
【0044】
<第3実施形態>
図3は、本発明の第3実施形態に係る鉄道車両用台車の概略構成及び軌道の状態評価方法の手順を説明する模式図である。図3(a)は台車が曲線軌道を走行している状態を示す平面図であり、図3(b)は軌道の状態評価方法の手順を説明する平面図である。なお、図3は、台車枠の下方を透視した状態で図示している。
第3実施形態に係る台車100Bも、第1実施形態に係る台車100及び第2実施形態に係る台車100Aと同様に、外軌側レールR1及び内軌側レールR2を具備する鉄道車両用の曲線軌道を走行し、この曲線軌道の状態を評価するための台車である。
【0045】
台車100Bも、台車100及び台車100Aと同様に、前側輪軸1と、後側輪軸2と、台車枠3と、前側輪軸1を支持する左右一対の軸箱41a、41bと、後側輪軸2を支持する左右一対の軸箱42a、42bと、を備える。軸箱41a、41b、42a、42bは、それぞれ軸ばね(図示せず)を介して台車枠3に接続されている。
【0046】
第3実施形態に係る台車100Bは、台車100と同様に、前側輪軸1を支持する左右一対の軸箱41a、41bにそれぞれ取り付けられた非接触式の距離計5a、5bを備える。また、第3実施形態に係る台車100Bは、台車100Aと同様に、後側輪軸2を支持する左右一対の軸箱42a、42bにそれぞれ取り付けられた非接触式の距離計6a、6bを備える。本実施形態では、距離計5a、5b、6a、6bとして、レーザ距離計が用いられている。
距離計5a、5bの取り付け位置や測定する距離等の具体的な内容は、第1実施形態と同様であり、距離計6a、6bの取り付け位置や測定する距離等の具体的な内容は、第2実施形態と同様であるため、ここでは詳しい説明を省略する。
【0047】
また、台車100Bは、各距離計5a、5b、6a、6bに電気的に接続された演算部7を備える。演算部7は、新設してもよいし、一般的な台車又は車体に設けられて各種の制御を行う制御部を演算部7として併用することも可能である。演算部7には、各距離計5a、5b、6a、6bで測定した距離が入力される。また、演算部7には、公知の手段(図示せず)によって検知された台車100Bが現在走行している軌道の情報(曲線軌道と直線軌道の区別など)が入力される。本実施形態の演算部7は、台車枠3に取り付けられている。しかしながら、本発明はこれに限るものではなく、鉄道車両の車体(図示せず)など、他の箇所に取り付けることも可能である。
【0048】
演算部7は、入力された軌道情報に基づき、台車100Bが曲線軌道のどの地点を現在走行しているのかを認識可能である。
図3(b)の左図に示すように、演算部7は、前側輪軸1が測定地点MPを通る時点(前側輪軸1の外軌側車輪1aが測定地点MPを通る時点)において、外軌側に位置する距離計(図3(b)の左図に示す状態では、距離計5a)で測定した外軌側レールR1の頭部側面までの距離L11と、内軌側に位置する距離計(図3(b)の左図に示す状態では、距離計5b)で測定した内軌側レールR2の頭部側面までの距離L12との和である前側距離和(L11+L12)を算出する。
また、図3(b)の右図に示すように、演算部7は、後側輪軸2が測定地点MPを通る時点(後側輪軸2の外軌側車輪2aが測定地点MPを通る時点)において、外軌側に位置する距離計(図3(b)の右図に示す状態では、距離計6a)で測定した外軌側レールR1の頭部側面までの距離L21と、内軌側に位置する距離計(図3(b)の右図に示す状態では、距離計6b)で測定した内軌側レールR2の頭部側面までの距離L22との和である後側距離和(L21+L22)を算出する。そして、演算部7は、後側距離和(L21+L22)と前側距離和(L11+L12)との差に基づき、曲線軌道のレールR1、R2の取り付け状態(測定地点MPにおける取り付け状態)を評価する。
【0049】
レールR1、R2の取り付け状態を評価するには、左右のレールR1、R2に軌間を広げる方向の荷重を負荷する必要がある。ここで、鉄道車両が曲線軌道を走行する際、前側輪軸1の車輪には、外軌側車輪1aのフランジと外軌側レールR1の頭部側面とが接触することで、比較的大きな横圧Qが発生する(その反作用として、前側輪軸1が走行するレールR1、R2には軌間を広げる方向に比較的大きな横圧Qが作用する)一方、後側輪軸2の車輪に発生する横圧はほぼ0である(後側輪軸2が走行するレールR1、R2には軌間を広げる方向の横圧が殆ど作用しない)。
