IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋紡株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】積層ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/043 20200101AFI20230111BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20230111BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20230111BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20230111BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
C08J7/043 A CFD
B32B27/36
B32B27/40
B32B27/26
C09D175/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022046740
(22)【出願日】2022-03-23
(62)【分割の表示】P 2021506007の分割
【原出願日】2020-10-23
(65)【公開番号】P2022089835
(43)【公開日】2022-06-16
【審査請求日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2019196007
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】多喜 博
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 紀志
(72)【発明者】
【氏名】瀧井 功
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-104532(JP,A)
【文献】特開2011-153290(JP,A)
【文献】特開2009-269301(JP,A)
【文献】特開2012-000972(JP,A)
【文献】特開2019-127548(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111993738(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C08J7/04-7/06
C09D1/00-10/00
101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面にカルボキシル基を有する酸価30~50mgKOH/gのポリウレタン樹脂とカルボキシル基を有する酸価30~50mgKOH/gの架橋剤を含む組成物から形成された塗布層を有し、ヘイズが2.5%以下である積層ポリエステルフィルム。
【請求項2】
架橋剤が、イソシネート系化合物である請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層ポリエステルフィルムに関する。更に詳しくは、光学用、包装用、ラベル用などあらゆる分野に最適な易接着性の塗布層を有する積層ポリエステルフィルムに関する。
【0002】
熱可塑性樹脂フィルム、中でもポリエステルフィルムは、機械的性質、電気的性質、寸法安定性、透明性、耐薬品性などに優れた性質を有することから磁気記録材料、包装材料、太陽電池用途、フラットディスプレイ等に用いられる反射防止フィルム、拡散シート、プリズムシート等の光学フィルム及び、ラベル印刷用フィルムなどに幅広く使用されている。しかし、ポリエステルフィルムは表面が高度に結晶配向しているため、これらの用途での加工において、各種塗料や樹脂、インクとの接着性に乏しいという欠点を有している。
このため、従来から、ポリエステルフィルム表面に種々の方法で接着性を与えるための検討がなされてきた
【0003】
従来、接着性付与の方法としては、例えば、基材となるポリエステルフィルム表面のコロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理などを行なう表面活性化法が知られているが、これらの処理によって得られた接着効果は経時的に低下するので、長期間にわたる高いレベルの接着性の維持は困難であった。(特許文献1)
そのため、主に、ポリエステルフィルムの表面に各種樹脂を塗布し、易接着性能を持つ塗布層を設ける方法がよく用いられている
【0004】
従来、共重合ポリエステル樹脂またはウレタン樹脂を含有する塗布液や、それらの樹脂と架橋剤を併用した塗布液などを塗布層に用いることによりハードコート剤プリズムレンズ剤に使用されているポリウレタンアクリレートまたはエステルアクリルレート等の樹脂成分との親和性を向上させ、それらに対して密着性を与える技術が知られていた(特許文献2、3)。しかし、ラベル印刷に用いられるUV硬化型インキ(紫外線硬化型インキ)では樹脂以外に色調発現のため、染料または顔料が含有されており、比較的、耐光性の良好な顔料ではインキ成分の15~25重量%程度使用されている。さらに、隠蔽性が重要な白色インキ系では白顔料の含有量が50重量%程度と多いため、従来技術では密着性が不十分であり、特に低線量下での密着性が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭58-27724号公報
【文献】特開2000-229355号公報
【文献】特開2009-220376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、UV硬化型樹脂との接着性が良好であり、特にUV硬化型インキ等の塗工剤との接着性に優れ、かつ長期間にわたる高いレベルの接着性の維持に優れた積層ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、以下の構成よりなる。
1. ポリエステルフィルムの少なくとも片面にカルボキシル基を有する酸価30~50mgKOH/gのポリウレタン樹脂とカルボキシル基を有する酸価30~50mgKOH/gの架橋剤を含む組成物から形成された塗布層を有し、ヘイズが2.5%以下である積層ポリエステルフィルム。
2. 架橋剤が、イソシネート系化合物である上記第1に記載の積層ポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、ハードコート層、レンズ層、インキ等のUV硬化樹脂への接着性に優れるが、特にUV硬化型インキに対して高いレベルの接着性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(ポリエステルフィルム基材)
本発明においてポリエステルフィルム基材を構成するポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのほか、前記のようなポリエステル樹脂のジオール成分又はジカルボン酸成分の一部を以下のような共重合成分に置き換えた共重合ポリエステル樹脂であり、例えば、共重合成分として、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ポリアルキレングリコールなどのジオール成分や、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、5-ナトリウムイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸成分などを挙げることができる。
【0010】
本発明においてポリエステルフィルム基材のために好適に用いられるポリエステル樹脂は、主に、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレートから選ばれるものである。これらのポリエステル樹脂の中でも、物性とコストのバランスからポリエチレンテレフタレートが最も好ましい。また、これらのポリエステル樹脂から構成されたポリエステルフィルム基材は二軸延伸ポリエステルフィルムであることが好ましく、耐薬品性、耐熱性、機械的強度などを向上させることができる。
【0011】
ポリエステル樹脂の製造の際に用いられる重縮合のための触媒としては特に限定されないが、三酸化アンチモンが安価で、かつ優れた触媒活性をもつ触媒であるため好適である。また、ゲルマニウム化合物、又はチタン化合物を用いることも好ましい。さらに好ましい重縮合触媒としては、アルミニウム及び/又はその化合物とフェノール系化合物を含有する触媒、アルミニウム及び/又はその化合物とリン化合物を含有する触媒、リン化合物のアルミニウム塩を含有する触媒が挙げられる。
【0012】
また、本発明におけるポリエステルフィルム基材は、その層構成について特に限定されるものではなく、単層のポリエステルフィルムであってもよいし、相互に成分が異なる2層構成でもよく、外層と内層を有する、少なくとも3層からなるポリエステルフィルム基材であってもよい。
