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  • 特許-給湯用銅管更生方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】給湯用銅管更生方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 7/14 20060101AFI20230111BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20230111BHJP
   B05D 7/22 20060101ALI20230111BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20230111BHJP
   F16L 55/164 20060101ALI20230111BHJP
   F16L 58/10 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
B05D7/14 K
B05D3/12 B
B05D7/22 N
B05D7/24 302U
F16L55/164
F16L58/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021089247
(22)【出願日】2021-05-27
(65)【公開番号】P2022059559
(43)【公開日】2022-04-13
【審査請求日】2022-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2020166679
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509053363
【氏名又は名称】株式会社タイコー
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】米村 直樹
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-171680(JP,A)
【文献】特開2006-026630(JP,A)
【文献】特開2000-061397(JP,A)
【文献】特開2017-148782(JP,A)
【文献】特開昭63-083174(JP,A)
【文献】特開2004-043571(JP,A)
【文献】特開平04-358568(JP,A)
【文献】特開平03-000169(JP,A)
【文献】特開2007-270965(JP,A)
【文献】特開2013-208512(JP,A)
【文献】特開平09-239662(JP,A)
【文献】特開昭61-033864(JP,A)
【文献】特開2003-300011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00-7/26
C09D1/00-10/00
101/00-201/10
F16L51/00-55/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯用銅管内を前乾燥させるステップ、
前記給湯用銅管に研磨用ホースを接続し前記給湯用銅管内部に研磨剤を導入して研磨するステップ、
前記研磨された給湯用銅管内に塗料を導入して前記給湯用銅管内壁に塗布するステップ、
前記給湯用銅管内壁を後乾燥させるステップ、
前記乾燥後、前記給湯用銅管内を温水で満たして温水養生するステップ、を備える給湯用銅管更生方法であって、
前記給湯用銅管は、主配管から複数の分岐管が接続され、複数の配管口を有するものとなっており、
前記給湯用銅管に研磨用ホースを接続し前記給湯用銅管内部に研磨剤を導入して研磨するステップは、
前記給湯用銅管の一方の側の配管口から前記研磨剤を導入して、隣接する前記分岐管の配管口から前記研磨剤を排出して前記給湯用銅管の内部を研磨した後、
前記研磨剤を排出した前記配管口から逆に前記研磨剤を導入して、隣接する他の前記分岐管の配管口から前記研磨剤を排出して前記給湯用銅管の内部を正研磨及び逆研磨し、これを順次繰り返して前記一方の側の配管口から最も遠い配管口まで研磨した後、逆に、
