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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】粘性材料充填装置
(51)【国際特許分類】
   B65B 3/12 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
B65B3/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022032910
(22)【出願日】2022-03-03
【審査請求日】2022-04-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】522052118
【氏名又は名称】株式会社CREATIVE21
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】釜谷 昌希
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩久
【審査官】沖 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-055826(JP,A)
【文献】特開2016-043328(JP,A)
【文献】特許第4659128(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 1/00- 3/36
B67C 3/00-11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が粘性材料の供給源に向かって開口する充填口とされ、該充填口から前記粘性材料の充填される方向である充填方向を中心として筒状に延びるカートリッジ本体、及び、該カートリッジ本体内で前記充填方向に配列された複数のプラグを有するカートリッジ内に前記粘性材料を充填する粘性材料充填装置であって、
前記カートリッジを保持する保持部と、
前記充填口を通じて前記粘性材料を前記カートリッジ内に押し込むように、前記充填方向に進退動可能なプランジャを有する充填部と、
前記カートリッジの他端側に設けられ、前記粘性材料の充填に伴って前記充填方向に移動する前記プラグを他端側から一端側に向かう方向に付勢する付勢部と、
を備え、
複数の前記プラグが粘性材料の充填に伴って前記付勢部の付勢力を上回る大きさの力で前記充填方向に移動することにより、順次カートリッジから排出されていく粘性材料充填装置。
【請求項2】
前記付勢部は、前記充填方向に交差する方向に延びて、一端が固定端とされ、他端が前記プラグに当接可能であるとともに該プラグの移動に伴って弾性変形可能な板ばねを有する請求項に記載の粘性材料充填装置。
【請求項3】
前記付勢部は、前記充填方向に交差する方向に間隔をあけて配列されるとともに、前記カートリッジを挟むようにして配置された一対の前記板ばねを有する請求項に記載の粘性材料充填装置。
【請求項4】
前記付勢部に付加される前記プラグによる反力を計測する反力計測部と、
前記プランジャを前記充填方向に駆動するプランジャ駆動装置と、
前記反力計測部の計測結果に基づいて前記プランジャ駆動装置を制御する制御部と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記反力の大きさに基づいて前記プラグの移動量を取得する移動量取得部と、
前記プラグの移動量が予め定められた指定値に達したか否かを判定する移動量判定部と、
前記移動量判定部によって前記プラグの移動量が前記指定値に達したと判定された場合に、前記プランジャ駆動装置を停止する信号を生成するプランジャ駆動部と、
を有する請求項1からのいずれか一項に記載の粘性材料充填装置。
【請求項5】
前記充填方向に直交する方向に間隔をあけて配列された一対の前記保持部と、
該一対の保持部同士を接続する接続部と、
該接続部の中心位置に設けられ、前記一対の保持部を前記充填方向に延びる回動軸回りに回動可能に支持することで、前記一対の保持部に保持された前記カートリッジのうち一方を前記充填部に対応する位置に移動させることが可能な回動支持部と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記移動量判定部によって、一方の前記カートリッジにおける前記プラグの移動量が前記指定値に達したと判定された場合に、他方の空の前記カートリッジが前記充填部に対応する位置に移動するように前記回動支持部を駆動する信号を生成する回動駆動部をさらに有する請求項に記載の粘性材料充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粘性材料充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば航空機の機体のシーリングに用いられるシーラントという粘性材料が知られている。シーラントは、カートリッジと呼ばれる筒状の容器に充填された状態で作業現場に供給される。カートリッジにこのような粘性材料を充填する上では、気泡によって生じるボイド(間隙)が生じないことが肝要となる。この種の充填装置の具体例として下記特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
