IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電産シンポ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-無段変速機および自転車 図1
  • 特許-無段変速機および自転車 図2
  • 特許-無段変速機および自転車 図3
  • 特許-無段変速機および自転車 図4
  • 特許-無段変速機および自転車 図5
  • 特許-無段変速機および自転車 図6
  • 特許-無段変速機および自転車 図7
  • 特許-無段変速機および自転車 図8
  • 特許-無段変速機および自転車 図9
  • 特許-無段変速機および自転車 図10
  • 特許-無段変速機および自転車 図11
  • 特許-無段変速機および自転車 図12
  • 特許-無段変速機および自転車 図13
  • 特許-無段変速機および自転車 図14
  • 特許-無段変速機および自転車 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】無段変速機および自転車
(51)【国際特許分類】
   F16H 15/28 20060101AFI20230111BHJP
   F16H 15/18 20060101ALI20230111BHJP
   B62M 11/12 20060101ALI20230111BHJP
   B62M 11/16 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
F16H15/28
F16H15/18
B62M11/12
B62M11/16 H
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019551227
(86)(22)【出願日】2018-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2018039625
(87)【国際公開番号】W WO2019087915
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2017210368
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000107147
【氏名又は名称】日本電産シンポ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】岡村 暉久夫
(72)【発明者】
【氏名】井上 仁
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-516633(JP,A)
【文献】特開2015-227692(JP,A)
【文献】実公昭37-28132(JP,Y1)
【文献】特開2014-31800(JP,A)
【文献】特開2012-193794(JP,A)
【文献】特公昭47-2805(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 15/28
F16H 15/18
B62M 11/12
B62M 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無段変速機であって、
主軸を中心として、変速前の回転数で回転する入力回転体と、
前記主軸を中心として、変速後の回転数で回転する出力回転体と、
前記主軸の周囲に配置され、自転軸を中心として自転可能な複数の遊星ローラと、
前記自転軸の両端部の位置を制限するガイド部材と、
前記主軸を中心として回転可能であり、かつ、軸方向に移動可能な円環状の可動リングと、
を備え、
前記遊星ローラは、
前記入力回転体に接触する球面状の第1傾斜面と、
前記出力回転体に接触する円錐状の第2傾斜面と、
前記可動リングと係合する環状凹部または環状凸部と、
を有し、
前記自転軸の両端部は、前記主軸に対して径方向に変位可能に、前記ガイド部材に保持される無段変速機。
【請求項2】
請求項1に記載の無段変速機であって、
前記可動リングの軸方向の位置を切り替える操作部
をさらに備える無段変速機。
【請求項3】
請求項1に記載の無段変速機であって、
前記可動リングに軸方向の付勢力を与える弾性部材
をさらに備え、
前記ガイド部材は、前記自転軸の両端部を、周方向の異なる位置に保持する無段変速機。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の無段変速機であって、
前記可動リングは、前記遊星ローラの径方向内側に位置する無段変速機。
【請求項5】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の無段変速機であって、
前記可動リングは、前記遊星ローラの径方向外側に位置する無段変速機。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の無段変速機であって、
前記主軸に沿って延びるシャフト
をさらに備え、
前記入力回転体、前記出力回転体、および前記可動リングは、それぞれ、前記シャフトに軸受を介して支持される無段変速機。
【請求項7】
請求項6に記載の無段変速機であって、
前記ガイド部材は、
前記シャフトに固定され、前記遊星ローラの前記自転軸の一端が嵌まる第1切り欠きを有する第1ガイド板と、
前記シャフトに固定され、前記遊星ローラの前記自転軸の他端が嵌まる第2切り欠きを有する第2ガイド板と、
を有する無段変速機。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の無段変速機であって、
