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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】検出方法、検出装置、プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/316 20210101AFI20230111BHJP
   A61B 5/16 20060101ALI20230111BHJP
   A61B 5/18 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A61B5/316
A61B5/16 130
A61B5/18
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021561382
(86)(22)【出願日】2020-11-20
(86)【国際出願番号】 JP2020043416
(87)【国際公開番号】W WO2021106789
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2019213017
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232092
【氏名又は名称】NECソリューションイノベータ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517350355
【氏名又は名称】株式会社スキノス
(73)【特許権者】
【識別番号】593199714
【氏名又は名称】大橋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100088959
【弁理士】
【氏名又は名称】境 廣巳
(74)【代理人】
【識別番号】100097157
【弁理士】
【氏名又は名称】桂木 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100187724
【弁理士】
【氏名又は名称】唐鎌 睦
(72)【発明者】
【氏名】金井 重樹
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 英哉
(72)【発明者】
【氏名】大橋 俊夫
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-232143(JP,A)
【文献】特開平05-024460(JP,A)
【文献】特開平01-250221(JP,A)
【文献】特開平05-228122(JP,A)
【文献】特開2009-034140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/053-5/398
A61B 5/16-5/18
G08G 1/16
B60K 28/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの状態を検出する検出装置が、
皮膚電位活動の直流成分を含む皮膚電位水準を示す情報と、皮膚電位活動の交流成分である皮膚電位反射を示す情報を取得し、
前記皮膚電位水準の変化具合と前記皮膚電位反射の変化具合とに基づいて、ユーザの状態を検出し、
前記検出時は、前記皮膚電位水準の傾きが所定値以上の大きさを有している期間が条件を満たし、かつ、前記皮膚電位反射の振幅が確認されない期間が条件を満たした場合に、ユーザが眠気を感じている旨を検出する
検出方法。
【請求項2】
ユーザの状態を検出する検出装置であって、
皮膚電位活動の直流成分を含む皮膚電位水準を示す情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記皮膚電位水準の変化具合に基づいて、ユーザの状態を検出する検出部と、
を有し、
前記取得部は、皮膚電位活動の交流成分である皮膚電位反射を示す情報を取得し、
前記検出部は、前記皮膚電位水準の変化具合と前記皮膚電位反射の変化具合とに基づいて、ユーザの状態を検出し、
前記検出部は、前記皮膚電位水準の傾きが所定値以上の大きさを有している期間が条件を満たし、かつ、前記皮膚電位反射の振幅が確認されない期間が条件を満たした場合に、ユーザが眠気を感じている旨を検出する
検出装置。
【請求項3】
ユーザの状態を検出する検出装置に、
皮膚電位活動の直流成分を含む皮膚電位水準を示す情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記皮膚電位水準の変化具合に基づいて、ユーザの状態を検出する検出部と、
