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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】車載中継装置及び中継方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/46 20060101AFI20230111BHJP
   H04L 12/28 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
H04L12/46 100C
H04L12/28 100A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019211779
(22)【出願日】2019-11-22
(65)【公開番号】P2021083059
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 拓也
【審査官】阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/087591(WO,A1)
【文献】特開2014-165746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/46
H04L 12/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1通信プロトコルに応じた通信を行う第1通信線、及び、第2通信プロトコルに応じた通信を行う第2通信線が接続され、前記第1通信線及び前記第2通信線の間の通信を中継する車載中継装置であって、
スリープ状態及び非スリープ状態に切り替え可能であり、前記非スリープ状態である場合に前記第1通信線及び前記第2通信線の間の通信を中継する処理を行う処理部と、
前記処理部がスリープ状態であり、且つ、前記第1通信線から前記第1通信プロトコルの起動信号を受信した場合に、前記第2通信プロトコルの起動信号を前記第2通信線へ出力する起動信号出力部と
を備える、車載中継装置。
【請求項2】
前記起動信号出力部は、前記処理部の起動を制御する制御信号を出力する、請求項1に記載の車載中継装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記起動信号に応じて起動せず、前記制御信号に応じて起動する、請求項2に記載の車載中継装置。
【請求項4】
前記起動信号出力部は、前記第2通信プロトコルの起動信号を前記第2通信線へ出力した後、前記第2通信線に接続された装置からの応答を受信しない場合に、前記第2通信プロトコルの起動信号を再出力する、請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載の車載中継装置。
【請求項5】
前記第2通信線が複数接続されており、
前記起動信号出力部は、前記第1通信線から受信した前記第1通信プロトコルの起動信号に付随する情報に基づいて、前記第2通信プロトコルの起動信号をいずれの前記第2通信線へ出力するかを選択する、請求項1から請求項4までのいずれか1つに記載の車載中継装置。
【請求項6】
前記第2通信線及び前記処理部の間に介在し、スリープ状態及び非スリープ状態に切り替え可能であり、前記非スリープ状態である場合に前記第2通信線を介して送受信されるアナログ信号と前記処理部へ入出力されるデジタル信号とを変換する変換部を備え、
前記起動信号出力部は、前記変換部の起動を制御する制御信号を出力する、請求項1から請求項5までのいずれか1つに記載の車載中継装置。
【請求項7】
前記起動信号出力部は、前記第2通信線から前記第2通信プロトコルの起動信号を受信した場合に、前記第1通信プロトコルの起動信号を前記第1通信線へ出力する、請求項1から請求項6までのいずれか1つに記載の車載中継装置。
【請求項8】
第1通信プロトコルに応じた通信を行う第1通信線、及び、第2通信プロトコルに応じた通信を行う第2通信線が接続され、前記第1通信線及び前記第2通信線の間の通信を中継する処理を行う処理部を有する車載中継装置が、
前記処理部が非スリープ状態である場合に、前記処理部が前記第1通信線及び前記第2通信線の間の通信を中継する処理を行い、
前記処理部がスリープ状態であり、且つ、前記第1通信線から前記第1通信プロトコルの起動信号を受信した場合に、前記第2通信プロトコルの起動信号を前記第2通信線へ出力する
中継方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、第1通信線及び第2通信線の間の通信を中継する車載中継装置及び中継方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されたECU(Electronic Control Unit)及びゲートウェイ等の装置では、例えば車両のエンジンが停止状態である等の状況で処理を行う必要がない場合に、消費電力を低減するスリープ状態(スタンバイ状態又は待機状態等)へ移行する制御が行われている。スリープ状態の装置は、例えば通信により起動信号(ウェイクアップ信号等)を受信した場合に、スリープ状態から非スリープ状態(ウェイクアップ状態又はアクティブ状態等)へ移行し、処理を開始する。
【0003】
特許文献1においては、2つのネットワークの接続先をバイパス用のバス又はコントローラのいずれかに切り替える切替回路を用いて、スリープ状態の場合には2つのネットワークをバイパス用のバスに接続し、ウェイクアップ状態の場合には2つのネットワークをコントローラに接続する車載ゲートウェイ装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-45521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、車両に搭載される装置の数は増大し、車両内のネットワークは巨大化及び複雑化している。このため、一の装置から他の装置への通信経路には複数のゲートウェイが介在する可能性がある。例えば、一の装置が起動信号を送信した場合、この起動信号が途中のゲートウェイを順に起動し、ゲートウェイが起動信号を順に中継し、最終的に他の装置が起動信号を受信して起動する。このため、一の装置が起動信号を送信してから他の装置が処理を開始するまでに長い時間を要するという問題がある。特許文献1に記載の車載ゲートウェイ装置は、スリープ状態の場合に2つのネットワークを直結することで信号を直接的に中継することができるが、この装置構成は2つのネットワークが異なる通信プロトコルを採用したものである場合には採用することができないという問題がある。
