(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】給食の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 5/10 20160101AFI20230111BHJP
A23L 3/10 20060101ALI20230111BHJP
A23L 3/365 20060101ALI20230111BHJP
A47J 39/02 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A23L5/10 A
A23L5/10 F
A23L3/10
A23L3/365 Z
A47J39/02
(21)【出願番号】P 2018187496
(22)【出願日】2018-10-02
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】513083060
【氏名又は名称】株式会社万福
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100072213
【氏名又は名称】辻本 一義
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】鳩山 誠志
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-109865(JP,A)
【文献】特開平11-142042(JP,A)
【文献】特開2003-135170(JP,A)
【文献】特開2001-299592(JP,A)
【文献】特開2002-080110(JP,A)
【文献】特開2010-081987(JP,A)
【文献】特開2011-045272(JP,A)
【文献】特開2000-229040(JP,A)
【文献】特開2002-177059(JP,A)
【文献】特開2005-110570(JP,A)
【文献】特開2013-220040(JP,A)
【文献】特開2014-27905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 3/00
A23L 5/00
A47J 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の調理状態に至る途中段階まで食材を加熱調理する第1工程と、
前記食材を弁当容器に盛付する第2工程と、
前記所望の調理状態に達するまで、複数の前記弁当容器に盛付された前記食材を連続して加熱調理する第3工程と、
雑菌の繁殖を抑制可能な保管用温度に前記食材を加熱保温する第4工程
とを備え
、
前記第3工程は、スチームコンベクションオーブンを使用して、前記弁当容器の蓋が開いた開蓋状態で前記複数の弁当容器に盛付された食材を加熱調理することを含む、給食の製造方法。
【請求項2】
前記第2工程は、葉野菜、肉、麺類、キノコ類、及び魚介類の煮物又は炒め物から形成される冷凍固形物を前記弁当容器に盛付することを含む、請求項1に記載の給食の製造方法。
【請求項3】
前記第1工程の終了後、30分以内に20℃以下となるように、前記食材を冷却するか、又は60分以内に10℃以下となるように、前記食材を冷却する第5工程を更に備える、請求項1
又は請求項2に記載の給食の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給食の製造方法に関し、特に、衛生面及び味覚面の両方において、給食の質を向上できる給食の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
給食の製造方法に関し、特許文献1には、半調理した食品を電子レンジによって再加熱し、食品を最終的な調理状態まで調理する給食の調理方法が記載されている。特許文献1に記載の方法においては、再加熱は、食品を配送する際に、食品が配送先に到着する直前に完了するように実施される。従って、食品を再加熱した後、配送先に到着するまでの間に食品が冷めてしまうことを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法においては、食品が配送先に到着する時間を見計らって再加熱が実施される。従って、到着が遅れてしまうと、配送先に到着するまでの間に食品が冷めてしまうことも考えられる。また、到着が遅れることを考慮して、配送に出発する時間を早めに設定すると、時間通りに到着したときに、実際に食べるまでの間に食品が冷めてしまうことも考えられる。食品が冷めてしまうと、更に再加熱する必要が生じ、繰り返し再加熱することによって、食品の味が低下する。また、食品が冷めてしまった後に、室温で長時間放置することは、衛生面からも好ましいことではない。
