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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】鋼矢板の矯正装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 3/10 20060101AFI20230111BHJP
   B21D 3/14 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
B21D3/10 C
B21D3/10 M
B21D3/14 J
B21D3/10 J
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018131329
(22)【出願日】2018-07-11
(65)【公開番号】P2020006423
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】391015236
【氏名又は名称】大裕株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087538
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100085213
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 洋
(72)【発明者】
【氏名】梶 國男
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-003413(JP,U)
【文献】特開平10-058039(JP,A)
【文献】実開昭58-194821(JP,U)
【文献】特開平11-285733(JP,A)
【文献】特開2018-030158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 3/10
B21D 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブ部と、前記ウェブ部の幅方向両端からそれぞれ屈曲して伸びる2つのフランジ部とを有する鋼矢板の長手方向に沿って、前記鋼矢板と相対的に移動可能に構成され、前記鋼矢板の変形箇所を正規形状に矯正する鋼矢板の矯正装置であって、
前記鋼矢板の少なくとも前記ウェブ部を支持して前記鋼矢板の基準位置を決定する第1底受け型と、前記第1底受け型に対して離接可能に設けられ、前記ウェブ部を押圧し前記鋼矢板を前記第1底受け型に押しつけて固定可能な第1垂直押圧部と、を有し、前記長手方向に沿った位置に配置されている第1金型と、
前記鋼矢板の少なくとも前記ウェブ部を支持する第2底受け型と、前記第2底受け型に対して離接可能に設けられ、前記ウェブ部を押圧し前記鋼矢板を前記第2底受け型に押しつけて固定可能な第2垂直押圧部と、を有し、前記第1金型に対して前記長手方向に沿った位置に配置されている第2金型と、
前記第1金型及び第2金型の少なくとも一方を、相対的に前記長手方向に対し直交する方向に上下駆動させる上下駆動機構と、
前記第1金型及び第2金型の少なくとも一方を、相対的に前記第1金型における前記鋼矢板の断面形状の中心位置を通る前記長手方向に延びる軸周りに回転駆動させる回転駆動機構と、
前記第1金型から前記長手方向に沿った方向の任意の位置に配置され、前記第1底受け型における前記鋼矢板の断面形状を基準として、当該位置における鋼矢板の形状を計測する計測ユニットと、
を有することを特徴とする、鋼矢板の矯正装置。
【請求項2】
前記計測ユニットにより計測された鋼矢板の形状に基づいて、第2金型の位置における矯正量を演算し、前記矯正量に対応する変位量に基づいて、前記上下駆動機構と回転駆動機構を駆動させる矯正制御部と、
を、さらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の鋼矢板の矯正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として土木用途に用いられるU型鋼矢板の反りや曲がり等の歪みを矯正する鋼矢板の矯正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
土木、建築工事に際し、掘削土留め、止水壁などの目的で用いられる鋼矢板1は、図16に示すように、ウェブ部102と該ウェブ部の両端を屈曲して形成された一対のフランジ部103とによって断面溝型に形成されている。また、フランジ部の先端には、フック状の継手部104が形成されている。鋼矢板100は、交互に向きを反転させて隣り合う鋼矢板の継手部を互いに係合させることにより幅方向に連結することができるようになっている。
【0003】
この種の鋼矢板100では、土中への打ち込みや引き抜きの衝撃等に起因して、ウェブ部102とフランジ部103との屈曲角が開く方向又は、屈曲角が閉じる方向へ変形する断面方向への変形がある。また、鋼矢板100が長さ方向に対して交差する方向に反る反り変形や鋼矢板の軸周りにねじれるねじれ変形なども生じることがある。
【0004】
使用により変形してしまった鋼矢板100は、歪み矯正装置を用いて正規の形状に矯正して、再利用に供していた。この矯正装置としては、特許文献1(特開2000-15334号公報)や特許文献2(特開2007-296549号公報)等が公知となっている。
【0005】
特許文献1に開示されている矯正具は、断面方向の変形を矯正する3種類の矯正具を備えており、それぞれが、矢板の変形態様に応じて矯正具を選択し、それぞれ、正規の形に変形することが開示されている。
