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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】車両用収容装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 7/04 20060101AFI20230111BHJP
   B60N 3/00 20060101ALI20230111BHJP
   B60N 3/10 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
B60R7/04 Z
B60N3/00 Z
B60N3/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019129492
(22)【出願日】2019-07-11
(65)【公開番号】P2021014178
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榊原 泰博
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼田 昂平
(72)【発明者】
【氏名】菱田 裕
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-131793(JP,A)
【文献】特開2005-112221(JP,A)
【文献】特開2007-290458(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0072206(US,A1)
【文献】特開平06-022808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/04
B60N 3/00
B60N 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容空間を有し開口を上方に向けるボックス本体と、前記開口の周縁に設けられているボックス周縁部と、を有する収容ボックスと、
前記開口に対面する窓部と、前記窓部の周縁に設けられ前記ボックス周縁部に対面する意匠窓枠部と、を有し前記収容ボックスの上側に配置される意匠パネルと、を有し、
前記意匠窓枠部と前記ボックス周縁部とは係合しつつ上下方向に交差する第1方向に相対的にスライド可能であり、
前記収容ボックスと前記意匠パネルとは、前記第1方向にスライドすることで組付けられ
前記意匠窓枠部は、弾性変形しつつ前記ボックス周縁部と係合する弾性変形部を有し、
前記ボックス周縁部は前記弾性変形部に向けて突出する複数の突起またはリブを有する、車両用収容装置。
【請求項2】
収容空間を有し開口を上方に向けるボックス本体と、前記開口の周縁に設けられているボックス周縁部と、を有する収容ボックスと、
前記開口に対面する窓部と、前記窓部の周縁に設けられ前記ボックス周縁部に対面する意匠窓枠部と、を有し前記収容ボックスの上側に配置される意匠パネルと、を有し、
前記意匠窓枠部と前記ボックス周縁部とは係合しつつ上下方向に交差する第1方向に相対的にスライド可能であり、
前記収容ボックスと前記意匠パネルとは、前記第1方向にスライドすることで組付けられ
前記意匠窓枠部は、弾性変形しつつ前記ボックス周縁部と係合する弾性変形部を有し、
前記弾性変形部は、
前記ボックス周縁部の上面を覆う意匠壁と、
前記ボックス周縁部の下面を覆う係合壁と、
上下方向に延び前記意匠壁と前記係合壁とを接続する接続壁と、
前記接続壁または前記係合壁に設けられ他部に比べて厚さの薄い易変形部と、を有する、車両用収容装置。
【請求項3】
収容空間を有し開口を上方に向けるボックス本体と、前記開口の周縁に設けられているボックス周縁部と、を有する収容ボックスと、
前記開口に対面する窓部と、前記窓部の周縁に設けられ前記ボックス周縁部に対面する意匠窓枠部と、を有し前記収容ボックスの上側に配置される意匠パネルと、を有し、
