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特許7207177パケット処理装置およびネットワークシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】パケット処理装置およびネットワークシステム
(51)【国際特許分類】
   H04L 47/6275 20220101AFI20230111BHJP
   H04L 47/56 20220101ALI20230111BHJP
【FI】
H04L47/6275
H04L47/56
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019103519
(22)【出願日】2019-06-03
(65)【公開番号】P2020198538
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】八木庭 涼平
(72)【発明者】
【氏名】本郷 淳平
【審査官】宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-125597(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0215832(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1729655(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L12/00-13/18,41/00-49/9057,61/00-65/80,69/00-69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
優先パケットおよび前記優先パケットより優先度の低い非優先パケットを伝送するネットワークシステムであって、
前記ネットワークシステムの各ノードに実装されるパケット処理装置は、
非優先パケットを格納するパケット格納部と、
前記パケット格納部の出力側に設けられるゲートと、
前記ゲートを制御する制御部と、を備え、
前記ネットワークシステムのエッジノードに実装されるエッジノードパケット処理装置は、
前記優先パケットの送信パターンを検出する検出部と、
前記優先パケットの送信パターンに基づいてゲート制御信号を生成する生成部と、
前記ゲート制御信号を前記優先パケットの宛先に向けて送信する送信部と、をさらに備え、
前記ゲート制御信号を受信したパケット処理装置において、前記制御部は、前記ゲート制御信号に従って前記ゲートを制御する
ことを特徴とするネットワークシステム。
【請求項2】
前記送信パターンは、前記エッジノードに到着する優先パケットの間隔およびパケット量を表す
ことを特徴とする請求項1に記載のネットワークシステム。
【請求項3】
前記ゲート制御信号は、他のパケット処理装置のゲートの閉鎖を開始するタイミングおよび閉鎖期間を表す
ことを特徴とする請求項1に記載のネットワークシステム。
【請求項4】
各パケット処理装置において、前記送信部は、前記ゲートが閉じている期間の終了時に前記ゲート制御信号を送信する
ことを特徴とする請求項1に記載のネットワークシステム。
【請求項5】
前記エッジノードパケット処理装置は、第1のポート、第2のポート、および第3のポートをさらに備え、
前記エッジノードパケット処理装置において、前記第1のポートおよび前記第2のポートに対してそれぞれ第1のパケット処理部および第2のパケット処理部が設けられ、
前記第1のパケット処理部および前記第2のパケット処理部は、それぞれ、前記パケット格納部、前記ゲート、前記制御部、前記検出部、前記生成部、および前記送信部を含み、
前記エッジノードパケット処理装置において、前記第3のポートに到着する優先パケットが前記第1のポートを介して出力されるときは、前記第1のパケット処理部の検出部により得られた、前記優先パケットの送信パターンを表す情報が前記第1のパケット処理部が備えるメモリに格納され、
前記エッジノードパケット処理装置において、前記第3のポートに到着する優先パケットの出力ポートが前記第1のポートから前記第2のポートに切り替えられたときは、前記第2のパケット処理部において、
前記制御部は、前記メモリに格納されている情報を使用して前記ゲートを制御し、
前記生成部は、前記メモリに格納されている情報を使用して前記ゲート制御信号を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載のネットワークシステム。
【請求項6】
優先パケットおよび前記優先パケットより優先度の低い非優先パケットを伝送するネットワークのエッジノードに実装されるパケット処理装置であって、
非優先パケットを格納するパケット格納部と、
前記パケット格納部の出力側に設けられるゲートと、
前記ゲートを制御する制御部と、
前記優先パケットの送信パターンを検出する検出部と、
前記優先パケットの送信パターンに基づいて、他のノードに実装されるパケット処理装置のゲートを制御するゲート制御信号を生成する生成部と、
前記ゲート制御信号を前記優先パケットの宛先に向けて送信する送信部と、
を備えるパケット処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パケットを処理する装置およびパケットを伝送するネットワークシステムに係わる。
【背景技術】
【0002】
近年、第5世代移動通信システム(5G)を実現するための技術の1つとして、基地局装置(BBU:Base Band Unit)と無線アンテナ局(RRH:Remote Radio Head)とが分離されたMFH(Mobile Front Haul)ネットワークが検討されている。MFHネットワークは、基地局装置と無線アンテナ局との間で、無線通信のための信号を伝送する。また、基地局装置は、複数の無線アンテナ局と接続することができる。
【0003】
MFHネットワークは、レイヤ2のパケットを伝送する。このため、MFHネットワークのためのパスおよび他のネットワーク(MBH(Mobile Back Haul)ネットワークまたは有線ネットワーク等)のパスが通信リソースを共有することがある。これにより、通信リソースの効率的な利用が実現される。
【0004】
ただし、MFHネットワークは、他のネットワークと比較して、遅延に係わる要求が厳しい。このため、他のネットワーク上で伝送されるパケットと比較して、MFHネットワーク上で伝送されるパケットを優先的に処理する優先制御が提案されている。なお、以下の記載では、MFHネットワーク上で伝送されるパケットを「MFHパケット」又は「優先パケット(高優先パケット)」と呼ぶことがある。また、他のネットワーク上で伝送されるパケットを「非MFHパケット」又は「非優先パケット(低優先パケット)」と呼ぶことがある。
【0005】