下記特許文献1に係る充填装置は、カートリッジの下方に配置され、当該カートリッジ内に粘性材料を充填するカップ、及びプランジャと、カートリッジ内に配置された第一プラグを上方から押圧する第二プラグ、及び第二プラグから上方に延びるバーと、を主に備えている。粘性材料の充填に合わせて第二プラグが第一プラグを押圧することで、カートリッジ内に空気が入り込まないように構成されている。また、粘性材料の充填に伴ってバーは上方に移動する。このような各部の動作が圧縮空気を駆動力として実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4659128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようにバーが上方に延びている場合、装置全体の寸法体格が大きくなってしまう。これにより、装置のレイアウトに制約を生じる虞があった。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、さらに小型化された粘性材料充填装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る粘性材料充填装置は、一端が粘性材料の供給源に向かって開口する充填口とされ、該充填口から前記粘性材料の充填される方向である充填方向を中心として筒状に延びるカートリッジ本体、及び、該カートリッジ本体内で前記充填方向に配列された複数のプラグを有するカートリッジ内に前記粘性材料を充填する粘性材料充填装置であって、前記カートリッジを保持する保持部と、前記充填口を通じて前記粘性材料を前記カートリッジ内に押し込むように、前記充填方向に進退動可能なプランジャを有する充填部と、前記カートリッジの他端側に設けられ、前記粘性材料の充填に伴って前記充填方向に移動する前記プラグを他端側から一端側に向かう方向に付勢する付勢部と、を備え、複数の前記プラグが粘性材料の充填に伴って前記付勢部の付勢力を上回る大きさの力で前記充填方向に移動することにより、順次カートリッジから排出されていく
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、さらに小型化された粘性材料充填装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係る粘性材料充填装置の構成を示す正面図である。
図2】本開示の実施形態に係る粘性材料充填装置の構成を示す要部拡大平面図である。
図3】本開示の実施形態に係るカートリッジ内のプラグと板ばねとの関係を示す説明図である。
図4】本開示の実施形態に係る制御部の機能ブロック図である。
図5】本開示の実施形態に係る制御部の処理フローを示すフローチャートである。
図6】板ばねの反力とプラグの移動量との関係を示すグラフの一例である。
図7】本開示の実施形態に係る付勢部の変形例を示す断面図である。
図8】本開示の実施形態に係る制御部のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態に係る粘性材料充填装置1について、図1から図6を参照して説明する。この粘性材料充填装置1は、例えば航空機用に用いられるシーラントを、カートリッジ90と呼ばれる容器に順次充填するための装置である。シーラントは、主剤と硬化剤を混合することによって形成されており、非常に高い粘性を有している。
【0011】
(カートリッジの構成)
本実施形態に係るカートリッジ90は、図1に示すように、有底筒状のカートリッジ本体91と、このカートリッジ本体91の内部に挿入されている少なくとも1つ(一例として4つ)のプラグ92と、を有する。粘性材料充填装置1に取り付けられた状態で、カートリッジ本体91は、上下方向を中心軸とする円筒状の筒体93と、この筒体93の下方の端部を閉止する底部94と、を有する。一端側(底部94)には粘性材料を充填するための充填口95が形成されている。プラグ92は、筒体93の内径よりもわずかに小さな直径を有する樹脂製の球体である。同一の直径を有する4つの球体が充填口95から上方の他端に向かって配列されている。なお、プラグ92同士は互いに接続されていない。以下の説明では、これらプラグ92が配列されている方向、つまり充填口95から粘性材料の充填される方向を単に「充填方向A」と呼ぶことがある。