前記意匠窓枠部と前記ボックス周縁部とは係合しつつ上下方向に交差する第1方向に相対的にスライド可能であり、
前記収容ボックスと前記意匠パネルとは、前記第1方向にスライドすることで組付けられ
前記意匠窓枠部は、弾性変形しつつ前記ボックス周縁部と係合する弾性変形部を有し、
前記弾性変形部は、
前記ボックス周縁部の上面を覆う意匠壁と、
前記ボックス周縁部の下面を覆う係合壁と、
上下方向に延び前記意匠壁と前記係合壁とを接続する接続壁と、を有し、
前記弾性変形部は、他部に比べて前記意匠壁と前記係合壁との距離が短い近接部を有する、車両用収容装置。
【請求項4】
前記弾性変形部は、
前記ボックス周縁部の上面を覆う意匠壁と、
前記ボックス周縁部の下面を覆う係合壁と、
上下方向に延び前記意匠壁と前記係合壁とを接続する接続壁と、を有する、請求項に記載の車両用収容装置。
【請求項5】
前記ボックス周縁部は前記弾性変形部に向けて突出する複数の突起またはリブを有する、請求項2または請求項3に記載の車両用収容装置。
【請求項6】
さらに、前記収容ボックスと前記意匠パネルとの前記第1方向の組み付け方向とは逆方向への相対移動を規制するロック要素を有する、請求項1~請求項5の何れか一項に記載の車両用収容装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の収容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、ドリンクホルダや小物入れ等に代表される、各種の収容装置が搭載される。この種の車両用収容装置として、収容空間を有する収容ボックスと、当該収容ボックスの上側に配置される意匠パネルとを有するものが知られている。
【0003】
収容ボックスと意匠パネルとを有する車両用収容装置において、収容ボックスに意匠パネルを取付ける方法としては、収容ボックス上に意匠パネルを配置し、両者をビス止めする方法が一般的である(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、意匠パネルとしてのフィニッシャ部材と、収容ボックスとしてのカップホルダ本体とを有するカップホルダが紹介されている。特許文献1の〔0021〕段落には、意匠パネルおよび収容ボックスが下側からビス止めされる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-223968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に紹介されている技術のように、収容ボックス上に意匠パネルを配置し、両者を下側からビス止めする場合には、車両用収容装置の上側つまり意匠面側にビスが露出しないために、収容ボックスと意匠パネルとを意匠性高く組付け得る利点がある。しかしその一方で、作業者にとっては、収容ボックスおよび意匠パネルを下側からビス止めする作業は、手元の確認を行い難い環境で行う必要があるために、煩雑であり作業性に劣る。さらには、当該方法によると、収容ボックスと意匠パネルとの組付け作業に多数のビスを要するために、部品点数を削減し難い。これらのことから、特許文献1に紹介されている技術では、車両用収容装置の製造コストを削減し難い問題がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、収容ボックスと意匠パネルとを有し、組付け作業を容易に行い得る車両用収容装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の車両用収容装置は、
収容空間を有し開口を上方に向けるボックス本体と、前記開口の周縁に設けられているボックス周縁部と、を有する収容ボックスと、
前記開口に対面する窓部と、前記窓部の周縁に設けられ前記ボックス周縁部に対面する意匠窓枠部と、を有し前記収容ボックスの上側に配置される意匠パネルと、を有し、
前記意匠窓枠部と前記ボックス周縁部とは係合しつつ上下方向に交差する第1方向に相対的にスライド可能であり、
