(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】飲用流体管内汚れ予測システム及び予測方法
(51)【国際特許分類】
B67D 1/07 20060101AFI20230111BHJP
B67D 1/08 20060101ALI20230111BHJP
G01N 33/18 20060101ALI20230111BHJP
G01N 21/59 20060101ALI20230111BHJP
G16Y 10/45 20200101ALN20230111BHJP
G16Y 40/20 20200101ALN20230111BHJP
【FI】
B67D1/07
B67D1/08 Z
G01N33/18 106Z
G01N21/59 Z
G16Y10/45
G16Y40/20
(21)【出願番号】P 2018246723
(22)【出願日】2018-12-28
【審査請求日】2021-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501397920
【氏名又は名称】旭光電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】倉部 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 徹
(72)【発明者】
【氏名】山下 直之
(72)【発明者】
【氏名】北野 純一
(72)【発明者】
【氏名】和田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】楠 健志
(72)【発明者】
【氏名】西尾 崇志
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-173408(JP,A)
【文献】特開2003-192096(JP,A)
【文献】特開2016-085572(JP,A)
【文献】特開2011-092316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67D 1/00-3/04
G16Y 10/45
G16Y 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体供給システムと、管理サーバーとを備えた、上記液体供給システムにおける飲用流体管内の汚れ予測システムであって、
上記液体供給システムは、貯蔵容器内の飲料を、加圧により供給管を通して注出装置へ供給し該注出装置の注出口から飲用容器へ注出するシステムであり、貯蔵容器の出口から注出口までの飲用流体管内の洗浄作業の有無情報、及び貯蔵容器内飲料の温度情報について、通信部を介して上記管理サーバーと通信を行い、
上記管理サーバーは、上記洗浄作業の有無情報、上記温度情報、及び飲料の液種情報を元に、上記貯蔵容器の出口から上記注出口までの飲用流体管内の汚れ予測を出力
し、
貯蔵容器の出口から注出口までの飲用流体管内を洗浄した洗浄水の濁度を測定し、この濁度情報について送信部を介して上記通信部又は上記管理サーバーへの送信を行う、洗浄度判定装置をさらに備え、
上記管理サーバーは、上記濁度情報をさらに加えて、汚れ予測を出力し、
ここで、上記洗浄度判定装置は、既定量の洗浄水を収納する液体収納部を有するサンプリング容器と、
対向配置した投光素子及び受光素子を有し上記サンプリング容器が着脱可能に装着される凹状の装着部、並びに、上記液体収納部の洗浄水に対して上記投光素子及び上記受光素子による透過光測定を行いその測定結果から洗浄作業の良否を判定する制御部を有する測定器と、
を備え、
上記サンプリング容器は、上記液体収納部における結露防止構造として上記液体収納部の周囲に密閉した空気層を設けた二重構造を有する、
ことを特徴とする、飲用流体管内汚れ予測システム。
【請求項2】
上記管理サーバーは、少なくとも上記洗浄作業の有無情報、上記温度情報、及び上記液種情報が供給される情報取得部と、
学習済モデルを有し、上記情報取得部に供給された情報を学習済モデルに入力して飲用流体管内の汚れ予測を出力する汚れ予測部と、を有する、請求項1に記載の飲用流体管内汚れ予測システム。
【請求項3】
上記管理サーバーは、学習済モデルを有し、該学習済モデルを用いた上記汚れ予測では、洗浄作業有情報にて汚れレベルを低減し、上記濁度情報を汚れレベルの補正用として使用する、請求項
1又は2に記載の飲用流体管内汚れ予測システム。
【請求項4】
上記液体供給システムによる飲料の販売情報について上記管理サーバーと通信を行う販売情報管理システムをさらに備え、
上記管理サーバーは、上記販売情報をさらに加えて、汚れ予測を出力する、請求項1から
3のいずれかに記載の飲用流体管内汚れ予測システム。
【請求項5】
液体供給システムと、洗浄度判定装置と、管理サーバーとを用いて実行される、上記液体供給システムにおける飲用流体管内の汚れ予測方法であって、
上記液体供給システムは、貯蔵容器内の飲料を、加圧により供給管を通して注出装置へ供給し該注出装置の注出口から飲用容器へ注出するシステムであり、貯蔵容器の出口から注出口までの飲用流体管内の洗浄作業の有無情報、及び貯蔵容器内飲料の温度情報について通信部を介して上記管理サーバーと通信を行い、
上記洗浄度判定装置は、貯蔵容器の出口から注出口までの飲用流体管内を洗浄した洗浄水の濁度を測定し、この濁度情報について上記通信部又は上記管理サーバーへの送信を行い、
上記管理サーバーは、上記洗浄作業の有無情報、上記温度情報、上記貯蔵容器内飲料の液種情報、及び上記濁度情報を元に、貯蔵容器の出口から注出口までの飲用流体管内の汚れ予測を出力
し、
ここで、上記濁度の測定は、洗浄度判定装置にて実行され、該洗浄度判定装置は、既定量の洗浄水を収納する液体収納部を有するサンプリング容器を備え、該サンプリング容器は、上記液体収納部における結露防止構造として上記液体収納部の周囲に密閉した空気層を設けた二重構造を有する、
ことを特徴とする、飲用流体管内の汚れ予測方法。
【請求項6】
上記管理サーバーは、学習済モデルを有し、該学習済モデルを用いて上記汚れ予測を行い、該汚れ予測では、洗浄作業有情報にて汚れレベルを低減し、濁度情報を汚れレベルの補正用として使用する、請求項
5に記載の飲用流体管内の汚れ予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲用流体管内の汚れ予測システム及び方法に関し、詳しくは、例えばビール等の飲用流体が通過する管内の汚れを予測する汚れ予測システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食店等にて、液体、例えばビール等の飲料を提供する装置として、液体供給システムが一般的に使用されている。ビールを例に採った場合、該液体供給システムは、炭酸ガスボンベ、ビールが充填されたビール樽、供給管、及びビールディスペンサーを有し、炭酸ガスボンベの炭酸ガスにてビール樽内のビールを加圧して、供給管からビールディスペンサーへと圧送する。ビールディスペンサーは、冷却槽内に設置したビール冷却管、冷凍機、及び注出口を有し、冷却槽内の冷却水の一部を冷凍機にて氷結させ、注出口におけるレバー操作により、ビール冷却管内をビールを流しながら冷却し、例えばジョッキ等の飲用容器へ注出する。このようにしてビール樽内のビールは、顧客へ提供される。
