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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】現像ローラ、現像装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
G03G15/08 235
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018221558
(22)【出願日】2018-11-27
(65)【公開番号】P2020086171
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慧
(72)【発明者】
【氏名】廣谷 泰男
(72)【発明者】
【氏名】高梨 寛之
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-146010(JP,A)
【文献】特開平11-267583(JP,A)
【文献】特開2003-241504(JP,A)
【文献】特開2010-018811(JP,A)
【文献】特開2001-188412(JP,A)
【文献】特開2017-107197(JP,A)
【文献】特開2003-020318(JP,A)
【文献】特開2007-192978(JP,A)
【文献】特開2007-212842(JP,A)
【文献】特開2008-096947(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0058154(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
C08G 18/61
C08G 18/62
C08L 75/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体の外周面に形成された弾性層と、該弾性層の外周面に形成された被覆層とを備える現像ローラであって、
前記被覆層が、(a)ポリオール、(b)イソシアネート、(c)表面粗さ材、及び(d)導電材を含有する被覆層用樹脂組成物を熱硬化させてなり、
前記(a)ポリオールが、ポリカーボネートジオールと、(a1)シリコーングラフトアクリルポリオール、及び(a2)片末端ジオール型シリコーンオイルの少なくとも1種と、を含有し、
前記(c)表面粗さ材が、平均粒子径が1μm以上15μm以下の小粒径シリカであり、
前記(c)表面粗さ材の含有量が、前記被覆層用樹脂組成物100質量部に対し、1質量部以上40質量部以下である現像ローラ。
【請求項2】
前記(a)ポリオール中の、前記(a1)シリコーングラフトアクリルポリオール、及び前記(a2)片末端ジオール型シリコーンオイルの少なくとも1種の含有量が、2質量%以上600質量%以下である請求項1記載の現像ローラ。
【請求項3】
前記(a1)シリコーングラフトアクリルポリオール及び前記(a2)片末端ジオール型シリコーンオイルのうち、前記(a1)シリコーングラフトアクリルポリオールのみを含む請求項1又は2記載の現像ローラ。
【請求項4】
前記(a)ポリオール中の、前記(a1)シリコーングラフトアクリルポリオールの含有量が、2質量%以上40質量%以下である請求項3記載の現像ローラ。
【請求項5】
請求項1から4いずれか1項記載の現像ローラを備えた現像装置。
【請求項6】
請求項1から4いずれか1項記載の現像ローラを備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像ローラ、現像装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置に用いられる現像ローラは、静電潜像が形成された像担持体に現像剤を搬送する機能を有する。現像ローラが有する現像剤搬送性は、画像形成装置の品質、特に印字濃度に影響する。したがって、現像ローラの表面に凹凸を形成するとともに、現像ローラを構成する各種材料の電気的特性を調整し、これにより、現像ローラの現像剤搬送性を向上させることが検討されている。
【0003】
現像ローラは、感光ドラムと接した状態で、速度差を生じさせながら同方向に回転させることにより、トナーを感光ドラムに付着させている。したがって、現像ローラは、表面の滑りが悪いと、感光ドラムとの間で引っ掛かりと開放を繰り返すこととなる。このような場合、トナーが均一に感光ドラムに供給されないため、画像に帯状の濃淡、いわゆるバンディングが生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、バンディングが良好に抑制された現像ローラ、現像装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、現像ローラの感光ドラムへの引っ掛かりを解消するべく、被覆層に用いる樹脂を種々検討したところ、被覆層のウレタン樹脂の調整成分に、特定のポリオールを含有させることにより、バンディングが改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の現像ローラは、軸体の外周面に形成された弾性層と、弾性層の外周面に形成された被覆層とを備える現像ローラであって、被覆層が、(a)ポリオール、(b)イソシアネート、(c)表面粗さ材、及び(d)導電材を含有する被覆層用樹脂組成物を熱硬化させてなり、(a)ポリオールが、(a1)側鎖に未反応性シリコーン基を有するポリオール、及び(a2)片末端ジオール型シリコーンオイルの少なくとも1種を含有するものである。
【0007】
(a)ポリオール中の、(a1)側鎖に未反応性シリコーン基を有するポリオール、及び(a2)片末端ジオール型シリコーンオイルの少なくとも1種の含有量は、2質量%以上60質量%以下であることが好ましい。
【0008】
(a1)側鎖に未反応性シリコーン基を有するポリオール及び(a2)片末端ジオール型シリコーンオイルのうち、(a1)側鎖に未反応性シリコーン基を有するポリオールのみを含み、(a1)側鎖に未反応性シリコーン基を有するポリオールが、シリコーングラフトアクリルポリオールであることが好ましい。
【0009】
上記の場合、(a)ポリオール中の、シリコーングラフトアクリルポリオールの含有量は、2質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
【0010】
本発明の現像装置は、本発明の現像ローラを備えたものである。
【0011】
本発明の画像形成装置は、本発明の現像ローラを備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、バンディングが良好に抑制された現像ローラ、現像装置及び画像形成装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の現像ローラの一実施形態を示す概略斜視図である。
図2図2は、本発明の画像形成装置の一実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、以下の実施形態は例示の目的で提示するものであり、本発明は、以下に示す実施形態に何ら限定されるものではない。
【0015】
[現像ローラ]
図1は、本発明の現像ローラの一実施形態を示す概略斜視図である。
本発明の現像ローラ1は、図1に示すように、軸体2と、軸体2の外周に設けられた弾性層3と、弾性層3の外周に設けられた被覆層4とを有する。
以下、本発明の現像ローラ1の構成について説明する。
【0016】
(軸体)
軸体2は、好ましくは、導電性を有する、従来公知の現像ローラに用いられる軸体を用いることができる。軸体2は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、及び真鍮からなる群より選択される少なくとも1種の金属で構成されていることが好ましい。このような金属で構成される軸体2は、一般に、「芯金」の名称でも知られている。
【0017】