例えば、TAS(Time Aware Shaper)は、非MFHパケットに対してゲート制御を行う。具体的には、TASは、ネットワーク内の各ノードに実装され、ゲートおよびゲートを制御する機能を含む。そして、TASは、MFHパケットを転送するときに、ゲートを閉じることにより非MFHパケットの出力(或いは、転送)を停止する。このとき、非MFHパケットは、バッファに保存される。そして、MFHパケットの転送が終了すると、ゲートが開かれ、バッファに保存されていた非MFHパケットが出力される。この機能により、MFHパケットの遅延が抑制される。なお、TASは、IEEE802.1QBvに規定されている。
【0006】
なお、特許文献1には、高優先パケットの出力遅延を抑制するパケット処理装置が記載されている。また、特許文献2~4にも関連する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-125597号公報
【文献】特開2019-009557号公報
【文献】特開2018-129661号公報
【文献】特開2018-133694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
TASは、上述したように、MFHパケットがノードを通過するときにゲートを閉じることで、非MFHパケットの出力を停止する。他方、MFHパケットは、多くのケースにおいて、所定の周期で送信される。したがって、MFHネットワーク内の各ノードにおいてMFHパケットの送信パターンを学習し、ゲートを制御するためのゲート制御情報を予め作成しておく方法が提案されている。ただし、MFHパケットの送信パターンを学習してゲート制御情報を作成する処理の負荷は大きい。特に、無線アンテナ局と基地局装置との間のルート切替えに際して各ノードでゲート制御情報の再作成が行われると、MFHパケットの遅延が発生するおそれがある。
【0009】
本発明の1つの側面に係わる目的は、優先度の異なるパケットを伝送するネットワークにおいて、パケットの優先制御に起因する遅延を削減することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの態様のネットワークシステムは、優先パケットおよび前記優先パケットより優先度の低い非優先パケットを伝送する。前記ネットワークシステムの各ノードに実装されるパケット処理装置は、非優先パケットを格納するパケット格納部と、前記パケット格納部の出力側に設けられるゲートと、前記ゲートを制御する制御部と、を備える。前記ネットワークシステムのエッジノードに実装されるエッジノードパケット処理装置は、前記優先パケットの送信パターンを検出する検出部と、前記優先パケットの送信パターンに基づいてゲート制御信号を生成する生成部と、前記ゲート制御信号を前記優先パケットの宛先に向けて送信する送信部と、をさらに備える。前記ゲート制御信号を受信したパケット処理装置において、前記制御部は、前記ゲート制御信号に従って前記ゲートを制御する。
【発明の効果】
【0011】
上述の態様によれば、優先度の異なるパケットを伝送するネットワークにおいて、パケットの優先制御に起因する遅延が削減される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】中継ネットワークの一例を示す図である。
図2】パケットスイッチ装置の一例を示す図である。
図3】パケット処理部の一例を示す図である。
図4】リストテーブルの一例を示す図である。
図5】サブフレームの構成の一例を示す図である。
図6】受信パケットについての統計情報の一例を示す図である。
図7図6に示す統計情報に基づいて作成されたリストテーブルの一例を示す図である。
図8】通信経路の切替えの一例を示す図である。
図9】遠隔ゲート制御の一例を示す図である。
図10】遠隔ゲート制御信号の送信の一例を示す図である。
図11】パケットスイッチ装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図12】第1の実施例に係わるネットワークシステムを示す図である。
図13図12に示すSW5により作成されるリストテーブルの一例を示す図である。
図14図12に示すSW5により作成されるリストテーブルの他の例を示す図である。
図15】パケット受信処理の一例を示すフローチャートである。
図16】遠隔ゲート制御信号を送信する処理の一例を示すフローチャートである。
図17】遠隔ゲート制御信号を終端する処理の一例を示すフローチャートである。
図18】第2の実施例に係わるネットワークシステムを示す図である。
図19】ルート切替え時の入力側エッジノードの動作の一例を示す図である。
図20】ゲートクローズ期間に付加するマージン期間を調整する方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係わる中継ネットワークの一例を示す。中継ネットワーク1の各ノードには、パケットスイッチ装置2が実装されている。そして、各パケットスイッチ装置2は、レイヤ2パケットを中継する。
【0014】
中継ネットワーク1は、レイヤ2パケットを伝送する任意の回線を収容し得る。この例では、中継ネットワーク1は、無線アンテナ局(RRH)3と基地局(BBU)4との間に設定されるMFH回線を収容する。無線アンテナ局3は、1または複数の無線端末を収容し得る。基地局4は、無線アンテナ局3と各無線端末との間の無線リソースのスケジューリングを行う。なお、無線アンテナ局3と基地局4との間では、情報またはデータは、MFHパケットに格納されて伝送される。また、以下の記載では、無線アンテナ局3と基地局4との間に設定されるパスを「MFH回線」と呼ぶことがある。
【0015】
中継ネットワーク1は、MFH回線以外の回線も収容し得る。例えば、MBH回線および他の有線ネットワークの情報またはデータを伝送する回線などが中継ネットワーク1に収容される。以下の記載では、MFH回線以外の回線を介して伝送されるパケットを「非MFHパケット」と呼ぶことがある。
【0016】
ここで、非MFHパケットと比較して、MFHパケットの遅延に係わる要求は厳しい。このため、パケットスイッチ装置2は、非MFHパケットと比較して、MFHパケットを優先的に処理する優先制御機能を備える。
【0017】
図2は、パケットスイッチ装置2の一例を示す。パケットスイッチ装置2は、入力IF11、スイッチ処理部12、複数のパケット処理部13、CPU14、メモリ15を備える。なお、パケットスイッチ装置2は、図2に示していない他の回路または機能を備えていてもよい。
【0018】
入力IF11は、中継ネットワーク1に接続するためのインタフェースを提供する。なお、入出力IF11は、光ファイバを接続するための入力ポートおよび出力ポートを備えていてもよい。また、入出力IF11は、レイヤ2の信号を終端する機能を備えていてもよい。
【0019】