前側輪軸1を支持する軸箱41a、41bに取り付けられた距離計5a、5bで測定した外軌側レールの頭部側面及び内軌側レールの頭部側面までの距離L11、L12は側摩耗の影響を受けるものの、前側距離和(L11+L12)は側摩耗の影響が相殺されることになる。したがい、前側距離和(L11+L12)は、スラック及び小返りの影響を受けることになる。一方、後側距離和(L21+L22)は、第2実施形態で説明したように、側摩耗及び小返りの影響を受けない。したがい、後側距離和(L21+L22)は、スラックの影響を受けることになる。このため、後側距離和(L21+L22)と前側距離和(L11+L12)との差は、スラックの影響が相殺され、小返りの影響だけを受けることになる。
【0050】
演算部7は、後側距離和(L21+L22)と前側距離和(L11+L12)との差に基づき、曲線軌道のレールR1、R2の取り付け状態を評価するため、小返りに起因したレールR1、R2の取り付け状態の悪化を精度良く評価可能である。また、前後一対の輪軸1、2を支持する前後左右4つの軸箱41a、41b、42a、42bにそれぞれ非接触式の距離計5a、5b、6a、6bを取り付けるだけで良いため、容易に評価可能である。
演算部7が行う評価としては、算出した後側距離和(L21+L22)と前側距離和(L11+L12)との差をそのまま出力してもよいし、算出した差が所定のしきい値を超えればアラームを出力するなど、種々の態様を採用可能である。
【0051】
なお、台車100Bは、前側輪軸1の車輪に発生する横圧Qを測定する横圧測定手段を備えることが好ましい。前側輪軸1として輪重及び横圧を測定可能なPQ輪軸を用い、このPQ輪軸を横圧測定手段として用いることが可能である。また、台車100Bを輪重及び横圧を測定可能なセンサが取り付けられたPQモニタリング台車で構成し、このセンサを横圧測定手段として用いることも可能である。
台車100Bが横圧測定手段を備えることで、演算部7は、曲線軌道のレールR1、R2の取り付け状態を評価する際に、前側輪軸1が測定地点MPを通る時点において横圧測定手段で測定した横圧Qを後側距離和(L21+L22)と前側距離和(L11+L12)との差で除算することで、曲線軌道の剛性を評価することが可能である。
この場合に演算部7が行う評価としては、算出した除算値(曲線軌道の剛性)をそのまま出力してもよいし、算出した除算値が所定のしきい値を超えればアラームを出力するなど、種々の態様を採用可能である。
【0052】
<第4実施形態>
図4は、本発明の第4実施形態に係る鉄道車両用台車の概略構成を示す模式図である。図4は、台車が直線軌道を走行している状態を示す平面図であり、台車枠の下方を透視した状態で図示している。
第4実施形態に係る台車100Cは、第1実施形態~第3実施形態と異なり、レールRa及びレールRbを具備する鉄道車両用の直線軌道を走行し、この直線軌道の状態を評価するための台車である。
【0053】
台車100Cも、台車100、台車100A及び台車100Bと同様に、前側輪軸1と、後側輪軸2と、台車枠3と、前側輪軸1を支持する左右一対の軸箱41a、41bと、後側輪軸2を支持する左右一対の軸箱42a、42bと、を備える。軸箱41a、41b、42a、42bは、それぞれ軸ばね(図示せず)を介して台車枠3に接続されている。
台車100Cは、台車100、台車100A及び台車100Bと異なり、前側輪軸1が旋回(鉛直方向周りに旋回)することで左右の軸距(前側輪軸1と後側輪軸2との車軸間の距離)に差をつけることが可能になっている。具体的には、台車100Cとして、操舵台車が用いられている。
【0054】
第4実施形態に係る台車100Cは、台車100Bと同様に、前側輪軸1を支持する左右一対の軸箱41a、41bにそれぞれ取り付けられた非接触式の距離計5a、5bを備えると共に、後側輪軸2を支持する左右一対の軸箱42a、42bにそれぞれ取り付けられた非接触式の距離計6a、6bを備える。本実施形態では、距離計5a、5b、6a、6bとして、レーザ距離計が用いられている。
距離計5a、5b、6a、6bの取り付け位置や測定する距離等の具体的な内容は、第3実施形態と同様であるため、ここでは詳しい説明を省略する。
【0055】
また、台車100Cは、各距離計5a、5b、6a、6bに電気的に接続された演算部7を備える。演算部7は、新設してもよいし、一般的な台車又は車体に設けられて各種の制御を行う制御部を演算部7として併用することも可能である。演算部7には、各距離計5a、5b、6a、6bで測定した距離が入力される。また、演算部7には、公知の手段(図示せず)によって検知された台車100Cが現在走行している軌道の情報(曲線軌道と直線軌道の区別など)が入力される。本実施形態の演算部7は、台車枠3に取り付けられている。しかしながら、本発明はこれに限るものではなく、鉄道車両の車体(図示せず)など、他の箇所に取り付けることも可能である。