前記最も遠い配管口から前記一方の配管口側に前記研磨剤を導入して、前記主配管及び前記複数の分岐間を均一に研磨するものであり、
前記塗料は、主剤と硬化剤を混合することにより硬化させるエポキシ樹脂であって、
前記主剤は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を70重量%以上95重量%以下、酸化チタンを2重量%以上20重量%以下、シリカを0.2重量%以上10重量%以下の範囲で含み、
前記硬化剤は、変性脂肪族ポリアミンを10重量%以上60重量%以下、イソホロンジアミンを50重量%、シリカを0.2重量%以上10重量%以下、フタロシアニンブルーを0.2重量%以上10重量%以下の範囲で含む給湯用銅管更生方法。
【請求項2】
前記温水養生は、50℃以上90℃以下の温度の温水にて行う請求項1記載の給湯用銅管更生方法。
【請求項3】
前記温水養生は、20分以上1時間以下の時間にて行う請求項1記載の給湯用銅管更生方法。
【請求項4】
前記温水養生は、複数回行う請求項1記載の給湯用銅管更生方法。
【請求項5】
前記研磨された給湯用銅管内に塗料を導入して前記給湯用銅管内壁に塗布するステップは、
一方の側の水栓と、前記水栓から最も遠い位置にある水栓との間の前記給湯用銅管内に前記塗料を塗布し、次いで次に遠い位置にある水栓との間の前記給湯用銅管内に前記塗料を塗布し、これを順次行い最後に最も近い位置にある水栓との間の前記給湯用銅管内に前記塗料を塗布していく請求項1記載の給湯用銅管更生方法。
【請求項6】
前記研磨された給湯用銅管内に塗料を導入して前記給湯用銅管内壁に塗布するステップと前記給湯用銅管内壁を後乾燥させるステップの間に、塗料の厚さを調整するステップを備える請求項1記載の給湯用銅管更生方法。
【請求項7】
前記塗料の厚さを調整するステップは、
前記給湯用銅管の複数の水栓間において、一方の側の水栓から、距離の最も近い位置にある水栓との間の前記給湯用銅管内の前記塗料の厚さを調整し、次いで次に近い位置にある水栓との間の前記給湯用銅管内の前記塗料の厚さを調整し、これを順次行い最後に最も遠い位置にある水栓との間の前記給湯用銅管内の前記塗料の厚さを調整していく請求項6記載の給湯用銅管更生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯用銅管更生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯用銅管とは、戸建やマンション等の住宅において蛇口に湯を供給するために用いられる配管をいう。
【0003】
一般に給湯用銅管は、金属等を用いて構成されているが、金属等を用いている限りにおいて内面に錆等の腐食が発生することがあり、この腐食が多くなるとその給湯機能に支障が出るだけでなく、健康に対する被害も生じる恐れがある。
【0004】
これに対し、例えば下記特許文献1には排水管を補修する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5534096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法は、下水を流す排水管に対して適用されるものであって、上水であるライニングにそのまま適用できるものではない。その理由は、ライニングにおいて、一般にはエポキシ樹脂等の塗料を用いるものであるため、特に工夫なく樹脂等の塗料を用いてしまうと湯中に塗料が溶け出す等の不都合が生じてしまうおそれがあり、これは場合によっては健康被害につながってしまう重大なリスクである。
【0007】
また、給湯用銅管は給湯器側から本管及び本管から複数枝分かれしている分岐管を備えており、また分岐管も90度程度で折れ曲っているものが多い。すなわち、排水管の補修方法をそのまま適用することは難しい。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、水質に影響を与えず、給湯用銅管特有の構造に対しても適用できる給湯配管の更生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の一観点に係る給湯用銅管更生方法は、給湯用銅管内を前乾燥させるステップ、給湯用銅管に研磨用ホースを接続し給湯用銅管内部に研磨剤を導入して研磨するステップ、研磨された給湯用銅管内に塗料を導入して給湯用銅管内壁に塗布するステップ、給湯用銅管内壁を後乾燥させるステップ、乾燥後、前記給湯用銅管内を温水で満たして温水養生するステップ、を備えるものである。