前記収容ボックスと前記意匠パネルとは、前記第1方向にスライドすることで組付けられる、車両用収容装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両用収容装置は、収容ボックスと意匠パネルとを有し、組付け作業を容易に行い得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の車両用収容装置を模式的に表す説明図である。
図2】実施例1の車両用収容装置を分解した様子を模式的に表す説明図である。
図3】実施例1の車両用収容装置における収容ボックスの前側部分を模式的に表す説明図である。
図4】実施例1の車両用収容装置における収容ボックスの後側部分を模式的に表す説明図である。
図5】変形例の車両用収容装置における収容ボックスの後側部分を模式的に表す説明図である。
図6】変形例の車両用収容装置における意匠パネルの後側部分を模式的に表す説明図である。
図7】変形例の車両用収容装置における意匠パネルの後側部分を模式的に表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の車両用収容装置は収容空間を有するものである。本発明の車両用収容装置は、当該収容空間に、飲料の容器をはじめとする種々の物品を収容し得る。
【0011】
本発明の車両用収容装置は、収容ボックスと当該収容ボックスの上側に配置される意匠パネルとを有する。意匠パネルは、収容ボックスを少なくとも上側から覆うといえる。
収容ボックスはボックス本体とボックス周縁部とを有する。ボックス本体は、収容空間を有し、開口を上方に向ける。一方、意匠パネルは、収容ボックスの開口に対面する窓部を有する。したがって、収容ボックスの収容空間は、開口および窓部を通じて、本発明の車両用収容装置の外部に連絡する。
【0012】
収容ボックスにおける開口の周縁にはボックス周縁部が設けられ、意匠パネルにおける窓部の周縁には意匠窓枠部が設けられている。意匠窓枠部はボックス周縁部に対面し、両者は、互いに係合しつつ相対的にスライド可能である。意匠窓枠部とボックス周縁部とのスライド方向は、両者が重ねられる方向に交差する方向、つまり、上下方向に交差する方向である。本明細書において、当該スライド方向を第1方向と称する。
本発明の車両用収容装置は、意匠窓枠部とボックス周縁部とが係合しつつ第1方向にスライドする。このため、本発明の車両用収容装置において、ボックス周縁部を有する収容ボックスと意匠窓枠部を有する意匠パネルとは、第1方向にスライドすることで組付けられる。
【0013】
本発明の車両用収容装置では、収容ボックスと意匠パネルとが互いに係合しつつスライドすることで組付けられる。この組付け作業は、ビス止め等を要さず、非常に簡単である。また、ビスが不要であるために部品点数を大きく削減することが可能であり、部品の管理が容易になる。このような本発明の車両用収容装置によると、収容ボックスと意匠パネルとの組付け作業を容易に行い得る。
【0014】
以下、本発明の車両用収容装置を構成要素毎に説明する。
【0015】
本発明の車両用収容装置における収容ボックスは、上記したボックス本体およびボックス周縁部を有する。収容ボックスの形状は、収容空間に収容すべき物品に応じて適宜適切に設定すれば良い。
【0016】
ボックス周縁部は、意匠パネルの意匠窓枠部と係合しつつスライドするのに適した形状であるのが良く、例えば、開口の周縁の一部に設けられても良いし、当該周縁の全周に設けられても良い。ボックス周縁部と意匠窓枠部とが安定的に係合しつつスライドするためには、ボックス周縁部と意匠窓枠部との少なくとも一方が、ボックス周縁部と意匠窓枠部とのスライド方向すなわち第1方向に沿って、ボックス周縁部と意匠窓枠部とのスライド長さの全長に設けられるのが好ましい。
【0017】
意匠パネルは、収容ボックスを上側から覆う部材であり、本発明の車両用収容装置に優れた意匠性を付与するための部材ともいい得る。意匠パネルにおける意匠窓枠部は、ボックス周縁部に対面する部分であり、本発明の車両用収容装置の上側に露出する部分といえる。車両用収容装置の意匠性を考慮すると、意匠パネルにおける意匠窓枠部は、ボックス周縁部の上面全面を覆うのが良い。
