(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】ガラス繊維用ガラス組成物、ガラス繊維及びガラス繊維強化樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
C03C 13/02 20060101AFI20230111BHJP
B29C 70/12 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
C03C13/02
B29C70/12
(21)【出願番号】P 2022553609
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(86)【国際出願番号】 JP2022023492
【審査請求日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2021107958
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003975
【氏名又は名称】日東紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】貫井 洋佑
(72)【発明者】
【氏名】小向 達也
【審査官】大塚 晴彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-039320(JP,A)
【文献】特開2014-234319(JP,A)
【文献】特表2007-507413(JP,A)
【文献】特表2015-511921(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0244858(US,A1)
【文献】特開昭49-047408(JP,A)
【文献】特表2013-530110(JP,A)
【文献】特開昭53-102325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00 -14/00
B29C 70/06 -70/24
B29C 70/28
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、45.60~59.00質量%の範囲のSiO
2と、
10.00~16.00質量%の範囲のAl
2O
3と、
17.00~25.00質量%の範囲のCaOと、
0.01~9.50質量%の範囲のTiO
2と、
0.03~7.00質量%の範囲のP
2O
5と、
0.00~9.50質量%の範囲のZnOと、
0.00~2.00質量%の範囲のSO
3と、
合計で、0.01~11.50質量%の範囲のZnO及びSO
3と、
合計で、0.00~2.00質量%の範囲のNa
2O、K
2O及びLi
2Oとを含み、
前記SiO
2の含有率SI、前記Al
2O
3の含有率A、前記CaOの含有率C、前記TiO
2の含有率T、前記P
2O
5の含有率P、前記ZnOの含有率Z、及び、前記SO
3の含有率SOが次式(1)を満たすことを特徴とする、ガラス繊維用ガラス組成物。
15.0≦(SI/C)
2×(A/T)×{P/(SO+Z)}
1/4≦690.1 ・・・(1)
【請求項2】
請求項1記載のガラス繊維用ガラス組成物において、前記SiO
2の含有率SI、前記Al
2O
3の含有率A、前記CaOの含有率C、前記TiO
2の含有率T、前記P
2O
5の含有率P、前記ZnOの含有率Z、及び、前記SO
3の含有率SOが次式(2)を満たすことを特徴とする、ガラス繊維用ガラス組成物。
33.5≦(SI/C)
2×(A/T)×{P/(SO+Z)}
1/4≦666.7 ・・・(2)
【請求項3】
請求項1記載のガラス繊維用ガラス組成物において、前記SiO
2の含有率SI、前記Al
2O
3の含有率A、前記CaOの含有率C、前記TiO
2の含有率T、前記P
2O
5の含有率P、前記ZnOの含有率Z、及び、前記SO
3の含有率SOが次式(3)を満たすことを特徴とする、ガラス繊維用ガラス組成物。
47.8≦(SI/C)
2×(A/T)×{P/(SO+Z)}
1/4≦579.8 ・・・(3)
【請求項4】
請求項1記載のガラス繊維用ガラス組成物において、前記SiO
2の含有率SI、前記Al
2O
3の含有率A、前記CaOの含有率C、前記TiO
2の含有率T、前記P
2O
5の含有率P、前記ZnOの含有率Z、及び、前記SO
3の含有率SOが次式(4)を満たすことを特徴とする、ガラス繊維用ガラス組成物。
91.5≦(SI/C)
2×(A/T)×{P/(SO+Z)}
1/4≦552.0 ・・・(4)
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項記載のガラス繊維用ガラス組成物からなることを特徴とする、ガラス繊維。
【請求項6】
請求項5記載のガラス繊維を含むことを特徴とする、ガラス繊維強化樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維用ガラス組成物、ガラス繊維及びガラス繊維強化樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、Eガラス繊維(Eガラス組成を備えるガラス繊維)を用いたガラス繊維強化樹脂成形品は、軽量化に伴う燃費の向上により環境負荷軽減に寄与することから、自動車部品等の金属代替材料として広く利用されている。
【0003】
近年、リサイクルに対する関心の高まりに伴い、さらなる環境負荷軽減を実現するために、ガラス繊維強化樹脂成形品からEガラス繊維を取り出し、再利用することが検討されている。ガラス繊維強化樹脂成形品からガラス繊維を取り出す方法として、例えば、ガラス繊維強化プラスチック廃棄物のチップを、熱分解室において320~600℃の熱分解温度で乾留し、熱分解後に分解ガスと水とを接触させて分解生成物の液体成分を回収するとともに、ガラス繊維を回収する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、ガラス繊維強化プラスチック廃棄物等のガラス繊維強化樹脂成形品から回収されたEガラス繊維(以下、回収ガラス繊維ということがある)を用いて射出成形によりガラス繊維強化樹脂成形品を製造する際には、作業性が悪化するという問題がある。前記作業性の悪化とは、具体的には、回収ガラス繊維と樹脂とを混練して射出成形に用いる樹脂ペレットを作製するときに、回収ガラス繊維が混練機内で詰まってしまい、樹脂ペレットを作製することができないことを意味する。
【0006】
本発明者らは、前記問題について検討した結果、回収ガラス繊維を含むガラス原料を溶融して溶融ガラスとし、該溶融ガラスを紡糸して、ガラス繊維とすることにより、前記作業性の悪化は解消されることを見出した。
【0007】
しかしながら、回収ガラス繊維を含むガラス原料を用いて、上述のようにして得られるガラス繊維は繊維径にばらつきが生じるという不都合がある。
【0008】
本発明者らは、前記不都合について鋭意検討した結果、回収ガラス繊維には、ガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるEガラス繊維以外の添加物に由来する物質(特に無機物)が表面に残存しており、回収ガラス繊維を含むガラス組成物をガラス原料としてガラス繊維を製造すると、該添加物に由来する物質に起因して該ガラス繊維の組成に変動が生じ、この結果、ガラス繊維の繊維径にばらつきが生じることを知見した。
【0009】
本発明者らは、前記知見に基づきさらに検討を重ねた結果、前記添加物に由来する物質と同一の物質は、ガラス原料となるガラス繊維鉱物材料にも不純物として含まれ得ること、不純物として前記添加物に由来する物質と同一の物質を含むガラス繊維鉱物材料を用いてガラス原料を調合したときには、該ガラス原料から製造されたガラス繊維も繊維径にばらつきが生じることを知見した。
【0010】