【0013】
(塗布層)
本発明の積層ポリエステルフィルムは、ハードコート層への接着性、UV硬化型インキへの接着性、ブロッキング耐性を向上させるために、その少なくとも片面に、カルボキシル基を有する酸価30~50mgKOH/gのポリウレタン樹脂とカルボキシル基を有する酸価30~50mgKOH/gの架橋剤から形成されている塗布層が積層されていることが好ましい。塗布層は、ポリエステルフィルムの両面に設けてもよく、ポリエステルフィルムの片面のみに設け、他方の面には異種の樹脂被覆層を設けてもよい。
【0014】
本発明における塗布層はハードコート層、レンズ層、インキ等のUV硬化樹脂または熱硬化樹脂への密着性に優れるが、特に顔料を含有しているインキ等への密着性に優れる。この効果は塗布層中のカルボキシル基とインキ中の顔料粒子との相互作用の結果と推測している。また、一定範囲のカルボキシル基をポリウレタン樹脂と架橋剤がそれぞれ有することにより、単体の樹脂がカルボキシル基を多く有することによる耐水性の低下による耐湿熱性等の欠点の発生を抑制しつつ、塗布層自体に多くのカルボキシル基を含有させることが可能となった。
【0015】
カルボキシル基を有するポリウレタン樹脂とカルボキシル基を有する架橋剤は重量比として90/10~10/90の範囲が好ましく、より好ましくは80/20~20/80の範囲であり、さらには70/30~30/70の範囲が好ましい。架橋剤が少ないと耐湿熱性等の耐久性が低下し、ポリウレタン樹脂が少ないと密着性が低下する。
【0016】
以下、塗布層の各組成について詳説する。
(カルボキシル基を有する酸価30~50mgKOH/gのポリウレタン樹脂)
カルボキシル基を有するポリウレタン樹脂とは、少なくともポリオール成分とポリイソシアネート成分、さらに必要に応じて鎖延長剤等から合成されるウレタン樹脂であり、分子中または側鎖にカルボキシル基を有するものである。ここでいう分子中とは前記ポリウレタン樹脂の主鎖中または末端に存在するものをいう。また、側鎖とは、分子鎖を構成する前記のようないずれかの原料成分の末端官能基数が3個以上存在することによって、合成、重合された後に枝分かれ上の分子鎖上に導入されたものである。
本発明におけるカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂は、主にウレタンの成分としてカルボキシル基含有ポリオール成分を使用することで得られる。
【0017】
かかる、カルボキシル基含有ポリオール成分としては下記のようなものが挙げられる。
比較的高分子量なもの、例えば、カルボキシル基含有ポリアルキレングリコール、カルボキシル基含有アクリルポリオール、カルボキシル基含有ポリオレフィンポリオール、カルボキシル基含有ポリエステルポリオール等が使用することができる。また、比較的低分子量なもの、例えば、2 , 2 - ジメチロールプロピオン酸、2 , 2 - ジメチロールブタン酸、2, 2 - ジメチロール吉草酸等を使用することができる。カルボキシル基導入には、特に、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸が好適に使用される。
【0018】
カルボキシル基を有するポリウレタン樹脂の酸価は、30~50mgKOH/g が好ましく、35~45mgKOH/g がより好ましい。酸価が30 mgKOH/g 以上であると、UV硬化性樹脂、特にUV硬化型インキとの密着性が向上する。一方、酸価が50 mgKOH/g 以下であると、塗布層の耐水性が保持され、吸湿によりフィルムが相互に固着しやすくなることがないため好ましい。但し、本発明におけるポリウレタン樹脂ではポリウレタン樹脂の水溶性あるいは水分散性を補填するために他の親水性基、例えば、水酸基、エーテル、スルホン酸、ホスホン酸、4級アミン等を性能が悪化しない範囲内で導入してもよい。
【0019】
ポリウレタン樹脂中のカルボキシル基は塩基性化合物で中和されていてもよい。中和に使用する塩基性化合物としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、有機アミン化合物が挙げられる。これらの中でも、加熱により容易にカルボキシル基と解離する有機アミン化合物が好ましい。有機アミン化合物としては、例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、エチレンジアミンなどの炭素数1から20の直鎖状、分岐状の1,2または3級アミン、モルホリン、N-アルキルモルホリン、ピリジンなどの環状アミン、モノイソプロパノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルイソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの水酸基含有アミンなどが挙げられる。
【0020】
本発明におけるウレタン樹脂を合成、重合するために用いる他のポリオール成分には、ポリカーボネートポリオールが好ましく用いられ、耐熱、耐加水分解性に優れる脂肪族系ポリカーボネートポリオールを含有することが特に好ましい。脂肪族系ポリカーボネートポリオールとしては、脂肪族系ポリカーボネートジオール、脂肪族系ポリカーボネートトリオールなどが挙げられるが、好適には脂肪族系ポリカーボネートジオールを用いることができる。本発明におけるポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂を合成、重合するために用いる脂肪族系ポリカーボネートジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,8-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのジオール類の1種または2種以上と、例えば、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲンなどのカーボネート類とを反応させることにより得られる脂肪族系ポリカーボネートジオールなどが挙げられる。
【0021】
本発明における前記のポリカーボネートポリオールの数平均分子量としては、好ましくは300~5000である。より好ましくは400~4000、最も好ましくは500~3000である。300以上であると、インキ密着性を向上でき好ましい。3000以下であると、ブロッキング耐性を向上でき好ましい。
【0022】
本発明におけるウレタン樹脂の合成、重合に用いるポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート等の芳香環を持つ脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート及び4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、および2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、あるいは、ジイソシアネート類から製造されたイソシアヌレート結合、ビユレット結合またはアロファネート結合含有変性ポリイソシアネート類、ジイソシアネート類を単一あるいは複数でトリメチロールプロパン等とあらかじめ付加させたポリイソシアネート類が挙げられる。前記の芳香環を持つ脂肪族ジイソシアネート類、脂環式ジイソシアネート類、または、脂肪族ジイソシアネート類等を使用した場合、黄変の問題がなく好ましい。
【0023】
鎖延長剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,6-ヘキサンジオール等のグリコール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトール等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、およびピペラジン等のジアミン類、モノエタノールアミンおよびジエタノールアミン等のアミノアルコール類、チオジエチレングルコール等のチオジグリコール類、あるいは水が挙げられる。また、少量であれば、3官能基以上のポリオール、ポリアミン等を使用してもよい。
【0024】
本発明のポリウレタン樹脂は強硬性向上のため末端または側鎖にブロックイソシアネート等の反応性基を有していてもよい。
【0025】
(架橋剤)
本発明においては、カルボキシル基を有する酸価30~50mgKOH/gの架橋剤を使用する。また、架橋剤のカルボキシル基は先述のポリウレタン樹脂と同様に塩基性化合物で中和されていてもよい。カルボキシル基を有する架橋剤の酸価は、30~50mgKOH/g が好ましく、35~45mgKOH/g がより好ましい。酸価が30mgKOH/g以上であると、UV硬化性樹脂、特にUV硬化型インキとの密着性が向上するため好ましい。一方、酸価が50mgKOH/g以下であると、塗布後の塗布層の耐水性が保たれ、吸湿してフィルムが相互に固着しやすくなることがなく好ましい。但し、本発明における架橋剤の水溶性あるいは水分散性を補填するために他の親水性基、例えば、水酸基、エーテル、スルホン酸、ホスホン酸、4級アミン等を性能が悪化しない範囲内で導入してもよい。
