(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】電磁効果(EME)締め具用の二重保護内側シールワッシャ
(51)【国際特許分類】
F16B 43/00 20060101AFI20230111BHJP
F16J 15/06 20060101ALI20230111BHJP
B64C 1/00 20060101ALI20230111BHJP
B64D 45/02 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
F16B43/00 C
F16J15/06 M
B64C1/00 A
B64D45/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018128231
(22)【出願日】2018-07-05
【審査請求日】2021-06-16
(32)【優先日】2017-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】ショーン・ディー・モーデン
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・エー・コロナド
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ピー・ウィットロック
(72)【発明者】
【氏名】ハフトム・ワイ・デサレン
(72)【発明者】
【氏名】ジュリー・エム・ドレクスラー
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-511816(JP,A)
【文献】特開昭61-070216(JP,A)
【文献】米国特許第03170701(US,A)
【文献】中国実用新案第206234243(CN,U)
【文献】実開平04-073611(JP,U)
【文献】実開昭57-096811(JP,U)
【文献】特開2005-226692(JP,A)
【文献】特公昭45-024734(JP,B1)
【文献】特開2015-090217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64B 1/00- 1/70
B64C 1/00-99/00
B64D 1/00-47/08
B64F 1/00- 5/60
B64G 1/00-99/00
F16B 23/00-43/02
F16J 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重保護内側シールワッシャであって、
誘電体コーティング(59)を有し、外径(14)および内径(16)を有する半径方向外側金属部(12)と、
内径(22)および外径(20)を有し、境界面(42)で前記
半径方向外側金属部(12)にしまりばめで係合する半径方向内側ポリマー部(18)であって、前記
半径方向外側金属部(12)の前記内径(16)が前記
半径方向内側ポリマー部(18)の前記外径(20)を取り囲み、前記
半径方向内側ポリマー部が、孔(64)に近接する構造体(62)の表面に係合するために少なくとも1つのテーパ圧縮面(24、30)を有するとともに、締め具システム要素上の対合面(82、78)に係合するために締め具要素接触面(26、56)を有する、
半径方向内側ポリマー部と
を備え、前記締め具システム要素のトルキングが、前記少なくとも1つのテーパ圧縮面を圧縮して、前記締め具システム要素および前記構造体によって作られる接合部における前記半径方向内側ポリマー部に所定の圧力を引き起こす、
二重保護内側シールワッシャ。
【請求項2】
前記少なくとも1つのテーパ圧縮面が、前記半径方向内側ポリマー部の内径(ID)に近接する初期接触面(32、44)を備える、請求項1に記載の二重保護内側シールワッシャ。
【請求項3】
前記少なくとも1つのテーパ圧縮面が、前記初期接触面から前記半径方向内側ポリマー部の外径(OD)まで延伸するテーパセグメント(38、48)をさらに備える、請求項2に記載の二重保護内側シールワッシャ。
【請求項4】
前記締め具システム要素がナット(80)であり、前記締め具要素接触面が第2のテーパ圧縮面を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の二重保護内側シールワッシャ。