前記環状凹部または前記環状凸部は、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面との間に位置する無段変速機。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の無段変速機であって、
前記遊星ローラは、前記環状凹部を有し、
前記遊星ローラの前記環状凹部を構成する面に、前記可動リングの外周部が接触する無段変速機。
【請求項10】
請求項9に記載の無段変速機であって、
前記主軸を含む断面において、前記環状凹部の曲率半径が、前記可動リングの外周部の曲率半径よりも大きい無段変速機。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の無段変速機であって、
前記入力回転体は、
回転方向の負荷に応じて前記遊星ローラへの軸方向の押圧力を発生させる調圧カムを含む無段変速機。
【請求項12】
請求項11に記載の無段変速機であって、
前記調圧カムは、
軸方向に配列された一対の円環状のカム部材と、
一対の前記カム部材の間に介在する転動体と、
を有し、
一対の前記カム部材は、それぞれ、
前記入力回転体が一方の向きに回転するときに、前記転動体に接触する第1カム面と、
前記入力回転体が他方の向きに回転するときに、前記転動体に接触する第2カム面と、
を有し、
前記第1カム面の周方向に対する角度が、前記第2カム面の周方向に対する角度よりも小さい無段変速機。
【請求項13】
請求項12に記載の無段変速機であって、
前記第1カム面の周方向に対する角度は、3°以上かつ35°以下であり、
前記第2カム面の周方向に対する角度は、70°以上かつ90°未満である無段変速機。
【請求項14】
請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載の無段変速機であって、
前記遊星ローラは、内部に空洞を有する無段変速機。
【請求項15】
請求項14に記載の無段変速機であって、
前記遊星ローラは、
前記第1傾斜面を有する第1遊星部材と、
前記第2傾斜面を有する第2遊星部材と、
を有する無段変速機。
【請求項16】
請求項15に記載の無段変速機であって、
前記第1遊星部材は、軸方向または径方向の厚みが一定であり、
前記第2遊星部材は、前記第2遊星部材の頂点へ向かうにつれて軸方向または径方向の厚みが増す無段変速機。
【請求項17】
請求項15または請求項16に記載の無段変速機であって、
前記環状凹部または前記環状凸部の全体が、前記第1遊星部材および前記第2遊星部材のいずれか一方に属する無段変速機。
【請求項18】
請求項1から請求項17までのいずれか1項に記載の無段変速機であって、
自転車に用いられる無段変速機。
【請求項19】
請求項18に記載の無段変速機を用いた自転車。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無段変速機および自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、変速機構を有する自転車が知られている。自転車の一般的な変速機構は、径の異なる複数のスプロケットの間で、ローラチェーンを掛け替える構造となっている。自転車のユーザが、ハンドル部の変速レバーを操作すると、変速レバーにより指定されたスプロケットに、ローラチェーンが掛け替えられる。これにより、スプロケットの径に応じた変速比で、後輪が回転する。しかしながら、このような一般的な変速機構では、スプロケットの数に応じた段数でしか、変速比を切り替えることができない。
【0003】
これに対し、特開2016-70393号公報には、変速比を連続的に変化させることができる自転車用の変速機が記載されている。当該公報の変速機は、主軸の周りに配置された遊星ローラの支持ピンを傾斜させることによって、第1転動体と第2転動体の回転数の比を変化させる。
【文献】特開2016-70393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特開2016-70393号公報の変速機では、遊星ローラの入力側の転動面が、円錐面となっている。このため、遊星ローラの傾斜角度によって、入力側の転動面の角度も変化する。これにより、入力側の転動面にかかる圧力の向きおよび大きさが、大きく変化する。入力側の転動面にかかる圧力が過大になると、抵抗が大きくなって動力伝達の効率が低下しやすくなる。また、入力側の転動面にかかる圧力が過小になると、遊星ローラがスリップしやすくなる。
【0005】
本発明の目的は、遊星ローラの傾斜角度を変化させることによって変速比を切り替える無段変速機において、遊星ローラと入力回転体との接触点に生じる圧力の向きおよび大きさが変化しにくい構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の例示的な第1発明は、無段変速機であって、主軸を中心として、変速前の回転数で回転する入力回転体と、前記主軸を中心として、変速後の回転数で回転する出力回転体と、前記主軸の周囲に配置され、自転軸を中心として自転可能な複数の遊星ローラと、前記自転軸の両端部の位置を制限するガイド部材と、前記主軸を中心として回転可能であり、かつ、軸方向に移動可能な円環状の可動リングと、を備え、前記遊星ローラは、前記入力回転体に接触する球面状の第1傾斜面と、前記出力回転体に接触する円錐状の第2傾斜面と、前記可動リングと係合する環状凹部または環状凸部と、を有し、前記ガイド部材は、前記自転軸の両端部を、周方向の異なる位置に保持し、前記自転軸の両端部は、前記主軸に対して径方向に変位可能に、前記ガイド部材に保持される。
