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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】電源装置と電源装置を備える電動車両
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/262 20210101AFI20230111BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20230111BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20230111BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20230111BHJP
   H01M 10/6554 20140101ALI20230111BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20230111BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20230111BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20230111BHJP
【FI】
H01M50/262 E
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/6554
H01M50/204 401H
H01M50/209
H01M50/249
H01M50/262 M
H01M50/262 S
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020509608
(86)(22)【出願日】2018-11-16
(86)【国際出願番号】 JP2018042379
(87)【国際公開番号】W WO2019187315
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2018069573
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(72)【発明者】
【氏名】中原 千晴
(72)【発明者】
【氏名】内藤 公計
(72)【発明者】
【氏名】沖居 勇亮
【審査官】立木 林
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-171029(JP,A)
【文献】国際公開第2012/133708(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/034079(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/262
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/647
H01M 10/6554
H01M 50/209
H01M 50/249
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを積層してなる電池積層体と、
前記電池積層体の両端部に配設してなる一対のエンドプレートと、
前記電池積層体の前記電池セルの積層方向に伸びて、両端部を前記エンドプレートに連結してなるバインドバーと、
を備える電源装置であって、
前記電池積層体は、前記電池セルの積層方向に伸びる四角柱状であって、前記電池セルの電極を配置してなる電極面と、前記電極面の反対側の底面と、前記バインドバーを配置してなる対向側面とを周囲の4面として、前記底面を全幅で露出させており、
前記バインドバーと前記電池積層体の対向側面との間に、厚さ方向に弾性変形できる弾性シートが圧縮状態に配設されて、圧縮状態の前記弾性シートが前記電池積層体の前記対向側面と前記バインドバーの内面とを弾性的に加圧状態に保持されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載される電源装置であって、
前記弾性シートがゴム状弾性シートであることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項2に記載される電源装置であって、
前記弾性シートが発泡ゴムであることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載される電源装置であって、
前記弾性シートが、独立気泡の発泡体であることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載される電源装置であって、