【0006】
本開示は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、異なる通信プロトコルが採用された通信線間で起動信号を高速に中継することが期待できる車載中継装置及び中継方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本態様に係る車載中継装置は、第1通信プロトコルに応じた通信を行う第1通信線、及び、第2通信プロトコルに応じた通信を行う第2通信線が接続され、前記第1通信線及び前記第2通信線の間の通信を中継する車載中継装置であって、スリープ状態及び非スリープ状態に切り替え可能であり、前記非スリープ状態である場合に前記第1通信線及び前記第2通信線の間の通信を中継する処理を行う処理部と、前記処理部がスリープ状態であり、且つ、前記第1通信線から前記第1通信プロトコルの起動信号を受信した場合に、前記第2通信プロトコルの起動信号を前記第2通信線へ出力する起動信号出力部とを備える。
【0008】
本願は、このような特徴的な処理部を備える車載中継装置等の装置として実現することができるだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとする中継方法として実現したり、かかるステップをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムとして実現したりすることができる。これらの装置の一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現したり、これらの装置を含むその他の装置又はシステムとして実現したりすることができる。
【発明の効果】
【0009】
上記によれば、異なる通信プロトコルが採用された通信線間で起動信号を高速に中継することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係る車載通信システムの一構成例を示す模式図である。
図2】実施の形態1に係るGWの構成を示すブロック図である。
図3】実施の形態1に係るGWの構成を示すブロック図である。
図4】本実施の形態に係るバイパス回路が行うバイパス処理の手順を示すフローチャートである。
図5】実施の形態2に係るGWの構成を示すブロック図である。
図6】実施の形態3に係るGWの構成を示すブロック図である。
図7】実施の形態4に係るGWの構成を示すブロック図である。
図8】実施の形態5に係るGWの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施の形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0012】
(1)本態様に係る車載中継装置は、第1通信プロトコルに応じた通信を行う第1通信線、及び、第2通信プロトコルに応じた通信を行う第2通信線が接続され、前記第1通信線及び前記第2通信線の間の通信を中継する車載中継装置であって、スリープ状態及び非スリープ状態に切り替え可能であり、前記非スリープ状態である場合に前記第1通信線及び前記第2通信線の間の通信を中継する処理を行う処理部と、前記処理部がスリープ状態であり、且つ、前記第1通信線から前記第1通信プロトコルの起動信号を受信した場合に、前記第2通信プロトコルの起動信号を前記第2通信線へ出力する起動信号出力部とを備える。
【0013】
本態様にあっては、第1通信プロトコルに応じた通信を行う第1通信線と、第2通信プロトコルに応じた通信を行う第2通信線との間の通信を車載中継装置が中継する。中継処理を行う処理部がスリープ状態であり、第1通信線から第1通信プロトコルの起動信号を受信した場合、車載中継装置の起動信号出力部が、第2通信プロトコルの起動信号を第2通信線へ出力する。これにより、処理部がスリープ状態から非スリープ状態へ移行しなくても又は移行する前に、起動信号出力部が第2通信プロトコルの起動信号を第2通信線へ出力し、第2通信線に接続された装置を起動することができるため、起動信号を高速に中継することが期待できる。
【0014】
(2)前記起動信号出力部は、前記処理部の起動を制御する制御信号を出力することが好ましい。
【0015】
本態様にあっては、起動信号出力部が処理部の起動を制御する制御信号を出力する。これにより処理部は、起動信号出力部からの制御信号に応じて起動すればよいため、スリープ状態において通信線上の起動信号の有無を監視する必要がなくなる可能性がある。
【0016】
(3)前記処理部は、前記起動信号に応じて起動せず、前記制御信号に応じて起動することが好ましい。
【0017】
本態様にあっては、処理部は通信線を介して受信する起動信号に応じて起動せず、起動信号出力部からの制御信号に応じて起動する。これにより、処理部を起動信号に応じて起動させず、起動信号出力部が必要と判断した場合にのみ起動させることができる。
【0018】
(4)前記起動信号出力部は、前記第2通信プロトコルの起動信号を前記第2通信線へ出力した後、前記第2通信線に接続された装置からの応答を受信しない場合に、前記第2通信プロトコルの起動信号を再出力することが好ましい。
【0019】
本態様にあっては、第2通信プロトコルの起動信号を第2通信へ出力した後に、第2通信線に接続された装置からの応答を受信しない場合には、起動信号出力部が起動信号の再送信を行う。これにより、何らかの理由で起動に失敗した場合であっても、起動信号出力部が起動信号を再送信することにより所望の装置が起動する可能性を高めることができる。
【0020】
(5)前記第2通信線が複数接続されており、前記起動信号出力部は、前記第1通信線から受信した前記第1通信プロトコルの起動信号に付随する情報に基づいて、前記第2通信プロトコルの起動信号をいずれの前記第2通信線へ出力するかを選択することが好ましい。
