(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】給餌装置
(51)【国際特許分類】
A01K 39/012 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
A01K39/012 B
(21)【出願番号】P 2021553224
(86)(22)【出願日】2019-10-24
(86)【国際出願番号】 JP2019041665
(87)【国際公開番号】W WO2021079454
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390030661
【氏名又は名称】株式会社ハイテム
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】森 英司
(72)【発明者】
【氏名】川島 英嗣
(72)【発明者】
【氏名】安田 幸太郎
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-169010(JP,A)
【文献】実開昭57-161351(JP,U)
【文献】実開昭61-4567(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第106212307(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 5/00 - 9/00
39/00 -39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
餌用のトラフ内を摺動させる給餌装置であって、
正面壁と、
下端に第一凹部が形成されている第一背面壁と、
該第一背面壁に重ね合わされていると共に、前記第一背面壁に対して昇降する第一昇降パネルと、
前記正面壁のある側とは反対側で前記第一背面壁と離隔しており、下端に第二凹部が形成されている第二背面壁と、
該第二背面壁に重ね合わされていると共に、前記第二背面壁に対して昇降する第二昇降パネルと、
前記正面壁と前記第一背面壁との間の餌貯留スペースに餌を導入するために、上方に開放している導入口と、を備え、
前記第一背面壁に対する前記第一昇降パネルの上昇に伴い、前記第一凹部の露出により第一開口が形成されると共に、
前記第二背面壁に対する前記第二昇降パネルの上昇に伴い、前記第二凹部の露出により第二開口が形成される
ことを特徴とする給餌装置。
【請求項2】
前記第一背面壁と前記第二背面壁との間の空間は、摺動方向に貫通している
ことを特徴とする請求項1に記載の給餌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養鶏施設においてケージ列に沿って配されるトラフにトリの餌を供給するための給餌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多数のケージで多数羽のトリを飼育する施設では、複数のケージが水平方向に並設されたケージ列が複数段に積層されている。各ケージ列の側面には、トリの餌を収容させる長いトラフが水平方向に配されている。トラフの内部にトリの餌を供給するために、従前より、トラフの内部を摺動させる給餌装置が使用されている。一般的な給餌装置は、上方に開放している導入口を有する餌貯留部と、貯留部の下部に形成された開口部を備えている。このような給餌装置では、給餌装置の上方に設けられたホッパまたはノズルから導入口を介して導入した餌を餌貯留部に溜め、その一部を開口部からトラフ内に排出する。
【0003】
トリが必要とする餌は、トリの成長過程によって異なる。そのため、本出願人も過去に、餌をトラフ内に排出させる開口の大きさを調整できる給餌装置を提案している(特許文献1参照)。
【0004】