前記電池積層体の底面に配置されて各々の前記電池セルを冷却する冷却プレートを備え、
前記冷却プレートが、前記電池積層体の底面の全幅に熱結合状態に配置されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載される電源装置であって、
前記バインドバーが前記電池セルの積層方向に伸びる凸条を有することを特徴とする電源装置。
【請求項7】
請求項6に記載される電源装置であって、
前記バインドバーが金属板で、プレス加工して前記凸条が設けられてなることを特徴とする電源装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載される電源装置であって、
前記バインドバーが、前記電池積層体の対向側面に配置される本体部と、前記本体部の両端に連結されて前記エンドプレートに固定される固定片とを備えており、
前記凸条が前記バインドバーの前記本体部から前記固定片に伸びて設けられてなることを特徴とする電源装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載される電源装置であって、
前記バインドバーが金属板で、前記電池積層体の対向側面に配置される本体部と、前記本体部の両端に連結されて前記エンドプレートに固定される固定片と、前記本体部と前記固定片の端縁に連結してなる隅板とを有し、
前記隅板が前記本体部の側縁に連続する金属板の本体隅板と、前記固定片の端縁に連続する金属板の固定隅板とからなり、前記本体隅板は前記本体部との境界で直角に折曲され、前記固定隅板は前記固定片との境界で直角に折曲されて、前記本体隅板と前記固定隅板は互いに積層状態で固着されて前記電池積層体の電極面との対向位置に配置されてなることを特徴とする。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載される電源装置を備える電動車両であって、
前記電源装置と、該電源装置から電力供給される走行用のモータと、該電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、該モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪とを備えることを特徴とする電源装置を備える電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルを積層した電源装置と、この電源装置を備えるハイブリッド自動車、燃料電池自動車、電気自動車、電動オートバイ等の電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電池セルを積層して電池積層体とする電源装置は、電池積層体の両端面にエンドプレートを配置し、両端に配置している一対のエンドプレートをバインドバーで連結している。この電源装置は、一対のエンドプレートで電池積層体を加圧状態に固定して、各々の電池セルが位置ずれしないように積層している。バインドバーは、エンドプレートが電池積層体を両端面から加圧するように、両端部をエンドプレートに連結している。バインドバーは、電池積層体の両端部を内側に折り曲げて折曲片を設け、この折曲片をエンドプレートの表面にネジ止めして固定している。この構造の電源装置は、電池積層体の両側面にエンドプレートを配置して、エンドプレートの両側にバインドバーを連結している(特許文献1参照)。
【0003】
この電源装置は、角形電池セルを積層状態で締結するために、アングル材のバインドバーで固定している。バインドバーは、積層状態の角形電池セルの両端面に配置されたエンドプレートに両端を固定している。特に角形電池セルが充放電を繰り返すことで膨張することを避けるためにも、バインドバーで強固に締結する必要がある。
【0004】
多数の電池セルを積層している電源装置は、充放電して電池セルが発熱して温度上昇するので、強制的に冷却する必要がある。電池積層体を冷却するために、電池積層体の下面に冷却プレートを配置する電源装置が開発されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-86887号公報
【文献】特開2012-94456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