【0003】
一方、液体供給システムでは、上述のようにビール冷却管を含めて、ビール樽出口から注出口までビールが流れる比較的長い管路が存在し、該管路の内部には、使用に伴い汚れが付着してくる。該汚れは、雑菌繁殖にもつながり雑味の発生等、美味しくないビールの提供につながる。
【0004】
したがって、衛生管理上、及び提供ビールの品質管理上の観点から、ビールメーカーは、定期的に、例えば営業終了毎に、ビール樽出口から注出口までの間の管路を洗浄することを、液体供給システムの使用者(例えば飲食店)に指導し、衛生管理及び提供ビールの品質維持を図っている。この洗浄作業として、例えば毎日の営業終了時における洗浄水(水道水)の通水による水洗浄と、例えば一週間に一度程度の頻度にて、管路内に指定スポンジを通過させながら洗浄水を流す洗浄(以下、「スポンジ洗浄」と記す。)とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、液体供給システムにおけるビール樽出口から注出口間の飲用流体管内の汚れは、衛生管理上、及び提供ビールの品質管理上、重要事項である。現状、汚れチェックは、例えばビールメーカーの営業者等の作業者が数ヶ月に一度の頻度にて、採取した洗浄水の濁度を判定基準濁度と目視にて比較して判定する方法に留まっている。
【0007】
尚、上記特許文献1は、管路内の空液状態から洗浄作業の有無を判断する内容を開示するものであり、管路内の汚れ予測を行う内容は開示していない。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、液体供給システムにおける飲用流体管内の汚れ管理を従来に比べてより高いレベルにて行うことができる、飲用流体管内の汚れ予測システム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の一態様における飲用流体管内汚れ予測システムは、液体供給システムと、管理サーバーとを備えた、上記液体供給システムにおける飲用流体管内の汚れ予測システムであって、
上記液体供給システムは、貯蔵容器内の飲料を、加圧により供給管を通して注出装置へ供給し該注出装置の注出口から飲用容器へ注出するシステムであり、貯蔵容器の出口から注出口までの飲用流体管内の洗浄作業の有無情報、及び貯蔵容器内飲料の温度情報について、通信部を介して上記管理サーバーと通信を行い、
上記管理サーバーは、上記洗浄作業の有無情報、上記温度情報、及び飲料の液種情報を元に、上記貯蔵容器の出口から上記注出口までの飲用流体管内の汚れ予測を出力する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記一態様の飲用流体管内汚れ予測システムによれば、管理サーバーは、洗浄作業の有無情報、貯蔵容器内飲料の温度情報、及び飲料の液種情報を元に、液体供給システムにおける貯蔵容器の出口から注出口までの飲用流体管内の汚れ予測を出力するように構成した。よって、飲用流体管内の汚れ管理を従来に比べてより高いレベルにて行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態における汚れ予測システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す液体供給システムの構成の一例を示す図である。
【
図3A】
図1に示す洗浄度判定装置を示す斜視図である。
【
図3B】
図3Aに示す洗浄度判定装置に備わるサンプリング容器を示す断面図である。
【
図3C】
図3Aに示す洗浄度判定装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図3D】
図3Bに示すサンプリング容器を
図3Aに示す洗浄度判定装置の装着部に装填したときの状態を示す概略の断面図である。
【
図3E】
図3Aに示す洗浄度判定装置における測定動作を説明するフローチャートである。
【
図4A】
図1に示す管理サーバーの構成の一例を示すブロック図である。
【
図4B】
図4Aに示す管理サーバーのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4C】
図4Aに示す管理サーバーに備わる学習済モデルの構成の一例を示す図である。
【
図4D】
図4Aに示す管理サーバーに備わる学習処理部が行う学習処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4E】
図4Aに示す管理サーバーが実行する汚れ予測動作を説明するフローチャートである。
【
図4F】
図4Aに示すオリジナル教師モデルの作成に関わる汚れレベルの変化を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態である飲用流体管内汚れ予測システム及び方法について、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。また、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け当業者の理解を容易にするため、既によく知られた事項の詳細説明及び実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。また、以下の説明及び添付図面の内容は、特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0013】
本実施形態における飲用流体管内汚れ予測システムは、一例として以下に説明する液体供給システムにおける飲用流体管内の汚れを予測し出力するシステムである。
図1に示すように、このような飲用流体管内汚れ予測システム500は、液体供給システム100と、管理サーバー300とを備え、さらに、洗浄度判定装置200及び販売情報管理システム400を備えることができる。
【0014】
これらの概略を説明する。液体供給システム100及び販売情報管理システム400は、各飲食店等に設置されている。販売情報管理システム400は、販売情報を管理するシステムであり、既に使用されている、いわゆるPOS(point of sales system:販売時点情報管理システム)に相当するシステムである。該POSシステムは、顧客の料金支払い等の際に販売情報等を取り込み、発信するシステムである。管理サーバー300は、例えば、通信回線550に接続したコンピュータで構成され、いわゆるクラウドコンピューティングに相当し、一例としてビールメーカーが管理する。洗浄度判定装置200は、例えばビールメーカーの営業者等の作業者が携帯可能な、液体供給システム100における飲用流体管の洗浄度を測定可能な測定器である。