【0006】
特許文献2に記載されている矯正装置は、矢板を載置可能な載置台と、上下方向に移動可能な第1進退手段と水平方向に移動可能な第2進退手段によって、ウェブ部とフランジ部に押圧及び引っ張りを与えて、ウェブ部とフランジ部それぞれの歪み、特にフランジ部の屈曲角について、矢板を正規形状に矯正することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000-15334号公報
【文献】特開2007-296549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記各特許文献に開示された装置は、鋼矢板の断面方向の変形を矯正する装置であり、反り変形やねじれ変形を矯正することはできない。このため、反り変形やねじれ変形が生じた鋼矢板については、スクラップ処理をせざるを得ず、経済的な損失が生じていることが問題となっている。すなわち、鋼矢板の矯正装置に従来の断面方向の変形の矯正に加え、反り変形やねじれ変形を矯正する機能を備えることで、鋼矢板の使用によって生じる多様な変形のほとんどに対応できるようになり、工事現場で使用された鋼矢板の大部分を再利用することができるようになる。
【0009】
したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、鋼矢板の使用により生じた、反り変形やねじれ変形を矯正することができる鋼矢板の歪み矯正装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成の鋼矢板の矯正装置を提供する。
【0011】
鋼矢板の矯正装置は、ウェブ部と、前記ウェブ部の幅方向両端からそれぞれ屈曲して伸びる2つのフランジ部とを有する鋼矢板の長手方向に沿って、前記鋼矢板と相対的に移動可能に構成され、前記鋼矢板の変形箇所を正規形状に矯正する鋼矢板の矯正装置であって、
前記鋼矢板の少なくとも前記ウェブ部を支持して前記鋼矢板の基準位置を決定する第1底受け型と、前記第1底受け型に対して離接可能に設けられ、前記ウェブ部を押圧し前記鋼矢板を前記第1底受け型に押しつけて固定可能な第1垂直押圧部と、を有し、前記長手方向に沿った位置に配置されている第1金型と、
前記鋼矢板の少なくとも前記ウェブ部を支持する第2底受け型と、前記第2底受け型に対して離接可能に設けられ、前記ウェブ部を押圧し前記鋼矢板を前記第2底受け型に押しつけて固定可能な第2垂直押圧部と、を有し、前記第1金型に対して前記長手方向に沿った位置に配置されている第2金型と、
前記第1金型及び第2金型の少なくとも一方を、相対的に前記長手方向に対し直交する方向に上下駆動させる上下駆動機構と、
前記第1金型及び第2金型の少なくとも一方を、相対的に前記第1金型における前記鋼矢板の断面形状の中心位置を通る前記長手方向に延びる軸周りに回転駆動させる回転駆動機構と、
を有する。
【0012】
上記構成において、鋼矢板の矯正装置は、鋼矢板を長手方向に沿って送る搬送部の搬送経路中に設けられていることが好ましい。
【0013】
上記構成において、前記第1金型及び第2金型の第1底受け型及び第2底受け型の少なくとも一方は、前記鋼矢板の前記ウェブ部と屈曲部分を収容可能な矢板収納凹部を、備えることが好ましい。
【0014】
上記構成において、前記第2金型は、前記第1金型の下流側の既知の位置に配置されていることが好ましい。
【0015】
また、前記第1金型から前記移動方向に沿った方向の任意の位置に配置され、前記第1底受け金型における前記鋼矢板の断面形状を基準として、当該位置における鋼矢板の形状を計測する計測ユニットと、
前記計測ユニットにより計測された鋼矢板の形状に基づいて、第2金型の位置における矯正量を演算し、前記矯正量に対応する変位量に基づいて、前記上下駆動機構と回転駆動機構を駆動させる矯正制御部と、
を、さらに備えることが好ましい。
【0016】
また、前記第1金型から前記搬送方向に既知の位置に配置され、前記第1底受け金型における前記鋼矢板の断面形状を基準として、当該位置における鋼矢板の形状を計測する計測ユニットと、
前記計測ユニットにより計測された鋼矢板の形状に基づいて、第2金型の位置における矯正量を演算し、前記矯正量に対応する変位量に基づいて、前記上下駆動機構と回転駆動機構を駆動させる矯正制御部と、
を、さらに備えることが好ましい。
【0017】
上記構成において、前記計測ユニットは、前記第2金型の下流側であって、前記第2金型から既知の位置に配置されている。
【0018】
また、
前記上下駆動機構は、
枠状に構成され、内部を前記鋼矢板が通過可能に配置されるメインフレームをさらに有し、
前記メインフレームに対して上下移動可能に前記メインフレームに取り付けられ、前記第2金型を支持する上下駆動枠と、
前記上下駆動枠を上下移動させる昇降シリンダとを備える構成とすることができる。
【0019】
上記構成において、前記上下駆動機構は、上面に高さが異なる複数の段差部を有し、前記上下駆動枠の下端に当接する前記段差部が異なるように、複数の位置に移動可能に前記メインフレームに配置され、前記上下駆動枠の下端に当接させる前記段差部を変更させることで前記上下駆動枠の下限位置を切り替え可能な昇降ストッパを有することが好ましい。
【0020】
また、前記回転駆動機構は、前記第2金型を保持し、前記搬送方向に延びる回転軸周りに回転可能に前記上下駆動枠に取り付けられた回転枠と、