下面に冷却プレートを配置する電源装置は、冷却プレートと電池セルとを好ましい状態で熱結合して、各々電池セルを効率よく冷却することが大切である。この状態を実現するには、電池積層体の下面にバインドバーを配置することなく、電池積層体底面の全幅に冷却プレートを熱結合する必要がある。さらに、冷却プレートに限らず、平面状のベースプレートに電池積層体を載せて保持する電源装置においても、好ましくは、電池積層体の電池積層体の底面を全幅で露出されることが大切である。それは、電池積層体底面の両側をバインドバーが局部的に保持すると、電池セルの底面に局部的に作用する圧力で変形する等の弊害が発生するからである。
【0007】
本発明は、従来のこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的の一は、積層された電池積層体の底面を全幅で露出させながら、電池セルの位置ずれを確実に阻止できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様の電源装置は、複数の電池セルを積層してなる電池積層体と、前記電池積層体の両端部に配設してなる一対のエンドプレートと、前記電池積層体の前記電池セルの積層方向に伸びて、両端部を前記エンドプレートに連結してなるバインドバーと、を備えている。前記電池積層体は、前記電池セルの積層方向に伸びる四角柱状であって、前記電池セルの電極を配置してなる電極面と、前記電極面の反対側の底面と、前記バインドバーを配置してなる対向側面とを周囲の4面として、底面を全幅で露出させている。電源装置は、前記バインドバーと前記電池積層体の対向側面との間に、厚さ方向に弾性変形できる弾性シートが圧縮状態に配設されており、圧縮状態の前記弾性シートが前記電池積層体の前記対向側面と前記バインドバーの内面とを弾性的に加圧状態に保持している。
【0009】
さらに、以上の態様の構成要素を備えた電源装置を備える電動車両は、前記電源装置と、該電源装置から電力供給される走行用のモータと、該電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、該モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪とを備えている。
【発明の効果】
【0010】
以上の電源装置は、積層された電池積層体の底面を全幅で露出させながら、電池セルの位置ずれを確実に阻止できる特徴がある。それは、以上の電源装置が、バインドバーと電池積層体の対向側面との間に、厚さ方向に弾性変形できる弾性シートを圧縮状態に配設して、圧縮状態の弾性シートを電池積層体の対向側面とバインドバーの内面とを弾性的に加圧状態に保持しているからである。さらに、電池積層体の底面を全幅で露出させながら、電池セルの位置ずれを防止できる構造は、たとえば、下面に冷却プレート等のベースプレートを配置するまでの組み立て工程においても、電池セルの位置ずれを防止して能率よく製造できる特長がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態にかかる電源装置の分解斜視図である。
図2】本発明の一実施の形態にかかる電源装置の一部拡大垂直横断面図である。
図3図1に示す電池積層体の電池セルの積層構造を示す分解斜視図である。
図4図1に示す電源装置のバインドバーの展開図である。
図5図1に示す電源装置のバインドバーの要部拡大斜視図である。
図6】エンジンとモータで走行するハイブリッドカーに電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
図7】モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、本発明の一つの着目点について説明する。多数の電池セルが積層された電池積層体の両側をバインドバーで締結しながら、電池積層体の底面を全幅で露出させる電源装置は、下面に冷却プレートを配置する構造においては、電池セルを好ましい状態で冷却プレートに熱結合させて、各々の電池セルを効率よく冷却でき、また冷却プレートに限らず、平面状のベースプレートに電池積層体を載せて保持する構造においては、電池積層体の底面の両側をバインドバーで局部的に保持することなく安定して支持できる。
【0013】
しかしながら、電池積層体は、バインドバーで締結して、電池セルの位置ずれを確実に阻止することも大切である。特に、車載用の電源装置においては、振動や衝撃に晒される頻度が多くなる。また多数の電池セルを積層している重い電池積層体は、セル数が多いほど、すなわち電池積層体が長くなるほど、振動等によって電池セルが上下に振動されて位置ずれしやすくなる弊害が発生する。さらに、電池積層体は、隣接する電池セルの間に絶縁材を挟んで積層しているが、電池セルが位置ずれして絶縁材が擦られて破損すると、絶縁破壊して大きなショート電池が流れる原因となる可能性がある。さらに電池セルが位置ずれして、物理的に損傷されて電気特性を悪化させ、あるいは寿命を短くする等の弊害となる可能性も考えられる。
