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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】バルブ装置および流体制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 7/16 20060101AFI20230111BHJP
   F16K 27/02 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
F16K7/16 C
F16K27/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020503416
(86)(22)【出願日】2019-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2019005980
(87)【国際公開番号】W WO2019167711
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2018035927
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】110002893
【氏名又は名称】弁理士法人KEN知財総合事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一誠
(72)【発明者】
【氏名】執行 耕平
(72)【発明者】
【氏名】澤田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】中田 知宏
(72)【発明者】
【氏名】篠原 努
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05829472(US,A)
【文献】特開平06-241329(JP,A)
【文献】実開平01-133578(JP,U)
【文献】特開2015-124851(JP,A)
【文献】特開2008-249002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 7/00-7/20
13/00-13/10
25/00-29/02
33/00
99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブボディ内に形成された流路に接続する開口部の周囲に配置されるバルブシートと、
記バルブシートに対して接触位置及び非接触位置の間で移動することにより前記流路の開閉を行うダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムの周縁部に接触する押えアダプタと、
前記ダイヤフラムを作動させるアクチュエータを内蔵し、前記バルブボディに接続されて当該バルブボディの上面から上方に向けて延在し、前記バルブボディに形成されたネジ穴に螺合することにより前記バルブボディに固定される円筒状のケーシングと、
前記ネジ穴と共通のネジ穴に螺合して前記押えアダプタを前記バルブボディの底面側に向けて押圧することで前記ダイヤフラムを前記バルブボディに固定するアダプタ固定リングと、を有し、
前記ケーシングの下端面と前記アダプタ固定リングの上端面とは、前記共通のネジ穴内で間隙を介して対向している、バルブ装置。
【請求項2】
前記ケーシングは、前記バルブボディの上面と接触する保護部材を有する、請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項3】
前記ダイヤフラムの前記バルブシート側とは反対側で前記ダイヤフラムの中央部と接触するダイヤフラム押えを更に備え、
前記ダイヤフラム押えの前記ネジ穴の伸びる方向の長さは、前記アダプタ固定リングの長さよりも長い、請求項1又は2に記載のバルブ装置。
【請求項4】
前記バルブボディの一方向の寸法が10mm以下である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のバルブ装置。
【請求項5】
上流側から下流側に向かって複数の流体機器が配列された流体制御装置であって、
前記複数の流体機器は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のバルブ装置を含むことを特徴とする流体制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のバルブ装置を用いて、流体の流量を調整する流量制御方法。