【0012】
(粘性材料充填装置の構成)
図1に示すように、粘性材料充填装置1は、カートリッジ支持部10と、充填部20と、付勢部30と、反力計測部40と、プランジャ駆動装置50と、制御部60と、を備えている。なお、本実施形態に係る粘性材料充填装置1は、上記の制御部60を除く構成をそれぞれ一対ずつ備えている。以下の説明では、代表的に一方の構成のみについて説明する。
【0013】
(カートリッジ支持部の構成)
カートリッジ支持部10は、ベース11と、一対の保持部12と、接続部13と、回動支持部14と、を有する。ベース11は、ベース本体15と、支持脚16と、を有する。ベース11は、水平面内に広がる板状をなし、複数の支持脚16によって床面から上方に離間した位置に支持されている。
【0014】
ベース11の上面には、回動支持部14が設けられている。回動支持部14は、上下方向(つまり、充填方向A)に延びる回動軸X回りに回動可能なモータ(不図示)によって駆動される。回動支持部14は、充填方向Aを中心とする円柱状をなしている。回動支持部14は、後述する制御部60に電気的に接続されており、当該制御部60から送られた電気信号によって回動と停止が制御される。回動支持部14の先端には、接続部13、及び一対の保持部12が取り付けられている。
【0015】
接続部13は、充填方向Aに直交する方向に延びている。接続部13の延在方向の中央位置に回動支持部14の先端が接続されている。接続部13の両端部には、それぞれ1つずつの保持部12が設けられている。詳しくは図示しないが、保持部12は、クリップ状の部材であり、上述したカートリッジ90を外周側から挟持することが可能である。
【0016】
上記の回動支持部14が回動することによって、一対のうち一方のカートリッジ90は後述する充填部20に対応した充填位置P1に移動し、他方のカートリッジ90は待機位置P2に移動する。
【0017】
(充填部、及びプランジャ駆動装置の構成)
ベース11の下方には充填部20、及びプランジャ駆動装置50が設けられている。充填部20は、上記の保持部12によって保持されているカートリッジ90に対して粘性材料を充填する。充填部20は、カップ21と、プランジャ22と、を有する。カップ21は、充填方向Aを中心とする円筒状をなし、その上方の端部は、充填位置P1にあるカートリッジ90の充填口95と一致する位置に形成されている。
【0018】
カップ21の内部には、プランジャ22が配置されている。プランジャ22は、カップ21の内部を充填方向Aに進退動することが可能である。プランジャ22は、円柱状をなすとともに、上側の端面が上方に向かって凸となるように曲面状に膨らんでいる。カップ21の内面のうち、上側の面は、このプランジャ22の上側の端面に倣った形状を有している。
【0019】
プランジャ22は、プランジャ駆動部64によって駆動される。プランジャ駆動部64は、例えばボールねじ式のアクチュエータである。ボールねじをモータで回動させることによって、当該ボールねじが充填方向Aに進退動することが可能とされている。ボールねじの先端にはプランジャ22の下面が接続されている。予めカップ21の内部に貯留された粘性材料は、プランジャ22によって押圧されることによって充填方向Aに移動し、充填口95を通じてカートリッジ90内に充填される。粘性材料が充填されるに従って、カートリッジ90内の複数のプラグ92が上方に向かって移動する。
【0020】
(付勢部の構成)
ベース本体15の上面には、付勢部30が設けられている。付勢部30は、粘性材料の充填が進むにつれて移動するプラグ92のうち、最も上方に位置するプラグ92を上側から付勢するための弾性材料である。付勢部30は、ベース11の上面から上方に向かって延びる支持柱31と、支持柱31の先端に設けられたプレート32と、プレート32に取り付けられた板ばね33と、を有する。
【0021】
プレート32は、水平方向(つまり、充填方向Aに直交する方向)に延びる板状をなしている。プレート32の両端は、それぞれ充填位置P1にあるカートリッジ90に重なる位置まで延びている。図2に示すように、プレート32におけるカートリッジ90を臨む位置には、プラグ92が通過可能な内径を有する開口部34が形成されている。この開口部34の両側には、当該開口部34の少なくとも一部を覆うようにして配置された一対の板ばね33が設けられている。一対の板ばね33は開口部34(又はカートリッジ90)を挟むようにして間隔をあけて配列されている。