【0026】
カルボキシル基を有する架橋剤としては、例えば、カルボキシル基を分子中に導入したオキザゾリン化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物が挙げられる。また、分子中に導入したカルボキシル基と分子内または分子間で反応しない様に、カルボキシル基は塩基性化合物で予め中和しておくことも可能である。これらの架橋剤の中ではカルボキシル基を容易に分子中に導入しやすいイソシアネート化合物が好ましく、ブロックイソシアネート化合物が特に好ましい。
【0027】
ブロック化剤としては、重亜硫酸ソーダなどの重亜硫酸塩系化合物、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ブロモ3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ3,5-ジメチルピラゾールなどのピラゾール系化合物、フェノール、クレゾール等のフェノール系、メタノール、エタノール等の脂肪族アルコール系、マロン酸ジメチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等のメルカプタン系、アセトアニリド、酢酸アミド等の酸アミド系、ε - カプロラクタム、δ - バレロラクタム等のラクタム系、コハク酸イミド、マレイン酸イミド等の酸イミド系、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム等のオキシム系、ジフェニルアニリン、アニリン、エチレンイミン等のアミン系等のブロック化剤が挙げられる。
【0028】
前記ブロックイソシアネートのブロック剤の沸点の下限は好ましくは150℃であり、より好ましくは160℃であり、さらに好ましくは180℃であり、特に好ましくは200℃であり、最も好ましくは210℃である。ブロック化剤の沸点が高い程、塗布液の塗布後の乾燥工程やインラインコート法の場合はフィルム製膜工程における熱付加によってもブロック化剤の揮発が抑制され、微小な塗布面凹凸の発生が抑制され、フィルムの透明性が向上する。ブロック化剤の沸点の上限は特に限定しないが、生産性の点から300℃程度が上限であると思われる。沸点は分子量と関係するため、ブロック化剤の沸点を高くするためには、分子量の大きなブロック化剤を用いることが好ましく、ブロック剤の分子量は50以上が好ましく、60以上がより好ましく、80以上がさらに好ましい。
【0029】
ブロック化剤の解離温度の上限は好ましくは200℃であり、より好ましくは180℃であり、さらに好ましくは160℃であり、特に好ましくは150℃であり、最も好ましくは120℃である。ブロック化剤は塗布液の塗布後の乾燥工程やインラインコート法の場合はフィルム製膜工程における熱付加によりブロック化剤が解離し、再生イソシアネート基が生成される。そのため、ウレタン樹脂などとの架橋反応が進行し、接着性が向上する。ブロックイソシアネートの解離温度が上記温度以下である場合は、ブロック化剤の解離が十分進行するため、接着性、特に耐湿熱性が良好となる。
【0030】
本発明のブロックイソシアネートに用いる解離温度は120℃以下、かつ、ブロック化剤の沸点が150℃以上であるブロック化剤としては、前述の重亜硫酸ソーダ、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシムなどが挙げられる。なかでも、耐湿熱性、黄変の点から、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾールに代表されるピラゾール系化合物が好ましい。
【0031】
前記ブロックイソシアネートは2官能以上ものが好ましく、3官能以上のブロックイソシアネートが塗膜の架橋性の点からさらに好ましい。
【0032】
本発明のブロックイソシアネートの前駆体である3官能以上のポリイソシアネートは、イソシアネートモノマーを導入して好適に得ることができる。例えば、2個のイソシアネート基を有する芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、又は脂環族ジイソシアネート等のイソシアネートモノマーを変性したビュレット体、イソシアヌレート体、およびアダクト体等が挙げられる。
ビュレット体とは、イソシアネートモノマーが自己縮合して形成したビュレット結合を有する自己縮合物であり、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体などが挙げられる。
イソシアヌレート体とは、イソシアネートモノマーの3量体であり、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、イソホロンジイソシアネートの3量体、トリレンジイソシアネートの3量体などが挙げられる。
アダクト体とは、イソシアネートモノマーと3官能以上の低分子活性水素含有化合物とを反応させてなる、3官能以上のイソシアネート化合物をいい、例えば、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとイソホロンジイソシアネートとを反応させた化合物、などが挙げられる。
【0033】
前記のイソシアネートモノマーとしては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、1,4-ナフチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4′-ジイソシアネート、2,2′-ジフェニルプロパン-4,4′-ジイソシアネート、3,3′-ジメチルジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート、4,4′-ジフェニルプロパンジイソシアネート、3,3′-ジメトキシジフェニル-4,4′-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート及び4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、および2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類が挙げられる。透明性、耐黄変性、接着性、耐湿熱性の点から、脂肪族、脂環式イソシアネートやこれらの変性体が好ましい。
【0034】
本発明においては、性能に影響を与えない範囲で他の樹脂と併用してもよい。併用する樹脂としては、カルボキシル基非含有ポリウレタン、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアセタール樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の中では併用することによりUV硬化樹脂との密着性が向上するポリエステル樹脂が特に好ましい。また、ポリエステル樹脂を併用する場合においては、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂及びカルボキシル基含有架橋剤を合わせた含有量よりも1.5倍以上も含有させることが可能である。この効果においては、ポリエステル樹脂は、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂またはカルボキシル基含有架橋剤よりも、基材であるポリエステル樹脂への親和性が良好なため、厚み方向で基材側に局在化しやすいため、基材界面との密着性が向上し、表層に局在化したカルボキシル基含有ポリウレタン樹脂及びカルボキシル基含有架橋剤がUV硬化樹脂との密着性を向上させる様な相乗効果が発現しているためと推測している。
【0035】
(ポリエステル樹脂)
本発明における塗布層に併用するポリエステル樹脂は、直鎖上のものであってもよいが、より好ましくは、ジカルボン酸と、分岐構造を有するジオール(グリコール)またはエーテル結合を1個以上含有するジオールとを構成成分とするポリエステル樹脂であることが好ましい。ここで言うジカルボン酸は、その主成分がテレフタル酸、イソフタル酸又は2,6-ナフタレンジカルボン酸である他アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が、挙げられる。また、分岐したグリコールとは枝分かれしたアルキル基を有するジオールであって、例えば、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-イソプロピル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-n-ヘキシル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-n-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-n-ヘキシル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジ-n-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-n-ブチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、及び2,2-ジ-n-ヘキシル-1,3-プロパンジオールなどが挙げられる。