そこで、本発明は、ガラス繊維用ガラス組成物であって、前記添加物に由来する物質と同一の物質の影響を受けても、ガラス繊維の繊維径のばらつきを抑制することができるガラス繊維用ガラス組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するために、本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、45.60~59.00質量%の範囲のSiO2と、10.00~16.00質量%の範囲のAl2O3と、17.00~25.00質量%の範囲のCaOと、0.01~9.50質量%の範囲のTiO2と、0.03~7.00質量%の範囲のP2O5と、0.00~9.50質量%の範囲のZnOと、0.00~2.00質量%の範囲のSO3と、合計で、0.01~11.50質量%の範囲のZnO及びSO3と、合計で、0.00~2.00質量%の範囲のNa2O、K2O及びLi2Oとを含み、前記SiO2の含有率SI、前記Al2O3の含有率A、前記CaOの含有率C、前記TiO2の含有率T、前記P2O5の含有率P、前記ZnOの含有率Z、及び、前記SO3の含有率SOが次式(1)を満たすことを特徴とする。
15.0≦(SI/C)2×(A/T)×{P/(SO+Z)}1/4≦690.1 ・・・(1)
【0012】
本発明のガラス繊維用ガラス組成物によれば、前記SiO2の含有率、前記Al2O3の含有率、前記CaOの含有率、前記TiO2の含有率、前記P2O5の含有率、前記ZnOの含有率、及び、前記SO3の含有率が、それぞれガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し前記範囲にあり、しかも前記SiO2の含有率SI、前記Al2O3の含有率A、前記CaOの含有率C、前記TiO2の含有率T、前記P2O5の含有率P、前記ZnOの含有率Z、及び、前記SO3の含有率SOが前記式(1)を満たすことにより、Eガラス繊維を含むガラス繊維強化樹脂成形品から回収されたガラス繊維の表面に残存する添加物由来の物質と同一の物質の影響を受けても、本発明のガラス繊維用ガラス組成物からなるガラス繊維が円形断面を備える場合にその繊維径のばらつきを抑制することができる。
【0013】
また、本発明のガラス繊維用ガラス組成物によれば、該ガラス繊維用ガラス組成物からなるガラス繊維の強度、熱膨張係数、弾性率及び屈折率を、通常のEガラス繊維と同等とすることができる。前記熱膨張係数及び前記弾性率は、後述の方法で測定することができる。
【0014】
ここで、通常のEガラス繊維とは、Eガラス組成を備えるガラス繊維である。前記Eガラス組成とは、ガラス繊維の全量に対し52.0~56.0質量%の範囲のSiO2と、12.0~16.0質量%の範囲のAl2O3と、合計で20.0~25.0質量%の範囲のMgO及びCaOと、5.0~10.0質量%の範囲のB2O3とを含む組成である。
【0015】
本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、前記SiO2の含有率SI、前記Al2O3の含有率A、前記CaOの含有率C、前記TiO2の含有率T、前記P2O5の含有率P、前記ZnOの含有率Z、及び、前記SO3の含有率SOが、次式(2)を満たすことが好ましく、次式(3)を満たすことがより好ましく、次式(4)を満たすことがさらに好ましい。
33.5≦(SI/C)2×(A/T)×{P/(SO+Z)}1/4≦666.7 ・・・(2)
47.8≦(SI/C)2×(A/T)×{P/(SO+Z)}1/4≦579.8 ・・・(3)
91.5≦(SI/C)2×(A/T)×{P/(SO+Z)}1/4≦552.0 ・・・(4)
【0016】
本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、前記SiO2の含有率SI、前記Al2O3の含有率A、前記CaOの含有率C、前記TiO2の含有率T、前記P2O5の含有率P、前記ZnOの含有率Z、及び、前記SO3の含有率SOが、前記式(2)を満たすことにより、ガラス繊維が円形断面を備える場合にその繊維径のばらつきをさらに抑制することができる。また、本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、前記SI、A、C、T、P、Z及びSOが、前記式(3)を満たすことにより、ガラス繊維が円形断面を備える場合にその繊維径のばらつきをさらに抑制することができることに加えて、ガラス繊維が扁平断面を備える場合に、その短径に対する長径の比(長径/短径、以下、異形比ということがある)のばらつきを抑制することができる。さらに、また、本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、前記SI、A、C、T、P、Z及びSOが、前記式(4)を満たすことにより、ガラス繊維が円形断面を備える場合にその繊維径のばらつきをさらに抑制することができ、ガラス繊維が扁平断面を備える場合にその異形比のばらつきを抑制することができることに加えて、ガラス繊維の熱膨張係数を通常のEガラス繊維の熱膨張係数の±3%以内とすることができる。なお、通常のEガラス繊維の熱膨張係数は、5.6ppm/℃である。
【0017】
また、本発明のガラス繊維は、前記いずれかのガラス繊維用ガラス組成物からなることを特徴とする。
【0018】
また、本発明のガラス繊維強化樹脂成形品は、本発明のガラス繊維を含むことを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0020】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、45.60~59.00質量%の範囲のSiO2と、10.00~16.00質量%の範囲のAl2O3と、17.00~25.00質量%の範囲のCaOと、0.01~9.50質量%の範囲のTiO2と、0.03~7.00質量%の範囲のP2O5と、0.00~9.50質量%の範囲のZnOと、0.00~2.00質量%の範囲のSO3と、合計で、0.01~11.50質量%の範囲のZnO及びSO3と、合計で、0.00~2.00質量%の範囲のNa2O、K2O及びLi2Oとを含み、前記SiO2の含有率SI、前記Al2O3の含有率A、前記CaOの含有率C、前記TiO2の含有率T、前記P2O5の含有率P、前記ZnOの含有率Z、及び、前記SO3の含有率SOが次式(1)を満たす。
15.0≦(SI/C)2×(A/T)×{P/(SO+Z)}1/4≦690.1 ・・・(1)
【0021】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、SiO2の含有率が45.60質量%未満であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の機械的強度が大きく低下し、該ガラス繊維が有する、ガラス繊維強化樹脂成形品における補強材としての機能が損なわれる。また、該ガラス繊維が酸性環境下におかれた際に劣化し易くなる。一方、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、SiO2の含有率が59.00質量%超であると、高温での粘性が高くなるため、ガラス原材料を溶融させる温度が高くなり、製造コストの観点から、工業的なガラス繊維製造に適さなくなる。
【0022】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、SiO2の含有率が、好ましくは、47.60~57.90質量%の範囲であり、より好ましくは、48.60~56.90質量%の範囲であり、さらに好ましくは、49.60~56.40質量%の範囲であり、特に好ましくは、50.60~55.90質量%の範囲であり、最も好ましくは、51.60~55.40質量%の範囲である。
【0023】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、Al2O3の含有率が10.00質量%未満であると、失透しやすくなる。一方、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、Al2O3の含有率が16.00質量%超であると、高温の粘度が高くなるため、ガラス原材料を溶融する温度が高くなり、製造コストの観点から、工業的なガラス繊維製造に適さなくなる。
【0024】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、Al2O3の含有率が、好ましくは、10.60~15.40質量%の範囲であり、より好ましくは、10.10~15.10質量%の範囲であり、さらに好ましくは、11.10~14.90質量%の範囲であり、特に好ましくは、11.90~14.70質量%の範囲であり、最も好ましくは、12.40~14.40質量%の範囲である。