液体供給システム100及び販売情報管理システム400は、それぞれ通信回線550を介して管理サーバー300と接続され、洗浄度判定装置200は、例えば近距離無線通信機能560を介して液体供給システム100と接続される。
各機器について、順次、以下に詳しく説明していく。
【0015】
まず、液体供給システム100について、
図2を参照して説明する。以下の説明では、液体供給システム100が扱う飲料の一例としてビールを例に採るが、液体供給システム100は、ビールに限定されず、発泡酒、リキュール、チューハイ、ウイスキー、ワイン等のアルコール飲料、飲料水、清涼飲料、炭酸飲料などを扱うことができる。
【0016】
液体供給システム100は、貯蔵容器10と、加圧源15と、供給管30と、注出装置50と、洗浄モード検知部110と、温度センサ121と、通信部140とを備え、また液種センサ131を備えることもできる。
このような液体供給システム100は、貯蔵容器10内の飲料(例えばビール)20を、加圧源15による加圧によって供給管30を通して注出装置50へ供給つまり圧送し、注出装置50から飲用容器(例えばジョッキ)40へ注ぎ出すシステムである。ここで貯蔵容器10は、例えばビールメーカーにてビールが充填された、いわゆるビール樽と呼ばれるステンレス製容器であり、例えば5L、10L、19L等の内容量のものがある。加圧源15は、炭酸ガスボンベである。供給管30は、貯蔵容器10と注出装置50との間でビールの通液を可能にする、可撓性を有する例えばポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル等製の樹脂チューブである。供給管30から注出装置50における液体注出口54に至るまで、流体の通液管路の内径は、通液管路内のスポンジ洗浄を容易にするため全て同寸法にて設計されているのが好ましい。
【0017】
上述の注出装置50の一例として、本実施形態ではビールディスペンサー(「ビールサーバー」と称されることもある。)を例に採り説明を行う(よって以下では、ビールディスペンサー50と記す場合もある。)。ビールディスペンサー50は、冷却槽51内に配置した液体冷却管(実施形態ではビール冷却管)52、冷凍機53、及び液体注出口54などを有し、冷凍機53には、冷媒用の圧縮機、凝縮器、冷却槽51内に配置した冷媒配管等が含まれ、冷却槽51内の冷却水55の一部が冷凍機53にて氷結される。このようなビールディスペンサー50では、注出口54におけるレバー56の操作により、加圧源15にて圧送されるビールは、ビール冷却管52内を通過し、冷却水55との熱交換により冷却され、例えばジョッキ等の飲用容器40へ注出されて、顧客に提供される。
【0018】
尚、ビールディスペンサー50は、一般には、外気温度が5℃以上、40℃以下である環境にて使用される。また実施形態では、ビールディスペンサー50は、対象飲料20であるビールの冷却を行うが、実施形態に含まれる注出装置50は、対象飲料20を加熱あるいは保温するものであってもよい。
【0019】
洗浄モード検知部110は、液体供給システム100が洗浄モード、つまり上述の水洗浄作業に移行したことを検知する手段である。
ここで水洗浄作業は、供給管30を通過する液体をビールから洗浄水に切り換え、洗浄水を圧送することで行う。この水洗浄作業によって、営業終了時において貯蔵容器10の出口から注出口54間の飲用流体管内に残存していたビールは、洗浄水に置換されながら注出口54から排出される。
このようにして水洗浄が行われた後、次のビール提供の準備として、貯蔵容器10の出口から注出口54間の飲用流体管内に存在する洗浄水は、管内に炭酸ガスを吹き込むことにより炭酸ガスで置換され、飲用流体管内は、空液状態にされる。これらの一連の動作にて、水洗浄動作が終了する。よって、水洗浄作業終了時点では、貯蔵容器10から注出口54間の飲用流体管内は、空液状態になっている。
【0020】
上述のように「洗浄モード」では、供給管30内の状態が変化する。即ち、供給管30内は、概ね、本実施形態ではビール→水→気体と変化する。よって洗浄モード検知部110は、供給管30内のこのような状態変化を検知可能な手段であればよい。あるいはまた、洗浄モード検知部110は、供給管30内の液体がビール等の液体、水、又は気体を検知可能な、あるいは少なくとも気体になったことを検知可能な空液検出用センサを用いることができる。空液検出用センサとしては、例えば光センサ、静電容量センサ、導電率センサ等が使用可能である。また、供給管30内の状態変化に応じて、樹脂製の供給管30の管壁に作用する圧力が変化することから、管壁外面に設置した管圧(圧力)センサも使用可能である。
【0021】
また、洗浄モード検知部110として、上述の各種センサに代えて以下の装置を用いる
こともできる。
即ち、本出願人は、液体供給システム100に設置可能である、例えば特許5649801号に開示されるような流体流路調整装置を提供している。該流体流路調整装置は、供給管30に設置され、注出口54から飲用容器40へのビール注出中に、貯蔵容器10内のビールが無くなったときに(貯蔵容器10が空になったとき)、あるいはまた、貯蔵容器10を交換するときに、注出装置50の液体注出口54から加圧気体である炭酸ガスが噴出するのを防止する装置である。この目的達成のため、供給管30内を通過する流体状態の判断用として、該流体流路調整装置は、発光素子及び受光素子を有する液体状態判断部を設けている。よって、この流体流路調整装置を洗浄モード検知部110として利用することも可能である。
【0022】
さらにまた、上述の流体流路調整装置は、オンオフスイッチを有しており、営業終了後、店スタッフにてオフ操作がなされる。即ち、上述したように衛生上等の観点から、営業終了後に洗浄することを勧めていることと関連し、水洗浄作業のために流体流路調整装置の作動を停止させる必要がある。よって、このオンオフスイッチのオフ操作にて、水洗浄作業への移行と判断することができる。このように流体流路調整装置を洗浄モード検知部110とみなすことも可能である。尚、オンオフスイッチのオフ操作後も流体流路調整装置の内部は通電状態にあり、必要機能部分は作動可能状態にある。
【0023】
以上説明した洗浄モード検知部110は、通信部140と電気的に接続されており、水洗浄作業の有無に関する情報を、通信部140を介して管理サーバー300へ送出することができる。ここで送出される情報としては、単に洗浄作業の有無情報だけでなく、洗浄作業実行の年月日時分の時刻情報、さらには、前回と今回との洗浄作業実行の時刻情報の比較による、前回から今回の洗浄作業までの経過時間情報も合わせて送出することができる。