【0014】
電池セルの位置ずれは、バインドバーで強く加圧するように締結して少なくできるが、この構造では、位置ずれを確実に阻止するのが難しいばかりでなく、電池セルを強く加圧することで他の弊害が発生する。たとえば、絶縁材が変形して絶縁状態を維持できなくなり、あるいは電池セルの内圧が上昇してガスが噴出する等の弊害が発生する。
【0015】
さらに、電池セルは充放電されて発熱する。特に大電流が放電、充電されると、発熱量も多くなる。電池セルが高温になると電池寿命を短くするため、効率的な冷却構造が求められる。このような冷却方式では、電池積層体を冷却プレート上に載置し、電池積層体の底面を冷却プレートの上面と熱結合状態に固定している。このような構造においては、電池積層体の底面と冷却プレートとを効率よく熱結合することが重要となる。
【0016】
しかしながら、従来の電源装置は、電池積層体の底面の一部にバインドバーが配置されるので、バインドバーが冷却プレートと電池積層体との熱結合面積を制限する欠点があった。電池積層体の底面を全幅で冷却プレートに熱結合する構造は、冷却構造としては理想的であるが、バインドバーで電池積層体を位置ずれしない状態に保持するのが難しくなる欠点がある。したがって、電池積層体の両側をバインドバーで締結する構造として、積層された電池積層体の底面を全幅で露出させながら、電池セルの位置ずれを確実に阻止できる構造を検討することが重要である。
【0017】
本発明のある態様の電源装置は、以下の構成により特定されてもよい。電源装置は、複数の電池セル1を積層してなる電池積層体2と、この電池積層体2の両端部に配設してなる一対のエンドプレート3と、電池積層体2の電池セル1の積層方向に伸びて、両端部をエンドプレート3に連結してなるバインドバー4とを備えている。電池積層体2は、電池セル1の積層方向に伸びる四角柱状であって、電池セル1の電極を配置してなる電極面2Aと、電極面2Aの反対側の底面2Bと、バインドバー4を配置してなる対向側面2Cとを周囲の4面としている。電源装置は、バインドバー4と電池積層体2の対向側面2Cとの間に、厚さ方向に弾性変形できる弾性シート6が圧縮状態に配設されて、圧縮状態の弾性シート6が電池積層体2の対向側面2Cとバインドバー4の内面とを弾性的に加圧状態に保持されている。
【0018】
弾性シート6は、ゴム状弾性シートとしてもよい。さらに、弾性シート6は、発泡ゴムとしてもよい。この電源装置は、摩擦抵抗の大きい発泡ゴムを電池積層体とバインドバーとの間に配置するので、より確実に電池セルの位置ずれを防止できる特徴がある。
【0019】
弾性シート6は、独立気泡の発泡体としてもよい。この電源装置は、弾性シートを独立気泡の発泡体とするので、温度や湿度などの外的条件が悪い状態で発生する結露水が弾性シートに吸収されても、気泡が独立しているので、内部で水が繋がらないため、電池セル間の絶縁が確保される。また、独立気泡の発泡体は内部に包含する空気によるクッション性で電池積層体とバインドバーに押圧する圧力を大きくして、摩擦抵抗を大きくでき、大きな摩擦抵抗で電池セルの位置ずれをより確実に防止できる特徴がある。
【0020】
電源装置は、電池積層体2の底面2Bに配置されて各々の電池セル1を冷却する冷却プレート7Xを備えて、冷却プレート7Xを、電池積層体2の底面2Bの全幅に熱結合状態に配置してもよい。この電源装置は、冷却プレートと電池積層体との熱結合面積を大きくできるので、冷却プレートでもって電池セルを効率よく冷却できる特徴がある。また、冷却プレートと電池セルとの接触面積が大きく、冷却プレートが電池セルの底面を局部的に支持することなく、全面を広い面積で支持して、振動や衝撃で電池セルの変形や損傷を防止できる特徴も実現する。
【0021】
電源装置は、バインドバー4が電池セル1の積層方向に伸びる凸条44を有する構成としてもよい。この電源装置は、バインドバーに設けた凸条でバインドバーの曲げ強度を向上できるので、バインドバーが外側方向に広がるのを抑制して、確実に弾性シートを電池セルに加圧できる。このため、多数の電池セルを積層している積層方向に長い電池積層体においても、全ての電池セルに対して弾性シートを確実に加圧状態で配置できる。
【0022】
また、電源装置は、バインドバー4を金属板として、プレス加工して凸条44を設けてもよい。さらに、電源装置は、バインドバー4が電池積層体2の対向側面2Cに配置される本体部40と、本体部40の両端に連結されてエンドプレート3に固定される固定片41とを備えて、凸条44をバインドバー4の本体部40から固定片41に伸びるように設けてもよい。
【0023】