を実現させ、
前記取得部は、皮膚電位活動の交流成分である皮膚電位反射を示す情報を取得し、
前記検出部は、前記皮膚電位水準の変化具合と前記皮膚電位反射の変化具合とに基づいて、ユーザの状態を検出し、
前記検出部は、前記皮膚電位水準の傾きが所定値以上の大きさを有している期間が条件を満たし、かつ、前記皮膚電位反射の振幅が確認されない期間が条件を満たした場合に、ユーザが眠気を感じている旨を検出する
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出方法、検出装置、記録媒体、皮膚電位センサに関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚電位を用いて居眠り防止を行う技術が知られている。
【0003】
皮膚電位を用いて居眠り防止をおこなう技術について記載された文献として、例えば、特許文献1がある。特許文献1によると、低覚醒状態検出部は、皮膚電位センサにより検出される皮膚電位が相対的に高いとき、運転者に眠気が発生している低覚醒状態を検出する。また、特許文献1には、具体的な例として、低覚醒状態と覚醒状態とを切り分けるための閾値を設定し、皮膚電位が閾値以上のときに低覚醒状態と判定する旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-128256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている皮膚電位は、皮膚電位が相対的に低いときに覚醒状態の傾向が強く、皮膚電位が相対的に高いときに低覚醒状態の傾向が強いとされている。このような傾向を有するのは、皮膚電位のうちの皮膚電位水準である。そのため、特許文献1には、皮膚電位のうちの皮膚電位水準についての技術が記載されているものと考えられる。
【0006】
ここで、図1で示すように、皮膚電位水準(SPL:skin potential level)は、手掌部の発汗の出現などに対応するように、瞬時的に低くなることがある。そのため、例えば図1の丸印で示すように、単に閾値を設けるだけでは、上記瞬間的な低下を、眠気を感じている状態であると誤検出してしまうことがあった。その結果、精度よく居眠りを予知することが難しい、という課題が生じていた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、精度よく居眠りを予知することが難しい、という課題を解決する検出方法、検出装置、プログラムを提供することにある。
【0008】
なお、上述したような瞬間的な変化は、例えば、ローパスフィルタのカットオフ周波数を低く設定することにより影響を除去できる。しかしながら、ローパスフィルタのカットオフ周波数を低く設定すると、数値の変化が穏やかになり、検出の即時性が失われてしまう。そのため、上記方法を採用することは難しい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するため本発明の一形態である検出方法は、
ユーザの状態を検出する検出装置が、
皮膚電位活動の直流成分を含む皮膚電位水準を示す情報を取得し、
前記皮膚電位水準の変化具合に基づいて、ユーザの状態を検出する
という構成をとる。
【0010】
また、本発明の他の形態である検出装置は、
ユーザの状態を検出する検出装置であって、
皮膚電位活動の直流成分を含む皮膚電位水準を示す情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記皮膚電位水準の変化具合に基づいて、ユーザの状態を検出する検出部と、
を有する
という構成をとる。
【0011】
また、本発明の他の形態である記録媒体は、
ユーザの状態を検出する検出装置に、
皮膚電位活動の直流成分を含む皮膚電位水準を示す情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記皮膚電位水準の変化具合に基づいて、ユーザの状態を検出する検出部と、
を実現させるためのプログラムを記録した、コンピュータが読み取り可能な記録媒体である。
【0012】
また、本発明の他の形態である皮膚電位センサは、
少なくとも皮膚電位水準を計測する皮膚電位センサであって、
皮膚の電位を誘導する第1の電極と、第2の電極と、を含み、
前記第1の電極がユーザの手掌部または足底部に配置され、前記第2の電極がユーザの前腕内側もしくは手背部または足関節部もしくは足背部に配置されている