スイッチ処理部12は、入出力IF11を介して受信するパケットを、宛先に対応するパケット処理部13に導く。一例としては、スイッチ処理部12は、受信パケットのヘッダに設定されているVLANID及び/又は宛先アドレスに基づいて、そのパケットを対応する出力ポートに接続されるパケット処理部13に導く。尚、スイッチ処理部12は、CPU14から与えられる指示および情報に基づいてスイッチ処理を実行する。
【0020】
各パケット処理部13は、CPU14から与えられる指示および情報に基づいて、MFHパケットの優先制御を実行する。CPU14は、メモリ15に格納されているプログラムを実行することによりパケットスイッチ装置2の動作を制御する。メモリ15は、不揮発メモリを含み、CPU14により実行されるプログラムを格納する。また、メモリ15は、CPU14が使用する情報およびデータを保存する。なお、メモリ15の一部は、パケットスイッチ装置2の外部に設けられてもよい。
【0021】
図3は、パケット処理部13の一例を示す。パケット処理部13は、図3に示す各機能を備える。ただし、パケット処理部13は、図3に示していない機能をさらに備えてもよい。
【0022】
分配部21は、受信パケットのヘッダ情報を参照して、その受信パケットが優先パケットであるか非優先パケットであるかを判定する。パケットの種別(ここでは、優先パケットか否か)は、たとえば、VLANIDにより識別される。そして、優先パケットは優先パケットキュー22に格納され、非優先パケットは非優先パケットキュー23に格納される。なお、MFHパケットは、優先パケットの一例である。MFHパケット以外のパケットは、非優先パケットの一例である。また、優先パケットキュー22および非優先パケットキュー23は、それぞれバッファメモリにより実現される。
【0023】
優先パケットゲート24は、優先パケットキュー22の出力側に設けられる。非優先パケットゲート25は、非優先パケットキュー23の出力側に設けられる。制御部26は、優先パケットゲート24および非優先パケットゲート25の状態を制御する。ここで、制御部26は、通常、優先パケットゲート24を開状態に保持する。また、優先パケットキュー22から優先パケットが読み出されて出力されるときは、制御部26は、非優先パケットゲート25を閉じる。そして、セレクタ27は、優先パケットゲート24または非優先パケットゲート25を通過するパケットを出力する。これにより、パケットの優先制御が実現される。
【0024】
ところで、図1に示す無線アンテナ局(RRH)3と基地局(BBU)4との間で伝送されるMFHパケット(即ち、優先パケット)は、多くのケースにおいて、所定のパターンで送信される。したがって、パケット処理部13は、MFHパケットの送信パターンを学習し、その学習結果に基づいてゲートを制御するための制御情報を作成する機能を備える。
【0025】
制御情報は、収集部31および検出部32により作成され、パケット処理装置13がアクセス可能なメモリに保存される。図3に示す例では、制御情報は、リストテーブル33として保存されている。
【0026】
図4は、リストテーブル33の一例を示す。この例では、リストテーブル33は、TS番号33a、状態情報33b、33c、および滞留時間情報33dを互いに対応づけて管理する。TS番号33aは、受信パケットのタイムスロットを識別する。状態情報33bは、対応するTS番号33aにより識別されるタイムストッロにおける優先パケットゲート24の状態(開/閉)を表す。状態情報33cは、対応するTS番号33aにより識別されるタイムストッロにおける非優先パケットゲート25の状態(開/閉)を表す。滞留時間情報33dは、対応するTS番号33aにより識別されるタイムストッロに対して割り当てられる時間を表す。
【0027】
制御部26は、リストテーブル33に従って優先パケットゲート24および非優先パケットゲート25の状態を制御する。例えば、タイムスロットTS1においては、制御部26は、優先パケットゲート24を開くと共に、非優先パケットゲート25を閉じる。この場合、非優先パケットキュー23に非優先パケットが格納されていても、パケット処理部13は、その非優先パケットを出力しない。同様に、制御部26は、タイムスロットTS2~TSNにおいて、それぞれ優先パケットゲート24および非優先パケットゲート25の状態を制御する。さらに、制御部26は、リストテーブル33に基づくゲート制御を繰り返し実行する。
【0028】
ここで、リストテーブル33を作成する方法の一例を示す。以下の記載では、無線アンテナ局3と無線端末との間で図5に示すサブフレームが伝送されるものとする。このサブフレームの長さは1m秒である。また、このサブフレームは、14個のシンボルから構成される。なお、サブフレームは、複数のサブキャリアを使用する。
【0029】
MFHデータは、サブフレームを使用して伝送される。よって、この実施例では、MFHデータは、1m秒周期で送信される。なお、MFHデータは、各サブフレーム中の1または複数の無線リソースを使用して伝送される。各無線リソースは、1個のシンボルと1個のサブキャリアの組合せで表される。そして、無線アンテナ局3と無線端末との間で上述のサブフレームが伝送される場合、基地局4と無線アンテナ局3との間においても1m秒周期で1または複数のMFHパケットが伝送される。
【0030】
基地局4と無線アンテナ局3との間のルート上のパケットスイッチ装置2は、MFHパケットを優先パケットとして転送する。このとき、パケット処理部13において、MFHパケットは、優先パケットキュー22に格納されると共に、収集部31に導かれる。収集部31は、パケットスイッチ装置2に到着する優先パケットの統計情報を収集する。統計情報は、この実施例では、タイムスロット毎の受信パケット量を表す。パケット量は、例えば、パケット数またはバイト数で表される。検出部32は、収集部31により収集された統計情報を解析し、優先パケットの送信パターンを検出する。送信パターンは、優先パケットの到着間隔(すなわち、送信周期)を表す。また、送信パターンは、優先パケットが送信されるタイムスロットを表してもよい。さらに、送信パターンは、優先パケットの平均到着量およびバーストの揺らぎなどを表してもよい。
【0031】
図6は、受信パケットについての統計情報の一例を示す。図6において、縦軸はパケット量を表し、横軸は時間を表す。時間は、タイムスロットを単位として表されている。そして、この実施例では、MFHパケットは、1m秒周期で伝送されている。また、各サブフレーム内のタイムスロットTS3~TS5においてMFHパケットが検出されている。
【0032】
検出部32は、上述の統計情報を解析し、受信パケットの送信パターンを検出する。そして、検出部32は、この検出結果を利用してリストテーブル33を作成する。
【0033】