前記回転枠を前記上下駆動枠に対して回転駆動させるねじり矯正シリンダとを備える構成とすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、連続的に搬送される鋼矢板に対して、第1金型により矯正対象である鋼矢板の基準位置を決定し、第1金型に対し、鋼矢板の長手方向に沿った所定の位置に配置された第2金型を相対的に上下及びねじれ駆動させることにより、反り変形及びねじれ変形を矯正することができる。すなわち、第1金型に固定された基準位置における鋼矢板について、鋼矢板の長手方向に沿った位置にある第2金型の存在位置は、正規形状の鋼矢板の位置に対する鋼矢板の反り及びねじれ変形量としてとらえられる。したがって、上下駆動機構と回転駆動機構により、第2金型を第1金型に対して相対的に上下及び回転駆動させることによって、第1金型の位置を基準として、既知の位置における正規の位置になるように、反り及びねじれ変形を修正することができる。これにより、鋼矢板の反り変形やねじれ変形を矯正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る鋼矢板の矯正装置の全体構成を示す側面図である。
図2】鋼矢板の矯正装置に用いられる搬送部の構成を示す側面図である。
図3図2のIII-III線における搬送部の断面図である。
図4】本発明に係る鋼矢板の矯正部の第1矯正ユニットの構成を示す側方から見た図である。
図5図4のV-V線における断面図である。
図6図5の部分拡大図である。
図7】第2矯正ユニットの構成を示す平面図である。
図8図7のVIII-VIII線における断面図である。
図9】第2矯正ユニットを搬送方向上流側から見た図である。
図10】第2矯正ユニットを搬送方向下流側から見た図である。
図11】計測ユニットのセンサが行う鋼矢板の形状計測の機構を模式的に説明する図である。
図12】回転枠が旋回した状態にある第2矯正ユニットを搬送方向上流側から見た図である。
図13】本実施形態にかかる矯正装置の動作制御を行う機能ブロック図である。
図14】本実施形態にかかる矯正装置により、鋼矢板の変形を矯正する動作の作業フローを示す図である。
図15】第2矯正ユニットで変形を矯正される鋼矢板の搬送方向位置と変形量との関係を模式的に示す図である。
図16】複数が接続された鋼矢板の使用状態について模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る鋼矢板の矯正装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る鋼矢板の矯正装置の全体構成を示す側面図である。本実施形態に係る鋼矢板の矯正装置1は、図1に示すように、2つ搬送部2a,2bの間に矯正部3が配置された構成となっている。
【0024】
本実施形態にかかる矯正装置1は、使用によって変形が発生した鋼矢板100を、正規形状に矯正する。
【0025】
鋼矢板100は、図16に示すように、ウェブ部102と該ウェブ部102の両端を屈曲して形成された一対のフランジ部103とによって断面Uの字形に形成されている、一般的にハット型と呼ばれる鋼矢板である。また、フランジ部103の先端には、フック状の継手部104が形成されている。鋼矢板100は、交互に向きを反転させて隣り合う鋼矢板の継手部を互いに係合させて幅方向に連結することができる。
【0026】
一般に、鋼矢板100の変形は、土中への打ち込みや引き抜きに加わる外力に起因して発生し、ウェブ部102とフランジ部103との屈曲角が開く方向又は、屈曲角が閉じる方向へ変形する断面方向への変形と、鋼矢板100が長さ方向に対して交差する方向に反る反り変形や鋼矢板の長さ方向の軸周りにねじれるねじれ変形などを含む。ここで、反り変形は、一般には、ウェブ部102の厚み方向に反る上下方向の反りのみが発生する。使用時にウェブ部102に幅方向に力が加わった場合は、断面方向の変形として鋼矢板が変形するため、鋼矢板100が幅方向へ反る幅方向への反り変形は一般に生じない。
【0027】
矯正部3は、第1矯正ユニット80及び第2矯正ユニット90を有する。第1矯正ユニット80は、搬送部2a,2bによる鋼矢板100の搬送方向上流側に配置されており、第2矯正ユニット90は、第1矯正ユニット80の搬送方向下流側に所定の既知の位置に配置されている。第1矯正ユニット80と第2矯正ユニット90とは、1つの鋼矢板100の長さより短い間隔で設置されており、後述するように、1つの鋼矢板100が第1矯正ユニット80と第2矯正ユニット90とを跨いだ状態で固定可能となっている。
【0028】
搬送部2a,2bと矯正部3は、後述の図13に示す矯正制御部60により動作制御されており、後述する鋼矢板の搬送や矯正動作については、矯正制御部60に格納された動作プログラムにしたがって行われる。
【0029】
搬送部2a,2bは、矯正部3を挟んで上流側と下流側にそれぞれ設けられる。上流側と下流側の搬送部2a,2bは、構成を共通とし、鋼矢板100をそのウェブ部102が下側となる状態で、長手方向に沿った方向に搬送する。
【0030】
図2図3に示すように搬送部2a,2bは、設置ベース4とローラユニット5とで構成されている。設置ベース4は、ローラユニット5の位置を上下方向に変更可能に支持し、搬送面を移動させることができる。
【0031】
設置ベース4は、ローラユニット5の支持機構として、油圧シリンダ6と、油圧シリンダ6により回動可能に取り付けられたリンク7とを備える。リンク7は、設置ベース4の両端側に設けられており、2つのリンク7は、連結リンク8により接続されて連動する。リンク7の先端には、ローラユニット5が設けられており、2つのリンク7と連結リンク8とともに4節リンクを構成するため、油圧シリンダ6の伸縮により、一方のリンク7の傾斜角度を異ならせることで、ローラユニット5の高さ位置が上下方向に移動し、ウェブ部102が載置される搬送面の高さが変位する。