さらに、電源装置は、バインドバー4を金属板とし、電池積層体2の対向側面2Cに配置される本体部40と、本体部40の両端に連結されてエンドプレート3に固定される固定片41と、本体部40と固定片41の端縁に連結してなる隅板42とを有し、隅板42が本体部40の側縁に連続する金属板の本体隅板42Aと、固定片41の端縁に連続する金属板の固定隅板42Bとからなり、本体隅板42Aは本体部40との境界で直角に折曲され、固定隅板42Bは固定片41との境界で直角に折曲されて、本体隅板42Aと固定隅板42Bを互いに積層状態で固着させて電池積層体2の電極面2Aとの対向位置に配置してもよい。
【0024】
以上の電源装置は、バインドバーとなる金属板の一部を有効利用して隅板を設け、この隅板でもって本体部と固定片とのコーナー部を補強して、本体部と固定片との境界の曲げ強度を向上できる。強い曲げ強度のコーナー部で本体部に連結された固定片は、強い引張力が作用する状態においてもエンドプレートの外側表面に密着して確実に固定できる特徴がある。
【0025】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための電源装置とこの電源装置を備える電動車両を例示するものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0026】
(電源装置100)
図1図3に示す電源装置100は、複数の電池セル1を絶縁セパレータ5を介して積層している電池積層体2の積層方向の両端面に配置された一対のエンドプレート3と、電池積層体2の両側面に配置されて、両端をエンドプレート3に連結しているバインドバー4と、バインドバー4と電池積層体2との隙間に挟まれている弾性シート6と、電池積層体2の底面に配置しているベースプレート7とを備える。電源装置100は、ベースプレート7を冷却プレート7Xとしている。この電源装置100は、冷却プレート7Xを各々の電池セル1に熱結合して冷却プレート7Xで電池セル1を冷却することができる。ただ、本発明の電源装置は、電池積層体の底面に必ずしも冷却プレートを配置する構造に特定するものでなく、ベースプレートを電池積層体を載せて定位置に配置する平面状の板材とすることもできる。
【0027】
(電池積層体2)
電池積層体2は、複数の電池セル1を積層して、電池セル1の積層方向に伸びる四角柱状である。この電池積層体2は、電池セル1の電極を配置している電極面2Aと、電極面2Aの反対側の底面2Bと、バインドバー4を配置している対向側面2Cを周囲の4面とする四角柱状である。電源装置100は、図1に示すように、主として電池積層体2の上面を電極面2A、下面を底面2Bとする姿勢で使用されるが、上下反転し、あるいは90度回転する姿勢で使用することもできる。
【0028】
(電池セル1)
電池セル1は、幅よりも厚さを小さくした外形の角形電池である。電池セル1は、リチウムイオン二次電池である。ただ、電池セル1は、リチウムイオン二次電池に代わってニッケル水素二次電池等の充放電可能な全ての二次電池が使用できる。特に、電池セル1にリチウムイオン二次電池を使用すると、二次電池全体の体積や質量に対する充電容量を大きくできる特長がある。
【0029】
電池セル1は、図3に示すように、外装缶11の開口部を閉塞する封口板12に正負の電極端子13を設けている。電極端子13は、外装缶11に内蔵している正負の電極体(図示せず)に接続されている。外装缶11は、底を閉塞して、対向する両面を幅広面とする角形の筒状で、図において上方を開口している。この形状の外装缶11は、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属板をプレス加工して製作される。外装缶11の開口部は、金属板をプレス加工した平板状の封口板12により、レーザー溶接でもって閉塞されている。
【0030】
封口板12は、一対の電極端子13の間に排出弁14を設けている。排出弁14は、外装缶11の内圧が所定値以上に上昇した際に開弁して、内部のガスを放出できるように構成される。排出弁14を開弁させることで、外装缶11の内圧上昇を抑制できる。排出弁14は、好ましくは封口板12の長手方向のほぼ中央に配置する。これにより、隣接する電池セル1同士を幅方向に反転させた姿勢で積層しても、常に封口板12の中央に排出弁14を揃えることができる。
【0031】
(エンドプレート3)
電池セル1と絶縁セパレータ5とを交互に積層した電池積層体2の両端面には一対のエンドプレート3を配置して、一対のエンドプレート3で電池積層体2を加圧状態に締結している。エンドプレート3は、十分な強度を発揮する材質、例えばアルミニウム(この明細書においてアルミニウムはアルミニウム合金を含む意味に使用する)などの金属製として軽量化しながら充分な強度にできる。エンドプレート3は、外形を電池セル1の外形にほぼ等しく、あるいは電池セル1よりも僅かに大きくして、電池積層体2の両端面の全面を加圧状態で固定する。