このような水洗浄作業の有無に関する情報は、貯蔵容器10の出口から注出口54までの飲用流体管内の汚れ予測に対して直接に関係し、最も重要なファクターである。
【0024】
温度センサ121は、貯蔵容器10と注出装置50との間の適所にて、好ましくは貯蔵容器10の出口付近にて設置され、供給管30内を通過する飲料20の液温、つまり貯蔵容器10に収納されている飲料20(ビール)の温度を測定する。このような温度センサ121として、例えば熱電対、測温抵抗体、サーミスタ等が使用可能である。尚、飲料20の温度を測定することから、温度センサ121は、当然に所定法規を遵守する構造にて供給管30に設置される。温度センサ121で検出した測定値は、通信部140へ送出される。
【0025】
出願人は、飲料20の液温と飲用流体管内の汚れとの間には相関があることを認識しており、温度センサ121にて供給管30内を通過する飲料20の液温、つまり貯蔵容器10内の飲料20の温度、を測定することは、貯蔵容器10の出口から注出口54までの飲用流体管内の汚れ予測に重要なファクターの一つとなり、意義がある。つまり、貯蔵容器10は、環境温度雰囲気に置かれていることが多く、特に夏場には、飲料20の液温が高くなる場合が多い。よって飲料20の液温は、管内の汚れ予測に重要なファクターとなる。
【0026】
液種センサ131は、貯蔵容器10と注出装置50との間の適所に設置され、飲料20の液種を判別するセンサである。このような液種センサ131として、例えば光センサ、導電率センサ等を利用することができる。一方、実際の運用では、注出装置50を流れる飲料20の液種が頻繁に変化することはなく、基本的に液種は固定されていることから、液種情報は、通常、管理サーバー300へ入力される。よって液種センサ131は、必須のセンサではない。
尚、液種センサ131の設置位置はこれに限定されず、例えば注出装置50における供給管30に取り付けられてもよい。また、設置した場合には、液種センサ131による検出情報は、通信部140へ送出される。
【0027】
出願人は、飲料20の種類と飲用流体管内の汚れとの間には相関があることを認識している。例えば醸造酒であるビールは、エキス分を含むことから、蒸留酒に比べて管内に汚れを生じさせ易い。またビールでも、含有成分の種類及び量の少なくとも一方に応じて、ビール種類の相違によっても汚れ発生及び汚れレベルに違いが生じる。よって、供給管30内を通過する飲料20の液種は、貯蔵容器10の出口から注出口54までの飲用流体管内の汚れ予測に重要なファクターの一つとなり、意義がある。
【0028】
また、上述したように、例えば特許5649801号に開示されるような流体流路調整装置は、供給管30内を通過する流体状態を判断可能なことから、発光素子及び受光素子を有する液体状態判断部を設けている流体流路調整装置を、液種センサ131として利用することも可能である。
【0029】
通信部140は、上述した洗浄モード検知部110、及び温度センサ121、さらには液種センサ131からそれぞれ供給される各情報を、通信回線550を介して管理サーバー300へ送信する。また、通信部140からは、当該液体供給システム100を設置している飲食店等に関する店舗情報(例えば飲食店等の屋号、場所等の情報)、年月日時分の時刻情報等も合わせて送信される。また通信部140は、送信のみならず、後述する洗浄度判定装置200との間での情報の受信を行い、また、管理サーバー300との間で情報の送受信を行ってもよい。
【0030】
また液体供給システム100は、飲料20の流れ(流量)を検知する流量センサを備えることもできる。
【0031】
次に、洗浄度判定装置200について、
図3Aから
図3E(総称して「
図3」と記す場合もある。)を参照して説明する。尚、下記の、濁度測定結果情報の送信は、作業者が洗浄度判定装置200を使用して濁度測定を行うことが条件となる。
本実施形態における洗浄度判定装置200は、上述した液体供給システム100から採取したスポンジ洗浄水を被測定液体とし、該洗浄水の濁度を測定し、さらには、その測定結果から液体供給システム100における洗浄作業の良否を判定し、これらの情報を管理サーバー300へ供給するものである。
【0032】
このような洗浄度判定装置200は、作業者が携帯可能な形態であり、大別して、
図3Aに示す測定器210と、
図3Bに示すサンプリング容器230と、送信部250(
図3C)とを有し、測定器210における装着部212に装填されたサンプリング容器230内の被測定液体に対して透過光方式にて被測定液体の濁度の測定を行い、さらに洗浄作業の良否判断も行う装置である。
以下には、測定器210及びサンプリング容器230について説明を行う。
【0033】
測定器210は、
図3A及び
図3Cに示すように、装着部212、制御部214、表示部216、及び送信部250を有し、また表面211にスイッチ部218を設け、電源213として電池を交換可能に収納している。
【0034】
装着部212は、
図3A及び
図3Dに示すように、例えば周囲が円形でカップ状の凹部212aを有し、サンプリング容器230を着脱可能に装着でき、また凹部212aの直径方向212bにおいて対向配置した投光素子221及び受光素子222を有する。投光素子221及び受光素子222は、近赤外光の発光、受光を行う素子であり、直径方向212bに沿った光路224を形成する。
【0035】
このような装着部212は、外壁2122と内壁2124との二層壁で構成され、外壁2122は、例えば黒色等の樹脂製の遮光性部材で形成され、光路224の光軸を中心として投光側開口2123a及び受光側開口2123bを有する。外壁2122には、投光側開口2123a及び受光側開口2123bにそれぞれ対応して、投光素子221及び受光素子222用の設置座がそれぞれ設けられ、各設置座には、投光素子221を実装した基板及び受光素子222を実装した基板が遮光状態にてそれぞれ密着されている。
【0036】
内壁2124は、外壁2122の全面を覆いサンプリング容器230と接する透光性部材である。よって投光素子221から投光側開口2123aを通り出射した光は、内壁2124を通過して受光側開口2123bを経て受光素子222へ到達する。また、内壁2124には、装着部212に対して常に同位置及び同配向にてサンプリング容器230を配置させるための装着部側位置決め部2127を形成している。
【0037】
ここでサンプリング容器230について、
図3Bを参照して説明する。