【請求項5】
前記締め具システム要素が締め具(66)であり、前記締め具要素接触面が、前記締め具上の対合面(78)の相補的係合のために構成された係合面(56)を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の二重保護内側シールワッシャ。
【請求項6】
前記対合面がフィレットであり、前記係合面が、前記フィレットに係合するために相補的半径を有するフィレット外面を備える、請求項5に記載の二重保護内側シールワッシャ。
【請求項7】
前記半径方向内側ポリマー部が、曲げ強さ16ksi~30ksiおよび圧縮強さ18ksi~40ksiを有する高強度ポリマーを備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の二重保護内側シールワッシャ。
【請求項8】
前記高強度ポリマーが、ポリアミドイミド(PAI)、30%ガラス充填PAI、30%ガラス充填ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、20%ガラス充填PEEK、10%ガラス充填PEEK、無充填PEEK、硫化ポリフェニレン(PPS)、またはポリエーテルイミド(PEI)から選択される、請求項7に記載の二重保護内側シールワッシャ。
【請求項9】
前記少なくとも1つのテーパ圧縮面の圧縮寸法が0.010+0.005-0.000インチである、請求項7または8に記載の二重保護内側シールワッシャ。
【請求項10】
前記半径方向内側ポリマー部の30%~75%の体積圧縮が
前記接合部における圧力
上昇を引き起こす、請求項7から9のいずれか一項に記載の二重保護内側シールワッシャ。
【請求項11】
前記誘電体コーティングが、100ボルト/ミルを超える絶縁破壊電圧を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の二重保護内側シールワッシャ。
【請求項12】
前記誘電体コーティングが、フェノール系塗料またはエポキシ樹脂系塗料である、請求項11に記載の二重保護内側シールワッシャ。
【請求項13】
締め具システムであって、
ヘッド、シャフトおよびねじ端部を有する締め具であって、前記シャフトおよび前記ねじ端部が、構造体の孔に受容されるように構成される、締め具と、
前記ねじ端部上に受容されるナットと、
前記ヘッドと前記構造体の第1の表面の間で前記シャフト上に受容される第1の二重保護内側シールワッシャであって、
誘電体コーティングを有し、外径(14)および内径(16)を有する半径方向外側金属部と
内径(22)および外径(20)を有し、境界面で前記半径方向外側金属部にしまりばめで係合する半径方向内側ポリマー部であって、前記
半径方向外側金属部(12)の前記内径(16)が前記
半径方向内側ポリマー部(18)の前記外径(20)を取り囲む半径方向内側ポリマー部と
を有し、前記半径方向内側ポリマー部が、前記孔に近接する前記第1の表面に係合するためにテーパ圧縮面を有するとともに、前記締め具ヘッド上の対合面に係合するために締め具要素接触面を有する、第1の二重保護内側シールワッシャと、
前記構造体の第2の表面と前記ナットの間で前記シャフト上に受容される第2の二重保護内側シールワッシャであって、
誘電体コーティングを有する半径方向外側金属部と
境界面で前記
半径方向外側金属部にしまりばめで係合する半径方向内側ポリマー部と
を有し、前記
半径方向内側ポリマー部が、前記孔に近接する構造体の表面に係合するための第1のテーパ圧縮面と前記ナットの表面に係合するための第2のテーパ圧縮面とを有する、第2の二重保護内側シールワッシャと、
を備え、
前記締め具および前記ナットのトルキングが、前記第1の二重保護内側シールワッシャの前記テーパ圧縮面と前記第2の二重保護内側シールワッシャの前記第1のテーパ圧縮面および前記第2のテーパ圧縮面とを圧縮して、前記締め具、前記ナットおよび前記構造体によって作られる接合部における前記第1の二重保護内側シールワッシャの前記半径方向内側ポリマー部および前記第2の二重保護内側シールワッシャの前記半径方向内側ポリマー部に所定の圧力を引き起こす、
締め具システム。
【請求項14】
前記テーパ圧縮面、前記第1のテーパ圧縮面および前記第2のテーパ圧縮面がそれぞれ、前記
半径方向内側ポリマー部の内径(ID)に近接する初期接触面を備える、請求項13に記載の締め具システム。