【0010】
また、本観点において、限定されるわけではないが、温水養生は、50℃以上90℃以下の温度の温水にて行うことが好ましい。
【0011】
また、本観点において、限定されるわけではないが、温水養生は、20分以上1時間以下の時間にて行うことが好ましい。
【0012】
また、本観点において、限定されるわけではないが、温水養生は、複数回行う請求項1記載の給湯用銅管更生方法。
【0013】
また、本観点において、限定されるわけではないが、塗料は、主剤と硬化剤を混合することにより硬化させるエポキシ樹脂であって、主材は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を70重量%以上95重量%、酸化チタンを2重量%以上20重量%以下、シリカを0.2重量%以上10重量%以下の範囲で含み、硬化剤は、変性脂肪族ポリアミンを10重量%以上60重量%、イソホロンジアミンを50重量%、シリカを0.2重量%以上10重量%以下、フタロシアニンブルーを0.2重量%以上10重量%以下の範囲で含むことが好ましい。
【0014】
また、本観点において、限定されるわけではないが、給湯用銅管に研磨用ホースを接続し前記給湯用銅管内部に研磨剤を導入して研磨するステップは、前記給湯用銅管の一方の側から前記給湯用銅管内部に研磨剤を導入して研磨する第一のステップ、前記第一のステップの後に、前記給湯用銅管の他方の側から前記給湯用銅管内部に研磨剤を導入して研磨する第二のステップ、を備える双方向研磨を行うステップであることが好ましい。
【0015】
また、本観点において、限定されるわけではないが、給湯用銅管に研磨用ホースを接続し前記給湯用銅管内部に研磨剤を導入して研磨するステップにおいて、給湯用銅管の一方の側から給湯用銅管内部に研磨剤を導入して研磨する第一のステップは、一方の側から、隣接する二つの水栓間の給湯用銅管内部を順次研磨していくものであり、給湯用銅管の他方の側から給湯用銅管内部に研磨剤を導入して研磨する第二のステップは、他方の側から、隣接する二つの水栓間の給湯用銅管内部を順次研磨していくものであることが好ましい。
【0016】
また、本観点において、限定されるわけではないが、研磨された給湯用銅管内に塗料を導入して前記給湯用銅管内壁に塗布するステップは、一方の側の水栓と、水栓から最も遠い位置にある水栓との間の給湯用銅管内に前記塗料を塗布し、次いで次に遠い位置にある水栓との間の前記給湯用銅管内に前記塗料を塗布し、これを順次行い最後に最も近い位置にある水栓との間の給湯用銅管内に塗料を塗布していくことが好ましい。
【0017】
また、本観点において、限定されるわけではないが、研磨された給湯用銅管内に塗料を導入して給湯用銅管内壁に塗布するステップと給湯用銅管内壁を後乾燥させるステップの間に、塗料の厚さを調整するステップを備えることが好ましい。
【0018】
また、本観点において、限定されるわけではないが、塗料の厚さを調整するステップは、給湯用銅管の複数の水栓間において、一方の側の水栓から、距離の最も近い位置にある水栓との間の給湯用銅管内の前記塗料の厚さを調整し、次いで次に近い位置にある水栓との間の給湯用銅管内の塗料の厚さを調整し、これを順次行い最後に最も遠い位置にある水栓との間の給湯用銅管内の塗料の厚さを調整していくことが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
以上、本発明によって、水質に影響を与えず、給湯用銅管特有の構造に対しても適用できる給湯配管の更生方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】給湯用銅管内に圧縮空気を送る場合のイメージを示す図である。