【発明の効果】
【0007】
本願の例示的な第1発明によれば、可動リングの軸方向の位置に応じて、遊星ローラの自転軸の主軸を含む断面内の傾斜角度が変化する。そうすると、入力回転体に対する第1傾斜面の接触位置と、出力回転体に対する第2傾斜面の接触位置とが、それぞれ変化する。これにより、入力回転体と出力回転体との間の変速比を切り替えることができる。
【0008】
また、本願の例示的な第1発明によれば、遊星ローラの第1傾斜面は球面状である。このため、遊星ローラの傾斜角度に拘らず、第1傾斜面と入力回転体との接触点に生じる圧力の向きおよび大きさが変化しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、自転車の概要図である。
図2図2は、無段変速機の縦断面図である。
図3図3は、無段変速機の縦断面図である。
図4図4は、無段変速機の縦断面図である。
図5図5は、調圧カムの側面図である。
図6図6は、調圧カムの側面図である。
図7図7は、遊星ローラの分解断面図である。
図8図8は、第2カム部材と第1傾斜面との接触点、および接触部材と第2傾斜面との接触点、に生じる圧力を示した図である。
図9図9は、第2カム部材と第1傾斜面との接触点、および接触部材と第2傾斜面との接触点、に生じる圧力を示した図である。
図10図10は、第2カム部材と第1傾斜面との接触点、および接触部材と第2傾斜面との接触点、に生じる圧力を示した図である。
図11図11は、第1変形例に係る遊星ローラおよび可動リングを示した図である。
図12図12は、第2変形例に係る無段変速機の縦断面図である。
図13図13は、第2変形例に係る第1ガイド板および第2ガイド板を、主軸の一方側から見た平面図である。
図14図14は、第2変形例に係る遊星ローラを径方向外側から見た図である。
図15図15は、第3変形例に係る無段変速機の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本願では、無段変速機の主軸と平行な方向を「軸方向」、主軸に直交する方向を「径方向」、主軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。ただし、上記の「平行な方向」は、略平行な方向も含む。また、上記の「直交する方向」は、略直交する方向も含む。また、本願では、部材の軸方向の両端のうち、スプロケットに近い端部を「一端」と称し、スプロケットから遠い端部を「他端」と称する。
【0011】
<1.自転車について>
図1は、本発明の一実施形態に係る無段変速機1を用いた自転車100の概要図である。図1に示すように、この自転車100は、前輪110、後輪120、ペダル130、ローラチェーン140、および無段変速機1を有する。無段変速機1は、後輪120のホイール121の中央に設けられたハブに内装される。ユーザが、ペダル130を順方向にこぐと、ペダル130の回転運動が、ローラチェーン140を介して無段変速機1へ伝達される。また、無段変速機1は、ローラチェーン140から受ける回転運動を変速させて、後輪120へ伝達する。後輪120は、無段変速機1により変速された回転数で回転する。なお、自転車100は、ペダル130の回転運動を補助するための電動機を有していてもよい。
【0012】
<2.無段変速機の構成>
図2図4は、無段変速機1の縦断面図である。この無段変速機1は、ローラチェーン140から得られる回転運動を、等速で、あるいは減速または増速して、後輪120へ出力する機構である。図2は、等速時の無段変速機1の断面を示している。図3は、減速時の無段変速機1の断面を示している。図4は、増速時の無段変速機1の断面を示している。図2図4に示すように、本実施形態の無段変速機1は、中空シャフト10、入力回転体20、複数の遊星ローラ30、ガイド部材40、可動リング50、操作部60、および出力回転体70を有する。
【0013】
中空シャフト10は、主軸9に沿って延びる円柱状の部材である。中空シャフト10の材料には、例えば、ステンレス等の金属が用いられる。後述する入力回転体20、可動リング50、および出力回転体70は、中空シャフト10に軸受を介して支持される。無段変速機1を自転車100に取り付けるときには、中空シャフト10の中心軸である主軸9と後輪120の中心軸とが一致するように、無段変速機1が配置される。
【0014】
入力回転体20は、ローラチェーン140の回動に伴い、主軸9を中心として回転する。図2図4に示すように、本実施形態の入力回転体20は、スプロケット21、中継部材22、および調圧カム23を有する。
【0015】
中継部材22は、円筒部221とフランジ部222とを有する。円筒部221は、中空シャフト10の周囲において、軸方向に円筒状に延びる。フランジ部222は、円筒部221の軸方向の端部から、径方向外側へ向けて拡がる。フランジ部222は、後述するハウジング72の内側に位置する。中継部材22と中空シャフト10との間には、一対の第1軸受24が設けられている。第1軸受24には、例えばボールベアリングが用いられる。中継部材22は、第1軸受24を介して、中空シャフト10に対して、回転可能に支持される。
【0016】
スプロケット21は、円筒部221の外周面に固定される。自転車100のローラチェーン140は、スプロケット21の外周面に設けられた複数の歯に係合する。自転車100の走行時には、ローラチェーン140の回動に伴い、スプロケット21および中継部材22が、主軸9を中心として、変速前の回転数で回転する。以下では、スプロケット21および中継部材22の回転数を「第1回転数」と称する。