【請求項7】
密閉されたチャンバ内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体装置の製造プロセスにおいて、前記プロセスガスの制御に請求項1乃至4のいずれか一項に記載のバルブ装置を用いる半導体製造装置。
【請求項8】
密閉されたチャンバ内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体装置の製造プロセスにおいて、前記プロセスガスの流量制御に請求項1乃至4のいずれか一項に記載のバルブ装置を用いる半導体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ装置およびこのバルブ装置を含む流体機器が集積化された流体制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体製造装置等のチャンバへ各種のプロセスガスを供給するために使用される流体制御装置としては、下記の引用文献1等に開示されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-175502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような流体制御装置の分野においては、ガスの供給制御の高い応答性が求められており、このため流体制御装置をできるだけ小型化、集積化して、流体の供給先であるチャンバ等のより近くに設置することが求められている。チャンバ等の近くでは配置スペースに限りがあることから、流体制御装置に用いるバルブ装置は、ブロック状のバルブボディの寸法や、バルブボディ上に設置される弁体を作動させるアクチュエータを内蔵するケーシングの外径を、より縮小することが望まれている。
【0005】
一方で、半導体ウエハの大口径化等の処理対象物の大型化が進んでおり、これに合わせて流体制御装置からチャンバ内へ供給する流体の供給流量も増加あるいは維持させる必要がある。流量を確保するためには、バルブを開閉する際のダイヤフラム等の弁体のリフト量を確保する等の理由から、アクチュエータは弁体の作動方向に長くなる。そのため、バルブ装置はバルブボディの大きさと比較してアクチュエータを内蔵するケーシングの高さが高い、細長い外観となる。
【0006】
このような細長い構造のバルブ装置においては、例えば近くで作業するオペレータの接触等の衝撃に対して十分な強度を確保することが難しくなる。しかしながら、流体を制御するバルブ装置においては、接触や地震等の物理的な衝撃を受けた場合においても、衝撃が弁体に伝わって弁の開閉に影響を及ぼさない構造が必要とされる。
【0007】
本開示は、上述の事情に鑑みてされたものであり、小型化を実現しつつ物理的衝撃に対する弁体への影響をより低減させたバルブ装置及び流体制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のバルブ装置は、バルブボディ内に形成された流路に接続する開口部の周囲に配置されるバルブシートと、前記バルブシートに対して接触位置及び非接触位置の間で移動することにより前記流路の開閉を行うダイヤフラムと、前記ダイヤフラムの周縁部に接触する押えアダプタと、前記ダイヤフラムを作動させるアクチュエータを内蔵し、前記バルブボディに形成されたネジ穴に螺合して前記バルブボディ上に固定されるケーシングと、
前記ネジ穴に螺合して前記押えアダプタ及び前記ダイヤフラムを押圧しつつ、前記バルブボディ内に固定されるアダプタ固定リングと、を備えるバルブ装置である。
【0009】
また、本開示のバルブ装置においては、前記ネジ穴において、前記アダプタ固定リング及び前記ケーシングは互いに間隙を有して配置されていてもよい。
また、本開示のバルブ装置においては、前記アダプタ固定リングは、外側にねじ部を有し、内側に軸方向に伸びる複数の溝を有していてもよい。
また、本開示のバルブ装置においては、前記ケーシングは、前記バルブボディの上面と接触する保護部材を有してもよい。
また、本開示のバルブ装置においては、前記ダイヤフラムの前記バルブシート側とは反対側で前記ダイヤフラムの中央部と接触するダイヤフラム押えを更に備え、前記ダイヤフラム押えの前記ネジ穴の伸びる方向の長さは、前記アダプタ固定リング(7)の長さよりも長くてもよい。
また、本開示のバルブ装置においては、一方向の外形寸法が10mm以下とすることができる。
【0010】