という構成をとる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以上のように構成されることにより、精度よく居眠りを予知することが難しい、という課題を解決する検出方法、検出装置、プログラム、皮膚電位センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】課題を説明するための図である。
図2】本発明の第1の実施形態における検出システムの構成の一例を示す図である。
図3】皮膚電位センサの構成の一例を示す図である。
図4】SPLと手掌部の発汗とRR間隔との関係の一例を示す図である。
図5】SPLと手掌部の発汗とα波頻度との関係の一例を示す図である。
図6】夜間の運転における皮膚電位水準の変化の一例を示す図である。
図7図2で示す検出装置の構成の一例を示すブロック図である。
図8】皮膚電位水準の変化の一例を示す図である。
図9】皮膚電位反射の変化の一例を示す図である。
図10】検出装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図11】本発明の第2の実施形態における検出装置の構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態を図2から図10までを参照して説明する。図2は、検出システム100の構成の一例を示す図である。図3は、皮膚電位センサ200の構成の一例を示す図である。図4は、SPLと手掌部の発汗とRR間隔との関係の一例を示す図である。図5は、SPLと手掌部の発汗とα波頻度との関係の一例を示す図である。図6は、夜間の運転における皮膚電位水準の変化の一例を示す図である。図7は、検出装置300の構成の一例を示すブロック図である。図8は、皮膚電位水準の変化の一例を示す図である。図9は、皮膚電位反射の変化の一例を示す図である。図10は、検出装置300の動作の一例を示すフローチャートである。
【0016】
本発明の第1の実施形態においては、皮膚電位センサ200による計測結果に基づく解析を行って、ユーザの状態を検出する検出装置300を有する検出システム100について説明する。後述するように、検出装置300は、皮膚電位活動(SPA:skin potential activitiy)の直流成分を含む皮膚電位水準(SPL:skin potential level)と、皮膚電位活動の交流成分である(直流成分を含まない)皮膚電位反射(SPR:skin potential reflex)とを取得する。そして、検出装置300は、皮膚電位水準と皮膚電位反射とに基づいて、ユーザの状態を検出する。例えば、検出装置300は、皮膚電位水準と皮膚電位反射との変化具合に基づいて、ドロージー(Drowsy)の初期段階を検出する。ドロージーの初期段階を検出することにより、精度よく居眠りを予知することなどが可能となる。
【0017】
なお、ドロージーとは、うとうとした状態、ぼんやりした状態などを医学的に表現した言葉である。ドロージーな状態は、居眠りを行う危険性のある状態である。例えば、自動車運転に代表されるような危険を伴う作業では、ドロージーな状態は重大事故の要因となる。また、例えば、事務作業などでは、ドロージーな状態は作業効率の低下が起こる。
【0018】
図2は、検出システム100の全体の構成の一例を示す図である。図2を参照すると、検出システム100は、例えば、皮膚電位センサ200と、検出装置300と、を有している。図2で示すように、皮膚電位センサ200と検出装置300とは、例えば、Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)などの無線通信により互いに通信可能なよう接続されている。なお、皮膚電位センサ200と検出装置300とは、例えば、有線により互いに通信可能なよう接続されていても構わない。
【0019】
皮膚電位センサ200は、ユーザの手などに装着される。例えば、皮膚電位センサ200は、電極などを有しており、皮膚電位水準と皮膚電位反射とを計測する。
【0020】
また、皮膚電位センサ200は、例えば、無線通信により検出装置300と通信を行う機能を有している。例えば、皮膚電位センサ200は、無線通信により、計測結果である皮膚電位水準を示す情報と皮膚電位反射を示す情報とを検出装置300に対して送信する。
【0021】
図3は、皮膚電位センサ200のうち皮膚電位水準と皮膚電位反射とを計測する部分の構成例を示している。図3で示すように、皮膚電位センサ200は、例えば、皮膚の電位を誘導する電極210、電極220と、差動増幅器(アンプ)230と、誘導された電位から皮膚電位水準および皮膚電位反射を抽出するフィルタ240と、から構成される。