【0017】
調圧カム23は、回転方向の負荷に応じて、遊星ローラ30への軸方向の押圧力を発生させる機構である。調圧カム23は、軸方向に配列された第1カム部材231および第2カム部材232と、複数の転動体233とを有する。第1カム部材231および第2カム部材232は、主軸9を中心とする円環状の部材である。第1カム部材231と、中継部材22のフランジ部222とは、例えばねじ止めによって、互いに固定される。複数の転動体233は、第1カム部材231と第2カム部材232との間に介在する球状の部材である。
【0018】
図5および図6は、調圧カム23の側面図である。図5および図6に示すように、第1カム部材231および第2カム部材232は、それぞれ、複数の第1カム面23aと、複数の第2カム面23bとを有する。転動体233は、第1カム部材231の第1カム面23aおよび第2カム面23bと、第2カム部材232の第1カム面23aおよび第2カム面23bとの間の空間に収容される。
【0019】
第1カム面23aの周方向に対する角度は、第2カム面23bの周方向に対する角度よりも小さい。第1カム面23aの周方向に対する角度は、例えば、3°以上かつ35°以下とすればよい。第2カム面23bの周方向に対する角度は、例えば、70°以上かつ90°未満とすればよい。
【0020】
自転車100のユーザがペダル130をこぐと、入力回転体20は順方向に回転する。このとき、図5のように、各転動体233は、第1カム部材231の第1カム面23aと、第2カム部材232の第1カム面23aとに接触しつつ、第1カム面23aに沿って乗り上げる方向に変位する。そうすると、転動体233が、第1カム部材231を基準として、第2カム部材232を、離れる方向へ移動させる。したがって、第2カム部材232と、遊星ローラ30の後述する第1傾斜面301との間の接触圧が高まる。
【0021】
一方、自転車100のユーザがペダル130を逆方向または後輪120よりも小さな速度で回転させると、入力回転体20も逆方向に回転する。このとき、図6のように、各転動体233は、第1カム部材231の第2カム面23bと、第2カム部材232の第2カム面23bとに、接触する。そうすると、転動体233が、第1カム部材231の第2カム面23bと第2カム部材232の第2カム面23bとの周方向および軸方向の位置関係を変化させないまま、第1カム部材231と第2カム部材232とが、一体的に回転する。したがって、第2カム部材232と、遊星ローラ30の後述する第1傾斜面301との間の接触圧は弱まる。これによって、入力回転体20と出力回転体70とは空転する。言い換えると、調圧カム23は、無段変速機1を一方向クラッチとして機能させることができる。
【0022】
なお、調圧カム23の第1カム部材231と、後述するハウジング72との間には、スラスト軸受25が設けられている。スラスト軸受25には、例えばニードルベアリングが用いられる。第1カム部材231とハウジング72とは、スラスト軸受25を介して、互いに相対回転可能となる。これにより、入力回転体20と出力回転体70とを、異なる回転数で回転させることができる。
【0023】
複数の遊星ローラ30は、主軸9の周囲に配置されている。各遊星ローラ30は、揺動可能な自転軸300を中心として自転可能に支持されている。図2図4に示すように、各遊星ローラ30の表面は、第1傾斜面301と、第2傾斜面302と、環状凹部303とを有する。第1傾斜面301は、自転軸300の一端から離れるにつれて漸次に拡径し、かつ、自転軸300の中央付近を中心とする半球状(球面状)の面である。第1傾斜面301は、第2カム部材232に接触する。第2傾斜面302は、自転軸300の他端から離れるにつれて漸次に拡径する円錐状の面である。第2傾斜面302は、後述する出力回転体70の接触部材71に接触する。
【0024】
環状凹部303は、自転軸300を中心とする円環状の溝である。環状凹部303は、第1傾斜面301と第2傾斜面302との間に位置する。図2図4に示すように、環状凹部303の形状は、主軸9を含む断面において、略円弧状となっている。環状凹部303には、後述する可動リング50の環状凸部51が接触する。
【0025】
このように、遊星ローラ30は、入力回転体20、出力回転体70、および可動リング50と接触し、この3箇所の接触点によって支持されている。
【0026】
図7は、遊星ローラ30の分解断面図である。図7に示すように、本実施形態の遊星ローラ30は、第1遊星部材31と第2遊星部材32とを、軸方向に組み合わせることによって、形成される。第1遊星部材31は、第1傾斜面301を有する半球状の部材である。第2遊星部材32は、第2傾斜面302および環状凹部303を有する円錐状の部材である。第1遊星部材31と第2遊星部材32とを組み合わせるときには、例えば、第2遊星部材32に設けられた円筒状の突起304を、第1遊星部材31に圧入する。ただし、第1遊星部材31と第2遊星部材32との固定方法は、溶接などの他の方法であってもよい。
【0027】
遊星ローラ30は、軽量化のために、内部に空洞33を有することが好ましい。本実施形態のように、第1遊星部材31と第2遊星部材32とを組み合わせる構造にすれば、内部に空洞33を有する遊星ローラ30を、容易に形成できる。
【0028】