本開示の流体制御装置は、上流側から下流側に向かって複数の流体機器が配列された流体制御装置であって、前記複数の流体機器は、上記いずれかの構成のバルブ装置を含む流体制御装置である。
本開示の流量制御方法は、上記いずれかの構成のバルブ装置を用いて、流体の流量を調整する流量制御方法である。
本開示の半導体製造装置は、密閉されたチャンバ内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体装置の製造プロセスにおいて、前記プロセスガスの制御に上記いずれかの構成のバルブ装置を用いる半導体製造装置である。
本開示の半導体製造方法は、密閉されたチャンバ内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体装置の製造プロセスにおいて、前記プロセスガスの流量制御に上記いずれかの構成のバルブ装置を用いる半導体製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、物理的衝撃に対する弁体への影響をより低減させたバルブ装置及び流体制御装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係るバルブ装置の一部を断面で示す全体図である。
図2】バルブボディのネジ穴付近について示す拡大断面図である。
図3】アダプタ固定リングの平面図である。
図4】アダプタ固定リングの側面図である。
図5】本実施形態の変形例に係るバルブ装置の一部を断面で示す全体図である。
図6】バルブ装置のバルブボディのネジ穴付近について示す拡大断面図である。
図7】保護部材の上面図である。
図8図7の保護部材における3C-3C線での断面図である。
図9】本実施形態のバルブ装置を用いる流体制御装置の一例を示す斜視図である。
図10】本発明の一実施形態に係る半導体製造装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。説明において同様の要素には同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
先ず、図9を参照して、本発明が適用される流体制御装置の一例を説明する。図9は、本実施形態のバルブ装置を用いる流体制御装置の一例を示す斜視図である。図9に示す流体制御装置は、金属製のベースプレートBS上には、幅方向W1,W2に沿って配列され長手方向G1,G2に延びる5本のレール部材500が設けられている。
【0014】
なお、W1は正面側、W2は背面側,G1は上流側、G2は下流側の方向を示している。各レール部材500には、複数の流路ブロック200を介して各種流体機器110A~110Eが設置され、複数の流路ブロック200によって、上流側から下流側に向かって流体が流通する図示しない流路がそれぞれ形成されている。
ここで、「流体機器」とは、流体の流れを制御する流体制御装置に使用される機器であって、流体流路を画定するボディを備え、このボディの表面で開口する少なくとも2つの流路口を有する機器である。具体的には、開閉弁(2方弁)110A、レギュレータ110B、プレッシャーゲージ110C、開閉弁(3方弁)110D、マスフローコントローラ110E等が含まれるが、これらに限定されるわけではない。なお、導入管310は、上記した図示しない流路の上流側の流路口に接続されている。この流体制御装置は、5本のレール部材500にそれぞれG2方向に流れる5つの流路が形成されており、それぞれの流路の幅方向W1,W2の長さを10mm以下、すなわち、各流体機器の幅(寸法)を10mm以下としてもよい。
【0015】
本発明は、上記した開閉弁110A、110D、レギュレータ110B等の種々のバルブ装置に適用可能であるが、本実施形態では、開閉弁に適用する場合を例に挙げて説明する。
図1は、本実施形態に係るバルブ装置1の一部を断面で示す全体図である。図2は、バルブボディ3のネジ穴33付近について示す拡大断面図である。図1及び図2に示すように、バルブ装置1は、ケーシング2と、バルブボディ3と、バルブシート41と、インナーディスク42と、ダイヤフラム5と、押えアダプタ6と、アダプタ固定リング7と、ダイヤフラム押え8とを有する。なお、図中の矢印A1,A2は上下方向であってA1が上方向、A2が下方向を示すものとする。矢印B1,B2は、バルブ装置1のバルブボディ3の長手方向であって、B1が一端側、B2が他端側を示すものとする。矢印A1,A2及び矢印B1,B2に共に直交する方向は幅方向である。
【0016】