【請求項15】
前記テーパ圧縮面、前記第1のテーパ圧縮面および前記第2のテーパ圧縮面がそれぞれ、前記初期接触面から前記
半径方向内側ポリマー部の外径(OD)まで延伸するテーパセグメントをさらに備える、請求項14に記載の締め具システム。
【請求項16】
前記
半径方向内側ポリマー部が、曲げ強さ16ksi~30ksiおよび圧縮強さ18ksi~40ksiを有する高強度ポリマーを備える、請求項13から15のいずれか一項に記載の締め具システム。
【請求項17】
前記テーパ圧縮面の圧縮寸法が0.010+0.005-0.000インチである、請求項16に記載の締め具システム。
【請求項18】
接合部における電磁効果保護を高める方法であって、
締め具を、
誘電体コーティングを有する半径方向外側金属部と少なくとも1つの圧縮面および前記締め具に係合するための係合面を有する半径方向内側ポリマー部とを有する締め具側二重保護内側シールワッシャに通して挿入するステッ
プと、
前記締め具のシャフトを構造体の孔に挿入するステップであって、前記
締め具側二重保護内側シールワッシャが、前記圧縮面で前記孔に隣接する前記構造体の第1の表面に係合する、ステップと、
誘電体コーティングを有する半径方向外側金属部と第1の圧縮面および第2の圧縮面を有する半径方向内側ポリマー部とを有するナット側二重保護内側シールワッシャを前記締め具のねじ端部
で受容するステップであって、前記第1の圧縮面が前記孔に隣接する前記構造体の第2の表面に係合
する、ステップと、
前記締め具の前記ねじ端部上にナットを受容して前記第2の圧縮面に係合するステップと、
前記締め具側二重保護内側シールワッシャの前記少なくとも1つの圧縮面と前記ナット側二重保護内側シールワッシャの前記第1の圧縮面および前記第2の圧縮面とを圧縮して前記接合部における所定の圧力上昇を引き起こすために、前記ナットおよび前記締め具にトルクを与えるステップと、
を含む、方法。
【請求項19】
トルクを与える前記ステップが、
前記少なくとも1つの圧縮面を圧縮して、ポリマーが流れるための利用可能空間がもはやなくなり、さらなる圧縮が前記接合部における所定の圧力上昇を引き起こすまで、前記締め具のシャフトに内向きの力を、前記
半径方向外側金属部の内径に外向きの力を、前記締め具上の対合面フィレットおよび前記構造体の前記第1の表面に対して横方向に力を及ぼすために前記締め具側二重保護内側シールワッシャの前記
半径方向内側ポリマー部を押しやるステップ
をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
トルクを与える前記ステップが、
前記第1の圧縮面および前記第2の圧縮面を圧縮して、ポリマーが流れるための利用可能空間がもはやなくなり、さらなる圧縮が前記接合部における所定の圧力上昇を引き起こすまで、前記締め具の前記シャフトに内向きの力を、前記
半径方向外側金属部の内径に外向きの力を、前記ナットおよび前記構造体の前記第2の表面に対して横方向に力を及ぼすために前記ナット側二重保護内側シールワッシャの前記
半径方向内側ポリマー部を押しやるステップ
をさらに含む、請求項18または19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の諸実施形態は、一般に、雷保護を向上させるための締め具の密封に関し、より詳細には、ワッシャと一体化したポリマー/エラストマーシールを有するワッシャの実施形態に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の複合構造は、有意な重量減少および性能向上をもたらす。しかしながら、特に外板または表面当て物において複合物の導電性が低下すると、特に金属締め具が使用される場所では、雷保護に関する電磁効果(EME)に関して問題を引き起こすことがある。
【0003】
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)構造体に落雷すると、電流のかなりの部分が締め具を通って近くの構造体に入ることがある。電気エネルギーが2つの表面の間を通るときに、接触抵抗加熱が材料を破壊し、孔の中に、または締め具とナットとの間の空間に熱ガス(またはプラズマ)を発生させることがある。発生圧力が十分大きいと、ガスは低圧経路を見つけ、締め具システムから漏れ出ることがある。この経路は、突出する締め具ヘッドの下の表面にある場合がある。こうして漏れるガスは、ガスが漏れるときに金属部品(締め具または構造体)を浸食するほど熱くなり、粒子または液滴を生成することがある。