ところで、近年、養鶏業者の間で、いつでも食べたいだけ自由に食べられるトリが大きく成長するとは限らない、という考えが浸透しつつある。これは、常に十分な餌を与えられているトリは、食べ飽きて摂食の意欲が減退する一方、餌が不足する時間を設けられたトリは摂食に貪欲となるため、総合的な摂食量が多くなって大きく成長する、という考え方である。そのため、このような考えに基づいてトリに餌を与えるために、トラフに供給する餌の量をより多様かつ精密に調整できる給餌装置が要請されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、トラフに供給する餌の量を多様かつ精密に調整できる給餌装置の提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる給餌装置は、
「餌用のトラフ内を摺動させる給餌装置であって、
正面壁と、
下端に第一凹部が形成されている第一背面壁と、
該第一背面壁に重ね合わされていると共に、前記第一背面壁に対して昇降する第一昇降パネルと、
前記正面壁のある側とは反対側で前記第一背面壁と離隔しており、下端に第二凹部が形成されている第二背面壁と、
該第二背面壁に重ね合わされていると共に、前記第二背面壁に対して昇降する第二昇降パネルと、
前記正面壁と前記第一背面壁との間の餌貯留スペースに餌を導入するために、上方に開放している導入口と、を備え、
前記第一背面壁に対する前記第一昇降パネルの上昇に伴い、前記第一凹部の露出により第一開口が形成されると共に、
前記第二背面壁に対する前記第二昇降パネルの上昇に伴い、前記第二凹部の露出により第二開口が形成される」ものである。
【0008】
本給餌装置は、第二背面壁をケージに対面させた状態で、トラフ内を摺動させて使用する。第一背面壁及び第二背面壁の下端には、それぞれ第一凹部及び第二凹部が形成されている。また、第一背面壁及び第二背面壁には、第一昇降パネル及び第二昇降パネルがそれぞれ重ね合わされている。正面壁と第一背面壁との間の空間が餌貯留スペースであり、ここに餌を導入するための導入口が上方に開放している。従って、第一凹部が第一昇降パネルで被覆されている状態で、ホッパやノズルを使用して上方から導入口に餌を導入することにより、餌貯留スペースに餌を溜めることができる。
【0009】
第一背面壁に対して第一昇降パネルを上昇させると、それまで第一昇降パネルで被覆されていた第一凹部が露出し、第一凹部とトラフの内表面との間に第一開口が形成される。そのため、餌貯留スペースに溜められていた餌は、第一背面壁と第二背面壁との間の空間に、第一開口を介して流出する。
【0010】
第二背面壁に対して第二昇降パネルを上昇させている場合は、第二凹部の露出により第二凹部とトラフの内表面との間に第二開口が形成されている。そのため、餌は第一背面壁と第二背面壁との間の空間から、第二開口を介してケージに近付くように流出する。この状態で給餌装置を移動させれば、ケージからごく近い位置に餌が供給されている状態となる。第二開口の大きさは、第二昇降パネルが昇降する高さによって変化させることができる。そのため、トラフにおいてケージ内のトリから近く食べやすい位置に、第二開口を介して供給される餌の量を調整することができ、十分に餌を食べられる飽食状態でトリを育てることができる。
【0011】
一方、第二凹部を第二昇降パネルが被覆していることにより第二開口が閉じている状態で給餌装置を移動させれば、トラフにおいて第二背面壁があった位置よりケージから遠い位置に餌が供給されている状態となる。このように第一開口のみを開けて餌を供給した場合は、第一開口及び第二開口の双方を開けて餌を供給した場合より、トラフにおいて餌が供給されているエリアが小さくなる。第一開口の大きさは、第一昇降パネルが昇降する高さによって変化させることができる。そのため、第一開口から供給される餌の量を調整することにより、餌を食べ尽くしてトリが飢餓状態となる制限期間を設けることも、飢餓状態にも飽食状態にもならない通常の状態でトリを育てることもできる。
【0012】
以上のように、本給餌装置では、第二開口の開閉と、第一開口及び第二開口それぞれの大きさの調整により、ケージからの距離が異なる位置ごとに、餌の量を調整することができるため、トラフへの餌の供給を多様かつ精密に調整することができる。
【0013】
本発明にかかる給餌装置は、上記構成に加え、
「前記第一背面壁と前記第二背面壁との間の空間は、摺動方向に貫通している」ものとすることができる。
【0014】