【0025】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、CaOの含有率が17.0質量%未満であると、高温時のガラスの粘性が高くなるため、溶融性が悪化する。一方、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、CaOの含有率が25.00質量%超であると、ブッシング中で失透物を生成しやすくなり、紡糸中における切断の原因となったり、失透物を含んだガラス繊維の原因となったりする。
【0026】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、CaOの含有率が、好ましくは、18.10~24.40質量%の範囲であり、より好ましくは、19.10~23.90質量%の範囲であり、さらに好ましくは、19.60~23.40質量%の範囲であり、特に好ましくは、20.10~23.10質量%の範囲であり、最も好ましくは、20.60~22.90質量%の範囲である。
【0027】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、TiO2の含有率が0.01質量%未満であると、高温での粘性が高くなるため、ガラス原材料を溶融させる温度が高くなり、製造コストの観点から、工業的なガラス繊維製造に適さなくなる。一方、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、TiO2の含有率が9.50質量%超であると、ガラス繊維用ガラス組成物の弾性率が上昇してしまい、標準的なEガラスの弾性率と著しく乖離してしまう。また、ガラス繊維用ガラス組成物の液相温度が大幅に増加するため、安定したガラス繊維の製造を行うことができなくなる。また、ガラスが着色され、標準的なEガラスの屈折率と大きく乖離してしまう。
【0028】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、TiO2の含有率が、好ましくは、0.10~4.90質量%の範囲であり、より好ましくは、0.20~3.90質量%の範囲であり、さらに好ましくは、0.30~2.40質量%の範囲であり、特に好ましくは、0.50~1.40質量%の範囲であり、最も好ましくは、0.60~1.10質量%の範囲である。
【0029】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、P2O5の含有率が7.00質量%超であると、ガラス繊維用ガラス組成物の液相温度が大幅に増加するため、安定したガラス繊維の製造を行うことができなくなる。
【0030】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、P2O5の含有率が、好ましくは、0.20~4.90質量%の範囲であり、より好ましくは、0.30~2.90質量%の範囲であり、さらに好ましくは、0.40~1.90質量%の範囲であり、特に好ましくは、0.50~1.40質量%の範囲であり、最も好ましくは、0.70~1.20質量%の範囲である。
【0031】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、ZnOの含有率が9.50質量%超であると、ガラス組成用ガラス組成物の液相温度が大幅に増加し、安定したガラス繊維の製造を行えなくなる。また、通常のEガラスの弾性率及び屈折率との乖離が大きくなる。
【0032】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、ZnOの含有率が、好ましくは、0.20~4.90質量%の範囲であり、より好ましくは、0.30~2.90質量%の範囲であり、さらに好ましくは、0.40~1.90質量%の範囲であり、特に好ましくは、0.50~1.40質量%の範囲であり、最も好ましくは、0.70~1.20質量%の範囲である。
【0033】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、SO3の含有率が2.00質量%超であると、リボイル泡が生成しやすくなり、ガラス繊維製造中の糸切れやホローファイバーの原因となる。ここで、リボイル泡とは、溶融ガラスの温度が上昇する等により、溶融ガラス中に溶存するガスの溶解度が低下することで、再沸する気泡のことである。また、ホローファイバーとは、気泡が含まれた溶融ガラスを紡糸して得られ、気泡に起因する空洞が内部に存在するガラス繊維である。ガラス繊維内部に空洞が存在することは、ガラス繊維の強度低下の原因となる。
【0034】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、SO3の含有率が、好ましくは、0.01~1.40質量%の範囲であり、より好ましくは、0.05~0.90質量%の範囲であり、さらに好ましくは、0.10~0.40質量%の範囲である。
【0035】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、ZnO及びSO3の含有率が合計で0.01質量%未満であると、ガラスの清澄が不十分となり、ガラス繊維内に泡が含まれ易くなり、この泡に起因するガラス繊維切断の可能性が高くなり生産性を悪化させる。一方、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、ZnO及びSO3の含有率が合計で11.50質量%超であると、未溶融成分が残存した状態でのガラス繊維の紡糸が生じ易くなり、該未溶融成分がガラス繊維切断の要因となり生産性を悪化させる。
【0036】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、ZnO及びSO3の含有率が、合計で、好ましくは、0.10~3.90質量%の範囲であり、より好ましくは、0.40~2.40質量%の範囲であり、さらに好ましくは、0.60~2.20質量%の範囲であり、特に好ましくは、0.80~1.90質量%の範囲であり、最も好ましくは、1.10~1.60質量%の範囲である。
【0037】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、P2O5、ZnO、SO3、TiO2は、ガラス原料として用いられる、ガラス繊維鉱物材料に含まれる不純物や、ガラス溶融時にガラス原料に加えて用いられる清澄剤に起因する。また、ガラス原料の一部に、Eガラス繊維を含むガラス繊維強化樹脂成形品から回収されたガラス繊維を含む場合、前記ガラス繊維強化樹脂成形品に含まれ、ガラス繊維表面に残存する添加物に起因しうる。ここで、前記ガラス繊維強化樹脂成形品に用いられる樹脂としては、後述する本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品を形成する樹脂、特に熱可塑性樹脂を挙げることができる。また、前記添加物としては、難燃剤(例えば、リン系難燃剤、無機系難燃剤)、着色剤(例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、カーボンブラック)、酸化防止剤(例えば、硫黄系抗酸化剤、リン系抗酸化剤)、可塑剤(例えば、リン酸系可塑剤)、充填剤(例えば、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム)、紫外線吸収剤、帯電防止剤、改質剤等を挙げることができる。
【0038】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、Na2O、K2O及びLi2Oの含有率が、合計で、2.00質量%超であると、該ガラス繊維用ガラス組成物からなるガラス繊維の強度が低下し、通常のEガラス繊維の強度との乖離が大きくなる。
【0039】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、Na2O、K2O及びLi2Oの含有率が、合計で、好ましくは、0.11~0.40質量%の範囲であり、より好ましくは、0.21~1.20質量%の範囲であり、さらに好ましくは、0.31~0.90質量%の範囲であり、特に好ましくは、0.41~0.79質量%の範囲であり、最も好ましくは、0.51~0.59質量%の範囲である。
【0040】
さらに、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、0.00~8.00質量%の範囲のB2O3と、0.00~3.00質量%の範囲のMgOと、0.00~2.00質量%の範囲のFe2O3と、0.00~2.00質量%の範囲のF2とを含んでいてもよい。
