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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】現像ローラ、現像装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20230111BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20230111BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
G03G15/08 235
G03G15/00 551
F16C13/00 B
F16C13/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018213724
(22)【出願日】2018-11-14
(65)【公開番号】P2020079894
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】江川 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】山中 政史
(72)【発明者】
【氏名】新井 淳子
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-159523(JP,A)
【文献】特開2016-191768(JP,A)
【文献】特開2009-204666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
G03G 15/00
F16C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体の外周面に形成された弾性層と、該弾性層の外周面に形成された被覆層とを備える現像ローラであって、
前記被覆層が、被覆層用樹脂組成物を硬化させてなり、前記被覆層用樹脂組成物中のフッ素原子の含有量が5質量%未満であり、
前記被覆層用樹脂組成物が、(a)ポリオール、(b)イソシアネート、(c)水酸基と1質量%以上10質量%以下のフッ素原子とを含有する(メタ)アクリレート共重合体、(d)表面粗さ材、及び(e)イオン導電材を含有し、
前記被覆層は、ガラス転移点Tgが-50℃以上0℃以下であり、動摩擦係数μDが0.05以上0.6以下であり、かつ算術平均粗さRaが0.4以上1.5以下である現像ローラ。
【請求項2】
請求項1記載の現像ローラを備えた現像装置。
【請求項3】
請求項1記載の現像ローラを備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像ローラ、現像装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置に用いられる現像ローラは、静電潜像が形成された像担持体に現像剤を搬送する機能を有する。現像ローラが有する現像剤搬送性は、画像形成装置の品質、特に印字濃度に影響する。近年、現像ローラの表面に凹凸を形成するとともに、現像ローラを構成する各種材料の電気的特性を調整し、これにより、現像ローラの現像剤搬送性を向上させることが検討されている。
【0003】
現像ローラは、長期間使用された場合、その表面に現像剤が固着する(「フィルミング」という。)ことがある。このようなフィルミングは、例えば、現像剤を帯電又は付着させる際に現像ローラと圧接するブレード等の摺動ストレスによって現像剤が変形し、又は破壊され、更に、ブレード等との摩擦熱による現像剤の溶融等に起因して生じるものと考えられている。
また、現像に用いられなかった古い現像剤が現像ローラの表面上に残ると、次に新たに現像剤が供給されると、古い現像剤と新しい現像剤とが混在した状態となる。そうすると、古い現像剤と新しい現像剤で帯電量に差が生じ、現像ローラ上で一周前の画像履歴が、次の周に対応する画像に現れる現象、いわゆるゴースト現象が発生するという問題がある。
このため、ゴースト現象及びフィルミングの発生が抑制され、耐久印字性能に優れる現像ローラが種々検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、イオン液体を含有する、現像剤が長時間にわたって表面に固着しにくい導電性ローラが記載されている。また、特許文献2には、樹脂、フィルム、繊維等の表面に防指紋性及び表面平滑性を付与するための表面改質剤として有用な反応性含フッ素共重合体が開示されている。また更に、特許文献3には、ガラス転移点Tgが0℃から80℃までのフッ素樹脂Bを含有する組成物から形成された、トナー付着性及び耐久性に優れる導電性ローラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-221442号公報
【文献】特開2015-120852号公報
【文献】特開2005-187752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献に記載の現像ローラ又は導電性ローラでは、近年求められる画像形成装置の性能に十分に対応できる程度に、ゴースト現象及びフィルミングの発生を抑制できず、耐久印字性能の向上という観点では満足できるものではなかった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ゴースト現象及びフィルミングの発生が良好に抑制され、耐久印字性能に優れる現像ローラ、現像装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の現像ローラは、軸体の外周面に形成された弾性層と、弾性層の外周面に形成された被覆層とを備える現像ローラであって、被覆層は、ガラス転移点Tgが-50℃以上0℃以下であり、動摩擦係数μDが0.05以上0.6以下であり、かつ算術平均粗さRaが0.4以上1.5以下である。
【0008】
本発明の現像ローラの被覆層は被覆層用樹脂組成物を硬化させてなり、被覆層用樹脂組成物中のフッ素原子の含有量は5質量%未満であることが好ましい。
【0009】
被覆層用樹脂組成物は、(a)ポリオール、(b)イソシアネート、(c)水酸基と1質量%以上10質量%以下のフッ素原子とを含有する(メタ)アクリレート共重合体、(d)表面粗さ材、及び(e)イオン導電材を含有するものが好ましい。
【0010】
本発明の現像装置は、本発明の現像ローラを備えたものである。
【0011】
本発明の画像形成装置は、本発明の現像ローラを備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ゴースト現象及びフィルミングの発生が良好に抑制され、耐久印字性能に優れる現像ローラ、現像装置及び画像形成装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の現像ローラの一実施形態を示す概略斜視図である。
図2図2は、本発明の画像形成装置の一実施形態を示す概略断面図である。
図3図3は、発明における動摩擦係数の測定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、以下の実施形態は例示の目的で提示するものであり、本発明は、以下に示す実施形態に何ら限定されるものではない。
【0015】
[現像ローラ]
図1は、本発明の現像ローラの一実施形態を示す概略斜視図である。
本発明の現像ローラ1は、図1に示すように、軸体2の外周面に形成された弾性層3と、弾性層3の外周面に形成された被覆層4とを備える現像ローラであって、被覆層4は、ガラス転移点Tgが-50℃以上0℃以下であり、動摩擦係数μDが0.05以上0.6以下であり、かつ算術平均粗さRaが0.4以上1.5以下である。
以下、本発明の現像ローラ1の構成について説明する。
【0016】
(軸体)
軸体2は、好ましくは、導電性を有する、従来公知の現像ローラに用いられる軸体を用いることができる。軸体2は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、及び真鍮からなる群より選択される少なくとも1種の金属で構成されていることが好ましい。このような金属で構成される軸体2は、一般に、「芯金」の名称でも知られている。
【0017】
軸体2は、絶縁性樹脂を含むものであってもよい。絶縁性樹脂は、例えば、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。軸体2は、例えば、絶縁性樹脂からなる芯体と、この芯体上に設けられたメッキ層と、を備えるものであってよい。このような軸体2は、例えば、絶縁性樹脂からなる芯体にメッキを施して導電化することにより得ることができる。
軸体2は、良好な導電性を得るために、芯金であることが好ましい。
【0018】
軸体2の形状は、例えば、棒状、管状等であることが好ましい。軸体2の断面形状は、例えば、円形、楕円形であってもよく、多角形等の非円形であってもよい。軸体2の外周面には、弾性層3との接着性を向上させるため、洗浄処理、脱脂処理、プライマー処理等の処理が施されていてもよい。
【0019】