【0021】
本態様にあっては、車載中継装置に複数の第2通信線が接続される。第1通信線から第1通信プロトコルの起動信号を受信した場合に、起動信号出力部は、全ての第2通信線へ第2通信プロトコルの起動信号を出力するのではなく、第1通信プロトコルの起動信号に付随する情報に基づいて第2通信プロトコルの起動信号を出力する第2通信線を選択する。これにより、不要な装置の起動を避けることができる。
【0022】
(6)前記第2通信線及び前記処理部の間に介在し、スリープ状態及び非スリープ状態に切り替え可能であり、前記非スリープ状態である場合に前記第2通信線を介して送受信されるアナログ信号と前記処理部へ入出力されるデジタル信号とを変換する変換部を備え、前記起動信号出力部は、前記変換部の起動を制御する制御信号を出力することが好ましい。
【0023】
本態様にあっては、車載中継装置は、処理部及び第2通信線の間にアナログ信号とデジタル信号との変換を行う変換部を備え、変換部はスリープ状態及び非スリープ状態の切り替えが可能である。起動信号出力部は、この変換部の起動を制御する制御信号を出力する。これにより、車載中継装置の変換部の電力消費量の低減を図ることができる。
【0024】
(7)前記起動信号出力部は、前記第2通信線から前記第2通信プロトコルの起動信号を受信した場合に、前記第1通信プロトコルの起動信号を前記第1通信線へ出力することが好ましい。
【0025】
本態様にあっては、第2通信線から第2通信プロトコルの起動信号を受信した場合に、起動信号出力部が第1通信プロトコルの起動信号を第1通信線へ出力する。これにより起動信号出力部は、第1通信線及び第2通信線の双方向について起動信号を中継することができる。
【0026】
(8)本態様に係る中継方法は、第1通信プロトコルに応じた通信を行う第1通信線、及び、第2通信プロトコルに応じた通信を行う第2通信線が接続され、前記第1通信線及び前記第2通信線の間の通信を中継する処理を行う処理部を有する車載中継装置が、前記処理部が非スリープ状態である場合に、前記処理部が前記第1通信線及び前記第2通信線の間の通信を中継する処理を行い、前記処理部がスリープ状態であり、且つ、前記第1通信線から前記第1通信プロトコルの起動信号を受信した場合に、前記第2通信プロトコルの起動信号を前記第2通信線へ出力する。
【0027】
本態様にあっては、態様(1)と同様に、起動信号を高速に中継することが期待できる。
【0028】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る車載中継装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0029】
<システム概要>
図1は、本実施の形態に係る車載通信システムの一構成例を示す模式図である。本実施の形態に係る車載通信システムは、中央のGW(ゲートウェイ)1と、周辺の複数のGW2a~2dと、複数のECU3a~3dと、複数のセンサ4a~4dと、複数のアクチュエータ5a~5dとが車両100の適所に搭載された構成である。なお図1においては、車両100の前後左右の方向が、図の上下左右の方向に相当するものとしている。
【0030】
GW1は、車両100の中央に配置される中継装置である。本実施の形態に係る車載通信システムでは、GW1に4つのGW2a~2dがそれぞれ通信線を介して接続されている。本図において太い一点鎖線で示す矢印は、イーサネット(登録商標)の通信プロトコルに従う通信を行う通信線である。本実施の形態においてGW1及び4つのGW2a~2dは、イーサネットの通信プロトコルに従って通信を行う。GW1は、GW2a~2dのいずれかから受信したメッセージを、他のGW2a~2dへ送信することによって、GW2a~2dの間のメッセージ送受信を中継する処理を行う。
【0031】
GW2は、車両の周辺部分に配置される中継装置である。図示の例では、車両100の左前方にGW2aが配置され、右前方にGW2bが配置され、右後方にGW2cが配置され、左後方にGW2dが配置されている。各GW2a~2dには、近傍に配置されたECU3a~3dがそれぞれ接続される。なお図示の例では、各GW2a~2dにそれぞれ1つのECU3a~3dが接続されているが、GW2a~2dには複数のECU3a~3dが接続されてもよい。本図において実線で示す矢印は、CAN(Controller Area Network)の通信プロトコルに従う通信を行う通信線である。本実施の形態においてGW2a~2d及びECU3a~3dは、CANの通信プロトコルに従って通信を行う。GW2a~2dは、ECU3a~3dから受信したメッセージをGW1へ送信し、GW1から受信したメッセージをECU3a~3dへ送信することによって、GW1とECU3a~3dとの間のメッセージ送受信を中継する処理を行う。
【0032】
ただし本実施の形態においてGW2a~2dは、GW1との間でイーサネットの通信プロトコルに従う通信を行い、ECU3a~3dとの間でCANの通信プロトコルに従う通信を行う。このためGW2a~2dは、メッセージを中継する際に通信プロトコルの変換を行う。GW2a~2dは、ECU3a~3dから受信したCANの通信プロトコルに従うメッセージを、イーサネットの通信プロトコルに従うメッセージに変換してGW1へ送信する。GW2a~2dは、GW1から受信したイーサネットの通信プロトコルに従うメッセージを、CANの通信プロトコルに従うメッセージに変換してECU3a~3dへ送信する。
【0033】
各ECU3a~3dには、情報を入力する入力装置としてセンサ4a~4dと、制御対象の装置としてアクチュエータ5a~5dとが接続されている。ただしECU3a~3dに接続される入力装置はセンサ4a~4dに限らず、例えばユーザが操作するスイッチ等の種々の装置であってよい。ECU3a~3dが接続される制御対象の装置はアクチュエータ5a~5dに限らず、例えばモータ又はライト等の種々の装置であってよい。ECU3a~3dには、センサ4a~4d及びアクチュエータ5a~5dの両方が接続されていなくてもよく、センサ4a~4d又はアクチュエータ5a~5dの一方のみが接続されていてもよい。