【0004】
締め具ヘッドの外面と構造体または締め具スリーブとの間にアーク放電が起こることもある。落雷の電気エネルギーが構造接合部間を伝導されると、このエネルギーは金属締め具を通過する。いくつかの締め具の突出する締め具ヘッドは、締め具ヘッド縁部とヘッドと接触している構造体との間でアーク放電を受けている。アーク放電は、締め具ヘッドと構造体との間に、あるいは、スリーブ付き締め具が使用されている場合は締め具ヘッドとスリーブとの間に存在することがある。
【0005】
従来技術における好ましい一解決法が、予め成形されたシーラントキャップの使用である。シーラントキャップは特別に製造されなければならず、締め具ヘッドの個別洗浄および準備を含む多くの設置ステップが必要になる。シーラントキャップは、液体シーラントを使用して締め具ヘッドに設置され、次いで、液体シーラントは硬化しなければならない。これらの従来技術の解決法は、望ましくない追加のコストおよび重量をもたらす可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
例示的な諸実施形態は二重保護内側シールワッシャを提供し、二重保護内側シールワッシャは、誘電体コーティングを有する半径方向外側金属部と境界面で金属部にしまりばめで係合する半径方向内側ポリマー部とを使用している。ポリマー部は、孔に近接する構造体の表面に係合するために少なくとも1つのテーパ圧縮面を有し、さらに、締め具システム要素上の対合面に係合するために締め具要素接触面を有する。締め具要素のトルキングが少なくとも1つの圧縮面を圧縮して、締め具要素および構造体によって作られる接合部内のポリマー部に所定の圧力を引き起こす。
【0007】
締め具システムが諸実施形態によって受け入れられ、ヘッド、シャフトおよびねじ端部を有する締め具が構造体の孔に受容される。ナットがねじ端部上に受容され、ヘッドと構造体の第1の表面の中間でシャフト上に受容される第1の二重保護内側シールワッシャが、誘電体コーティングを有する半径方向外側金属部、および、境界面で半径方向外側金属部にしまりばめで係合する半径方向内側ポリマー部を有する。ポリマー部は、孔に近接する第1の表面に係合するためにテーパ圧縮面を有するとともに、締め具ヘッド上の対合面に係合するために締め具要素接触面を有する。構造体の第2の表面とナットの中間でシャフト上に受容される第2の二重保護内側シールワッシャが、誘電体コーティングを有する半径方向外側金属部、および、境界面で半径方向外側金属部にしまりばめで係合する半径方向内側ポリマー部を有する。ポリマー部は、孔に近接する構造体の表面に係合する第1のテーパ圧縮面とナットの表面に係合する第2のテーパ圧縮面とを有する。締め具およびナットのトルキングが、第1の二重保護内側シールワッシャのテーパ圧縮面と第2の二重保護内側シールワッシャの第1のテーパ圧縮面および第2のテーパ圧縮面とを圧縮して、締め具、ナットおよび構造体によって作られる接合部内の第1の二重保護内側シールワッシャの半径方向内側ポリマー部および第2の二重保護内側シールワッシャの半径方向内側ポリマー部に所定の圧力を引き起こす。
【0008】
諸実施形態は、接合部内の電磁効果保護を高める方法を可能にする。締め具が、半径方向外側金属部と少なくとも1つの圧縮面および締め具に係合するための係合面を有する半径方向内側ポリマー部とを有する締め具側二重保護内側シールワッシャに通して挿入される。締め具のシャフトが構造体の孔に挿入されて、二重保護内側シールワッシャは、圧縮面で孔に隣接する構造体の第1の表面に係合する。半径方向外側金属部と第1の圧縮面および第2の圧縮面を有する半径方向内側ポリマー部とを有するナット側二重保護内側シールワッシャは締め具のねじ端部の上方に受容され、第1の圧縮面は孔に隣接する構造体の第2の表面に係合する。ナットが締め具のねじ端部上に受容されて第2の圧縮面に係合する。次いで、ナットおよび締め具は、締め具側二重保護内側シールワッシャの少なくとも1つの圧縮面とナット側二重保護内側シールワッシャの第1の圧縮面および第2の圧縮面とを圧縮して接合部内に所定の圧力上昇を引き起こすために、トルクを与えられる。