サンプリング容器230は、装着部212に対して着脱可能に装着されるコップ形状の容器であり、投光素子221及び受光素子222による投受光が可能なように透光性の素材、例えば樹脂材あるいはガラス材等にて成型された容器である。このようなサンプリング容器230は、下部に液体収納部231を有し上部の開口にバスケット234が着脱可能な内側容器231aと、液体収納部231を包囲する大きさを有する外側容器232aとを有する。液体収納部231は、被測定液体であるスポンジ洗浄水を既定量(一例として約50ml-80ml)収納する。サンプリング容器230が装着部212に装着されたとき、この液体収納部231を直径方向212bに沿って光路224が位置する。また、液体収納部231における結露防止のため、液体収納部231の周囲を外側容器232aで密閉し空気層232を設けた二重構造を有する。一方、液体収納部231に収納される被測定液体が結露を発生させない液温である場合には、サンプリング容器230は、結露防止構造を有しない構造であってもよい。また、外側容器232aの周面には、装着部212における装着部側位置決め部2127に係合可能な容器側位置決め部236を突設している。また、バスケット234は、スポンジ洗浄水と共に飲用流体管から排出されるスポンジを受け止める、いわゆる「ざる」として機能する。
【0038】
次に、制御部214は、電源213、投光素子221、受光素子222、表示部216、及び送信部250と電気的に接続され、機能的に、
図3Cに示すように、測定部214a、補正、校正部214b、判定部214c、記憶部214dを有し、当該測定器210の動作制御を行う。また制御部214には、温度センサ215が電気的に接続されてもよい。ここで測定部214aは、投光素子221からスポンジ洗浄水を透過して受光素子222にて受光した光量からスポンジ洗浄水の濁度の測定を行い、補正、校正部214bは、濁度測定動作において校正及び補正を行い、判定部214cは、濁度測定結果から洗浄作業の良否判断を行い、及び、記憶部214dは、測定結果等の記憶を行う。このような制御部214は、マイクロコンピュータを用いて実現され、測定部214a、補正、校正部214b、及び判定部214cが実行するそれぞれの機能に対応するソフトウェアと、これを実行するためのCPU(中央演算処理装置)及びメモリ等のハードウェアとで構成されている。記憶部214dは、情報格納するメモリである。
【0039】
制御部214における各動作及び機能について説明する。
濁度測定処理において、被測定液体の濁り具合と、受光素子222の出力信号(換言すると受光素子222における受光量)とは、ほぼ比例関係を有する。よって、一例として、予め求め格納している、受光素子222の出力信号の大きさと濁度との関係情報から、制御部214は、濁度測定結果を求めることができる。さらに一例として、予め求め格納している、濁度測定結果と洗浄度判定用基準値とを比較することで、制御部214は、洗浄作業の良否判断を行うことができる。
【0040】
また、投光素子221及び受光素子222は温度特性を有することから、制御部214は、温度センサ215で測定した測定器210の使用環境温度によって濁度測定結果の補正を行う。
【0041】
また、被測定液体の元となる原水の相違、また、サンプリング容器230における汚れあるいは傷等によっても測定結果は変化する。よって測定前に、使用するサンプリング容器230に原水を入れて原水測定を行うことで、制御部214は、受光素子222の出力信号の大きさと濁度との関係情報(検量線)の校正を行う。
【0042】
さらにまた制御部214は、データ番号、求めた濁度測定結果、洗浄度判定結果、校正の有無及び校正値、環境温度、測定日時、等の情報を記憶部214dに格納する。
【0043】
表示部216として、本実施形態では、洗浄作業良否表示部216a、動作表示部216b、及び測定値等の表示部216cを有する。
スイッチ部218として、本実施形態では、電源(オン/オフ)用、測定用、及び校正用の3つの押下スイッチを表面211に設けている。
【0044】
以上のように構成された洗浄度判定装置200の動作について、
図3Eを参照して簡単に説明する。
ステップS1、S2にて、洗浄度判定装置200のスイッチ部218における電源スイッチを押下し、洗浄度判定装置200を起動する。
次にステップS3では、スポンジ洗浄に使用する水道水(原水)をサンプリング容器230の液体収納部231に採取し、当該サンプリング容器230を測定器210の装着部212に装填して校正作業を行う。該校正作業は、洗浄度判定装置200のスイッチ部218における校正ボタンの押下により、制御部214にて、受光素子222の出力信号の大きさと濁度との関係情報(検量線)の校正が自動的に行われる。尚、ステップS3をスキップして、次のステップS4へ進むこともできる。
【0045】
ステップS4では、スポンジ洗浄水の測定作業を行う。即ち、まず作業者は、下準備として、液体供給システム70における貯蔵容器10の出口から注出装置50の液体注出口54までの飲用流体管に対して、停留しているビールの排出、校正作業を行った水道水による水洗浄(通水洗浄)、及び、エアーブローを順次行う。そして作業者は、供給管30内へスポンジを装填後、加圧源15にて既定圧力を印加して注出口54におけるレバー56を操作し、注出口54から排出されてくるスポンジ洗浄水、及びスポンジを、バスケット234を装着したサンプリング容器230に採取つまりサンプリングする。既定量のスポンジ洗浄水が液体収納部231に貯留され、スポンジはバスケット134に受け取られる。
【0046】
次に、スポンジ洗浄水を採取したサンプリング容器230を、測定器210の装着部212に装填し、洗浄度判定装置200のスイッチ部218における測定ボタンを押下する。これにより、制御部214は、ステップS3にて校正された検量線を用い、受光素子222の出力信号の大きさから当該スポンジ洗浄水の濁度を求め、かつ温度センサ215から得られた温度情報に応じて、測定結果に対して温度補正を行う。補正後の測定値は表示部216cに表示される。
また制御部214は、求めた濁度値と、飲用流体管の洗浄作業の良否を判断するための既定の洗浄度判定用基準値とを比較し、洗浄作業の良否判断を行う。
さらにまた制御部214は、スポンジ洗浄水(被測定液体)の濁度測定に関する情報、例えば濁度測定結果、洗浄度判定結果、校正の有無及び校正値、環境温度、測定日時、等の情報を記憶部214dに格納する。
以上にて、測定動作(ステップS4)は終了する。
【0047】
次のステップS5では、作業者が測定器210の電源スイッチをオフすることにより、あるいは既定時間経過後、自動的に、測定器210は動作を停止する。これにより、洗浄度判定装置200による濁度測定及び洗浄度判定動作は終了する。
【0048】
次に、送信部250について説明する。
送信部250は、制御部214にて得られた上述の各種情報のうち、少なくとも濁度測定結果の情報を、例えば近距離無線通信機能560を介して液体供給システム100の通信部140へ送出する。そして通信部140は、通信回線550を介して管理サーバー300へ、例えば時刻情報及び店舗情報を含む他の情報と共に濁度測定結果の情報を送信する。