【0041】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、B2O3の含有率が、好ましくは、2.60~7.40質量%の範囲であり、より好ましくは、3.10~6.90質量%の範囲であり、さらに好ましくは、3.60~6.70質量%の範囲であり、特に好ましくは、4.10~6.70質量%の範囲であり、殊に好ましくは、4.60~6.40質量%の範囲であり、とりわけ好ましくは、5.10~6.40質量%の範囲であり、最も好ましくは、5.60~6.40質量%の範囲である。
【0042】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、MgOの含有率が、好ましくは、0.30~2.40質量%の範囲であり、より好ましくは、0.60~1.90質量%の範囲であり、さらに好ましくは、0.70~1.40質量%の範囲であり、特に好ましくは、0.80~1.20質量%の範囲であり、最も好ましくは、0.90~1.00質量%の範囲である。
【0043】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、Fe2O3の含有率が、好ましくは、0.10~0.90質量%の範囲であり、より好ましくは、0.10~0.40質量%の範囲である。
【0044】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、F2の含有率が、好ましくは、0.10~1.90質量%の範囲であり、より好ましくは、0.10~0.90質量%の範囲である。
【0045】
さらにまた、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ZrO2と、Cr2O3と、SnO2とを含んでいてもよい。
【0046】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、ZrO2の含有率が、好ましくは、0.50質量%未満の範囲であり、より好ましくは、0.40質量%未満の範囲であり、さらに好ましくは、0.20質量%未満の範囲であり、特に好ましくは、0.10質量%未満の範囲であり、最も好ましくは、0.05質量%未満の範囲である。
【0047】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、Cr2O3の含有率が、好ましくは、0.10質量%未満の範囲であり、より好ましくは、0.05質量%未満の範囲である。本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物からなるガラス繊維は、Cr2O3の含有量が前記範囲であれば、複合材料などの成形品としたとき、ガラスの着色による色ムラ、色調変化、外観不良などの発生を抑制することができる。
【0048】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、SnO2の含有率が、好ましくは、1.00質量%未満の範囲であり、より好ましくは0.50質量%未満の範囲であり、さらに好ましくは、0.40質量%未満の範囲であり、特に好ましくは、0.20質量%未満の範囲であり、殊に好ましくは、0.10質量%未満の範囲であり、最も好ましくは、0.05質量%未満の範囲である。
【0049】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、原材料に起因する不純物として、Ba、Sr、Co、Ni、Cu、Mo、W、Ce、Y、La、Bi、Gd、Pr、Sc、又は、Ybの酸化物を、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、合計で1.00質量%未満の範囲で含んでもよい。特に本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物が、不純物として、BaO、SrO、CoO、NiO、CuO、MoO3、WO3、CeO2、Y2O3、La2O3、Bi2O3、Gd2O3、Pr2O3、Sc2O3、又は、Yb2O3を含む場合、その含有率が、それぞれ独立に好ましくは0.50質量%未満の範囲であり、より好ましくは、0.40質量%未満の範囲であり、さらに好ましくは、0.20質量%未満の範囲であり、特に好ましくは、0.10質量%未満の範囲であり、殊に好ましくは、0.05質量%未満の範囲であり、最も好ましくは、0.01質量%未満の範囲である。
【0050】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、複数種類の鉱石又は鉱石から精製された材料(鉱石由来精製材料ということもある)から構成されるガラス繊維鉱物材料を含むガラス原料が、混合され、溶融される等して均質化されたものである。前記ガラス原料は、Eガラス繊維を含むガラス繊維強化樹脂成形品から回収されたガラス繊維(回収ガラス繊維)を含んでもよい。ここで、環境負荷低減の観点からは、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、Eガラス繊維を含むガラス繊維強化樹脂成形品から回収されたガラス繊維を含むガラス原料が均質化されたものであることが好ましい。前記ガラス繊維鉱物原料は、前記ガラス繊維鉱物原料に含まれる成分と各成分の含有率及び溶融過程における各成分の揮発量に基づき、所望の組成になるように、鉱石又は鉱石由来精製材料の種類、及び、各鉱石又は鉱石由来精製材料の含有比率が決定される。また、ガラス原料が、前記ガラス繊維鉱物原料及び前記回収ガラス繊維を含む場合には、前記ガラス繊維鉱物原料及び前記回収ガラス繊維は、前記ガラス繊維鉱物原料に含まれる成分と各成分の含有率、前記回収ガラス繊維に含まれる成分と各成分の含有率、及び、溶融過程における各成分の揮発量に基づき、所望の組成になるように、鉱石又は鉱石由来精製材料の種類、各鉱石又は鉱石由来精製材料の含有比率、及び、前記ガラス繊維鉱物原料と回収ガラス繊維との含有比率が決定される。
【0051】
前記鉱石としては、珪砂、長石、クレー、石灰石等を挙げることができる。また、前記鉱物由来精製材料としては、シリカパウダー、ドロマイト、タルク、クレー、アルミナ、ソーダ灰等を挙げることができる。
【0052】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、前記SiO2の含有率SI、前記Al2O3の含有率A、前記CaOの含有率C、前記TiO2の含有率T、前記P2O5の含有率P、前記ZnOの含有率Z、及び、前記SO3の含有率SOは、次式(1)を満たし、次式(2)を満たすことが好ましく、次式(3)を満たすことがより好ましく、次式(4)を満たすことがとりわけ好ましい。また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物からなるガラス繊維の物性が、通常のEガラス繊維の物性により近づくこという観点からは、前記SI、A、C、T、P、Z及びSOは、次式(5)を満たすことが特に好ましく、次式(6)を満たすことが殊に好ましく、次式(7)を満たすことが最も好ましい。
15.0≦(SI/C)2×(A/T)×{P/(SO+Z)}1/4≦690.1 ・・・(1)
33.5≦(SI/C)2×(A/T)×{P/(SO+Z)}1/4≦666.7 ・・・(2)
47.8≦(SI/C)2×(A/T)×{P/(SO+Z)}1/4≦579.8 ・・・(3)
91.5≦(SI/C)2×(A/T)×{P/(SO+Z)}1/4≦552.0 ・・・(4)
152.6≦(SI/C)2×(A/T)×{P/(SO+Z)}1/4≦429.8 ・・・(5)
194.6≦(SI/C)2×(A/T)×{P/(SO+Z)}1/4≦429.8 ・・・(6)
245.2≦(SI/C)2×(A/T)×{P/(SO+Z)}1/4≦353.3 ・・・(7)
【0053】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、前述した各成分の含有率の測定は、軽元素であるLiについてはICP発光分光分析装置を用いて、その他の元素は波長分散型蛍光X線分析装置を用いて行うことができる。測定方法としては、まず、ガラス繊維用ガラス組成物を白金ルツボに入れ、電気炉中で1450℃の温度に6時間保持して撹拌を加えながら溶融させることにより、均質な溶融ガラスを得る。次に、得られた溶融ガラスを白金ルツボからカーボン板上に流し出してガラスカレットを作製した後、該ガラスカレットを粉砕し粉末化して、ガラス粉末とする。軽元素であるLiについては前記ガラス粉末を酸で加熱分解した後、ICP発光分光分析装置を用いて定量分析する。その他の元素は前記ガラス粉末をプレス機で円盤状に成形した後、波長分散型蛍光X線分析装置を用いて定量分析する。これらの定量分析結果を酸化物換算して各成分の含有量及び全量を計算し、これらの数値から前述した各成分の含有量(質量%)を求めることができる。