【0022】
それぞれの板ばね33の一方側の端部はプレート32に固定された固定端である。板ばね33の他方側の端部は、開口部34の少なくとも一部を覆っている。板ばね33の下側には、樹脂で形成された保護部材33aが設けられている。保護部材33aは板ばね33と一体となって弾性変形し、粘性材料の充填に伴って上方に移動してきたプラグ92に当接可能である。また、図3に示すように、プラグ92の移動に伴って板ばね33と保護部材33aとが弾性変形することで、板ばね33と保護部材33aとの他方側の端部は上方に向かって変位する。なお、この板ばね33、及び保護部材33aの弾性力を上回る大きさの力でプラグ92が移動することによって、当該プラグ92はカートリッジ90から脱出して、開口部34を通過することが可能である。
【0023】
(反力計測部の構成)
反力計測部40は、プラグ92の移動によって弾性変形した板ばね33の反力を計測するセンサーである。反力計測部40として具体的には、板ばね33の表面に貼付された歪ゲージを用いることが考えられる。歪ゲージによって板ばね33の変形量を取得し、当該変形量に基づいて板ばね33に付加された荷重(つまり、プラグ92による反力)を算出することが可能である。
【0024】
(制御部の構成)
図4に示すように、制御部60は、移動量取得部61と、移動量判定部62と、回動駆動部63と、プランジャ駆動部64と、記憶部65と、を有する。
【0025】
移動量取得部61は、上述の反力計測部40が計測した板ばね33の反力の大きさに基づいて、プラグ92の移動量、及びカートリッジ90から脱出したプラグ92の個数を取得する。具体的には図6に示すように、粘性材料の充填に伴ってプラグ92が上方に移動すると、板ばね33の反力の大きさは次第に大きくなる。1つのプラグ92が板ばね33の最大の弾性力(ピーク)を超えてカートリッジ90から脱出すると、板ばね33の反力の大きさは一旦ゼロになる。このようなピークがプラグ92の数に応じて生じる。この反力とプラグ92の移動量の関係を示すグラフは予め記憶部65に記憶されている。移動量取得部61は、このような反力の大きさと、反力がピークに到達した回数からプラグ92の移動量、及びカートリッジ90から脱出したプラグ92の個数を取得する。プラグ92の移動量・脱出したプラグ92の個数は、カートリッジ90内における粘性材料の充填量に正比例している。記憶部65は、この充填量とプラグ92の移動量・脱出したプラグ92の個数との関係も記憶している。なお、以下の説明では、プラグ92の移動量、及びカートリッジ90から脱出したプラグ92の個数を総称して単に「プラグ92の移動量」と定義する。
【0026】
移動量判定部62は、プラグ92の移動量が予め定められた指定値に達したか否かを判定する。つまり、指定された量の粘性材料がカートリッジ90に充填されたか否かが判定される。プランジャ駆動部64は、この移動量判定部62で移動量が指定値に達したと判定されるまでの間、プランジャ駆動装置50を駆動するための駆動信号を生成して、当該プランジャ駆動装置50に送信する。移動量判定部62によってプラグ92の移動量が指定値に達したと判定された後は、プランジャ駆動部64は、プランジャ駆動装置50を停止するための信号を当該プランジャ駆動装置50に送信する。
【0027】
回動駆動部63は、回動支持部14の動作を制御する。移動量判定部62によってプラグ92の移動量が指定値に達したと判定された場合、一対準備されているカートリッジ90のうちの一方の充填が完了したと判断できる。この時、回動駆動部63は、回動支持部14に駆動信号を送信して当該回動駆動部63を回動させる。これにより、充填が完了した一方のカートリッジ90は待機位置P2に移動し、充填前の他方のカートリッジ90は充填位置P1に移動する。
【0028】
次に、図5を参照して、制御部60の処理フローについて説明する。同図に示すように、まず、一方のカートリッジ90に対して充填部20によって粘性材料を充填する(ステップS1)。充填の間、間欠的、又は連続的に反力計測部40は板ばね33の反力を計測して、移動量取得部61に電気信号として送信する。移動量取得部61は、反力の大きさからプラグ92の移動量を取得する。
【0029】
その後、移動量判定部62が、プラグ92の移動量が指定値に達したか否かを判定する(ステップS2)。プラグ92の移動量が指定値に達したと判定されない場合(ステップS2:No)、継続してステップS1を実行して充填を継続する。一方で、プラグ92の移動量が指定値に達したと判定された場合(ステップS2:Yes)、後続のステップS3に遷移する。
【0030】