【0022】
電極210及び電極220の位置は、皮膚電位水準の値に影響を与える。そのため、電極210及び電極220の位置は、慎重に選定しなければならない。例えば、図3で示すように、電極210を手掌部に配置し、電極220を前腕内側もしくは手背部に配置する。このように電極210、電極220を配置することで、適切に皮膚電位水準を評価することが可能となる。つまり、皮膚電位水準を精度よく測定するためには、電極210を手掌部に配置し、電極220を前腕内側もしくは手背部に配置することが好適である、ということが出来る。
【0023】
また、皮膚電位水準は足底部からも足底することができる。電極210を足底部に配置し、電極220を足関節部もしくは足背部に配置する。
【0024】
なお、電極210、電極220は、Ag/AgCl電極と粘着ゲルやペーストから成る心電図用電極はもちろんのこと、導電性繊維等を使用することができる。電極210、電極220として導電性繊維などを使用した場合、皮膚電位センサ200は、例えば、手袋、もしくは、靴下、サンダルなどとして実現しても構わない。
【0025】
フィルタ240は、皮膚電位を、直流成分を含む皮膚電位水準と、直流成分を含まない皮膚電位反射に分離する。例えば、居眠り予知を実現するために着目すべき皮膚電位水準のベースラインは、おおよそ0.04Hz以下である。そのため、フィルタ240は、概ね0.04Hz以下の成分を抽出するフィルタであることが望ましい。
【0026】
なお、皮膚電位水準とは、上述したように、皮膚電位活動の直流成分を含む値である。換言すると、皮膚電位水準は、皮膚電位活動の長期的な変動成分である。我々は、人が閉眼をした時、皮膚電位水準のベースラインが変化し、陰性の電位がゼロに近づくことを確認した。例えば、図4は、閉眼時における皮膚電位水準(SPL)と、手掌部発汗の変化と、R波とR波の間隔を示すRR間隔と、を比較した結果を示している。具体的には、図4の上のグラフが皮膚電位水準を示しており、図4の真ん中のグラフが手掌部発汗の変化を示しており、図4の下のグラフがRR間隔を示している。また、図5は、閉眼時における皮膚電位水準(SPL)と、手掌部発汗の変化と、脳波(α波頻度)と、を比較した結果を示している。具体的には、図5の上のグラフが皮膚電位水準を示しており、図5の真ん中のグラフが手掌部発汗の変化を示しており、図5の下のグラフが脳波(α波頻度)を示している。一般的に、安静状態(または、ドロージーな状態)では、脳波のα波頻度が増加し、RR間隔は低下する。図4図5を参照すると、皮膚電位水準のベースラインが変化し、陰性の電位がゼロに近づく現象は、α波頻度の増加やRR間隔の低下と同期して起こっていることが分かる。つまり、図4図5を参照すると、脳波のα波頻度やRR間隔が安静状態(または、ドロージーな状態)であることを示している際に、皮膚電位水準のベースラインが変化し、陰性の電位がゼロに近づいていることが分かる。
【0027】
また、図6は、夜間運転中の自動車運転中の皮膚電位水準の変化の一例を示している。図6を参照すると、夜間運転中にも皮膚電位水準のベースラインの変化が起こっていることが分かる。
【0028】
また、皮膚電位反射とは、皮膚電位活動の交流成分である。皮膚電位反射は、外部からの刺激などに応じて瞬間的に反応する。
【0029】
以上が、皮膚電位センサ200の構成の一例である。なお、皮膚電位センサ200は、上述したような機構によりユーザの手などに予め装着、固定されていても構わないし、自動車のハンドルなどユーザの手が当接する箇所に設けられていても構わない。
【0030】
検出装置300は、皮膚電位センサ200による計測結果に基づく解析を行って、ドロージーの初期段階などのユーザの状態を検出する情報処理装置である。検出装置300としての機能は、例えば、独立した情報処理装置が有していても構わないし、カーナビゲーション装置などの車載装置などが有していても構わない。
【0031】
図7は、検出装置300の構成の一例を示している。図7を参照すると、検出装置300は、主な構成要素として、画面表示部310と、音声出力部320と、通信I/F部330と、記憶部340と、演算処理部350と、を有している。
【0032】
画面表示部310は、LCD(Liquid Crystal Display、液晶ディスプレイ)などの画面表示装置からなる。画面表示部310は、演算処理部350からの指示に応じて、警告情報などを画面表示することができる。
【0033】
音声出力部320は、マイク、スピーカー、ヘッドフォン、イヤーフォンなどの音声を出力する装置からなる。音声出力部320は、演算処理部350からの指示に応じて、警告情報などを出力することができる。
