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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 7/02 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
F24C7/02 340J
F24C7/02 315E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021156053
(22)【出願日】2021-09-24
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】500201602
【氏名又は名称】シロカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一威
【審査官】武市 匡紘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-054250(JP,A)
【文献】特開平07-217901(JP,A)
【文献】特開平05-089957(JP,A)
【文献】特開平10-096517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納庫内にマイクロ波を放射することにより前記収納庫内に配置された調理対象物を加熱する加熱調理器であって、
マイクロ波を発生する発生部と、
前記調理対象物の種類を指定する指定部と、
前記発生部からのマイクロ波出力を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記調理対象物の解凍を行う解凍モードにおいて、第1デューティ比により、前記発生部の定格マイクロ波出力最低値の第1間欠出力を行い、前記第1間欠出力の後、前記第1間欠出力と周期が同一で前記第1デューティ比より小さい第2デューティ比により、前記定格マイクロ波出力最低値の第2間欠出力を行うように、前記マイクロ波出力を制御するように構成され
前記定格マイクロ波出力最低値は、300Wであり、
前記指定部により指定された前記調理対象物の種類が刺身である場合、前記制御部は、前記第1間欠出力によるマイクロ波出力が150W相当となるように前記第1デューティ比を決定し、前記第2間欠出力によるマイクロ波出力が100W相当もしくは90W相当となるように前記第2デューティ比を決定し、
前記指定部により指定された前記調理対象物の種類が刺身ではない場合、前記制御部は、前記第1間欠出力によるマイクロ波出力が200W相当となるように前記第1デューティ比を決定し、前記第2間欠出力によるマイクロ波出力が100W相当となるように前記第2デューティ比を決定する、
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記指定部は、前記調理対象物の重量を更に指定するように構成され、
前記制御部は、前記第1間欠出力のサイクル継続時間および前記第2間欠出力のサイクル継続時間、前記指定部により指定された前記調理対象物の重量に応じて決定る、
ことを特徴とする請求項に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記指定部により指定された前記調理対象物の重量をM、
前記重量Mに対する係数を、α1、α2、β1、β2、
前記第1間欠出力のサイクル継続時間をT1、
前記第2間欠出力のサイクル継続時間をT2とすると、
T1は、α1・M+β1で表され、
T2は、α2・M+β2で表される、
ことを特徴とする請求項に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記係数α1、α2、β1、β2は、前記指定部により指定された前記調理対象物の種類に応じた値をもつ、ことを特徴とする請求項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記指定部は、前記調理対象物の解凍の仕上がり強さを更に指定するように構成され、
前記制御部は、前記指定部により指定された前記仕上がり強さに応じて、前記第1間欠出力のサイクル継続時間T1および前記第2間欠出力のサイクル継続時間T2を調整する、