正面壁と第一背面壁との間の空間は、餌貯留スペースであることから、給餌装置の摺動方向で閉鎖されている。第二背面壁は第一背面壁と離隔している必要があるが、第一背面壁と第二背面壁との間の空間が、一部で閉鎖されるように両者が連結される構成も想到し得る。しかしながら、仮に、第一背面壁と第二背面壁との間の空間が摺動方向に閉鎖されているとすると、餌が残留しているトラフ内を給餌装置が移動する場合に、餌が給餌装置に堰き止められてトラフから溢れ出てしまうおそれがある。
【0015】
これに対し、本構成では、第一背面壁と第二背面壁との間の空間は摺動方向に貫通している。これにより、トラフに餌が残留していたとしても、給餌装置の移動に伴い餌は第一背面壁と第二背面壁との間の空間に流入するため、餌がトラフから溢れ出てしまうおそれを低減することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、トラフに供給する餌の量を多様かつ精密に調整できる給餌装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態である給餌装置の斜視図である。
【
図3】
図3(a)は第一昇降パネルが第一凹部を被覆している状態の第一背面壁の斜視図であり、
図3(b)は第一昇降パネルが上昇した状態の第一背面壁の斜視図である。
【
図4】
図4(a)は第二昇降パネルが第二凹部を被覆している状態の給餌装置を背面側から見た斜視図であり、
図4(b)は第二昇降パネルが上昇した状態の給餌装置を背面側から見た斜視図である。
【
図5】
図5(a)は第一凹部及び第二凹部が存在する部分で給餌装置を前後方向に切断した部分の断面図(第一開口及び第二開口が閉じている状態)をトラフと共に示した図であり、
図5(b)は同じ位置で切断した給餌装置の端面図(第一開口及び第二開口が開いている状態)をトラフと共に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の具体的な実施形態である給餌装置1について、図面を用いて説明する。以下では、ケージ90に対面している人が立つ側を正面と称し、ケージ90側を背面と称し、正面から背面に向かう方向を前後方向として説明する。また、前後方向に直交する方向がケージ90が延びる方向であり、給餌装置1の摺動方向である。
【0019】
この給餌装置1は、ケージ列に沿って水平に配されたトラフ70の内部を摺動させて使用する。トラフ70は、細長い長方形の底面73、底面73の正面側の端辺から延出して正面側に傾斜している前傾斜面72、前傾斜面72から上方に立ち上がっている前立設面71、底面73の背面側の端辺から延出して背面側に傾斜している後ろ傾斜面74、及び、後ろ傾斜面74から上方に立ち上がっている後ろ立設面75を備えている。後ろ傾斜面74の傾斜角度は、前傾斜面72の傾斜角度より小さい。また、後ろ立設面75の上端は、前立設面71の上端より高さが低い。ケージ90内で飼育されるトリは、ケージ90に設けられた開口(図示を省略)から後ろ立設面75を越えるように首を出し、トラフ70内の餌をついばむ。
【0020】
給餌装置1は、正面壁10、第一背面壁20、第一昇降パネル30、第二背面壁40、及び、第二昇降パネル50を、主な構成とする。
【0021】
正面壁10は、第一正面壁11と第二正面壁12とからなる。第一正面壁11は、細長い長方形の平板である。第二正面壁12は、第一正面壁11の下辺から下方に延出しており、第一正面壁11に対して屈曲している。第二正面壁12の傾斜角度は、トラフ70の前傾斜面72の傾斜角度と等しく設定されている。第二正面壁12の下辺の中間部には、浅い凹部19が形成されている。
【0022】
第一背面壁20は細長い平板であり、第一正面壁11と平行である。第一背面壁20の両端からは、正面壁10に向かって端面壁61aが延出しており、正面壁10と第一背面壁20との間の空間を閉鎖している。両方の端面壁61aの間で、正面壁10と第一背面壁20とは複数のスペーサ61bによって接合されている。スペーサ61bは、正面壁10及び第一背面壁20の双方に直交している平板であり、正面側の側辺が正面壁10に当接していると共に、背面側の側辺が第一背面壁20に当接している。
【0023】