また、本実施形態では、環状凹部303の全体が、第2遊星部材32に属している。すなわち、環状凹部303が2部材に分割されていない。このようにすれば、環状凹部303の表面に微小な段差が生じることを抑制できる。すなわち、環状凹部303の寸法精度を高めることができる。また、環状凹部303の剛性も高めることができる。したがって、後述する可動リング50の環状凸部51を、環状凹部303に精度よく接触させることができる。なお、環状凹部303は、第1遊星部材31に属していてもよい。
【0029】
ガイド部材40は、第1ガイド板41と第2ガイド板42とを含む。第1ガイド板41および第2ガイド板42は、中空シャフト10に固定された円板状の部材である。第1ガイド板41および第2ガイド板42は、中空シャフト10に対して、相対回転不能となっている。図2図4に示すように、第1ガイド板41および第2ガイド板42は、遊星ローラ30の軸方向の両側に位置する。また、第1ガイド板41および第2ガイド板42は、それぞれ、主軸9に対して径方向外側に拡がる。
【0030】
第1ガイド板41には、周方向に等間隔に、複数の第1切り欠き410が設けられている。各第1切り欠き410は、第1ガイド板41の外周部から、径方向内側へ向けて凹む。第2ガイド板42には、周方向に等間隔に、複数の第2切り欠き420が設けられている。各第2切り欠き420は、第2ガイド板42の外周部から、径方向内側へ向けて凹む。第1切り欠き410には、遊星ローラ30の自転軸300の一端が嵌まる。第2切り欠き420には、遊星ローラ30の自転軸300の他端が嵌まる。これにより、遊星ローラ30の自転軸300の両端部の周方向の位置が制限される。
【0031】
自転軸300の一端は、第1切り欠き410に沿って、径方向に変位可能である。また、自転軸300の他端は、第2切り欠き420に沿って、径方向に変位可能である。後述のように、自転軸300の両端部は、可動リング50の軸方向の位置に応じて径方向に変位する。これにより、自転軸300の、主軸9を含む断面内の傾斜角度が変化する。このように、自転軸300の両端部の位置が径方向に変位することによって、遊星ローラ30の自転軸300が主軸9に対して傾斜することを、以下では「径方向に傾斜する」と称する。
【0032】
可動リング50は、中空シャフト10の径方向外側かつ遊星ローラ30の径方向内側に位置する円環状の部材である。可動リング50は、径方向外側へ向けて突出する環状凸部51を有する。図2図4に示すように、環状凸部51の形状は、主軸9を含む断面において、略円弧状となっている。環状凸部51は、遊星ローラ30の環状凹部303に嵌まる。これにより、可動リング50と遊星ローラ30とが係合する。
【0033】
可動リング50は、係合部材81および第2軸受82を介して、中空シャフト10に支持される。第2軸受82には、例えば、ボールベアリングが用いられる。可動リング50は、第2軸受82の外輪に固定される。したがって、可動リング50は、主軸9を中心として、中空シャフト10および係合部材81に対して、相対回転することが可能である。
【0034】
また、図2図4に示すように、中空シャフト10は、軸方向に延びるスリット11を有する。係合部材81は、第2軸受82の内輪に固定されるとともに、スリット11に対して軸方向にしゅう動可能に係合する。このため、係合部材81、第2軸受82、および可動リング50は、一体として、スリット11に沿って軸方向に移動することが可能である。
【0035】
操作部60は、可動リング50の軸方向の位置を切り替えるための機構である。図2図4に示すように、操作部60は、ロッド61と、ワイヤー機構62とを有する。ロッド61は、中空シャフト10の内側に挿入された円柱状の部材である。ロッド61は、主軸9に沿って軸方向に延びる。ワイヤー機構62は、ロッド61の一端に接続される。係合部材81は、ロッド61の他端に固定される。自転車100のユーザは、ワイヤー機構62を操作することによって、ロッド61の軸方向の位置を変化させることができる。ロッド61が軸方向に移動すると、係合部材81、第2軸受82、および可動リング50も、スリット11に沿って軸方向に移動する。そして、可動リング50の軸方向の移動に伴い、環状凸部51と環状凹部303との係合位置も、軸方向に変化する。その結果、遊星ローラ30の径方向の傾斜角度が変化する。
【0036】
ただし、操作部60は、軸方向に位置決め可能なねじ等の他の機構により実現されていてもよい。
【0037】
出力回転体70は、主軸9を中心として、変速後の回転数で回転する。以下では、変速後の回転数を「第2回転数」と称する。図2図4に示すように、本実施形態の出力回転体70は、接触部材71およびハウジング72を有する。接触部材71は、主軸9を中心とする円環状の部材である。接触部材71は、遊星ローラ30の第2傾斜面302に接触する。ハウジング72は、調圧カム23、複数の遊星ローラ30、ガイド部材40、および可動リング50を内部に収容する、円環状の筐体である。ハウジング72は、第3軸受73を介して、中空シャフト10に支持されている。また、ハウジング72は、第4軸受74を介して、中継部材22に支持されている。
【0038】
接触部材71とハウジング72とは、互いに相対回転不能に固定されている。このため、遊星ローラ30の回転に伴って接触部材71が回転すると、接触部材71とともにハウジング72も、主軸9を中心として、第2回転数で回転する。また、ハウジング72は、自転車100の後輪120のホイール121の中央に設けられたハブに、固定される。このため、ハウジング72の回転に伴い、自転車100の後輪120も第2回転数で回転する。
【0039】
<3.変速動作について>
続いて、上述した無段変速機1の変速動作について、説明する。
【0040】