【0005】
更に、特許文献1に記載の方法においては、電子レンジを使用して食品を再加熱することから、配送先に到着する直前に再加熱できる食品の数量は限定される。従って、大量の給食を配送するとき、到着の直前に全ての食品を再加熱することは、技術的に困難である。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、衛生面、味覚面の両方において、給食の質を向上できるとともに、給食が大量であっても、衛生面、味覚面の両方において優れた質の給食を供給できる給食の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に開示する給食の製造方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程と、第4工程とを備える。前記第1工程は、所望の調理状態に至る途中段階まで食材を加熱調理する工程である。前記第2工程は、前記食材を弁当容器に盛付する工程である。前記第3工程は、前記所望の調理状態に達するまで、複数の前記弁当容器に盛付された前記食材を連続して加熱調理する工程である。前記第4工程は、雑菌の繁殖を抑制可能な保管用温度に前記食材を加熱保温する工程である。
【0008】
本願に開示する給食の製造方法において、前記第2工程は、葉野菜、肉、麺類、キノコ類、及び魚介類の煮物又は炒め物から形成される冷凍固形物を前記弁当容器に盛付することを含む。
【0009】
本願に開示する給食の製造方法において、前記第3工程は、スチームコンベクションオ
ーブンを使用して、前記弁当容器の蓋が開いた開蓋状態で前記複数の弁当容器に盛付された食材を加熱調理することを含む。
【0010】
本願に開示する給食の製造方法は、第5工程を更に備える。前記第5工程は、前記第1工程の終了後、30分以内に20℃以下となるように、前記食材を冷却するか、又は60分以内に10℃以下となるように、前記食材を冷却する工程である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の給食の製造方法によれば、第1工程において、所望の調理状態に至る途中段階まで食材が加熱調理され、第2工程において、食材が弁当容器に盛付され、第3工程において、所望の調理状態に達するまで、複数の弁当容器に盛付された食材が連続して加熱調理され、第4工程において、雑菌の繁殖を抑制可能な保管用温度に食材が加熱保温される。従って、所望の調理状態に達するまで食材が加熱調理された後、実際に食べるまでの時間が長くなっても、更に食材を再加熱する必要がなく、加熱調理の繰り返しによって食材の味が低下することを防止できる。また、冷めたままの食材が室温で長時間放置されることも防止でき、衛生面、味覚面の両方において、給食の質を向上できる。
【0012】
更に、本発明においては、複数の弁当容器に盛付された食材が連続して加熱調理される。複数の弁当容器に盛付された食材が、バッチ式に一度に加熱調理される場合と比較すると、加熱機内部における弁当容器の配置に起因し、食材の加熱が不均一になることを防止でき、食材の加熱不足、及び食材の加熱し過ぎを防止できる。従って、給食が大量であっても、衛生面、味覚面の両方において給食の質を向上できる。
【0013】
また、加熱後の食材が保管用温度に加熱保温されることから、大量の給食を製造するとき、全ての食材を一度に加熱調理せずに連続して、つまり順次に加熱調理しても、早い順番に加熱調理された食材が冷めることを防止でき、加熱調理の繰り返しによって食材の味が低下することを防止できる。また、早い順番に加熱調理された食材が室温で長時間放置されることも防止できる。以上のとおり、本発明によれば、給食が大量であっても、衛生面、味覚面の両方において優れた質の給食を供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る給食の製造方法を示す流れ図である。