軸体2は、絶縁性樹脂を含むものであってもよい。絶縁性樹脂は、例えば、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。軸体2は、例えば、絶縁性樹脂からなる芯体と、この芯体上に設けられたメッキ層と、を備えるものであってよい。このような軸体2は、例えば、絶縁性樹脂からなる芯体にメッキを施して導電化することにより得ることができる。
【0018】
軸体2は、良好な導電性を得るために、芯金であることが好ましい。
【0019】
軸体2の形状は、例えば、棒状、管状等であることが好ましい。軸体2の断面形状は、例えば、円形、楕円形であってもよく、多角形等の非円形であってもよい。軸体2の外周面には、弾性層3との接着性を向上させるため、洗浄処理、脱脂処理、プライマー処理等の処理が施されていてもよい。
【0020】
軸体2の軸線方向の長さは特に限定されず、設置される画像形成装置の形態に応じて適宜調整してもよい。例えば、印字対象がA4サイズである場合、軸体2の軸線方向の長さは250mm以上320mm以下であることが好ましく、260mm以上310mm以下であることがより好ましい。また、軸体2の直径(外接円の直径)も特に限定されず、設置される画像形成装置の形態に応じて適宜調整すればよい。例えば、軸体2の外径(外接円の直径)は、4mm以上14mm以下であることが好ましく、6mm以上10mm以下であることがより好ましい。
【0021】
(弾性層)
弾性層3は、ゴム組成物を軸体2の外周面に加熱硬化して形成される。弾性層3を形成するためのゴム組成物は、ゴムと、導電材と、所望により各種添加剤とを含有するのが好ましい。
【0022】
ゴム組成物中のゴムとしては、例えば、シリコーン又はシリコーン変性ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(エチレンプロピレンジエンゴムを含む)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。シリコーン若しくはシリコーン変性ゴム又はウレタンゴムであるのが好ましく、シリコーン又はシリコーン変性ゴムが、圧縮永久歪を低減することができるとともに、低温環境下における柔軟性に優れる点、さらには、耐熱性及び帯電特性等に優れる点で、特に好ましい。シリコーンゴムとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等のオルガノポリシロキサンの架橋物が挙げられる。
シリコーンゴム組成物としては、例えば、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物、及び付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物が挙げられる。
【0023】
-付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物-
付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物は、例えば、(A)下記平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサン、(B)充填材、(C)導電材を含有するものであってよい。
SiO(4-n)/2 …(1)
式(1)中、nは1.95以上2.05以下の正数を示す。また、Rは、同一又は異なっていてよい、置換又は非置換の一価の炭化水素基を示す。炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1以上12以下であり、より好ましくは1以上8以下である。
【0024】
としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びドデシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基及びヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基及びトリル基等のアリール基、β-フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。また、Rは、これらの炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部が置換基で置換された基であってもよい。置換基は、例えばハロゲン原子、シアノ基等であってよい。置換基を有する炭化水素基としては、例えば、クロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0025】
(A)オルガノポリシロキサンは、分子鎖末端が、トリメチルシリル基等のトリアルキルシリル基、ジメチルビニルシリル基等のジアルキルアラルキルシリル基、ジメチルヒドロキシシリル基等のジアルキルヒドロキシシリル基、トリビニルシリル基等のトリアラルキルシリル基などで封鎖されていることが好ましい。
【0026】
(A)オルガノポリシロキサンは、分子中に2つ以上のアルケニル基を有することが好ましい。(A)オルガノポリシロキサンは、Rのうち0.001モル%以上5モル%以下(より好ましくは0.01モル%以上0.5モル%以下)のアルケニル基を有することが好ましい。(A)オルガノポリシロキサンが有するアルケニル基としてはビニル基が特に好ましい。
【0027】
(A)オルガノポリシロキサンは、例えば、オルガノハロシランの1種若しくは2種以上を共加水分解縮合することによって、又は、シロキサンの3量体若しくは4量体等の環状ポリシロキサンを開環重合することによって得ることができる。(A)オルガノポリシロキサンは、基本的には直鎖状のジオルガノポリシロキサンであってよく、一部分岐していてもよい。また、(A)オルガノポリシロキサンは、分子構造の異なる2種又はそれ以上の混合物であってもよい。
【0028】
(A)オルガノポリシロキサンは、25℃における動粘度が100cSt以上であることが好ましく、100000cSt以上10000000cSt以下であることがより好ましい。また、(A)オルガノポリシロキサンの重合度は、例えば100以上であることが好ましく、3000以上10000以下であることがより好ましい。
【0029】
(B)充填材としては、例えばシリカ系充填材が挙げられる。シリカ系充填材としては、例えば、煙霧質シリカ、沈降性シリカ等が挙げられる。
【0030】
シリカ系充填材としては、RSi(ORで示されるシランカップリング剤で表面処理された、表面処理シリカ系充填材を好適に用いることができる。ここで、Rは、ビニル基又はアミノ基を有する基であってよく、例えば、グリシジル基、ビニル基、アミノプロピル基、メタクリロキシ基、N-フェニルアミノプロピル基、メルカプト基等であってよい。Rはアルキル基であってよく、例えばメチル基、エチル基等であってよい。シランカップリング剤は、例えば信越化学工業株式会社製の商品名「KBM1003」、「KBE402」等として、容易に入手できる。表面処理シリカ系充填材は、定法に従って、シリカ系充填材の表面をシランカップリング剤で処理することにより得ることができる。表面処理シリカ系充填材としては、市販品を用いてもよく、例えば、J.M.HUBER株式会社製の商品名「Zeothix 95」等が挙げられる。
【0031】
シリカ系充填材の配合量は、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して11質量部以上39質量部以下であることが好ましく、15質量部以上35質量部以下であることがより好ましい。また、シリカ系充填材の平均粒子径は、1μm以上80μm以下であることが好ましく、2μm以上40μm以下であることがより好ましい。なお、シリカ系充填材の平均粒子径は、レーザー光回折法による粒度分布測定装置を用いて、メジアン径として測定できる。
【0032】
(C)導電材の配合量は、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましい。また、(C)導電材の配合量は、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して、15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。