ことを特徴とする請求項に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波加熱により調理対象物を加熱する電子レンジ等の加熱調理器には、冷凍された調理対象物の解凍を行うための解凍機能を有するものがある。解凍モードにおいては、対象物の過加熱を防止すること、および、解凍むらを防止すること(均一な解凍を行うこと)が求められる。
【0003】
例えば特許文献1では、過加熱を防止するため、マイクロ波出力を低い値に設定し、かつ、マイクロ波出力を間欠的にオンオフすることによりトータル時間における平均出力を弱める、という制御が行われる。また、特許文献1では、解凍むらを防止するため、赤外線センサを用いた対象物の温度分布の検出結果、および、温度センサを用いた庫内温度の検出結果に応じて、マイクロ波出力を制御することも行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-54250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
対象物の温度分布を検出し、それに応じてマイクロ波出力を制御する方式によれば、均一な解凍が実現されうる。しかし、このような方式では、温度分布を逐次モニタしながらマイクロ波出力を制御するため、多数のセンサ類が必要になるなど装置構成が複雑化し、コストが増加する。また、そのようなセンサ類を用いない解凍制御の技術も存在するが、専用の解凍トレイの使用が必須になるなどの制約があった。
【0006】
本発明は、装置構成を複雑化することなく解凍機能を実現可能な加熱調理器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によれば、収納庫内にマイクロ波を放射することにより前記収納庫内に配置された調理対象物を加熱する加熱調理器であって、マイクロ波を発生する発生部と、前記調理対象物の種類を指定する指定部と、前記発生部からのマイクロ波出力を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記調理対象物の解凍を行う解凍モードにおいて、第1デューティ比により、前記発生部の定格マイクロ波出力最低値の第1間欠出力を行い、前記第1間欠出力の後、前記第1間欠出力と周期が同一で前記第1デューティ比より小さい第2デューティ比により、前記定格マイクロ波出力最低値の第2間欠出力を行うように、前記マイクロ波出力を制御するように構成され前記定格マイクロ波出力最低値は、300Wであり、前記指定部により指定された前記調理対象物の種類が刺身である場合、前記制御部は、前記第1間欠出力によるマイクロ波出力が150W相当となるように前記第1デューティ比を決定し、前記第2間欠出力によるマイクロ波出力が100W相当もしくは90W相当となるように前記第2デューティ比を決定し、前記指定部により指定された前記調理対象物の種類が刺身ではない場合、前記制御部は、前記第1間欠出力によるマイクロ波出力が200W相当となるように前記第1デューティ比を決定し、前記第2間欠出力によるマイクロ波出力が100W相当となるように前記第2デューティ比を決定する、ことを特徴とする加熱調理器が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、装置構成を複雑化することなく解凍機能を実現可能な加熱調理器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】加熱調理器の要部断面図。
図2】制御系の機能ブロック図。
図3】操作パネルの外観構成例を示す図。
図4】解凍モードにおける加熱運転を説明する図。
図5】解凍モードにおける加熱運転の制御手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
図1は、実施形態における加熱調理器1の要部断面図である。加熱調理器1は、収納庫内にマイクロ波を放射することにより収納庫内に配置された調理対象物を加熱する、いわゆる電子レンジでありうる。加熱調理器1は、電源2と、マグネトロン3と、導波管4と、調理対象物である食品6を収納する収納庫5とを備える。
【0012】
電源2は、トランス方式あるいはインバータ方式によりマグネトロン3に所定の電圧を印加する。マイクロ波を発生する発生部であるマグネトロン3は、電源2により所定の電圧が印加されると、2.45GHzのマイクロ波を発生する。マグネトロン3から発生したマイクロ波は、導波管4によって収納庫5内(庫内)に導かれる。