図7は、図6に示す統計情報に基づいて作成されたリストテーブル33の一例を示す。この例では、上述したように、各サブフレーム内のタイムスロットTS3~TS5においてMFHパケットが検出されている。よって、この場合、タイムスロットTS3~TS5に対して、非優先パケットゲート25の状態が「閉(Close)」に設定される。また、マージン期間として、タイムスロットTS2、TS6に対しても「閉(Close)」が設定される。
【0034】
制御部26は、リストテーブル33に従って優先パケットゲート24および非優先パケットゲート25の状態を制御する。よって、図7に示すリストテーブル33が作成されている場合は、タイムスロットTS2~TS6において非優先パケットゲート25が閉状態に制御される。すなわち、タイムスロットTS2~TS6においては非優先パケットの出力が停止されるので、MFHパケットの優先制御が実現される。
【0035】
ただし、中継ネットワーク内のすべてのノードにおいてリストテーブル33を作成すると、各ノードのCPUリソースが消費される。例えば、図8に示すケースでは、全てのノード(SW1~SW6)において、MFHパケットの到着間隔の計算などが実行される。また、MFHパケットを伝送する経路上で障害が発生すると、各ノードで再計算が必要になる。例えば、図8(a)に示すケースでは、ノードSW4、SW3、SW2、SW1を介して無線アンテナ局RRHから基地局BBUにMFHパケットが伝送されている。ここで、例えば、図8(b)に示すように、ノードSW2、SW3間で障害が発生すると、経路切替えが実行される。この場合、各ノード(少なくとも、ノードSW4、SW5、SW6、SW1)においてMFHパケットの到着間隔の計算が実行される。
【0036】
このように、中継ネットワーク内のすべてのノードにおいてリストテーブル33を作成すると、各ノードのCPUリソースが消費される。そこで、本発明の実施形態に係わるネットワークシステムは、この課題を解決または緩和する機能を備える。
【0037】
図9は、本発明の実施形態に係わるネットワークシステムにおける遠隔ゲート制御の一例を示す。この実施例では、無線アンテナ局(RRH)から複数のノードを介して基地局(BBU)に優先パケットが伝送される。優先パケットは、例えば、MFHパケットである。また、各ノードには、図3に示すパケットスイッチ装置2が実装されている。
【0038】
なお、以下の記載では、他のノードを経由することなくRRHに接続するノードを「入力側エッジノード」と呼ぶことがある。他のノードを経由することなくBBUに接続するノードを「出力側エッジノード」と呼ぶことがある。RRHとBBUとの間の経路上に実装される他のノードを「中間ノード」または「非エッジノード」と呼ぶことがある。
【0039】
上記構成のネットワークシステムにおいて、RRHから送信される優先パケットは、入力側エッジノードに到着する。入力側エッジノードは、図6図7を参照して説明したように、優先パケットの送信パターンを検出する。具体的には、図3に示す収集部31および検出部32は、優先パケットの到着間隔などを解析することで優先パケットの送信パターンを検出し、リストテーブル33を作成する。以降、入力側エッジノードは、リストテーブル33に基づいて非優先パケットに対するゲート制御を行うことができる。なお、以下の記載では、優先パケットの送信パターンを検出する処理を「TAS計算」と呼ぶことがある。
【0040】
入力側エッジノードは、TAS計算の結果を他のノードに通知するために、遠隔ゲート制御信号を生成する。すなわち、入力側エッジノードにおいて、ゲート制御信号生成部34は、TAS計算の結果を他のノードに通知するための遠隔ゲート制御信号を生成する。遠隔ゲート制御信号は、この実施例では、非優先パケットゲート25の閉鎖を開始するタイミングを表すタイミング情報、および非優先パケットゲート25を閉鎖する期間を表す期間情報を含む。
【0041】
ゲート制御信号送信部35は、対応する優先パケットと同じ宛先(ここでは、BBU)に向けて遠隔ゲート制御信号を送信する。このとき、遠隔ゲート制御信号は、優先パケットに続いて送信される。好ましくは、遠隔ゲート制御信号は、非優先パケットゲート25の閉鎖期間の終了時に送信される。或いは、遠隔ゲート制御信号は、対応する優先パケットの中に挿入されて送信されてもよい。
【0042】
遠隔ゲート制御信号の生成の一例を示す。以下の記載では、図6に示す統計情報に基づいて、図7に示すリストテーブル33が作成されているものとする。この場合、制御部26は、タイムスロットTS2~TS6において非優先パケットゲート25を閉鎖する。すなわち、タイムスロットTS6において非優先パケットゲート25の閉鎖が終了する。そして、ゲート制御信号送信部35は、タイムスロットTS6において遠隔ゲート制御信号を送信することになる。
【0043】
この後、非優先パケットゲート25は開状態に保持され、次のサブフレームのタイムスロットTS2において閉状態に制御される。すなわち、遠隔ゲート制御信号が送信されたときから650μ秒後に、非優先パケットゲート25が閉状態に制御される。よって、非優先パケットゲート25の閉鎖を開始するタイミングを表すタイミング情報は「650μ秒後(9タイムスロット後)」である。また、非優先パケットゲート25は、タイムスロットTS2~TS6において閉状態に保持される。したがって、非優先パケットゲート25を閉鎖する期間を表す期間情報は「350μ秒(5タイムスロット)」である。
【0044】
中間ノードは、優先パケットおよび遠隔ゲート制御信号を受信する。そうすると、中間ノードの制御部26は、受信した遠隔ゲート制御信号に従って非優先パケットゲート25を制御する。すなわち、制御部26は、タイミング情報により表される時刻に非優先パケットゲート25の閉鎖を開始する。そして、制御部26は、期間情報により表される期間が終了するまで、非優先パケットゲート25を閉鎖したまま保持する。このとき、中間ノードは、優先パケットおよび遠隔ゲート制御信号を次ノードに転送する。その後、制御部26は、非優先パケットゲート25を開く。なお、図9に示す斜線領域は、非優先パケットゲート25が閉じた状態を表している。
【0045】
なお、中間ノードは、受信した遠隔ゲート制御信号に従ってリストテーブルを作成してもよい。この場合、このリストテーブルは、図3に示す例では、遠隔制御リストテーブル36としてメモリに保存される。また、制御部26は、遠隔制御リストテーブル36に従って非優先パケットゲート25を制御してもよい。なお、遠隔制御リストテーブル36の内容は、入力側エッジノードにおいて作成されるリストテーブル33と実質的に同じである。
【0046】
優先パケットおよび遠隔ゲート制御信号は、1または複数の中間ノードによって転送され、出力側エッジノードに到着する。出力側エッジノードは、中間ノードと同様に、遠隔ゲート制御信号に従って非優先パケットゲート25を制御する。ただし、出力側エッジノードにおいては、図3に示す終端部37が遠隔ゲート制御信号を終端する。すなわち、遠隔ゲート制御信号は、BBUには転送されない。
【0047】