第一背面壁20の高さは、第二正面壁12をトラフ70の前傾斜面72に当接させたとき、前傾斜面72と底面73との境界近くに第一背面壁20の下辺が達する高さに設定されている。第一背面壁20は、下辺に複数の第一凹部21を備えている。
【0024】
端面壁61aとこれに隣接するスペーサ61bは、それぞれの上端辺が連結プレート62で連結されている。また、端面壁61aと連結されていないスペーサ61bも、隣接するもの同士の上端辺が連結プレート62で連結されている。連結プレート62は、給餌装置1の移動を駆動する装置(図示しない)に給餌装置1を接続するためのハンガー69を取り付ける部分であると共に、正面壁10と第一背面壁20との接合強度をスペーサ61bと共に補強する部分である。
【0025】
正面壁10と第一背面壁20との間で、かつ、隣接する連結プレート62の間の空間は、スペーサ61bで区切られた餌貯留スペースS0であって、上方に開放する導入口65を有している。導入口65の縁において第一背面壁20の上辺からは、上縁片66が下方に傾斜しつつ短く延出している。上縁片66の先端では、のこぎりの歯のようにギザギザした歯部67が下方に向かって突出している。
【0026】
第一昇降パネル30は細長い長方形の平板であり、第一背面壁20と重ね合わされる。第一昇降パネル30の一方の端部には、一つのアーム部35が設けられている。アーム部35は細長い長方形の平板であり、第一昇降パネル30の延長面上にある。また、アーム部35は、上方に延出しつつ摺動方向における外方に向かって傾斜している。アーム部35の先端には、正面壁10側に向かって直角に延出したスライド片36が形成されている。このスライド片36の上面には、背面側に向かう矢じり状の突起部37が設けられている。
【0027】
アーム部35の先端近傍には、アーム部35の延びる方向に長い長孔38が貫設されている。また、第一昇降パネル30においても、長孔38と平行な方向に長い第一長孔31が複数貫設されている。
【0028】
第一背面壁20の一端では、一つの案内プレート25が連結プレート62から突設されている。案内プレート25は第一背面壁20に平行な平板であり、上方に延出しつつ摺動方向における外方に向かって傾斜している。第一背面壁20に第一昇降パネル30を重ね合わせた状態では、案内プレート25はアーム部35と平行となる。案内プレート25には、孔部28が一つ貫設されている。案内プレート25の上辺からは、調整片26が正面壁10側に向かって直角に延出している。調整片26の先端近傍には、複数の歯を有するラック部27が形成されている。ラック部27の歯は、スライド片36の突起部37と噛み合うものである。
【0029】
案内プレート25が突設されている連結プレート62には、案内プレート25の基部に沿って、摺動方向における外方に開口したスリット64が形成されている。このような構成により、第一背面壁20に第一昇降パネル30を重ね合わせた状態で、アーム部35がスリット64に挿入されるように第一昇降パネル30を移動させると(
図2における図示、矢印方向)、アーム部35が案内プレート25に当接する。これと共に、スライド片36が調整片26に下方から当接し、孔部28が長孔38に連通する。
【0030】
そして、第一背面壁20の下辺と第一昇降パネル30の下辺とが一致した状態で、第一昇降パネル30の第一長孔31の上端に挿通したピン22を第一背面壁20に固定する。このようにすることにより、第一昇降パネル30が昇降可能に第一背面壁20に一体化される。つまり、アーム部35を案内プレート25に当接させつつ引き上げると、第一昇降パネル30は第一長孔31内でピン22を相対的に移動させつつ、第一長孔31の延びる斜め方向に上昇する。第一昇降パネル30の昇降に伴いアーム部35と共に移動する突起部37は、ラック部27の歯の何れかと噛み合う。ラック部27において最も高い位置にある歯と突起部37が噛み合ったとき、孔部28は長孔38の下端で連通し、ラック部27において最も低い位置にある歯と突起部37が噛み合ったとき、孔部28は長孔38の上端で連通する。
【0031】