【0033】
付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物は、(A)から(C)以外の添加剤を更に含有していてよい。添加剤としては、例えば、助剤(鎖延長剤、架橋剤等)、触媒、分散剤、発泡剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。
【0034】
添加剤の具体例としては、(A)オルガノポリシロキサンより重合度の低いジメチルシロキサンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、シラノール、ジフェニルシランジオール及びα,ω-ジメチルシロキサンジオール等の両末端シラノール基封止低分子シロキサン、シラン等の分散剤が挙げられる。また、添加剤の具体例としては、オクチル酸鉄、酸化鉄、酸化セリウム等の耐熱向上剤が挙げられる。また、添加剤としては、接着性、成形加工性等を向上させるための各種カーボンファンクショナルシラン、各種オレフィン系エラストマー等を用いてもよい。
【0035】
-付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物-
付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、例えば、(D)分子中に2つ以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、(E)分子中にケイ素原子と結合する水素原子を2つ以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(F)充填材と、(G)導電材と、(H)付加反応触媒と、を含有していてよい。
【0036】
(D)オルガノポリシロキサンとしては、下記平均組成式(2)で示される化合物が好適である。
SiO(4-a)/2 …(2)
式(2)中、aは1.5以上2.8以下の正数を示し、好ましくは1.8以上2.5以下、より好ましくは1.95以上2.05以下である。また、Rは、同一又は異なっていてよい、置換又は非置換の一価の炭化水素基を示す。ただし、一分子中のRのうち少なくとも2つはアルケニル基である。炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1以上12以下であり、より好ましくは1以上8以下である。
【0037】
としては、上記Rとして例示した基と同じ基が例示できる。また、一分子中のRのうち少なくとも2つがアルケニル基であり、それ以外のRはアルキル基であることが好ましい。アルケニル基はビニル基であることが好ましく、アルキル基はメチル基であることが好ましい。また、Rのうち、例えば90%以上がアルキル基(好ましくはメチル基)であってよい。(D)オルガノポリシロキサンにおけるアルケニル基の含有量は、例えば、1.0×10-6mol/g以上5.0×10-3mol/g以下であることが好ましく、5.0×10-6mol/g以上1.0×10-3mol/g以下であることがより好ましい。
【0038】
(D)オルガノポリシロキサンは、25℃で液状であることが好ましく、25℃における粘度が100mPa・s以上1000000mPa・s以下であることが好ましく、200mPa・s以上100000mPa・s以下であることがより好ましい。また、(D)オルガノポリシロキサンの平均重合度は100以上800以下であることが好ましく、150以上600以下であることがより好ましい。
【0039】
(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均組成式(3)で示される化合物が好適である。
SiO(4-b-c)/2 …(3)
式(3)中、bは0.7以上2.1以下の正数を示し、cは0.001以上1.0以下の正数を示し、b-cは0.8以上3.0以下である。また、Rは、同一又は異なっていてよい、置換又は非置換の一価の炭化水素基を示す。炭化水素基の炭素原子数は、1以上10以下であることが好ましい。なお、Rとしては、上記Rとして例示した基と同じ基が例示できる。
【0040】
(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、ケイ素原子に結合した水素原子(Si-H)を一分子中に2つ以上有しており、3つ以上有していることが好ましい。また、(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンが一分子中に有する、ケイ素原子に結合した水素原子の個数は、200以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましい。
【0041】
(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンにおいて、ケイ素原子に結合した水素原子の含有量は、0.001mol/g以上0.017mol/g以下であることが好ましく、0.002mol/g以上0.015mol/g以下であることがより好ましい。
【0042】
(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、及び、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C)SiO3/2単位とからなる共重合体等が挙げられる。
【0043】
(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(D)オルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。また、(D)オルガノポリシロキサンのアルケニル基に対する、(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンのSi-Hのモル比は、0.3から5.0であることが好ましく、0.5から2.5であることがより好ましい。
【0044】
(F)充填材は、例えば、無機質充填材であってよい。付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物に(F)充填材を配合することで、圧縮永久歪が低くなり、体積抵抗率が経時で安定し、かつ十分なローラ耐久性が得られる。
【0045】
(F)充填材の平均粒子径は、1μm以上30μm以下であることが好ましく、2μm以上20μm以下であることがより好ましい。(F)充填材の平均粒子径が1μm以上であると、体積抵抗率の経時変化が一層抑制される。また、(F)充填材の平均粒子径が30μm以下であると、耐久性に一層優れる弾性層3を得ることができる。なお、(F)充填材の平均粒子径は、レーザー光回折法による粒度分布測定装置を用いて、メジアン径として測定できる。
【0046】
(F)充填材の嵩密度は、0.1g/cm以上0.5g/cm以下であることが好ましく、0.15g/cm以上0.45g/cm以下であることがより好ましい。(F)充填材の嵩密度を上記の範囲に調整することにより、圧縮永久歪をより低くすることができ、体積抵抗率の経時変化が一層抑制され、また、耐久性に一層優れる弾性層3を得ることができる。(F)充填材の嵩密度は、JIS K 6223の見かけ比重の測定方法に基づいて求めることができる。
【0047】
(F)充填材としては、例えば、珪藻土、パーライト、マイカ、炭酸カルシウム、ガラスフレーク、中空充填材等が挙げられる。これらの中でも、(F)充填材としては、珪藻土、パーライト及び発泡パーライトの粉砕物を好適に用いることができる。
【0048】
(F)充填材の配合量は、(D)オルガノポリシロキサン100質量部に対して5質量部以上100質量部以下であることが好ましく、10質量部以上80質量部以下であることがより好ましい。
【0049】
(G)導電材の配合量は、(D)オルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.5質量部以上15質量部以下であることが好ましく、1質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