【0018】
意匠窓枠部とボックス周縁部とは、互いに係合しつつ第1方向に相対的にスライド可能な形状であれば良い。このような意匠窓枠部およびボックス周縁部の一方は、第1方向に延びるスライド溝を有するのが好ましい。意匠窓枠部およびボックス周縁部の他方が、当該スライド溝に挿入され、スライド溝内を第1方向にスライドすれば、意匠窓枠部とボックス周縁部とが、互いに係合しつつ第1方向に相対的にスライド可能となる。
以下、必要に応じて、第1方向と直交する方向を第2方向と称する。
【0019】
意匠窓枠部およびボックス周縁部の一方に、第1方向に延びるスライド溝を設ける場合、スライド溝は、意匠窓枠部およびボックス周縁部の何れに設けても良い。また、スライド溝は、第1方向に延びれば良く、如何なる方向に開口しても良い。意匠窓枠部によってボックス周縁部を覆うというコンセプトに鑑みると、ボックス周縁部を板状とし、当該板状のボックス周縁部の少なくとも一部を、意匠窓枠部に設けたスライド溝に挿入するのが好ましい。この場合、スライド溝は、意匠窓枠部における第2方向の両端部に設けられ、第1方向に延び、中央側に向けて開口するのが好ましい。
【0020】
具体的には、意匠窓枠部における第2方向の両端部は、その第1方向の一部において、ボックス周縁部の上面を覆う意匠壁と、ボックス周縁部の下面を覆う係合壁と、上下方向に延び意匠壁と係合壁とを接続する接続壁と、を有する形状とするのが良い。当該意匠壁、係合壁および接続壁で囲まれた部分が、上記したスライド溝となり、ボックス周縁部のうち意匠壁、係合壁および接続壁で覆われる部分がスライド溝内で意匠窓枠部に係合し、かつ、意匠窓枠部に対して相対的にスライドする。
【0021】
ここで、ボックス周縁部と意匠窓枠部との係合を安定的に維持するためには、ボックス周縁部と意匠窓枠部との少なくとも一方を弾性変形させつつ他方と係合させるのが好ましい。こうすることで、ボックス周縁部と意匠窓枠部とが係合しつつ圧接し、その摩擦力によって両者の係合が解除され難くなる。
【0022】
ボックス周縁部および意匠窓枠部のうちどちらが弾性変形しても良いし、または、両方が弾性変形しても良い。さらには、ボックス周縁部および/または意匠窓枠部のうち弾性変形する部分は、これらの一部であっても良いし全体であっても良い。収容ボックスと意匠パネルとの組付け作業性を考慮すると、意匠窓枠部の一部が弾性変形し、収容ボックスは剛体であるのが好ましい。
【0023】
上記した意匠壁、接続壁および係合壁を有する意匠窓枠部が弾性変形する場合、例えば、意匠壁に対して、スライド溝が開く方向に、接続壁および係合壁が位置変化または状態変化すれば良い。または、意匠壁および接続壁に対して、スライド溝が開く方向に、係合壁が位置変化または状態変化すれば良い。何れの場合にも、弾性復元力によって、意匠壁および係合壁によってボックス周縁部を厚さ方向に挟み込むことで、ボックス周縁部と意匠窓枠部との係合が解除され難くなる。
【0024】
さらに、ボックス周縁部と意匠窓枠部との係合をより安定的に維持するために、何らかのロック要素によって、収容ボックスと意匠パネルとの第1方向の組付方向とは逆方向への相対移動を規制するのも好ましい。ボックス周縁部と意匠窓枠部とが係合状態にある本発明の車両用収容装置において、収容ボックスと意匠パネルとの組付方向とは逆方向への相対移動が規制されれば、その係合状態は安定的に維持される。
【0025】
このようなロック要素としては、既知構造の爪嵌合等、ロック解除不能な構造を採用しても良いし、ハートカム機構等のロック解除可能なものを採用しても良い。何れの場合にも、ロック要素の一方は収容ボックスにあり、他方は意匠パネルにあり、かつ、第1方向に向けた収容ボックスと意匠パネルとの相対的なスライドが完了した時点で、ロックがなされるのが好ましい。
【0026】
以下、具体例を挙げて車両用収容装置を説明する。
【0027】
(実施例1)