【0034】
例えばECU3a~3dは、センサ4a~4dが検知した種々の物理量に応じて、制御対象のアクチュエータ5a~5dの動作を制御する処理を行う。センサ4a~4dは、検知結果である物理量に応じたアナログ又はデジタルの電気信号を、信号線を介してECU3a~3dへ入力する。ECU3a~3dは、アクチュエータ5a~5dの制御量に応じたアナログ又はデジタルの電気信号を、信号線を介してアクチュエータ5a~5dへ入力する。本図において、ECU3a~3dとセンサ4a~4d及びアクチュエータ5a~5dとを接続する信号線は、破線の矢印として示されている。
【0035】
本実施の形態に係る車載通信システムに含まれるGW1、GW2a~2d及びECU3a~3d等の装置は、例えば車両100のエンジンが停止された場合又はイグニッションスイッチがオフ状態へ切り替えられた場合等に、スリープ状態へ遷移して消費電力の低減を図る。その後、何らかの要因で装置を起動して処理を開始する必要が生じた場合、装置間でウェイクアップ信号(起動信号)の授受が行われ、このウェイクアップ信号に応じて各装置が起動する。
【0036】
図1においては、センサ4aの検知結果によりアクチュエータ5cを起動する必要が生じた場合の情報伝達経路の一例を、ハッチングを付した太矢印で示している。本例では、センサ4aの検知結果がECU3aへ入力され、この検知結果に基づいてECU3aがウェイクアップ信号を送信している。ECU3aが送信したウェイクアップ信号はGW2aにて受信され、GW2aはウェイクアップ信号をGW1へ送信する。GW2aからのウェイクアップ信号を受信したGW1は、GW2cへウェイクアップ信号を送信する。なおこのときにGW1は、GW2b及び2dへもウェイクアップ信号を送信してよい。GW1からのウェイクアップ信号を受信したGW2cは、ECU3cへウェイクアップ信号を送信する。GW2cからのウェイクアップ信号を受信したECU3cは、このウェイクアップ信号に応じて起動し、アクチュエータ5cを動作させる。
【0037】
従来の車載通信システムにおいては、ウェイクアップ信号の受信に応じてGW2a、GW1及びGW2cがそれぞれ起動し、スリープ状態から非スリープ状態へ移行した後にウェイクアップ信号を中継していた。このため、センサ4aにて起動の要因を検知してからアクチュエータ5cが動作するまでに長い時間を要する虞があった。
【0038】
これに対して本実施の形態に係る車載通信システムでは、GW2a及び2cは、中継処理を行うマイコン(マイクロコントローラ又はマイクロコンピュータ)等がスリープ状態であっても、マイコン等の起動を待たずに、受信したウェイクアップ信号をバイパスして中継する。これにより、本実施の形態に係る車載通信システムでは、センサ4aにて起動の要因を検知してからアクチュエータ5cが動作するまでの時間の短縮を図ることができる。なお、GW1についても同様に、ウェイクアップ信号をバイパスして中継してよい。
【0039】
<実施の形態1>
図2及び図3は、実施の形態1に係るGW2の構成を示すブロック図である。なお、車載通信システムに含まれる複数のGW2a~2dは略同じ構成であるため、これらを区別する必要がない場合には単にGW2として以下の説明を行う。本実施の形態に係るGW2は、マイコン21、イーサネットPHY(PHYsical layer)22、CAN-PHY23及びバイパス回路24等を備えて構成されている。本実施の形態においては、マイコン21、イーサネットPHY22、CAN-PHY23及びバイパス回路24は、それぞれ個別のIC(Integrated Circuit)としてGW2の回路基板に搭載されるものとするが、これに限るものではない。マイコン21、イーサネットPHY22、CAN-PHY23及びバイパス回路24のうちのいずれか複数又は全てが、1つのICとしてGW2の回路基板に搭載されてもよい。マイコン21、イーサネットPHY22、CAN-PHY23及びバイパス回路24の各機能ブロックは、回路基板上に搭載された複数の電気部品により構成される回路であってもよい。
【0040】
マイコン21は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro-Processing Unit)等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を有し、ROMに記憶されたプログラムを実行することによって、種々の演算処理を行う。本実施の形態においてマイコン21は、通信線の間の通信を中継する処理を行う。図2においてマイコン21による中継処理を行うソフトウェア的な機能部として中継処理部21aが示されている。マイコン21は、イーサネットの通信プロトコルに従う通信処理を行うイーサネット通信部21bと、CANの通信プロトコルに従う通信処理を行うCAN通信部21cとを有している。
【0041】
イーサネット通信部21bは、イーサネットの通信プロトコルに従うメッセージを受信した場合に、このメッセージに含まれるデータを取得して中継処理部21aへ与える。イーサネット通信部21bは、中継処理部21aから他の装置へ送信するデータが与えられた場合に、このデータをイーサネットの通信プロトコルに従うメッセージとして送信する。
【0042】
同様に、CAN通信部21cは、CANの通信プロトコルに従うメッセージを受信した場合に、このメッセージに含まれるデータを取得して中継処理部21aへ与える。CAN通信部21cは、中継処理部21aから他の装置へ送信するデータが与えられた場合に、このデータをCANの通信プロトコルに従うメッセージとして送信する。
【0043】
マイコン21は、スリープ状態とウェイクアップ状態との切り替えを行うことができる。マイコン21は、ウェイクアップ状態の場合に、上述の中継処理部21aの中継処理、イーサネット通信部21bの通信処理、及び、CAN通信部21cの通信処理等を行う。スリープ状態ではマイコン21はこれらの処理を行わず、例えば動作のためのクロック信号の発振を停止し、消費電力の低減を図る。マイコン21は、例えば車両100のエンジンが停止された又はイグニッションスイッチがオフ状態に切り替えられた等の条件を自ら判断し、ウェイクアップ状態からスリープ状態への遷移を行う。マイコン21のスリープ状態からウェイクアップ状態への遷移は、バイパス回路24からの起動制御信号により行われる。