【0050】
(H)付加反応触媒は、(D)オルガノポリシロキサンと(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応を活性化できる触媒であればよい。(H)付加反応触媒としては、例えば、白金族元素を有する触媒が挙げられる。白金族元素を有する触媒としては、例えば、白金系触媒(例えば、白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等)、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等が挙げられる。
【0051】
(H)付加反応触媒の配合量は、触媒量であってよい。例えば、(H)付加反応触媒の配合量は、白金族元素量が、(D)オルガノポリシロキサン及び(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計質量に対して0.5質量ppm以上1000質量ppm以下となる量であることが好ましく、1質量ppm以上500質量ppm以下となる量であることがより好ましい。
【0052】
付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は(D)~(H)以外の添加剤を更に含有してもよい。添加剤としては、例えば、助剤(鎖延長剤、架橋剤等)、発泡剤、分散剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、希釈剤、反応性希釈剤、溶剤等が挙げられる。
【0053】
添加剤の具体例としては、低分子シロキサンエステル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、シラノール、フェニルシランジオール等の分散剤が挙げられる。また、オクチル酸鉄、酸化鉄、酸化セリウム等の耐熱向上剤が挙げられる。また、接着性、成形加工性等を向上させるための各種カーボンファンクショナルシラン、各種オレフィン系エラストマー等を用いてもよい。また、難燃性を付与させるハロゲン化合物等を用いてもよい。
【0054】
付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の25℃における粘度は、5Pa・s以上500Pa・s以下であることが好ましく、5Pa・s以上200Pa・s以下であることがより好ましい。
【0055】
弾性層3の厚さは特に限定されず、0.1mm以上6mm以下であることが好ましく、1mm以上4mm以下であることがより好ましい。なお、本明細書における厚さは、現像ローラ1の軸線方向に垂直な方向の厚さを示す。
【0056】
弾性層3の外径は特に限定されず、例えば6mm以上25mm以下であることが好ましく、7mm以上21mmであることがより好ましい。
【0057】
弾性層3の外周面には、被覆層4との接着性向上等の目的で、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、エキシマ処理、UV処理、イトロ処理、フレーム処理等の表面処理が施されていてよい。
【0058】
弾性層3の形成方法は特に限定されない。例えば、弾性層3は、シリコーンゴム組成物の押出成形、LIMS成形等の方法で形成されてよい。また、弾性層3は、軸体2上に形成された弾性体(シリコーンゴム組成物の硬化物)の研削・研磨等によって形成してもよい。
【0059】
弾性層3は、公知の成形方法によって、加熱硬化と成形とを同時に又は連続して行い、軸体2の外周面に形成される。ゴム組成物の硬化方法はゴム組成物の硬化に必要な熱を加えられる方法であればよく、また弾性層3の成形方法も押出成形による連続加硫、プレス、インジェクションによる型成形等、特に制限されるものではない。例えば、ゴム組成物が付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物である場合には、例えば、押出成形等を選択することができ、ゴム組成物が付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物である場合には、例えば、金型を用いる成形法を選択することができる。
【0060】
ゴム組成物を硬化させる際の加熱温度は、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物の場合は、100℃以上500℃以下が好ましく、120℃以上300℃以下がより好ましい。加熱時間は数秒以上1時間以下が好ましく、10秒以上35分以下がより好ましい。付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の場合は、加熱温度は、100℃以上300℃以下が好ましく、110℃以上200℃以下がより好ましい。加熱時間は数秒以上5時間以下が好ましく、1分以上3時間以下がより好ましい。また、必要に応じ、二次加硫してもよい。付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物の場合は、例えば、100℃以上200℃以下で1時間以上20時間以下程度の硬化条件が選択される。また、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の場合は、例えば、120℃以上250℃以下で2時間以上70時間以下程度の硬化条件が選択される。また、ゴム組成物は既知の方法で発泡硬化させることにより、気泡を有するスポンジ状弾性層を容易に形成することもできる。
【0061】
-その他の成分-
ゴム組成物は上記以外の各種添加剤を更に含有してもよい。各種添加剤としては、例えば、助剤(鎖延長剤、架橋剤等)、触媒、分散剤、発泡剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。
【0062】
(被覆層)
被覆層4は、弾性層3の外周であって、現像ローラ1の最表面に設けられるものである。被覆層4は、弾性層3、又は所望により形成されたプライマー層の外周面に、組成物(以下、被覆層用樹脂組成物という)を塗工し、次いで、塗工された被覆層用樹脂組成物を加熱硬化させて形成される。
本発明の被覆層4は、(a)ポリオール、(b)イソシアネート、(c)表面粗さ材、及び(d)導電材を含有する被覆層用樹脂組成物を熱硬化させてなるものであり、(a)ポリオールが、(a1)側鎖に未反応性シリコーン基を有するポリオール、及び(a2)片末端ジオール型シリコーンオイルの少なくとも1種を含有するものである。
以下、被覆層用樹脂組成物の各成分(a)~(d)について説明する。
【0063】
(a)ポリオール
ポリオールは、ポリウレタンの調製に通常使用される各種のポリオールであればよく、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリカーボネートポリオールから選択された少なくとも1種のポリオールであるのが好ましい。
【0064】
ポリエーテルポリオールは、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール-エチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、テトラヒドロフランとアルキレンオキサイドとの共重合ポリオール、及び、これらの各種変性体又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0065】
ポリエステルポリオールは、分子内に2つ以上のエステル結合と、2つ以上のヒドロキシル基を有する。ポリエステルポリオールとしては、例えば、ジカルボン酸とポリオールとの縮合反応物等が挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0066】