【0013】
収納庫5は、不図示の前面扉を閉めることによって密閉空間とされる。収納庫5には食品6が載置されるトレイ7が配置され、トレイ7の下には、導波管4によって導かれたマイクロ波を放射し、かつそれを収納庫5内に撹拌するための回転アンテナ8が配置されている。回転アンテナ8はアンテナモータ9によって回転駆動されうる。なお、導波管4および回転アンテナ8の配置位置はこれに限定されず、例えば導波管4および回転アンテナ8が収納庫5の上方に配置される構成であってもよい。また、回転アンテナ8を採用するかわりに、トレイ7をターンテーブルとし、マイクロ波の放射中、ターンテーブルが回転駆動されるようにしてもよい。
【0014】
また、加熱調理器1には制御ボード10が配置される。制御ボード10には、加熱調理器1の動作を統括制御する制御部(後述)が実装されている。制御部は、マイクロ波出力の強弱の選択と動作時間とを組み合わせる手動運転と、加熱メニューに応じた自動運転とを行いうる。自動運転では、庫内温度、湿度、食品6の重量、赤外線発生状況などをモニタしながら動作しうる。したがって、加熱調理器1には、庫内温度を検出する温度センサ、食品6から発生する水蒸気によって高まる湿度を検出する湿度センサ、食品の重さを検出する重量センサ、食品6から発生する赤外線量を検出する赤外線センサ等が適宜配置されうる。この他にも、加熱調理器1には、前面扉の開閉検知機構、庫内灯、庫内冷却ファン、報知部等も組み込まれうる。しかし、これらはいずれも、従来から一般的に使用されているものであり、かつ本発明に特段関係するものではないので、ここではそれらの詳細な構成やそれらを用いた処理の説明は省略する。
【0015】
本実施形態において、マグネトロン3(発生部)の定格マイクロ波出力(定格高周波出力、いわゆる「レンジ出力」)は、例えば、900W、600W、500W、300Wであり、これらを切り替えて使用することができる。これらは、マグネトロン3を連続発振させることができる出力値である。定格マイクロ波出力最低値である300Wより低い出力での加熱を行う場合には、300Wの間欠出力によってそれを実現する。これは、連続出力を300Wより低くするとマグネトロン3が発振しなくなるためである。
【0016】
図2には、制御ボード10に実装される制御系の機能ブロック図が示されている。制御ボード10には、制御部20、マグネトロンドライバ21、モータドライバ22、表示コントローラ25が実装されうる。制御部20は、プログラムやデータを記憶するメモリとCPUを含む汎用コンピュータによって構成されうる。あるいは、制御部20は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の専用デバイスによって実現されてもよい。マグネトロンドライバ21は、マグネトロン3を駆動する駆動回路を含み、この駆動回路は、高周波トランスおよび/またはインバータ回路を含みうる。なお、そのようなマグネトロンドライバ21は電源2に組み込まれてもよい。モータドライバ22は、アンテナモータ9を駆動する駆動回路を含みうる。表示コントローラ25は、表示部24の表示を制御する。例えば、前面扉には操作パネル30が配設されており、そこに表示部24が組み込まれている。表示部24は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)であり、その場合、表示コントローラ25は、LCD駆動回路を含みうる。また、操作パネル30には操作部23が配置されており、操作部23からの信号が制御部20に入力される。
【0017】
図3には、操作パネル30の外観構成例を示す図が示されている。操作部23(指定部)は、複数の操作キー(操作ボタン)を含みうる。具体的には、操作部23は、モードキー31、時間・重量キー32、出力切替キー33、オートメニューキー34、仕上がりキー35、スタートキー36、取消キー37を含みうる。モードキー31は、食品の解凍を行う「解凍モード」を指定する解凍キー、ご飯のあたためを行う「ごはんあたためモード」を指定するごはんキー、飲み物のあたためを行う「飲み物あたためモード」を指定する飲み物キーを含みうる。時間・重量キー32は、加熱運転の時間を10分単位で指定する10分キー、加熱運転の時間を1分単位で指定する1分キー、加熱運転の時間を10秒単位で指定する10秒キーを含みうる。一例において、1分キーは、食品6の重量を100g単位で指定するキーの役割も果たし、また、10秒キーは、食品6の重量を10g単位で指定するキーの役割も果たす。