図2】給湯用銅管内に研磨剤を送る場合のイメージを示す図である。
図3】給湯用銅管内に塗料を送る場合のイメージを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、また以下に示す実施形態、実施例において記載される具体的な例示についても適宜変更及び調整が可能であり、これらに限定されるものではない。
【0022】
(給湯用銅管更生方法)
本実施形態に係る給湯用銅管更生方法(以下「本方法」という。)は、(1)給湯用銅管内を前乾燥させるステップ、(2)給湯用銅管に研磨用ホースを接続し給湯用銅管内部に研磨剤を導入して研磨するステップ、(3)研磨された給湯用銅管内に塗料を導入して給湯用銅管内壁に塗布するステップ、(4)給湯用銅管内壁を後乾燥させるステップ、(5)乾燥後、給湯用銅管内を温水で満たして温水養生するステップ、を備えるものである。各ステップの詳細及びその効果については後述の記載から明らかとなるが、本方法によると、水質に影響を与えず、給湯用銅管特有の構造に対しても適用できる給湯配管の更生方法を提供することができる。
【0023】
まず、本方法では、(1)給湯用銅管内を前乾燥させるステップを有する。「前乾燥」とは、給湯用銅管内を乾燥させる工程であるが、このステップの後においても行う乾燥と区別するために「前乾燥」という用語を使用しているが「前」にこれ以外の技術的意図はない。給湯用銅管内を乾燥させることで、後述の各ステップを確実に行わせることができる。
【0024】
また本ステップの前においては、本方法の実施に先立ち、施行後10年程度の耐久性があるかを診断しておくことが好ましい。これにより施工の可否と、施工に耐えることができないと思われる部分の更新(新規な部品への交換等)を提案することが可能となり、より確実に給湯用銅管の更生が可能となる。すなわち、「更生」とは、既に住宅内において設置され、長期間使用されている給湯用銅管設備全体を新品に代えることなくその機能を蘇らせることをいうが、一部の部品を交換して蘇らせることとするのもこの「更生」に含まれる。
【0025】
また、この給湯用銅管更生方法を実施するに先立ち、更に、施工計画書を作成、この方法の実施内容を居住者に説明し、近隣対策、諸届出を行い、工事事務所を開設し、資材を搬入し仮設給水をするようにすることが好ましい。
【0026】
また、本ステップでは、具体的に本ステップを行う前に、(a)バルブ、機械類、器具(水栓等)等を外すことが好ましい。このようにすることで安定的に後述の各種ホースを密着させて配置することが可能となる。
【0027】
また、本ステップでは、具体的に本ステップを行う前に、給湯用銅管の所定の位置をカット(切断)することが好ましい。具体的には、(b)施工距離が所定の距離以上となっている場合に、所定の距離以下とするためのカッティングを行うことが好ましい。
【0028】
また、この具体的な施工距離としては限定されるわけではないが、各処理を行う長さとして、10m以上40m以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは15m以上30m以下の範囲である。この範囲とすることでより確実な更生を行うことができる。
【0029】
また、本方法が対象とする給湯用銅管の内径の大きさ(管径)としては、限定されるわけではないが、10A以上30A以下であることが好ましく、より好ましくは15A以上20A以下である。
【0030】
また、本ステップでは、上記の通り、給湯用銅管内の乾燥を行う。給湯用銅管の乾燥は、実現できる限りにおいて限定されるものではないが、除湿した圧縮空気を用いることが好ましく、また圧縮空気の温度としてもその気温以上(25℃以上)であることが好ましく、60℃以下であることが好ましい。なお、より好ましくは40℃程度である。
【0031】