ポリアクリレートポリオールは、ヒドロキシル基含有モノマーと、オレフィン系不飽和モノマーとのコポリマーである。例えば(メタ)アクリル酸のエステル、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルエステル、マレイン酸モノアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、又はフマル酸ジアルキルエステルと、α-オレフィン、不飽和オリゴマー及び不飽和ポリマーとのコポリマーである。
【0067】
ポリカーボネートポリオールは、分子内に2つ以上のカーボネート結合と、2つ以上のヒドロキシル基を有する。ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオールとカーボネート化合物との縮合反応物等が挙げられる。また、カーボネート化合物としては、例えば、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、アルキレンカーボネート等が挙げられる。ポリカーボネートポリオールの原料として用いられるポリオールとしては、例えば、ヘキサンジオール、ブタンジオール等のジオール、2,4-ブタントリオール等のトリオールなどが挙げられる。
ポリオールは、後述するイソシアネート等との相溶性に優れる点で、500以上8000以下の数平均分子量を有するのが好ましく、500以上5000以下の数平均分子量を有するのがより好ましい。イオン液体が水酸基含有イオン液体である場合には、800以上15000以上の数平均分子量を有するのが好ましく、1000以上5000以下の数平均分子量を有するのがより好ましい。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレンに換算したときの分子量である。
【0068】
(a)ポリオールは、(a1)側鎖に未反応性シリコーン基を有するポリオール、及び(a2)片末端ジオール型シリコーンオイルの少なくとも1種を含有するものである。
以下、(a1)側鎖に未反応性シリコーン基を有するポリオール、及び(a2)片末端ジオール型シリコーンオイルについて説明する。
【0069】
(a1)側鎖に未反応性シリコーン基を有するポリオール
(a1)側鎖に未反応性シリコーン基を有するポリオールとしては、例えば、以下の一般式(1)及び(2)で表される構成単位を含むシリコーングラフトアクリルポリオールが挙げられる。
【0070】
【化1】
【0071】
上記一般式(1)及び(2)において、Rは、H又はメチル基を示す。Xは、炭素数1以上12以下の2価の連結基である。連結基としては、アルキレン基又はアルケニレン基が好ましい。Rはヒドロキシ基を有する炭素数1以上12以下のアルキル基である。
【0072】
(a1)側鎖に未反応性シリコーン基を有するポリオールの数平均分子量は、500以上300000以下であることが好ましい。
(a1)側鎖に未反応性シリコーン基を有するポリオール中のシリコーン基の数平均分子量は500以上100000以下であることが好ましい。
また、(a1)側鎖に未反応性シリコーン基を有するポリオール中のシリコーン基は、全組成物中1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
【0073】
(a1)側鎖に未反応性シリコーン基を有するポリオールの市販品としては、信越化学工業(株)製、シリコーングラフトアクリル樹脂、商品名:X-24-798A、X-22-8004(R4:C2H4OH、官能基当量:3250(g/mol))、X-22-8009(R4:Si(OCH3)3含有アルキル基、官能基当量:6200(g/mol))、X-22-8053(R4:H、官能基当量:900(g/mol))、X-22-8084、X-22-8084EM、X-22-8195(R4:H、官能基当量:2700(g/mol))、東亞合成(株)製サイマックシリーズ(US-270、US-350、US-352、US-380、US-413、US-450等)、レゼタGS-1000シリーズ(GS-1015、GS-1302等)等が挙げられる。
【0074】
(a2)片末端ジオール型シリコーンオイル
(a2)片末端ジオール型シリコーンオイルとしては、以下の一般式(3)で表されるものが挙げられる。
【0075】
【化2】
【0076】
上記一般式(3)中、Rは及びRは、炭素数1以上の12以下のアルキル基である。Rは、単結合、又は炭素数1以上12以下のアルキレン基を示す。
【0077】
(a2)片末端ジオール型シリコーンオイルの粘度は130以上550以下(mm/s)であることが好ましく、水酸基価は、8以上35以下(mgKOH/g)であることが好ましい。
(a2)片末端ジオール型シリコーンオイルの分子量は、3000以上15000以下であることが好ましい。
市販品としては、信越化学工業株式会社製のX-22-176DX、X-22-176F、X-22-176GX-Aが挙げられる。
【0078】
(a1)側鎖に未反応性シリコーン基を有するポリオール、及び(a2)片末端ジオール型シリコーンオイルの少なくとも1種の(a)ポリオール中の含有量は、2質量%以上60質量%以下であることが好ましく、2質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。
(a1)側鎖に未反応性シリコーン基を有するポリオール及び(a2)片末端ジオール型シリコーンオイルのうち、(a1)側鎖に未反応性シリコーン基を有するポリオールのみを含み、(a1)側鎖に未反応性シリコーン基を有するポリオールがシリコーングラフトアクリルポリオールであってもよい。この場合、ポリオール中の、シリコーングラフトアクリルポリオールの含有量は、2質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
【0079】
(a)ポリオ―ルは、(a1)及び(a2)の少なくとも一種の他に、アクリル系単量体を構成単位に含んでいてもよい。例えば、アクリル系単量体としては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸2,2-ジメチルプロピル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸-2-tert-ブチルフェニル、アクリル酸2-ナフチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸4-メトキシフェニル、アクリル酸2-メトキシカルボニルフェニル、アクリル酸2-エトキシカルボニルフェニル、アクリル酸2-クロロフェニル、アクリル酸4-クロロフェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2-シアノベンジル、アクリル酸4-シアノフェニル、アクリル酸p-トリル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸2-ヒドロキシブチル、アクリル酸2-シアノエチル、アクリル酸3-オキサブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸2,2-ジメチルプロピル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸-2-tert-ブチルフェニル、メタクリル酸2-ナフチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸4-メトキシフェニル、メタクリル酸2-メトキシカルボニルフェニル、メタクリル酸2-エトキシカルボニルフェニル、メタクリル酸2-クロロフェニル、メタクリル酸4-クロロフェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2-シアノベンジル、メタクリル酸4-シアノフェニル、メタクリル酸p-トリル、メタクリル酸イソノニル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシブチル、メタクリル酸2-シアノエチル、メタクリル酸3-オキサブチル、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、アクリルアミド、ブチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、ピペリジルアクリルアミド、メタクリルアミド、4-カルボキシフェニルメタクリルアミド、4-メトキシカルボキシフェニルメタクリルアミド、メチルクロロアクリレート、エチル-α-クロロアクリレート、プロピル-α-クロロアクリレート、イソプロピル-α-クロロアクリレート、メチル-α-フルオロアクリレート、ブチル-α-ブトキシカルボニルメタクリレート、ブチル-α-シアノアクリレート、メチル-α-フェニルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソボニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。これらは1種又は2種を共重合したものでもよい。
