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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】ドレン解消ユニット
(51)【国際特許分類】
   F22D 11/00 20060101AFI20230111BHJP
   F22B 1/28 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
F22D11/00 H
F22B1/28 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022044947
(22)【出願日】2022-03-22
【審査請求日】2022-08-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000187714
【氏名又は名称】松下工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513217001
【氏名又は名称】有限会社テクニカ
(73)【特許権者】
【識別番号】591103081
【氏名又は名称】丸美化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 忠行
(72)【発明者】
【氏名】東谷 誠治
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-029271(JP,A)
【文献】特開2000-312706(JP,A)
【文献】特開2004-041529(JP,A)
【文献】特開2014-222139(JP,A)
【文献】実公昭46-019843(JP,Y1)
【文献】特開2011-064354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22D 11/00
F22B 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気母管のドレン溜まりから分岐するドレン回収管と、
ドレン回収管により回収したドレンを加熱するドレン加熱槽と、
前記ドレン回収管から前記ドレン加熱槽にドレンを流送するドレン還流管と、
前記ドレン加熱槽から前記ドレン回収管、又は前記蒸気母管にドレンを蒸気化した蒸気を還流する蒸気還流管と、
前記ドレン加熱槽内のドレンを加熱するヒーターと、
前記ドレン加熱槽内に装填されて、ヒーターの熱を前記ドレン加熱槽内のドレンに伝達する塊状物、粒状物、又は粉状物からなるペレットを備えるドレン解消ユニット。
【請求項2】
前記ペレットがセラミックスからなる請求項1に記載のドレン解消ユニット。
【請求項3】
前記セラミックスの熱伝導率が0.1W/m・K以上である請求項2に記載のドレン解
消ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蒸気配管で発生するドレンを処理する技術に関し、特にドレンを蒸気に戻すことにより蒸気の損失を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蒸気配管内で発生するドレンを回収し、これをボイラーへ還流して再利用することで、回収したドレンのエネルギーを有効利用する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、蒸気配管から回収されたドレンを貯留するドレン回収タンクから、ボイラーに補給するボイラー補給水を貯留するボイラー用水タンクにドレンを流送して再利用するにあたり、ドレン回収用タンクとボイラー用水タンクの間に濾過装置を設けて、配管スケールを除去したのち、ドレンをボイラー用水タンクへ流送するよう構成した蒸気ドレンのろ過装置が提案されている。
【0004】
ところが、このようにドレンをボイラーまで還流させると、その間にドレンの温度が低下してしまうため、ボイラーで蒸気に戻すためのエネルギーがその低下分だけ余計にかかるという問題が有る。
【0005】
そこで、本発明者は、蒸気配管で発生したドレンをボイラーへ還流するのではなく、ドレン排出用の分岐管において蒸気にして直接蒸気配管へ戻すことに想到する。
【0006】