軸体2の軸線方向の長さは特に限定されず、設置される画像形成装置の形態に応じて適宜調整してもよい。例えば、印字対象がA4サイズである場合、軸体2の軸線方向の長さは250mm以上320mm以下であることが好ましく、260mm以上310mm以下であることがより好ましい。また、軸体2の直径(外接円の直径)も特に限定されず、設置される画像形成装置の形態に応じて適宜調整すればよい。例えば、軸体2の外径(外接円の直径)は、4mm以上14mm以下であることが好ましく、6mm以上10mm以下であることがより好ましい。
【0020】
(弾性層)
弾性層3は、ゴム組成物を軸体2の外周面に加熱硬化して形成される。弾性層3を形成するためのゴム組成物は、ゴムと、導電性付与剤と、所望により各種添加剤とを含有するのが好ましい。
【0021】
ゴム組成物中のゴムとしては、例えば、シリコーン又はシリコーン変性ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(エチレンプロピレンジエンゴムを含む。)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。シリコーン若しくはシリコーン変性ゴム又はウレタンゴムであるのが好ましく、シリコーン又はシリコーン変性ゴムが、圧縮永久歪を低減することができるとともに、低温環境下における柔軟性に優れる点、更には、耐熱性及び帯電特性等に優れる点で、特に好ましい。シリコーンゴムとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等のオルガノポリシロキサンの架橋物が挙げられる。
シリコーンゴム組成物としては、例えば、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物、及び付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物等が挙げられる。
【0022】
-付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物-
付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物は、例えば、(A)下記平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサン、(B)充填材、(C)導電性付与剤を含有するものであってよい。
SiO(4-n)/2 …(1)
式(1)中、nは1.95以上2.05以下の正数を示す。また、Rは、同一又は異なってもよい、置換又は非置換の一価の炭化水素基を示す。炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1以上12以下であり、より好ましくは1以上8以下である。
【0023】
としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びドデシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基及びヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基及びトリル基等のアリール基、β-フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。また、Rは、これらの炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部が置換基で置換された基であってもよい。置換基は、例えばハロゲン原子、シアノ基等であってよい。置換基を有する炭化水素基としては、例えば、クロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0024】
(A)オルガノポリシロキサンは、分子鎖末端が、トリメチルシリル基等のトリアルキルシリル基、ジメチルビニルシリル基等のジアルキルアラルキルシリル基、ジメチルヒドロキシシリル基等のジアルキルヒドロキシシリル基、トリビニルシリル基等のトリアラルキルシリル基などで封鎖されていることが好ましい。
【0025】
(A)オルガノポリシロキサンは、分子中に2つ以上のアルケニル基を有することが好ましい。(A)オルガノポリシロキサンは、Rのうち0.001モル%以上5モル%以下(より好ましくは0.01モル%以上0.5モル%以下)のアルケニル基を有することが好ましい。(A)オルガノポリシロキサンが有するアルケニル基としてはビニル基が特に好ましい。
【0026】
(A)オルガノポリシロキサンは、例えば、オルガノハロシランの1種若しくは2種以上を共加水分解縮合することによって、又は、シロキサンの3量体若しくは4量体等の環状ポリシロキサンを開環重合することによって得ることができる。(A)オルガノポリシロキサンは、基本的には直鎖状のジオルガノポリシロキサンであってよく、一部分岐していてもよい。また、(A)オルガノポリシロキサンは、分子構造の異なる2種又はそれ以上の混合物であってもよい。
【0027】
(A)オルガノポリシロキサンは、25℃における動粘度が100cSt以上であることが好ましく、100000cSt以上10000000cSt以下であることがより好ましい。また、(A)オルガノポリシロキサンの重合度は、例えば100以上であることが好ましく、3000以上10000以下であることがより好ましい。
【0028】
(B)充填材としては、例えばシリカ系充填材が挙げられる。シリカ系充填材としては、例えば、煙霧質シリカ、沈降性シリカ等が挙げられる。
【0029】
シリカ系充填材としては、RSi(ORで示されるシランカップリング剤で表面処理された、表面処理シリカ系充填材を好適に用いることができる。ここで、Rは、ビニル基又はアミノ基を有する基であってよく、例えば、グリシジル基、ビニル基、アミノプロピル基、メタクリロキシ基、N-フェニルアミノプロピル基、メルカプト基等であってよい。Rはアルキル基であってよく、例えばメチル基、エチル基等であってよい。シランカップリング剤は、例えば信越化学工業株式会社製の商品名「KBM1003」、「KBE402」等として、容易に入手できる。表面処理シリカ系充填材は、定法に従って、シリカ系充填材の表面をシランカップリング剤で処理することにより得ることができる。表面処理シリカ系充填材としては、市販品を用いてもよく、例えば、J.M.HUBER株式会社製の商品名「Zeothix 95」等が挙げられる。
【0030】
シリカ系充填材の配合量は、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して11質量部以上39質量部以下であることが好ましく、15質量部以上35質量部以下であることがより好ましい。また、シリカ系充填材の平均粒子径は、1μm以上80μm以下であることが好ましく、2μm以上40μm以下であることがより好ましい。なお、シリカ系充填材の平均粒子径は、レーザー光回折法による粒度分布測定装置を用いて、メジアン径として測定できる。
【0031】
(C)導電性付与剤の配合量は、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましい。また、(C)導電性付与剤の配合量は、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して、15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。
【0032】
付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物は、(A)から(C)以外の添加剤を更に含有していてよい。添加剤としては、例えば、助剤(鎖延長剤、架橋剤等)、触媒、分散剤、発泡剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。
【0033】
添加剤の具体例としては、(A)オルガノポリシロキサンより重合度の低いジメチルシロキサンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、シラノール、ジフェニルシランジオール及びα,ω-ジメチルシロキサンジオール等の両末端シラノール基封止低分子シロキサン、シラン等の分散剤が挙げられる。また、添加剤の具体例としては、オクチル酸鉄、酸化鉄、酸化セリウム等の耐熱性向上剤が挙げられる。また、添加剤としては、接着性、成形加工性等を向上させるための各種カーボンファンクショナルシラン、各種オレフィン系エラストマー等を用いてもよい。
【0034】
-付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物-
付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、例えば、(D)分子中に2つ以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、(E)分子中にケイ素原子と結合する水素原子を2つ以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(F)充填材と、(G)導電性付与剤と、(H)付加反応触媒と、を含有していてよい。