【0032】
ローラユニット5は、搬送フレーム9に複数の搬送ローラ10が設けられており、搬送ローラ10が駆動することによって、その上に配置された鋼矢板100を搬送する。図3に示すように、搬送ローラ10は、鋼矢板のウェブ部102を支持する主ローラ10aとウェブ部の外側に位置し、斜めに伸びるフランジ部103の下側部分を両側から支持するガイドローラ10bとが1つの回動軸10cに設けられている、搬送ローラ10は、鋼矢板100の幅方向の位置をある程度の精度で大まかに決定するとともに、搬送中における幅方向への位置ずれを防止する。
【0033】
搬送ローラ10を駆動させる駆動手段としては、モータ11が設けられている。モータ11とすべての搬送ローラ10は、チェーン12で連結されており、モータ11の回転が搬送ローラ10に伝達されて、すべての搬送ローラ10が同じ動作をする。ローラユニット5には、チェーン12のテンションを調整するために、テンション調整機構13が設けられている。
【0034】
第1矯正ユニット80は、鋼矢板100の開き変形及び閉じ変形などの断面方向の変形の矯正を行う。また、第2矯正ユニット90は、反り変形及びねじれ変形の矯正を行う。
【0035】
(第1矯正ユニット)
図4は、本発明の係る鋼矢板の矯正部の第1矯正ユニットの構成を示す側方から見た図である。第1矯正ユニット80は、フレーム14、第1金型15とを備えている。
【0036】
フレーム14は上面から見て格子状に設けられた4つの支柱14aと当該支柱14aの上端に設けられる天井部14bとで構成される。フレーム14には、搬送方向両側に設けられる搬送部2a,2bの搬送経路が通過しており、搬送部2a,2bにより搬送される鋼矢板100が通過可能である。
【0037】
フレーム14の上流側の支柱14aには、搬送部2aから送られる鋼矢板100を下支えする前側支持ローラ16が設けられている。前側支持ローラ16は、アクチュエータ16aに接続されて、上記のローラユニット5の上下動に応じて高さ位置を変更することができる。
【0038】
また、フレーム14の下流側端部には、搬送部2bに送られる鋼矢板100を下支えする後側支持ローラ17が設けられている。後側支持ローラ17は、図示しないアクチュエータに接続されて、上記のローラユニット5の上下動に応じて高さ位置を変更することができる。
【0039】
フレーム14の上流側の支柱14aには、幅計測部18が設けられており、フレーム14に搬入される鋼矢板100との距離を測定している。幅計測部18は、フランジ部103の外表面との距離を測定する。なお、距離を測定する機構の構成は特に限定されるものではなく、例えば、光センサなどの各種センサを用いることができる。
【0040】
フレーム14と鋼矢板100との距離を計測することにより、鋼矢板100のフランジ部103の屈曲角を把握することができ、当該鋼矢板100に対し、矯正が必要な変形箇所と、当該変形が閉じ変形であるのか開き変形であるのかを判断する。
【0041】
第1金型15は、搬送方向に所定の長さを有する金型であり、フレーム14の支持床14cに固定された第1底受け型19と、第1底受け型19に対して離接可能に配置された第1垂直押圧部20とを含む。
【0042】
第1金型15の第1垂直押圧部20は、図4に示すように、フレームの天井部14bに鋼矢板の搬送方向に沿って配設された2つの上下アクチュエータ21に接続されている。
【0043】
図5は、図4のV-V線における断面図である。第1垂直押圧部20に対向して第1底受け型19が設けられている。図6は、図5の部分拡大図である。
【0044】
第1底受け型19は、鋼矢板100の搬送方向の全長にわたって矢板収納凹部19aが設けられており、鋼矢板100のウェブ部102とフランジ部103の下縁部分を支持する。第1底受け型19は、鋼矢板100の幅方向及び高さ方向位置の基準となっている。すなわち、第1底受け型19に固定された鋼矢板100の位置を基準とし、後述する断面方向の矯正及び、第2矯正ユニット90による矯正のための反り変形及びねじれ変形の変形量を計測する。
【0045】
また、図6に示すように、矢板収納凹部19aの中央部分はさらに1段低い凹溝19bが設けられている。凹溝19b、第1垂直押圧型20によりウェブ部102を下向きに押圧した場合にウェブ部102の中央部分を下側に撓ませることにより、フランジ部103を立ち上げて矯正しやすくすることができる。
【0046】
また、凹溝19bはウェブ部102の弾性ひずみを考慮した深さに設定されていることが好ましく、変形したウェブ部102を押圧して中央部分を撓ませることにより、応力解除後に高い精度で正規形状とすることができる。
【0047】
上下アクチュエータ21は、油圧シリンダなどで構成されたアクチュエータである。上下アクチュエータのシリンダの下端に連結された自在継手22を介して、第1ガイド23が設けられる。第1ガイド23は、上下アクチュエータ21によって上下移動し、板状本体24に挿通されている。
【0048】
板状本体24は、フレーム14の支持床14cの4角に設けられた円柱状のガイドバー25に案内支持されている。よって、第1垂直押圧部20の板状本体24は、ガイドバー25に沿って平行に上下移動可能であり、上下アクチュエータ21の動作に伴い上下する第1ガイド23の動作に応じて上下移動する。
【0049】
また、第1ガイド23の下端部には、鋼矢板100のウェブ部102を上側から押圧する第1垂直押圧型20が連結される。第1垂直押圧型20は、第1垂直押圧型20は、鋼矢板100のウェブ部102の幅寸法に合わせて構成され、ウェブ部102を下向きに押圧し、第1底受け型19に押しつけて固定する。