さらに、エーテル結合を1個以上含有するジオールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレングリコールの縮合物、ビスフェノール類のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。分子中のエーテル結合の個数に特に制限はないが、ポリエステル樹脂の強度またはガラス転移点が低下するため、4個以下、さらには2個以下であることが好ましい。
【0036】
上記ポリエステル樹脂について、上記のより好ましい態様である分岐したグリコール成分またはエーテル結合を1個以上含有するジオール成分は全グリコール成分の中に、好ましくは10モル%以上の割合で、さらに好ましくは20モル%以上の割合で含有されるものと言える。10モル%以上であると、結晶性が高くなり過ぎず、塗布層の接着性が保持されて好ましい。全グリコール成分の中のグリコール成分上限は、好ましくは80モル%以下であり、より好ましくは70質量%以下である。80モル%以下であると、副生成物であるオリゴマー濃度が増加しづらく、塗布層の透明性が保持されて好ましい。上記化合物以外のグリコール成分としてはエチレングリコールが最も好ましい。少量であれば、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールまたは1,4-シクロヘキサンジメタノールなどを用いてもよい。
【0037】
上記ポリエステル樹脂の構成成分としてのジカルボン酸としては、テレフタル酸又はイソフタル酸であるのが最も好ましい。上記ジカルボン酸の他に、共重合ポリエステル系樹脂に水分散性を付与させるため、5-スルホイソフタル酸等を1~10モル%の値囲で共重合させるのが好ましく、例えば、スルホテレフタル酸、5-スルホイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸等を挙げることができる。
【0038】
塗布層を形成する塗布液中の樹脂および架橋剤の固形分の総和を100質量%とするとき、ポリエステル樹脂含有率は10質量%以上であると、塗布層とポリエステルフィルム基材の密着性が良好となり好ましい。ポリエステル樹脂の含有率の上限は好ましくは65質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下である。ポリエステル樹脂の含有率が70質量%以下であると、インキ加工後の耐湿熱性が良好となり好ましい。
【0039】
塗布層中には前述のポリエステル樹脂以外の樹脂も本件の性能が低下しない範囲で使用しても構わない。前記ポリエステル樹脂以外の樹脂の代表例はカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂であるが、その他の樹脂を含んでいてもよく、カルボキシル基を有するポリウレタン樹脂だけであってもよい。
その場合、塗布層を形成する塗布液中の樹脂及び架橋剤の固形分の総和を100質量%とすると、ポリエステル樹脂以外の樹脂は40質量%以下の含有量が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が特に好ましい。但し、ポリエステル樹脂以外の樹脂とポリエステル樹脂の含有量の総和は70質量%以下であることが好ましい。塗布層を形成する塗布液中の前述のポリウレタン樹脂及び架橋剤のそれぞれの含有量は、樹脂及び架橋剤の固形分の総和として3質量%以上であることが好ましい。
3質量%以上であるとUV硬化型樹脂との接着性、UV硬化型インキ等の塗工剤との接着性の効果が得られて好ましい。より好ましい含有量の範囲は3.5~90質量%であり、7~80質量%が更に好ましく、10.5~70質量%が特に好ましい。
【0040】
(添加剤)
本発明における塗布層中には、本発明の効果を阻害しない範囲において公知の添加剤、例えば界面活性剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の粒子、帯電防止剤、核剤等を添加してもよい。
【0041】
本発明においては、塗布層の耐ブロッキング性をより向上させるために、塗布層に粒子を添加することも好ましい態様である。本発明において塗布層中に含有させる粒子としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、クレーなど或いはこれらの混合物であり、更に、他の一般的無機粒子、例えばリン酸カルシウム、雲母、ヘクトライト、ジルコニア、酸化タングステン、フッ化リチウム、フッ化カルシウムその他と併用、等の無機粒子や、スチレン系、アクリル系、メラミン系、ベンゾグアナミン系、シリコーン系等の有機ポリマー系粒子等が挙げられる。
【0042】
塗布層中の粒子の平均粒径(走査型電子顕微鏡(SEM)による個数基準の平均粒径。以下同じ)は、0.04~2.0μmが好ましく、さらに好ましくは0.1~1.0μmである。不活性粒子の平均粒径が0.04μm以上であると、フィルム表面への凹凸の形成が容易となるため、フィルムの滑り性や巻き取り性などのハンドリング性が向上し、貼り合せの際の加工性が良好であって好ましい。一方、不活性粒子の平均粒径が2.0μm以下であると、粒子の脱落が生じ難く好ましい。塗布層中の粒子濃度は、固形成分中1~20質量%であることが好ましい。
【0043】
粒子の平均粒径の測定方法は、積層ポリエステルフィルムの断面の粒子を走査型電子顕微鏡で観察を行い、粒子30個を観察し、その平均値をもって平均粒径とする方法で行った。
【0044】
本発明の目的を満たすものであれば、粒子の形状は特に限定されるものでなく、球状粒子、不定形の球状でない粒子を使用できる。不定形の粒子の粒径は円相当径として計算することができる。円相当径は、観察された粒子の面積をπで除し、平方根を算出し2倍した値である。
【0045】
(積層ポリエステルフィルムの製造)
本発明の積層ポリエステルフィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する場合がある)フィルム基材を用いた例を挙げて説明するが、当然これに限定されるものではない。
【0046】
PET樹脂を十分に真空乾燥した後、押出し機に供給し、Tダイから約280℃の溶融PET樹脂を回転冷却ロールにシート状に溶融押出しし、静電印加法により冷却固化して未延伸PETシートを得る。前記未延伸PETシートは、単層構成でもよいし、共押出し法による複層構成であってもよい。
【0047】
得られた未延伸PETシートを一軸延伸、もしくは二軸延伸を施すことで結晶配向化させる。例えば二軸延伸の場合は、80~120℃に加熱したロールで長手方向に2.5~5.0倍に延伸して、一軸延伸PETフィルムを得たのち、フィルムの端部をクリップで把持して、80~180℃に加熱された熱風ゾーンに導き、幅方向に2.5~5.0倍に延伸する。また、一軸延伸の場合は、テンター内で2.5~5.0倍に延伸する。延伸後引き続き、熱処理ゾーンに導き、熱処理を行ない、結晶配向を完了させる。
【0048】
熱処理ゾーンの温度の下限は好ましくは170℃であり、より好ましくは180℃である。熱処理ゾーンの温度が170℃以上であると硬化が十分となり、液体の水存在下でのブロッキング性が良好となり好ましく、乾燥時間を長くする必要がない。一方、熱処理ゾーンの温度の上限は好ましくは250℃であり、より好ましくは240℃である。熱処理ゾーンの温度が240℃以下であると、フィルムの物性が低下するおそれがなく好ましい。
【0049】
塗布層はフィルムの製造後、もしくは製造工程において設けることができる。特に、生産性の点からフィルム製造工程の任意の段階、すなわち未延伸あるいは一軸延伸後のPETフィルムの少なくとも片面に、塗布液を塗布し、少なくとも一軸方向に延伸、熱処理して塗布層を形成することが好ましい。
【0050】
この塗布液をPETフィルムに塗布するための方法は、公知の任意の方法を用いることができる。例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ダイコーター法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、含浸コート法、カーテンコート法、などが挙げられる。これらの方法を単独で、あるいは組み合わせて塗工することができる。
【0051】
本発明において塗布層の厚みは、0.001~2.00μmの範囲で適宜設定することができるが、加工性と接着性とを両立させるには0.01~1.00μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.02~0.80μm、さらに好ましくは0.05~0.50μmである。塗布層の厚みが0.001μm以上であると、接着性が良好であり好ましい。塗布層の厚みが2.00μm以下であると、ブロッキングを生じ難く好ましい。