【0032】
電源装置100は、電池積層体2をベースプレート7に載せて定位置に固定する。エンドプレート3は、電池積層体2をベースプレート7に固定するための固定部30を外側表面に設けている。図3のエンドプレート3は、左右の中心から両側に離れた位置であって、上下方向の中央部に一対の固定部30を一体成形して設けている。図3の固定部30はブロック状で、ベースプレート7に固定するボルト(図示せず)を挿通するための挿通孔32を上下に貫通して設けている。さらに、図に示すエンドプレート3は、一対の固定部30を連結するフランジ部31を、固定部30の上下の中央部に一体成形して設けている。フランジ部31は、エンドプレート3の幅方向に伸び、かつ水平面内に位置する板状である。このフランジ部31は、電源装置100を持ち上げ、あるいは搬送する際に取っ手となり、あるいは吊り上げ具の係止部となる。金属製のエンドプレート3は、一対の固定部30及びフランジ部31を一体構造とする形状に鋳造して製作され、あるいはアルミニウム製のエンドプレートは鋳造し、あるいはアルミダイキャストで成形して製造される。ただ、エンドプレートは、金属板を切削加工して一対の固定部とフランジ部がある形状に製作することもできる。さらに、エンドプレートは、図示しないが、金属とプラスチックとの積層構造とすることもできる。
【0033】
エンドプレート3は、外側表面の両側部に、バインドバー4をボルト止めする雌ねじ孔33を設けている。図1のエンドプレートは、バインドバー4の本体部40の両端に連結している固定片41を2個のボルト9で固定しているので、2個の雌ねじ孔33を設けている。雌ねじ孔33はボルト9の固定位置に表面から裏側に向かって伸びるように設けられる。
【0034】
(バインドバー4)
バインドバー4は、電池セル1の積層方向に伸びる本体部40の両端部に、直角に折曲された固定片41を連結する形状で、固定片41をエンドプレート3の外側表面に固定して、一対のエンドプレート3の間に電池積層体2を加圧状態に保持する。バインドバー4は、本体部40を電池積層体2の対向側面2Cに配置して、固定片41をエンドプレート3の外側表面に配置して、一対のエンドプレート3を連結する。固定片41は、エンドプレート3の雌ねじ孔33にねじ込まれるボルト9を挿通するためのボルト孔43を上下の2箇所に開口して設けている。バインドバー4は、所定の厚さを有し、充分な引張強度の高張力鋼などの金属板を所定の形状に切断した後、曲げ加工して製作される。
【0035】
図1の分解斜視図に示すバインドバー4は、電池セル1の積層方向に伸びる凸条44を設けている。凸条44は、金属板をプレス加工して設けられる。図のバインドバー4は、本体部40から固定片41に連続して伸びる凸条44を設けている。凸条44は、図2の横断面図に示すように、外側に突出する形状で、幅方向の中間部に設けている。図の凸条44は横断面形状を所定の曲率半径で湾曲する形状としている。図のバインドバー4は、中間部に1列の凸条44を設けているが、複数列の凸条44を設けることもできる。
【0036】
外側に突出する凸条44を設けたバインドバー4は、電池積層体2との隙間を広くして、凸条44の内側に厚い弾性シート6を挟むことができる。厚い弾性シート6は、電池積層体2とバインドバー4との隙間に圧縮状態で挟まれて、所定圧以上を確保しながら、電池積層体2の対向側面2Cを無理なく押圧できる。後述する弾性シート6は、電池積層体2とバインドバー4との間に挟まれて、電池セル1とバインドバー4との間の摩擦抵抗を大きくして、電池セル1の位置ずれ、とくに電池セル1が底面2B側に移動するのを防止する。凸条44の内側に厚い弾性シート6を配置する構造は、弾性シート6と電池積層体2及びバインドバー4との押圧力が強化される。摩擦抵抗は押圧力に比例して強くなるので、押圧力を強化できる構造は、弾性シート6の摩擦抵抗を大きくして、各々の電池セル1の位置ずれを効果的に抑制できる。
【0037】