【0009】
論じられている形態、機能、および利点は、本発明の様々な実施形態で独立に実現することができる、あるいは他の実施形態では組み合わされてもよく、かかる形態、機能、および利点のさらなる詳細は、下記の説明および図面を参照して理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】二重保護内側シールワッシャの例示的な一実施形態の上面図である。
【
図2】ナット側二重保護内側シールワッシャの図形表示図である。
【
図3】締め具側二重保護内側シールワッシャの上方斜視図である。
【
図4】締め具側二重保護内側シールワッシャの下方斜視図である。
【
図5】ナット側二重保護内側シールワッシャの断面斜視図である。
【
図6】ナット側二重保護内側シールワッシャの詳細断面図である。
【
図7】締め具側二重保護内側シールワッシャの断面斜視図である。
【
図8】締め具側二重保護内側シールワッシャの詳細断面図である。
【
図9】締め具およびナットと共に締め具側二重保護内側シールワッシャおよびナット側二重保護内側シールワッシャを使用した締め具システムを有する例示的な接合部の断面図である。
【
図10】角度ずれした孔を有する例示的な接合部の断面図である。
【
図11】角度ずれした孔を有する例示的な接合部の詳細図である。
【
図12】EME保護を高めるために接合部内に締め具およびナットを密封する方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に記載の諸実施形態は、締め具のナット側とヘッド側の両方に適用される二重保護内側シールワッシャを提供する。二重保護内側シールワッシャは、半径方向外側金属部とこの金属部の内径の中にプレスばめされた半径方向内側ポリマー部とを使用している。金属部は高誘電性コーティングを使用している。ポリマー部は内径の肉厚部でテーパ状になっており、この肉厚部は、締め具システム要素(締め具およびナット)にトルクを与えることによって引き起こされる圧縮を受けて変形してシールを作り出す。ポリマー部のテーパの寸法決定では、締め具システムおよび構造体によって作られる接合部が締め付けられた場合に、ポリマーが流れるための利用可能空間がもはやなくなり、さらなる圧縮が接合部において所定の圧力上昇を引き起こすまで、ポリマー部は、締め具のシャンクに内向きの力を、金属部の内径(ID)に外向きの力を、締め具ヘッドもしくはナット表面および構造体に対して横方向に力を作用させるものとする。ポリマー部は、非圧縮性流体として働いて締め具システム(締め具およびナット)の表面と構造体の表面との間に高圧ゾーンを作る状態に圧縮される。ワッシャの直径サイズを基準にして30%~75%の体積圧縮で、ポリマー部における所望の特性を実現する。ポリマー部の圧力は構造接合部に波面を作り出す。孔に沿って外方へ約0.010インチの構造体は、構造体、ワッシャの金属部および締め具本体だけが取り残されるまで、接合部における圧力をわずかに散逸してほとんどの力を含んでいる。この増大した力ゾーン/圧力波は、落雷時に増大する高エネルギー発生を含んでいる。締結された接合部の増大した力ゾーンは、雷が引き起こす圧力上昇の力ゾーンよりも大きい。電気エネルギーが消散し接合部が冷え始めると、雷による圧力は通気されることなく弱まる。
【0012】
落雷または他のEME事象の間、金属部のコーティングの高誘電性材料は、シール付近の要素間のアーク放電を妨げる。落雷は、締め具の孔に熱ガス/プラズマを発生させる。接合部のポリマー部および隣接要素による局所的高圧接触が、シールを通り過ぎる熱ガス/プラズマの漏れに耐える。さらに、高圧ガスが締め具と構造体の孔との間から漏れようとすると、ガスは、ポリマー部および圧縮ポリマー部によって作られた高圧ゾーンに接触して圧力スパイクを引き起こし、圧力スパイクは複合構造体に亀裂を発生させることができる。二重保護内側シールワッシャが存在しないと、そうした亀裂は構造体の近傍で起こり、表面に達したときに、構造体がまだ白熱している(熱い)間にガスを逃がすことができる。シールによって生成される高接触圧力は、表面近傍の亀裂を妨げるのを支援する。したがって、亀裂は構造体のより深いところで起きるので、表面に達する数が減少し、ガスが表面に達するための亀裂内の移動距離がさらに長くなり、ガスは抜ける前に冷却することが可能になる。