このように、本発明の実施形態に係わるネットワークシステムにおいては、入力側エッジノードのみがTAS計算を実行し、その計算結果を表す遠隔ゲート制御信号が中間ノードおよび出力側エッジノードに配布される。したがって、各ノードがTAS計算を実行する構成と比較して、ネットワークシステム全体として、CPUリソースの消費が削減される。
【0048】
図10は、遠隔ゲート制御信号の送信の一例を示す。この例では、各RRHとBBUとの間の通信に対してそれぞれVLANIDが割り当てられている。そして、RRHに接続されるノード(すなわち、入力側エッジノード)は、RRHからMFHパケットを受信すると、遠隔ゲート制御信号(すなわち、タイミング情報および期間情報)を含むL2パケットを生成する。このL2パケットの宛先アドレスは、MFHパケットと同じであり、BBUを指定する。また、このL2パケットのヘッダには、MFHパケットの送信元を識別するVLANIDが設定される。そして、入力側エッジノードは、このL2パケットをBBUに向けて送信する。そうすると、L2パケットは、1または複数の中間ノードにより出力側エッジノードまで転送される。ただし、遠隔ゲート制御信号は、出力側エッジノードにより終端され、BBUには転送されない。
【0049】
なお、各パケットスイッチ装置2は、計算対象ポートリスト41に登録されているVLANIDが付与された優先パケットを受信したときに、TAS計算を実行する。図10に示す実施例では、入力側エッジノードに実装されているパケットスイッチ装置2の計算対象ポートリスト41に「VLANID=100、200、300」が登録されている。また、各パケットスイッチ装置2は、遠隔制御有効ポートリスト42に登録されているVLANIDが付与された、遠隔ゲート制御信号を含むL2パケットを受信したときに、受信した遠隔ゲート制御信号に基づいて非優先パケットゲート25を制御する。図10に示す実施例では、中間ノードおよび出力側エッジノードに実装されている各パケットスイッチ装置2の遠隔制御有効ポートリスト42に「VLANID=100、200、300」が登録されている。さらに、各パケットスイッチ装置2は、終端ポートリスト43に登録されているVLANIDが付与された、遠隔ゲート制御信号を含むL2パケットを受信したときに、遠隔ゲート制御信号を終端する。図10に示す実施例では、出力側エッジノードに実装されているパケットスイッチ装置2の終端ポートリスト43に「VLANID=100、200、300」が登録されている。
【0050】
なお、上述の実施例では、受信パケットを処理すべきか否かがVLANIDにより判定されるが、本発明はこの方法に限定されるものではない。例えば、入出力ポートを識別するポート番号を利用して受信パケットを処理すべきか否かを判定してもよい。例えば、図10に示す入力側エッジノードに実装されているパケットスイッチ装置2の計算対象ポートリスト41に「ポート番号=2、3、10」が登録される。或いは、ポート番号およびVLANIDの組合せに基づいて受信パケットを処理すべきか否かを判定してもよい。
【0051】
図11は、パケットスイッチ装置2のハードウェア構成の一例を示す。パケットスイッチ装置2は、CPU51、不揮発メモリ52、揮発メモリ53、処理モジュール54、およびIFカード55を備える。ただし、パケットスイッチ装置2は、図11に示していない他の回路を備えていてもよい。
【0052】
CPU51は、不揮発メモリ52に格納されているプログラムを実行することにより、パケットスイッチ装置2を監視および制御する。CPU51は、NPU及び/又はASSPを監視および制御できる。不揮発メモリ52は、パケットスイッチ装置2を監視および制御するためのプログラムを格納する。また、不揮発メモリ52は、パケットスイッチ装置2の構成を表す情報(Config情報など)を格納する。揮発メモリ53は、CPU51の作業領域として使用される。
【0053】
処理モジュール54は、たとえば、NPU(Network Processing Unit)およびASSP(Application Specific Standard Product)を含み、受信パケットを処理する。すなわち、処理モジュール54は、レイヤ2の処理を実行する。具体的には、処理モジュール54は、VLAN、MAC、QoS、OAMを提供する。なお、図3に示すスイッチ処理部12および複数のパケット処理部13は、処理モジュール54により実現される。すなわち、優先パケットに対して非優先パケットの出力を制限するゲート制御は、処理モジュール54により実現される。このとき、ゲート制御に係わる動作は、ソフトウェアにより制御される。
【0054】
IFカード55は、光回線を収容するための光モジュールを備える。また、IFカード55は、光モジュールを制御するFPGAを備える。FPGAは、例えば、光モジュールのパワーのオン/オフの制御、および光出力のオン/オフの制御などを行う。なお、パケットスイッチ装置2は、伝送速度の異なるIFカード55を実装してもよい。例えば、10GのIFカード55および100GのIFカード55が混在してもよい。
【0055】
<第1の実施例>
図12は、第1の実施例に係わるネットワークシステムを示す。第1の実施例では、中継ネットワークは、パケットスイッチSW1~SW6を含む。パケットスイッチSW1~SW6は、光ファイバによりリング状に接続されている。リングは、2重化されている。なお、図12において、各パケットスイッチSW1~SW6に付与されている表記(L、R、D)は、物理ポートを識別する。また、中継ネットワークは、この実施例では、ERP(Ethernet Ring Protection(Ethernetは、登録商標))を提供する。そして、パケットスイッチSW4、SW5間にERPのブロックポートが設けられている。
【0056】
以下の記載では、RRH1、RRH2からBBUへ優先パケットが送信されるものとする。MFHパケットは、優先パケットの一例である。そして、RRH1、RRH2から送信される優先パケットは、HUB1、SW5、SW6、SW1を経由してBBUに伝送される。よって、この場合、SW5は入力側エッジノードに相当し、SW1は出力側エッジノードに相当し、SW6は中間ノードに相当する。なお、ブロックポートは、特定の制御パケット以外のパケットを遮断する。よって、RRH1、RRH2から送信される優先パケットは、通常運用時には、SW4、SW5間の経路を通過することはできない。
【0057】
RRH1、RRH2から送信される優先パケットは、HUBを介してSW5のポートDに到着する。ここで、SW5のスイッチ部12は、予め設定されているスイッチ情報に基づいて、ポートDに到着した優先パケットをポートLに導くものとする。この場合、SW5において、ポートLに対して設けられているパケット処理部13がTAS処理を実行する。
【0058】