【0018】
出力切替キー33は、マイクロ波出力を、900W、600W、500W、300W、200W(相当)、100W(相当)等のうちのいずれかに切り替えるためのキーである。オートメニューキー34は、自動運転のためのメニュー(食品の種類)を指定するためのキーである。仕上がりキー35は、自動運転時における加熱の強弱あるいは加熱の時間を調節するためのキーである。スタートキー36は、加熱の開始を指示するためのキーである。取消キー37は、操作の取り消し、または、加熱運転の中止を指示するためのキーである。
【0019】
表示部24は、操作部23を介した操作に応じた設定内容、加熱調理器1の状態等を表示する。なお、操作部23は、表示部24に重ねて構成されるタッチパネルによって構成されてもよい。
【0020】
次に、図4を参照して、本実施形態における解凍モードにおける加熱運転について説明する。
【0021】
解凍モードにおいては、定格マイクロ波出力の最低値(300W)であっても、その連続運転では出力が強すぎて解凍には適さない。そのため、解凍モードにおいては、定格マイクロ波出力最低値(300W)の間欠出力を行うことによって、トータル時間における平均のマイクロ波出力が弱められる。
【0022】
図4(a)は、200W相当のマイクロ波出力を実現する間欠動作の例を示している。この例では、1サイクルを29秒とし、そのうちのはじめの20秒を300Wのオン、続く9秒をオフ、としている。なお、1サイクルを29秒としている理由は、ここでは回転アンテナ8の回転数が30rpmであることが想定されており、1サイクルをその回転周期と非同期とするためである。この場合、デューティ比をDとすると、1サイクルあたりの平均出力は、
300・D=300・(20秒/29秒)
≒207W
となり、これを200W相当としうる。
【0023】
図4(b)は、100W相当のマイクロ波出力を実現する間欠動作の例を示している。この例では、1サイクル(29秒)のうちのはじめの10秒を300Wのオン、続く19秒をオフ、としている。この場合の、1サイクルあたりの平均出力は、
300・D=300・(10秒/29秒)
≒103W
となり、これを100W相当としうる。
【0024】
同様にして、その他の平均出力の間欠動作も実現可能である。例えば、150W相当のマイクロ波出力を実現する場合には、1サイクル(29秒)のうちのはじめの15秒を300Wのオン、続く14秒をオフ、とする。この場合、1サイクルあたりの平均出力は、
300・D=300・(14秒/29秒)
≒155W
となり、これを150W相当としうる。
【0025】
また、90W相当のマイクロ波出力を実現する場合には、1サイクル(29秒)のうちのはじめの9秒を300Wのオン、続く20秒をオフ、とする。この場合、1サイクルあたりの平均出力は、
300・D=300・(9秒/29秒)
≒93W
となり、これを90W相当としうる。
なお、上記のマイクロ波出力を決定するための具体的な数値および手順はあくまで一例にすぎず、その他の数値および手順が適用されてもよい。
【0026】
本実施形態では、定格マイクロ波出力最低値の第1間欠出力と、この第1間欠出力と周期が同一でデューティ比が異なる、定格マイクロ波出力最低値の第2間欠出力とを組み合わせたハイブリッド制御を行う。このようなハイブリッド制御によれば、単一周期の間欠出力によるものよりきめ細かい出力制御を行うことができ、例えば過加熱の防止の点で有利である。
【0027】
図5には、制御部20によって実行される、解凍モードにおける加熱運転の制御手順を示すフローチャートが示されている。この解凍モードは、モードキー31の解凍キーが押下されたことによって開始される。
【0028】
ステップS1では、制御部20は、操作部23からの操作信号に応じて、解凍する対象物である食品6の種類の設定を行う。一例において、食品の種類には、「ひき肉・薄切り肉」、「肉(の塊)・魚」、「刺身」の3種類が想定されているものとする。ユーザは、例えば、解凍キーを所定時間内に押下した回数によって食品6の種類を指定することができる。例えば、解凍キーの一度押しされると「ひき肉・薄切り肉」が選択され、二度押しされると「肉(の塊)・魚」が指定され、三度押しされると「刺身」が指定される。指定された種類を示すデータは、種類設定データとしてメモリに記憶される。
【0029】