【0054】
本実施形態のガラス繊維は、前記いずれかのガラス繊維用ガラス組成物からなり、製造時において少なくとも1000m以上の長さを備える、ガラス長繊維であることが好ましい。本実施形態のガラス繊維は、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物の組成となるように調合されたガラス原料を溶融・均質化して、溶融ガラスとし、該溶融ガラスを紡糸して、ガラス繊維とすることにより製造することができる。ここで、環境負荷低減の観点からは、本実施形態のガラス繊維は、Eガラス繊維を含むガラス繊維強化樹脂成形品から回収されたガラス繊維を含むガラス原料を溶融・均質化して、溶融ガラスとし、該溶融ガラスを紡糸して、製造されることが好ましい。
【0055】
本実施形態のガラス繊維を製造する際には、まず、前述のように調合したガラス原料をガラス溶融炉に供給し、1000ポイズ温度以上の温度域、具体的には1200℃~1500℃の範囲の温度で溶融して溶融ガラスとする。そして、前記温度で溶融された溶融ガラスを、所定の温度に制御された、1~8000個のノズルチップ又は孔から吐出し、高速で巻き取ることにより引き伸ばしながら冷却し、固化することによりガラス繊維を形成することができる。
【0056】
ここで、1個のノズルチップ又は孔から吐出され、冷却・固化されたガラス単繊維(ガラスフィラメント)は、通常、真円形の断面形状を有する。一方、前記ノズルチップが、非円形形状を有し、溶融ガラスを急冷する突起部や切欠部を有する場合には、温度条件を制御することで、扁平な断面形状を有するガラスフィラメントを得ることができる。前記ガラスフィラメントが扁平な断面形状を備える場合、その形状としては、例えば、長円形、楕円形、長方形を挙げることができる。ここで、長円形とは、長方形の短辺部分を、当該短辺を直径とする半円にそれぞれ置換した形状を意味する。
【0057】
前記ガラスフィラメントの繊維径は、該ガラスフィラメントの断面形状が真円形状又は略真円形状である場合には、次のようにして測定することができる。例えば、まず、前記ガラスフィラメントをエポキシ樹脂等の樹脂に埋めて該樹脂を硬化させ、硬化した樹脂を切断してその断面を研磨する。次いで、電子顕微鏡を用いて硬化した樹脂の断面を観察し、前記断面に露出するガラスフィラメント100本以上につき、その直径を測定する。また、電子顕微鏡から得た画像を自動解析装置で画像処理することでも測定することができる。
【0058】
一方、本実施形態のガラスフィラメントがガラス繊維強化樹脂成形品に含まれる場合には、前記ガラスフィラメントの繊維径は次のようにして測定することができる。例えば、まず、ガラス繊維強化樹脂成形品の断面を研磨する。次いで、前述のガラスフィラメントのフィラメント径を測定する方法と同様にして、前記ガラスフィラメントのフィラメント径を測定する。
【0059】
また、前記ガラスフィラメントの繊維径は、該ガラスフィラメントの断面形状が扁平形状である場合には、次のようにして測定することができる。例えば、まず、前述のガラスフィラメントのフィラメント径を測定する方法と同様にして、ガラスフィラメントの断面を観察可能とした上で、ガラスフィラメント100本以上につき、その断面積を算出する。次いで、算出された断面積に基づいて換算繊維径を算出する。次いで、測定又は算出された直径又は換算繊維径の平均値を求めることで、前記ガラスフィラメントの繊維径を算出する。
【0060】
ここで、ガラスフィラメントの換算繊維径とは、ガラスフィラメントの断面形状の面積と同一の面積をもつ真円の直径を意味する。また、ガラスフィラメントの断面とは、ガラス繊維の繊維長方向に垂直な横断面を意味する。
【0061】
本実施形態のガラス繊維を構成するガラスフィラメントの繊維径又は換算繊維径は、例えば、3.0~100.0μmの範囲にあり、好ましくは、4.0~70.0μmの範囲にあり、より好ましくは、5.0~50.0μmの範囲にある。
【0062】
本実施形態のガラス繊維を構成するガラスフィラメントが扁平な断面形状を備える場合、当該断面における短径に対する長径の比(長径/短径)は、例えば、2.0~10.0の範囲にあり、好ましくは、3.0~8.0の範囲にある。
【0063】
前記ガラスフィラメントが扁平な断面形状を備えるとき、ガラス繊維の短径及び長径は、次のようにして算出することができる。例えば、まず、前述のガラスフィラメントのフィラメント径を測定する方法と同様にして、ガラスフィラメント断面を観察可能とした上で、電子顕微鏡を用いて、ガラスフィラメント100本以上につき、ガラスフィラメント断面の略中心を通る最長の辺を長径とし、該長径とガラスフィラメント断面の略中心で直交する辺を短径として、それぞれの長さを測定する。そして、前記長径又は短径の測定値の平均値を求めることで算出する。
【0064】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品は、本実施形態の前記ガラス繊維を含む。
【0065】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれる前記ガラス繊維は、種々の形態に加工されたものであってよく、前記ガラス繊維が加工されてとりうる形態としては、例えば、チョップドストランド、ロービング、カットファイバーを挙げることができる。
【0066】
前記チョップドストランドとは、所定の本数のガラスフィラメントが集束されて構成されたガラス繊維(ガラス繊維束又はガラスストランドともいう)を所定の長さに切断した形態である。前記ガラス繊維を構成するガラスフィラメントの本数(集束本数)は、好ましくは1~20000本、より好ましくは50~10000本、さらに好ましくは1000~8000本の範囲である。また、前記ガラス繊維は、好ましくは1.0~100.0mm、より好ましくは、1.2~51.0mm、さらに好ましくは、1.5~30.0mm、特に好ましくは2.0~15.0mm、最も好ましくは2.3~7.8mmの範囲の長さに切断される。
【0067】
また、前記ロービングとは、10~30000本のガラスフィラメントが集束されて構成されたガラス繊維の切断を行わない形態である。
【0068】
また、前記カットファイバーは、1~20000本のガラスフィラメントが集束されて構成されたガラス繊維を、ボールミル又はヘンシルミキサー等の公知の方法により、0.001~0.900mmの範囲の長さになるように粉砕した形態である。
【0069】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品を形成する樹脂としては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を挙げることができるが、樹脂自体のリサイクル性の観点から、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0070】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品を形成する熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレン/無水マレイン酸樹脂、スチレン/マレイミド樹脂、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、塩素化ポリエチレン/アクリロニトリル/スチレン(ACS)樹脂、アクリロニトリル/エチレン/スチレン(AES)樹脂、アクリロニトリル/スチレン/アクリル酸メチル(ASA)樹脂、スチレン/アクリロニトリル(SAN)樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリカーボネート、ポリアリーレンサルファイド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、ポリアリールエーテルケトン、液晶ポリマー(LCP)、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSF)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミノビスマレイミド(PABM)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレン/酢酸ビニル(EVA)樹脂、アイオノマー(IO)樹脂、ポリブタジエン、スチレン/ブタジエン樹脂、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、オレフィン/ビニルアルコール樹脂、環状オレフィン樹脂、セルロース樹脂、ポリ乳酸等を挙げることができる。