【
図2】(a)は、製造途中の第1状態における給食を示す平面図である。(b)は、製造途中の第2状態における給食を示す平面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る配送車を示す概略図である。
【
図4】(a)は、本発明の実施形態に係る配送台車を示す概略図である。(b)は、本発明の実施形態に係るトレイを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る給食の製造方法に関する実施の形態について、添付の図面に基づいて詳しく説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、本発明を実施するに好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨が明記されていない限り、この形態に限定されるものではない。
【0016】
[基本原理]
図1を参照して、本発明の基本原理を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る給食の製造方法を示す流れ図である。
図1に示すように、実施形態に係る給食の製造方法は、第1工程S1と、第2工程S2と、第3工程S3と、第4工程S4とを備える。
【0017】
第1工程S1は、所望の調理状態に至る途中段階まで食材Fを加熱調理する工程である
。食材Fとは、調理の際に加熱を要する食材である。実施形態においては、食材Fは、副食となる食材である。「所望の調理状態」とは、例えば、食材Fの調理を管理する管理者によって目標とされる調理状態である。一般に、管理者は、食べるのに最適な調理状態を目標として食材Fを加熱する。従って、所望の調理状態の一例として、食べるのに最適な調理状態を挙げることができる。
【0018】
第2工程S2は、食材Fを弁当容器10に盛付する工程である。第3工程S3は、所望の調理状態に達するまで、複数の弁当容器10に盛付された食材Fを連続して加熱調理する工程である。第4工程S4は、雑菌の繁殖を抑制可能な保管用温度T1に食材Fを加熱保温する工程である。「雑菌」の例としては、サルモネラ、腸管出血性大腸菌、腸炎ビブリオなどの食中毒菌を挙げることができる。保管用温度T1は、実施形態においては、65℃以上の温度である。なお、好ましくは、保管用温度T1は、65℃以上、75℃以下の温度である。
【0019】
以上、
図1を参照して説明したように、実施形態に係る給食の製造方法によれば、第1工程S1において、所望の調理状態に至る途中段階まで食材Fが加熱調理され、第2工程S2において、食材Fが弁当容器10に盛付され、第3工程S3において、所望の調理状態に達するまで、複数の弁当容器10に盛付された食材Fが連続して加熱調理され、第4工程S4において、雑菌の繁殖を抑制可能な保管用温度T1に食材Fが加熱保温される。従って、所望の調理状態に達するまで食材Fが加熱された後、実際に食べるまでの時間が長くなっても、更に食材Fを再加熱する必要はなく、加熱の繰り返しによって食材Fの味が低下することを防止できる。また、冷めたままの食材Fが室温で長時間放置されることも防止でき、衛生面、味覚面の両方において、給食の質を向上できる。
【0020】
更に、実施形態においては、複数の弁当容器10に盛付された食材Fが連続して加熱調理される。複数の弁当容器10に盛付された食材Fが、バッチ式に加熱調理される場合と比較すると、加熱機内部における弁当容器10の配置に起因し、食材Fの加熱が不均一になることを防止できる。従って、食材Fの加熱不足、及び食材Fの加熱し過ぎを防止でき、給食が大量であっても、衛生面、味覚面の両方において、給食の質を向上できる。
【0021】
また、加熱後の食材Fが保管用温度T1に加熱保温されることから、大量の給食を製造するとき、全ての食材Fを一度に加熱調理せず連続して、つまり順次に加熱調理しても、早い順番に加熱調理された食材Fが冷めることを防止でき、加熱調理の繰り返しによって食材Fの味が低下することを防止できる。また、早い順番に加熱調理された食材Fが室温で長時間放置されることも防止できる。以上のとおり、給食が大量であっても、衛生面、味覚面の両方において優れた質の給食を供給できる。
