(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】魚体処理装置
(51)【国際特許分類】
A22C 25/14 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
A22C25/14
(21)【出願番号】P 2018154558
(22)【出願日】2018-08-21
【審査請求日】2021-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】302022795
【氏名又は名称】有光 理晴
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有光 功
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-202652(JP,A)
【文献】特表2008-516587(JP,A)
【文献】実開昭48-059700(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C 25/00-25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚のえらを含む内臓を除去する魚体処理装置であって、
腹部を上側にして頭尾方向に沿って頭部付きの魚体を略水平方向に搬送する魚体搬送装置と、
前記魚体搬送装置により搬送される前記魚体の腹部を頭部から肛門近傍に亘って切開する腹部切開装置と、
前記魚体の切開された腹部の左右の両身を左右に開く腹開き装置と、
上下移動可能且つ垂直軸線周りに回転可能な爪支持部材及び前記爪支持部材に設けられて前記腹開き装置による腹開き状態の前記魚体の左右の両身間の腹腔内に進入可能且つ前記えらを含む内臓を把持可能な一対の把持爪を含む内臓除去装置とを有し、
前記内臓除去装置は前記内臓を把持した前記一対の把持爪の垂直軸線周りの回転及び上下移動により前記えらを含む内臓を除去すべく構成されている魚体処理装置。
【請求項2】
前記魚体搬送装置の魚体搬送方向で見て前記内臓除去装置より上流側に位
置し、前記魚体のえら元を切断するえら元切断装置を有する請求項1に記載の魚体処理装置。
【請求項3】
前記腹部切開装置は電動機によって回転駆動される回転カッタを含む請求項1又は2に記載の魚体処理装置。
【請求項4】
前記えら元切断装置は上側から押切りを行う上下移動可能な押切り刃を含む
請求項2に記載の魚体処理装置。
【請求項5】
前記魚体搬送装置の魚体搬送方向で見て前記内臓除去装置より上流側に位置し、前記魚体のえら元を切断するえら元切断装置を有し、前記えら元切断装置は上側から押切りを行う上下移動可能な押切り刃を含み、
更に、前記回転カッタ及び前記押切り刃の双方を支持し、上下移動可能且つ水平軸線周りに180度回転可能にタレット部材を有する
請求項3に記載の魚体処理装置。
【請求項6】
前記魚体搬送装置の魚体搬送方向で見て前記内臓除去装置より下流側に位置にし、前記腹開き装置による腹開き状態の前記魚体の左右の両身間の腹腔内に進入可能に設けられて頭尾方向に沿う揺動運動により前記魚体の血あいの除去を行う血あい除去装置を有する請求項1~5の何れか一項に記載の魚体処理装置。
【請求項7】
前記腹開き装置は、前記魚体搬送装置の魚体搬送方向で見て前記内臓除去装置より上流側に位置する部分を含む第1の腹開き装置と、前記血あい除去装置より上流側に位置する部分を含む第2の腹開き装置とを個別に有する請求項6に記載の魚体処理装置。
【請求項8】
前記魚体搬送装置の魚体搬送方向で見て前記血あい除去装置より下流側に位置にし、前記腹開き装置による腹開き状態の前記魚体の左右の両身間に進入可能に設けられて前記魚体の清掃を行う回転ブラシを含む清掃装置を有する請求項6又は7に記載の魚体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は魚体処理装置に関し、更に詳細には、ハマチ、鯛等の大~中型魚のえら(鰓)を含む内蔵を除去するガッチングマシンに属する魚体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送ベルト等によって魚体を搬送しつつ回転プーリ等によって内蔵を腹腔から除去するガッチング処理を行う魚体処理装置は、従来から種々知られている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-70760号公報
【文献】特開平9-74991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガッチング処理を行う従来の魚体処理装置は、えらを含む頭部が切除された、鯖、鰺、鱈等の魚種のドレス(ヘッドレス)を処理対象としており、えらを含む頭部付きの魚体のえらを除去することができない。従来、ハマチ、鯛等の大~中型魚のえらの除去は、水産加工の作業者が手作業によって行われている。特に、鯛は、お頭付きの料理があるため、頭部付きの魚体のえらを除去することの需要が大きい。
【0005】
えらを除去する作業は、腕、指先に力を要し、血等が飛散する劣悪な環境で行われるから、水産業界において、作業負担の軽減、作業環境の改善に加えて衛生面からも、えらを除去する作業を機械化する要望がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、上述の如き要望に鑑み、頭部付きの魚体のえらの除去を、作業者の手作業に依らずに機械的に行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの実施形態による本発明による魚体処理装置は、魚のえらを含む内臓を除去する魚体処理装置であって、腹部を上側にして頭尾方向に沿って頭部付きの魚体(W)を略水平方向に搬送する魚体搬送装置(18)と、前記魚体搬送装置(18)により搬送される前記魚体(W)の腹部を頭部から肛門近傍に亘って切開する腹部切開装置(54)と、前記魚体(W)の切開された腹部の左右の両身を左右に開く腹開き装置(80、180)と、上下移動可能且つ垂直軸線周りに回転可能な爪支持部材(122)及び前記爪支持部材(122)に設けられて前記腹開き装置(80、180)による腹開き状態の前記魚体(W)の左右の両身間の腹腔内に進入可能且つ前記えらを含む内臓を把持可能な一対の把持爪(126)を含む内臓除去装置(100)とを有し、前記内臓除去装置(100)は前記内臓を把持した前記一対の把持爪(126)の垂直軸線周りの回転及び上下移動により前記えらを含む内臓を除去すべく構成されている。