洗浄度判定装置200の送信部250は、通信回線550を介して直接に管理サーバー300と通信するように構成可能であるが、この場合、洗浄度判定装置200は携帯可能物であることから、少なくとも店舗情報の入力を要することになる。よって、各店舗における液体供給システム100と通信を行う方の利便性が高い。
また、近距離無線通信機能560及び通信回線550を介さずに、上述の各種情報のうち、少なくとも濁度測定結果の情報を、作業者が管理サーバー300に直接、入力してもよい。
【0049】
洗浄度判定装置200による、スポンジ洗浄水の濁度測定結果情報を、貯蔵容器10の出口から注出口54までの飲用流体管内の汚れ予測に使用することは、濁度測定結果が現場で直接に取得した情報であり、管内の汚れレベルの補正用として重要なファクターとなり、意義がある。
【0050】
上述のように本実施形態では、濁度測定は、スポンジ洗浄水に対して行っているが、水道水による水洗浄の洗浄水に対して行ってもよい。そして、水洗浄の洗浄水の濁度測定情報を汚れレベルの補正用として使用してもよい。
【0051】
次に、販売情報管理システム400について、説明する。尚、以下の説明は、店舗が販売情報管理システム400を備えている場合が条件となる。
販売情報管理システム400は、上述したようにPOSシステムに相当するシステムであり、顧客の料金支払い等の際に販売情報等を取り込み、飲料20の、例えば、一販売あたりの規定容量である販売単位容量、販売量、及び販売時刻などの各情報を関連付けた販売情報を、通信回線550を介して管理サーバー300へ供給する。ここで、上述の「一販売あたりの規定容量」つまり「販売単位容量」とは、例えば、それぞれの大きさの飲用容器40についてそれぞれ定めた、1杯分の容量が相当し、例えば中ジョッキであれば300ml、大ジョッキであれば500ml、等の値が相当する。この販売単位容量は、販売情報管理システム400からの入力によって、あるいはまた、管理サーバー300において、例えば消費量分析部等の機能部分を有する場合にはそこへの入力によって、設定可能であり、複数種の飲用容器40に対してそれぞれ設定可能である。
【0052】
このような販売情報管理システム400を利用して、年月日時分の時刻情報と共に、飲料20、例えばビール等、の例えば販売量が記録可能である。尚、販売情報管理システム400における販売情報等の取り込みは、支払時に限定せず、店スタッフが携帯する端末への注文入力時等であってもよい。
【0053】
また出願人は、貯蔵容器10の出口から注出口54までの飲用流体管内における飲料20の滞留時間(飲料20が流れず飲用流体管内で停止している時間)と管内の汚れとの間には相関があることを認識しており、管内における飲料20の通過の有無及びその頻度は、管内の汚れ予測の重要なファクターとなる。即ち、販売情報管理システム400で取得した販売情報によって、リアルタイムにて飲料20の販売量、販売傾向等の情報を得ることができ、それにより例えば上記管内における飲料20の滞留時間をリアルタイムで把握することが可能となる。よって、この販売情報を、貯蔵容器10の出口から注出口54までの飲用流体管内の汚れ予測に使用することは、汚れ予測の重要なファクターとなり、意義がある。
【0054】
上述の滞留時間を計測するために販売情報を用いる以外の方法として、液体供給システム100が上述した流量センサを有する場合には、この流量センサの検知のオンオフに基づいて滞留時間を得ることもできる。
【0055】
次に、管理サーバー300について、
図4Aから
図4E(総称して
図4と記す場合もある。)を参照して説明する。
管理サーバー300は、機械学習部を有しており、通信回線550を介して上述の少なくとも液体供給システム100から供給される各種情報に基づいて、店舗毎の液体供給システム100における貯蔵容器10の出口から注出口54までの飲用流体管内の汚れを機械学習によって、店舗毎に予測する。
また管理サーバー300は、さらに、液体供給システム100から濁度測定結果の情報、及び、販売情報管理システム400から通信回線550を介して供給される情報の少なくとも一方も加えて上記管内の汚れを機械学習によって、店舗毎に予測する。
【0056】
上述の説明から明らかなように、管理サーバー300に供給される情報は、液体供給システム100を有するそれぞれの店舗(飲食店等)から取得されるものである。したがって管理サーバー300は、全店舗の総括的な管内汚れ予測を行うものではなく、店舗毎に備わるそれぞれの液体供給システム100における飲用流体管内の汚れ予測を行うものである。
【0057】
管理サーバー300の概略動作を説明すると、学習処理部340がオリジナル教師モデル341を、各店舗にて取得した各種情報で学習させて、店舗毎に固有の店舗学習済モデル322を作成する。そしてこの店舗学習済モデル322を用いて、汚れ予測部320が上述の飲用流体管内の汚れ予測を行うものである。店舗学習済モデル322は、時間経過と共にさらに、各店舗から取得されていく各種情報で、学習処理部340によって学習処理されていく。よって店舗学習済モデル322は、逐次、進化していく。
出力となる汚れ予測としては、例えば、飲用流体管内の汚れがしきいレベル(
図4FのしきいレベルLth)を超えるまでの日数等の時間情報の提示、しきいレベルLthに対して現時点の汚れレベルが何%程度であるかの提示、等が挙げられる。
【0058】
一方、管理サーバー300は、オリジナル教師モデルを有することなく、各店舗から取得していく各種情報を基に、店舗学習済モデルを作成していくこともできる。そして作成された店舗学習済モデルにて汚れ予測を行うこともできる。
【0059】
上記オリジナル教師モデルとは、少なくとも上述の、洗浄作業の有無に関する情報、飲料20の液温情報、及び飲料20の液種情報等と、飲用流体管内の汚れとの関係を示すモデルであり、実験段階にて作成したモデルが相当する。即ち、液体供給システム100における貯蔵容器10の出口から注出口54までの飲用流体管内の汚れレベルに関して、概ね
図4Fに示す挙動が考えられる。つまり、時刻T0での液体供給システム100の使用開始とともに飲用流体管内の汚れレベルは上昇し始め、t1時間後に、飲用流体管の洗浄が行われると、汚れレベルは、ゼロレベルもしくは略ゼロレベルに戻ると考えられる。時刻T1から時刻T2までも同様である。尚、経時変化により、復帰する汚れレベルは徐々にゼロレベルから離れ上昇していくと考えられる。さらに時刻T3では、作業者が洗浄を行うと共に洗浄度判定装置200にて洗浄水の濁度を測定した場合には、測定結果つまり飲用流体管の実測値汚れレベルLd、換言すると汚れレベルの正しい値、が取得される。また、洗浄以外に、飲用流体管に含まれる、樹脂チューブである供給管30を交換した場合にも、汚れレベルは、ゼロレベルもしくは略ゼロレベルに戻ると考えられる。