SW5において、パケット処理部13は、ポートLを介して出力する優先パケットの送信パターンを検出し、リストテーブル33を作成する。また、パケット処理部13は、この検出結果に基づいて遠隔ゲート制御信号を生成する。そして、SW5は、ポートLを介して優先パケットおよび遠隔ゲート制御信号を出力する。なお、SW5の計算対象ポートリスト41には、ポートDが登録されている。或いは、RRH1およびRRH2がそれぞれVLANID1およびVLANID2で識別されるときは、SW5の計算対象ポートリスト41に、論理ポートとして、VLANID1およびVLANID2が登録されていてもよい。
【0059】
SW5のポートLを介して送信される優先パケットおよび遠隔ゲート制御信号は、SW6のポートRに到着する。SW6において、スイッチ部12は、予め設定されているスイッチ情報に基づいて、ポートRに到着した優先パケットおよび遠隔ゲート制御信号をポートLに導くものとする。この場合、SW6において、ポートLに対して設けられているパケット処理部13がゲート制御を実行する。
【0060】
SW6において、パケット処理部13は、遠隔ゲート制御信号に基づいて遠隔制御リストテーブル36を作成し、ゲート制御を実行する。そして、SW6は、ポートLを介して優先パケットおよび遠隔ゲート制御信号を出力する。なお、SW6の遠隔制御有効ポートリスト42には、ポートRが登録されている。或いは、SW6の遠隔制御有効ポートリスト42に、VLANID1およびVLANID2が登録されていてもよい。
【0061】
SW6のポートLを介して送信される優先パケットおよび遠隔ゲート制御信号は、SW1のポートRに到着する。SW1において、スイッチ部12は、予め設定されているスイッチ情報に基づいて、ポートRに到着した優先パケットおよび遠隔ゲート制御信号をポートDに導くものとする。この場合、ポートDに対して設けられているパケット処理部13がゲート制御を実行する。
【0062】
SW1において、パケット処理部13は、遠隔ゲート制御信号に基づいて遠隔制御リストテーブル36を作成し、ゲート制御を実行する。そして、SW1は、ポートDを介して優先パケットを出力する。よって、RRH1、RRH2から送信される優先パケットは、BBUに導かれる。なお、SW1の遠隔制御有効ポートリスト42には、ポートR(または、VLANID1、VLANID2)が登録されている。他方、SW1の終端リスト43には、ポートR(または、VLANID1、VLANID2)が登録されている。したがって、遠隔ゲート制御信号は、BBUに転送されることなく、SW1において終端される。
【0063】
図13は、図12に示す実施例において、SW5により作成されるリストテーブル33の一例を示す。ここでは、ポートLに対して設けられているパケット処理部13は、VLANID毎に優先パケットの送信パターンを検出するものとする。そして、VLANID1(即ち、RRH1とBBUとの通信)に対して図13(a)に示すリストテーブルが作成され、VLANID2(即ち、RRH2とBBUとの通信)に対して図13(b)に示すリストテーブルが作成されたものとする。この場合、ポートLに対して設けられているパケット処理部13は、VLANID1が付与された優先パケットを転送するためにタイムスロットTS3~TS4において非優先パケットゲート25を閉じ、VLANID2が付与された優先パケットを転送するためにタイムスロットTS5~TS6において非優先パケットゲート25を閉じる。
【0064】
したがって、パケット処理部13は、ポートLを介して出力されるパケットに対して、図13に示す2つのリストテーブルに基づいて図14に示すリストテーブルを作成する。なお、図14に示すリストテーブルは、図13に示す2つのリストテーブルの非優先パケットゲートのための状態情報についてOR演算を行うことで得られる。このOR演算においては、Closeが「1」に相当し、Openが「0」に相当する。
【0065】
この後、パケット処理部13は、図14に示すリストテーブルに従って非優先パケットゲート25を制御する。すなわち、タイムスロットTS3~TS6において非優先パケットゲート25を閉じる。また、パケット処理部13は、図14に示すリストテーブルの内容を表す遠隔ゲート制御信号を生成する。この遠隔ゲート制御信号は、対応する優先パケットに続いて送信される。
【0066】
図15は、パケット受信処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、パケット処理部13がパケットを受信したときに実行される。
【0067】
S1において、パケット処理部13は、受信パケットが優先パケットであるか否かを判定する。受信パケットが優先パケットであるか否かは、例えば、その受信パケットに付与されているVLANIDにより識別される。そして、受信パケットが優先パケットであるときは、パケット処理部13は、S2において、その受信パケットを優先パケットキュー22に格納する。
【0068】
S3において、パケット処理部13は、受信した優先パケットの送信元がTAS計算を実行すべき対象であるか否かを判定する。送信元は、この例では、優先パケットが到着した物理ポートまたはVLANIDなどの論理ポートにより識別される。この場合、優先パケットが到着した物理ポートまたはVLANIDが計算対象ポートリスト41に登録されていれば、優先パケットがTAS計算を実行すべき対象であると判定する。
【0069】
S4において、パケット処理部13は、優先パケットについてTAS計算を実行する。すなわち、パケット処理部13は、送信元について優先パケットの送信パターンを検出する。ただし、図6を参照して説明したように、優先パケットの送信パターンは、所定の期間にわたって統計情報を収集することにより得られる。そして、パケット処理部13は、S5において、優先パケットの送信先IDに対応づけて、TAS計算の結果をリストテーブル33に記録する。
【0070】
受信パケットが優先パケットでないときは、パケット処理部31は、S6において、受信パケットが遠隔ゲート制御信号であるか否かを判定する。受信パケットが遠隔ゲート制御信号であるか否かは、例えば、その受信パケットに付与されているVLANIDにより識別されるものとする。そして、受信パケットが遠隔ゲート制御信号であるときは、パケット処理部13は、S7において、その遠隔ゲート制御信号を優先パケットキュー22に格納する。
【0071】
S8において、パケット処理部13は、受信した遠隔ゲート制御信号に従ってゲート制御を行うか否かを判定する。この例では、遠隔ゲート制御信号が到着した物理ポートまたはVLANIDが遠隔制御有効ポートリスト42に登録されていれば、パケット処理部13は、受信した遠隔ゲート制御信号に従ってゲート制御を行うと判定する。この場合、パケット処理部13は、S9において、受信した遠隔ゲート制御信号に従って遠隔制御リストテーブル36を更新する。なお、受信パケットが優先パケットでなく、且つ、遠隔ゲート制御信号でもないときは、その受信パケットは、S10において、非優先パケットキュー23に格納される。