このように分岐管から蒸気配管へ蒸気を戻す技術として、特許文献2には、蒸気配管とドレン管等の分岐部に加熱部を設けた管内面の保護装置が提案されている。特許文献2の保護装置は、蒸気配管の圧力が低下した際などに、分岐管のドレンが自己蒸発し、低温の蒸気が蒸気配管へ逆流することにより蒸気配管が急冷されて熱衝撃を受け、この繰り返し疲労により蒸気配管にクラックが発生することを予防するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-50499号公報
【文献】特開平3-107698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2の保護装置の仕組みによりドレン回収用の分岐管に溜まったドレンを蒸気母管へ還流しようとしても、加熱部を通過して下方の分岐管内に溜まったドレンの大半は二度と加熱されることがないため、分岐管に溜まったドレンの一部しか蒸気配管へ戻せないという問題が有る。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ドレン排出用の分岐管からより多くの蒸気を蒸気母管へ還流することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた発明は、蒸気母管のドレン溜まりから分岐するドレン回収管と、ドレン回収管により回収したドレンを加熱するドレン加熱槽と、前記ドレン回収管から前記ドレン加熱槽にドレンを流送するドレン還流管と、前記ドレン加熱槽から前記ドレン回収管、又は前記蒸気母管にドレンを蒸気化した蒸気を還流する蒸気還流管と、前記ドレン加熱槽内のドレンを加熱するヒーターとを備えるドレン解消ユニットである。
【0010】
本発明のドレン解消ユニットは、このように、ドレン回収管で回収したドレンを、ドレン還流管を介してドレン加熱槽に流送し、ドレン加熱槽でドレンを加熱することにより得た蒸気を蒸気回収管を介してドレン回収管、又は蒸気母管に還流するので、ドレン回収管に回収されたドレンを、順次ドレン加熱槽に流送して蒸気に戻すことができる。
【0011】
本発明のドレン解消ユニットは、前記ドレン加熱槽内に装填されて、ヒーターの熱を前記ドレン加熱槽内のドレンに伝達する塊状物、粒状物、又は粉状物からなるペレットを備える。こうすることで、効率よくドレンを加熱することができる。
【0012】
本発明のドレン解消ユニットは、前記ペレットがセラミックスからなることが好ましい。こうすることで、金属製等のペレットを用いる場合に比べて、腐食等によるペレットの劣化を抑制できるため、ペレットの交換頻度を抑制できる。
【0013】
前記セラミックスの熱伝導率は、0.1W/m・K以上であることが好ましい。こうすることで、ペレットの交換頻度を抑制しながら、十分にドレンを加熱することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明のドレン解消ユニットによれば、ドレン排出用の分岐管から多量の蒸気を直接蒸気母管へ還流できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係るドレン解消ユニットを示す配管図である。
図2図1のドレン加熱槽の外観を示す正面図である。
図3図1のドレン加熱槽の縦断面図ある。
図4】第1実施形態の変形例に係るドレン解消ユニットを示す配管図である。
図5】本発明の第2実施形態に係るドレン解消ユニットを示す配管図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面を用いながら本発明の実施形態について詳述する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限られるものではない。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るドレン解消ユニット100を示している。ドレン解消ユニット100は、蒸気母管Cから分岐するドレン回収管1と、ドレン回収管1に対し並列に設けられる還流管2と、 還流管2に設けられるドレン加熱槽5と、ドレン加熱槽内のドレンを加熱するヒーター6と、を主に備えている。ドレン解消ユニット100は、ボイラーAから蒸気を発電や動力に利用する装置Bへ蒸気を流送する蒸気母管Cで発生したドレンを回収したのち蒸気として再利用するために用いられる。
【0018】
ドレン回収管1は、蒸気母管Cに設けられたドレン溜まりDから垂下するよう分岐し、下端部と上端部にそれぞれ設けられるドレン排出バルブ3、及びドレン導入バルブ4を備えている。
【0019】