【0035】
(D)オルガノポリシロキサンとしては、下記平均組成式(2)で示される化合物が好適である。
SiO(4-a)/2 …(2)
式(2)中、aは1.5以上2.8以下の正数を示し、好ましくは1.8以上2.5以下、より好ましくは1.95以上2.05以下である。また、Rは、同一又は異なっていてよい、置換又は非置換の一価の炭化水素基を示す。ただし、一分子中のRのうち少なくとも2つはアルケニル基である。炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1以上12以下であり、より好ましくは1以上8以下である。
【0036】
としては、上記Rとして例示した基と同じ基が例示できる。また、一分子中のRのうち少なくとも2つがアルケニル基であり、それ以外のRはアルキル基であることが好ましい。アルケニル基はビニル基であることが好ましく、アルキル基はメチル基であることが好ましい。また、Rのうち、例えば90%以上がアルキル基(好ましくはメチル基)であってよい。(D)オルガノポリシロキサンにおけるアルケニル基の含有量は、例えば、1.0×10-6mol/g以上5.0×10-3mol/g以下であることが好ましく、5.0×10-6mol/g以上1.0×10-3mol/g以下であることがより好ましい。
【0037】
(D)オルガノポリシロキサンは、25℃で液状であることが好ましく、25℃における粘度が100mPa・s以上1000000mPa・s以下であることが好ましく、200mPa・s以上100000mPa・s以下であることがより好ましい。また、(D)オルガノポリシロキサンの平均重合度は100以上800以下であることが好ましく、150以上600以下であることがより好ましい。
【0038】
(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均組成式(3)で示される化合物が好適である。
SiO(4-b-c)/2 …(3)
式(3)中、bは0.7以上2.1以下の正数を示し、cは0.001以上1.0以下の正数を示し、b-cは0.8以上3.0以下である。また、Rは、同一又は異なっていてよい、置換又は非置換の一価の炭化水素基を示す。炭化水素基の炭素原子数は、1以上10以下であることが好ましい。なお、Rとしては、上記Rとして例示した基と同じ基が例示できる。
【0039】
(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、ケイ素原子に結合した水素原子(Si-H)を一分子中に2つ以上有しており、3つ以上有していることが好ましい。また、(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンが一分子中に有する、ケイ素原子に結合した水素原子の個数は、200以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましい。
【0040】
(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンにおいて、ケイ素原子に結合した水素原子の含有量は、0.001mol/g以上0.017mol/g以下であることが好ましく、0.002mol/g以上0.015mol/g以下であることがより好ましい。
【0041】
(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、及び、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C)SiO3/2単位とからなる共重合体等が挙げられる。
【0042】
(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(D)オルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。また、(D)オルガノポリシロキサンのアルケニル基に対する、(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンのSi-Hのモル比は、0.3から5.0であることが好ましく、0.5から2.5であることがより好ましい。
【0043】
(F)充填材は、例えば、無機質充填材であってよい。付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物に(F)充填材を配合することで、圧縮永久歪が低くなり、体積抵抗率が経時で安定し、かつ十分なローラ耐久性が得られる。
【0044】
(F)充填材の平均粒子径は、1μm以上30μm以下であることが好ましく、2μm以上20μm以下であることがより好ましい。(F)充填材の平均粒子径が1μm以上であると、体積抵抗率の経時変化が一層抑制される。また、(F)充填材の平均粒子径が30μm以下であると、耐久性に一層優れる弾性層3を得ることができる。なお、(F)充填材の平均粒子径は、レーザー光回折法による粒度分布測定装置を用いて、メジアン径として測定できる。
【0045】
(F)充填材の嵩密度は、0.1g/cm以上0.5g/cm以下であることが好ましく、0.15g/cm以上0.45g/cm以下であることがより好ましい。(F)充填材の嵩密度を上記の範囲に調整することにより、圧縮永久歪をより低くすることができ、体積抵抗率の経時変化が一層抑制され、また、耐久性に一層優れる弾性層3を得ることができる。(F)充填材の嵩密度は、JIS K 6223の見かけ比重の測定方法に基づいて求めることができる。
【0046】
(F)充填材としては、例えば、珪藻土、パーライト、マイカ、炭酸カルシウム、ガラスフレーク、中空充填材等が挙げられる。これらの中でも、(F)充填材としては、珪藻土、パーライト及び発泡パーライトの粉砕物を好適に用いることができる。
【0047】
(F)充填材の配合量は、(D)オルガノポリシロキサン100質量部に対して5質量部以上100質量部以下であることが好ましく、10質量部以上80質量部以下であることがより好ましい。
【0048】
(G)導電性付与剤の配合量は、(D)オルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.5質量部以上15質量部以下であることが好ましく、1質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
【0049】
(H)付加反応触媒は、(D)オルガノポリシロキサンと(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応を活性化できる触媒であればよい。(H)付加反応触媒としては、例えば、白金族元素を有する触媒が挙げられる。白金族元素を有する触媒としては、例えば、白金系触媒(例えば、白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等)、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等が挙げられる。
【0050】
(H)付加反応触媒の配合量は、触媒量であってよい。例えば、(H)付加反応触媒の配合量は、白金族元素量が、(D)オルガノポリシロキサン及び(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計質量に対して0.5質量ppm以上1000質量ppm以下となる量であることが好ましく、1質量ppm以上500質量ppm以下となる量であることがより好ましい。
【0051】
弾性層3は、公知の成形方法によって、加熱硬化と成形とを同時に又は連続して行い、軸体2の外周面に形成される。ゴム組成物の硬化方法はゴム組成物の硬化に必要な熱を加えられる方法であればよく、また、弾性層3の成形方法も押出成形による連続加硫、プレス、インジェクションによる型成形等、特に制限されるものではない。例えば、ゴム組成物が付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物である場合には、例えば、押出成形等を選択することができ、ゴム組成物が付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物である場合には、例えば、金型を用いる成形法を選択することができる。また、軸体2上に形成された弾性体(シリコーンゴム組成物の硬化物)の研削又は研磨等によって形成してもよい。
【0052】
ゴム組成物を硬化させる際の加熱温度は、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物の場合は、100℃以上500℃以下が好ましく、120℃以上300℃以下がより好ましい。加熱時間は数秒以上1時間以下が好ましく、10秒以上35分以下がより好ましい。付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の場合は、加熱温度は、100℃以上300℃以下が好ましく、110℃以上200℃以下がより好ましい。加熱時間は5分以上5時間以下が好ましく、1時間以上3時間以下がより好ましい。また、必要に応じ、二次加硫してもよい。付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物の場合は、例えば、100℃以上200℃以下で1時間以上20時間以下程度の硬化条件が選択される。また、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の場合は、例えば、120℃以上250℃以下で2時間以上70時間以下程度の硬化条件が選択される。また、ゴム組成物は既知の方法で発泡硬化させることにより、気泡を有するスポンジ状弾性層を容易に形成することもできる。