【0050】
図6に示すように、第1垂直押圧型20の上端部分は、外側に張り出したフランジ内幅ストッパ26となっている。フランジ内幅ストッパ26は、後述するフランジ部103の屈曲角矯正において、鋼矢板の正規形状と材料の応力ひずみを考慮して、鋼矢板100の正規寸法より若干内側となるように設計されている。本実施形態では、図6に示すように、4型の鋼矢板100の場合、正規寸法位置Aに対して、フランジ内幅ストッパ26の端部を10mm程度内側に位置させ、フランジ部103が当該フランジ内幅ストッパ26の先端に接触するまで矯正することにより、応力解除後に正規寸法とすることができる。
【0051】
また、板状本体24には、押圧矯正部27が設けられている。押圧矯正部27は、板状本体24の下面に沿って水平方向に移動可能に板状本体24取り付けられており、鋼矢板100の左右のフランジ部103を水平方向に押圧して矯正する。
【0052】
次に第1矯正ユニット80の動作について説明する。変形した鋼矢板100は、上流側の搬送部2aに載置され、第1矯正ユニット80方向に搬送される。第1矯正ユニット80では、断面方向の変形の矯正を行う。
【0053】
搬送部2aによる鋼矢板100の搬送時においては、ローラユニット5、前側支持ローラ16、後側支持ローラ17はいずれも上側に位置する搬送位置であり、鋼矢板100が第1底受け型19の上方に離れた状態となっている。
【0054】
鋼矢板100が矯正ユニット3に搬送されると幅計測部18により、鋼矢板100のフランジ部103との距離を計測し、フランジ部の変形箇所を特定する。搬送部2a,2bは、当該変形箇所を第1金型15に位置するように搬送する。
【0055】
次いで、上下アクチュエータ21を下げて、鋼矢板のウェブ部102の上面に第1垂直押圧部20を接触させ、鋼矢板100を第1底受け型19に押圧し固定する。この状態で、押圧矯正部27を動作させてフランジ部103の変形を正規形状に矯正する。
【0056】
具体的には、第1ガイド23の先端に設けられている第1垂直押圧型20は、鋼矢板100のウェブ部102を第1底受け型19に押しつけて固定する。上記のように、第1底受け型19の矢板収納凹部19aには、凹溝19bが設けられているため、第1垂直押圧部20による押圧により、ウェブ部102の中央部分が下側に撓みフランジ部103が立ち上がり、フランジ部103の開き変形の矯正をしやすくすることができる。また、凹溝19bはウェブ部102の弾性ひずみを考慮した深さに設定されていることが好ましく、変形したウェブ部102を押圧して中央部分を撓ませることにより、応力解除後に高い精度で正規形状とすることができる。
【0057】
この状態で、押圧矯正部27が移動し、フランジ部103の変形を矯正する。押圧矯正部27は、図6に示す例では、本体部27aの外側部分に当接部27bが設けられており、当該当接部27bがフランジ部103の上端(継手部104)に当接して、屈曲角を小さくする方向に鋼矢板を矯正する。なお、上記のように開き変形の矯正幅は、フランジ内幅ストッパ26にフランジ部103が当接することで、一律に決定することができ、当該位置まで押圧矯正部27を移動させることにより、弾性ひずみを考慮して、応力解除後に鋼矢板を正規形状とすることができる。
【0058】
開き変形の矯正後、押圧矯正部27の位置を戻したあと、第1ガイド23と第1垂直押圧部20を上昇させ、当該変形箇所の矯正を終了する。
【0059】
本実施形態に係る第1矯正ユニットによれば、断面方向の変形を有する鋼矢板100を矯正して正規形状とすることができる。また、弾性ひずみを考慮した位置にフランジ内幅ストッパ26を設けることで、矯正幅を一律に決定することができるため、高い精度で正規形状への矯正を実現することができる。
【0060】
(第2矯正ユニット)
図7は、本発明の係る鋼矢板の矯正部の第2矯正ユニットの構成を示す平面図である。図8は、図7のVIII-VIII線における断面図である。図9は、第2矯正ユニットを搬送方向上流側から見た図である。図10は、第2矯正ユニットを搬送方向下流側から見た図である。
【0061】
第2矯正ユニット90は、メインフレーム30、上下駆動機構31、回転駆動機構32、第2金型33とを備えている。
【0062】
メインフレーム30は、地盤上に設置された脚部34と、脚部34に立設されたフレーム枠35とを備えている。脚部34は、第1金型15から所定の既知の位置に配置されており、フレーム枠35を支持する。すなわち、フレーム枠35の搬送方向の配置位置は、第1金型15から所定の決められた位置となっており、第1金型15からの搬送方向距離は既知となっている。
【0063】
フレーム枠35は、中央部分に上下駆動機構31を収納可能な開口36が設けられている。また、フレーム枠35の搬送方向下流側には、計測ユニット37が取り付けられている。
【0064】
計測ユニット37は、直下に位置する鋼矢板100との距離を計測することで、鋼矢板100の形状を測定する。具体的には、図10に示すように、計測ユニット37は、鋼矢板100の幅方向に延びる案内レール38と、案内レール38に沿って幅方向に移動するスライダ39と、スライダ39に取り付けられたセンサ40とを備える。
【0065】
計測ユニット37のセンサ40は、第1金型15に固定されて位置決めされた鋼矢板100が、センサ40の直下位置において、幅方向ごとにその高さ位置を計測する。図11に示すように、ある特定の幅方向位置W1において、鎖線で示す正規形状の鋼矢板100aでの高さH1に比べて、実線で示す鋼矢板100が正規形状から変形していれば、その高さH2が異なる。これにより、鋼矢板100の各幅方向位置における高さを測定することで、鋼矢板100が、センサ40の直下位置において、どのように変形しているかを計測することができる。