【0034】
通信I/F部330は、データ通信回路からなる。通信I/F部330は、通信回線を介して接続された各種装置との間でデータ通信を行う。例えば、検出装置300は、通信I/F部330を介して、皮膚電位センサ200から皮膚電位水準を示す情報や皮膚電位反射を示す情報を受信する。
【0035】
記憶部340は、ハードディスクやメモリなどの記憶装置である。記憶部340は、演算処理部350における各種処理に必要な処理情報やプログラム343を記憶する。プログラム343は、演算処理部350に読み込まれて実行されることにより各種処理部を実現する。プログラム343は、通信I/F部330などのデータ入出力機能を介して外部装置や記録媒体から予め読み込まれ、記憶部340に保存されている。記憶部340で記憶される主な情報としては、例えば、皮膚電位水準情報341と皮膚電位反射情報342とがある。
【0036】
また、演算処理部350は、MPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有する。演算処理部350は、記憶部340からプログラム343を読み込んで実行することにより、上記ハードウェアとプログラム343とを協働させて各種処理部を実現する。演算処理部350で実現される主な処理部としては、例えば、測定結果取得部351と状態検出部352と警告部353とがある。
【0037】
以下、上述した各処理部、各情報について、より詳細に説明する。
【0038】
測定結果取得部351は、皮膚電位センサ200から当該皮膚電位センサ200における計測結果である、皮膚電位水準を示す情報と皮膚電位反射を示す情報とを取得する。そして、測定結果取得部351は、取得した皮膚電位水準を示す情報を皮膚電位水準情報341として記憶部340に格納するとともに、取得した皮膚電位反射を示す情報を皮膚電位反射情報342として記憶部340に格納する。
【0039】
状態検出部352は、皮膚電位水準情報341が示す皮膚電位水準と皮膚電位反射情報342が示す皮膚電位反射とに基づいて、ユーザの状態を検出する。例えば、状態検出部352は、皮膚電位水準と皮膚電位反射とに基づいて、ユーザがドロージーの初期段階にあることを検出する。
【0040】
例えば、状態検出部352は、皮膚電位水準の変化具合を確認する。そして、状態検出部352は、皮膚電位水準の変化具合が所定の条件を満たすと判断される場合、ユーザがドロージーの初期段階である可能性があると判断する。
【0041】
具体的には、例えば、状態検出部352は、1秒ごとなどの各点における変化の割合(傾き)を算出する。つまり、状態検出部352は、各点ごとに、時間の経過に対する皮膚電位水準の変化具合を示す値である傾きを算出する。そして、状態検出部352は、算出した傾きが所定値(任意の値で構わない)以上の期間が所定期間(10秒や30秒など任意の期間で構わない)続いているか否か確認することにより、皮膚電位水準の変化具合を確認する。傾きが所定値以上の期間が所定期間続いている場合、状態検出部352は、ユーザがドロージーの初期段階である可能性があると判断する。この場合、状態検出部352は、例えば、後述する皮膚電位反射の確認を行う。一方、傾きが所定値以上の期間が所定期間続いていない場合、状態検出部352は、ユーザがドロージーの初期段階である可能性が低いと判断する。
【0042】
例えば、図8は、皮膚電位水準情報341が示す皮膚電位水準の一例を示している。図8で示す場合、おおよそ5分30秒から6分30秒までの間や、おおよそ6分30秒過ぎから10分過ぎまでの間において、皮膚電位水準の値が連続して0に近づいており、各点ごとの傾きが大きくなっている。このような、傾きが大きくなる期間が所定期間続いている状態の場合、状態検出部352は、ユーザがドロージーの初期段階である可能性があると判断することができる。
【0043】
以上のように、状態検出部352は、皮膚電位水準の変化具合に基づいて、ユーザがドロージーの初期段階である可能性があるか否か判断する。なお、換言すると、状態検出部352は、皮膚電位水準の値が所定期間連続して0に近づいているか否かに応じて、ドロージーの初期段階である可能性があるか否か判断する、ということもできる。
【0044】
また、状態検出部352は、皮膚電位水準に基づいてドロージーの初期段階である可能性があると判断した場合、皮膚電位反射の変化具合を確認する。そして、状態検出部352は、皮膚電位反射の変化具合が所定の条件を満たすと判断される場合、ドロージーの初期段階である旨を検出する。
【0045】