ステップS2では、制御部20は、食品6の重量の設定を行う。一例において、制御部20は、食品6の重量を所定のデフォルト値(例えば100g)に設定し、ユーザは、例えば、時間・重量キー32を介して該重量の変更操作を行うことができる。指定された重量を示すデータは重量設定データとしてメモリに記憶される。
【0030】
ステップS3では、制御部20は、加熱の仕上がり強さの設定を行う。本実施形態では、加熱調理器1は、例えば、弱・中(標準)・強1・強2の、4段階の仕上がり強さを有しうる。ただし、仕上がり強さの段階数は特定の数に限定されるものではなく、段階数は4段階未満でもよいし、4段階以上であってもよく、あるいは、このような段階はなくてもよい。制御部20は、仕上がり強さとして中(標準)を所定のデフォルト値として設定し、ユーザは、例えば、仕上がりキー35を操作することにより仕上がり強さを変更することができる。指定された仕上がり強さを示すデータは仕上がり強さ設定データとしてメモリに記憶される。
【0031】
ステップS4では、制御部20は、第1間欠出力のデューティ比である第1デューティ比D1と、第2間欠出力のデューティ比である第2デューティ比D2とを決定する。以下に、デューティ比の決定方法を例示する。
【0032】
例えば、定格マイクロ波出力最低値が300Wの場合において、制御部20は、図4の例のように、第1デューティ比D1を、第1間欠出力によるマイクロ波出力が200W相当になるように決定し、第2デューティ比D2を、第2間欠出力によるマイクロ波出力が100W相当になるように決定する。あるいは、制御部20は、第1デューティ比D1を、第1間欠出力によるマイクロ波出力が150W相当になるように決定し、第2デューティ比D2を、第2間欠出力によるマイクロ波出力が100W相当もしくは90W相当になるように決定してもよい。
【0033】
あるいは、ステップS1で設定(指定)された食品の種類が「刺身」である場合、制御部20は、第1デューティ比D1を、第1間欠出力によるマイクロ波出力が150W相当となるように決定し、第2デューティ比D2を、第2間欠出力によるマイクロ波出力が100W相当もしくは90W相当となるように決定する。一方、ステップS1で設定(指定)された食品の種類が「刺身」ではない場合、制御部20は、第1デューティ比D1を、第1間欠出力によるマイクロ波出力が200W相当となるように決定し、第2デューティ比を、第2間欠出力によるマイクロ波出力が100W相当もしくは90W相当となるように決定する。すなわち、食品が刺身である場合には、それ以外の種類よりも更にマイクロ波出力が弱められる。これにより、刺身の過加熱が防止されうる。
【0034】
ステップS5において、制御部20は、定格マイクロ波出力を最低値である300Wに設定する。
【0035】
ステップS6で、制御部20は、取消キー37が押下されたかを確認する。ここで取消キー37の押下が検知された場合、解凍モードを終了する。取消キー37の押下が検知されなければ、処理はステップS7に進む。
【0036】
ステップS7では、制御部20は、スタートキー36が押下されたかを確認する。ここで、スタートキー36の押下が検知されなければ、処理はステップS6に戻る。スタートキー36の押下が検知された場合、処理はステップS8に進む。
【0037】
ステップS8では、制御部20は、ステップS4で決定された第1デューティ比D1による第1間欠出力を行う。その後、ステップS9において、制御部20は、ステップS4で決定された第2デューティ比D2による第2間欠出力を行う。
【0038】
本実施形態における解凍モードにおける加熱運転は以上のとおりである。ここで、ステップS4に関して説明した例によれば、ステップS4で決定される第1デューティ比D1と第2デューティ比D2との関係は、
D1>D2
という関係にある。この関係によれば、ステップS9での第2間欠出力でのマイクロ波出力(例えば100W相当)よりも、ステップS8での第1間欠出力でのマイクロ波出力(例えば200W相当)の方が高い値に設定されるため、後半では、前半で温められた食品の熱で周りの氷を溶かしながら、低い出力で食品を徐々に解凍することができる。
【0039】
以下では、ステップS8で行われる第1間欠出力およびステップS9で行われる第2間欠出力のサイクル継続時間について説明する。サイクル継続時間とは、間欠出力のサイクルが繰り返し実行されるトータル時間をいう。
【0040】