ローラチェーン140から得られる動力によって、入力回転体20が第1回転数で回転すると、調圧カム23の第2カム部材232も、遊星ローラ30の第1傾斜面301に接触しながら、第1回転数で回転する。そうすると、第2カム部材232と第1傾斜面301との間の摩擦力によって、遊星ローラ30は、自転軸300を中心として回転する。また、第2傾斜面302と接触部材71との間の摩擦力によって、出力回転体70が第2回転数で回転する。
【0041】
ここで、上述の通り、本実施形態では、自転車100のユーザが操作部60を操作することによって、遊星ローラ30の径方向の傾斜角度を変化させることができる。
【0042】
例えば、図3のように、自転軸300の一端が主軸9に近づくように、遊星ローラ30を径方向に傾斜させた場合、第1傾斜面301の入力回転体20に接触する箇所の、自転軸300からの距離が大きくなる。そして、第2傾斜面302の出力回転体70に接触する箇所の、自転軸300からの距離が小さくなる。このため、入力回転体20の回転数である第1回転数よりも、出力回転体70の回転数である第2回転数の方が、小さくなる。すなわち、入力回転体20の回転運動が減速されて、出力回転体70から後輪120へ出力される。
【0043】
一方、図4のように、自転軸300の一端が主軸9から遠ざかるように、遊星ローラ30を径方向に傾斜させた場合、第1傾斜面301の入力回転体20に接触する箇所の、自転軸300からの距離が小さくなる。そして、第2傾斜面302の出力回転体70に接触する箇所の、自転軸300からの距離が大きくなる。このため、入力回転体20の回転数である第1回転数よりも、出力回転体70の回転数である第2回転数の方が、大きくなる。すなわち、入力回転体20の回転運動が増速されて、出力回転体70から後輪120へ出力される。
【0044】
このように、本実施形態の無段変速機1では、可動リング50の軸方向の位置に応じて、遊星ローラ30の自転軸300の主軸9を含む断面内の傾斜角度が変化する。そうすると、入力回転体20に対する第1傾斜面301の接触位置と、出力回転体70に対する第2傾斜面302の接触位置とが、それぞれ変化する。これにより、入力回転体20と出力回転体70との間の変速比を切り替えることができる。
【0045】
図8図10は、第2カム部材232と第1傾斜面301との接触点に生じる圧力F1、および、接触部材71と第2傾斜面302との接触点に生じる圧力F2を示した図である。図8は等速時の状態、図9は減速時の状態、図10は増速時の状態を、それぞれ示している。
【0046】
第1傾斜面301は、球面状である。このため、第2カム部材232と第1傾斜面301との接触点における第1傾斜面301の傾斜角度は、遊星ローラ30の径方向の傾斜角度に拘らず、一定である。それゆえ、当該接触点に生じる圧力F1の向きも、遊星ローラ30の径方向の傾斜角度に拘わらず、一定となる。したがって、入力回転体20に入力されるトルクが一定であれば、図8図10のように、等速時、減速時、および増速時のいずれの場合にも、当該接触点に生じる圧力F1の大きさが変化しない。
【0047】
もし、圧力F1が過小になると、第2カム部材232と第1傾斜面301との間に滑りが生じやすくなる。また、圧力F1が過大になると、第2カム部材232と第1傾斜面301との間に必要以上の転がり抵抗が生じ、動力の伝達効率が低下しやすくなる。また、圧力F1が過大になると、第2カム部材232または第1傾斜面301に損傷が生じやすくなる。本実施形態のように、遊星ローラ30の径方向の傾斜角度によらず、圧力F1を一定とすれば、これらの問題を解決できる。
【0048】
なお、第1傾斜面301の形状は、厳密に真球に沿った形状でなくてもよい。すなわち、本発明における「球面状」は、略球面状も含む。また、第2カム部材232と第1傾斜面301との接触点に生じる圧力F1の向きおよび大きさは、完全に一定でなくてもよい。第1傾斜面301が「球面状」であることにより、当該接触点に生じる圧力F1の向きおよび大きさの変化を抑制できればよい。
【0049】
一方、第2傾斜面302は、円錐状である。このため、図8図10のように、接触部材71と第2傾斜面302との接触点における第2傾斜面302の傾斜角度は、遊星ローラ30の径方向の傾斜角度に応じて変化する。それゆえ、当該接触点に生じる圧力F2の向きも、遊星ローラ30の径方向の傾斜角度に応じて変化する。したがって、図9のように、減速時の圧力F2は、等速時の圧力F2よりも大きくなる。また、図10のように、増速時の圧力F2は、等速時の圧力F2よりも小さくなる。
【0050】
このように、接触部材71と第2傾斜面302との接触点には、変速比に応じた圧力F2を発生させることができる。
【0051】
図8図10に示すように、円錐状の第2傾斜面302は、その頂点に近い位置ほど、大きな圧力を受ける。このため、本実施形態では、図7のように、円錐状の第2遊星部材32を、頂点へ向かうにつれて肉厚としている。すなわち、第2遊星部材32の軸方向または径方向の厚みを、頂点へ向かうにつれて増加させている。このようにすれば、第2遊星部材32が、使用時の負荷によって変形することを抑制できる。一方、球面状の第1傾斜面301は、その接触位置に拘わらず、一定の圧力を受ける。このため、本実施形態では、図7のように、半球状の第1遊星部材31の軸方向または径方向の厚みを、一定の薄肉としている。
【0052】
<4.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態には限定されない。
【0053】
<4-1.第1変形例>