還流管2は、ドレン回収管1におけるドレン導入バルブ4のやや下側の第1連結部2aにおいて、ドレン回収管1から分岐する蒸気還流管21と、ドレン回収管1における第1連結部2aより下方、かつドレン排出バルブ3のやや上側の第2連結部2bにおいて、ドレン回収管1から分岐するドレン還流管22とを備えている。
【0020】
本実施形態では、還流管2の蒸気還流管21をドレン回収管1に連結することで、ドレン解消ユニット100と、蒸気母管Cの連結部を1箇所にして、ドレン解消ユニット100の交換が容易に行えるようにしている。ただし、図4に示すドレン解消ユニット200のように、蒸気還流管21を直接蒸気母管Cに連結してもよく、この場合、蒸気還流管21にドレンが流入しないように、蒸気還流管21は、蒸気母管Cの上部側に連結されることが好ましい。
【0021】
ドレン加熱槽5は、両端に開口する中空の容器状をなし、一端側(図2の下側)の開口からなるドレン導入口5aと、他端側(図2の上側)の開口からなる蒸気流出口5bとを備えている。ドレン導入口5aは、ドレン還流管22に連結され、蒸気流出口5bは、蒸気還流管21に連結される。
【0022】
ドレン加熱槽5には、ドレン加熱槽5内部に導入されたドレンを加熱するためのヒーター6が取着されている。また、ドレン加熱槽5には、ドレン加熱槽5に導入されたドレンにヒーター6からの熱を効率よく伝達するための多数(複数の意味)の粒状のペレット8,8,…が充填されている。
【0023】
図2、及び図3にドレン加熱槽5の一例を示す。図2図3に係るドレン加熱槽5は、両端部に雄ねじ51a,51a(図3参照)が刻設された両ネジ長ニップルからなる加熱槽本体51と、加熱槽本体51の両端に螺合される一対の異径継手からなる蓋部材52,52と、加熱槽本体51の両端開口を通液可能に閉塞して、内部に充填した多数のペレット8,8,…の流出を防止するメッシュ53,53とを備えている。
【0024】
ヒーター6は、ドレン加熱槽5を介してその内部のドレンを十分に加熱できれば特に限定されず、公知の加熱装置を適宜に用いることができる。図2図3は、一例として筒型の鋳込みヒーターをドレン加熱槽5の加熱槽本体51の外周面に環着した例を示している。ヒーター6は、図3に2点鎖線で示したように、グラスウール等の断熱材61で覆われる。ドレン加熱槽5の温度は、熱電対式の温度計測器7(図2、3の破線部)で計測した温度に基づきヒーター6の電源9の出力を不図示の制御部により制御して100℃以上200℃以下の範囲で制御される。符号64は、ヒーター6の電力線と温度計測器7の信号線からなる複合ケーブルである。
【0025】
ペレット8は、ドレン加熱槽5の内壁から分離・又は突出した固体状であれば、形状、個数ともに特に限定されず、1個の大きな塊状物であってもよいし、多数の粒状物や粉状物であってもよい。全てのペレットが例えば球形、立方体状、直方体状、柱状、筒状等の公知の定形であってもよいし、不定形であってもよい。
本実施形態では、図2に示すように、活性炭のような不定形の粒状をなし、多数個がドレン加熱槽5の内部に充填される。
【0026】
ペレット8の材質としては、ヒーター6の熱をドレン加熱槽5内部のドレンに十分に伝達可能であれば特に限定されないが、錆が発生しにくい点で、ステンレス等の金属やセラミックスが好ましく、熱伝導率が良い点で、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属や、窒化珪素、サファイヤ、炭化珪素、アルミナ、窒化アルミニウム、ジルコニア強化アルミナ等のセラミックスが特に好ましい。
また、ペレット8は、蓄熱性を優先する場合は、レンガ、石英ガラス、陶器、大理石等の熱伝導率の低い物質が好ましく用いられる。
ペレット8の熱伝導率は、特に限定されないが、ヒーター6を適宜にオン・オフするような場合には、ペレット8の熱伝導率は、蓄熱性を優先して0.1W/m・K以上25W/m・K未満が好ましく、出力の小さいヒーター6を常時オンにして用いるような場合には、ペレット8の熱伝導率は、熱伝達効率を優先して、25W/m・K以上が好ましく、30W/m・K以上であることが特に好ましい。
ペレット8は、熱伝導率が25W/m・K未満の物質と、熱伝導率が25W/m・K以上の物質を混合して用いてもよい。
【0027】
ドレン解消ユニット100を用いる際には、まず、ドレン排出バルブ3を開放した状態でドレン導入バルブ4を開放してドレン溜まりDからドレン回収管1にドレンを導入する。ドレン排出バルブ3からドレンが排出されるのを確認したら、ドレン排出バルブ3を閉塞する。