第二背面壁40は細長い平板であり、下辺に沿って複数の第二凹部41が形成されている。第二背面壁40の両端は、それぞれ連結バー60で正面壁10に連結されている。連結バー60の長さは、第一背面壁20と第二背面壁40との間に、トラフ70の底部の幅長さ程度の距離が空くように設定されている。また、連結バー60は、第二背面壁40と正面壁10とを、それぞれの上部のみで連結している。そのため、第一背面壁20と第二背面壁40との間には、摺動方向に貫通した空間が形成されている。
【0032】
第二背面壁40において第二凹部41がない部分の高さは、第二正面壁12をトラフ70の前傾斜面72に当接させたとき、底面73と後ろ傾斜面74との境界近くに第二背面壁40の下辺が達する高さに設定されている。また、第二背面壁40において第二凹部41がない部分の下辺からは、背面側に向かって下端片45が短く延出している。下端片45は上方に向かって傾斜しており、その傾斜角度はトラフ70の後ろ傾斜面74の傾斜角度と等しく設定されている。
【0033】
第二背面壁40には、背面側から第二昇降パネル50が重ね合わせられている。第二昇降パネル50には、上下方向に長い第二長孔51が複数貫設されている。そして、第二背面壁40には、第二長孔51と連通する位置にネジ孔42が設けられている。
【0034】
次に、上記構成の給餌装置1の使用方法を説明する。給餌装置1によってトラフ70内に餌を供給するに当たり、給餌装置1をトラフ70の内部に配置する。このとき、第二正面壁12をトラフ70の前傾斜面72に当接させ、下端片45をトラフ70の後ろ傾斜面74に当接させると、第一背面壁20及び第二背面壁40はそれぞれトラフ70の底面73を挟むように立設する。
【0035】
トリの餌は、図示しないホッパまたはノズルを介して給餌装置1の導入口65に導入される。
図3(a)に示すように、第一背面壁20の下端と第一昇降パネル30の下端とが一致している状態では、正面壁10と第一背面壁20との間の空間は、給餌装置1とトラフ70との間に隙間がないことにより下端において閉じており、餌貯留スペースS0に餌が溜められる。
【0036】
上述したようにアーム部35を引き上げると、それまで第一背面壁20の第一凹部21を被覆していた第一昇降パネル30が上昇することにより、
図3(b)に示すように、第一凹部21が部分的に露出し、トラフ70の底面73との間に第一開口S1が形成される。これにより、餌貯留スペースS0から第一開口S1を介して底面73上に餌が供給される。第一昇降パネル30を上昇させる高さによって、第一開口S1の大きさを調整することができ、第一開口S1からトラフ70に供給される餌の量を調整することができる。
【0037】
第一昇降パネル30を上昇させる高さは、ラック部27における複数の歯の何れかと突起部37との噛み合いによって、段階的に調整することができる。調整後の第一昇降パネル30の高さは、案内プレート25の孔部28及びアーム部35の長孔38に通したボルト(図示を省略)をナットで留め付けることにより、固定することができる。複数の歯を有するラック部27は、第一昇降パネル30の昇降方向(上下方向)に対して傾斜している調整片26に形成されている。そのため、ラック部27の歯と噛み合う突起部37の移動距離に対して第一昇降パネル30が昇降する距離が小さく、第一開口S1の大きさを微調整することができる。
【0038】
加えて、アーム部35及び案内プレート25が外方に向かって斜めに傾斜しているため、上方からハンガー69に接続されて給餌装置1を移動させる装置や、導入口65に餌を導入するホッパまたはノズルを有する装置と、アーム部35及び案内プレート25が干渉することを避けることができる。
【0039】
上記のように第一開口S1からトラフ70上に餌が供給されたとき、
図4(a)に示すように、第二昇降パネル50の下辺が第二背面壁40の下辺と一致している状態であるとする。この状態で、給餌装置1をトラフ70内で移動させると、給餌装置1が去った後のトラフ70において餌が供給されているエリアは、底面73上に限られる。そのため、第一開口S1の大きさの調整によって、第一開口S1からトラフ70上に供給される餌の量を調整することにより、餌を食べ尽くしてトリが飢餓状態となる制限期間を設けることも、飢餓状態にならない通常の状態でトリを育てることもできる。
【0040】