バルブボディ3は、ブロック状に形成され、底面3bで開口するガスの第1流路31及び第2流路32を画定している。第1流路31及び第2流路32の底面3bにおける開口の周囲には、図示しないシール部材を保持する凹状の保持部31a及び32aが形成されている。第1流路31及び第2流路32は、底面3b側とは反対側の開口に通じる弁室で互いに連通している。
バルブボディ3は、更に上面3aから開けられたネジ穴33を有し、弁室を介して第1流路31及び第2流路32と連通している。本実施形態においては、弁室に流量を調整するためのオリフィス体35を有しているが、オリフィス体35を有していない構成であってもよい。バルブボディ3は、長手方向のネジ穴33を挟むように2つの貫通孔34が形成されている。貫通孔34には、図9に示したような流路ブロック200上にバルブボディ3を固定するための締結ボルトが挿入される。
【0017】
バルブシート41は、バルブボディ3内に形成された第1流路31に接続する開口36の周囲に配置される。本実施形態においては第1流路31に接続するオリフィス体35の開口の周囲に配置されているが、オリフィス体35を有さない構成等においては、バルブボディ3の開口等の第1流路31に接続する開口36の周囲に配置することができる。バルブシート41は、例えばPFA、PTFE等の樹脂で弾性変形可能に形成されている。
インナーディスク42はバルブシート41の周囲に配置され、第1流路31のガス及び第2流路32のガスをそれぞれ通過させる孔を有している。
ダイヤフラム5は、バルブシート41に対して接触位置及び非接触位置の間で移動することにより流路の開閉を行って弁体として機能する。また、ダイヤフラム5は、バルブシート41よりも大きな直径を有し、ステンレス、NiCo系合金などの金属やフッ素系樹脂で球殻状に弾性変形可能に形成されている。
押えアダプタ6は、ダイヤフラム5の周縁部に接触し、インナーディスク42との間でダイヤフラム5を挟持する。
【0018】
アダプタ固定リング7は、バルブボディ3に形成されたネジ穴33に螺合して押えアダプタ6及びダイヤフラム5を押圧すると共に、バルブボディ3内に固定される。このように、ダイヤフラム5は、押えアダプタ6を介してアダプタ固定リング7の下端面によりバルブボディ3に向けて押しつけられることにより、バルブシート41に対して当接離隔可能にバルブボディ3に支持されている。図3は、アダプタ固定リング7の平面図である。図4は、アダプタ固定リング7の側面図である。これらの図に示されるように、アダプタ固定リング7は、外側にリングねじ部71を有し、内側に軸方向に伸びる複数の溝72を有している。溝72は、ネジ穴33にアダプタ固定リング7を取り付ける際、及び取り外す際に、アダプタ固定リング7を回転させるための工具と係合するものである。これにより、アダプタ固定リング7は、押えアダプタ6及びダイヤフラム5をバルブボディ3に対してより確実に固定することができる。なお、アダプタ固定リング7は金属により形成されていてもよく、バルブボディ3と同じ材料又は熱膨張率が近い値の材料とすることができる。
【0019】
ケーシング2は、ダイヤフラム5を作動させるアクチュエータを内蔵し、ネジ穴33に螺合してバルブボディ3上に固定される。ケーシング2は、全体として円筒状であり、内部に図示しないアクチュエータを内蔵している。アクチュエータは、例えば、圧縮エアで駆動されるピストン等とすることができるが、これに限定されるわけではなく、手動、圧電アクチュエータ、ソレノイドアクチュエータ等種々のアクチュエータを採用することができる。アクチュエータを内蔵しているケーシング2は、アクチュエータの一部を構成してもよいし、アクチュエータと別体であってもよい。図2に示すように、ケーシング2のバルブボディ3と接続される部分の外周には、ケーシングねじ部22が形成され、バルブボディ3のネジ穴33と螺合して、バルブボディ3と接続される。この際、バルブボディ3は、先にネジ穴33に螺合されたアダプタ固定リング7に接触せず、間隙73を有して配置されることができる。
【0020】
ダイヤフラム押え8は、ダイヤフラム5のバルブシート41側とは反対側でダイヤフラム5の中央部と上方から接触する。ダイヤフラム押え8は、ケーシング2内のアクチュエータに接続され、アクチュエータの動作に従って移動する。ここで、ダイヤフラム押え8のネジ穴33の伸びる方向の長さは、アダプタ固定リング7の長さよりも長くすることができ、これにより、アダプタ固定リング7がある場合であっても、ケーシング2内のアクチュエータの動作を、ダイヤフラム5に伝えることができる。