さらに、バインドバー4は、電池積層体2の対向側面2Cに配置される本体部40と、本体部40の両端に連結されてエンドプレート3に固定される固定片41と、本体部40と固定片41の端縁に連結する隅板42とが連続する外形に金属板を裁断して製作される。図4は、バインドバー4となる金属板を平面状に展開した図である。この図に示す、バインドバー4となる金属板は、本体部40の長手方向の両端部に固定片41が連結され、本体部40の長手方向の両端部の片側(図においては上側)には本体隅板42Aが連結され、さらに固定片41の長手方向の一方の端部に固定隅板42Bを連結する外形としている。本体隅板42Aと固定隅板42Bは、図5に示すように、本体部40と固定片41との境界を直角に折曲し、さらに、本体部40と本体隅板42Aとの境界で直角に折曲し、さらにまた、固定片41と固定隅板42Bとの境界で直角に折曲して、互いに積層される位置に配置している。本体隅板42Aと固定隅板42Bは、互いに積層されて、溶接などの方法で固着されて隅板42となる。本体隅板42Aと固定隅板42Bとを積層して固着している隅板42は、2層の積層構造で充分な強度となり、さらに直交する2辺を本体部40と固定片41とに連結して、固定片41を強固に、とくに充分な曲げ強度で本体部40に連結する。本体隅板42Aと固定隅板42Bは、1枚の金属板を裁断する工程で設けられるので、専用の金属板を使用する必要がなく、材料コストと製造コストを増加させることなく、バインドバー4を補強する。
【0038】
金属製のバインドバー4は、電池積層体2の対向側面2Cに配置された状態で、好ましくは、電池積層体2との間が絶縁される。図1図2に示す電源装置100は、電池積層体2の対向側面2Cとバインドバー4との間に絶縁シート8を配置して、電池積層体2とバインドバー4とを絶縁している。この絶縁シート8は、例えば、バインドバー4の本体部40の内側面に沿う形状のシート状であって、本体部40の内面に接着されて定位置に配置される。
【0039】
バインドバー4は、エンドプレート3に固定されて電池積層体2の底面2Bを全幅で露出させる。したがって、バインドバー4の本体部40は、電池積層体2の底面2Bをカバーする部分がなく、電池積層体2の対向側面2Cとの対向面にのみ配置される。この電源装置100は、バインドバー4をエンドプレート3に固定して、一対のエンドプレート3が電池積層体2を加圧状態に保持する状態で、バインドバー4でもって、電池セル1の下方への位置ずれを阻止できず、電池セル1が位置ずれを起こすおそれがある。この状態で、電池セル1の位置ずれを阻止するために、図1図2の電源装置100は、電池積層体2の対向側面2Cとバインドバー4の内面との間に弾性シート6を挟んでいる。
【0040】
(弾性シート6)
弾性シート6は、厚さ方向に弾性変形できるシートである。厚さ方向に圧縮できる弾性シート6はゴム状弾性シートである。ゴム状弾性シートは、発泡ゴムや合成樹脂発泡体である。発泡ゴムは、摩擦抵抗が大きくいので、電池セル1の位置ずれをより効果的に阻止できる。合成樹脂発泡体は安価に多量生産できる特徴がある。発泡体の弾性シート6は、発泡率で弾性をコントロールできる特徴がある。発泡体の弾性シート6は、独立気泡の発泡体が適している。独立気泡の発泡体は、発泡した気泡が独立することで水の通過を阻止するので、弾性シートの表面近くで水が発生しても、弾性シートの内部で水が繋がらないため、電池セル間の絶縁が確保される。このため、温度や湿度などの外的条件が悪い環境で発生する結露水による弊害を防止できる。また、気泡による空気クッションを電池積層体2とバインドバー4への押圧力に利用できる特徴もある。
【0041】
弾性シート6は、圧縮状態で電池積層体2とバインドバー4との隙間に挟まれて、電池積層体2とバインドバー4を押圧する状態で配置される。圧縮状態で挟まれる弾性シート6は、電池積層体2とバインドバー4との隙間よりも厚く、たとえば電池積層体2とバインドバー4との隙間の30%よりも厚く、好ましくは50%よりも厚く、さらに好ましくは80%よりも厚くされる。電池積層体2とバインドバー4との隙間は、弾性シート6を圧縮状態に配置して、弾性シート6が所定の圧力以上で押圧するように、たとえば、0.3mmよりも厚く、好ましくは0.5mmよりも厚くする。弾性シート6の厚さは、電池積層体2とバインドバー4との隙間を考慮して前述の範囲に設定されるが、弾性率によっても厚さが異なるので、電池積層体2とバインドバー4の隙間を考慮し、さらに弾性率も考慮し、さらに積層している電池セル1の積層圧力によっても、位置ずれが左右されるので、電池セル1の積層圧力も考慮して最適な厚さに設定される。
【0042】
電源装置100は、使用状態では底面2Bにベースプレート7などが配置されて、ベースプレート7が電池セル1の下方への位置ずれを阻止するようになっている。一方、電源装置100は、ベースプレート7が固定されるまでの組み立て工程において、電池セル1の位置ずれを阻止する必要がある。この電源装置100は、ベースプレート7が固定されるまでの期間に、弾性シート6が電池セル1の位置ずれを阻止するように構成されている。具体的には、圧縮状態に保持される弾性シート6は、組み立て工程において、充分な押圧力で電池セル1とバインドバー4とを押圧して電池セル1の位置ずれを確実に阻止する。経時的に劣化して圧縮力が低下しても、ベースプレート7が固定される状態では、電池セル1の位置ずれがベースプレート7で阻止されるので、弾性シート6が劣化しても、電池セル1が位置ずれすることがない。弾性シート6が劣化して押圧力が低下しても、弾性シート6が電池積層体2とバインドバー4を押圧する限り、弾性シート6による摩擦抵抗で電池セル1の位置ずれを阻止する。ベースプレート7を底面2Bに固定する状態で、ベースプレート7が電池セル1の位置ずれを阻止する。加えて、電源装置100が使用される状態にあっても、弾性シート6の摩擦抵抗で位置ずれが阻止される電池セル1は、使用状態における振動や衝撃を受けて、電池セル1が振動し、あるいは僅かな位置ずれも防止できる特徴もある。