【0052】
本発明の積層ポリエステルフィルムのヘイズの上限は好ましくは2.5%であり、より好ましくは2.0%であり、さらに好ましくは1.5%であり、特に好ましくは1.2%である。ヘイズが2.5%以下であると、透明性の点で好ましく、透明性が求められる光学フィルムへも好適に用いることができる。ヘイズは一般的に小さいほど好ましいが、0.1%以上であっても好ましく、0.2%以上であっても好ましい。
【実施例
【0053】
次に、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。まず、以下に本発明で用いた評価方法について説明する。
【0054】
(1)ヘイズ
得られた積層ポリエステルフィルムのヘイズはJIS K 7136:2000に準拠し、濁度計(日本電色製、NDH5000)を用いて測定した。
【0055】
(2)酸価
樹脂及び架橋剤の酸価はJIS K1557-5:2007記載の滴定法により測定した。
但し、アミン等で中和処理されたカルボキシル基の場合は、高温処理によりアミン等を除去するか、予め塩酸等で処理してアミン等を遊離、除去させてから測定した。また、架橋剤の場合は予めイソシアネート等の反応性基をアミン等で反応させた後に測定を実施した。測定する樹脂が溶剤であるイソプロパノールへの溶解性が悪い場合には、代わりにN-メチルピロリドンを使用した。上記等のいずれの処理でも、対比用の測定は十分に実施した。
【0056】
(3)ブロッキング耐性
2枚のフィルム試料を塗布層面同士が対向するように重ね合わせ、98kPaの荷重を掛け、これを50℃の雰囲気下で24時間密着させ、放置した。その後、フィルムを剥離し、その剥離状態を下記の基準で判定した。
○:塗布層の転移がなく軽く剥離できる。
△:塗布層は維持されているが、部分的に塗布層の表層が相手面に転移している。
×:2枚のフィルムが固着し剥離できないもの、あるいは剥離できてもフィルム基材が劈開している。
【0057】
(4)UV硬化型インキとの密着性
積層ポリエステルフィルムの塗布層上に、UV硬化型インキ[T&K TOKA(株)製、商品名「BEST CURE UV161藍S」または「BEST CURE UV161白S」]を用いて、印刷機[(株)明製作所製、商品名「RIテスター」]でインクピペット4目盛、2分割ロールにて印刷を施し、次いで、インキ層を塗布したフィルムに高圧水銀灯を用いて100または40mJ/cmの紫外線を照射し、紫外線硬化型インキを硬化させた。次いで、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて、インキ層を貫通してフィルム基材に達する100個のマス目状の切り傷をインキ層面につける。次いで、セロハン粘着テープ(ニチバン製、405番;24mm幅)をマス目状の切り傷面にしっかり貼り付ける。その後、垂直にセロハン粘着テープをインキ積層フィルムのインキ層面から引き剥がして、インキ積層フィルムのインキ層面から剥がれたマス目の数を目視で数え、下記の式からインキ層とフィルム基材との密着性を求める。なお、マス目の中で部分的に剥離しているものも剥がれたマス目として数えて、下記式の様にインキ密着性を求めた。
インキ密着性(%)=100-(剥がれたマス目の数)
インキ密着性を下記の基準で判定した。
◎:100%、○:96~99%、△:80~95%、×:80%未満
基準として〇以上を合格とした。
【0058】
(5)ハードコート層との密着性
積層ポリエステルフィルムの塗布層上に、UV硬化型ハードコート剤であるオプスターZ7503(荒川化学工業(株)製)を#5ワイヤーバーを用いて塗布し、80℃で1分間乾燥した。次いで、塗布したフィルムに高圧水銀灯を用いて100mJ/cmの紫外線を照射し、ハードコート層の厚みが4μmであるハードコートフィルムを得た。
次いで、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて、ハードコート層を貫通してフィルム基材に達する100個のマス目状の切り傷をハードコート層面につける。次いで、セロハン粘着テープ(ニチバン製、405番;24mm幅)をマス目状の切り傷面に貼り付け、しっかり付着させる。その後、垂直にセロハン粘着テープをハードコート積層フィルムのハードコート層面から引き剥がした。粘着テープ付着剥離操作を同一ヵ所で計5回行った後、ハードコート積層フィルムのハードコート層面から剥がれたマス目の数を目視で数え、下記の式からハードコート層とフィルム基材との密着性を求める。なお、マス目の中で部分的に剥離しているものも剥がれたマス目として数えて、下記式の様にハードコート密着性を求めた。
ハードコート密着性(%)=100-(剥がれたマス目の数)
ハードコート密着性を下記の基準で判定した。
◎:100%、○:96~99%、△:80~95%、×:80%未満
基準として〇以上を合格とした。
【0059】
(6)耐湿熱性
上記(4)及び(5)と同様に作成したUV硬化型インキ塗布フィルム(BEST CURE UV161白S塗布後、UV照射、100mJ/cm2硬化品)、またはハードコート塗布フィルムを80℃、80%RHの環境下で塗布面を垂直にし、かつ塗布面に他のフィルム等の接触がない状態で500時間放置した。処理後、23℃、65%RHの環境下に、塗布面に他のフィルム等の接触がない状態で10分間放置した。時間経過直後に塗布面の密着性を先述と同様に評価した。
【0060】
(ポリウレタン樹脂A-1の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、水添m-キシリレンジイソシアネート82.8質量部、ジメチロールプロピオン酸25.0質量部、1,6-ヘキサンジオール21.0質量部、アジピン酸と1,4-ブタンジオールからなる数平均分子量2000のポリエステルジオール150.0質量部、及び溶剤としてメチルエチルケトン110質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン19.8質量部を添加し、ポリウレタンポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水500gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ポリウレタンポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、溶剤であるメチルエチルケトンを除去した。水で濃度調整することにより、酸価37.5mgKOH/gのポリウレタン樹脂(A-1)を含む固形分35質量%の溶液を調製した。
【0061】
(ポリウレタン樹脂A-2の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、水添m-キシリレンジイソシアネート63.0質量部、ジメチロールプロピオン酸21.0質量部、数平均分子量2000のポリカーボネートジオール(1,6-ヘキサンジオールタイプ)147.0質量部、及び溶剤としてメチルエチルケトン110質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン16.6質量部を添加し、ポリウレタンポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水500gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ポリウレタンポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、溶剤であるメチルエチルケトンを除去した。水で濃度調整することにより、酸価36.3mgKOH/gのポリウレタン樹脂(A-2)を含む固形分35質量%の溶液を調製した。
【0062】
(ポリウレタン樹脂A-3の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、水添ジフェニルメタンジイソシアネート64.5質量部、ジメチロールプロピオン酸21.5質量部、ネオペンチルグリコール11.2質量部、数平均分子量2000のポリカーボネートジオール(1,6-ヘキサンジオールタイプ)150.5質量部、及び溶剤としてメチルエチルケトン110質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン17.0質量部を添加し、ポリウレタンポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水500gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ポリウレタンポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、溶剤であるメチルエチルケトンを除去した。水で濃度調整することにより、酸価36.0mgKOH/gのポリウレタン樹脂(A-3)を含む固形分35質量%の溶液を調製した。