ケーシング2のバルブボディ3と接続される部分は筒状であり、内部に、ケーシング2に内蔵されたアクチュエータにより上下方向A1,A2に駆動されるステム21を有している。ステム21とケーシング2のバルブボディ3と接続される部分との間にはOリング24が設けられ、弁室側とアクチュエータ側との間をシールしている。ステム21は下側が半球状に形成されダイヤフラム押え8と接続しており、ダイヤフラム押え8が下方向A2に駆動されると、ダイヤフラム押え8を介してダイヤフラム5が押圧される。
図2では、ダイヤフラム5はダイヤフラム押え8により押圧されて弾性変形し、バルブシート41に押し付けられている状態にある。ダイヤフラム押え8による押圧を開放すると、球殻状に復元する。ダイヤフラム5がバルブシート41に押し付けられている状態では、第1流路31が閉鎖され、ダイヤフラム押え8が上方向A1に移動すると、ダイヤフラム5がバルブシート41から離れ、第1流路31は開放され、第2流路32と連通する。
なお、ステム21の下方向A2側が半球状に形成されているが、ダイヤフラム押え8の上方向A1側が半球状に形成されステム21の下方向A2側が平面に形成されていてもよい。
【0021】
上述のように、ケーシング2とアダプタ固定リング7は別体として形成されているため、ケーシング2に物理的な衝撃が発生した場合であっても、アダプタ固定リング7に伝わる影響を抑えることができ、流路の開閉への影響を抑えることができる。これにより物理的衝撃に対する弁体への影響をより低減させたバルブ装置1とすることができる。また、ネジ穴33において、アダプタ固定リング7及びケーシング2は互いに間隙73を有して配置されているため、ケーシング2に物理的な衝撃が発生した場合であっても、アダプタ固定リング7に伝わる影響をより小さくすることができる。これにより、流路の開閉への影響をより抑えることができ、物理的衝撃に対する弁体への影響をより低減させたバルブ装置1とすることができる。また、ステム21とダイヤフラム押え8が点接触により接続されているため、ケーシング2に物理的な衝撃が発生した場合であっても、ダイヤフラム押え8、アダプタ固定リング7、ひいてはダイヤフラム5への影響をより低減させることができる。また、上述のバルブ装置1は、幅方向の寸法を10mm以下のバルブ装置1に適用することができる。これにより、バルブ装置1の一方向の幅と高さとの比が大きく、ケーシング2に生じた衝撃が大きなモーメントとなってバルブボディ3に伝わる形状であっても、流路の開閉部分への影響を抑えることができるため、物理的衝撃に対する弁体への影響をより低減させたバルブ装置1とすることができる。
【0022】
図5は、本実施形態の変形例に係るバルブ装置10の一部を断面で示す全体図である。図6は、バルブ装置10のバルブボディ3のネジ穴33付近について示す拡大断面図である。この変形例のバルブ装置10では、ケーシング2が、バルブボディ3の上面3aと接触する保護部材50を更に有している他は、上述のバルブ装置1と同様であるため、重複する説明を省略する。
これらの図に示されるように、保護部材50は、ケーシングねじ部22の上部に螺合され、その状態でケーシングねじ部22がバルブボディ3のネジ穴33に螺合されることにより、バルブボディ3の上面3aに接触する。なお本変形例においては、保護部材50は、ケーシング2と別体として形成し、ケーシングねじ部22と螺合して一体化させることとしたが、保護部材50をケーシング2と一体的に形成することとしてもよい。ここで、不図示であるが、ケーシング2および保護部材50の幅方向長さは、バルブボディ3の幅方向長さ以下とすることができる。
【0023】
ケーシングねじ部22に保護部材50が設けられていない状態では、ケーシング2が物理的な衝撃を受けて曲げモーメントが作用すると、バルブボディ3のネジ穴33の開口端において、ケーシング2とバルブボディ3との間に応力が集中する。特に、ケーシング2およびバルブボディ3の幅方向長さが小さく、ケーシング2の高さが相対的大きくなると、応力集中によってはバルブボディ3の一部が破損してしまう恐れもある。本変形例においては、保護部材50により、ケーシング2において生じた曲げモーメントをバルブボディ3の上面3aで受けることにより、応力を分散させることができる。
また、ダブルナット構造を採用した場合、ケーシング2のバルブボディ3に対するねじ込み位置を微調整することができる。これにより、バルブ開時のダイヤフラムの変位量が変化するため、バルブ開時のガスの流量を微調整しながら組み立てることが可能になる。
【0024】