また、本ステップにおいて、限定されるわけではないが、圧縮空気を用いる場合、この圧縮空気は、蛇口側から給湯器側の方向(以下「正研磨方向」という。)に圧縮空気を供給しても、給湯器側から蛇口側の方向(以下「逆研磨方向」という。)に圧縮空気を供給することとしてもよい。正研磨方向から圧縮空気を送る場合、蛇口側の配管口が一つの場合はその一つ、複数ある場合はその各々に圧縮空気供給管(乾燥用ホース)を接続し、給湯器側の配管口から圧縮空気を排出させることが好ましい。逆に、逆研磨方向から圧縮空気を送る場合、給湯器側の配管口から乾燥用ホース等を接続して圧縮空気を供給し、蛇口側の配管口が一つの場合はその一つ、複数ある場合はその各々から圧縮空気を排出させることが好ましい。この場合のイメージを図1に示しておく。
【0032】
また、乾燥の時間は、空気の温度や配管の径によって異なるが、十分に給湯用銅管内を乾燥させることができる限りにおいて限定されるわけではないが、空気の温度が40度程度の場合、10分以上60分以下の範囲としておくことが好ましい。
【0033】
なお本ステップによる乾燥の確認は、限定されるわけではないが、圧縮空気が排出される側の配管口に透明な部材を使用した乾燥用ホースを用いて接続し、この乾燥用ホース内の水滴を確認し、この水滴が消えた状態を確認することで実現できる。これにより、非常に簡便に乾燥を確認することができる。
【0034】
また、本方法では、(2)給湯用銅管に研磨用ホースを接続し給湯用銅管内部に研磨剤を導入して研磨するステップを有する。より具体的には給湯用銅管の配管口、給湯器側の配管口それぞれに研磨用ホースを接続して研磨剤を導入する。本ステップでは、研磨剤により研磨することで、配管内に発生した水アカや緑青などの汚れを除去することが可能となる。
【0035】
本方法で用いる研磨剤としては、限定されるわけではないが、珪砂又はセラミックス砂を用いることができる。この研磨砂のサイズは適宜調整可能であるが、10メッシュ以上60メッシュ以下であることが好ましい。
【0036】
また、本方法の研磨に際しては、上記の通り給湯用銅管の配管口に研磨用ホースをそれぞれ接続し、一方の配管口から研磨剤を投入し、他方の配管口から研磨剤を排出させ、回収することで行うことが好ましい。
【0037】
ところで、給湯用銅管を構成する場合、上記の通り配管口(水栓口)は複数ある(配管口は給湯器側の配管口)ためそのそれぞれを均等かつ十分に行う必要がある。そのため、研磨においては、一度研磨を行った後、同じ経路において、反対側からの研磨を行うことが好ましい。すなわち、本ステップは、給湯用銅管の一方の側から給湯用銅管内部に研磨剤を導入して研磨する第一のステップを有し、更に、第一のステップの後に、給湯用銅管の他方の側から給湯用銅管内部に研磨剤を導入して研磨する第二のステップ、を備える双方向研磨を行うことが好ましい。このようにすることで、均等な研磨を行うことができる。
【0038】
ところで、給湯用銅管の場合、給湯器側の配管口と、この給湯器に接続される主配管から複数の分岐管が接続されているものとなっており、これらの間においても、同じ程度の研磨を行わなければならない。例えば一定の箇所の研磨を多く繰り返してしまうとその部分の配管の厚みが極端に薄くなり、ひどい場合は配管に穴が開いてしまう場合さえあるため注意が必要である。
【0039】
そのため、本ステップでは、複数の配管口それぞれに研磨用ホースを接続し、順次リレー形式にて研磨していくことが好ましい。この場合のイメージを図2に示す。本図の例は、上記の通り、そのそれぞれの分岐管の先に配管口が形成された例を示している。すなわち本ステップにおいて、給湯用銅管の一方の側から給湯用銅管内部に研磨剤を導入して研磨する第一のステップは、一方の側から、隣接する二つの水栓間の給湯用銅管内部を順次研磨していくものであることが好ましく、更に好ましくは、これらの研磨の後、最も遠い二つの配管口を研磨するようにすることが好ましい。このようにすれば3以上配管口が供えられた給湯用銅管であっても、均一に研磨することが可能となる。
【0040】
本図の例について具体的に説明する。本図の例では、給湯器側の配管口をM、蛇口側の配管口がF1~F5の5個ある場合の例を示している。また、F1が最も給湯器側に近く、F2、3、4となるに従い遠くなり、F5が最も給湯器側から遠い配管口となっている。なお、本図の例では給湯器側の本枝MPから第一の分岐DP1が分岐点J1を起点に接続して配管口F1につながっており、給湯器側の本枝MPから第二の分岐DP2が分岐点J2を起点に接続して配管口F2につながっており、給湯器側の本枝MPから第三の分岐DP2が分岐点J3を起点に接続して配管口F3につながっており、第三の分岐DP3から第四の分岐DP4が分岐点J4を起点に接続して配管口F4につながっており、本枝MPの末端側には配管口F5がつながっている例を示す。