【0044】
イーサネットPHY22は、通信線上のアナログの電気信号と、マイコン21が扱うデジタル信号との変換を行うICである。イーサネットPHY22は、GW2に接続されたイーサネットの通信線の電位をサンプリングして取得し、デジタル信号としてマイコン21へ出力する。イーサネットPHY22は、マイコン21から与えられたメッセージを電気信号に変換してイーサネットの通信線へ出力する。本実施の形態においてイーサネットPHY22は、スリープ状態とウェイクアップ状態との切り替えを行うことができる。ウェイクアップ状態においてイーサネットPHY22は、上記のアナログ信号とデジタル信号との変換処理を行う。スリープ状態においてイーサネットPHY22は、通信線上のアナログ信号をデジタル信号としてマイコン21へ与える処理は行うが、通信線へのアナログ信号の出力は行わない。イーサネットPHY22のスリープ状態及びウェイクアップ状態の切り替えは、バイパス回路24からの起動制御信号により行われる。
【0045】
同様に、CAN-PHY23は、通信線上のアナログの電気信号と、マイコン21が扱うデジタル信号との変換を行うICである。CAN-PHY23は、GW2に接続されたCANの通信線の電位をサンプリングして取得し、デジタル信号としてマイコン21へ出力する。CAN-PHY23は、マイコン21から与えられたメッセージを電気信号に変換してCANの通信線へ出力する。本実施の形態においてCAN-PHY23は、スリープ状態とウェイクアップ状態との切り替えを行うことができる。ウェイクアップ状態においてCAN-PHY23は、上記のアナログ信号とデジタル信号との変換処理を行う。スリープ状態においてCAN-PHY23は、通信線上のアナログ信号をデジタル信号としてマイコン21へ与える処理は行うが、通信線へのアナログ信号の出力は行わない。CAN-PHY23のスリープ状態及びウェイクアップ状態の切り替えは、バイパス回路24からの起動制御信号により行われる。
【0046】
バイパス回路24は、マイコン21がスリープ状態である場合に、ウェイクアップ信号をバイパスして中継する処理を行う。図2には、イーサネットの通信線を介してウェイクアップ信号(イーサネットの通信プロトコルに従うウェイクアップ信号)を受信した場合に、バイパス回路24がCANの通信線へウェイクアップ信号(CANの通信プロトコルに従うウェイクアップ信号)を出力する場合の信号を破線の矢印で示している。図3には、CANの通信線を介してウェイクアップ信号(CANの通信プロトコルに従うウェイクアップ信号)を受信した場合に、バイパス回路24がイーサネットの通信線へウェイクアップ信号(イーサネットの通信プロトコルに従うウェイクアップ信号)を出力場合の信号を破線の矢印で示している。
【0047】
図2に示すように、バイパス回路24は、マイコン21がスリープ状態である場合に、イーサネットの通信線を監視する。バイパス回路24は、イーサネットの通信線上にウェイクアップ信号を検出した場合、CAN-PHY23を起動してウェイクアップ信号を与えることにより、CANの通信線へウェイクアップ信号を出力する。このときにバイパス回路24は、マイコン21を起動する。
【0048】
同様に、図3に示すように、バイパス回路24は、マイコン21がスリープ状態である場合に、CANの通信線を監視する。バイパス回路24は、CANの通信線上にウェイクアップ信号を検出した場合、イーサネットPHY22を起動してウェイクアップ信号を与えることにより、イーサネットの通信線へウェイクアップ信号を出力する。このときにバイパス回路24は、マイコン21を起動する。
【0049】
なおバイパス回路24は、スリープ状態及びウェイクアップ状態の切り替えを行わず常に動作していてもよく、スリープ状態及びウェイクアップ状態の切り替えを行うことが可能な構成であってもよい。いずれにしてもバイパス回路24は、マイコン21がスリープ状態又はウェイクアップ状態のいずれの状態であるかを示す信号等をマイコン21から与えられている。状態の切り替えを行う場合、バイパス回路24は、マイコン21がウェイクアップ状態へ遷移した場合にスリープ状態へ遷移し、マイコン21がスリープ状態へ遷移した場合にウェイクアップ状態へ遷移する。
【0050】
イーサネットのウェイクアップ信号は、例えばイーサネットのWake-on-LANの技術に基づく信号が採用され得る。Wake-on-LANでは、マジックパケットと呼ばれる特定パターンのデータが含まれるメッセージを送信することによって、所望の装置を起動することができる。CANのウェイクアップ信号は、例えば所定時間のドミナントの信号出力が採用され得る。例えばバイパス回路24は、イーサネットの通信線にてマジックパケットのメッセージを受信した場合に、CANの通信線から所定時間のドミナントを出力する。バイパス回路24は、CANの通信線にて所定時間のドミナントを検出した場合に、イーサネットの通信線からマジックパケットを含むメッセージを送信する。なお、ウェイクアップ信号はどのような構成のものであってもよい。
【0051】
本実施の形態においてバイパス回路24は、ウェイクアップ信号を再送信する機能を有している。バイパス回路24は、イーサネットの通信線又はCANの通信線に対してウェイクアップ信号を送信した後、この通信線に接続された装置(ECU3又はGW1等の装置)から送信される応答信号の有無を判定する。所定時間以上が経過してもウェイクアップ信号に対する応答信号を受信しない場合、バイパス回路24は、この通信線に対してウェイクアップ信号の再送信を行う。
【0052】
なおウェイクアップ信号に対する応答信号は、CANの通信プロトコルの場合、例えば所定時間のドミナントの信号出力が採用され得る。ウェイクアップ信号として出力されるドミナントの信号に対して、応答信号のドミナントの信号が重畳して出力された場合、バイパス回路24は、自身のドミナント出力を終えた後に通信線がドミナントの信号状態であることを検知することにより、応答信号が出力されたことを判断することができる。イーサネットの通信プロトコルの場合、特定パターンのデータが含まれるメッセージが応答信号として採用され得る。なお、応答信号はどのような構成のものであってもよい。