【0043】
(冷却プレート7X)
冷却プレート7Xは、電池積層体2の底面2Bに熱結合状態に固定される。冷却プレート7Xは、エンドプレート3の固定部30に固定される。冷却プレート7Xは、内部に冷媒路(図示せず)を設けている。冷却プレート7Xは、冷媒路に冷却用の冷媒を循環して冷却される。冷媒路に冷媒を循環する冷却プレート7Xは効率よく冷却できる。ただ、図示しないが、冷却プレートは、表面に放熱フィンを設けて冷却する構造とすることもできる。冷却プレート7Xと電池積層体2との間は、熱伝導ペーストを塗布し、あるいは熱伝導シートを挟んで好ましい熱結合状態とする。さらに、底面2Bに絶縁層のない電池積層体2は、冷却プレート7Xとの間に絶縁シートを配置して、電池積層体2と冷却プレート7Xとの間を絶縁する。
【0044】
以上の電源装置は、電動車両を走行させるモータに電力を供給する車両用の電源装置に最適である。電源装置を搭載する電動車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車やプラグインハイブリッド自動車、あるいはモータのみで走行する電気自動車等の電動車両が利用でき、これらの電動車両の電源として使用される。
【0045】
(ハイブリッド車用電源装置)
図5に、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両HVは、車両本体90と、車両本体90を走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、モータ93に電力を供給する電源装置100と、電源装置100の電池を充電する発電機94と、モータ93とエンジン96で駆動されて車両本体90を走行させる車輪97とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、電源装置100の電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、例えば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電源装置100の電池を充電する。
【0046】
(電気自動車用電源装置)
また、図6に、モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両EVは、車両本体90と、車両本体90を走行させる走行用のモータ93と、このモータ93に電力を供給する電源装置100と、この電源装置100の電池を充電する発電機94、モータ93で駆動されて車両本体90を走行させる車輪97とを備えている。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電源装置100の電池を充電する。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る電源装置及びこれを備える車両は、EV走行モードとHEV走行モードとを切り替え可能なプラグイン式ハイブリッド電気自動車やハイブリッド式電気自動車、電気自動車等の電源装置として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0048】
100…電源装置、1…電池セル、2…電池積層体、2A…電極面、2B…底面、2C…対向側面、3…エンドプレート、4…バインドバー、5…絶縁セパレータ、6…弾性シート、7…ベースプレート、7X…冷却プレート、8…絶縁シート、9…ボルト、11…外装缶、12…封口板、13…電極端子、14…排出弁、30…固定部、31…フランジ部、32…挿通孔、33…雌ねじ孔、40…本体部、41…固定片、42…隅板、42A…本体隅板、42B…固定隅板、43…ボルト孔、44…凸条、90…車両本体、93…モータ、94…発電機、95…DC/ACインバータ、96…エンジン、97…車輪、HV…車両、EV…車両
図1
図2
図3
図4
図5
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図7