ステップS3では、回動駆動部63が、回動支持部14を駆動する。これにより、充填が完了した一方のカートリッジ90は待機位置P2に移動し、充填前の他方のカートリッジ90は充填位置P1に移動する。
【0031】
その後、他方のカートリッジ90に対して、一方のカートリッジ90と同様に、粘性材料の充填を行う(ステップS4)。次いで、移動量判定部62がプラグ92の移動量が指定値に達したか否かを判定する(ステップS5)。プラグ92の移動量が指定値に達したと判定されない場合(ステップS5:No)、継続してステップS4を実行して充填を継続する。一方で、プラグ92の移動量が指定値に達したと判定された場合(ステップS5:Yes)、処理を完了する。以上により、一対のカートリッジ90への粘性材料の充填が完了する。
【0032】
(作用効果)
ここで、従来の装置は、カートリッジ内に配置された第一プラグを上方から押圧する第二プラグ、及び第二プラグから上方に延びるバーと、を主に備えている。粘性材料の充填に合わせてバーを進退動させて第二プラグが第一プラグを押圧することで、カートリッジ内に空気が入り込まないように構成されている。また、粘性材料の充填に伴ってバーは上方に移動する。このような各部の動作が圧縮空気を駆動力として実現されている。
【0033】
しかしながら、上記のようにバーが上方に延びている場合、装置全体の寸法体格が大きくなってしまう。これにより、装置のレイアウトに制約を生じる虞があった。また、圧縮空気を各部の駆動源としていたことから、残存した圧縮空気の影響によって動作の正確性が阻害される可能性もあった。その結果、指定された量の粘性材料を正確に充填することに困難を生じていた。
【0034】
そこで、本実施形態に係る粘性材料充填装置1は、上述の各構成を採っている。上記構成によれば、付勢部30の板ばね33によってプラグ92を付勢することで、プラグ92が下方に押圧される。これにより、充填口95から充填されてくる粘性材料がプラグ92によって上方から押圧される。すると、プラグ92と粘性材料との間に介在する空気は、プラグ92とカートリッジ本体91との間の隙間を通じて上方へ逃げる。このように、プラグ92を用いることによってカートリッジ90内への空気の混入を防ぐことができる。
【0035】
さらに、複数のプラグ92が粘性材料の充填に伴って順次カートリッジ90から排出されていく。これにより、例えば長尺状のバーによってプラグ92を上方から押圧する構成に比べて、当該バーのように上方に突出する構造物を必要としないことから、装置の寸法体格を小さく抑えることができる。これにより、装置のレイアウトの自由度を持たせることが可能となる。また、装置が小型化されたことから、より多くの粘性材料充填装置1を同一の作業現場に配置することが可能となり、作業の効率をさらに向上させることも可能となる。
【0036】
また、上記の構成では、付勢部30は、充填方向Aに交差する方向に延びて、一端が固定端とされ、他端がプラグ92に当接可能であるとともにプラグ92の移動に伴って弾性変形可能な板ばね33を有する。
【0037】
この構成によれば、板ばね33によってプラグ92に下方への付勢力を与えながらも、この付勢力に抗することで、粘性材料の充填に伴うプラグ92の移動を許容することができる。これにより、粘性材料の充填をより安定的に行うことができる。また、機械要素として比較的に安価な板ばね33を用いることから、装置の製造コストやメンテナンスコストを削減することも可能である。
【0038】
さらに、付勢部30は、充填方向Aに交差する方向に間隔をあけて配列されるとともに、カートリッジ90を挟むようにして配置された一対の板ばね33を有する。
【0039】
この構成によれば、一対の板ばね33により、プラグ92に対して充填方向Aに均等に付勢力を与えることができる。これにより、プラグ92が不用意に脱出する可能性を低減することができる。また、プラグ92の移動方向と姿勢が安定するため、当該プラグ92の移動量と粘性材料の充填量との関係を正確に維持することが可能となる。これにより、指定された分量の粘性材料をさらに正確に充填することが可能となる。
【0040】
さらに、上記の粘性材料充填装置1は、板ばね33に付加されるプラグ92による反力を計測する反力計測部40と、プランジャ22を充填方向Aに駆動するプランジャ駆動装置50と、反力計測部40の計測結果に基づいてプランジャ駆動装置50を制御する制御部60と、をさらに備える。制御部60は、反力の大きさに基づいてプラグ92の移動量を取得する移動量取得部61と、プラグ92の移動量が予め定められた指定値に達したか否かを判定する移動量判定部62と、移動量判定部62によってプラグ92の移動量が指定値に達したと判定された場合に、プランジャ駆動装置50を停止する信号を生成するプランジャ駆動部64と、を有する。