【0013】
図面を参照すると、
図1は、二重保護内側シールワッシャ10の例示的な一実施形態を示す。外径(OD)14および内径(ID)16を有する半径方向外側金属部12が、外径20および内径22を有する半径方向内側ポリマー部18を取り囲む。
【0014】
ナット側二重保護内側シールワッシャ10aが
図2に示されており、ポリマー部18a上の対称テーパ面24、26を使用しており(後でより詳細に説明する)、一方のテーパ面はナット表面に接触し、他方のテーパ面は構造体の表面に接触する。締め具側二重保護内側シールワッシャ10bが
図3に示されており、締め具接触面を示しているのに対して、
図4は構造接触面を示している。ポリマー部18bは、締め具接触側にフィレット接触面28を有し(後でより詳細に説明する)、構造体接触側にテーパ面30を有する(後でより詳細に説明する)。
【0015】
ナット側二重保護内側シールワッシャの実施形態の詳細が
図5および
図6に示されている。二重保護内側シールワッシャ10aのポリマー部18aの対称テーパ面24、26は、ポリマー部のIDに近接しかつ径方向幅34を有する初期接触面32を使用している。テーパセグメント38は、境界面42で厚さ36を有する金属部12にしまりばめで係合するために、ポリマー部18aの厚さが初期接触面32から半径方向外側に圧縮寸法40だけ減少する。例示的な諸実施形態では、ポリマー部18aの成形されたままのODは、所望の保持力を与えるために、金属部12のID16よりも0.0000インチ~0.0050インチ大きい。
【0016】
例示的な諸実施形態では、ポリマー部18aは、曲げ強さ16ksi~30ksiおよび圧縮強さ18ksi~40ksiを有する高強度ポリマーを使用している。適切なポリマーの例は、Solvay Specialty Polymersから市販されているTorlon(登録商標)などのポリアミドイミド(PAI)、30%ガラス充填PAI、30%ガラス充填ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、20%ガラス充填PEEK、10%ガラス充填PEEK、無充填PEEK、硫化ポリフェニレン(PPS)、またはポリエーテルイミド(PEI)を含む。高強度ポリマー例では、例示的な圧縮寸法40は0.010+0.005-0.000インチであり、初期接触幅34は、例示的な諸実施形態では0.015+-0.005インチである。ポリマー部ID 22と金属部ID 16の比は、変化するワッシャサイズに対して1.2~1.3である。厚さ36は、前述の通り接合部における所定の圧力を確立するために圧縮寸法40を基準にして実質的に一定の体積圧縮ファクタを与えるように設定される。
【0017】
締め具側二重保護内側シールワッシャ10bの詳細が
図7および
図8に示されている。ナット側ワッシャとは異なり、締め具側二重保護内側シールワッシャ10bは、構造体の表面を径方向幅46を有する初期接触面44に係合させるために(後でより詳細に説明する)、第1のテーパ面30を有するポリマー部18bを使用している。テーパセグメント48は、境界面54で厚さ52を有する金属部12にしまりばめで係合するために、ポリマー部18bの厚さが初期接触面44から半径方向外側に圧縮寸法50だけ減少する。例示的な諸実施形態では、ポリマー部18bの成形されたままのODは、所望の保持力を与えるために、金属部12のID16よりも0.0000インチ~0.0050インチ大きい。半径58を有するフィレット係合面56が、締め具ヘッド上のフィレットなどの対合面の相補的係合を可能にするために、ポリマー部18b上に設けられる(後でより詳細に説明する)。例示的な諸実施形態では、半径58は、対合締め具上のフィレットの半径より小さい0.0001インチ~0.0300インチである(後でより詳細に説明する)。半径58はヘッドフィレット78までのボルトシャンクの半径より小さいので(続いて
図9に関して論じる)、2つの境界面の間に締め代および圧縮を作り出す。
【0018】