【0080】
(a1)側鎖に未反応性シリコーン基を有するポリオールは、上記一般式(1)及び一般式(2)で表される化合物、必要に応じてアクリル系単量体を、アゾ系重合開始剤の存在下でラジカル共重合させることにより製造することができる。このような重合は、溶媒を用いる溶液重合法、バルク重合法、エマルジョン重合法等によって行うことが好ましく、特に好ましくは溶液重合法である。
【0081】
(b)イソシアネート
イソシアネートは、ポリウレタンの調製に通常使用される各種イソシアネートであればよく、例えば、脂肪族イソシアネート、芳香族イソシアネート、及びこれらの誘導体等が挙げられる。イソシアネートは、貯蔵安定性に優れ、反応速度を制御しやすい点で、脂肪族イソシアネートであるのが好ましい。
芳香族イソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(トリレンジイソシアネートとも称する。TDI)、3,3’-ビトリレン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネートウレチジンジオン(2,4-TDIの二量体)、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、メタフェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族イソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、オルトトルイジンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネートメチル、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’,4’’-トリイソシアネート等が挙げられる。
誘導体としては、ポリイソシアネートの多核体、ポリオール等で変性したウレタン変性物(ウレタンプレポリマーを含む)、ウレチジオン形成による二量体、イソシアヌレート変性物、カルボジイミド変性物、ウレトンイミン変性物、アロハネート変性物、ウレア変性物、ビュレット変性物等が挙げられる。ポリイソシアネートは、1種単独で又は2種以上を用いることができる。ポリイソシアネートは、500~2000の分子量を有するのが好ましく、700~1500の分子量を有するのがより好ましい。
【0082】
被覆層用樹脂組成物に用いられる(b)イソシアネートはポリイソシアネートであることが好ましい。例えば、ヌレート型イソシアネート、アダクト型イソシアネート等を用いることができる。特にブロックイソシアネートを用いることによって、反応速度の調整が容易であることから好ましい。
(a)、(a1)及び(a2)のポリオールとポリイソシアネートとの混合物における混合割合は、特に限定されないが、通常、ポリオールに含まれる水酸基(OH)と、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基(NCO)とのモル比(NCO/OH)が0.7以上1.15以下であるのが好ましい。このモル比(NCO/OH)は、ポリウレタンの加水分解を防止することができる点で、0.85以上1.10以下であるのがより好ましい。なお、実際には、作業環境、作業上の誤差を考慮して適正モル比の3倍から4倍相当量を配合してもよい。
【0083】
被覆層用樹脂組成物には、(a)、(a1)及び(a2)のポリオールと(b)イソシアネートとの反応に通常使用される助剤、例えば、鎖延長剤、架橋剤等を併用してもよい。鎖延長剤、架橋剤としては、例えば、グリコール類、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン及びアミン類等が挙げられる。
【0084】
(c)表面粗さ材
被覆層4は、表面粗さ材を含有する。表面粗さ材は、被覆層4の表面粗さを調製する粒子である。被覆層4に配合される表面粗さ材の平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上20μm以下であり、より好ましくは1μm以上15μm以下である。被覆層4にこのような表面粗さ材を配合することで、外周面の表面粗さを、容易に適切な範囲に調整することができる。現像ローラ1の外周面の表面粗さを調整することで、トナー搬送性が向上し、一層優れた印字特性が得られる。なお、表面粗さ材の平均粒子径は、レーザー光回折法による粒度分布測定装置を用いて、メジアン径として測定できる。
【0085】
被覆層4の表面粗さ(Rz)は、例えば、1μm以上20μm以下であることが好ましく、1μm以上15μm以下であることがより好ましい。なお、本明細書中、被覆層4の表面粗さ(Rz)は、JIS-1994に規定の方法で測定される十点平均粗さを示す。被覆層4の表面粗さは、例えば、配合する表面粗さ材の種類、配合量等により容易に調整することができる。
【0086】
被覆層4に配合される表面粗さ材の種類は特に限定されず、公知のフィラー(充填剤)から適宜選択して使用できる。例えば、小粒径シリカ、球状樹脂粒子、金属酸化物等であってよい。
【0087】
表面粗さ材の被覆層用樹脂組成物中の含有量は、被覆層用樹脂組成物100質量部に対し、0.1~50質量部であることが好ましく、1~40質量部であることがより好ましい。
【0088】
(d)導電材
導電材として、カーボンブラック、グラファイト、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉、及び導電性金属酸化物等の電子伝導機構を有する導電剤、アルカリ金属塩及び四級アンモニウム塩等のイオン伝導機構を有する導電剤、並びに、シリカ粒子の表面にカーボンブラック粒子等の導電性粒子が付与された導電複合粒子を有する導電剤が好ましい。
導電材としては、カーボンブラックが特に好ましい。カーボンブラックとしては、特に限定されず、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック、サーマルブラック等が好適に用いられる。カーボンブラックとしては、これらのうち1種を単独で用いてよく、2種以上を併用してもよい。所望の電気抵抗を得るために、各種導電剤を2種以上併用してもよい。
【0089】
被覆層用樹脂組成物における導電材の含有量は、被覆層用樹脂組成物の全量基準で、0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。導電材の含有量を上記の範囲に調整することにより、現像ローラ1の抵抗値がより安定化し、印字性能がより向上し、また、弾性層3の圧縮永久歪が小さくなり、現像ローラ1の耐久性がより向上する。
【0090】
被覆層4は上記以外の添加剤を更に含有してもよい。例えば、被覆層4は、シランカップリング剤、潤滑剤、重合触媒、分散剤、充填剤等の添加剤を更に含有してもよい。
【0091】
被覆層4は、被覆層用樹脂組成物を弾性層3上に塗布し、加熱等により(a)ポリオールと、(a1)側鎖に未反応性シリコーン基を有するポリオール、及び(a2)片末端ジオール型シリコーンオイルの少なくとも1種と、(b)イソシアネート成分とを重合して硬化することにより形成される。塗布液に使用される溶媒は、ポリオール及びイソシアネート成分を溶解可能な溶媒であることが好ましく、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等であってよい。