【0028】
これと並行して、制御部によりドレン加熱槽5の温度を指定したのちヒーター6の電源9をオンにしてドレン加熱槽5を加熱する。
【0029】
ドレン排出バルブ3を閉塞すると、ドレン回収管1に回収されたドレンは、ドレン還流管22を通ってドレン加熱槽5の下部開口からなるドレン導入口5aからドレン加熱槽5へ流入する。ドレン加熱槽5へ流入したドレンは、ヒーター6からドレン加熱槽5の壁面、あるいはペレット8を介して伝達される熱により加熱されて蒸発する。ドレン加熱槽5の温度は、制御部により指定温度を挟んだ適宜の温度範囲に制御される。
【0030】
このように、ドレン解消ユニット100では、ドレン回収管1で回収したドレンをドレン回収管1の下部に連結したドレン還流管22からドレン加熱槽5に導入するようにしたので、ドレン回収管1に貯留したドレンを下側から順次蒸気化できる。
【0031】
また、ドレン回収管1で回収されたドレンは、ドレン還流管22のみを介すだけでドレン加熱槽5へ導入されるため、液化した際の温度からほとんど低下しておらず、僅かな熱量で蒸気化できる。
【0032】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態に係るドレン解消ユニット300を示している。尚、第2実施形態において、第1実施形態と共通する部材は同一符号を付して説明を省略する。
【0033】
ドレン解消ユニット300は、図5に示すように、ドレン回収管301と、還流管302と、ドレン加熱槽5と、ヒーター6と、を主に備える他、ドレン排出管311と、ドレン排出バルブ3と、ドレン導入バルブ4と備えている。
【0034】
ドレン回収管301は、ドレン溜まりDから分岐してドレン導入バルブ4を介して水平に延出し、下流側の端部からなる第2連結部2bによって還流管302に連結されている。還流管302は、ドレン回収管1からドレン加熱槽5にドレンを流送するドレン還流管322と、ドレン加熱槽5からドレン回収管301に蒸気を還流する蒸気還流管321とからなる。蒸気還流管321は、ドレン回収管301内のドレンを回避すべくドレン回収管301の上側に設けられた第1連結部2aによりドレン回収管301に連結される。
【0035】
還流管302は、ドレン還流管322の下流側の一部と蒸気還流管321の上流側の一部からなる水平部323を有し、ドレン加熱槽5は、長手方向(図5の左右方向)を水平にして水平部323に介設されている。ドレン排出管311は、水平部323の下流側の端部2cから分岐し、ドレン排出バルブ3を介して下方へ延出している。
【0036】
ドレン解消ユニット300を用いて蒸気母管Cのドレンを蒸気として還流する際には、ドレン導入バルブ4を開いて、ドレン溜まりDのドレンをドレン回収管301に流送する。ドレン回収管301に流送されたドレンは、ドレン還流管322の内部を満たしながらドレン導入口5aからドレン加熱槽5に流入する。ドレン加熱槽5に流入したドレンは、ヒーター6により加熱されて蒸気となり、蒸気流出口5bから蒸気還流管321、ドレン溜まりDを介して蒸気母管Cに還流される。
ドレン加熱槽5をメンテナンス等する場合には、ドレン排出バルブ3を開いてドレン加熱槽5内のドレンを排出する。
【0037】
以上、本発明のドレン解消ユニットは、上述した実施形態に限らず、例えば、ドレン加熱槽にペレットを充填しなくてもよく、ペレットの代わりにフィン等その他の熱交換用の部材を用いてもよい。ヒーターは、鋳込みヒーターに限られない。ドレン溜まりは、公知のものを適宜に用いることができる。
【符号の説明】
【0038】
100 ドレン解消ユニット
1 ドレン回収管
21 蒸気還流管
22 ドレン還流管
5 ドレン加熱槽
6 ヒーター
8 ペレット
C 蒸気母管
D ドレン溜まり
【要約】      (修正有)
【課題】ドレン回収管からより多くの蒸気を蒸気母管に還流する。
【解決手段】本発明のドレン解消ユニット100は、蒸気母管Cのドレン溜まりから分岐するドレン回収管1と、ドレン回収管1により回収したドレンを加熱するドレン加熱槽5と、ドレン回収管1からドレン加熱槽5にドレンを流送するドレン還流管22と、ドレン加熱槽5からドレン回収管1、又は蒸気母管Cにドレンを蒸気化した蒸気を還流する蒸気還流管21と、ドレン加熱槽5内のドレンを加熱するヒーター6と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5