【0053】
図4は、本実施の形態に係るバイパス回路24が行うバイパス処理の手順を示すフローチャートである。なお以下の説明では、イーサネットの通信線からCANの通信線へウェイクアップ信号をバイパスして中継する場合について説明するが、CANの通信線からイーサネットの通信線へウェイクアップ信号をバイパスして中継する場合も同様である。本実施の形態に係るバイパス回路24は、マイコン21がスリープ状態であるか否かを判定する(ステップS1)。マイコン21がスリープ状態でない場合(S1:NO)、バイパス回路24は、マイコン21がスリープ状態へ遷移するまで待機する。
【0054】
マイコン21がスリープ状態である場合(S1:YES)、バイパス回路24は、イーサネットの通信線を介してウェイクアップ信号を受信したか否かを判定する(ステップS2)。ウェイクアップ信号を受信していない場合(S2:NO)、バイパス回路24は、ウェイクアップ信号を受信するまで待機する。ウェイクアップ信号を受信した場合(S2:YES)、バイパス回路24は、CAN-PHY23を起動する起動制御信号を出力する(ステップS3)。バイパス回路24は、マイコン21を起動する起動制御信号を出力する(ステップS4)。
【0055】
バイパス回路24は、CANの通信プロトコルに従うウェイクアップ信号をCAN-PHY23へ与えることによって、ウェイクアップ信号をCANの通信線へ出力する(ステップS5)。なおこのときにバイパス回路24は、マイコン21のスリープ状態からウェイクアップ状態への切り替え完了を待たずにウェイクアップ信号の出力を行う。
【0056】
その後、バイパス回路24は、ウェイクアップ信号を出力したCANの通信線にて、この通信線に接続された装置からの応答信号を所定時間が経過するまでに受信したか否かを判定する(ステップS6)。所定時間が経過しても応答信号を受信していない場合(S6:NO)、バイパス回路24は、この通信線に対してウェイクアップ信号を出力し(ステップS7)、ステップS6へ処理を戻す。所定時間が経過するまでに応答信号を受信した場合(S6:YES)、バイパス回路24は、ウェイクアップ信号のバイパス処理を終了する。
【0057】
<実施の形態2>
図5は、実施の形態2に係るGW2の構成を示すブロック図である。実施の形態2に係るGW2は、バイパス回路24がイーサネットの通信線から直接的にウェイクアップ信号を取得するのではなく、イーサネットPHY22がデジタル信号に変換したウェイクアップ信号を取得する。また図示は省略するが、実施の形態2に係るバイパス回路24は、CANの通信線から直接的にウェイクアップ信号を取得するのではなく、CAN-PHY23がデジタル信号に変換したウェイクアップ信号を取得する。これら以外については、実施の形態2に係るバイパス回路24の構成は、実施の形態1に係るバイパス回路24の構成と同じである。
【0058】
実施の形態2に係るバイパス回路24は、イーサネットPHY22及びCAN-PHY23がデジタル信号に変換したウェイクアップ信号を取得することによって、バイパス回路24にはアナログ信号からデジタル信号への変換回路を備える必要がないため、バイパス回路24の小型化が期待できる。
【0059】
実施の形態2に係る車載通信システムのその他の構成は、実施の形態1に係る車載通信システムと同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0060】
<実施の形態3>
図6は、実施の形態3に係るGW2の構成を示すブロック図である。実施の形態3に係るGW2は、バイパス回路24がウェイクアップ信号をCAN-PHY23へ出力するのではなく、ウェイクアップ信号をCANの通信線へ直接的に出力する。また図示は省略するが、実施の形態3に係るバイパス回路24は、ウェイクアップ信号をイーサネットPHY22へ出力するのではなく、ウェイクアップ信号をイーサネットの通信線へ直接的に出力する。実施の形態3に係るバイパス回路24は、CANの通信線又はイーサネットの通信線へ直接的にウェイクアップ信号を出力するため、ウェイクアップ信号の出力前にCAN-PHY23又はイーサネットPHY22を起動する必要がない。このため実施の形態3に係るバイパス回路24は、CAN-PHY23及びイーサネットPHY22の起動制御信号を出力しない構成であってよい。実施の形態3に係るバイパス回路24は、ウェイクアップ信号をアナログ信号として出力する。これら以外については、実施の形態3に係るバイパス回路24の構成は、実施の形態1に係るバイパス回路24の構成と同じである。
【0061】
実施の形態3に係るバイパス回路24は、イーサネットの通信線とCANの通信線との間で直接的にウェイクアップ信号をバイパスして中継することができるため、より迅速にウェイクアップ信号を中継することが期待できる。
【0062】
実施の形態3に係る車載通信システムのその他の構成は、実施の形態1に係る車載通信システムと同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0063】
<実施の形態4>
図7は、実施の形態4に係るGW2の構成を示すブロック図である。実施の形態4に係るGW2は、バイパス回路24がイーサネットの通信線からウェイクアップ信号を取得するのではなく、イーサネットPHY22からウェイクアップ信号を取得する。このため実施の形態に係るイーサネットPHY22は、イーサネットの通信線にウェイクアップ信号を検出した場合に、バイパス回路24へウェイクアップ信号を通知する信号を出力する機能を備えている。イーサネットPHY22が出力するこの信号は、マイコン21に対して起動信号として入力されてもよい。バイパス回路24は、イーサネットPHY22からウェイクアップ信号を通知された場合、CAN-PHY23を起動してウェイクアップ信号を出力し、CANの通信線へウェイクアップ信号を出力する。
【0064】