【0041】
この構成によれば、板ばね33に付加されるプラグ92による反力に基づいてプラグ92の移動量(つまり、粘性材料の実際の充填量)が取得される。移動量判定部62は、このプラグ92の移動量が指定値に達したか否かを判定する。つまり、指定された分量の粘性材料がカートリッジ90内に充填されたか否かが判定される。プラグ92の移動量が指定値に達したと判定された場合、プランジャ駆動部64はプランジャ駆動装置50を停止する。このように、制御部60によって自律的に粘性材料の充填を行うことができる。
【0042】
加えて、上記の粘性材料充填装置1は、充填方向Aに直交する方向に間隔をあけて配列された一対の保持部12と、当該一対の保持部12同士を接続する接続部13と、接続部13の中心位置に設けられ、一対の保持部12を充填方向Aに延びる回動軸X回りに回動可能に支持することで、一対の保持部12に保持された前記カートリッジ90のうち一方を充填部20に対応する位置に移動させることが可能な回動支持部14と、をさらに備える。制御部60は、移動量判定部62によって、一方のカートリッジ90におけるプラグ92の移動量が指定値に達したと判定された場合に、他方の空のカートリッジ90が充填部20に対応する位置に移動するように回動支持部14を駆動する信号を生成する回動駆動部63をさらに有する。
【0043】
この構成によれば、一対のカートリッジ90のうち、一方の充填が完了すると、回動支持部14が回動して、他方のカートリッジ90への充填の準備を開始する。このように、1つのカートリッジ90に対して充填と据え付けを都度繰り返すことなく、一対のカートリッジ90に対する充填作業を一度に行うことが可能となる。これにより、多数のカートリッジ90に対して効率的かつ短時間で充填を行うことができる。
【0044】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0045】
例えば、上記実施形態では、カートリッジ90に対する粘性材料の充填方向Aが上下方向である例について説明した。つまり、カートリッジ90が上下方向に延びた状態で充填を行う例について説明した。しかしながら、充填方向Aは必ずしも上下方向である必要はなく、設計や仕様によっては、水平方向であってもよい。
【0046】
さらに、上記実施形態では、板ばね33の反力の大きさのみに基づいてプラグ92の移動量(つまり、粘性材料の充填量)を取得する例について説明した。しかしながら、他の例として、プランジャ駆動装置50のモータにロータリエンコーダを設けて、当該ロータリエンコーダの計測値からプランジャ22の移動量を合わせて取得してもよい。これにより、板ばね33の反力のみに基づいて充填量を取得する構成に比べて、さらに正確な分量での充填を行うことが可能となる。また、プラグ92の移動量を目視で計測して粘性材料の充填量を取得する構成を採ることも可能である。つまり、この場合、上述した反力計測部40を備えない構成が採られる。さらには、上述の板ばね33(付勢部30)を備えない構成を採ることも可能である。この場合には、プラグ92を比重の大きい金属材料で形成することが望ましい。これにより、プラグ92自身の重量によって粘性材料が押圧されるため、空気の混入を回避することができる。
【0047】
さらに、上記実施形態では、プラグ92が樹脂で形成された球体である例について説明した。しかしながら、プラグ92の態様はこれに限定されず、金属製であってもよい。また、プラグ92は球体ではなく、円柱状、擬球体状、楕円球体状、及び多面体状、円筒や立方体状であってもよい。
【0048】
加えて、付勢部30の構成は、板ばね33に限定されず、図7に示すような構成を採ることも可能である。同図の例では、付勢部30として、板ばね33に代えて、一対のくさび部材33bと、これらくさび部材33b同士を互いに近接する方向に付勢するばね33cと、が設けられている。くさび部材33bは、プラグ92(カートリッジ90)側に向かうに従って上方に延びる傾斜面33dを有している。プラグ92が上方に移動すると、傾斜面33dに作用する力と、ばね33cの弾性力とが拮抗しながら当該プラグ92に下方に向かう力を与えることができる。これにより、上述したものと同様の作用効果を得ることが可能である。
【0049】
なお、本開示の実施形態における制御部60の処理は、適切な処理が行われる範囲において、処理の順番が入れ替わってもよい。
【0050】
本開示の実施形態における記憶部65、その他の記憶装置のそれぞれは、適切な情報の送受信が行われる範囲においてどこに備えられていてもよい。また、記憶部65、その他の記憶装置のそれぞれは、適切な情報の送受信が行われる範囲において複数存在しデータを分散して記憶していてもよい。