【0056】
演算部7は、入力された軌道情報に基づき、台車100Cが直線軌道のどの地点を現在走行しているのかを認識可能である。
少なくとも前側輪軸1が測定地点MPを通る時点では前側輪軸1は旋回しており、演算部7は、前側輪軸1が旋回した状態(具体的には、前側輪軸1の車輪1aのフランジFがレールRaの頭部側面に接触した状態)で測定地点MPを通る時点において、第3実施形態と同様に、一方のレールRa側に位置する距離計5aで測定したレールRaの頭部側面までの距離と、他方のレールRb側に位置する距離計5bで測定したレールRbの頭部側面までの距離との和である前側距離和を算出する。
同様に、演算部7は、後側輪軸2が測定地点MPを通る時点において、レールRa側に位置する距離計6aで測定したレールRaの頭部側面までの距離と、レールRb側に位置する距離計6bで測定したレールRbの頭部側面までの距離との和である後側距離和を算出する。
そして、演算部7は、後側距離和と前側距離和との差に基づき、直線軌道のレールRa、Rbの取り付け状態(測定地点MPにおける取り付け状態)を評価する。演算部7が行う評価としては、算出した後側距離和と前側距離和との差をそのまま出力してもよいし、算出した差が所定のしきい値を超えればアラームを出力するなど、種々の態様を採用可能である。
【0057】
第4実施形態に係る台車100Cによれば、前側輪軸1が旋回することで、前側輪軸1が走行する左右のレールRa、Rbに軸間を広げる方向の荷重が負荷されるため、直線軌道についても、第3実施形態と同様に、レールRa、Rbの取り付け状態を精度良く評価可能である。
なお、図4に示す例では、前側輪軸1を時計回りに旋回させて、前側輪軸1の車輪1aのフランジFがレールRaの頭部側面に接触した状態にさせているが、これに限るものではなく、前側輪軸1を反時計回りに旋回させて、前側輪軸1の車輪1bのフランジFがレールRaの頭部側面に接触した状態にさせても、同様の評価が可能である。
【0058】
なお、台車100Cは、台車100Bと同様に、前側輪軸1の車輪に発生する横圧Qを測定する横圧測定手段を備えることが好ましい。前側輪軸1として輪重及び横圧を測定可能なPQ輪軸を用い、このPQ輪軸を横圧測定手段として用いることが可能である。また、台車100Cを輪重及び横圧を測定可能なセンサが取り付けられたPQモニタリング台車で構成し、このセンサを横圧測定手段として用いることも可能である。
台車100Cが横圧測定手段を備えることで、演算部7は、直線軌道のレールRa、Rbの取り付け状態を評価する際に、前側輪軸1が測定地点MPを通る時点において横圧測定手段で測定した横圧を後側距離和と前側距離和との差で除算することで、直線軌道の剛性を評価することが可能である。
この場合に演算部7が行う評価としては、算出した除算値(直線軌道の剛性)をそのまま出力してもよいし、算出した除算値が所定のしきい値を超えればアラームを出力するなど、種々の態様を採用可能である。
【0059】
なお、第4実施形態に係る台車100Cを用い、台車100Cの演算部7が第1~第4実施形態で説明した全ての演算を実行可能にすることで、第1~第4実施形態で説明した軌道の状態評価方法の全てを実行可能である。
すなわち、台車100Cを用いて第1実施形態の状態評価方法(側摩耗の評価方法)を実行する場合には、前側輪軸1と後側輪軸2との左右の軸距を同一の値に設定し、演算部7が、距離計5a、5bのうち外軌側に位置する距離計で測定した距離を用いて、前述の演算(L1-L0の算出)を行えばよい。
また、台車100Cを用いて第2実施形態の状態評価方法(スラックの評価方法)を実行する場合には、前側輪軸1と後側輪軸2との左右の軸距を同一の値に設定し、演算部7が、距離計6a、6bで測定した距離を用いて、前述の演算(式(1)の演算)を行えばよい。
さらに、台車100Cを用いて第3実施形態の状態評価方法(レールの取り付け状態の評価方法)を実行する場合には、前側輪軸1と後側輪軸2との左右の軸距を同一の値に設定し、演算部7が、距離計5a、5b、6a、6bで測定した距離を用いて、前述の演算(後側距離和(L21+L22)と前側距離和(L11+L12)の差の算出)を行えばよい。
【符号の説明】
【0060】
1・・・前側輪軸
2・・・後側輪軸
3・・・台車枠
41a、41b、42a、42b・・・軸箱
5a、5b、6a、6b・・・距離計
7・・・演算部
100、100A、100B、100C・・・鉄道車両用台車
R1、R2、Ra、Rb・・・レール
R11、R21・・・頭部
図1
図2
図3
図4