【0092】
被覆層用樹脂組成物の塗工は、例えば、被覆層用樹脂組成物の塗工液を塗工する塗布法、塗工液に弾性層3等を浸漬するディッピング法、塗工液を弾性層3等に吹き付けるスプレーコーティング法等の公知の塗工方法によって行われる。被覆層用樹脂組成物は、そのまま塗工してもよいし、被覆層用樹脂組成物に、例えば、メタノール及びエタノール等のアルコール、キシレン及びトルエン等の芳香族系溶媒、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル系溶媒等の揮発性溶媒、又は、水を加えた塗工液を塗工してもよい。このようにして塗工された被覆層用樹脂組成物を硬化する方法は、被覆層用樹脂組成物の硬化等に必要な熱又は水分を加えられる方法であればよく、例えば、被覆層用樹脂組成物が塗工された弾性層3等を加熱器で加熱する方法、被覆層用樹脂組成物が塗工された弾性層3等を高湿度下に静置する方法等が挙げられる。被覆層用樹脂組成物を加熱硬化させる際の加熱温度は、例えば、100℃以上200℃以下であることが好ましく、特に120℃以上160℃以下であることがより好ましく、加熱時間は10分以上120分間以下であることが好ましく、30分以上60分以下であることがより好ましい。なお、塗工に代えて、被覆層用樹脂組成物を弾性層3又はプライマー層の外周面に、押出成形、プレス成形、インジェクション成形等の公知の成形方法によって、積層するとともに、又は、積層した後に、積層された被覆層用樹脂組成物を硬化させる方法等が採用されることができる。
【0093】
(その他の構成)
本発明の現像ローラ1は、軸体2と弾性層3との間、及び弾性層3と被覆層4との間に、接着層又はプライマー層等の中間層を備えていてもよい。ここで、これらの中間層のうち、特に、弾性層3と被覆層4の間に設けられる接着層及びプライマー層については、その電気的特性を調整することにより、現像ローラ1としての電気的特性を調整することができ、これにより、現像ローラ1の現像性能を良好に調整することができる。
【0094】
プライマー層としては、現像ローラのプライマー層として通常用いられるものを使用することができるが、例えば、エステル基を有するウレタン樹脂からなるプライマー層を形成することにより、現像ローラ1の現像性能を良好に維持することができる。
【0095】
[現像装置及び画像形成装置]
本実施形態に係る現像ローラ1は、現像装置及び画像形成装置における現像剤担持体として、好適に用いることができる。本実施形態において、画像形成装置における現像ローラ1以外の構成は特に限定されない。本発明の現像ローラ1を備えた現像装置及び画像形成装置の一例を、図2を参照して、説明する。
【0096】
画像形成装置10は、各色の現像ユニットB、C、M及びYに装備された複数の像担持体11B、11C、11M及び11Yを転写搬送ベルト6上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置であり、現像ユニットB、C、M及びYが転写搬送ベルト6上に直列に配置されている。現像ユニットBは、像担持体11B例えば感光体(感光ドラムとも称される。)と、帯電手段12B例えば帯電ローラと、露光手段13Bと、現像装置20Bと、転写搬送ベルト6を介して像担持体11Bに当接する転写手段14B例えば転写ローラと、クリーニング手段15Bとを備えている。
【0097】
現像装置20Bは、本発明の現像装置の一例であり、図2に示されるように、本発明の現像ローラ1と現像剤22Bとを備えている。したがって、この画像形成装置10において、現像ローラ1は、現像剤担持体23B、23C、23M及び23Yとして装着されている。現像装置20Bは、具体的には、一成分非磁性の現像剤22Bを収容する筐体21Bと、現像剤22Bを像担持体11Bに供給する現像剤担持体23B例えば現像ローラ1と、現像剤担持体23Bに現像剤22Bを供給するトナー供給ローラ25Bと、現像剤22Bの厚みを調整する現像剤量調節手段24B例えばブレードと、を備えてなる。現像装置20Bにおいて、現像剤量調節手段24Bは、図2に示されるように、現像剤担持体23Bの外周面に接触又は圧接している。すなわち、現像装置20Bは「接触式現像装置」である。現像ユニットC、M及びYは現像ユニットBと基本的に同様に構成されており、同じ要素には、同じ符号と各ユニットを示す記号C、M又はYとを付して、説明を省略する。
【0098】
画像形成装置10において、現像装置20Bの現像剤担持体23Bは、その表面が像担持体11Bの表面に接触又は圧接するように配置されている。現像装置20C、20M及び20Yも、現像装置20Bと同様に、その表面が現像剤担持体23C、23M及び23Yが像担持体11C、11M及び11Yの表面に接触又は圧接するように配置されている。すなわち、この画像形成装置10は「接触式画像形成装置」である。
【0099】
定着手段30は、現像ユニットYの下流側に配置されている。この定着手段30は、記録体16を通過させる開口部35を有する筐体34内に、定着ローラ31と、定着ローラ31の近傍に配置された無端ベルト支持ローラ33と、定着ローラ31及び無端ベルト支持ローラ33に巻き掛けられた無端ベルト36と、定着ローラ31と対向配置された加圧ローラ32とを備え、無端ベルト36を介して定着ローラ31と加圧ローラ32とが互いに当接又は圧接するように回転自在に支持されてなる圧力熱定着装置である。画像形成装置10の底部には、記録体16を収容するカセット41が設置されている。転写搬送ベルト6は複数の支持ローラ42に巻回されている。
【0100】
画像形成装置10に使用される現像剤22B、22C、22M及び22Yはそれぞれ、摩擦により帯電可能な現像剤であれば、乾式現像剤でも湿式現像剤でもよく、また、非磁性現像剤でも磁性現像剤でもよい。各現像ユニットB、C、M及びYの筐体21B、21C、21M及び21Y内には、一成分非磁性の、黒色現像剤22B、シアン現像剤22C、マゼンタ現像剤22M及び黄色現像剤22Yが収納されている。
【0101】
画像形成装置10は、以下のようにして記録体16にカラー画像を形成する。まず、現像ユニットBにおいて、帯電手段12Bで帯電した像担持体11Bの表面に露光手段13Bにより静電潜像が形成され、現像剤担持体23Bにより供給された現像剤22Bで黒色の静電潜像が現像される。そして、記録体16が転写手段14Bと像担持体11Bとの間を通過する際に黒色の静電潜像が記録体16表面に転写される。次いで、現像ユニットBと同様にして、現像ユニットC、M及びYによって、静電潜像が黒像に顕像化された記録体16に、それぞれシアン像、マゼンタ像及び黄色像が重畳され、カラー像が顕像化される。次いで、カラー像が顕像化された記録体16は、定着手段30によりカラー像が永久画像として記録体16に定着される。このようにして、記録体16にカラー画像を形成することができる。
【0102】
現像装置20Bは、現像ローラ1を備えており、現像剤搬送性に優れるとともにトナーフィルミングの発生を抑えて、高濃度で高画質の画像を長期にわたって形成することに貢献できる。また、この画像形成装置10は高濃度で高画質の画像を長期にわたって形成できる。
【0103】
本発明の現像装置及び画像形成装置は、上記したものに限定されることはなく、本発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。
【0104】
画像形成装置は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、本発明の現像ローラが配設される画像形成装置は、各色の現像ユニットを備えた複数の像担持体を転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置に限られず、例えば、単一の現像ユニットを備えたモノクロ画像形成装置、像担持体上に担持された現像剤像を無端ベルトに順次一次転写を繰り返す4サイクル型カラー画像形成装置等であってもよい。また、画像形成装置に用いられる現像剤は、一成分非磁性現像剤とされているが、この発明においては、一成分磁性現像剤であってもよく、二成分非磁性現像剤であっても、また、二成分磁性現像剤であってもよい。