【0053】
付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は(D)から(H)以外の添加剤を更に含有してもよい。添加剤としては、例えば、助剤(鎖延長剤、架橋剤等)、発泡剤、分散剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、希釈剤、反応性希釈剤、溶剤等が挙げられる。
【0054】
添加剤の具体例としては、低分子シロキサンエステル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、シラノール、フェニルシランジオール等の分散剤が挙げられる。また、オクチル酸鉄、酸化鉄、酸化セリウム等の耐熱性向上剤が挙げられる。また、接着性、成形加工性等を向上させるための各種カーボンファンクショナルシラン、各種オレフィン系エラストマー等を用いてもよい。また、難燃性を付与させるハロゲン化合物等を用いてもよい。
【0055】
付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の25℃における粘度は、5Pa・s以上500Pa・s以下であることが好ましく、5Pa・s以上200Pa・s以下であることがより好ましい。
【0056】
弾性層3の厚さは特に限定されず、0.1mm以上6mm以下であることが好ましく、1mm以上4mm以下であることがより好ましい。なお、本明細書における厚さは、現像ローラ1の軸線方向に垂直な方向の厚さを示す。
【0057】
弾性層3の外径は特に限定されず、例えば6mm以上25mm以下であることが好ましく、7mm以上21mm以下であることがより好ましい。
【0058】
弾性層3の外周面には、被覆層4との接着性向上等の目的で、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、エキシマ処理、UV処理、イトロ処理、フレーム処理等の表面処理が施されていてよい。
【0059】
弾性層3の形成方法は特に限定されない。例えば、弾性層3は、シリコーンゴム組成物の押出成形、LIMS成形等の方法で形成されてよい。また、弾性層3は、軸体2上に形成された弾性体(シリコーンゴム組成物の硬化物)の研削・研磨等によって形成してもよい。
【0060】
-その他の成分-
ゴム組成物は上記以外の各種添加剤を更に含有してもよい。各種添加剤としては、例えば、助剤(鎖延長剤、架橋剤等)、触媒、分散剤、発泡剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。
【0061】
(被覆層)
被覆層4は、弾性層3の外周であって、現像ローラ1の最表面に設けられるものである。被覆層4は、弾性層3、又は、所望により形成されたプライマー層の外周面に、被覆層用樹脂組成物を塗工し、次いで、塗工された被覆層用樹脂組成物を加熱硬化させて、形成される。
被覆層用樹脂組成物は、(a)ポリオール、(b)イソシアネート、(c)水酸基と1質量%以上10質量%以下のフッ素原子とを含有する(メタ)アクリレート共重合体、(d)表面粗さ材、及び(e)イオン導電材を含有する。
以下、被覆層用樹脂組成物の各成分(a)~(e)について説明する。
【0062】
(a)ポリオール
ポリオールは、ポリウレタンの調製に通常使用される各種のポリオールであればよく、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリカーボネートポリオールから選択された少なくとも1種のポリオールであるのが好ましい。
【0063】
ポリエーテルポリオールは、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール-エチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、テトラヒドロフランとアルキレンオキサイドとの共重合ポリオール、及び、これらの各種変性体又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0064】
ポリエステルポリオールは、分子内に2つ以上のエステル結合と、2つ以上のヒドロキシル基を有する。ポリエステルポリオールとしては、例えば、ジカルボン酸とポリオールとの縮合反応物等が挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0065】
ポリアクリレートポリオールは、ヒドロキシル基含有モノマーと他のオレフィン系不飽和モノマー、例えば(メタ)アクリル酸のエステル、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルエステル、マレイン酸モノアルキルエステル及びマレイン酸ジアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル及びフマル酸ジアルキルエステル、α-オレフィン並びに他の不飽和オリゴマー及び不飽和ポリマーとのコポリマーである。
【0066】
ポリカーボネートポリオールは、分子内に2つ以上のカーボネート結合と、2つ以上のヒドロキシル基を有する。ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオールとカーボネート化合物との縮合反応物等が挙げられる。また、カーボネート化合物としては、例えば、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、アルキレンカーボネート等が挙げられる。ポリカーボネートポリオールの原料として用いられるポリオールとしては、例えば、ヘキサンジオール、ブタンジオール等のジオール、2,4-ブタントリオール等のトリオールなどが挙げられる。
ポリオールは、後述するイソシアネート等との相溶性に優れる点で、1000~8000の数平均分子量を有するのが好ましく、1000~5000の数平均分子量を有するのが更に好ましく、イオン液体が水酸基含有イオン液体である場合には、800~15000の数平均分子量を有するのが好ましく、1000~5000の数平均分子量を有するのが更に好ましい。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレンに換算したときの分子量である。
【0067】
(b)イソシアネート
イソシアネートは、ポリウレタンの調製に通常使用される各種イソシアネートであればよく、例えば、脂肪族イソシアネート、芳香族イソシアネート及びこれらの誘導体等が挙げられる。イソシアネートは、貯蔵安定性に優れ、反応速度を制御しやすい点で、脂肪族イソシアネートであるのが好ましい。
芳香族イソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(トリレンジイソシアネートとも称する。TDI)、3,3’-ビトリレン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネートウレチジンジオン(2,4-TDIの二量体)、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、メタフェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族イソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、オルトトルイジンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネートメチル、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’,4’’-トリイソシアネート等が挙げられる。
誘導体としては、ポリイソシアネートの多核体、ポリオール等で変性したウレタン変性物(ウレタンプレポリマーを含む)、ウレチジオン形成による二量体、イソシアヌレート変性物、カルボジイミド変性物、ウレトンイミン変性物、アロハネート変性物、ウレア変性物、ビュレット変性物等が挙げられる。ポリイソシアネートは、1種単独で又は2種以上を用いることができる。ポリイソシアネートは、500~2000の分子量を有するのが好ましく、700~1500の分子量を有するのがより好ましい。
【0068】
被覆層用樹脂組成物に用いられる(b)イソシアネートはポリイソシアネートであることが好ましい。(b)イソシアネート1分子中のイソシアネート基の数が2を超えることが好ましく、2.5以上がより好ましく、3以上が更に好ましい。