【0071】
前記ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン等を挙げることができる。
【0072】
前記ポリプロピレンとしては、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0073】
前記ポリスチレンとしては、アタクチック構造を有するアタクチックポリスチレンである汎用ポリスチレン(GPPS)、GPPSにゴム成分を加えた耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、シンジオタクチック構造を有するシンジオタクチックポリスチレン等を挙げることができる。
【0074】
前記メタクリル樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、脂肪酸ビニルエステルのうち一種を単独重合した重合体、又は二種以上を共重合した重合体等を挙げることができる。
【0075】
前記ポリ塩化ビニルとしては、従来公知の乳化重合法、懸濁重合法、マイクロ懸濁重合法、塊状重合法等の方法により重合される塩化ビニル単独重合体、又は、塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体、又は、重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト重合したグラフト共重合体等を挙げることができる。
【0076】
前記ポリアミドとしては、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリテトラメチレンセバカミド(ポリアミド410)、ポリペンタメチレンアジパミド(ポリアミド56)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンセバカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ポリアミド116)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリキシレンアジパミド(ポリアミドXD6)、ポリキシレンセバカミド(ポリアミドXD10)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリパラキシリレンアジパミド(ポリアミドPXD6)、ポリテトラメチレンテレフタルアミド(ポリアミド4T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド(ポリアミド5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド11T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド12T)、ポリテトラメチレンイソフタルアミド(ポリアミド4I)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンテレフタルアミド(ポリアミドPACMT)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンイソフタルアミド(ポリアミドPACMI)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンテトラデカミド(ポリアミドPACM14)等の成分のうち1種、もしくは2種以上の複数成分を組み合わせた共重合体やこれらの混合物等を挙げることができる。
【0077】
前記ポリアセタールとしては、オキシメチレン単位を主たる繰り返し単位とする単独重合体、および、主としてオキシメチレン単位からなり、主鎖中に2~8個の隣接する炭素原子を有するオキシアルキレン単位を含有する共重合体等を挙げることができる。
【0078】
前記ポリエチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸又はその誘導体と、エチレングリコールを重縮合することにより得られる重合体等を挙げることができる。
【0079】
前記ポリブチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸又はその誘導体と、1,4-ブタンジオールを重縮合することにより得られる重合体等を挙げることができる。
【0080】
前記ポリトリメチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸又はその誘導体と、1,3-プロパンジオールを重縮合することにより得られる重合体等を挙げることができる。
【0081】
前記ポリカーボネートとしては、ジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを溶融状態で反応させるエステル交換法により得られる重合体、又は、ジヒドロキシアリール化合物とホスゲンとを反応するホスゲン法により得られる重合体を挙げることができる。
【0082】
前記ポリアリーレンサルファイドとしては、直鎖型ポリフェニレンサルファイド、重合の後に硬化反応を行うことで高分子量化した架橋型ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンサルファイドサルフォン、ポリフェニレンサルファイドエーテル、ポリフェニレンサルファイドケトン等を挙げることができる。
【0083】
前記変性ポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリスチレンとのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/ブタジエン共重合体とのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/無水マレイン酸共重合体とのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリアミドとのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/ブタジエン/アクリロニトリル共重合体とのポリマーアロイ等を挙げることができる。
【0084】
前記ポリアリールエーテルケトンとしては、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)等を挙げることができる。
【0085】
前記液晶ポリマー(LCP)としては、サーモトロピック液晶ポリエステルである芳香族ヒドロキシカルボニル単位、芳香族ジヒドロキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、脂肪族ジヒドロキシ単位、脂肪族ジカルボニル単位等から選ばれる1種以上の構造単位からなる(共)重合体等を挙げることができる。
【0086】
前記フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、フッ化エチレンプロピレン樹脂(FEP)、フッ化エチレンテトラフルオロエチレン樹脂(ETFE)、ポリビニルフロライド(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン樹脂(ECTFE)等を挙げることができる。
【0087】
前記アイオノマー(IO)樹脂としては、オレフィン又はスチレンと不飽和カルボン酸との共重合体であって、カルボキシル基の一部を金属イオンで中和してなる重合体等を挙げることができる。
【0088】
前記オレフィン/ビニルアルコール樹脂としては、エチレン/ビニルアルコール共重合体、プロピレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物、プロピレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物等を挙げることができる。