【0066】
なお、第1金型15からセンサ40の搬送方向位置は、既知の所定位置に設定されており、第1金型15に固定された鋼矢板100について、鋼矢板100の任意の長手方向位置に対応する変形量を計測する。
【0067】
上下駆動機構31は、メインフレームのフレーム枠35の開口36内に配置される上下駆動枠41と、上下駆動枠41を上下移動させる昇降シリンダ42とを備える。上下駆動枠41は、フレーム枠35の開口36に上下方向に沿って延びる上下案内ガイド43に案内されて、フレーム枠35の開口内を上下に移動可能に取り付けられている。
【0068】
昇降シリンダ42は、メインフレームのフレーム枠35に固定された油圧シリンダであり、フレーム枠35と上下駆動枠41とを連結する。昇降シリンダ42の伸縮に伴い、上下駆動枠41が、上下案内ガイド43に案内されて上下に移動し、メインフレーム30に対する上下方向位置を変更することができる。
【0069】
なお、上下駆動枠41の下端には、下方に延びる突き当て部45が配置されている。突き当て部45は、上下駆動枠41のメインフレーム30に対する下限位置を決定するためのものである。
【0070】
メインフレーム30の脚部34には、突き当て部45に対応する位置に昇降ストッパ46が配置されている。昇降ストッパ46の上面46aには、高さの異なる2つの段差部47a,47bが搬送方向に沿って設けられている。昇降ストッパ46は、昇降ストッパ切り替えシリンダ48によって、搬送方向に位置変更可能となっている。
【0071】
昇降ストッパ46上面の段差部47a,47bは高さが異なるため、突き当て部45に接触する段差部を切り替えることによって、上下駆動枠41の下限位置を異ならせることができる。すなわち、矯正対象である鋼矢板100のサイズに応じて変化する鋼矢板100の高さに応じて、昇降ストッパ46の下限位置を切り替えることができる。
【0072】
上下駆動枠41は、搬送方向から見て矩形の部材であり、中央に開口を有する枠状の部材である。上下駆動枠41は、後述するように、回転駆動機構32を支持する。上下駆動枠41の搬送方向上流側には、回転駆動機構32を取り付けるための旋回ベアリング44が設けられている。旋回ベアリング44は、搬送方向に沿った回転軸まわりに回転駆動機構32を回転可能に支持する。すなわち、回転駆動機構32は、上下駆動枠41に対して上記回転軸周りに旋回可能となっている。なお、回転駆動機構32の回転軸は、搬送方向に沿って延びるが、その高さ位置は、上下駆動枠41の高さ位置に応じて変化する。これにより、後述するように、鋼矢板100の矯正時においては、上下駆動枠41の高さ位置を特定の位置に移動させた後、回転駆動機構32の回転が実行される。
【0073】
回転駆動機構32は、上下駆動枠41に取り付けられた回転枠49と、回転枠49を上下駆動枠41に対して回転駆動させるねじり矯正シリンダ50とを備える。
【0074】
回転枠49は、上記のように上下駆動枠の旋回ベアリング44に取り付けられた枠状の部材であり、開口内部に第2金型33を保持する。第2金型33は、第2底受け型51と第2垂直押圧部52とを含む。
【0075】
第2底受け型51は、回転枠49の下側部49aの上面に固定される。一方、第2垂直押圧部52は、回転枠49の開口内に上下方向に延びる一対のガイドバー53に沿って上下移動可能に取り付けられる。
【0076】
第2底受け型51は、回転枠49の上側部49bに固定されるクランプシリンダ54によって上下移動される。
【0077】
第2底受け型51は、鋼矢板100の少なくともウェブ部102と屈曲部分を収容可能な矢板収納凹部51aを備える。本実施形態にかかる第2底受け型51は、矢板収納凹部51aが深くフランジ部103をほぼ収納可能に構成されている。また、第2垂直押圧部52は、矢板収納凹部51a内の鋼矢板100を上方から押圧し、第2底受け型51に固定する。
【0078】
回転枠49は、左右方向外側に延びる、アーム55を有しており、当該アーム55の先端にねじり矯正シリンダ50が連結されている。
【0079】
ねじり矯正シリンダ50は、一対で構成されており、フレーム枠35のシリンダ取付部材56とアーム55とを連結する。一対のねじり矯正シリンダ50は、図12に示すように、伸縮することで、回転枠49を旋回ベアリング44の回転軸周りに傾斜させる。
【0080】
次に本実施形態に係る第2矯正ユニット90の動作について説明する。第2矯正ユニット90は、上記の通り、メインフレーム30に対して、上下駆動枠41と旋回枠49が移動することができるように構成されている。
【0081】
具体的には、上下駆動枠41は昇降シリンダ42により上下移動が可能であり、旋回枠49は、ねじり矯正シリンダ50により搬送方向に延びる回転軸を中心として、旋回可能に構成されている。
【0082】
また、回転枠49には、第2金型33が取り付けられており、クランプシリンダ54により、第2垂直押圧部52を第2底受け型51に押し付けることで、鋼矢板100を第2金型33に固定することができる。
【0083】
すなわち、第2金型33に鋼矢板100を固定した状態で、上下駆動枠41と旋回枠49を動作させることにより、鋼矢板100の反り変形及びねじれ変形を矯正することができる。
【0084】