実施例1の車両用収容装置を模式的に表す説明図を図1に示す。実施例1の車両用収容装置を分解した様子を模式的に表す説明図を図2に示す。実施例1の車両用収容装置における収容ボックスの前側部分を模式的に表す説明図を図3に示す。実施例1の車両用収容装置における収容ボックスの後側部分を模式的に表す説明図を図4に示す。以下、上、下、左、右、前、後とは、各図における上、下、左、右、前、後を指すものとする。なお、上下方向は鉛直方向と一致し、前後方向は車両進行方向と一致し、左右方向は車幅方向と一致する。さらに、前後方向は本発明の車両用収容装置における第1方向であり、左右方向は当該前後方向に直交する第2方向である。
【0028】
図1に示すように、実施例1の車両用収容装置1は、収容ボックス2と意匠パネル3とを有する。収容ボックス2と意匠パネル3とは一体に組付けられ、収容ボックス2は下側に、意匠パネル3は上側に配置されている。実施例1の車両用収容装置1における収容ボックス2および意匠パネル3は、弾性変形可能な樹脂材料からなる。具体的には、当該収容ボックス2および意匠パネル3はポリカーボネート製である。
【0029】
図2に示すように、収容ボックス2は、略箱状をなすボックス本体20と、当該ボックス本体20の上端部に一体化されているボックス周縁部25とを有する。
【0030】
ボックス本体20は、開口を上方に向けている。ボックス本体20の内部には、収容空間21が区画形成され、収容空間21は開口22を通じてボックス本体20の外部に連絡する。
ボックス周縁部25は、ボックス本体20における開口22の周縁を、当該開口22の全周にわたって取り囲んでいる。ボックス周縁部25は、全体として、略板枠状をなす。ボックス周縁部25は左右方向かつ前後方向に延びている。換言すると、ボックス周縁部25は、開口22の向く方向と略直交する方向に延びている。
【0031】
収容ボックス2は、箱状の部分であるボックス本体20と、ベゼル状の部分であるボックス周縁部25とで構成されるともいい得る。
【0032】
意匠パネル3は、窓部32と、当該窓部32の周縁に設けられている意匠窓枠部35とを有する、概略板状をなす。図1に示すように、窓部32は収容ボックス2の開口22に上側から対面し、意匠窓枠部35は収容ボックス2のボックス周縁部25に上側から対面する。
【0033】
窓部32は、意匠パネル3を上下方向つまり厚さ方向に貫通する。窓部32は、上方から下方に向けて外形寸法が徐々に小さくなる、略すり鉢状をなす。窓部32における下端部の外形寸法は、開口22の外形寸法よりもやや小さい。したがって、意匠パネル3は収容ボックス2の開口22を上側から覆い隠す。
【0034】
意匠窓枠部35は、意匠パネル3における窓部32の周縁を、当該窓部32の全周にわたって取り囲んでいる。意匠窓枠部35の四隅には、各々、断面略L字状の部分が設けられている。意匠窓枠部35のうちその他の部分は略板状をなす。
【0035】
意匠窓枠部35における四隅の部分を、弾性変形部36と称し、他の部分を一般部37と称する。必要に応じて、各弾性変形部36のうち後側かつ左側に位置するものを第1弾性変形部36Fと称し、後側かつ右側に位置するものを第2弾性変形部36Sと称し、前側かつ左側に位置するものを第3弾性変形部36Tと称し、前側かつ右側に位置するものを第4弾性変形部36FOと称する。
【0036】
図1および図2に示すように、各弾性変形部36は、意匠壁36D、係合壁36Eおよび接続壁36Cで構成されている。
このうち意匠壁36Dは、一般部37と面一であり、略板状となるように一般部37と滑らかに連続する。意匠壁36Dおよび一般部37で構成される略板状の部分は、ボックス周縁部25と概略平行に配置され、ボックス周縁部25の上面を覆う。したがって、意匠壁36Dおよび一般部37は、上下方向に直交する方向、すなわち、略前後方向かつ略左右方向に延びるともいえる。
【0037】
係合壁36Eは、意匠壁36Dと概略平行に延び、意匠壁36Dの下方に配置される。係合壁36Eと意匠壁36Dとの距離は、ボックス周縁部25の厚さと略同じである。
【0038】
