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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01D 25/00 20060101AFI20230111BHJP
   A01B 63/10 20060101ALI20230111BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A01D25/00
A01B63/10 B
A01B69/00 303M
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019208488
(22)【出願日】2019-11-19
(65)【公開番号】P2021078411
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2021-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(74)【代理人】
【識別番号】110000899
【氏名又は名称】特許業務法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関谷 大地
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-141113(JP,A)
【文献】特開2004-016160(JP,A)
【文献】特開2017-007009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 13/00-33/14
A01B 63/00-63/12
A01D 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車両と、
前記走行車両の位置を測定する測位装置と、
前記測位装置を利用して所定の走行経路上を前記走行車両が走行するように制御する制御部と、
掘り取る対象の作物に対する掘り取り位置が調整可能な掘り取り作業機と、
前記走行車両に対する前記作物の相対的位置を検出する作物位置検出装置とを備え、
前記作物位置検出装置は、前記走行車両の下方に光を照射する作業灯と、前記走行車両の下方を撮像するカメラとを有し、撮像された画像において、前記作業灯により照射される光によって投影される影を検出して前記走行車両に対する前記作物の相対的位置を測定し、
前記制御部は、前記作物位置検出装置によって検出された前記走行車両に対する前記作物の相対的位置に応じて、前記掘り取り作業機の掘り取り位置を調整することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記掘り取り作業機の位置調整は前記走行車両の進行方向に対して左右方向の調整であり、
前記走行車両に対する前記作物の相対的位置は前記走行車両の進行方向に対して左右方向の相対的位置である、請求項1記載の作業車両。
【請求項3】
前記作業灯は、少なくとも2方向から光を照射出来る作業灯であり、
前記作物位置検出装置は、前記カメラによって撮像された画像において、前記作業灯により少なくとも2方向から照射される光によって投影される2つ以上影の交叉位置を検出して前記走行車両に対する前記作物の相対的位置を測定する、請求項1又は2記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長芋などの作物を掘り取るための作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、掘り取り器具を長いも等の根菜の下方部に通過させ、長いも等の根菜を浮き上がらせて掘り上げる、長いも等の根菜掘り取り機が知られている。
【0003】
そのような機械では、土ごと根菜を浮き上がらせるために、同時に根菜の左右両側を掘削するための堀削部を備えている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-191609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、そのような機械では、根菜の埋まっている実際の位置と、掘り取り器具や堀削部の位置がずれると、根菜を傷めてしまう問題があった。
【0006】
本発明は、従来のそのような機械の課題を考慮し、掘り起こす際、根菜を傷めることなく収穫できる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明は、
走行車両と、
前記走行車両の位置を測定する測位装置と、
前記測位装置を利用して所定の走行経路上を前記走行車両が走行するように制御する制御部と、
掘り取る対象の作物に対する掘り取り位置が調整可能な掘り取り作業機と、
前記走行車両に対する前記作物の相対的位置を検出する作物位置検出装置とを備え、
前記作物位置検出装置は、前記走行車両の下方に光を照射する作業灯と、前記走行車両の下方を撮像するカメラとを有し、撮像された画像において、前記作業灯により照射される光によって投影される影を検出して前記走行車両に対する前記作物の相対的位置を測定し、
前記制御部は、前記作物位置検出装置によって検出された前記走行車両に対する前記作物の相対的位置に応じて、前記掘り取り作業機の掘り取り位置を調整することを特徴とする作業車両である。
第2の本発明は、
前記掘り取り作業機の位置調整は前記走行車両の進行方向に対して左右方向の調整であり、
前記走行車両に対する前記作物の相対的位置は前記走行車両の進行方向に対して左右方向の相対的位置である、第1の本発明の作業車両である。
第3の本発明は、