このような時間情報等と、汚れレベルとの関係が実験段階(実験室)で得ることができ、これを上記オリジナル教師モデルとすることができる。
また、上述の洗浄作業の有無に関する情報には、既に説明した、前回洗浄から今回の洗浄作業までの経過時間情報(上述のt1、t2時間に相当)も含むことができる。
以上を踏まえ、以下に
図4Aを参照して管理サーバー300の説明を行う。
【0060】
このような管理サーバー300は、機能的には
図4Aにブロックで示すように、情報取得部310、汚れ予測部320、出力部330、学習処理部340、及び店舗毎の学習済モデル322を有する。
【0061】
情報取得部310は、それぞれの店舗における液体供給システム100の通信部140が送出する、次の2つの、洗浄作業の有無に関する情報、及び、飲料20の液温つまり貯蔵容器10に収納されている飲料20の温度情報について、時刻情報及び店舗情報と共に取得する。また、予め管理サーバー300に入力された、それぞれの店舗における液体供給システム100を流れる飲料20の液種情報も、店舗毎に情報取得部310に供給される。
また、各店舗において、洗浄度判定装置200から液体供給システム100へ、液体供給システム100におけるスポンジ洗浄水の濁度測定結果の情報が送出された場合には、情報取得部310は、濁度測定結果の情報も取得する。
さらにまた、店舗が販売情報管理システム400を導入している場合には、情報取得部310は、販売情報管理システム400が送出する上述の販売情報を、時刻情報及び店舗情報を含む他の情報と共に取得する。
【0062】
汚れ予測部320は、それぞれの店舗について、情報取得部310から各種情報を取得し、上述した、店舗毎の学習済モデル322を用いて、液体供給システム100における貯蔵容器10の出口から注出口54までの飲用流体管内の汚れ予測を行う。
【0063】
出力部330は、それぞれの店舗について、汚れ予測部320から、予測された汚れレベルの情報を取得して、当該汚れ予測レベルと、既定のしきいレベルLth(
図4F)との比較を行い、汚れ予測レベルがしきいレベルLthを超える場合には、液体供給システム100における貯蔵容器10の出口から注出口54までの飲用流体管内に汚れが生じる旨の出力(警告)を行う。
【0064】
学習処理部340は、少なくとも上述の3つの情報、つまり洗浄作業有無情報、飲料20の液温情報、及び飲料20の液種情報の入力によって飲用流体管内の汚れ予測を行うように、上述したオリジナル教師モデル341の学習処理を行う部分であり、当該飲用流体管内汚れ予測システム500を稼働させる前の準備段階で動作する部分である。
さらにまた上述したように、学習処理部340は、オリジナル教師モデル341を基に処理された学習済モデル322に対しても、少なくとも上述の3つの情報にて学習処理を行う。
【0065】
また上述したように、管理サーバー300がオリジナル教師モデル341を有しない形態の場合には、学習処理部340は、店舗毎の学習済モデル322を有し、この店舗学習済モデル322を、少なくとも上述の洗浄作業有無情報、液温情報、及び液種情報により学習処理させる。
【0066】
また
図4Dには、学習処理部340が行う学習処理の一例を示すフローチャートを示している。
ステップS11では、学習処理部340は、上述のオリジナル教師モデル341に対して学習処理を施す。該オリジナル教師モデル341は、店舗毎に生成される学習済モデル322のベースとなるモデルであり、学習処理部340における記憶部に格納される。また、オリジナル教師モデル341に対する学習処理は、既知の手法と同様である。学習処理部340は、オリジナル教師モデル341が正解の汚れレベルを出力するように、既知の手法にてパラメータ(重み係数、及びバイアス等)の修正が行われる。また、店舗毎の学習済モデル322において、各パラメータは、通常、店舗毎に異なっている。
また、学習処理部340は、上述したように、生成した各店舗の学習済モデル322に対しても、各店舗からさらに取得されてくる各種情報によって、学習処理を行う。
【0067】
次のステップS12では、学習処理部340は、学習処理を施したオリジナル教師モデル341を学習済モデル322として、例えば、外部記憶装置364(
図4B)に格納する。
学習済モデル322は、このような学習処理によって、より良好な汚れ予測を出力し得るように学習処理される。そして上述のように、それぞれの店舗毎に学習済モデル322が生成され、店舗毎に各学習済モデル322がカスタマイズされていく。
【0068】
図4Bには、管理サーバー300のハードウェア構成の一例を示す。即ち、管理サーバー300は、主たる構成部分として、CPU361、ROM362、RAM363、外部記憶装置(例えば、フラッシュメモリ)364、及び通信インタフェイス365等を備えたコンピュータで構成される。
【0069】
管理サーバー300における上述の各機能は、例えば、CPU361がROM362、RAM363、外部記憶装置364等に記憶された処理プログラム、店舗毎の学習済モデル322、及び各種情報(例えば、洗浄作業有無情報、液温情報、及び液種情報、等)を参照することによって実現される。尚、RAM363は、例えば、データの作業領域あるいは一時退避領域として機能する。
また、上述した各機能の一部又は全部は、CPU361による処理に代えて、又は、これと共に、DSPによる処理によって実現されてもよい。又、同様に、各機能の一部又は全部は、ソフトウェアによる処理に代えて、又は、これと共に、専用のハードウェア回路による処理によって実現されてもよい。
【0070】
学習済モデル322は、上述したように、少なくとも上述の3つの情報、つまり洗浄作業有無情報、飲料20の液温情報、及び飲料20の液種情報の入力によって飲用流体管内の汚れ予測を行うように、オリジナル教師モデル341を用いた学習処理が施されたものである。
このような学習済モデル322としては、例えば、ニューラルネットワーク、回帰木、SVM(Support Vector Machine)、ベイズ識別器、又、これらのアンサンブルモデル等、任意の学習器を用いることができる。尚、当該学習済モデル322として、いわゆるディープラーニングが適用されるものであってもよい。
【0071】
本実施形態において、学習済モデル322による算出精度に対して特に影響が大きい入力情報として、洗浄作業有無情報、より好ましくは、洗浄作業の頻度情報、つまり何時間あたりに1回の洗浄作業が実行されたかの情報がある。その理由として、洗浄作業が実行されることで、液体供給システム100における貯蔵容器10の出口から注出口54までの飲用流体管内の汚れレベルは、低減すると考えられ、最良の場合には汚れゼロレベルにリセット可能と考えられ、汚れ予測に大きく影響する。これはまた、洗浄作業がスポンジ洗浄、あるいは水洗浄かによって、汚れレベルの低減量は変化する。