本実施形態では、第1間欠出力のサイクル継続時間および第2間欠出力のサイクル継続時間は、食品の重量に応じて決定されうる。例えば、第1間欠出力のサイクル継続時間および第2間欠出力のサイクル継続時間は、ステップS2で指定された食品の重量を含む多項式に従って決定される。
【0041】
ステップS2で指定された食品の重量をM、第1間欠出力のサイクル継続時間をT1、第2間欠出力のサイクル継続時間をT2とすると、T1およびT2は次式により表される。
【0042】
T1=α1・M+β1、
T2=α2・M+β2
ただし、α1、α2、β1、β2はそれぞれ、重量Mに対する係数である。
【0043】
係数α1、α2、β1、β2は、ステップS1で指定された食品の種類に応じた値を持ちうる。以下に、食品の種類に応じた各係数の例を示す。ただし、これらの係数の値は一例にすぎず、これらの値に限定されるものではない。
【0044】
(1)ひき肉・薄切り肉(200W相当+100W相当):
α1=0.3、β1=-30、α2=0.75、β2=120、
(2)肉(の塊)・魚(200W相当+100W相当):
α1=0.4、β1=-20、α2=0.6、β2=90、
(3)刺身(150W相当+90W相当):
α1=0.3、β1=0、α2=1.0、β2=100
【0045】
具体的な一例を示すと、食品の種類が「ひき肉・薄切り肉」、食品の重量Mが200gに設定された場合、解凍のための加熱運転時間Tは以下のようになる。
【0046】
T=第1間欠出力(200W相当)のサイクル継続時間T1
+第2間欠出力(100W相当)のサイクル継続時間
=(0.3×200g-30)+(0.75×200g+120)
=300秒
【0047】
また、食品の種類が「刺身」、食品の重量Mが200gに設定された場合、解凍にかかる加熱運転時間Tは以下のようになる。
【0048】
T=第1間欠出力(150W相当)のサイクル継続時間T1
+第2間欠出力(90W相当)のサイクル継続時間T2
=(0.3×200g)+(1.0×200g+100)
=30秒
【0049】
更に、制御部20は、ステップS3で指定された仕上がり強さに応じて、第1間欠出力のサイクル継続時間T1および第2間欠出力のサイクル継続時間T2を調整してもよい。例えば、仕上がり強さに応じた係数が予め設定されている。仕上がり強さごとの係数は、例えば以下のようなものである。ただし、これらの係数の値は一例にすぎず、これらの値に限定されるものではない。また、上記の重量に関する数値も一例にすぎず、その他の数値が適用されてもよい。
【0050】
弱: 0.9、
中(標準):1、
強1: 1.1、
強2: 1.2
【0051】
制御部20は、解凍のための加熱運転時間Tに上記の仕上がり強さに応じた係数を乗じる。例えば、仕上がり強さが「弱」の場合、加熱運転時間は0.9×Tに調整される。0.9×Tとは、例えば、各サイクルのオン時間およびオフ時間それぞれが0.9倍されることを意味する。同様に、仕上がり強さが「強1」の場合、加熱運転時間は1.1×Tに調整され、仕上がり強さが「強2」の場合、加熱運転時間は1.2×Tに調整される。
【0052】
このように、ユーザによって指定された仕上がり強さによって加熱運転時間が調整される。これにより、ユーザの経験に基づく解凍の仕上がり具合の予測を、加熱運転時間に反映することが可能になる。
【0053】
以上説明した実施形態によれば、解凍の仕上がり具合を損なわず、また、装置構成を複雑化することなくコストの点で有利な解凍機能が実現される。
【0054】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1:加熱調理器、2:電源、3:マグネトロン、4:導波管、5:収納庫、6:食品、7:トレイ、8:回転アンテナ、9:アンテナモータ
【要約】
【課題】装置構成を複雑化することなく解凍機能を実現可能な加熱調理器を提供する。
【解決手段】加熱調理器は、マイクロ波を発生する発生部と、前記発生部からのマイクロ波出力を制御する制御部とを備える。前記制御部は、調理対象物を解凍する解凍モードにおいて、前記発生部の定格マイクロ波出力最低値の第1間欠出力と、前記第1間欠出力と周期が同一でデューティ比が異なる、前記定格マイクロ波出力最低値の第2間欠出力との組み合わせにより、前記マイクロ波出力を制御する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5