前記作業灯は、少なくとも2方向から光を照射出来る作業灯であり、
前記作物位置検出装置は、前記カメラによって撮像された画像において、前記作業灯により少なくとも2方向から照射される光によって投影される2つ以上影の交叉位置を検出して前記走行車両に対する前記作物の相対的位置を測定する、第1又は第2の本発明の作業車両である。
本発明に関連する第1の発明は、
走行車両と、
前記走行車両の位置を測定する測位装置と、
前記測位装置を利用して所定の走行経路上(例えば、予定経路→溝掘り走行→軌跡を記録→その記録軌跡の経路上)を前記走行車両が走行するように制御する制御部と、
掘り取る対象の作物に対する掘り取り位置が調整可能な掘り取り作業機と、
前記走行車両に対する前記作物の相対的位置を検出する作物位置検出装置とを備え、
前記制御部は、前記検出結果に応じて、前記掘り取り作業機の掘り取り位置を調整することを特徴とする作業車両である。
【0008】
本発明に関連する第2の発明は、
前記掘り取り作業機の位置調整は前記走行車両の進行方向に対して左右方向の調整であり、
前記走行車両に対する前記作物の相対的位置は前記走行車両の進行方向に対して左右方向の相対的位置である、本発明に関連する第1の発明の作業車両である。
【0009】
本発明に関連する第3の発明は、
前記作物位置検出装置は、前記走行車両の下方に光を照射する作業灯と、前記走行車両の下方を撮像するカメラとを有し、撮像された画像に基づいて、前記走行車両に対する前記作物の相対的位置を測定する、本発明に関連する第1又は第2の発明の作業車両である。
【0010】
本発明に関連する第4の発明は、
前記作業灯は、少なくとも2方向から光を照射出来る作業灯である、本発明に関連する第3の発明の作業車両である。
【発明の効果】
【0011】
第1の本発明により、圃場から苗を苗載せ台に簡単に補充できる。また、低重心の苗移植機となる。さらに、例えば長いも等の作物の場合、画像処理だけで位置を検出しようとすると、地面の色と同化して検出が困難な場合があるが、収穫前に上方が刈り取られて地面から略まっすぐ頭が延びた状態にされることが一般的であるため、光を照射し、影を検出して位置を測定することにより位置を特定しやすくすることができる。
第2の本発明により、第1の本発明の効果に加えて、苗の後方への移動がスムーズになる。
第3の本発明により、第1の本発明の効果又は第2の発明の効果に加えて、2つの影を利用するのでより正確に位置を特定することが出来る。
本発明に関連する第1の発明により、圃場から苗を苗載せ台に簡単に補充できる。また、低重心の苗移植機となる。
【0012】
本発明に関連する第2の発明により、本発明に関連する第1の発明の効果に加えて、苗の後方への移動がスムーズになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明における実施の形態にかかる作業車両の平面図
図2】同作業車両の側面図
図3】同作業車両における作業灯により影の図
図4】同作業車両における作業灯の変形例の図
図5】本発明の実施の形態における溝引き作業を示す略示平面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明における実施の形態について詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態にかかる作業車両の模式的平面図、図2は同作業車両の模式的側面図である。
【0015】
まず、本実施の形態の作業車両による長芋の収穫について説明する前に、半自動的に行われる、長芋栽培の溝引き作業について説明する。
【0016】
図5において、11はトラクター、12はそのトラクター1の後ろに連結され、圃場13に約1m位の溝14を掘り進む溝掘り装置である。
【0017】
このトラクター11はGPS情報を利用した自動操舵システムを活用して、計画された経路に沿ってその長芋用の溝14を掘り進む。同時に、そのトラクター11の走行軌跡を記録する。図5における15は可視化されたその走行軌跡である。自動操舵システムを利用して溝引きを行うので、作業者の熟練度に関係なく、直線に近い溝引きを行える。
【0018】
その後、この走行軌跡15をトレースするように、GPS情報を活用して、自動操舵システムを利用しながら、更なる長芋の植え付け作業や管理作業や収穫作業などを行っていく。それによって、作業者の熟練度に関わりなく、直線に近い作業が可能となり、植え付け不良や踏み倒し、長芋破損などを避けることが出来る。
【0019】
次に、長芋の収穫作業について説明する。図1は本発明の実施の形態にかかる作業車両の模式的平面図であり、図2はその模式的側面図である。1はトラクター本体、1aは前輪、1bは後輪で、2は長芋、13は圃場である。このトラクター本体1の底部にはカメラ3が装着され、そのカメラ3の進行方向を基準として前方に作業灯4が装着されている。このカメラ3と作業灯4の動作は後述する。
【0020】
他方、トラクター本体1の後部には昇降リンク機構5が設けられている。この昇降リンク機構5の後部に、作業機であるところの根菜掘り取り機6が昇降自在に連結されている。そして、トラクター本体1側から出力される動力によって、根菜掘り取り機6の動作が駆動される。
【0021】
この根菜掘り取り機6は次のような構造を有している。
【0022】
上記昇降リンク機構5には、ほぼ矩形形状の本体枠61の前部が連結されている。その本体枠61の左右フレーム61a、61bに、第1横軸63が差し渡されている。その第1横軸63には第1可動筒部64が左右方向に摺動可能に装着されている。その第1可動筒部64の両端には、それぞれ左右一組の掘削部65が取り付けられている。この掘削部65の幅は、長芋の左右両側を掘削するに対応した幅となっている。この掘削部65は、ブームとその周囲に巻架された切削チェーン等からなり、その切削チェーンはチェーンとその外周に複数取り付けられた掘削歯によって構成されている。66は、堀削部カバーである。