【0022】
[第1工程S1]
次に、
図1、
図2を参照して、第1工程S1を更に詳しく説明する。実施形態においては、第1工程S1~第4工程S4は、二日間にわたって行われる。以下、当該二日間の1日目を前日、2日目を当日と称する。「当日」とは、給食を配送する当日であり、「前日」とは、当該当日の前日である。前日には、第1工程S1、第2工程S2が行われ、当日には、第3工程S3、第4工程S4が行われる。すなわち、実施形態においては、第2工程S2は、第3工程S3が行われる日の前日に行われる。
【0023】
第1工程S1においては、例えば、蒸し物、焼き物、炒め物、煮物が、食材Fとして、所望の調理状態に至る途中段階まで加熱調理される。なお、第1工程S1の前に、仕込工程S11を実施することができる。仕込工程S11においては、必要に応じて食材Fの下ごしらえを行うことができる。
【0024】
「蒸し物」の例としては、シュウマイ、豚の蒸篭蒸し、を挙げることができる。「焼き物」の例としては、焼魚、ハンバーグ、鶏照り焼き、焼肉、を挙げることができる。「煮物」の例としては、ほうれん草煮浸し等の葉野菜煮物、おでん、根菜煮物、サバの煮付、カレー、パスタを挙げることができる。「炒め物」の例としては、チンゲン菜中華炒め、チャーハンを挙げることができる。
【0025】
「途中段階」の例として、例えば「鶏照り焼き」であれば、鶏肉の表面に焦げ目は付いているが中心まで火が通っていない状態が途中段階である。「おでん」であれば、具が、ある程度まで柔らかくなっている状態が途中段階である。「葉野菜煮物」であれば、葉野菜が嵩張らない程度に柔らかくなっている状態が途中段階である。葉野菜が嵩張らない程度に柔らかくなったものをキューブ状に整形し、冷凍することによって、葉野菜煮物の冷凍固形物を作成することができる。当該冷凍固形物は、途中段階まで加熱調理された食材Fの一例である。以下、当該冷凍固形物を「野菜キューブ」と称する。同様に、肉、パスタ等の麺類、キノコ類、及び魚介類の煮物又は炒め物から形成される冷凍固形物も、途中段階まで加熱調理された食材Fの一例である。
【0026】
[米飯R]
図1に示すように、米飯Rは、第1工程S1とは別の炊飯工程S12において、所望の調理状態に達するまで炊飯される。炊飯工程S12において炊飯された米飯Rは、第7工程S7において、弁当容器10とは別の米飯容器に盛付される。なお、炊飯工程S12においては、主原料である米に例えば雑穀、麦を混合し、炊飯することもできる。炊飯工程S12は、当日に行うことも、前日に行うこともできる。しかしながら、炊飯工程S12は、当日に行う方が、特に味覚面において給食の質を向上できるために好ましい。また、第7工程S7は、当日に行うことができる。
【0027】
[冷副食G]
スパゲッティサラダ、コールスロー、浅漬け、フルーツなどの冷副食Gは、仕込工程S14と調理工程S15とによって作成され、第8工程S8において、冷菜容器に盛付される。冷副食Gは、盛付されるまでの間、冷蔵保存される。仕込工程S14、調理工程S15は、前日に行うことも、当日に行うこともできる。しかしながら、仕込工程S14、調理工程S15は、労務管理の面では、前日に行う方が好ましい。また、第8工程S8は、当日に行うことができる。
【0028】
[第2工程S2]
次に、
図1、
図2を参照して、第2工程S2を更に詳しく説明する。
図2(a)は、製造途中の第1状態における給食を示す平面図である。
図2(b)は、製造途中の第2状態における給食を示す平面図である。第2工程S2においては、
図2(a)に示すように、食材Fが弁当容器10に盛付される。すなわち、
図2(a)に示す第1状態においては、途中段階まで加熱調理された食材Fである、パスタ11、シュウマイ12、野菜キューブ13、根菜煮物14等の食材Fが、弁当容器10に盛付されている。また、
図2(a)においては、漬物15も、弁当容器10に盛付されている。
【0029】
第2工程S2における食材Fの盛付は、