ポリオールとポリイソシアネートとの混合物における混合割合は、特に限定されないが、通常、ポリオールに含まれる水酸基(OH)と、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基(NCO)とのモル比(NCO/OH)が0.7以上1.15以下であるのが好ましい。このモル比(NCO/OH)は、ポリウレタンの加水分解を防止することができる点で、0.85以上1.10以下であるのがより好ましい。なお、実際には、作業環境、作業上の誤差を考慮して適正モル比の3倍から4倍相当量を配合してもよい。
【0069】
被覆層用樹脂組成物には、(a)ポリオールと(b)イソシアネートとの反応に通常使用される助剤、例えば、鎖延長剤、架橋剤等を併用してもよい。鎖延長剤、架橋剤としては、例えば、グリコール類、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン及びアミン類等が挙げられる。
【0070】
(c)水酸基と1質量%以上10質量%以下のフッ素原子とを含有する(メタ)アクリレート共重合体
水酸基と1質量%以上10質量%以下のフッ素原子とを含有する(メタ)アクリレート共重合体(以下、単に(c)(メタ)アクリレート共重合体と記載する場合がある)は、少なくとも、共重合体中に水酸基と、1質量%以上10質量%以下のフッ素原子を有するものである。このような共重合体は、少なくともフッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(c-1)、及び水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(c-2)から構成される。
【0071】
フッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(c-1)は、以下の一般式(c-1)で表される。
【0072】
【化1】
【0073】
式中、Rfは下記式(1)又は(2)で示される基である。RはH又はメチル基であり、Rは炭素原子数が2~50の二価の基である。
【0074】
【化2】
【0075】
で表される炭素原子数が2~50の二価の基としては、以下の基が挙げられる。
【0076】
-(CHn1- (n1=2~50)
-X-Y-(CHn2- (n2=2~43)
-X-(CHn3- (n3=1~44)
-CHCH(OCHCHn4- (n4=1~24)
-XCO(OCHCHn5- (n5=1~21)
(式中、Xは炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子からなる群から選ばれる置換基を1~3個有していてもよいフェニレン、ビフェニレン又はナフチレンを示す。Yは、-O-CO-、-CO-O-、-CONH-又はNHCO-を示す。)
【0077】
Xは1,2-フェニレン、1,3-フェニレン、1,4-フェニレンが好ましく、1,4-フェニレンが特に好ましい。
【0078】
特に好ましいRで表される炭素原子数が2~50の二価の基としては、具体的に以下の構造の二価の基が挙げられる。
【0079】
-(CHn1- (n1=2~10)
-COCO(CHn2- (n2=2~10)
-C(CHn3- (n3=1~10)
-CHCH(OCHCHn4- (n4=1~10)
-CCO(OCHCHn5- (n5=1~10)
【0080】
一般式(c-1)で表される(メタ)アクリレート化合物は公知の方法により製造することができる。
【0081】
水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(c-2)は、以下の一般式(c-2)で表される。
【0082】
【化3】
【0083】
式中、RはH又はメチル基である。Rは炭素原子数が2~50、好ましくは2~10の二価の基、又は、繰り返し単位が2~20のアルキレンオキシド基である。
【0084】
一般式(c-2)において、Rで表される炭素原子数が2~50の二価の基としては、上記Rで例示された二価の基が挙げられる。この二価の基の炭素数は、2~10が好ましい。
【0085】
で表される繰り返し単位が2~20のアルキレンオキシド基としてより好ましくはエチレンオキシド基、プロピレンオキシド基等を繰り返し単位として有するポリアルキレンオキシド基である。ポリアルキレンオキシド基においてアルキレンオキシドの繰り返し単位は好ましくは2~20である。
【0086】
特に好ましいRとしては、具体的に以下の基が挙げられる。
【0087】
-(CHn6- (n6=2~10)
-(CHCHO)n7CHCH- (n7=1~20)
-(CHCHCHO)n8CHCHCH- (n8=1~10)
【0088】
一般式(c-2)で表される化合物は、公知の方法により製造することもできるし、又は市販品として入手することもできる。一般式(c-2)で表される化合物の市販品として、日油(株)製ブレンマーAE-90、日油(株)製ブレンマーAE-200、日油(株)製ブレンマーAE-400、日油(株)製ブレンマーAP-400、日油(株)製ブレンマーPE-90、日油(株)製ブレンマーPE-200、日油(株)製ブレンマーPE-350、日油(株)製ブレンマーPP-1000、日油(株)製ブレンマー50PEP-300、日油(株)製ブレンマー70PEP-350、日油(株)製ブレンマー55PET―800、2-ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学(株)製、ライトエステルHO-250)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学(株)製、ライトエステルHOA)、4-ヒドロキシブチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、4-HBA)等が挙げられる。
【0089】
(c)水酸基と1質量%以上10質量%以下のフッ素原子とを含有する(メタ)アクリレート共重合体は、上記フッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(c-1)、及び水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(c-2)以外に、共重合体の構成単位を形成するモノマーとして、以下の一般式(c-3)で表される(メタ)アクリレート(c-3)を用いることができる。
【0090】
【化4】
【0091】
式中、Rは、H又はメチル基である。Rは、置換されていてもよい芳香族炭化水素基である。nは0~4の整数である。
【0092】
一般式(c-3)において、Rで表される芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、トルイル基、キシリル基、アントラニル基、フェナントリル基、ビフェニル基等の炭素数6~15の芳香族炭化水素基が挙げられる。置換された芳香族炭化水素基の置換基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキシ、メチレンジオキシ、塩素原子、NO、CN、NHCOCHなどが挙げられる。置換基は、芳香族炭化水素基に1~3個、好ましくは1~2個含まれ得る。
【0093】
一般式(c-3)で表される(メタ)アクリレート化合物として特に好ましくは、ベンジルメタクリレートである。
【0094】
一般式(c-3)で表される化合物は、公知の方法により製造することもできるし、又は市販品としてライトエステルBZ(共栄社化学株式会社製)、ファンクリルFA-BZM(日立化成株式会社製)を入手することもできる。
【0095】
また、共重合体の構成単位を形成するモノマーとして、以下の一般式(c-4)で表される(メタ)アクリレート(c-4)を用いることもできる。
【0096】
【化5】
【0097】
式中、Rは、H又はメチル基である。RはH又は炭素原子数が1~50の脂肪族炭化水素基である。
【0098】
一般式(c-4)において、Rは、炭素原子数が1~50の脂肪族炭化水素基である。脂肪族炭化水素基は、エーテル結合、エステル結合、アミド結合又は環状構造を有していてもよい。
【0099】
好ましいRとしては、アルキル基やシクロヘキシル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基などの環状構造を挙げることができる。特に好ましいRとしては、具体的に以下の構造の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0100】
-(CHn6CH (n6=1~30)
【0101】
一般式(c-4)で表される化合物は、公知の方法により製造することもできるし、又は市販品として入手することもできる。一般式(c-4)で表される化合物の市販品として、日油(株)製ブレンマーCHMA、日油(株)製ブレンマーLMA、日油(株)製ブレンマーSMA、日油(株)製ブレンマーVMA、日油(株)製ブレンマーCHA、日油(株)製ブレンマーLA、日油(株)製ブレンマーSA、日油(株)製ブレンマーVA、日立化成(株)製FA-513AS、日立化成(株)製FA-513M等が挙げられる。