【0051】
上述した制御部60による処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ100が読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータ100が読み出して実行することによって、上記処理が行われる。コンピュータ100の具体例を以下に示す。
【0052】
図8に示すように、コンピュータ100は、CPU101と、メインメモリ102と、ストレージ103と、インターフェース104と、を備える。
例えば、上述の制御部60はコンピュータ100に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ103に記憶されている。CPU101は、プログラムをストレージ103から読み出してメインメモリ102に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU101は、プログラムに従って、上述した記憶部65に対応する記憶領域をメインメモリ102に確保する。
【0053】
ストレージ103の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ103は、コンピュータ100のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インターフェース104または通信回線を介してコンピュータ100に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ100に配信される場合、配信を受けたコンピュータ100が当該プログラムをメインメモリ102に展開し、上記処理を実行してもよい。なお、ストレージ103は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0054】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現してもよい。さらに、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータ100にすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるファイル、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0055】
なお、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、GPU(Graphics Processing Unit)、及びこれらに類する処理装置を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0056】
<付記>
各実施形態に記載の粘性材料充填装置1は、例えば以下のように把握される。
【0057】
(1)第1の態様に係る粘性材料充填装置1は、一端が粘性材料の供給源に向かって開口する充填口95とされ、該充填口95から前記粘性材料の充填される方向である充填方向Aを中心として筒状に延びるカートリッジ本体91、及び、該カートリッジ本体91内に配置された少なくとも1つのプラグ92を有するカートリッジ90内に前記粘性材料を充填する粘性材料充填装置1であって、前記カートリッジ90を保持する保持部12と、前記充填口95を通じて前記粘性材料を前記カートリッジ90内に押し込むように、前記充填方向Aに進退動可能なプランジャ22を有する充填部20と、前記カートリッジ90の他端側に設けられ、前記粘性材料の充填に伴って前記充填方向Aに移動する前記プラグ92を他端側から一端側に向かう方向に付勢する付勢部30と、を備える。
【0058】
上記構成によれば、プラグ92が粘性材料の充填に伴ってカートリッジ90から排出されていく。これにより、例えばバーによってプラグ92を押圧する構成に比べて、装置の寸法体格を小さく抑えることができる。
【0059】
(2)第2の態様に係る粘性材料充填装置1は、(1)の粘性材料充填装置1であって、前記カートリッジ90の他端側に設けられ、前記粘性材料の充填に伴って前記充填方向Aに移動する前記プラグ92を他端側から一端側に向かう方向に付勢する付勢部30をさらに備える。
【0060】
上記構成によれば、付勢部30によってプラグ92を付勢することでカートリッジ90内への空気の混入を防ぐことができる。
【0061】
(3)第3の態様に係る粘性材料充填装置1は、(1)又は(2)の粘性材料充填装置1であって、前記付勢部30は、前記充填方向Aに交差する方向に延びて、一端が固定端とされ、他端が前記プラグ92に当接可能であるとともに該プラグ92の移動に伴って弾性変形可能な板ばね33を有する。