図示は省略するが、実施の形態4に係るCAN-PHY23は、CANの通信線にウェイクアップ信号を検出した場合に、バイパス回路24へウェイクアップ信号を通知する信号を出力する機能を備えている。CAN-PHY23が出力するこの信号は、マイコン21に対して起動信号として入力されてもよい。バイパス回路24は、CAN-PHY23からウェイクアップ信号を通知された場合、イーサネットPHY22を起動してウェイクアップ信号を出力し、イーサネットの通信線へウェイクアップ信号を出力する。
【0065】
実施の形態4に係る車載通信システムのその他の構成は、実施の形態1に係る車載通信システムと同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0066】
<実施の形態5>
図8は、実施の形態5に係るGW2の構成を示すブロック図である。実施の形態5に係るGW2は、複数のイーサネットPHY22と、複数のCAN-PHY23とを備えており、マイコン21の中継処理部21aは、複数のイーサネットの通信線及び複数のCANの通信線の間でメッセージの中継を行う。このときに中継処理部21aは、メッセージに付されたID等に基づいてメッセージの中継先を決定する。マイコン21は、IDと中継先とを対応付けたルーティングテーブル等を予めROMに記憶している。なお図8においては、マイコン21によるメッセージ中継の経路は図示を省略している。
【0067】
実施の形態5に係るGW2のバイパス回路24は、各イーサネットの通信線についてウェイクアップ信号の有無を監視している。バイパス回路24は、いずれかのイーサネットの通信線にてウェイクアップ信号を検出した場合、一又は複数のCAN-PHY23へウェイクアップ信号を出力することで、ウェイクアップ信号を一又は複数のCANの通信線へバイパスして中継する。このときにバイパス回路24は、ウェイクアップ信号を受信したイーサネットの通信線以外のイーサネットの通信線に対してもウェイクアップ信号を送信してもよい。
【0068】
実施の形態4に係るバイパス回路24は、ウェイクアップ信号をバイパスして中継する中継先を決定するためのバイパステーブル24aを有している。バイパス回路24は、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性のメモリ素子を有し、このメモリ素子にバイパステーブル24aを記憶する。バイパステーブル24aには、ウェイクアップ信号に付される識別情報と、このウェイクアップ信号をバイパスして中継すべき中継先の通信線との対応が予め設定される。
【0069】
このため、実施の形態5に係る車載通信システムにおいて送受信されるイーサネットの通信プロトコルのウェイクアップ信号には、例えば送信元のECU3のID、送信先のECU3のID又はウェイクアップ信号の種別を示すID等の識別情報が付される。イーサネットの通信プロトコルに従うウェイクアップ信号としてマジックパケットと呼ばれる特定パターンのメッセージを送受信する場合、GW1及びGW2等はこのマジックパケットに識別情報を含めて送信する。バイパス回路24は、いずれかのイーサネットの通信線にて受信したウェイクアップ信号に付随する識別情報に基づいてバイパステーブル24aを参照し、バイパステーブル24aにて設定された送信先のCANの通信線(及びイーサネットの通信線)に対してウェイクアップ信号を送信する。
【0070】
図示は省略するが、実施の形態5に係るバイパス回路24は、各CANの通信線についてウェイクアップ信号の有無を監視している。バイパス回路24は、いずれかのCANの通信線にてウェイクアップ信号を検出した場合、一又は複数のイーサネットPHY22へウェイクアップ信号を出力することで、ウェイクアップ信号を一又は複数のイーサネットの通信線にバイパスして中継する。このときにバイパス回路24は、ウェイクアップ信号を受信したCANの通信線以外のCANの通信線に対してもウェイクアップ信号を送信してもよい。
【0071】
このため、実施の形態5に係る車載通信システムにおいて送受信されるCANの通信プロトコルのウェイクアップ信号には、例えば送信元のECU3のID、送信先のECU3のID又はウェイクアップ信号の種別を示すID等の識別情報が付される。CANの通信プロトコルに従うウェイクアップ信号として所定時間のドミナントの信号を送受信する場合、GW2及びECU3等は、この所定時間のドミナントの信号を送信した後、このドミナントの信号に続けて識別情報を送信する。バイパス回路24は、CANの通信線にて所定時間のドミナントの信号を受信した後、このドミナントの信号に続く識別情報を受信する。バイパス回路24は、受信した識別情報に基づいてバイパステーブル24aを参照し、バイパステーブル24aにて設定された送信先のイーサネットの通信線(及びCANの通信線)に対してウェイクアップ信号を送信する。
【0072】
実施の形態5に係るGW2は、複数のイーサネットの通信線及び複数のCANの通信線が接続され、これら複数の通信線の間でメッセージの中継を行う。実施の形態5に係るGW2のバイパス回路24は、いずれかの通信線にて受信したウェイクアップ信号を他の通信線へバイパスして送信する。このときにバイパス回路24は、ウェイクアップ信号に付随する識別情報に基づいて、予め設定されたバイパステーブル24aを参照することによってウェイクアップ信号を送信する通信線を決定する。
【0073】
なお図8においては、GW2に3つのイーサネットの通信線が接続され、3つのCANの通信線が接続される構成が示されているが、通信線の数は一例であって、これに限るものではない。図8においては、バイパス回路24からマイコン21への起動信号と、バイパス回路24からイーサネットPHY22及びCAN-PHY23への起動信号とは図示を省略している。実施の形態5に係るバイパス回路24は、例えばウェイクアップ信号に付随する識別情報に基づいて、マイコン21を起動するか否かを判断してもよい。この場合には、バイパステーブル24aにマイコン21を起動するか否かを示す情報がウェイクアップ信号の識別情報に対応付けて記憶される。
【0074】
実施の形態5に係る車載通信システムのその他の構成は、実施の形態1に係る車載通信システムと同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0075】
<まとめ>