図11は、第1変形例に係る遊星ローラ30Aおよび可動リング50Aを示した図である。図11の例では、遊星ローラ30Aの環状凹部303Aの軸方向の幅d1が、可動リング50の外周部に設けられた環状凸部51Aの軸方向の幅d2よりも大きい。そして、主軸を含む断面において、環状凹部303Aの曲率半径が、環状凸部51Aの曲率半径よりも大きい。このようにすれば、遊星ローラ30Aと可動リング50Aとの間の接触は一点当たりとなり、転がり抵抗が小さくなる。また、環状凹部303Aの軸方向の両端に位置する角部が、可動リング50Aに当たらない。したがって、遊星ローラ30Aと可動リング50Aとの間の接触抵抗を低減できる。
【0054】
<4-2.第2変形例>
図12は、第2変形例に係る無段変速機1Bの縦断面図である。図12の例では、中空シャフト10Bの内部に、コイルばね90Bが設けられている。コイルばね90Bは、軸方向に伸縮可能な弾性部材である。コイルばね90Bの軸方向の一端である自由端は、係合部材81Bに接触する。また、中空シャフト10Bの内部には、位置決め部材12Bが配置されている。コイルばね90Bの軸方向の他端である固定端は、位置決め部材12Bに接触する。このように、コイルばね90Bは、位置決め部材12Bと係合部材81Bとの間に、自然長よりも圧縮された状態で配置される。このため、コイルばね90Bは、係合部材81B、第2軸受82B、および可動リング50Bを、位置決め部材12Bから軸方向一方側へ離れる方向へ、常に加圧する。すなわち、コイルばね90Bは、係合部材81B、第2軸受82B、および可動リング50Bに、軸方向一端側へ向かう付勢力を、常に与える。
【0055】
図13は、第2変形例に係る第1ガイド板41Bおよび第2ガイド板42Bを、主軸9Bの一方側から見た平面図である。図14は、第2変形例に係る遊星ローラ30Bを径方向外側から見た図である。この変形例においても、第1ガイド板41Bは、複数の第1切り欠き410Bを有する。また、第2ガイド板42Bは、複数の第2切り欠き420Bを有する。ただし、図13および図14に示すように、この変形例では、第1切り欠き410Bの主軸9Bに対する周方向の位置と、第2切り欠き420Bの主軸9Bに対する周方向の位置とは、わずかに相違する。このため、図14に示すように、第1ガイド板41Bおよび第2ガイド板42Bによって、自転軸300Bの両端部は、周方向の異なる位置に保持される。このように、自転軸300Bの両端部の周方向の位置が相違した状態を、以下では「周方向に傾斜した状態」と称する。遊星ローラ30Bは、常に周方向に傾斜した状態で支持される。
【0056】
ローラチェーンから得られる動力によって、入力回転体20Bが第1回転数で回転すると、調圧カム23Bの第2カム部材232Bも、遊星ローラ30Bの第1傾斜面301Bに接触しながら、第1回転数で回転する。そうすると、第2カム部材232Bと第1傾斜面301Bとの間の摩擦力によって、遊星ローラ30Bは、自転軸300Bを中心として回転する。また、第2傾斜面302Bと接触部材71Bとの間の摩擦力によって、出力回転体70Bが第2回転数で回転する。このとき、図14に矢印で示すように、遊星ローラ30Bの第2傾斜面302Bは、トルクに比例した接線方向の力Foを、接触部材71Bに与える。
【0057】
ここで、遊星ローラ30Bは、上述の通り周方向に傾斜した状態で支持されている。このため、力Foによって、自転軸300Bを中心とする周方向の分力Faと自転軸300Bに平行な方向の分力Fbとが生じる。遊星ローラ30Bの周方向の傾斜角度をθとすると、分力Faと分力Fbとの関係は、Fb=Fa・tanθを満たす。この自転軸300Bに平行な方向の分力Fbを接触部材71Bに与えると、遊星ローラ30Bは、接触部材71から、分力Fbと同じ大きさの反力Fcを受ける。この反力Fcは、遊星ローラ30Bの自転軸300Bの一端(入力回転体20B側の端部)が、主軸9Bに近づくように、自転軸300Bを径方向に傾斜させようとする力となる。
【0058】
一方、コイルばね90Bは、係合部材81B、第2軸受82B、および可動リング50Bを、位置決め部材12Bから軸方向に離れる方向へ加圧している。このため、図12に示すように、遊星ローラ30Bは、可動リング50Bから、軸方向の力Fdを受ける。この力Fdは、遊星ローラ30Bの一端が、主軸9Bから離れるように、自転軸300Bを径方向に傾斜させようとする力となる。また、遊星ローラ30Bの自転軸300Bの一端が、主軸9Bに近づくように傾斜するほど、コイルばね90Bは圧縮されるため、力Fdは大きくなる。
【0059】
このように、入力回転体20Bに負荷が与えられている状態では、遊星ローラ30Bに、自転軸300Bを径方向の互いに反対の向きに傾斜させようとする2つの力Fc,Fdが加わる。自転軸300Bは、これらの力Fc,Fdが釣り合う傾斜角度で静止する。そして、遊星ローラ30Bは、その傾斜角度の自転軸300Bを中心として自転する。
【0060】
例えば、負荷が大きいとき(力Foが強いとき)には、力Foの分力Fbも大きくなる。したがって、分力Fbの反力Fcも大きくなる。このため、自転軸300Bの一端が主軸9Bに近づくように、遊星ローラ30Bが径方向に傾斜する。その場合、入力回転体20Bの回転運動が減速されて、出力回転体70Bから後輪へ出力される。一方、負荷が小さいとき(力Foが弱いとき)には、力Foの分力Fbも小さくなる。したがって、分力Fbの反力Fcも小さくなる。このため、自転軸300Bの一端が主軸9Bから遠ざかるように、遊星ローラ30Bが径方向に傾斜する。その場合、入力回転体20Bの回転運動が増速されて、出力回転体70Bから後輪へ出力される。
【0061】