【0072】
図12に示す例では、SW5の計算対象ポートリスト41に、受信した優先パケットの送信元として、「ポートD」または「VLANID1、VLANID2」が登録されている。よって、RRH1、RRH2から優先パケットが送信されると、SW5のポートLに設けられているパケット処理部13によりS2~S5の処理が実行される。すなわち、SW5において優先パケットの送信パターンが計算される。これに対して、SW6、SW1においては、計算対象ポートリスト41に「ポートR」または「VLANID1、VLANID2」は登録されていない。よって、SW6、SW1においては、S4~S5の処理は実行されない。すなわち、SW6、SW1は、TAS計算を実行しない。
【0073】
図16は、遠隔ゲート制御信号を送信する処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、入力側エッジノードにおいて実行される。図12に示す例では、SW5において実行される。なお、入力側エッジノードにおいて、図15に示すフローチャートの処理によりリストテーブル33が既に作成されているものとする。
【0074】
S21において、優先パケットの出力ポートに対して設けられているパケット処理部13は、リストテーブル33に従って非優先パケットゲート25を制御する。S22において、パケット処理部13は、現在時刻が、非優先パケットゲート25の閉状態の終了タイミングであるか否かを判定する。例えば、図14に示す例では、タイムスロットTS6において非優先パケットゲート25の閉状態が終了する。そして、現在時刻が閉状態の終了タイミングであれば、S23~S24の処理が実行される。
【0075】
S23において、パケット処理部13は、リストテーブル33に基づいて遠隔ゲート制御信号を生成する。遠隔ゲート制御信号は、この例では、次の閉状態を開始するタイミングを表すタイミング情報、および次の閉状態の期間を表す期間情報を含む。例えば、図14に示すタイムスロットTS6において遠隔ゲート制御信号が作成される。この場合、次の閉状態は、次のサブフレームのタイムスロットTS3において開始され、その期間は280μ秒である。したがって、この場合、タイミング情報は「720μ秒後」を表し、期間情報は「280μ秒」を表す。なお、タイミング情報は、タイムスロット番号で表されもよい。また、期間情報は、タイムスロットの個数で表されてもよい。
【0076】
S24において、パケット処理部13は、遠隔ゲート制御信号を送信する。遠隔ゲート制御信号は、非優先パケットゲート25が閉じている期間の終了時に送信される。尚、遠隔ゲート制御信号は、パケットに格納されて送信される。このパケットのヘッダ情報(例えば、宛先アドレスなど)は、対応する優先パケットと同じである。ただし、このパケットのヘッダ情報は、遠隔ゲート制御信号を表す情報を含むことが好ましい。
【0077】
なお、入力側エッジノード以外のノード(中間ノードおよび出力側エッジノード)においては、遠隔制御リストテーブル36に従ってゲート制御が実行される。ここで、遠隔制御リストテーブル36は、入力側エッジノードから送信される遠隔ゲート制御信号に基づいて更新される。例えば、入力側エッジノードが、タイムスロットTS6において「タイミング情報:720μ秒後」および「期間情報:280μ秒」を送信したものとする。この場合、タイムスロットTS6において遠隔ゲート制御信号を受信したノードは、タイムスロットTS6に対して720μ秒後のタイムスロット(即ち、次のサブフレームのTS3)に非優先パケットゲート25の閉状態が開始され、その期間が280μ秒であると認識する。よって、遠隔ゲート制御信号を受信したノードの遠隔制御リストテーブル36において、タイムスロットTS3~TS6に対して「閉(Close)」が設定される。
【0078】
図17は、遠隔ゲート制御信号を終端する処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、遠隔ゲート制御信号を受信したノードにおいて実行される。図12に示す例では、SW6、SW1において実行される。
【0079】
S31において、パケット処理部13は、遠隔ゲート制御信号を受信する。S32において、パケット処理部13は、受信した遠隔ゲート制御信号を転送するか終端するかを判定する。そして、遠隔ゲート制御信号が到着した物理ポートまたはVLANIDが終端ポートリスト43に登録されていれば、パケット処理部13は、S33において遠隔ゲート制御信号を終端する。一方、遠隔ゲート制御信号が到着した物理ポートまたはVLANIDが終端ポートリスト43に登録されていなければ、パケット処理部13は、S34において、遠隔ゲート制御信号を出力(すなわち、転送)する。図12に示す例では、SW6のポートLに設けられるパケット処理部13は、RRH1、RRH2から送信される遠隔ゲート制御信号をSW1に転送する。一方、SW1のポートDに設けられるパケット処理部13は、RRH1、RRH2から送信される遠隔ゲート制御信号を終端する。
【0080】
<第2の実施例>
図18は、第2の実施例に係わるネットワークシステムを示す。なお、図18は、図12に示すネットワークにおいて、SW1、SW6間で障害が発生した後の状態を示している。ネットワーク障害が発生すると、図12に示すERPのブロックポートが開放され、ルート切替えが実行される。ルート切替え時には、各SWのスイッチ処理部12が装置内の経路を変更する。例えば、SW5においては、ポートDに到着するパケットはポートRに導かれる。SW4、SW3、SW2においては、それぞれ、ポートLに到着するパケットはポートRに導かれる。SW1においては、ポートLに到着するパケットはポートDに導かれる。この結果、RRH1、RRH2から送信される優先パケットは、SW5、SW4、SW3、SW2、SW1を経由してBBUに転送される。
【0081】
図19は、ルート切替え時の入力側エッジノードの動作の一例を示す。ここでは、図12または図18に示すSW5の動作を記載する。
【0082】
ルート切替え前は、SW5は、図19(a)に示すように、ポートDに到着した優先パケットをポートLに導くように構成されている。このとき、ポートLに対して設けられているパケット処理部13Lは、TAS計算を実行して優先パケットの送信パターンを検出する。そして、パケット処理部13Lは、TAS計算の結果に基づいてリストテーブル33を作成する。
【0083】