【0102】
(c)水酸基と1質量%以上10質量%以下のフッ素原子とを含有する(メタ)アクリレート共重合体の被覆層用樹脂組成物中の含有量は、(a)ポリオール、(b)イソシアネート、及び(c)(メタ)アクリレート共重合体の合計100質量部に対して、0.1~5質量部であることが好ましく、0.5~3質量部であることがより好ましい。
【0103】
(d)表面粗さ材
被覆層4は、表面粗さ材を含有する。表面粗さ材は、被覆層4の表面粗さを調整する粒子である。被覆層4に配合される表面粗さ材の平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上20μm以下であり、より好ましくは1μm以上15μm以下である。被覆層4にこのような表面粗さ材を配合することで、外周面の表面粗さを、容易に適切な範囲に調整することができる。現像ローラ1の外周面の表面粗さを調整することで、トナー搬送性が向上し、一層優れた印字特性が得られる。なお、表面粗さ材の平均粒子径は、レーザー光回折法による粒度分布測定装置を用いて、メジアン径として測定できる。
【0104】
被覆層4に配合される表面粗さ材の種類は特に限定されず、公知のフィラー(充填材)から適宜選択して使用できる。例えば、シリカ、球状樹脂粒子、金属酸化物等であってよい。
【0105】
表面粗さ材の被覆層用樹脂組成物中の含有量は、被覆層用樹脂組成物100質量部に対し、0.1~50質量部であることが好ましく、1~40質量部であることがより好ましい。
【0106】
(e)イオン導電材
イオン導電性物質としては、例えば、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム、リチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、カリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等の無機イオン性導電性物質などが挙げられる。イオン導電材の被覆層用樹脂組成物中における含有量は、被覆層用樹脂組成物100質量部に対し、0.01~5質量部であることが好ましく、0.1~3質量部であることがより好ましい。
【0107】
被覆層4は上記以外の添加剤を更に含有してもよい。例えば、被覆層4は、シランカップリング剤、潤滑剤、重合触媒、分散剤、充填材の添加剤を更に含有してもよい。
【0108】
被覆層4は、被覆層用樹脂組成物を弾性層3上に塗布し、加熱等により(a)ポリオール成分及び(c)水酸基と1質量%以上10質量%以下のフッ素原子とを含有する(メタ)アクリレート共重合体成分と、(b)イソシアネート成分と、を重合して硬化する。塗布液に使用される溶媒は、ポリオール成分及びイソシアネート成分を溶解可能な溶媒であることが好ましく、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等であってよい。
【0109】
被覆層4の厚みは、フィルミングを良好に抑制しつつ、耐久印字性能を向上させる観点から、具体的には1μm以上15μm以下であることが好ましく、3μm以上10μm以下であることがより好ましい。
【0110】
被覆層用樹脂組成物の塗工は、例えば、被覆層用樹脂組成物の塗工液を塗工する塗布法、塗工液に弾性層等を浸漬するディッピング法、塗工液を弾性層等に吹き付けるスプレーコーティング法等の公知の塗工方法によって行われる。被覆層用樹脂組成物は、そのまま塗工してもよいし、被覆層用樹脂組成物に、例えば、メタノール及びエタノール等のアルコール、キシレン及びトルエン等の芳香族系溶媒、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル系溶媒等の揮発性溶媒、又は、水を加えた塗工液を塗工してもよい。このようにして塗工された被覆層用樹脂組成物を硬化する方法は、被覆層用樹脂組成物の硬化等に必要な熱を加えられる方法であればよく、例えば、被覆層用樹脂組成物が塗工された弾性層等を加熱器で加熱する方法、樹脂組成物が塗工された弾性層等を高湿度下に静置する方法等が挙げられる。被覆層用樹脂組成物を加熱硬化させる際の加熱温度は、例えば、100℃以上200℃以下であることが好ましく、特に120℃以上160℃以下であることがより好ましく、加熱時間は10分以上120分間以下であることが好ましく、30分以上60分以下であることがより好ましい。
このようにして形成される被覆層においては、樹脂を形成する前駆体とイオン導電材が反応して一体になっていてもよく、複合体を形成していてもよい。また、イオン導電材が樹脂を形成する前駆体と反応せず、樹脂中に分散していてもよい。
【0111】
本発明における被覆層は、被覆層用樹脂組成物を加熱硬化させてなり、被覆層用樹脂組成物中のフッ素原子の含有量は5質量%未満であることが好ましい。0.01質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上4.5質量%以下が更に好ましく、0.1質量%以上4質量%以下が最も好ましい。0.1質量%以上であることにより、被覆層表面にフッ素元素が転移する特徴から、被覆層表面の撥油性が向上するため、フィルミングを良好に防止することができる。撥油性を向上させるためにフッ素原子を含む化合物(例えば、フッ素系の界面活性剤等)を多く添加すると導電性が低下するため、導電性フィラーの含有量を増加せざるを得ない。また、導電性フィラーの含有量を増加させると樹脂が固くなるため被覆層の摩耗性が低下して耐久印字性能が低下するうえ、コストが上昇するという問題がある。また、導電性付与剤がイオン導電剤の場合、多量に配合するため、コストアップとブリード問題がある。しかしながら、上記のようなフッ素原子の含有量とすることにより、導電性フィラーを増加させる必要がなく、被覆層を柔らかくできるので、被覆層の耐久性が向上し、耐久印字性能に優れる現像ローラを得ることができる。
【0112】
本発明における被覆層用樹脂組成物によって作製された被覆層では、水酸基と1質量%以上10質量%以下のフッ素原子とを含有する(メタ)アクリレート共重合体を含有するため、フッ素原子が樹脂の一部として取り込まれた状態で被覆層の表面近傍に偏在している。したがって、本発明の被覆層は、表面に長期間にわたってフッ素原子が存在するため、画像形成装置の稼動によって溶融した現像剤が被覆層にほとんど付着しなくなり、被覆層に固着する現像剤量を著しく低減することができ、高品位な画像を提供することができる。
【0113】
-ガラス転移点Tg-
本発明の現像ローラの被覆層は、ガラス転移点Tgが、-50℃以上0℃以下である。ガラス転移点Tgは、好ましくは、-40℃以上0℃以下である。
ガラス転移点Tgが-50℃以上であることにより、現像剤の付着性が良好となり、搬送力が向上する。また、ガラス転移点Tgが0℃以下であることにより、柔軟性を持った塗膜になり、トナーダメージを減らし、摩耗性も良好であるため耐久性が向上する。
なお、被覆層のガラス転移点Tgは、後述の実施例で示す測定方法によって測定された値とする。
【0114】
-動摩擦係数μD-
本発明の現像ローラの動摩擦係数μDは、0.05以上0.6以下である。動摩擦係数μDは、好ましくは、0.05以上0.5以下である。動摩擦係数μDが0.05以上であることにより、現像剤の掻き取り性が良くなるため、ゴースト現象の発生を抑制することができる。また、動摩擦係数μDが0.6以下であることにより、現像剤を良好に搬送することができる。
なお、動摩擦係数μDは、後述の実施例で示す測定方法によって測定される値とする。
【0115】
-算術表面粗さRa-
本発明の現像ローラの被覆層は、算術表面粗さRaが0.4以上1.5以下である。算術表面粗さRaは、好ましくは、0.4以上0.9以下である。算術表面粗さRaが0.4以上であることにより、現像剤の搬送力を大きくすることができる。また、算術表面粗さRaが1.5以下であることにより、トナーが被覆層の表面の凹凸に残留することがないため、フィルミングを良好に防止することができる。
なお、算術表面粗さRaは、後述の実施例で示す測定方法によって測定される値とする。
【0116】
(その他の構成)
本発明の現像ローラ1は、軸体2と弾性層3との間、及び弾性層3と被覆層4との間に、接着層又はプライマー層等の中間層を備えていてもよい。ここで、これらの中間層のうち、特に、弾性層3と被覆層4の間に設けられる接着層及びプライマー層については、その電気的特性を調整することにより、現像ローラ1としての電気的特性を調整することができ、これにより、現像ローラ1の現像性能を良好に調整することができる。
【0117】
プライマー層としては、現像ローラのプライマー層として通常用いられるものを使用することができるが、例えば、エステル基を有するウレタン樹脂からなるプライマー層を形成することにより、現像ローラ1の現像性能を良好に維持することができる。
【0118】
[現像装置及び画像形成装置]
次に、本発明の現像装置及び画像形成装置の一実施形態について図2を参照して、説明する。
本発明の現像ローラ1は、現像装置及び画像形成装置における現像剤担持体として、好適に用いることができる。本実施形態において、画像形成装置における現像ローラ以外の構成は特に限定されない。