接続壁36Cは、略上下方向に延び、意匠窓枠部35の四隅にある弾性変形部36のうち、左側にある第1弾性変形部36Fおよび第3弾性変形部36Tについては意匠壁36Dと係合壁36Eとを左端部で連結し、右側にある第2弾性変形部36Sおよび第4弾性変形部36FOについては意匠壁36Dと係合壁36Eとを右端部で連結する。したがって、各弾性変形部36における意匠壁36Dには、各々、係合壁36Eと接続壁36Cとからなる略L字の部分が一体化されているといえる。
当該弾性変形部36のうち左側にある第1弾性変形部36Fおよび第3弾性変形部36Tは右側に向けて開口し、右側にある第2弾性変形部36Sおよび第4弾性変形部36FOは左側に向けて開口する。各弾性変形部36の内部には、スライド溝36Gが区画形成されている。
【0039】
図2に示すように、ボックス周縁部25には、各弾性変形部36の意匠壁36Dに対面する位置に、複数の突起23が設けられている。当該突起23の突出高さは約0.05mmである。図4に示すように、各突起23は、半球状をなし、隣り合う突起23は間隔を空けて配置されている。
【0040】
図3に示すように、ボックス周縁部25には、前方に向けて突起する嵌合爪24が設けられている。意匠パネル3の前側かつ下側部分には、当該嵌合爪24が嵌合する図略の嵌合孔が設けられている。当該嵌合爪24および嵌合孔は、実施例1の車両用収容装置1におけるロック要素を構成する。
【0041】
実施例1の車両用収容装置1における収容ボックス2と意匠パネル3とを組付ける際には、先ず、図2に示すように、意匠パネル3を収容ボックス2の上側かつ前側に配置し、ボックス周縁部25における左右の前端部を第1弾性変形部36Fおよび第2弾性変形部36Sのスライド溝36Gに各々宛がう。
そして、意匠パネル3を後方に向けて移動させることで、意匠パネル3と収容ボックス2とが互いに相対的に前後方向にスライドする。すると、第1弾性変形部36Fおよび第2弾性変形部36Sのスライド溝36Gにボックス周縁部25が挿入され、両者が係合するとともに、意匠窓枠部35とボックス周縁部25とは前後方向すなわち第1方向に相対的にスライドする。
【0042】
ここで、ボックス周縁部25には複数の突起23が設けられているために、当該突起23の高さ分だけ、係合壁36Eと意匠壁36Dとの間隔が押し広げられる。したがって、第1弾性変形部36Fおよび第2弾性変形部36Sはスライド溝36Gが開く方向に僅かに弾性変形し、当該第1弾性変形部36Fおよび第2弾性変形部36Sはボックス周縁部25に圧接する。
【0043】
そのまま意匠パネル3を後方にスライドさせると、ボックス周縁部25における左右の前端部が第3弾性変形部36Tおよび第4弾性変形部36FOに対面する。さらに意匠パネル3をスライドさせると、第3弾性変形部36Tおよび第4弾性変形部36FOのスライド溝36Gにボックス周縁部25が挿入され、両者が係合する。ここでも、突起23の高さ分だけ、係合壁36Eと意匠壁36Dとの間隔が押し広げられ、第3弾性変形部36Tおよび第4弾性変形部36FOはボックス周縁部25に圧接する。
【0044】
更に意匠パネル3をスライドさせると、嵌合爪24が図略の嵌合孔に入り込み、両者が嵌合する。これにより、実施例1の車両用収容装置1における収容ボックス2と意匠パネル3との組付けが完了する。
【0045】
実施例1の車両用収容装置1における収容ボックス2と意匠パネル3とは、互いに第1方向にスライドするだけで組付けられる。このため、実施例1の車両用収容装置1を製造する際には、収容ボックス2と意匠パネル3との組付け作業を容易に行い得る。
【0046】
また、意匠パネル3の意匠窓枠部35は、収容ボックス2のボックス周縁部25と係合する際に弾性変形する弾性変形部36を有し、当該弾性変形部36はその弾性復元力によってボックス周縁部25に圧接する。このことにより、実施例1の車両用収容装置1では、意匠窓枠部35とボックス周縁部25との係合状態が安定的に維持される。
さらに、嵌合爪24が図略の嵌合孔に入り込み、両者が嵌合することで、収容ボックス2と意匠パネル3との第1方向の組み付け方向とは逆方向への相対移動が規制され、意匠窓枠部35とボックス周縁部25との係合状態がより安定的に維持される。