【0089】
前記環状オレフィン樹脂としては、シクロヘキセン等の単環体、テトラシクロペンタジエン等の多環体、環状オレフィンモノマーの重合体等を挙げることができる。
【0090】
前記ポリ乳酸としては、L体の単独重合体であるポリL-乳酸、D体の単独重合体であるポリD-乳酸、又はその混合物であるステレオコンプレックス型ポリ乳酸等を挙げることができる。
【0091】
前記セルロース樹脂としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等を挙げることができる。
【0092】
また、本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品を形成する前記熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ(EP)樹脂、メラミン(MF)樹脂、フェノール樹脂(PF)、ウレタン樹脂(PU)、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、ポリイミド(PI)、ユリア(UF)樹脂、シリコーン(SI)樹脂、フラン(FR)樹脂、ベンゾグアナミン(BR)樹脂、アルキド樹脂、キシレン樹脂、ビスマレイドトリアジン(BT)樹脂、ジアリルフタレート樹脂(PDAP)等を挙げることができる。
【0093】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品は、例えば、前記チョップドストランドと、前記樹脂とを、二軸混練機にて混練し、得られた樹脂ペレットを用いて射出成形を行うことにより得ることができる。
【0094】
また、前記ガラス繊維強化樹脂成形品は、射出圧縮成形法、二色成形法、中空成形法、発泡成形法(超臨界流体発泡成形法含む)、インサート成形法、インモールドコーティング成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法、スタンピング成形法、インフュージョン法、ハンドレイアップ法、スプレイアップ法、レジントランスファーモールディング法、シートモールディングコンパウンド法、バルクモールディングコンパウンド法、プルトルージョン法、フィラメントワインディング法等の公知の成形方法を用いて得られたものであってもよい。
【0095】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品において、本実施形態のガラス繊維の数平均繊維長は、例えば、50~400μmにあり、好ましくは75~300μmの範囲にあり、より好ましくは100~380μmの範囲にあり、さらに好ましくは120~350μmの範囲にあり、特に好ましくは150~320μmの範囲にあり、殊に好ましくは、170~290μmの範囲にあり、最も好ましくは205~285μmの範囲にある。
【0096】
本実施形態のガラス繊維強化性樹脂成形品において、本実施形態のガラス繊維の数平均繊維長は、以下の方法により算出することができる。まず、ガラス繊維強化樹脂成形品を、650℃のマッフル炉で0.5~24時間加熱して有機物を分解する。次いで、残存するガラス繊維をガラスシャーレに移し、アセトンを用いてガラス繊維をシャーレの表面に分散させる。次いで、シャーレ表面に分散したガラス繊維1000本以上について、実体顕微鏡を用いて繊維長を測定し、平均をとることで、ガラス繊維の数平均繊維長を算出する。
【0097】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれる前記ガラス繊維は、ガラス繊維と樹脂との接着性の向上、ガラス繊維と樹脂との混合物中におけるガラス繊維の均一分散性の向上等を目的として、その表面を有機物で被覆されていてもよい。このような有機物としては、樹脂、又は、シランカップリング剤を挙げることができる。また、前記有機物は、樹脂又はシランカップリング剤に加えて、潤滑剤、界面活性剤等を含む組成物であってもよい。
【0098】
前記有機物は、有機物に被覆されていない状態における、ガラス繊維の質量を基準として、0.1~2.0質量%の割合で、ガラス繊維を被覆する。
【0099】
なお、有機物によるガラス繊維の被覆は、例えば、ガラス繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーター等の公知の方法を用いて、前記樹脂、前記シランカップリング剤又は組成物の溶液を含む前記集束剤又はバインダーをガラス繊維に塗布し、その後、前記樹脂、前記シランカップリング剤又は前記組成物の溶液の塗布されたガラス繊維を乾燥させることで行うことができる。 前記樹脂としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、変性ポリプロピレン、特にカルボン酸変性ポリプロピレン、(ポリ)カルボン酸、特にマレイン酸と不飽和単量体との共重合体等を挙げることができる。
【0100】
前記シランカップリング剤としては、アミノシラン、クロルシラン、エポキシシラン、メルカプトシラン、ビニルシラン、アクリルシラン、カチオニックシランを挙げることができる。前記シランカップリング剤は、これらの化合物を単独で使用することもでき、又は、2種類以上を併用することもできる。
【0101】
アミノシランとしては、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-N’-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0102】
クロルシランとしては、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0103】
エポキシシランとしては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0104】
メルカプトシランとしては、γ-メルカプトトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0105】
ビニルシランとしては、ビニルトリメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0106】
アクリルシランとしては、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0107】
カチオニックシランとしては、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩等を挙げることができる。
【0108】
前記潤滑剤としては、変性シリコーンオイル、動物油及びこの水素添加物、植物油及びこの水素添加物、動物性ワックス、植物性ワックス、鉱物系ワックス、高級飽和脂肪酸と高級飽和アルコールとの縮合物、ポリエチレンイミン、ポリアルキルポリアミンアルキルアマイド誘導体、脂肪酸アミド、第4級アンモニウム塩を挙げることができる。前記潤滑剤は、これらを単独で使用することもでき、又は、2種類以上を併用することもできる。
【0109】
動物油としては、牛脂等を挙げることができる。
【0110】
植物油としては、大豆油、ヤシ油、ナタネ油、パーム油、ひまし油等を挙げることができる。
【0111】
動物性ワックスとしては、蜜蝋、ラノリン等を挙げることができる。
【0112】
植物性ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナバワックス等を挙げることができる。
【0113】
鉱物系ワックスとしては、パラフィンワックス、モンタンワックス等を挙げることができる。
【0114】
高級飽和脂肪酸と高級飽和アルコールとの縮合物としては、ラウリルステアレート等のステアリン酸エステル等を挙げることができる。
【0115】
脂肪酸アミドとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリエチレンポリアミンと、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸との脱水縮合物等を挙げることができる。
【0116】
第4級アンモニウム塩としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のアルキルトリメチルアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0117】