図1に示すように、作業レーン21において行うことができる。作業レーン21は、後述のスチームコンベクションオーブン20の上流側領域21aと下流側領域21bとに区分して設けることも、単一のレーンとして、スチームコンベクションオーブン20とは独立に設けることもできる。作業レーン21を上流側領域21aと下流側領域21bとに区分したとき、第2工程S2は、上流側領域21aにおいて行うことができる。なお、作業レーン21を上流側領域21aと下流側領域21bとに区分したときと、単一のレーンとして設けたときのいずれの場合においても、第2工程S2においては、弁当容器10に1つの食材Fが盛付され、1つの食材Fが盛付され
ると、当該弁当容器10が下流側に送られ、次の食材Fが盛付される、といった手順で作業が進められる。
【0030】
[第5工程S5]
第1工程S1の終了後、速やかに、第5工程S5を行うことができる。第5工程S5は、第1工程S1の終了後、30分以内に20℃以下となるように、食材Fを冷却するか、又は60分以内に10℃以下となるように、食材Fを冷却する工程である。第5工程S5には、真空冷却機及びブラストチラー等の冷却器を使用することができる。
【0031】
[第3工程S3]
次に、
図1、
図2を参照して、第3工程S3を更に詳しく説明する。第3工程S3においては、所望の調理状態に達するまで、複数の弁当容器10に盛付された食材Fが連続して加熱調理される。実施形態においては、第3工程S3における食材Fの加熱調理には、スチームコンベクションオーブン20が使用される。複数の弁当容器10に盛付された食材Fは、蓋をしない状態で、つまり弁当容器10の蓋が開いた開蓋状態で、スチームコンベクションオーブン20によって、連続して加熱調理される。すなわち、第3工程S3においては、
図2(a)に示す食材Fがスチームコンベクションオーブン20によって加熱調理される。その結果、
図2(b)に示すように、野菜キューブ13は解凍され、葉野菜煮物16が生成される。
【0032】
[揚物工程S13]
第3工程S3と並行して、揚物工程S13を行うことができる。揚物工程S13においては、フライヤ30を使用して揚物Pが作成される。揚物Pの例としては、エビフライ、鳥の唐揚を挙げることができる。揚物工程S13において作成された揚物Pは、
図1に示す第6工程S6において、弁当容器10に盛付される。
図2(b)に示す第2状態は、第6工程S6の結果、揚物Pとしてのエビフライ17が弁当容器10に盛付された状態である。また、第6工程S6は、作業レーン21の下流側領域21bにおいて行うことができる。
【0033】
[第4工程S4]
次に、
図1、
図3、
図4を参照して、第4工程S4を更に詳しく説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る配送車を示す概略図である。
図4(a)は、本発明の実施形態に係る配送台車を示す概略図である。
図4(b)は、本発明の実施形態に係るトレイを示す概略図である。第4工程S4においては、雑菌の繁殖を抑制可能な保管用温度T1に食材Fが加熱保温される。
【0034】
保管用温度T1は、上述したとおり、実施形態においては、65℃以上である。保管用温度T1が65℃以上であることによって、雑菌の繁殖を効果的に抑制でき、衛生面において給食の質を効果的に向上できる。また、保管用温度T1が65℃以上であることによって、電子レンジ等で再加熱することなく、食材Fを温かい状態で食べることができる。更に、保管用温度T1は、好ましくは75℃以下である。保管用温度T1が75℃以下であることによって、食材Fの調理状態が、加熱のし過ぎによって、所望の調理状態から逸脱することを防止でき、味覚面において給食の質を効果的に向上できる。
【0035】
実施形態においては、食材Fと揚物Pとが盛付された弁当容器10は、保温庫40に保管される。保温庫40は、図示しないヒーターを備えており、食材Fと揚物Pとを保管用温度T1に加熱保温する。また、保温庫40には、米飯Rが盛付された米飯容器も保管される。保温庫40に保管された弁当容器10と米飯容器とは、
図3に示すように、配送車50に積載され、配送先まで運搬される。また、冷菜容器に盛付された冷副食Gは、トレイ70に収容され、配送車50に積載され、配送先まで運搬される。
【0036】
配送先まで運搬された保温庫40とトレイ70とは、
図4(a)に示すように、配送台車60に載せられ、所定の設置スペースまで運搬される。配送台車60は、台座61に、ハンドル62が着脱可能に設けられている。配送担当者は、配送台車60を設置スペースまで移動させ、ハンドル62を台座61から取り外し、当該設置スペースに台座61を設置する。