このように、図12の無段変速機1Bでは、遊星ローラ30Bに与えられる負荷に応じて、遊星ローラ30Bの自転軸300Bの径方向の傾斜角度が変化する。したがって、入力回転体20Bと出力回転体70Bとの間の変速比を、負荷に応じて自動的に切り替えることができる。
【0062】
なお、図12の例では、位置決め部材12Bが、ロッド61Bの他端に固定されている。このため、自転車のユーザは、操作部60Bを操作することによって、ロッド61および位置決め部材12Bの軸方向の位置を調整できる。位置決め部材12Bの軸方向の位置が変化すると、コイルばね90Bの固定端の位置も変化する。そうすると、コイルばね90Bから係合部材81B、第2軸受82B、および可動リング50Bにかかる圧力が変化する。すなわち、上述したFdが変化する。したがって、負荷と変速比との関係を調整できる。
【0063】
例えば、位置決め部材12Bの軸方向の位置を、入力回転体20Bへ近づく方向に変化させると、上述した力Fdが大きくなる。したがって、入力回転体20Bの回転運動を増速させやすくなる。一方、位置決め部材12Bの軸方向の位置を、入力回転体20Bから離れる方向に変化させると、上述した力Fdが小さくなる。したがって、入力回転体20Bの回転運動を減速させやすくなる。
【0064】
<4-3.第3変形例>
図15は、第3変形例に係る無段変速機1Cの縦断面図である。図15の無段変速機1Cは、上記実施形態の中空シャフト10に代えて、中実の入力シャフト10Cを有する。そして、当該入力シャフト10Cに、中継部材を介することなく、調圧カム23Cの第1カム部材231Cが固定されている。また、調圧カム23Cの第2カム部材232Cは、自転軸300Cよりも径方向内側において、遊星ローラ30Cの第1傾斜面301Cに接触する。
【0065】
また、図15の例では、出力回転体70Cが、接触部材71Cと出力シャフト73Cとを有する。接触部材71Cは、自転軸300Cよりも径方向内側において、遊星ローラ30Cの第2傾斜面302Cに接触する。出力シャフト73Cは、主軸9Cに沿って延びる。接触部材71Cと出力シャフト73Cとは、互いに相対回転不能に固定されている。
【0066】
また、図15の例では、可動リング50Cおよび操作部60Cが、遊星ローラ30Cよりも径方向外側に位置する。可動リング50Cは、径方向内側へ向けて突出する環状凸部51Cを有する。環状凸部51Cは、遊星ローラ30Cの環状凹部303Cに嵌まる。これにより、可動リング50Cと遊星ローラ30Cとが係合する。また、可動リング50Cは、係合部材81Cによって、周方向にしゅう動可能に支持されている。また、可動リング50Cおよび係合部材81Cは、図示を省略したガイド部に沿って軸方向に移動することが可能である。ユーザは、係合部材81Cに接続された操作部60Cを操作することによって、可動リング50Cの軸方向の位置を切り替えることができる。
【0067】
<4-4.他の変形例>
上記の実施形態では、入力回転体および出力回転体のうち、入力回転体のみに調圧カムを設けていた。しかしながら、出力回転体にも、調圧カムを設けてもよい。
【0068】
また、上記の実施形態では、遊星ローラが環状凹部を有し、可動リングが環状凹部に嵌まる環状凸部を有していた。しかしながら、遊星ローラが環状凸部を有し、可動リングが環状凹部を有していてもよい。そして、可動リングの環状凹部に、遊星ローラの環状凸部が嵌まる構造としてもよい。その場合、遊星ローラを2部材で形成するのであれば、環状凸部の全体が、2部材のいずれか一方に属していることが好ましい。
【0069】
また、上記の実施形態では、自転車用の無段変速機について説明した。しかしながら、同等の構造を有する無段変速機を、自転車以外の用途に用いてもよい。例えば、同等の構造を有する無段変速機を、三輪車、車椅子、台車、無人搬送車、ロボット等に搭載してもよい。
【0070】
また、無段変速機および自転車の細部の形状については、本願の各図に示された形状と相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【0071】
本出願は、2017年10月31日に出願された日本出願である特願2017-210368号に基づく優先権を主張し、当該日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、無段変速機および自転車に利用できる。
【符号の説明】
【0073】
1,1B,1C 無段変速機
9,9B,9C 主軸
10,10B 中空シャフト
20,20B 入力回転体
21 スプロケット
22 中継部材
23,23B,23C 調圧カム
23a 第1カム面
23b 第2カム面
30,30A,30B,30C 遊星ローラ
31 第1遊星部材
32 第2遊星部材
33 空洞
40 ガイド部材
41,41B 第1ガイド板
42,42B 第2ガイド板
50,50A,50B,50C 可動リング
51,51A,51C 環状凸部
60,60B,60C 操作部
70,70B,70C 出力回転体
71,71B,71C 接触部材
72 ハウジング
81,81B,81C 係合部材
90B コイルばね
100 自転車
110 前輪
120 後輪
121 ホイール
130 ペダル
140 ローラチェーン
231,231C 第1カム部材
232,232B,232C 第2カム部材
233 転動体
300,300B,300C 自転軸
301,301B,301C 第1傾斜面
302,302B,302C 第2傾斜面
303,303A,303C 環状凹部
410,410B 第1切り欠き
420,420B 第2切り欠き


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15