【0063】
(ポリウレタン樹脂A-4の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、水添m-キシリレンジイソシアネート83.4質量部、ジメチロールプロピオン酸16.9質量部、1,6-ヘキサンジオール28.4質量部、アジピン酸と1,4-ブタンジオールからなる数平均分子量2000のポリエステルジオール151.0質量部、及び溶剤としてメチルエチルケトン110質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン13.3質量部を添加し、ポリウレタンポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水500gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ポリウレタンポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、溶剤であるメチルエチルケトンを除去した。水で濃度調整することにより、酸価25.3mgKOH/gのポリウレタン樹脂(A-4)を含む固形分35質量%の溶液を調製した。
【0064】
(ポリウレタン樹脂A-5の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、水添m-キシリレンジイソシアネート104.9質量部、ジメチロールプロピオン酸41.8質量部、1,6-ヘキサンジオール19.0質量部、アジピン酸と1,4-ブタンジオールからなる数平均分子量2000のポリエステルジオール152.0質量部、及び溶剤としてメチルエチルケトン110質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン33.1質量部を添加し、ポリウレタンポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水500gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ポリウレタンポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、溶剤であるメチルエチルケトンを除去した。水で濃度調整することにより、酸価55.0mgKOH/gのポリウレタン樹脂(A-5)を含む固形分35質量%の溶液を調製した。
【0065】
(ポリウレタン樹脂A-6の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、水添m-キシリレンジイソシアネート45.0質量部、1,6-ヘキサンジオール20.0質量部、数平均分子量2000のポリエチレングリコール149.0質量部、及び溶剤としてメチルエチルケトン110質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を40℃にまで降温した後、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水500gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ポリウレタンポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、溶剤であるメチルエチルケトンを除去した。水で濃度調整することにより、酸価0.2mgKOH/gのポリウレタン樹脂(A-6)を含む固形分35質量%の溶液を調製した。
【0066】
(ポリウレタン樹脂A-7の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、水添ジフェニルメタンジイソシアネート43.8質量部、ジメチロールブタン酸12.9質量部、数平均分子量2000のポリカーボネートジオール(1,6-ヘキサンジオールタイプ)153.4質量部、及び溶剤としてメチルエチルケトン110質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン8.8質量部を添加し、ポリウレタンポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水500gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ポリウレタンポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、溶剤であるメチルエチルケトンを除去した。水で濃度調整することにより、酸価23.1mgKOH/gのポリウレタン樹脂(A-7)を含む固形分35質量%の溶液を調製した。
【0067】
(ポリウレタン樹脂A-8の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、水添ジフェニルメタンジイソシアネート68.0質量部、ジメチロールプロピオン酸19.8質量部、数平均分子量2000のポリカーボネートジオール(1,6-ヘキサンジオールタイプ)148.0質量部、及び溶剤としてメチルエチルケトン110質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において2時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、2-ブタノン オキシム6.6質量部を投入し、さらに1時間攪拌反応させた。この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン15.7質量部を添加し、ポリウレタンポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水500gを添加して、25℃に調整して、2000min -1 で攪拌混合しながら、ポリウレタンポリマー溶液を添加して水分散した。10質量%のエチレンジアミン水溶液11質量部を攪拌しつつ添加した。その後、減圧下で、溶剤であるメチルエチルケトンを除去した。水で濃度調整することにより、酸価32.0mgKOH/gのポリウレタン樹脂(A-8)を含む固形分35質量%の溶液を調製した。
【0068】
(架橋剤B-1の合成)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネート59.5質量部、ネオペンチルグリコール10.7質量部、ジメチロールブタン酸11.0質量部、及び溶剤としてN-メチルピロリドン20.0質量部を投入し、窒素雰囲気下、80℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液に2-ブタノンオキシム29.9質量部を滴下し、さらに窒素雰囲気下、80℃で1時間保持した。その後、反応液の赤外スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収が消失したことを確認後、この反応液を40℃にまで降温して、トリエチルアミン7.9質量部を加えた。そのまま1時間攪拌後、水を適量添加して、固形分40質量%のブロックイソシアネート系架橋剤(B-1)溶液を調整した。架橋剤B-1の固形分相当の酸価は37.6mgKOH/gであった。
【0069】
(架橋剤B-2の合成)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ製、デュラネートTPA)66.6質量部、N-メチルピロリドン17.5質量部に3,5-ジメチルピラゾール21.7質量部を滴下し、窒素雰囲気下、70℃で1時間保持した。その後、ジメチロールプロピオン酸9.0質量部を滴下した。反応液の赤外スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収が消失したことを確認後、N,N-ジメチルエタノールアミン6.3質量部を加えた。そのまま1時間攪拌後、水を適量添加して、固形分40質量%のブロックイソシアネート系架橋剤(B-2)溶液を調整した。架橋剤B-2の固形分相当の酸価は41.2mgKOH/gであった。
【0070】
(架橋剤B-3の合成)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコに、水150.0質量部およびメトキシプロピルアルコール250.0質量部を仕込み、窒素雰囲気下、80℃に加熱した。その後、メタクリル酸メチル126.0質量部、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン210.0質量部およびメタクリル酸トリエチルアミン53.0質量部からなる単量体混合物と、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩18.0質量部および水170.0質量部からなる重合開始剤溶液をそれぞれ滴下ロートから窒素雰囲気下、フラスコ内を80℃に保持しつつ2時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃、5時間攪拌した後、室温まで冷却した。水を適量添加して、固形分40質量%のオキサゾリン系架橋剤(B-3)溶液を調整した。架橋剤B-3の固形分相当の酸価は39.8mgKOH/gであった。