例示的な諸実施形態では、ポリマー部18bは、ナット側ワッシャに関して上述したように、例示的な圧縮寸法50が0.010+0.005-0,000インチであり、初期接触幅46が0.015+-0.005インチである同等の高強度ポリマーを使用している。ポリマー部ID 22と金属部ID 16の比は、変化するワッシャサイズに対して1.2~1.3である。厚さ52は、フィレット上のフィレット外面56の反応を用いて前述の通り接合部における所定の圧力を確立するために締め具圧縮寸法50を基準にして実質的に一定の体積圧縮ファクタを与えるように設定される。
【0019】
テーパセグメント38および48は、例示的な諸実施形態では直線として示されているが、代替実施形態では曲線状または弓状でもよい。
【0020】
ナット側二重保護内側シールワッシャ10aおよび締め具側二重保護内側シールワッシャ10bでは共に、誘電体コーティング(図面に要素59として表されている)がワッシャの金属部12の全表面に塗布される。誘電体コーティングは、100ボルト/ミルを超える絶縁破壊電圧をもたらす。例示的な諸実施形態では、厚さ0.0002インチ~0.0010インチのフェノール系塗料またはエポキシ樹脂系塗料や2度塗りで塗布して厚さ0.0005インチ~0.0020インチにしたエポキシ樹脂系塗料などの誘電体が使用されている。典型的な好ましい硬化性有機誘電体コーティングは、1つまたは複数の可塑剤、ポリテトラフルオロエチレンなどの他の有機成分、およびアルミニウム粉末などの無機添加物と混合されたフェノール樹脂を有する。これらのコーティング成分は、所望の塗布粘稠性をもたらす量で存在する適切な溶媒に溶解されることが好ましい。いくつかの実施形態によれば、コーティング材料は、エタノール、トルエン、およびメチルエチルケトンの混合物である溶媒に溶解される。典型的な噴霧可能なコーティング溶液は、溶媒としての約30重量%エタノール、約7重量%トルエン、および約45重量%メチルエチルケトンと、コーティング材料としての約2重量%クロム酸ストロンチウム、約2重量%アルミニウム粉末、および残りのフェノール樹脂および可塑剤と、を有する。少量のポリテトラフルオロエチレンが随意に添加されてもよい。1つの適切なコーティングが、LISI Aerospaceから市販されているHI-KOTE(商標)1である。HI-KOTE(商標)1コーティング材料は、通常、350~450°Fの高温で1時間~4時間かけて硬化される。さらに重い元素は、例示的な一実施形態では次の重量%の量で存在する、すなわちAl、82.4重量%、Cr、2.9重量%、Fe、0.1重量%、Zn、0.7重量%、およびSr、13.9重量%で存在する。
【0021】
完成した締め具システム60が
図9に示されており、孔64を有する構造体62(各図面に単一要素として示されているが、複数の層または接合された構造要素でもよい)内に接合部を作り出す。ねじ端部72を有するシャフト70にヘッド68が取り付けられている締め具66が、構造体62の第1の表面74に係合する締め具側二重保護シールワッシャ10bと第2の表面76に係合するナット側二重保護シールワッシャ10aとを貫通して延伸する。締め具側二重保護シールワッシャ10bのフィレット外面56は、締め具ヘッド68とシャフト70の境界面でフィレット78と係合するために相補的半径を有する。ナット80がねじ端部72上に係合され、ナット側二重保護シールワッシャ10aを表面82に係合させる。前述の通り、締め具システム60のトルキングは、締め具66のフィレット78を締め具側二重保護シールワッシャ10b上のフィレット外面56に係合させるとともに、初期接触面44を構造体表面74に係合させるのに対して、ナット側二重保護シールワッシャ10aの対称テーパ面24、26上の初期接触面32はそれぞれ、構造体表面76およびナット表面82に係合する。ポリマー部の圧縮は、締め具システム60によって作られる接合部において所定の圧力上昇を引き起こす。前述した誘電体コーティング59は、締め具システム60の金属表面と構造体表面74、76との間にバリヤを提供し、それによってナット、ワッシャ、または締め具ヘッドおよび構造体の縁部でのアーク放電を妨げる。
【0022】
締め具側二重保護シールワッシャ10bのポリマー部18b上のフィレット外面56により、締め具66のフィレットを収容するために孔64を皿もみする必要がなくなる。
【0023】
さらに、二重保護シールワッシャ10a、10bの幾何学的構成により、締め具システム60が孔64の角度ずれを吸収することが可能になる。
図10および