【0119】
画像形成装置10は、各色(黒色、シアン、マゼンタ、黄色)の現像ユニットB、C、M及びYに装備された複数の像担持体11B、11C、11M及び11Yを転写搬送ベルト6上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置であり、現像ユニットB、C、M及びYが転写搬送ベルト6上に直列に配置されている。現像ユニットBは、像担持体11B例えば感光体(感光ドラムとも称される。)と、帯電手段12B例えば帯電ローラと、露光手段13Bと、現像装置20Bと、転写搬送ベルト6を介して像担持体11Bに当接する転写手段14B例えば転写ローラと、クリーニング手段15Bとを備えている。
【0120】
現像装置20Bは、本発明の現像装置の一例であり、図2に示されるように、本発明の現像ローラ1と現像剤22Bとを備えている。したがって、この画像形成装置10において、現像ローラ1は、現像剤担持体23B、23C、23M及び23Yとして装着されている。現像装置20Bは、具体的には、一成分非磁性の現像剤22Bを収容する筐体21Bと、現像剤22Bを像担持体11Bに供給する現像剤担持体23Bと、現像剤担持体23Bに現像剤22Bを供給するトナー供給ローラ25Bと、現像剤22Bの厚みを調整する現像剤量調節手段24B例えばブレードとを備えてなる。現像装置20Bにおいて、現像剤量調節手段24Bは、図2に示されるように、現像剤担持体23Bの外周面に接触又は圧接している。すなわち、現像装置20Bは「接触式現像装置」である。現像ユニットC、M及びYは現像ユニットBと基本的に同様に構成されており、同じ要素には、同じ符号と各ユニットを示す記号C、M又はYとを付して、説明を省略する。
【0121】
画像形成装置10において、現像装置20Bの現像剤担持体23Bは、その表面が像担持体11Bの表面に接触又は圧接するように配置されている。現像装置20C、20M及び20Yも、現像装置20Bと同様に、その表面が現像剤担持体23C、23M及び23Yが像担持体11C、11M及び11Yの表面に接触又は圧接するように配置されている。すなわち、この画像形成装置10は「接触式画像形成装置」である。
【0122】
定着手段30は、現像ユニットYの下流側に配置されている。この定着手段30は、記録体16を通過させる開口部35を有する筐体34内に、定着ローラ31と、定着ローラ31の近傍に配置された無端ベルト支持ローラ33と、定着ローラ31及び無端ベルト支持ローラ33に巻き掛けられた無端ベルト36と、定着ローラ31と対向配置された加圧ローラ32とを備え、無端ベルト36を介して定着ローラ31と加圧ローラ32とが互いに当接又は圧接するように回転自在に支持されてなる圧力熱定着装置である。画像形成装置10の底部には、記録体16を収容するカセット41が設置されている。転写搬送ベルト6は複数の支持ローラ42に巻回されている。
【0123】
画像形成装置10に使用される現像剤22B、22C、22M及び22Yはそれぞれ、摩擦により帯電可能な現像剤であれば、乾式現像剤でも湿式現像剤でもよく、また、非磁性現像剤でも磁性現像剤でもよい。各現像ユニットB、C、M及びYの筐体21B、21C、21M及び21Y内には、一成分非磁性の、黒色現像剤22B、シアン現像剤22C、マゼンタ現像剤22M及び黄色現像剤22Yがそれぞれ収納されている。
【0124】
画像形成装置10は、以下のようにして記録体16にカラー画像を形成する。まず、現像ユニットBにおいて、帯電手段12Bで帯電した像担持体11Bの表面に露光手段13Bにより静電潜像が形成され、現像剤担持体23Bにより供給された現像剤22Bで黒色の静電潜像が現像される。そして、記録体16が転写手段14Bと像担持体11Bとの間を通過する際に黒色の静電潜像が記録体16表面に転写される。次いで、現像ユニットBと同様にして、現像ユニットC、M及びYによって、静電潜像が黒像に顕像化された記録体16に、それぞれシアン像、マゼンタ像及び黄色像が重畳され、カラー像が顕像化される。次いで、カラー像が顕像化された記録体16は、定着手段30によりカラー像が永久画像として記録体16に定着される。このようにして、記録体16にカラー画像を形成することができる。
【0125】
現像装置20Bは、現像ローラ1を備えており、現像剤搬送性に優れるとともにトナーフィルミングの発生を抑えて、高濃度で高画質の画像を長期にわたって形成することに貢献できる。また、この現像装置20Bを備えた画像形成装置は高濃度で高画質の画像を長期にわたって形成できる。
【0126】
本発明の現像装置及び画像形成装置は、上記したものに限定されることはなく、本発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。
【0127】
画像形成装置は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、本発明の現像ローラが配設される画像形成装置は、各色の現像ユニットを備えた複数の像担持体を転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置に限られず、例えば、単一の現像ユニットを備えたモノクロ画像形成装置、像担持体上に担持された現像剤像を無端ベルトに順次一次転写を繰り返す4サイクル型カラー画像形成装置等であってもよい。また、画像形成装置に用いられる現像剤は、一成分非磁性現像剤とされているが、この発明においては、一成分磁性現像剤であってもよく、二成分非磁性現像剤であっても、また、二成分磁性現像剤であってもよい。
【0128】
画像形成装置は、像担持体、現像剤供給ローラ及びブレード等に接触又は圧接して配置される接触式画像形成装置である。なお、本発明の画像形成装置は、現像剤担持体の表面が像担持体の表面に接触しないように間隙を有して配置される非接触式画像形成装置であってもよい。
【0129】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた発明も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例
【0130】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0131】
[実施例1]
(プライマー層の形成)
無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体(SUM22製、直径10mm、長さ275mm)をエタノールで洗浄し、その表面にシリコーン系プライマー(商品名「プライマーNo.16」、信越化学工業株式会社製)を塗布した。プライマー処理した軸体を、ギヤオーブンを用いて、150℃の温度にて10分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、軸体の外周面にプライマー層を形成した。
【0132】
(弾性層の形成)
次いで、弾性層を形成するためのシリコーンゴム組成物を次のように調製した。すなわち、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(重合度300)100質量部、BET比表面積が110m/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(商品名「R-972」、日本アエロジル株式会社製)1質量部、平均粒子径6μm、嵩密度が0.25g/cmである珪藻土(商品名「オプライトW-3005S」、中央シリカ株式会社製)40質量部、及び、アセチレンブラック(商品名「デンカブラックHS-100」、デンカ株式会社製)5質量部、をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌した後、3本ロールに1回通した。これを再度プラネタリーミキサーに戻し、両末端及び側鎖にSi-H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(重合度17、Si-H量0.0060mol/g)2.1質量部、エチニルシクロヘキサノール0.1質量部、白金系触媒(Pt濃度1質量%)0.1質量部を添加し、30分撹拌脱泡混練して、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を調製した。
【0133】
調製した付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を、金型を用いて射出成形し、軸体の外周面上にゴム材料からなる弾性体を成形した。射出成形では、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を120℃で10分間加熱して硬化させ、200℃4時間の2次加硫を行い外径16mmの弾性層を成形した。
【0134】
(被覆層の形成)
次いで、被覆層を形成するための樹脂組成物を次のように調製した。
なお、各実施例及び比較例の被覆層用樹脂組成物における、(a)ポリオール、(b)イソシアネートの合計含有量、(c)水酸基と1質量%以上10質量%以下のフッ素原子とを含有する(メタ)アクリレート共重合体、(d)表面粗さ材、及び(e)イオン導電材の含有量(質量部)を表1に示す。