【0023】
上記第1可動筒部64のほぼ中央には前後方向に向かってアーム67の一端が固定されている。さらに、そのアーム67の中央部は油圧シリンダ68のピストンロッド68aの先端が固定されている。この油圧シリンダ68のピストンロッド68aの伸縮方向は左右方向である。したがって、このピストンロッド68aが左右方向に伸縮すると、アーム67は左右方向に移動し、第1可動筒部64も左右に移動するように構成されている。その結果、左右の掘削部65も左右に移動する。この油圧シリンダ68は複動式油圧シリンダである。その油圧動力はトラクター本体1の外部油圧から供給する。そのピストンロッド68aの位置は、油圧シリンダ68側に設けたストロークセンサで把握する。そのピストンロッド68aの位置変更は電磁弁を利用して行う。
【0024】
他方、本体枠61の後フレーム61cには 第2横軸69が内装され、その第2横軸69には第2可動筒部70が左右方向に摺動可能に装着されている。この第2可動筒部70の中央部には、上記アーム67の後端が固定されている。また、この第2可動筒部70の左右両端には左右一組のビーム62の上端がそれぞれ固定され、それらのビーム62が下方へ垂下している。この第2可動筒部70の幅は前記第1の可動筒部64より少し小さめである。さらに、その左右のビーム62の下端には掘り取り体71の両端縁が固定されている。従って、この掘り取り体71の幅は上記左右のビーム62の幅にほぼ対応している。
【0025】
これら、掘り取り体71の幅、左右ビーム62の幅、前記第1可動筒部64の幅などは、長芋2を掘り出しやすいように設計されている。
【0026】
掘り取り体71はビーム62の固定部より前方に向けて下方に傾斜しながら延びている。その先端は堀削部65の少し後ろに至っている。また、掘り取り体71はビーム62の固定部より後方に向けて上方に傾斜しながら延び上がっている。このような構造によって、掘り取り体71が土中に入り込み前方へ進みながら、土ごと長芋2を上方へ浮上させることが出来る。
【0027】
次に、圃場の長芋の実際の位置を検出する仕方について説明する。
【0028】
上述したように、トラクター本体1の下部にはカメラ3が取り付けられている。他方、それより前方に作業灯4が取り付けられている。この作業灯は図に示すように、斜め下後方に向けて光を常時照射している。
【0029】
図3はカメラによって撮像された画像であって、長芋2の茎2a(切断後)の影2bが後ろに向けて映されていることが分かる。4aは作業灯4の照射光である。このような画像データは制御部8へ送信され、その制御部8で画像解析される。すなわち、細長いとはいえある程度太さが茎2aにはあるのでその茎2aの影2bは、前方から後方に掛けて広がっている。
【0030】
そこで、制御部8では、影2bの左右幅の内、最も狭い部分を抽出する。ここが茎2aの存在する場所である。つまり、長芋2の存在する位置ということになる。その位置はカメラ3がトラクター本体1に固定されているので、トラクター本体1に対する相対的な位置ということになる。なお、堀削は、長芋2の存在する位置の左右両側であるので重要なことは長芋2の左右方向の位置であって、前後方向の位置は重要ではない。堀削部65は前後方向に掘り進むのであるからである。
【0031】
圃場13の色は様々であるので、作業灯4によって積極的に光を照射することで影の認識がしやすくなる。
【0032】
制御部8は、あらかじめトラクター本体1におけるカメラ3の取り付け位置が分かっている。また、トラクター本体1は、上述した記録されている走行軌跡に沿って、GPS情報を用いて進行しているので、本来はカメラ3の画像の中の走行軌跡上に長芋2が存在するはずであるが、GPSの狂いなどによって位置誤差が生じることがある。そこで、左右方向における、その走行軌跡とカメラ3で特定した実際の長芋の位置にズレが生じることがあるので、そのズレを検出する。図3における3aはカメラ3の画像の中心であって、そこと長芋の位置との左右方向のズレを検出する。この制御部8は、本発明の作物位置検出装置の一例である。また、100はGPS受信機であって、本発明の測位装置の一例である。
【0033】
制御部8はそのズレに基づいて、上記油圧シリンダ68に指令を送り、アーム67を介して第1可動筒状部64と第2可動筒状部70を微調整させる。それによって、堀削部65と掘り取り体71は左右方向に位置調整される。
【0034】
なお、圃場の土の具合、例えば色によっては、上記影の形状が分かりづらいことがある。図4はその対策であって、作業灯4を2台もうけ、左右方向に取り付け場所をずらしている。その結果、茎2aの影2bが2つ出来るがいずれも茎2aのところで最も細くなるので、一つの影よりも二つの影の交叉位置が検出しやすいという長所がある。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、長芋等の掘り取る対象の作物を傷つけることなく収穫できるので、長芋等の収穫機に有用である。
【符号の説明】
【0036】
1 トラクター本体(走行車両)
2 長芋
2a 茎
2b 影
3 カメラ
4 作業灯
6 根菜掘り取り機
61 本体枠
61a、61b 左右フレーム枠
62 ビーム
63 第1横軸
64 第1可動筒部
65 堀削部
66 堀削部カバー
67 アーム
68 油圧シリンダ
68a ピストンロッド
69 第2横軸
70 第2可動筒部
71 掘り取り体
100 GPS受信機

図1
図2
図3
図4
図5