図11に見られるように、接合部の孔の垂直に対する許容差は、孔が延伸している構造体62に対して角度86を有する角度ずれした孔84をもたらす可能性がある。この角度オフセットは、孔84の中に締め具シャフト70を心合わせすることにより、締め具システム60内に相補的オフセット角度88をもたらす。典型的な許容できる孔の角度公差は約2°であるのに対して、締め具側二重保護内側シールワッシャ10bおよびナット側二重保護内側シールワッシャ10aの例示的な諸実施形態は、ポリマーシール部18a、18bのテーパセグメント38および48の寸法決定に基づいてシール有効性を得るための所要の圧縮を維持しながら、最大で7°の角度オフセットを許容する。
【0024】
二重保護内側シールワッシャについて開示される諸実施形態は、
図12に示されているEME保護を高める方法を可能にする。締め具66が、半径方向外側金属部12と少なくとも1つの圧縮面30および締め具66に係合するための係合面28を有する半径方向内側ポリマー部18bとを有する締め具側二重保護内側シールワッシャ10bに通して挿入される、ステップ1202。締め具シャフト70は構造体62の孔64に挿入され、二重保護内側シールワッシャ10bは、圧縮面30で孔64に隣接する構造体の第1の表面74に係合する、ステップ1204。半径方向外側金属部12と第1の圧縮面24および第2の圧縮面26を有する半径方向内側ポリマー部18aとを有するナット側二重保護内側シールワッシャが締め具66のねじ端部72の上方に受容されて、第1の圧縮面24は孔64に隣接する構造体の第2の表面76に係合する、ステップ1206。ナット80が締め具のねじ端部72上に受容され、第2の圧縮面26に係合する、ステップ1208。ナットおよび締め具は、締め具側二重保護内側シールワッシャの圧縮面の少なくとも一方を圧縮するためにトルクを与えられ、ステップ1210、ナット側二重保護内側シールワッシャの第1の圧縮面および第2の圧縮面を圧縮するためにトルクを与えられ、ステップ1212、一方または両方の圧縮面30の圧縮は、ポリマーが流れるための利用可能空間がもはやなくなり、さらなる圧縮が接合部において所定の圧力上昇を引き起こすまで、締め具のシャンクに内向きの力を、金属部のIDに外向きの力を、締め具ヘッド68上の対合面フィレット78および構造体の第1の表面74に対して横方向に力を及ぼすためにポリマー部18bを押しやり、第1の圧縮面24および第2の圧縮面26の圧縮は、ポリマーが流れるための利用可能空間がもはやなくなり、さらなる圧縮が接合部において所定の圧力上昇を引き起こすまで、締め具66のシャフト70に内向きの力を、金属部のIDに外向きの力を、表面82にあるナット80および構造体62の第2の表面76に対して横方向に力を及ぼすためにポリマー部18aを押しやる、ステップ1214。
【0025】
本発明の様々な実施形態を特許法によって必要とされる通り詳細に説明してきた今、当業者なら、本明細書で開示される特定の実施形態に対する変更および置換を認識するであろう。かかる変更は、下記の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲および意図内にある。
【符号の説明】
【0026】
10 二重保護内側シールワッシャ
10a ナット側二重保護内側シールワッシャ
10b 締め具側二重保護内側シールワッシャ
12 半径方向外側金属部
14 外径(OD)
16 内径(ID)
18 半径方向内側ポリマー部
18a 半径方向内側ポリマー部、ポリマーシール部
18b 半径方向内側ポリマー部、ポリマーシール部
20 外径
22 内径
24 対称テーパ面、第1の圧縮面
26 対称テーパ面、第2の圧縮面
28 フィレット接触面、係合面
30 テーパ面、圧縮面
32 初期接触面
34 径方向幅、初期接触幅
36 厚さ
38 テーパセグメント
40 圧縮寸法
42 境界面
44 初期接触面
46 径方向幅、初期接触幅
48 テーパセグメント
50 締め具圧縮寸法
52 厚さ
54 境界面
56 フィレット係合面、フィレット外面
58 半径
59 誘電体コーティング
60 締め具システム
62 構造体
64 孔
66 締め具
68 締め具ヘッド
70 締め具シャフト
72 ねじ端部
74 第1の表面、構造体表面
76 第2の表面、構造体表面
78 ヘッドフィレット、対合面フィレット
80 ナット
82 表面、ナット表面
84 孔
86 角度
88 相補的オフセット角度