搬送部2aによる鋼矢板100の搬送時においては、上下駆動枠41を下方向に移動させる。これにより、鋼矢板100が第2底受け型51の上方に離れた状態とすることができ、鋼矢板100の搬送を容易にすることができる。鋼矢板100が所定の搬送位置に移動すると、第2底受け型51により鋼矢板を下支えしてもよい。
【0085】
搬送された鋼矢板100は、計測ユニット37により、その形状が測定される。ここで計測される鋼矢板100の形状は、第1金型15により、基準位置に固定された鋼矢板100の計測ユニット37の計測位置における正規形状に対する変形量である。すなわち、反り変形又はねじれ変形が存在しない場合は、基準位置に固定された鋼矢板100の計測位置における断面形状は、正規形状に等しくなる。このため、正規形状との差を測定することにより変形量を求めることができる。
【0086】
次いで、クランプシリンダ54を操作して、第2垂直押圧部52を下げて、鋼矢板100のウェブ部102の上面に第2垂直押圧部52を接触させ、鋼矢板100を第2底受け型51に押圧し固定する。
【0087】
上記のように、第1金型15と計測ユニット37との搬送方向の距離は既知であるため、計測ユニット37の計測位置における変形量を測定することで、反り変形及びねじれ変形の程度を検知することができる。
【0088】
この状態で、上下駆動機構31及び回転駆動機構32を操作することにより、鋼矢板100の反り変形及びねじれ変形を矯正することができる。なお、上下駆動機構31による反り変形の矯正と、回転駆動機構32によるねじれ変形の動作についての詳細は後述する。
【0089】
矯正後、上下駆動枠41及び回転枠49の位置を戻したあと、第2垂直押圧部52を上昇させ、鋼矢板100を開放する。
【0090】
本実施形態に係る第2矯正ユニットによれば、反り変形とねじれ変形を有する鋼矢板100を矯正して正規形状とすることができる。
【0091】
次に本実施形態に係る矯正装置1の動作について説明する。上記のように、本実施形態にかかる鋼矢板の矯正部3は、第1矯正ユニット80で断面方向の変形の矯正を行ない、第2矯正ユニット90で反り変形及びねじれ変形の矯正を行う。それぞれの矯正ユニットで行う動作については上述の通りであるので、詳細な説明は省略する。
【0092】
図13は、本実施形態にかかる矯正装置の動作制御を行う機能ブロック図である。図13に示すように、本実施形態にかかる矯正装置1は、搬送部2a,2b、第1矯正ユニット80,第2矯正ユニット90を動作制御する矯正制御部60により動作制御される。
【0093】
図14は、本実施形態にかかる矯正装置により、鋼矢板の変形を矯正する動作の作業フローを示す図である。矯正対象である鋼矢板100は、断面方向の変形、反り変形及びねじれ変形を有する。鋼矢板100は、上記のように搬送部2aにより、所定送り両ごとに鋼矢板の矯正部3に送られる。なお、1回の送り量は、第1金型15の搬送方向寸法よりも短いことが好ましい。上流側に配置された第1矯正ユニット80は、幅計測部18により特定された変形箇所の部分を第1金型15により固定し、押圧矯正部27を動作させることで、断面方向の変形を矯正する(S1)。
【0094】
本実施形態では、第1矯正ユニット80による矯正幅の調整は、上述の通り、フランジ内幅ストッパ26により一律に決定することができる。すなわち、本実施形態では、矯正制御部60により、矯正幅の演算を行う必要がない。
【0095】
第1矯正ユニット80による断面方向の変形の矯正については、本実施形態では、矢板全長にわたって行い、その後、第2矯正ユニット90による矯正を行う。
【0096】
第1矯正ユニット80により断面方向の形状が正規形状となった鋼矢板100は、搬送部2a,2bにより送られて、第2矯正ユニット90に到達する。第2矯正ユニット90では、計測ユニット37により、反り変形及びねじれ変形の有無が計測される(S2)。なお、計測時には、上述の通り、第1金型15は、鋼矢板100を固定し、鋼矢板100を基準位置に固定する。
【0097】
計測の動作においては、所定ピッチごとにセンサで鋼矢板100の高さを測定し、反り、ねじれ状態を判定する。なお、本実施形態では、非接触式のセンサにより計測を行っているが、接触式のセンサなど、種々のセンサを用いることができる。
【0098】
上記の通り、第1金型15から計測ユニット37のセンサ40までの距離L1及び第1金型15から第2金型33までの距離L2は既知であるため、図15に示すように、当該計測位置における、鋼矢板100の変形量D1を測定することで、第2金型33の位置における変形量D2を演算することができる。
【0099】
この求められた変形量D2に基づいて、上下駆動枠41と旋回枠49との動作幅を決定することができる。
【0100】
第1金型15から計測ユニット37のセンサ40までの距離L1及び第1金型15から第2金型33までの距離L2を任意に設計することにより、矯正の精度を高めることができる。すなわち、これらの距離を短くすると、第1金型15から計測ユニット37のセンサ40までの間に、鋼矢板の変形が一次的な変位と見なせる可能性が高くなるため、上下駆動枠41と旋回枠49との動作幅の演算の精度が高くなる。一方で、1つの鋼矢板の矯正に必要な時間が長くなる可能性がある。
【0101】
本実施形態では、上下駆動枠41による反り変形の矯正と、旋回枠49によるねじれ変形の矯正は、それぞれ、独立して行われ、反り変形の矯正(S3)を先に行う。ただし、矯正の順番は限定されるものではない。
【0102】
反り変形の矯正は、上記鋼矢板100の計測データに基づいて、鋼矢板全長にわたり矯正を行う。まずは、搬送部2a,2bにより、鋼矢板100を矯正位置に移動させる。次いで、第1金型15、第2金型33の順で鋼矢板100をクランプする。
【0103】