前記界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を挙げることができる。前記界面活性剤は、これらを単独で使用することもでき、又は、2種類以上を併用することもできる。
【0118】
ノニオン系界面活性剤としては、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックコポリマー、アルキルポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックコポリマーエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセロール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンキャスターオイルエーテル、硬化ヒマシ油エチレンオキサイド付加物、アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、グリセロール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、多価アルコールアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物等を挙げることができる。
【0119】
カチオン系界面活性剤としては、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、高級アルキルアミン酢酸塩、高級アルキルアミン塩酸塩等、高級アルキルアミンへのエチレンオキサイド付加物、高級脂肪酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合物、高級脂肪酸とアルカノールアミンとのエステルの塩、高級脂肪酸アミドの塩、イミダゾリン型カチオン性界面活性剤、アルキルピリジニウム塩等を挙げることができる。
【0120】
アニオン系界面活性剤としては、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、α-オレフィン硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、脂肪酸ハライドとN-メチルタウリンとの反応生成物、スルホコハク酸ジアルキルエステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩等を挙げることができる。
【0121】
両性界面活性剤としては、アルキルアミノプロピオン酸アルカリ金属塩等のアミノ酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルベタイン等のベタイン型、イミダゾリン型両性界面活性剤等を挙げることができる。
【0122】
前記ガラス繊維強化樹脂成形品は、例えば、スマートフォンに代表される携帯電子機器の筐体やフレーム等の部品、バッテリートレイカバーやセンサー、コイルボビンなどの自動車電装部品、携帯電子機器以外の電子機器部品、電気接続端子部品等に用いることができる。
【0123】
次に、本発明の実施例及び比較例を示す。
【実施例】
【0124】
まず、溶融固化後のガラス組成が、表1~3に示す実施例1~20及び比較例1~4の各組成となるように、ガラス原料を混合し、ガラスバッチを得た。得られたガラスバッチを白金ルツボに入れ、この白金ルツボを、1400~1550℃の範囲の温度条件で、電気炉中に4時間保持し、ガラス原料に撹拌を加えながら溶融させることにより、均質な溶融ガラスを得た。次に、溶融ガラスが収容された白金ルツボを電気炉中から取り出し、溶融ガラスを冷却した。次に、白金ルツボから溶融ガラスをたたき出した後、ガラスの歪みを除くために除歪温度(600~700℃)で2時間加熱し、8時間かけて室温(20~25℃)まで冷却し、塊状のガラスカレットを得た。
【0125】
次に、前記ガラス繊維用ガラス組成物の弾性率、熱膨張係数、円形断面を有するガラス繊維の繊維径のばらつき、扁平な断面形状を有するガラス繊維の異形比のばらつきについて、次のようにして評価した。結果を表1~3に示す。
【0126】
〔弾性率〕
前記塊状のガラスカレットを、切削加工機、例えばダイヤモンドカッターと研磨機を用いて、25mm×25mm×5mmの試験片に加工し、JIS R1602:1995に従って超音波パルス法にて弾性率の指標としてヤング率を測定した。
【0127】
〔熱膨張係数〕
前記塊状のガラスカレットを、切削加工機、例えばダイヤモンドカッターと研磨機を用いて、4mm×4mm×20mmの試験片に加工し、得られた試験片を昇温速度10℃/分で加熱し、50~200℃の範囲の温度で、熱機械分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて伸び量を測定し、該伸び量から線膨張係数を算出することで、ガラス繊維の熱膨張係数を測定した。
【0128】
〔円形断面を有するガラス繊維の繊維径のばらつき〕
所定の組成に調合されたガラス繊維用ガラス組成物をガラス原料として溶融炉で溶融し、200ホール以上のノズルを備えるブッシングで紡糸して円形断面を有するガラス繊維(フィラメント)を得た。前記ガラスフィラメントから無作為に50本の繊維を選定し、フィラメントごとに繊維径を測定した。この際の、繊維径の標準偏差を繊維径の平均値で割った値の百分率Wと、繊維径の最大値と平均値の差を平均値で割った値の百分率と、繊維径の最小値と平均値の差を平均値で割った値の百分率とのうち、大きいほうの値の百分率Xを算出した。百分率Wが7.5%以下かつ百分率Xが20.0%以下の場合をA、百分率Wが7.5%超15.0%以下、かつ百分率Xが20.0%以下の場合をB、百分率Wが15.0%超又は百分率Xが20.0%超の場合をCと評価した。
【0129】
〔扁平断面を有するガラス繊維の異形比のばらつき〕
所定の組成に調合されたガラス繊維用ガラス組成物をガラス原料として溶融炉で溶融し、200ホール以上のノズルを備えるブッシングで紡糸して、扁平な断面を有するガラス繊維(フィラメント)を得た。前記ガラスフィラメントから無作為に50本の繊維を選定し、フィラメントごとに短径、長径および換算繊維径を測定した。このときの短径に対する長径の比(異形比)の標準偏差を平均値で割った値の百分率Yと、円形換算繊維径の標準偏差を平均値で割った値の百分率Zを算出した。算出された百分率Yの値が20.0%以下、かつ、算出された百分率Zの値が7.5%以下の場合をA、算出された百分率Yの値が20.0%超又は算出された百分率Zの値が7.5%超であり、かつ、算出された百分率Yの値が30.0%以下かつ算出された百分率Zの値が15.0%以下である場合をB、算出された百分率Yの値が30.0%超、又は算出された百分率Zの値が15.0%超の場合をCと評価した。
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
表1~3から、前記SiO2の含有率SI、前記Al2O3の含有率A、前記CaOの含有率C、前記TiO2の含有率T、前記P2O5の含有率P、前記ZnOの含有率Z、及び、前記SO3の含有率SOが前記式(1)を満たす実施例1~20のガラス繊維用ガラス組成物によれば、得られたガラス繊維の繊維径のばらつきを抑制することができることが明らかである。一方、前記SiO2の含有率SI、前記Al2O3の含有率A、前記CaOの含有率C、前記TiO2の含有率T、前記P2O5の含有率P、前記ZnOの含有率Z、及び、前記SO3の含有率SOが前記式(1)を満たさない比較例1~4のガラス繊維用ガラス組成物によれば、得られたガラス繊維の繊維径のばらつきを抑制することができないことが明らかである。
【要約】
ガラス繊維の繊維径のばらつきを抑制できるガラス繊維用ガラス組成物を提供する。ガラス繊維用ガラス組成物は、全量に対し、45.60~59.00質量%のSiO2、10.00~16.00質量%のAl2O3、17.00~25.00質量%のCaO、0.01~9.50質量%のTiO2、0.03~7.00質量%のP2O5、0.00~9.50質量%のZnO、0.00~2.00質量%のSO3、合計0.01~11.50質量%のZnO及びSO3、合計0.00~2.00質量%のNa2O、K2O及びLi2Oを含む。SiO2含有率SI、Al2O3含有率A、CaO含有率C、TiO2含有率T、P2O5含有率P、ZnO含有率Z、SO3含有率SOが次式(1)を満たす。
15.0≦(SI/C)2×(A/T)×{P/(SO+Z)}1/4≦690.1 ・・・(1)