【0072】
さらにまた、算出精度に対して影響が大きい入力情報として、スポンジ洗浄水の濁度測定結果情報がある。その理由としては、該濁度測定結果は、現場で直接に取得した実際の汚れレベル情報であり、汚れ予測を補正可能な情報として有効だからである。
既に述べたが、濁度測定は、スポンジ洗浄水の他、水道水による水洗浄の洗浄水に対して行ってもよい。そして、水洗浄の洗浄水の濁度測定情報を管内の汚れレベルの補正用として使用してもよい。
【0073】
また、学習済モデル322(例えば、構造データ及び学習済みのパラメータデータ等)は、例えば、処理プログラムと共に、予め外部記憶装置364に格納されている。
【0074】
図4Cには、本実施形態における学習済モデル322(ここでは、ニューラルネットワーク)の構成の一例を示す。
本実施形態における学習済モデル322は、入力層として、上述の洗浄作業有無情報等を入力するための複数の入力ユニットを有している。複数の入力ユニットXi-Xkは、上述の洗浄作業有無情報、液温情報、液種情報、さらに、洗浄作業の頻度情報、スポンジ洗浄水の濁度情報、及び販売情報等の入力を受け付ける構成となっている。
【0075】
ニューラルネットワークのその他の構成は、既知の技術と同様であり、ニューラルネットワークは、入力層に入力された情報が、中間層、出力層へと順に伝搬(演算)されることにより、出力層から汚れ予測レベルを出力する。例えば、中間層は、複数の中間ユニットZj(j=1~n(ユニット数))により構成されている。そして、入力層の入力ユニットXi(i=1~k(ユニット数))に入力された情報Xiが、それぞれの結合係数Wji(図示せず)で重みづけ(積算)されて、中間層の各中間ユニットZjに入力され、それらが加算されて各中間ユニットZjの値となる。又、中間層の各中間ユニットZjの値は、入出力関数(例えば、シグモイド関数)で非線形変換されて、それぞれの結合係数Vj(図示せず)で重みづけ(積算)されて、出力層の出力ユニットUに入力され、それらが加算されて出力層の出力ユニットUの値となる。
【0076】
管理サーバー300の汚れ予測部320は、このような学習済モデル322の順伝播処理によって、汚れ予測レベルを算出する。
尚、上述の学習済モデル322の構成は、一例であって、種々に変更されてよい。
【0077】
以上説明したように、管理サーバー300の情報取得部310へ供給される各情報は、それぞれの店舗にて相違すると共に、一店舗ですら一様ではなく変動する情報である。よって、それぞれの店舗毎にそれぞれの学習済モデル322を用いて、汚れ予測部320が飲用流体管内の汚れレベルを予測することは、従来に比べてより高いレベルにて飲用流体管内の汚れ管理を行うことが可能になり、非常に有効である。
【0078】
尚、管理サーバー300の構成の一例として、学習処理部340を備える構成を示したが、これに限定されるものではない。即ち、管理サーバー300とは別の学習装置において、学習済モデル322に対して機械学習を施して、管理サーバー300は、当該学習済みの学習済モデルを取得して、外部記憶装置364等に記憶しておく構成としてもよい。
【0079】
又、管理サーバー300の構成の一例として、情報取得部310、汚れ予測部320、出力部330等の機能が一つのコンピュータによって実現されるものとしたが、これらが複数のコンピュータにて実現されてもよい。又、当該コンピュータに読み出されるプログラム及びデータも、複数のコンピュータに分散して格納されてもよい。
【0080】
以上説明した構成を有する飲用流体管内汚れ予測システム500の動作について、
図4Eを参照して説明を行う。
既に説明したように、汚れ予測システム500における管理サーバー300には、それぞれの店舗における各液体供給システム100から、年月日時分の時刻情報と共に、洗浄作業の有無情報、及び貯蔵容器10内の飲料20の温度情報が少なくとも供給され、さらにまた、洗浄水(スポンジ洗浄あるいは水洗浄によるもの)の濁度情報が供給されるときもある(ステップS20)。ここで、飲料20の液種情報は、管理サーバー300に入力されている。
【0081】
管理サーバー300は、これらの情報に基づいて、それぞれの店舗における学習済モデル322を用いて、それぞれの店舗毎に、液体供給システム100における貯蔵容器10の出口から注出口54までの飲用流体管内の汚れ予測を行う(ステップS21-ステップS25)。さらに管理サーバー300は、汚れ予測結果に基づいて、上記飲用流体管内の汚れレベルがしきいレベルLth(
図4F)を超える場合には、それぞれの店舗毎に、その旨を出力する(ステップS26、ステップS27)。
【0082】
このように本実施形態における汚れ予測システム500によれば、飲用流体管内の汚れ予測を出力するように構成したことで、飲用流体管内の汚れ管理を従来に比べてより高いレベルにて行うことが可能である。
【0083】
さらに、店舗が販売情報管理システム400を備える場合には、販売情報管理システム400から飲料20の販売情報が時刻情報と共に管理サーバー300へ供給可能である(ステップS20)。よって管理サーバー300は、販売情報に基づいて、飲用流体管内における飲料20の滞留時間情報を取得することができ、この滞留時間情報をさらに加味して汚れ予測を行うことが可能となる。
よって、販売情報を取得することで、さらに高いレベルでの飲用流体管内の汚れ管理が可能となる。
【0084】
上述のように本実施形態では、管理サーバー300における汚れ予測部320は、学習済モデル322を用いて液体供給システム100の飲用流体管内の汚れ予測を行っている。一方、これに限定されず、汚れ予測部320は、管理サーバー300へ供給される各種情報と汚れ予測との関係を表すプログラム、演算式等を外部記憶装置364に格納しておき、上記プログラム等を用いて、
図4Eに示すような動作にて飲用流体管内の汚れ予測を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、液体供給システムにおける飲用流体管内の汚れ予測システム及び方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0086】
10…貯蔵容器、20…飲料、50…注出装置、54…注出口、
100…液体供給システム、110…洗浄モード検知部、121…温度センサ、
131…液種センサ、140…通信部、
200…洗浄度判定装置、210…測定器、230…サンプリング容器、
250…送信部、
300…管理サーバー、320…汚れ予測部、322…学習済モデル、
340…学習処理部、
400…販売情報管理システム、
500…汚れ予測システム、
550…通信回線、560…近距離無線通信機能。