【0037】
図4(b)に示すように、トレイ70は、冷菜容器71、ビニール袋72、インスタント味噌汁73、カップ74、割り箸75を収容している。給食の利用者は、保温庫40から弁当容器10と米飯容器とを取出し、必要に応じて、トレイ70から、冷菜容器71、ビニール袋72、インスタント味噌汁73、カップ74、割り箸75を取出す。
【0038】
以上、
図2を参照して説明したように、実施形態の製造方法によれば、第2工程S2が、葉野菜煮物16の冷凍固形物である野菜キューブ13を弁当容器10に盛付することを含む。葉野菜煮物16を野菜キューブ13として弁当容器10に盛付することによって、一定量の葉野菜煮物16を弁当容器10に容易に盛付することができる。すなわち、一定量の葉野菜煮物16を弁当容器10に盛付する際には、主に目分量に頼って盛付することとなり、熟練者でなければ、一定量の葉野菜煮物16を弁当容器10に盛り付けることは困難である。これに対して、野菜キューブ13として葉野菜煮物16を盛付するとき、個数を基準に葉野菜煮物16を盛り付けることができ、熟練者でなくとも、一定量の葉野菜煮物16を容易に盛付できる。その結果、盛付作業の機械化も容易となり、製造コストの削減も容易になる。
【0039】
なお、葉野菜煮物16に限らず、例えば、葉野菜の炒め物、肉の煮物又は炒め物、パスタ等の麺類の煮物又は炒め物、キノコ類の煮物又は炒め物、魚介類の煮物、又は海鮮ソテー等の魚介類の炒め物を冷凍固形物に加工し、それらの冷凍固形物を弁当容器10に盛付することも好ましい。それらの冷凍固形物を弁当容器10に盛付することによって、量ではなく個数を基準に盛付することができ、同様の効果が得られる。
【0040】
また、
図1を参照して説明したように、実施形態の製造方法によれば、第3工程S3が、スチームコンベクションオーブン20を使用して、弁当容器10に盛付された食材Fを加熱することを含む。スチームコンベクションオーブン20を使用することによって、蒸し物、焼き物、煮物、炒め物といった、様々な種類の食材Fを味よく加熱調理できる。また、大量の食材Fをバッチ式に加熱調理するとき、加熱機内部の位置によって加熱にむらが生じる。一方、食材Fを連続式に加熱調理するとき、全ての食材Fを同一の条件で加熱することができ、大量の食材Fを均一に加熱することができる。従って、加熱不足と加熱し過ぎを防止でき、給食が大量であっても、味覚面、衛生面の両方において優れた質の給食を供給できる。
【0041】
また、
図1を参照して説明したように、実施形態の製造方法によれば、第1工程S1の終了後、速やかに第5工程S5が実施される。すなわち、第1工程S1の終了後、30分以内に20℃以下となるように、食材Fを冷却するか、又は60分以内に10℃以下となるように、食材Fを冷却することが行われる。第1工程S1の終了後、食材Fを速やかに冷却することによって、雑菌が繁殖しやすい温度領域である20~60℃の温度領域において、食材Fが長時間放置されることを防止でき、衛生面において、給食の質を効果的に向上できる。
【0042】
また、特に煮物においては、所望の調理状態に至る途中段階まで食材Fを加熱調理した後に急速に冷却することによって、食材Fに調味料を良好に浸み込ませることができ、味覚面において給食の質を向上できる。また、より少ない量の調味料で十分に味付けできる
ことから、調味料の使用量を低減することができ、製造コストを低減できる。
【0043】
また、
図1を参照して説明したように、実施形態の製造方法によれば、第3工程S3において食材Fが再加熱されることから、食材Fを弁当容器10に盛付する第2工程S2を前日に行うことができる。食材Fの盛付が前日に行えることから、盛付のための作業員を確保することが容易になり、人手不足が深刻である現状において、人手不足の克服に資する具体的な方策を提供できる。
【0044】
以上、図面(
図1~
図4)を参照しながら本発明の実施形態を説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。
【符号の説明】
【0045】
F…食材
S1…第1工程
S2…第2工程
S3…第3工程
S4…第4工程
S5…第5工程
T1…保管用温度
10…弁当容器
13…野菜キューブ(冷凍固形物)
20…スチームコンベクションオーブン