これらの協働により、実施例1の車両用収容装置1によると、収容ボックス2と意匠パネル3との組付け作業を容易に行い得るだけでなく、両者の係合が外れることも抑制できる。
【0047】
実施例1の車両用収容装置1では、ボックス周縁部25に突起23が設けられている。この突起23は、図2および図4に示すように、各弾性変形部36のうち意匠壁36Dに対面する位置にある。突起23の位置は図4に示す位置に限らず、例えば、各弾性変形部36のうち意匠壁36Dに対面する位置と係合壁36Eに対面する位置との両方に突起23を設けても良い。或いは、各弾性変形部36のうち係合壁36Eに対面する位置にのみ突起23を設けても良い。何れの場合にも、突起23の高さとボックス周縁部25の厚さとの和が、意匠壁36Dと係合壁36Eとの距離よりもやや大きければ良い。これらの好ましい範囲としては、(突起23の高さとボックス周縁部25の厚さとの和)-(意匠壁36Dと係合壁36Eとの距離)が0.2~1.0mmの範囲内、0.3~0.8mmの範囲内、および、0.4~0.6mmの範囲内が挙げられる。
【0048】
(変形例)
その他、例えばボックス周縁部25をゴム等の弾性材料で構成したり、ゴムシート等をボックス周縁部25に貼り付けたりすることで、ボックス周縁部25に弾性を付与しても良い。この場合、厚さ方向に圧縮されることで蓄積されたボックス周縁部25の弾性復元力によって、ボックス周縁部25と意匠窓枠部35とが圧接する。なお、この場合には、意匠パネル3を弾性変形し難い剛体としても良い。つまり、この場合の意匠窓枠部35は弾性変形可能であっても良いし、弾性変形不可能であっても良い。
【0049】
さらには、突起23のかわりに、ボックス周縁部25にリブ27を設けても良い。この場合、当該リブ27は、図5に示すように、第1方向に沿って延びるのが好ましい。
【0050】
また突起23のかわりに、図6に示すように、意匠壁36Dと係合壁36Eとの距離が短い部分を弾性変形部36に設けても良い。意匠壁36Dと係合壁36Eとの距離が短い部分を近接部39と称する。
ボックス周縁部25と意匠窓枠部35とが係合する際に、近接部39において、意匠壁36Dと係合壁36Eとがボックス周縁部25によって押し広げられて、弾性変形部36が弾性変形する。したがって、この場合にも、弾性変形部36の弾性復元力によってボックス周縁部25と意匠窓枠部35とが圧接し、ボックス周縁部25と意匠窓枠部35との係合状態が安定的に維持される。
なお、この場合、弾性変形部36を効率良く弾性変形させるためには、近接部39は、弾性変形部36における係合壁36Eの先端側に設けるのが好ましい。当該係合壁36Eの先端側は自由端となっており、係合壁36Eと意匠壁36Dとの間に開口38を有する。当該部分は、小さな力で大きく変形することが可能であるため、近接部39を設けるのに適している。
【0051】
図7に示すように、接続壁36Cまたは係合壁36Eに、厚さの薄い部分を設けても良い。接続壁36Cまたは係合壁36Eにおける厚さの薄い部分を易変形部33と称する。接続壁36Cまたは係合壁36Eに易変形部33を設けることで、弾性変形部36を効率良く弾性変形させることが可能である。易変形部33は、図7に示すように、係合壁36Eと接続壁36Cとの境界の近傍に設けるのが好ましい。
【0052】
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。また、実施形態を含む本明細書に示した各構成要素は、それぞれ任意に抽出し組み合わせて実施できる。
【符号の説明】
【0053】
1:車両用収容装置 2:収容ボックス
20:ボックス本体 21:収容空間
22:開口 24:嵌合爪(ロック要素)
25:ボックス周縁部 3:意匠パネル
32:窓部 35:意匠窓枠部
36D:意匠壁 36E:係合壁
36C:接続壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7