具体的には、例えば、状態検出部352は、所定期間の間、皮膚電位反射に所定値以上の振幅が確認されないか否か(または振幅の数や頻度が1以下など所定数以下であるか否か)確認する。そして、所定期間の間、皮膚電位反射において所定値以上の振幅が確認されない場合、状態検出部352は、ドロージーの初期段階である旨を検出する。一方、皮膚電位反射において所定値以上の振幅が確認される場合、状態検出部352は、ドロージーの初期段階である旨を検出しない。
【0046】
例えば、図9は、皮膚電位反射情報342が示す皮膚電位反射の一例を示している。図9で示す場合、図8で示す場合に対応する期間において、皮膚電位反射における振幅が確認されておらず、ほぼ値が0になっている。そのため、状態検出部352は、例えば上記期間内において、ドロージーの初期段階である旨を検出することができる。
【0047】
以上のように、状態検出部352は、皮膚電位反射の変化具合に基づいて、ドロージーの初期段階である旨を検出する。なお、換言すると、状態検出部352は、皮膚電位反射の値が所定期間連続して0である(所定値以下である)か否かに応じて、ドロージーの初期段階である旨を検出する、ということもできる。
【0048】
なお、皮膚電位反射を確認する際の所定期間は、例えば、皮膚電位反射を確認する際の所定期間と同一の期間である。皮膚電位反射を確認する所定期間は、皮膚電位反射を確認した後の所定期間(任意の期間)であっても構わない。
【0049】
例えば、以上のように、状態検出部352は、皮膚電位水準の変化具合と皮膚電位反射の変化具合とに基づいて、ドロージーの初期段階である旨を検出する。そして、ドロージーの初期段階である旨を検出した場合、状態検出部352は、ドロージーの初期段階である旨を検出したことを警告部353に通知する。
【0050】
警告部353は、ドロージーの初期段階であると状態検出部352が判断した場合、所定の警告を行う。例えば、警告部353は、画面表示部310にドロージーの初期段階である旨を示す警告情報を表示させたり、音声出力部320を介して警告情報を出力したりすることにより警告を行う。警告部353は、通信I/F部330を介して外部装置に警告情報を送信する、ユーザが有するスマートフォンなどを振動させる、など、上記例示した以外の方法により警告を行うよう構成しても構わない。
【0051】
以上が、検出装置300の構成の一例である。続いて、図10を参照して、検出装置300の動作の一例について説明する。
【0052】
図10を参照すると、検出装置300の状態検出部352は、皮膚電位水準の変化具合が所定の条件を満たすか否か確認する(ステップS101)。例えば、状態検出部352は、1秒ごとなどの各点における変化の割合を算出して、算出した傾きが所定値以上の期間が所定期間続いているか否か確認する。
【0053】
皮膚電位水準の変化具合が所定の条件を満たさない場合(ステップS101、No)、状態検出部352は、皮膚電位水準の変化具合の確認を続ける。一方、皮膚電位水準の変化具合が所定の条件を満たす場合(ステップS101、Yes)、状態検出部352は、皮膚電位反射の変化具合が所定の条件を満たすか否か確認する(ステップS102)。例えば、状態検出部352は、所定期間の間、皮膚電位反射に所定値以上の振幅が確認されないか否か確認する。
【0054】
皮膚電位反射の変化具合が所定の条件を満たさない場合(ステップS102、No)、状態検出部352は、皮膚電位水準の変化具合の確認に戻る。一方、皮膚電位反射の変化具合が所定の条件を満たす場合(ステップS102、Yes)、状態検出部352は、ドロージーの初期段階である旨を検出する(ステップS103)。そして、状態検出部352は、ドロージーの初期段階である旨を検出したことを警告部353に通知する。
【0055】
警告部353は、ドロージーの初期段階である旨の警告を行う(ステップS104)。例えば、警告部353は、画面表示部310に警告情報を表示させたり、音声出力部320を介して警告情報を出力したりすることにより警告を行う。
【0056】
以上が、検出装置300の動作の一例である。
【0057】
このように、検出装置300は、測定結果取得部351と状態検出部352を有している。このような構成により、状態検出部352は、測定結果取得部351が取得した皮膚電位水準の変化具合と皮膚電位反射の変化具合とに基づいて、ドロージーの初期段階である旨を検出することができる。このように、皮膚電位水準の変化具合と皮膚電位反射の変化具合とに基づいてドロージーの初期段階である旨を検出することにより、皮膚電位水準の瞬間的な低下による誤検出を減らすことが出来る。その結果、精度よくドロージーの初期段階である旨を検出することが可能となり精度よく居眠りを予知することが可能となる。