図18に示すネットワーク障害が発生すると、各SWのスイッチ処理部12が装置内の経路を変更する。SW5においては、図19(b)に示すように、ポートDに到着した優先パケットがポートRに導かれるようにスイッチ処理部12が構成される。ここで、RRH1、RRH2は、ネットワーク障害が発生する前と同じ送信パターンで優先パケットを送信するものとする。この場合、ネットワーク障害が発生する前にパケット処理部13Lにより作成されたリストテーブル33は、ルート切替え後も有効である。したがって、SW5において、パケット処理部13Lにより作成されたリストテーブル33がパケット処理部13Rに設定される。この後、パケット処理部13Rは、パケット処理部13Lから受け取ったリストテーブル33を利用してゲート制御を行う。また、パケット処理部13Rは、パケット処理部13Lから受け取ったリストテーブル33を利用して、遠隔ゲート制御信号を生成して送信する。
【0084】
このように、入力側エッジノードに実装されているパケットスイッチ装置2は、ルート切替え前に作成したリストテーブル33を、ルート切替え後の出力ポート(図19に示す例では、ポートR)に対して設けられているパケット処理部13に設定する。よって、ネットワーク障害等に起因してルート切替えが発生しても、パケットスイッチ装置2は、遅延なくゲート制御を継続できる。
【0085】
なお、図19に示すようなリストテーブル33のコピーを行わなくても、新たな出力ポートに対して設けられるパケット処理部(図19に示す例では、パケット処理部13R)は、優先パケットの統計情報を収集することでリストテーブル33を作成できる。但し、統計情報の収集に要する時間は短くない。したがって、ルート切替え後に新たにリストテーブルを作成する手順では、ネットワーク障害の発生時に、ゲート制御の遅延が生じることがある。或いは、優先パケットと非優先パケットの衝突が発生するおそれがある。
【0086】
中間ノードまたは出力側エッジノードに実装されるパケットスイッチ装置2は、各優先パケットに続いてそれぞれ遠隔ゲート制御信号を受信する。そして、パケットスイッチ装置2は、受信した遠隔ゲート制御信号に基づいてゲート制御を行う。したがって、ネットワーク障害等に起因してルート切替えが発生しても、各ノードのパケットスイッチ装置2は、遅延なくゲート制御を継続できる。
【0087】
なお、図12図19に示す実施例では、RRH1、RRH2からBBUに優先パケットが送信されるが、本発明は、BBUからRRHに優先パケットが送信されるケースにも適用され得る。例えば、図12においてBBUからRRH1、RRH2に優先パケットが送信されるときは、SW1が入力側エッジノードとして動作する。即ち、SW1において優先パケットの送信パターンが検出され、リストテーブル33が作成される。また、このリストテーブル33の内容を表す遠隔ゲート制御信号が、SW1からSW6、SW5に配布される。
【0088】
<第3の実施例>
上述したように、パケットスイッチ装置2は、優先パケットの送信パターンを検出し、その検出結果に応じてゲート制御を行う。即ち、パケットスイッチ装置2は、優先パケットの送信パターンを予測し、その予測結果に応じて非優先パケットの出力を制限する。
【0089】
ところが、優先パケットは、必ずしも予測の通りに送信されるとは限らない。即ち、非優先パケットゲート25が開いているときに、パケットスイッチ装置2に優先パケットが到着することもある。そして、非優先パケットゲート25が開いているときにパケットスイッチ装置2に優先パケットが到着すると、非優先パケットが転送されることで優先パケットの転送が遅れるおそれがある。そこで、パケットスイッチ装置2は、優先パケットの送信パターンに基づいて非優先パケットゲート25を閉じる期間(以下、ゲートクローズ期間)を決定し、そのゲートクローズ期間に対してマージン期間Mを設ける。なお、マージン期間においては、非優先パケットゲート25は閉じられる。
【0090】
図20は、ゲートクローズ期間に付加するマージン期間を調整する方法の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、例えば、入力側エッジノードで実行される。
【0091】
S41において、パケット処理部13は、非優先パケットゲート25が開いている期間内にパケットスイッチ装置2に到着する優先パケットの個数をカウントする。以下の記載では、非優先パケットゲート25が開いている期間を「ゲートオープン期間」と呼ぶことがある。また、S41でカウントされる優先パケットの数を「パケット数N」と呼ぶことがある。
【0092】
S42において、パケット処理部13は、パケット数Nと所定の閾値1とを比較する。そして、パケット数Nが閾値1以下であれば、パケット処理部13は、S43において、マージン期間Mがゼロであるか否かをチェックする。
【0093】
マージン期間がゼロよりも大きいときは、パケット処理部13は、S44において、マージン期間Mを所定量だけデクリメントする。一方、マージン期間がゼロであるときは、S44はスキップされる。
【0094】
S45において、パケット処理部13は、パケット数Nをカウントするための周期が終了したか否かを判定する。そして、この周期が終了しているときは、パケット処理部13は、S46において、パケット数Nをクリアする。すなわち、パケット数Nはゼロに初期化される。
【0095】
パケット数Nが閾値1より大きいときは(S42:Yes)、パケット処理部13は、S47において、マージン期間Mと所定の閾値2とを比較する。そして、マージン期間Mが閾値2以下であれば、パケット処理部13は、S48において、マージン期間Mを所定量だけインクリメントする。この後、パケット処理部13は、S49において、パケット数Nをクリアする。一方、マージン期間Mが閾値2より大きいときは、パケット処理部13は、S50において、警報を出力する。
【0096】
上述の処理によってマージン期間Mが変化したときは、リストテーブル33が更新される。例えば、優先パケットの送信パターンに基づいて決定されたゲートクローズ期間がタイムスロットTS3~TS5であるものとする。このとき、マージン期間は設けられていないものとする。そして、非優先パケットゲート25が開いているときにパケットスイッチ装置2に到着する優先パケットの数(即ち、パケット数N)が閾値1より大きければ、S48においてマージン期間Mがインクリメントされる。一例としては、マージン期間Mがゼロから1にインクリメントされる。この場合、リストテーブル33において、タイムスロットTS2、TS6が「開(Open)」から「閉(Close)」に更新される。以降、制御部26は、タイムスロットTS2~TS6において非優先パケットゲート25を閉状態に制御する。
【符号の説明】
【0097】
1 中継ネットワーク
2 パケットスイッチ装置
3 無線アンテナ局(RRH)
4 基地局(BBU)
13(13D、13L、13R) パケット処理部
14 CPU
22 優先パケットキュー
23 非優先パケットキュー
24 優先パケットゲート
25 非優先パケットゲート
26 制御部
31 収集部
32 検出部
33 リストテーブル
34 ゲート制御信号生成部
35 ゲート制御信号送信部
36 遠隔制御リストテーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
図19
図20