一方、第一開口S1からトラフ70上に餌が供給された状態で、
図4(b)に示すように、第二背面壁40に対して第二昇降パネル50を上昇させたとする。そうすると、それまで第二背面壁40の第二凹部41を被覆していた第二昇降パネル50の上昇に伴い、第二凹部41が部分的に露出し、トラフ70の底面73との間に第二開口S2が形成される。そのため、底面73上にある餌は、第二開口S2を介して後ろ傾斜面74上に流出する。第二昇降パネル50を上昇させる高さによって、第二開口S2の大きさを調整することができ、第二開口S2を介して後ろ傾斜面74上に流出する餌の量を調整することができる。
【0041】
第二昇降パネル50は、第二長孔51に通したボルト52をネジ孔42に留め付けることにより、第二背面壁40に固定することができる。第二昇降パネル50を上昇させる高さは、第二長孔51に対するボルト52の位置によって連続的に調整することができる。
【0042】
第二開口S2が開いている状態で給餌装置1をトラフ70内で移動させると、給餌装置1が去った後のトラフ70では、底面73だけではなく後ろ傾斜面74上にも餌が供給されている状態となる。すなわち、ケージ90内のトリからごく近く、食べ易い位置に餌が供給された状態となる。第二開口S2の大きさの調整によって、第二開口S2からトラフ70上に供給される餌の量を調整することができ、十分に餌を食べられる飽食状態でトリを育てることができる。
【0043】
以上のように、本実施形態の給餌装置1では、第一背面壁20に対する第一昇降パネル30の昇降により第一開口S1が開閉するのに加え、第二背面壁40に対する第二昇降パネル50の昇降により第二開口S2が開閉する。そのため、第二開口S2を閉じた状態で、トラフ70の底面73上のみに餌を供給することも、第二開口S2を開けることによって、ケージ90内のトリから近く食べ易い位置に餌を供給することもできる。
【0044】
また、第一昇降パネル30が昇降する高さによって第一開口S1の大きさを調整できると共に、第二昇降パネル50が昇降する高さによって第二開口S2の大きさを調整することができる。そのため、トラフ70内に餌が供給される位置ごとに、餌の量を微調整することができる。
【0045】
第一背面壁20と第二背面壁40との間には、摺動方向に貫通する空間が形成されている。そのため、餌が多く残留しているトラフ70内で給餌装置1を摺動させたとしても、餌が給餌装置1に堰き止められることなく、第一背面壁20と第二背面壁40との間に流入させることができる。そのため、給餌装置1の移動によって、残留していた餌がトラフ70から溢れ出るおそれが低減されている。
【0046】
本実施形態の給餌装置1は、導入口65の縁に、斜め下方に短く延出した上縁片66を備えている。そのため、上方から導入口65を介して餌を導入して餌貯留スペースS0に餌を充填したとき、上縁片66の下方に餌のない空間が残る。加えて、上縁片66の先端には、ギザギザした歯部67が下方に向かって突出している。これらにより、餌貯留スペースS0に餌が密に充填されて流動性が低下するおそれが低減されている。
【0047】
また、第二正面壁12はトラフ70の前傾斜面72に当接させる面であるが、下辺に浅い凹部19が形成されている。そのため、正面壁10と第一背面壁20との間の空間の下端を閉鎖する面が、第二正面壁12である部分と前傾斜面72である部分とで、第二正面壁12の厚さ分の段差がある。この段差があることにより、給餌装置1をトラフ70内で摺動させる際、餌貯留スペースS0に充填された餌に振動が与えられるため、餌が密に充填されて流動性が低下するおそれが低減されている。
【0048】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0049】
例えば、導入口65の数、第一凹部21の数、第二凹部41の数、ラック部27における歯の数など、図示したものに限定されない。
【0050】
また、第一凹部21及び第二凹部41の形状として、それぞれ第一背面壁20及び第二背面壁40の下端が台形状に切り欠かれたものを図示により例示した。これに限定されず、第一凹部21及び第二凹部41を、それぞれ円弧状や三角形に切り欠かれた形状とすることができる。