【0071】
(架橋剤B-4の重合)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ製、デュラネートTPA)65.0質量部、N-メチルピロリドン17.5質量部、3,5-ジメチルピラゾール29.2質量部、数平均分子量500のポリエチレングリコールモノメチルエーテル21.9質量部を加えて、窒素雰囲気下、70℃で2時間保持した。その後、トリメチロールプロパン4.0質量部を滴下した。反応液の赤外スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収が消失したことを確認後、水280.0質量部を加えた。水を適量添加して、固形分40質量%のブロックポリイソシアネート系架橋剤(B-4)溶液を調整した。架橋剤B-4の固形分相当の酸価は0.0mgKOH/gであった。
【0072】
( 架橋剤B-5の重合)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネートを原
料としたイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物( 旭化成ケミカルズ製
、デュラネートTPA)66.04質量部、N-メチルピロリドン17.50質量部に3,5-ジメチルピラゾール 25.19質量部を滴下し、素雰囲気下、70℃ で1時間保持した。その後、ジメチロールプロピオン酸5.27質量部を滴下した。反応液の赤外スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収が消失したことを確認後、N,N-ジメチルエタノールアミン5.59質量部、水132.5質量部を加えた。水を適量添加して、固形分40質量%のブロックポリイソシアネート系架橋剤(B-5)溶液を調整した。架橋剤B-5の固形分相当の酸価は22.8mgKOH/gであった。
【0073】
(架橋剤B-6の合成)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネート59.5質量部、ネオペンチルグリコール6.8質量部、ジメチロールブタン酸16.6質量部、及び溶剤としてN-メチルピロリドン20.0質量部を投入し、窒素雰囲気下、80℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液に2-ブタノンオキシム30.3質量部を滴下し、さらに窒素雰囲気下、80℃で1時間保持した。その後、反応液の赤外スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収が消失したことを確認後、この反応液を40℃にまで降温して、トリエチルアミン11.9質量部を加えた。そのまま1時間攪拌後、水を適量添加して、固形分40質量%のブロックイソシアネート系架橋剤(B-6)溶液を調整した。架橋剤B-6の固形分相当の酸価は55.4mgKOH/gであった。
【0074】
(ポリエステル樹脂C-1の製造)
攪拌機、温度計、および部分還流式冷却器を具備するステンレススチール製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート194.2質量部、ジメチルイソフタレート184.5質量部、ジメチル-5-ナトリウムスルホイソフタレート14.8質量部、ジエチレングリコール233.5質量部、エチレングリコール136.6質量部、およびテトラ-n-ブチルチタネート0.2質量部を仕込み、160℃から220℃の温度で4時間かけてエステル交換反応を行なった。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、30Paの減圧下で1時間30分反応させ、共重合ポリエステル樹脂(C-1)を得た。得られたポリエステル樹脂(C-1)は、淡黄色透明であった。ポリエステル樹脂(C-1)の還元粘度を測定したところ,0.70dl/gであった。
さらに、攪拌機、温度計と還流装置を備えた反応器に、ポリエステル樹脂(C-1)15質量部、エチレングリコールn-ブチルエーテル15質量部を入れ、110℃で加熱、攪拌し樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、水70質量部をポリエステル溶液に攪拌しつつ徐々に添加し、添加後、液を攪拌しつつ室温まで冷却した。水を適量添加して、固形分30質量%のポリエステル樹脂(C-1)溶液を調整した。ポリエステル樹脂C-1の固形分相当の酸価は0.9mgKOH/gであった。
【0075】
(ポリエステル樹脂C-2の製造)
攪拌機、温度計、および部分還流式冷却器を具備するステンレススチール製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート194.2質量部、ジメチルイソフタレート194.2質量部、ジエチレングリコール233.5質量部、エチレングリコール136.6質量部、およびテトラ-n-ブチルチタネート0.2質量部を仕込み、160℃から220℃の温度で4時間かけてエステル交換反応を行なった。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、30Paの減圧下で1時間反応させた。さらに、窒素を系中に導入して減圧を解除しつつ、系内を200℃まで冷却した。系中に攪拌しつつ無水トリメリット酸28.0質量部を添加してさらに2時間付加反応させて、ポリエステル樹脂(C-2)を得た。得られたポリエステル樹脂(C-2)は、淡黄色透明であった。ポリエステル樹脂(C-2)の還元粘度を測定したところ,0.35dl/gであった。
さらに、攪拌機、温度計と還流装置を備えた反応器に、ポリエステル樹脂(C-2)15質量部、テトラヒドロフラン15質量部を入れ、70℃で加熱、攪拌し樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、トリエチルアミン31質量部と水70質量部をポリエステル溶液に攪拌しつつ徐々に添加した。添加後、系中を減圧させて、テトラヒドロフランを除去し、室温まで冷却した。水を適量添加して、固形分30質量%のポリエステル樹脂(C-2)溶液を調整した。ポリエステル樹脂C-2の固形分相当の酸価は37.4mgKOH/gであった。
【0076】
(アクリル樹脂D-1の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテル40質量部を入れ、100℃に加熱保持して、ノルマルブチルアクリレート60.0質量部、メチルメタクリレート42.0質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート2.9質量部、アクリル酸5.7質量部及びアゾビスイソブチロニトリル5質量部の混合物を3時間かけて滴下した。滴下後、同温度で2時間熟成させた。その後、この反応液を40℃にまで降温して、トリエチルアミン8.4質量部及び水165質量部を攪拌しながら添加した。そのまま1時間攪拌後、水を適量添加して、固形分35質量%のアクリル樹脂(D-1)溶液を調整した。このアクリル樹脂D-1の固形分相当の酸価は40.1mgKOH/gであった。
【0077】
(基材用ポリエステル樹脂E-1の製造)
(三酸化アンチモン溶液の調製)
三酸化アンチモン(シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製)をエチレングリコールとともにフラスコに仕込み、150℃で4時間攪拌して溶解後、室温まで冷却して、20g/lの三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液を調製した。
【0078】
(基材用ポリエステル樹脂E-1の重合)
攪拌機付き2リッターステンレス製オートクレーブに高純度テレフタル酸とその2倍モル量のエチレングリコールを仕込み、トリエチルアミンを酸成分に対して0.3モル%加え、0.25MPaの加圧下250℃にて水を系外に留去しながらエステル化反応を行いエステル化率が約95%のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートおよびオリゴマーの混合物(以下BHET混合物という)を得た。このBHET混合物に重縮合触媒として、
上記三酸化アンチモン溶液を用い、ポリエステル中の酸成分に対してアンチモン原子として0.04モル%になるように加え、次いで、窒素雰囲気下、常圧にて250℃で10分間攪拌した。その後、60分間かけて280℃まで昇温しつつ反応系の圧力を徐々に下げて13.3Pa(0.1Torr)として、さらに280℃、13.3Paで68分間重縮合反応を実施して、固有粘度(IV)(溶媒:フェノール/テトラクロロエタン=60/40)が0.61dl/であり、粒子を実質上含有していないポリエステル樹脂E-1を得た。