【0041】
まず、給湯器側の配管口Mと、配管口F1を接続し、他の配管口F2~F5は弁等で閉じる。そして、給湯器側の配管口Mから研磨剤を投入し、配管口F1から排出させて回収する。まずこれにより、M-F1間の研磨(第一研磨)が完了する。
【0042】
次に、配管口F2の弁を空け、給湯器側の配管口Mを弁等で閉じ、配管口F1から研磨剤を投入し配管口F2から研磨剤を排出させて回収する。これにより、F1-F2間の研磨(第二研磨)が完了する。
【0043】
更に、今度は配管口F3の弁を空け、排気口F1を弁等で閉じ、配管口F2から研磨剤を投入し配管口F3から研磨剤を排出させて回収する。これにより、F2-F3間の研磨(第三研磨)が完了する。
【0044】
そして、今度は配管口F4の弁を空け、排気口F2を弁等で閉じ、配管口F3から研磨剤を投入し配管口F4から研磨剤を排出させて回収する。これにより、M3-F4間の研磨(第四研磨)が完了する。
【0045】
そして、今度は配管口F5の弁を空け、排気口F3を弁等で閉じ、配管口F4から研磨剤を投入し配管口F5から研磨剤を排出させて回収する。これにより、一通りの配管内を研磨することが可能となる。これにより、F4-F5間の研磨(第五研磨)が完了する。
【0046】
そして、最後に、最も遠い一対の配管口、ここでは給湯器側の配管口Mと、これから最も遠い位置にある配管口F5の間の研磨を行うことが好ましい。またこの場合においては、最も遠い位置にある配管口F5から研磨剤を投入し、給湯器側の配管口Mから研磨剤を排出、回収することが好ましい。これにより、F5-M間の研磨(第六研磨)が完了する。
【0047】
上記により、均等かつ十分な研磨が可能となる。具体的に説明すると、まず上記第一研磨により、-J1間の正研磨と、J1-F1間の正研磨が1回終わる。次に、上記第二研磨により、F1-J1間の逆研磨が1回、J1-J2間の正研磨が1回、J2-F2間の正研磨が1回終わる。次に、上記第三研磨により、F2-J2間の逆研磨が1回、J2-J3間の正研磨が1回、J3-F3間の正研磨が1回終わる。次に、上記第四研磨により、F3-J4間の逆研磨が1回、J4-F4間の正研磨が1回終わる。次に、上記第五研磨により、F4-J4間の逆研磨が1回、J4-J3間の逆研磨が1回、J3-F5間の正研磨が1回終わる。そして、第研磨を行うことで、F5-M間の逆研磨、すなわち、F5-J3間の逆研磨が1回、J3-J2間の逆研磨が1回、J2-J1間の逆研磨が1回、J1-M間の逆研磨が1回行われる。すなわちこれは、各給湯用銅管において正研磨と逆研磨を1回ずつ行なうことができているのを意味する。特に、給湯用銅管の場合は分岐が多く逆研磨を行うことで研磨の漏れを少なくすることができるだけでなく、比較的細い径の給湯用銅管に対して一部の給湯用銅管部分だけを多数回研磨してしまうことによる穴あきのリスクを大幅に減らすことができる。繰り返しとなるが、3以上の多数の配管口に対し、それぞれ順次接続し、リレー形式で研磨を行うことが好ましい。
【0048】
なお、本ステップにおいて、研磨後は、エアフラッシングして管内を清掃することが好ましい。
【0049】
また、本方法では、(3)研磨された給湯用銅管内に塗料を導入して給湯用銅管内壁に塗布するステップを有する。
【0050】
また、本ステップにおいて、限定されるわけではないが、塗料は、主剤と硬化剤を混合することにより硬化させる二液性のエポキシ樹脂であることが好ましい。またこの場合において、主材は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を70重量%以上95重量%、酸化チタンを2重量%以上20重量%以下、シリカを0.2重量%以上10重量%以下の範囲で含み、硬化剤は、変性脂肪族ポリアミンを10重量%以上60重量%、イソホロンジアミンを50重量%、シリカを0.2重量%以上10重量%以下、フタロシアニンブルーを0.2重量%以上10重量%以下の範囲で含むことが好ましい。この範囲とすることで、給湯配管においても、十分に安定した更生方法を行うことが可能となる。