図7は、保護部材50の上面図である。図8は、図7の保護部材における3C-3C線での断面図である。図7および図8に示すように、保護部材50は、金属製の円環状部材からなるとともに、上下対称な形状を有する。保護部材50の内周には、ケーシングねじ部22に螺合する保護部材ねじ部50aが形成されている。また、保護部材50の両端面は、平面からなる当接端面50tとなっており、後述するように、当接端面50tの一方がバルブボディ3の上面3aに当接可能となっている。当接端面50tは平面で構成されるため、当接端面50tは全面的にバルブボディ3の上面3aに当接可能である。保護部材50の側面には図示しない丸穴が開けられており、引掛ピンスパナを用いて回すことができる。
図7および図8に示される保護部材50には、端面円周角部に面取りが施されているが、当接端面50tの面積を大きくし、上面3aと当接する面積を大きくするために、面取りの大きさは小さい方が好ましい。
【0025】
本実施形態では、保護部材50を円環状としたが、環状であれば外形は円形に限定されない。ただし、保護部材50の外輪郭がバルブボディ3の上面3aの内に収まっていることが望ましい。
また、保護部材50を螺合により固定する構成を採用したが、かしめや溶接等の他の代替手段を採用することもできる。
【0026】
上記実施形態では、流体制御装置として複数の流路ブロック200にバルブ装置を搭載したものを例示したが、分割タイプの流路ブロック200以外にも、一体型の流路ブロックや流路プレートに対しても本発明のバルブ装置は適用可能である。
【0027】
上記実施形態では、本発明のバルブ装置としてアクチュエータを圧縮エア等により自動開閉するものを例示したが、これに限定されるわけではなく、本発明は手動弁にも適用可能である。
【0028】
次に、図10を参照して、上記した流体制御装置の適用例について説明する。
図10に示す半導体製造装置1000は、ALD法による半導体製造プロセスを実行するための装置であり、300はプロセスガス供給源、400はガスボックス、510はタンク、600は制御部、700は処理チャンバ、800は排気ポンプ、900は開閉バルブを示している。
ALD法による半導体製造プロセスでは、処理ガスの流量を精密に調整する必要があるとともに、基板の大口径化により、処理ガスの流量をある程度確保する必要もある。
ガスボックス400は、正確に計量したプロセスガスを処理チャンバ700に供給するために、開閉バルブ、レギュレータ、マスフローコントローラ等の各種の流体機器を集積化してボックスに収容した上記の流体制御装置を内蔵している。
タンク510は、ガスボックス400から供給される処理ガスを一時的に貯留するバッファとして機能する。
開閉バルブ900は、ガスボックス400で計量されたガスの流量を制御する。
制御部600は、開閉バルブ900を制御して流量制御を実行する。
処理チャンバ700は、ALD法による基板への膜形成のための密閉処理空間を提供する。
排気ポンプ800は、処理チャンバ700内を真空引きする。
【0029】
上記適用例では、流体制御装置1をALD法による半導体製造プロセスに用いる場合について例示したが、これに限定されるわけではなく、本発明は、例えば原子層エッチング法(ALE:Atomic Layer Etching 法)等、精密な流量調整が必要なあらゆる対象に適用可能である。
【符号の説明】
【0030】
1,10 :バルブ装置
2 :ケーシング
3 :バルブボディ
3a :上面
3b :底面
5 :ダイヤフラム
6 :押えアダプタ
7 :アダプタ固定リング
8 :ダイヤフラム押え
21 :ステム
22 :ケーシングねじ部
24 :Oリング
31 :第1流路
31a :保持部
32 :第2流路
33 :ネジ穴
34 :貫通孔
35 :オリフィス体
36 :開口
41 :バルブシート
42 :インナーディスク
50 :保護部材
50a :保護部材ねじ部
50t :当接端面
71 :リングねじ部
72 :溝
73 :間隙
110A :開閉弁
110B :レギュレータ
110C :プレッシャーゲージ
110D :開閉弁
110E :マスフローコントローラ
200 :流路ブロック
310 :導入管
400 :ガスボックス
500 :レール部材
510 :タンク
600 :制御部
700 :処理チャンバ
800 :排気ポンプ
900 :開閉バルブ
1000 :半導体製造装置
A1 :上方向
A2 :下方向
B1,B2:矢印
BS :ベースプレート
G1,G2:長手方向
W1,W2:幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10