【0079】
(基材用ポリエステル樹脂E-2の製造)
(アルミニウム化合物溶液の調製例)
塩基性酢酸アルミニウム(ヒドロキシアルミニウムジアセテート;シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製)の20g/l水溶液に対して等量(容量比)のエチレングリコールをともにフラスコに仕込み、室温で6時間攪拌した後、減圧(133Pa)下、70~90℃で数時間攪拌しながら系から水を留去し、20g/lのアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液を調製した。
【0080】
(リン化合物溶液の調製例)
リン化合物として3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸 ジエチル(Irganox1222(BASF社製))をエチレングリコールと
ともにフラスコに仕込み、窒素置換下攪拌しながら液温160℃で25時間加熱し、50g/lのリン化合物のエチレングリコール溶液を調製した。
【0081】
(アルミニウム化合物の溶液とリン化合物の溶液の混合物の調製)
上記アルミニウム化合物の調製例および上記リン化合物の調整例で得られたそれぞれのエチレングリコール溶液をフラスコに仕込み、アルミニウム原子とリン原子がモル比で1:2となるように室温で混合し、1日間攪拌して触媒溶液を調製した。
【0082】
(基材用ポリエステル樹脂E-2の重合)
重縮合触媒として三酸化アンチモン溶液の代わりに、前述のアルミニウム化合物の溶液とリン化合物の溶液の混合物を用いて、ポリエステル中の酸成分に対してアルミニウム原子およびリン原子としてそれぞれ0.014モル%および0.028モル%になるように
加えた以外は、ポリエステル樹脂E-1と同様に重合した。但し、重合時間は68分間とすることで、固有粘度(IV)が0.61dl/であり、粒子を実質上含有していないポリエステル樹脂E-2を得た。
【0083】
(実施例1)
(1)塗布液の調整
水とイソプロパノールの混合溶媒(80/20質量部比)に、下記の塗剤を混合し、ポリウレタン樹脂(A-1)溶液/架橋剤(B-1)溶液の固形分質量比が70/30になる塗布液を作成した。

混合溶剤(水/イソプロパノール) 78.26質量部
ポリウレタン樹脂(A-1)溶液 14.00質量部
架橋剤(B-1)溶液 5.25質量部
粒子I 0.12質量部
(平均粒径100nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
粒子II 1.87質量部
(平均粒径40~50nmのシリカゾル、固形分濃度30質量%)
界面活性剤 0.50質量部
(シリコーン系、固形分濃度10質量%)
【0084】
(2)積層ポリエステルフィルムの製造
フィルム原料ポリマーとして、ポリエステル樹脂E-1の樹脂ペレットを、133Paの減圧下、135℃で6時間乾燥した。その後、押し出し機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出しして、表面温度20℃に保った回転冷却金属ロール上で急冷密着固化させ、未延伸PETシートを得た。
【0085】
この未延伸PETシートを加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して、一軸延伸PETフィルムを得た。
【0086】
次いで、前記塗布液をPETフィルムの片面に、最終(二軸延伸後)の乾燥後の塗布量が0.13g/mになるように塗布した。塗布液を乾燥後、110℃で幅方向に4.0倍に延伸し、フィルムの幅方向を固定した状態で、230℃で5秒間加熱した。さらに3%の幅方向の弛緩処理を行ない、100μmの積層ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0087】
(実施例2)
ポリウレタン樹脂を(A-2)とし、ポリウレタン樹脂と架橋剤の比率を60/40(質量比)に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0088】
(実施例3)
ポリウレタン樹脂を(A-3)とし、ポリウレタン樹脂と架橋剤の比率を50/50(質量比)に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0089】
(実施例4)
架橋剤を(B-2)とし、ポリウレタン樹脂と架橋剤の比率を60/40(質量比)に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0090】
(実施例5)
架橋剤を(B-3)とし、ポリウレタン樹脂と架橋剤の比率を60/40(質量比)に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0091】
(実施例6)
ポリウレタン樹脂(A-1)、架橋剤(B-1)以外に架橋剤(B-4)を併用し、比率を(A-1)/(B-1)/(B-4)=55/35/10(質量比)に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0092】
(実施例7)
ポリウレタン樹脂(A-1)、架橋剤(B-1)以外にポリエステル樹脂(C-1)を併用し、比率を(A-1)/(B-1)/(C-1)=36/24/40(質量比)に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0093】
(実施例8)
ポリウレタン樹脂(A-1)、架橋剤(B-1)以外にポリエステル樹脂(C-1)を併用し、比率を(A-1)/(B-1)/(C-1)=24/16/60(質量比)に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0094】
(実施例9)
フィルム原料ポリマーとして、ポリエステル樹脂E-2の樹脂ペレットを使用した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0095】
(実施例10)
ポリウレタン樹脂を(A-8)に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0096】
(比較例1)
ポリウレタン樹脂(A-1)のみを使用し、架橋剤(B-1)を使用しない以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0097】
(比較例2)
架橋剤(B-1)のみを使用し、ポリウレタン樹脂(A-1)を使用しない以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0098】
(比較例3)
ポリウレタン樹脂を(A-4)に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0099】
(比較例4)
ポリウレタン樹脂を(A-5)とし、ポリウレタン樹脂と架橋剤の比率を60/40(質量比)に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0100】
(比較例5)
ポリウレタン樹脂を(A-6)とし、ポリウレタン樹脂と架橋剤の比率を50/50(質量比)に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0101】
(比較例6)
ポリウレタン樹脂を(A-7)、架橋剤を(B-5)に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0102】
(比較例7)
架橋剤を(B-5)とし、ポリウレタン樹脂と架橋剤の比率を75/25(質量比)に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0103】
(比較例8)
架橋剤を(B-6)に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0104】
(比較例9)
ポリウレタン樹脂(A-1)を、ポリエステル樹脂(C-2)に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0105】
(比較例10)
ポリウレタン樹脂(A-1)を、アクリル樹脂(D-1)に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0106】
表1に各実施例、比較例の評価結果を整理する。
【0107】
表1に示すように、各実施例においては、ヘイズ、ブロッキング耐性、UV硬化型インキとの密着性、ハードコート層との密着性、および耐湿熱性において満足できる結果が得られた。一方、比較例1~10では、前記の少なくともいずれかの評価項目において満足できるものではなかった。
【0108】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明によれば、光学用途、包装用途、ラベル用途などあらゆる分野において好適に使用できる積層ポリエステルフィルムの提供が可能となった。