【0135】
-被覆層用樹脂組成物-
(a)アクリルポリオール(UH-2041、東亜合成製) 20質量部
(b)イソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート) 25質量部
(c)水酸基と1質量%以上10質量%以下のフッ素原子とを含有する(メタ)アクリレート共重合体 0.5質量部
(d)表面粗さ材(シリカ)ACEMATT OK607 エボニック製
3質量部
(e)イオン導電材(カリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、商品名「EF-N112」、三菱マテリアル電子化成株式会社製) 0.2質量部
ポリイソシアネートと縮合系ポリエステルポリオールとのモル比[NCO/OH]は1.1/1であった。
【0136】
上記被覆層用樹脂組成物を弾性層の外周面にスプレーコーティング法によって塗布し、160℃で30分間加熱して、層厚3~7μmの被覆層を形成した。このようにして、軸体、弾性層及び被覆層を備えた現像ローラを製造した。
【0137】
[実施例2]
(c)水酸基と1質量%以上10質量%以下のフッ素原子とを含有する(メタ)アクリレート共重合体を0.5質量部から1.0質量部に代えて、(d)表面粗さ材シリカをACEMATT OK412 5質量部にした以外は、実施例1と同様に被覆層用樹脂組成物を調製し、被覆層を形成した。
【0138】
[実施例3]
(a)アクリルポリオールの20質量部のうち4質量部をアクリル共重合フッ素樹脂(商品名「TR-101」、DIC株式会社製)に代えて、(d)表面粗さ材シリカをACEMATT OK412 3質量部にした以外は、実施例1と同様に被覆層用樹脂組成物を調製し、被覆層を形成した。
【0139】
[実施例4]
(c)水酸基と1質量%以上10質量%以下のフッ素原子とを含有する(メタ)アクリレート共重合体を0.5質量部から0.25質量部に代えた以外は実施例3と同様に被覆層用樹脂組成物を調製し、被覆層を形成した。
【0140】
[比較例1]
(c)水酸基と1質量%以上10質量%以下のフッ素原子とを含有する(メタ)アクリレート共重合体を添加しなかった以外は、実施例2と同様に被覆層用樹脂組成物を調製し、被覆層を形成した。
【0141】
[比較例2]
(a)アクリルポリオールをSU-28(綜研化学製)20質量部にし、(b)イソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート)12質量部にし、(d)表面粗さ材シリカをACEMATT OK607 1質量部にし、(c)水酸基と1質量%以上10質量%以下のフッ素原子とを含有する(メタ)アクリレート共重合体を添加しなかった以外は、実施例1と同様に被覆層用樹脂組成物を調製し、被覆層を形成した。
【0142】
[比較例3]
(d)表面粗さ材シリカをACEMATT OK412 3質量部に変更し、ポリエステルポリオールに代えて、アクリルポリオールを20質量部配合し、(c)水酸基と1質量%以上10質量%以下のフッ素原子とを含有する(メタ)アクリレート共重合体を0.5質量部加えた以外は比較例2と同様に被覆層用樹脂組成物を調製し、被覆層を形成した。
【0143】
[評価]
次いで、画像形成装置C610dn2(型番、株式会社沖データ製)を用意し、この画像形成装置の現像ローラを作製した各実施例及び各比較例の現像ローラに差し替えて、画像形成装置を得た。得られた画像形成装置について、以下の方法で、フィルミングの評価、印字濃度の評価、及び画像均一性の評価をそれぞれ行い、結果を表1に示した。
【0144】
(ガラス転移点Tgの測定方法)
X-DSC7000(商品名、株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用い、試料約10mgをアルミ製容器に入れてアルミ製の蓋を載せてクリンプし、装置にセットした。-80℃から60℃まで窒素雰囲気中で、昇温速度(10℃/min)で昇温してDSC測定を行った。ガラス転移点Tgは、ガラス転移点Tg近傍の吸熱カーブの接線とベースラインとの接点から算出した。
【0145】
(動摩擦係数μDの測定方法)
現像ローラの動摩擦係数μDの測定は以下の手順で行った。
本発明において動摩擦係数の測定に用いる測定機の概略図を図3に示す。この測定方法は、オイラーのベルト式に準拠している。
測定機100は、図3に示すように、測定対象である現像ローラ101と、現像ローラ101に所定の角度θで接触させたベルト(厚さ100μm、幅30mm、長さ200mm、ポリエチレンテレフタレート(PET)製、商品名:ルミラーS10 #100、東レ株式会社製)102と、ベルト102の一端に繋がれた錘103と、ベルト102の他端に繋がれたフォースゲージ104とから構成される。図3に示す状態で、現像ローラ101を所定の方向に所定の速度で回転させたとき、フォースゲージ104で測定された力をF[g重]、錘の重さとベルトの重さとの和をW[g重]とするとき、摩擦係数は以下の式で求められる。
摩擦係数μD=(1/θ)ln(F/W)
現像ローラを回転させた直後の値が、回転を開始するのに必要な力であり、それ以降の値が回転を継続するのに必要な力である。したがって、回転開始点(すなわちt=0[秒]の時点)の摩擦係数が静摩擦係数であり、t>0[秒]の任意の時間における摩擦係数が、任意の時間における動摩擦係数である。本発明では、回転開始5秒後(すなわちt=5[秒]の時点)から10秒後(すなわちt=10[秒]の時点)までの5秒間に得られる摩擦係数の平均値をもって、上記の動摩擦係数μDとした。なお、本発明においては、W=50[g重]とし、現像ローラの回転速度を200rpmとし、測定環境を23℃/55%RHとした。
【0146】
(算術平均粗さRaの測定方法)
上記のようにして作製された現像ローラを、JIS B0601-2001に基づき、表面粗さ計(商品名「サーフコム 1400G」、株式会社東京精密製)により算術平均粗さRaを測定した。
【0147】
(被覆層用樹脂組成物中のフッ素原子の含有量)
被覆層用樹脂組成物を切りだし、0.01gを試料燃焼装置AQF-2100H(商品名、株式会社三菱ケミカルアナリテック製)で燃焼及び吸収し、吸収液をイオンクロマトグラフ(島津製作所製)で分析し、フッ素の含有量を求めた。
【0148】
(フィルミングの評価)
作製した現像ローラを装着した画像形成装置を用い、温度23℃、湿度55%RHの条件で、10000枚印字した後の現像ローラの表面に付着している現像剤を吸引後、フィルミング重量測定ジグに転写した質量を測定した。フィルミング評価については、転写した現像剤の質量で下記基準により評価した。本試験において、フィルミング量は、評価がBであると合格である。
-評価基準-
A:転写した現像剤の質量が0mg以上0.02mg未満
B:転写した現像剤の質量が0.02mg以上0.05mg未満
C:転写した現像剤の質量が0.05mg以上
【0149】
(印字濃度の評価)
温度23℃、湿度55%RHの条件下、温度30℃、湿度80%RHの条件下、及び、温度10℃、湿度20%RHの条件下で、それぞれベタ画像を2枚印字し、X-Rite社製の508分光濃度計を用いてベタ画像の印字濃度を測定し、以下の評価基準により評価した。
-評価基準-
A:印字濃度が1.4以上
B:印字濃度が1.2以上1.4未満
C:印字濃度が1.0以上1.2未満
【0150】
(画像均一性の評価)
温度23℃、湿度55%RHの条件下、温度30℃、湿度80%RHの条件下、温度10℃、湿度20%RHの条件下で、それぞれベタ画像を印字し、1枚目の印字濃度と2000枚目の印字濃度とを比較した。具体的には、ベタ印字の初期印字形成部分と終期印字形成部分との濃度段差率を求め、下記評価基準により評価した。
-評価基準-
A:濃度段差率が1.1以内
B:濃度段差率が1.1より大きく1.2以内
C:濃度段差率が1.2より大きい
【0151】
評価結果を表1に示す。
【0152】
【表1】
【0153】
表1に示すように、本発明の被覆層を有する現像ローラは、フィルミング、印字濃度、及び画像均一性のいずれも優れることがわかる。
【符号の説明】
【0154】
1 現像ローラ
2 軸体
3 弾性層
4 被覆層
6 転写搬送ベルト
10 画像形成装置
11B、11C、11M、11Y 像担持体
12B、12C、12M、12Y 帯電手段
13B、13C、13M、13Y 露光手段
14B、14C、14M、14Y 転写手段
15B、15C、15M、15Y クリーニング手段
16 記録体
20B、20C、20M、20Y 現像装置
21B、21C、21M、21Y、34 筐体
22B、22C、22M、22Y 現像剤
23B、23C、23M、23Y 現像剤担持体
24B、24C、24M、24Y 現像剤量調節手段
25B、25C、25M、25Y トナー供給ローラ
30 定着手段
31 定着ローラ
32 加圧ローラ
33 無端ベルト支持ローラ
35 開口部
36 無端ベルト
41 カセット
42 支持ローラ
B、C、M、Y 現像ユニット
100 測定機
101 現像ローラ101
102 ベルト
103 錘1
104 フォースゲージ
図1
図2
図3