【0051】
また、本ステップにおいて、塗料には、抗菌剤が含まれていることが好ましい。また抗菌剤としては銀微粒子又は銀イオンを含んだものであることが好ましく、より具体的には銀ゼオライトであることが好ましい。また、抗菌剤の上記塗料に対する配合割合としては、上記主材、硬化剤、及び抗菌剤の全重量を100とした場合、0.1以上5以下であることが好ましく、より好ましくは1以上である。0.1以上とすることで抗菌性能を確保することが可能であり、5以下とすることで不必要に添加することによる塗料の膜の硬度の低下を防ぐことが可能となるといった効果がある。
【0052】
なお、この場合において、塗布後は、直ちに配管内を減圧装置で減圧し、塗膜表層部の気泡を除去することが好ましい。
【0053】
また、本ステップにおいて、限定されるわけではないが、(3)研磨された給湯用銅管内に塗料を導入して給湯用銅管内壁に塗布するステップと(5)給湯用銅管内壁を後乾燥させるステップの間に、(6)塗料の厚さを調整するステップを備えることが好ましい。これによって、より均一な塗料の厚さを確保することができる。
【0054】
なお本ステップでは、塗料の厚さを均一にすることができる限りにおいて限定されないが、配管内、具体的には一つの配管口から他の配管口にピグ(弾性のある球状物体)を通し、塗膜面を平滑に調整することが好ましい。
【0055】
また、本ステップでは、限定されるわけではないが、給湯用銅管の複数の水栓間において、一方の側の水栓から、距離の最も近い位置にある水栓との間の給湯用銅管内の前記塗料の厚さを調整し、次いで次に近い位置にある水栓との間の給湯用銅管内の塗料の厚さを調整し、これを順次行い最後に最も遠い位置にある水栓との間の給湯用銅管内の塗料の厚さを調整していくことが好ましい。すなわち、上記研磨と同じ手順で厚さを調整していくことが好ましい。このようにすれば、上記研磨と同様、塗料の厚さの均一性を確保することが可能となる。
【0056】
また、本方法では(4)給湯用銅管内壁を後乾燥させるステップを有する。これにより十分乾燥させて、塗料を硬化させることが可能となる。またこの場合において、塗料が十分硬化するよう温度調節を行っておくことも好ましい。
【0057】
また、本方法では(5)乾燥後、給湯用銅管内を温水で満たして温水養生するステップを有する。これにより、塗料内に残存していた有機物等人体に影響のある物質を十分に除去することが可能となる。特にこれはこの段階、タイミングで行うことが重要である。
【0058】
本ステップでは、給湯用銅管内を温水で満たすことができる限りにおいてその充填方法は限定されないが、例えば、給湯器側の配管口Mから温水を供給し、各配管口から温水が出てきたらそれぞれ弁を閉める等し、最後に配管口Mを閉じることとしてもよく、また、最も鉛直方向下側にある配管口から温水を供給し、それぞれの配管口から温水が排出されたらそれぞれ閉めていくこととしてもよい。これにより、配管内に気泡を残しにくくして温水養生することが可能となる。
【0059】
また、本ステップにおいて、限定されるわけではないが、温水養生は、50℃以上90℃以下の温度の温水にて行うことが好ましい。
【0060】
また、本ステップにおいて、限定されるわけではないが、温水養生は、20分以上1時間以下の時間にて行うことが好ましい。
【0061】
また、本ステップにおいて、限定されるわけではないが、温水養生は、複数回行うことが好ましい。
【0062】
また、温水養生を行った後は、通水し、水質分析を行ってから飲用水として給水し、給湯用銅管の更生を完了させる。
【0063】
以上、本実施形態によって、水質に影響を与えず、給湯用銅管特有の構造に対しても適用できる給湯配管の更生方法を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は給湯配管の更生方法として産業上の利用可能性がある。
図1
図2
図3