【0105】
画像形成装置は、像担持体、現像剤供給ローラ及びブレード等に接触又は圧接して配置される接触式画像形成装置である。なお、本発明の画像形成装置は、現像剤担持体の表面が像担持体の表面に接触しないように間隙を有して配置される非接触式画像形成装置であってもよい。
【0106】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた発明も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例
【0107】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0108】
[実施例1]
(プライマー層の形成)
無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体(SUM22製、直径10mm、長さ275mm)をエタノールで洗浄し、その表面にシリコーン系プライマー(商品名「プライマーNo.16」、信越化学工業株式会社製)を塗布した。プライマー処理した軸体を、ギヤオーブンを用いて、150℃の温度にて10分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、軸体の外周面にプライマー層を形成した。
【0109】
(弾性層の形成)
次いで、弾性層を形成するためのシリコーンゴム組成物を次のように調製した。すなわち、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(重合度300)100質量部、BET比表面積が110m/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(商品名「R-972」、日本アエロジル株式会社製)1質量部、平均粒子径6μm、嵩密度が0.25g/cmである珪藻土(商品名「オプライトW-3005S」、中央シリカ株式会社製)40質量部、及び、アセチレンブラック(商品名「デンカブラックHS-100」、デンカ株式会社製)5質量部、をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌した後、3本ロールに1回通した。これを再度プラネタリーミキサーに戻し、両末端及び側鎖にSi-H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(重合度17、Si-H量0.0060mol/g)2.1質量部、エチニルシクロヘキサノール0.1質量部、白金触媒(Pt濃度1%)0.1質量部を添加し、30分撹拌脱泡混練して、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を調製した。
【0110】
調製した付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を、金型を用いた射出成形により、軸体の外周面上にゴム材料からなる弾性体を成形した。射出成形では、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を120℃で10分間加熱して硬化させ、200℃4時間の2次加硫を行い外径16mmの弾性層を成形した。
【0111】
(被覆層の形成)
次いで、被覆層を形成するための樹脂組成物を次のように調製した。
【0112】
-被覆層用樹脂組成物-
(a)ポリカーボネートジオール(商品名「ニッポラン981」、東ソー株式会社製)
95.4質量部
(a1)シリコーングラフトアクリルポリオール 4.6質量部
(b)ヌレート型イソシアネート(製商品名「TPA-B80E」、旭化成株式会社製)
49.6質量部
(c)表面粗さ材(AEROSIL(登録商標)R 711、日本アエロジル株式会社製) 13.5質量部
(d)導電材(MA600、三菱ケミカル株式会社製) 3質量部
【0113】
<(a1)シリコーングラフトアクリルポリオールの合成>
(a1)シリコーングラフトアクリルポリオールは、上記一般式(1)及び(2)で表される化合物をアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)の存在下でラジカル重合させることにより製造した。
【0114】
この被覆層用樹脂組成物を弾性層の外周面にスプレーコーティング法によって塗布し、160℃で30分間加熱して、層厚20μmの被覆層を形成した。このようにして、軸体、弾性層及び被覆層を備えた現像ローラを製造した。
【0115】
[実施例2~7、比較例1~3]
表1に示す材料と配合により、実施例1と同様に現像ローラを製造した。
なお、表1中の、(a)ポリエステル系ポリオールは、伊藤製油株式会社製POLYCASTOR #10を用い、(a2)片末端ジオール型シリコーンオイルは、信越化学工業株式会社製X-22-176DXを用い、アダクト型イソシアネートは、旭化成株式会社デュラネートE402-B80Bを用いた。
【0116】
[評価]
画像形成装置HL‐3170CDW(型番、ブラザー工業株式会社製)を用意し、この画像形成装置の現像ローラを作製した各実施例及び各比較例の現像ローラに差し替えて、画像形成装置を得た。得られた画像形成装置について、以下の方法で、動摩擦係数、静止摩擦係数、及びバンディングを評価した。
【0117】
(動摩擦係数及び静止摩擦係数)
製造した現像ローラを、株式会社トリニティーラボ製i-tester TL701(R接触子)を用いて、測定方法に従って、300N荷重にてローラ長手方向に複数回測定し、その算術平均値を各試験用シートの静止擦係数及び動摩擦係数として求めた。
【0118】
(バンディング評価)
製造した各導電性ローラを接触型の画像形成装置HL‐3170CDW(型番、ブラザー工業株式会社製)に現像ローラとして装着し、23℃50%の常温常湿環境下に24時間静置した。その後、この常温常湿環境を維持したままA4用紙(JIS)にハーフトーン画像を印刷した。印刷されたハーフトーン画像において、従来品と同程度のバンディングの評価を「C」とし、十分な改善が見られる場合の評価の「A」とした。
上記画像領域においてA4用紙の短辺方向に延在する高濃度部分がバンディングである。なお、バンディング評価において、現像剤及び現像剤量調節手段はこの画像形成装置に付属の現像剤及び現像剤量調節手段を用いた。
【0119】
評価結果を表1に示す。
【0120】
【表1】
【0121】
表1に示すように、被覆層用樹脂組成物の原料として、(a1)側鎖に未反応性シリコーン基を有するポリオール、又は(a2)片末端ジオール型シリコーンオイルを含む実施例では、動摩擦係数及び静止摩擦係数のいずれも、比較例に比べて低く、バンディングが改善されていることがわかる。
これは、(a1)におけるシリコーン鎖は未反応基であり、また(a2)が片末端シリコーン鎖であるために、シリコーン鎖がポリウレタンの主鎖として組み込まれるのではなく、比較的自由度が高い側鎖として、被覆層の表面に存在することで摩擦係数を低減できたものと考えられる。
【符号の説明】
【0122】
1 現像ローラ
2 軸体
3 弾性層
4 被覆層
6 転写搬送ベルト
10 画像形成装置
11B、11C、11M、11Y 像担持体
12B、12C、12M、12Y 帯電手段
13B、13C、13M、13Y 露光手段
14B、14C、14M、14Y 転写手段
15B、15C、15M、15Y クリーニング手段
16 記録体
20B、20C、20M、20Y 現像装置
21B、21C、21M、21Y、34 筐体
22B、22C、22M、22Y 現像剤
23B、23C、23M、23Y 現像剤担持体(現像ローラ)
24B、24C、24M、24Y 現像剤量調節手段
25B、25C、25M、25Y トナー供給ローラ
30 定着手段
31 定着ローラ
32 加圧ローラ
33 無端ベルト支持ローラ
35 開口部
36 無端ベルト
41 カセット
42 支持ローラ
B、C、M、Y 現像ユニット
図1
図2