【0062】
上記構成によれば、板ばね33によってプラグ92に付勢力が与えられた状態でプラグ92の移動を許容し、粘性材料の充填を行うことができる。
【0063】
(4)第4の態様に係る粘性材料充填装置1は、(3)の粘性材料充填装置1であって、前記付勢部30は、前記充填方向Aに交差する方向に間隔をあけて配列されるとともに、前記カートリッジ90を挟むようにして配置された一対の前記板ばね33を有する。
【0064】
上記構成によれば、一対の板ばね33により、プラグ92に対して充填方向Aに均等に付勢力を与えることができる。これにより、プラグ92が不用意に脱出する可能性を低減することができる。
【0065】
(5)第5の態様に係る粘性材料充填装置1は、(1)から(4)のいずれか一態様に係る粘性材料充填装置1であって、前記付勢部30に付加される前記プラグ92による反力を計測する反力計測部40と、前記プランジャ22を前記充填方向Aに駆動するプランジャ駆動装置50と、前記反力計測部40の計測結果に基づいて前記プランジャ駆動装置50を制御する制御部60と、をさらに備え、前記制御部60は、前記反力の大きさに基づいて前記プラグ92の移動量を取得する移動量取得部61と、前記プラグ92の移動量が予め定められた指定値に達したか否かを判定する移動量判定部62と、前記移動量判定部62によって前記プラグ92の移動量が前記指定値に達したと判定された場合に、前記プランジャ駆動装置50を停止する信号を生成するプランジャ駆動部64と、を有する。
【0066】
上記構成によれば、板ばね33に付加されるプラグ92による反力に基づいてプラグ92の移動量(つまり、粘性材料の充填量)が取得される。移動量判定部62はこのプラグ92の移動量が指定値に達したか否かを判定する。指定値に達したと判定された場合、プランジャ駆動部64はプランジャ駆動装置50を停止する。このように、制御部60によって自律的に粘性材料の充填を行うことができる。
【0067】
(6)第6の態様に係る粘性材料充填装置1は、(5)の粘性材料充填装置1であって、前記充填方向Aに直交する方向に間隔をあけて配列された一対の前記保持部12と、該一対の保持部12同士を接続する接続部13と、該接続部13の中心位置に設けられ、前記一対の保持部12を前記充填方向Aに延びる回動軸X回りに回動可能に支持することで、前記一対の保持部12に保持された前記カートリッジ90のうち一方を前記充填部20に対応する位置に移動させることが可能な回動支持部14と、をさらに備え、前記制御部60は、前記移動量判定部62によって、一方の前記カートリッジ90における前記プラグ92の移動量が前記指定値に達したと判定された場合に、他方の空の前記カートリッジ90が前記充填部20に対応する位置に移動するように前記回動支持部14を駆動する信号を生成する回動駆動部63をさらに有する。
【0068】
上記構成によれば、一対のカートリッジ90のうち、一方の充填が完了すると、回動支持部14が回動して、他方のカートリッジ90への充填の準備を開始する。これにより、多数のカートリッジ90に対して効率的かつ短時間で充填を行うことができる。
【符号の説明】
【0069】
1…粘性材料充填装置
10…カートリッジ支持部
11…ベース
12…保持部
13…接続部
14…回動支持部
15…ベース本体
16…支持脚
20…充填部
21…カップ
22…プランジャ
30…付勢部
31…支持柱
32…プレート
33…板ばね
33a…保護部材
34…開口部
40…反力計測部
50…プランジャ駆動装置
60…制御部
61…移動量取得部
62…移動量判定部
63…回動駆動部
64…プランジャ駆動部
65…記憶部
90…カートリッジ
91…カートリッジ本体
92…プラグ
93…筒体
94…底部
95…充填口
100…コンピュータ
101…CPU
102…メインメモリ
103…ストレージ
104…インターフェース
A…充填方向
P1…充填位置
P2…待機位置
X…回動軸
【要約】
【課題】さらに小型化された粘性材料充填装置を提供する。
【解決手段】粘性材料充填装置は、一端が粘性材料の供給源に向かって開口する充填口とされ、充填口から粘性材料の充填される方向である充填方向を中心として筒状に延びるカートリッジ本体、及び、カートリッジ本体内で充填方向に複数配列されたプラグを有するカートリッジ内に粘性材料を充填する粘性材料充填装置であって、カートリッジを保持する保持部と、充填口を通じて粘性材料をカートリッジ内に押し込むように、充填方向に進退動可能なプランジャを有する充填部と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8