以上の構成の本実施の形態に係るGW2は、イーサネットの通信プロトコルに応じた通信を行うイーサネットの通信線と、CANの通信プロトコルに応じた通信を行うCANの通信線との間のメッセージ送受信を中継する。メッセージの中継処理を行うマイコン21がスリープ状態であり、イーサネットの通信線からイーサネットの通信プロトコルのウェイクアップ信号を受信した場合、GW2のバイパス回路24は、CANの通信プロトコルのウェイクアップ信号をCANの通信線へ出力する。これにより、マイコン21がスリープ状態からウェイクアップ状態へ遷移しなくても又は遷移する前に、バイパス回路24がCANの通信プロトコルのウェイクアップ信号をCANの通信線へ出力し、CANの通信線に接続された装置を起動することができるため、ウェイクアップ信号を高速に中継することが期待できる。
【0076】
また本実施の形態に係るGW2は、マイコン21をスリープ状態からウェイクアップ状態へ起動するための制御信号をバイパス回路24が出力する。これによりマイコン21は、バイパス回路24からの制御信号に応じて起動すればよいため、スリープ状態において通信線上のウェイクアップ信号の有無を監視する必要がなくなる可能性がある。
【0077】
また本実施の形態に係るGW2は、マイコン21は通信線を介して直接的に受信するウェイクアップ信号に応じて起動せず、バイパス回路24からの信号に応じて起動する。これにより、マイコン21をウェイクアップ信号に応じて起動させず、バイパス回路24が必要と判断した場合にのみ起動させることができる。
【0078】
また本実施の形態に係るGW2は、CANの通信プロトコルのウェイクアップ信号をCANの通信線へ出力した後に、CANの通信線に接続されたECU3等からの応答を受信しない場合には、バイパス回路24がウェイクアップ信号の再送信を行う。これにより、何らかの理由でウェイクアップ信号に応じたECU3等の起動に失敗した場合であっても、バイパス回路24がウェイクアップ信号を再送信することにより、所望の装置が起動する可能性を高めることができる。
【0079】
また実施の形態5に係るGW2は、複数のCANの通信線が接続される。GW2のバイパス回路24は、イーサネットの通信線からウェイクアップ信号を受信した場合に、全てのCANの通信線へウェイクアップ信号を出力するのではなく、イーサネットの通信線にて受信したウェイクアップ信号に付随する情報に基づいて、CANの通信プロトコルのウェイクアップ信号を出力するCANの通信線を選択する。これにより、不要な装置の起動を避けることができる。
【0080】
また本実施の形態に係るGW2は、マイコン21及びCANの通信線の間のアナログ信号とデジタル信号との変換を行うCAN-PHY23を備える。GW2のバイパス回路24は、CAN-PHY23の起動を制御する信号を出力する。これにより、GW2のCAN-PHY23の電力消費量の低減を図ることができる。
【0081】
また本実施の形態に係るGW2は、CANの通信線からCANの通信プロトコルのウェイクアップ信号を受信した場合に、バイパス回路24がイーサネットの通信プロトコルのウェイクアップ信号をイーサネットの通信線へ出力する。これによりバイパス回路24は、イーサネットの通信線及びCANの通信線の双方向についてウェイクアップ信号をバイパスして中継することができる。
【0082】
なお本実施の形態においては、車載通信システムにて用いられる通信プロトコルとしてイーサネット及びCANを挙げたが、これに限るものではなく、イーサネット及びCAN以外の種々の通信プロトコルが採用されてよい。またGW2は、3つ以上の異なる通信プロトコルの通信線が接続されてもよく、この場合も同様にバイパス回路24が一の通信プロトコルのウェイクアップ信号を受信した場合に、他の2つの通信プロトコルのウェイクアップ信号をそれぞれ通信線へ出力すればよい。
【0083】
また本実施の形態に係るGW2のバイパス回路24は、イーサネットの通信線からCANの通信線へ、及び、CANの通信線からイーサネットの通信線への双方向について、ウェイクアップ信号をバイパスして中継する構成であるが、これに限るものではない。バイパス回路24は、イーサネットの通信線からCANの通信線へ、又は、CANの通信線からイーサネットの通信線へのいずれか一方についてウェイクアップ信号をバイパスして中継し、他方についてはマイコン21がウェイクアップ信号を中継してもよい。
【0084】
また本実施の形態においてはGW2がウェイクアップ信号を中継する構成について説明したが、GW1についても同様にバイパス回路24を設けてウェイクアップ信号をバイパスして中継する構成としてもよい。図1に示したGW1は、イーサネットの通信線のみが接続される構成であるため、バイパス回路24は、スイッチ又はリレー等の回路素子を用いて複数の通信線を物理的又は電気的に直結することでウェイクアップ信号をバイパスして中継する構成としてもよい。
【0085】
車載通信システムにおける各装置は、マイクロプロセッサ、ROM及びRAM等を含んで構成されるコンピュータを備える。マイクロプロセッサ等の演算処理部は、図4に示すような、シーケンス図又はフローチャートの各ステップの一部又は全部を含むコンピュータプログラムを、ROM、RAM等の記憶部からそれぞれ読み出して実行してよい。これら複数の装置のコンピュータプログラムは、それぞれ、外部のサーバ装置等からインストールすることができる。また、これら複数の装置のコンピュータプログラムは、それぞれ、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等の記録媒体に格納された状態で流通する。
【0086】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0087】
1 GW
2、2a~2d GW(車載中継装置)
3、3a~3d ECU
4、4a~4d センサ
5、5a~5d アクチュエータ
21 マイコン(処理部)
21a 中継処理部
21b イーサネット通信部
21c CAN通信部
22 イーサネットPHY(変換部)
23 CAN-PHY(変換部)
24 バイパス回路(起動信号出力部)
24a バイパステーブル
100 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8