第2金型33に鋼矢板を固定させた状態で、上下駆動枠41を反りと反対側に動作させることにより矯正する。鋼矢板100の全長にわたって反り変形の矯正が終了すると、次に、ねじれ変形の矯正を行う(S4)。
【0104】
ねじれ変形の矯正は、上記鋼矢板100の計測データに基づいて、鋼矢板全長にわたり矯正を行う。まずは、搬送部2a,2bにより、鋼矢板100を矯正位置に移動させる。次いで、第1金型15、第2金型33の順で鋼矢板100をクランプする。
【0105】
第2金型33に鋼矢板を固定させた状態で、旋回枠49をねじれと反対側に動作させることにより矯正する。このときの旋回枠49の旋回軸は、鋼矢板100の断面形状の中心位置を通る位置とすることが好ましく、旋回軸の高さ調整のために上下駆動機構の上下駆動枠41により旋回枠49の高さを調整する。この鋼矢板100の断面形状の中心は、矯正対象となる鋼矢板100のサイズにより一律に決定される。ただし、本実施形態では、ねじれ矯正(S4)は、反り矯正(S3)の後で行っている。このため、鋼矢板100の反りは矯正済みであり、第1金型15により固定された鋼矢板100の断面形状の中心と鋼矢板100の高さに応じた第2金型33の断面形状の中心との高さ位置が略一致する。すなわち、反り矯正をねじれ矯正に先だって行うことにより、回転枠49の旋回軸合わせの動作を簡略化することができる。
【0106】
なお、上記反り変形の矯正(S3)及びねじれ変形の矯正(S4)で行われるそれぞれ上下駆動枠41及び旋回枠49の動作量については、応力解除後の弾性ひずみ変形を考慮した矯正作業を行う。これらの動作量については、過去に行った矯正前の鋼矢板100の変形量D1と動作量の関係履歴を蓄積し、当該蓄積データに基づいて、新たな矯正作業における動作量を決定してもよい。
【0107】
以上説明したように、本実施形態にかかる鋼矢板の矯正装置によれば、第1矯正ユニットと第2矯正ユニットでそれぞれ鋼矢板の断面方向の変形及び反りねじれ変形についての変形箇所を矯正することで、正規形状とすることができる。
【0108】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。
【0109】
本実施形態では、第1金型及び第2金型を支持する第1矯正ユニット及び第2矯正ユニットが設置固定され、搬送部により鋼矢板が長手方向に搬送される構成であるが、鋼矢板を停止させ、第1矯正ユニット及び第2矯正ユニットが鋼矢板の長手方向に沿って移動する構成であってもよい。
【0110】
また、第1金型と第2金型は長手方向に沿って既知の位置関係を有し、第1金型に固定された鋼矢板の第2金型の位置における反り変形の反り量を演算することで矯正量を決定する。しかし、反り及びねじれ変形量に関係なく、正規形状の鋼矢板に基づいて、第1金型に対する第2金型の上下方向及びねじれ方向の相対位置に基づいて、応力ひずみを考慮して矯正幅を決定してもよい。
【0111】
本実施形態では、反り及びねじれ変形を矯正する第2ユニットは、第1ユニットの下流側に設けられているが、上流側に配置されていてもよい。
【0112】
また、例えば、計測ユニット37は、本実施形態では、メインフレーム30のフレーム枠35に、第2金型33に対して搬送方向下流側の位置に取り付けられているが、これに限定されるものではない。例えば、上下駆動枠41に取り付けてもよいし、第2金型33の上流側に取り付けてもよい。
【0113】
なお、第2矯正ユニットに設けられている上下駆動機構31及び回転駆動機構32の構成は、本実施形態に限定されるものではなく、第1金型に対して相対的に第2金型を上下移動及び回転駆動できるものであれば、構造は問わない。
【0114】
また、上記実施形態では、第1矯正ユニットにより、鋼矢板全長に付いて幅方向の変形の矯正を行った後に、第2矯正ユニットにより、反り変形及びねじれ変形の矯正を行うようにしているが、両者を送りピッチごとに順次矯正してもよいし、又は、同時に併用して矯正してもよい。この場合、鋼矢板をリターンさせる必要がなく一回の通過で一連の矯正作業を完了することができるため、処理時間を短縮でき、効率よく作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0115】
1 矯正装置
2a,2b 搬送部
3矯正部
4 設置ベース
5 ローラユニット
6 油圧シリンダ
7 リンク
8 連結リンク
9 搬送フレーム
10 搬送ローラ
11 モータ
12 チェーン
13 テンション調整機構
14 フレーム
14a 支柱
14b 天井部
14c 支持床
15 第1金型
16 前側支持ローラ
17 後側支持ローラ
18 幅計測部
19 第1底受け型
19a 矢板収納凹部
19b 凹溝
20 第1垂直押圧部
21 上下アクチュエータ
22 自在継手
23 第1ガイド
24 板状本体
25 ガイドバー
26 フランジ内幅ストッパ
27 押圧矯正部
30 メインフレーム
31 上下駆動機構
32 回転駆動機構
33 第2金型
34 脚部
35 フレーム枠
36 開口
37 計測ユニット
38 案内レール
39 スライダ
40 センサ
41 上下駆動枠
42 昇降シリンダ
43 上下案内ガイド
44 旋回ベアリング
45 突き当て部
46 昇降ストッパ
47a,47b 段差部
48 昇降ストッパ切り替えシリンダ
49 回転枠
50 ねじり矯正シリンダ50
51 第2底受け型
52 第2垂直押圧部
53 ガイドバー
54 クランプシリンダ
55 アーム
56 シリンダ取付部材
60 矯正制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16