【0058】
また、電極210、電極220として導電性繊維等を使用して皮膚電位を誘導しようとした場合、皮膚と導電性繊維が分極し、測定される皮膚電位水準の値が正しい値でないことが多くなる。また、高周波ノイズが重畳しやすいという課題も生じることになる。本実施形態において説明した皮膚電位水準の変化具合と皮膚電位反射の変化具合とに基づく検出を行う、という方法によると、単純に値の大小で判断しているわけではないため、電極と皮膚との接触具合に問題がある場合でも、より精度よくドロージーの初期段階である旨を検出することが出来る。換言すると、本実施形態において説明した方法を用いた場合、電極210、電極220と皮膚の接触具合に応じて、皮膚電位水準の値や皮膚電位反射の値が高めに出た場合や低めに出た場合であっても、精度よくドロージーの初期段階である旨を検出することが可能となる。
【0059】
また、上述したように、検出装置300は、皮膚電位水準の変化具合と皮膚電位反射の変化具合とを併用している。このように、皮膚電位水準の変化具合と皮膚電位反射の変化具合とに基づく検出を行うことで、皮膚電位水準を確認する期間を短くした場合でも、より的確にドロージーの初期段階である旨を検出することができる。つまり、上記構成によると、検出するまでの時間を短縮しつつ、的確にドロージーの初期段階である旨を検出することができる。
【0060】
なお、本実施形態においては、検出装置300が皮膚電位水準の変化具合と皮膚電位反射の変化具合とに基づく検出を行う場合について例示した。しかしながら、検出装置300は、皮膚電位水準の変化具合と皮膚電位反射の変化具合とのうちのいずれか一方のみを用いてドロージーの初期段階である旨を検出するよう構成しても構わない。例えば、検出装置300は、皮膚電位水準の変化具合に基づいて、ドロージーの初期段階である旨を検出するよう構成しても構わない。
【0061】
また、本実施形態においては、検出装置300としての機能が1台の情報処理装置により実現する場合について例示した。しかしながら、検出装置300としての機能は、例えば、ネットワークを介して接続された複数台の情報処理装置により実現されても構わない。
【0062】
[第2の実施形態]
次に、図11を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、検出装置40の構成について説明する。
【0063】
検出装置40は、ユーザの状態を検出する情報処理装置である。図11は、検出装置40の構成の一例を示している。図11を参照すると、検出装置40は、例えば、取得部41と、検出部42と、を有している。
【0064】
例えば、検出装置40は、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置と記憶装置とを有している。例えば、検出装置40は、記憶装置に格納されたプログラムを演算装置が実行することで、上述した各処理部を実現する。
【0065】
取得部41は、皮膚電位活動の直流成分を含む皮膚電位水準を示す情報を取得する。
【0066】
検出部42は、取得部41が取得した皮膚電位水準の変化具合に基づいて、ユーザの状態を検出する。
【0067】
このように、検出装置40は、取得部41と検出部42とを有している。このような構成により、検出部42は、取得部41が取得した皮膚電位水準の変化具合に基づいて、ユーザの状態を検出することができる。このように、皮膚電位水準の変化具合に基づいてユーザの状態を検出することにより、皮膚電位水準の瞬間的な低下などによる誤検出を減らすことが出来る。その結果、精度よくユーザの状態を検出することが可能となる。
【0068】
また、上述した検出装置40は、当該検出装置40に所定のプログラムが組み込まれることで実現できる。具体的に、本発明の他の形態であるプログラムは、ユーザの状態を検出する検出装置40に、皮膚電位活動の直流成分である皮膚電位水準を示す情報を取得する取得部41と、取得部41が取得した皮膚電位水準の変化具合に基づいて、ユーザの状態を検出する検出部と、を実現させるためのプログラムである。
【0069】
また、上述した検出装置40により実行される検出方法は、ユーザの状態を検出する検出装置が、皮膚電位活動の直流成分である皮膚電位水準を示す情報を取得し、皮膚電位水準の変化具合に基づいて、ユーザの状態を検出する、という方法である。
【0070】
上述した構成を有する、プログラム(又は記録媒体)、又は、検出方法、の発明であっても、上述した検出装置40と同様の作用・効果を有するために、上述した本発明の目的を達成することができる。
【0071】
<付記>
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうる。以下、本発明における検出方法などの概略を説明する。但し、本発明は、以下の構成に限定されない。
【0072】
(付記1)
ユーザの状態を検出する検出装置が、
皮膚電位活動の直流成分である皮膚電位水準を示す情報を取得し、
前記皮膚電位水準の変化具合に基づいて、ユーザの状態を検出する
検出方法。
(付記2)
付記1に記載の検出方法であって、
時間の経過に対する前記皮膚電位水準の変化具合に基づいて、ユーザの状態を検出する
検出方法。
(付記3)
付記1または付記2に記載の検出方法であって、
前記皮膚電位水準の傾きを算出し、算出した傾きに基づいて、ユーザの状態を検出する
検出方法。
(付記4)
付記3に記載の検出方法であって、
算出した傾きが所定値以上の大きさを有している期間に基づいて、ユーザの状態を検出する
検出方法。
(付記5)
付記1から付記4までのいずれか1項に記載の検出方法であって、
皮膚電位活動の交流成分である皮膚電位反射を示す情報を取得し、
前記皮膚電位水準の変化具合と前記皮膚電位反射の変化具合とに基づいて、ユーザの状態を検出する
検出方法。
(付記6)
付記5に記載の検出方法であって、
前記皮膚電位反射の振幅が確認されない期間に基づいて、ユーザの状態を検出する
検出方法。
(付記7)
付記5または付記6に記載の検出方法であって、
前記皮膚電位水準の傾きが所定値以上の大きさを有している期間が条件を満たし、かつ、前記皮膚電位反射の振幅が確認されない期間が条件を満たした場合に、ユーザが眠気を感じている旨を検出する
検出方法。
(付記8)
付記1から付記7までのいずれか1項に記載の検出方法であって、
検出したユーザの状態に応じて警告を行う
検出方法。
(付記9)
付記1から付記8までのいずれか1項に記載の検出方法であって、
ユーザの状態として、ドロージーの初期段階である旨を検出する
検出方法。
(付記10)
ユーザの状態を検出する検出装置であって、
皮膚電位活動の直流成分である皮膚電位水準を示す情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記皮膚電位水準の変化具合に基づいて、ユーザの状態を検出する検出部と、
を有する
検出装置。
(付記11)
ユーザの状態を検出する検出装置に、
皮膚電位活動の直流成分である皮膚電位水準を示す情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記皮膚電位水準の変化具合に基づいて、ユーザの状態を検出する検出部と、
を実現させるためのプログラムを記録した、コンピュータが読み取り可能な記録媒体。(付記12)
少なくとも皮膚電位水準を計測する皮膚電位センサであって、
皮膚の電位を誘導する第1の電極と、第2の電極と、を含み、
前記第1の電極がユーザの手掌部に配置され、前記第2の電極がユーザの前腕内側もしくは手背部に配置されている
皮膚電位センサ。
【0073】
なお、上記各実施形態及び付記において記載したプログラムは、記憶装置に記憶されていたり、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されていたりする。例えば、記録媒体は、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、及び、半導体メモリ等の可搬性を有する媒体である。
【0074】
以上、上記各実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【0075】
なお、本発明は、日本国にて2019年11月26日に特許出願された特願2019-213017の特許出願に基づく優先権主張の利益を享受するものであり、当該特許出願に記載された内容は、全て本明細書に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0076】
100 検出システム
200 皮膚電位センサ
210 電極
220 電極
230 差動増幅器
240 フィルタ
300 検出装置
310 画面表示部
320 音声出力部
330 通信I/F部
340 記憶部
341 皮膚電位水準情報
342 皮膚電位反射情報
350 演算処理部
351 測定結果取得部
352 状態検出部
353 警告部
40 検出装置
41 取得部
42 検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11