【0008】
この構成によれば、切開された腹部の左右の両身が左右に開かれた状態で、上方から腹腔内に一対の把持爪(126)が進入し、一対の把持爪(126)の魚体(W)のえらを掴み、一対の把持爪(126)が垂直軸線周りに回転可能することにより、えらが魚体本体から切り離され、一対の把持爪(126)がえらを掴んだ上昇することで、頭部付きの魚体(W)のえらの除去が作業者の手作業に依らずに機械的に行われる。
【0009】
上記魚体処理装置において、好ましくは、前記魚体搬送装置(18)の魚体搬送方向で見て前記内臓除去装置(100)より上流側に位置にし、前記魚体(W)のえら元を切断するえら元切断装置(56)を有する。
【0010】
この構成によれば、ハマチ等の大型の魚のえら取りにおいて、えら元が魚体本体から切断され、ハマチ等の魚のえら取りが的確に行われる。
【0011】
上記魚体処理装置において、好ましくは、前記腹部切開装置(54)は電動機(58)によって回転駆動される回転カッタ(60)を含む。
【0012】
この構成によれば、魚体搬送装置(18)によって搬送されている状態の魚体(W)の腹部を頭部から肛門近傍に亘って切開することが的確に行われる。
【0013】
上記魚体処理装置において、好ましくは、前記えら元切断装置(56)は上側から押切りを行う上下移動可能な押切り刃(62)を含む。
【0014】
この構成によれば、簡単な構成により、えら元を魚体本体から切断することが的確に行われる。
【0015】
上記魚体処理装置において、好ましくは、前記回転カッタ(60)及び前記押切り刃(62)の双方を支持し、上下移動可能且つ水平軸線周りに180度回転可能にタレット部材(52)を有する。
【0016】
この構成によれば、回転カッタ(60)と押切り刃(62)との上下移動機構が共用され、構造が簡素化されると共に魚体処理装置をコンパクト化できる。
【0017】
上記魚体処理装置において、好ましくは、前記魚体搬送装置(18)の魚体搬送方向で見て前記内臓除去装置(100)より下流側に位置にし、前記腹開き装置(80、180)による腹開き状態の前記魚体(W)の左右の両身間の腹腔内に進入可能に設けられて頭尾方向に沿う揺動運動により前記魚体(W)の血あいの除去を行う血あい除去装置(200)を有する。
【0018】
この構成によれば、内蔵除去後の魚体(W)の血あい除去が的確に行われる。
【0019】
上記魚体処理装置において、好ましくは、前記腹開き装置(80、180)は、前記魚体搬送装置(18)の魚体搬送方向で見て前記内臓除去装置(100)より上流側に位置する部分を含む第1の腹開き装置(80)と、前記血あい除去装置(200)より上流側に位置する部分を含む第2の腹開き装置(180)とを個別に有する。
【0020】
この構成によれば、内臓除去ための腹開きと血あい除去のための腹開きとを個別の適切なタイミングで行うことできる。
【0021】
上記魚体処理装置において、好ましくは、前記魚体搬送装置(18)の魚体搬送方向で見て前記血あい除去装置(200)より下流側に位置にし、前記腹開き装置による腹開き状態の前記魚体(W)の左右の両身間に進入可能に設けられて前記魚体(W)の清掃を行う回転ブラシ(220)を含む清掃装置(200)を有する。
【0022】
この構成によれば、内蔵及び血あい除去後の魚体(W)の清掃が的確に行われる。
【発明の効果】
【0023】
本発明による魚体処理装置によれば、頭部付きの魚体のえらの除去が作業者の手作業に依らずに機械的に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明による魚体処理装置の一つの実施形態を示す全体図
【
図3】本実施形態による魚体処理装置のえら元切断・腹部切開部の正面図
【
図4】本実施形態による魚体処理装置の第1の腹開き部の正面図
【
図5】本実施形態による魚体処理装置の内臓除去部の部分断面の正面図
【
図6】本実施形態による魚体処理装置の第2の腹開き部の正面図
【
図7】本実施形態による魚体処理装置の第2の血あい除去・清掃部の側面図
【
図8】本実施形態による魚体処理装置の各部の動作タイミングを示すタイムチャート
【
図9】本発明による魚体処理装置の他の実施形態を示す全体図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明による魚体処理装置の一つの実施形態を、
図1~
図8を参照して説明する。
【0026】
本実施形態による魚体処理装置は、
図1及び
図2に示されているように、床面上に設置される長方体枠状の本体フレーム10を有する。本体フレーム10には魚体投入台12、制御装置15及び操作盤14が取り付けられている。操作盤14は、機械的な操作ボタン(不図示)、タッチパネル付き液晶表示器等によるモニタ(不図示)を有し、ハマチ、鯛等の魚の種類に応じた処理が行われるべく、処理対象の魚の種類を選択設定する。
【0027】
本体フレーム10には、
図1~
図3に示されているように、前後方向(
図1及び
図2で見て左右方向)に略水平に直線状に延在する下部魚体案内部材16が取り付けられている。下部魚体案内部材16は、
図3で見て左右に隔置された2個のレール部材16A及16Bを含み、上端の傾斜によって正面視でV字形をなしている。
【0028】
本実施形態による魚体処理装置において取り扱われる魚体Wは、頭部付きのハマチ、鯛等の大~中型魚のものであり、腹部を上側且つ頭部を前側にして、作業者によって魚体投入台12から下部魚体案内部材16上に投入される。下部魚体案内部材16は、レール部材16A及16B上に魚体Wの背部を受け止めて魚体Wをレール部材16A及16Bの延在方向にスライド可能に支持する。2個のレール部材16A及16Bの間隔は魚体Wの背びれが進入するためのものである。
【0029】
本体フレーム10には、
図1~
図3に示されているように、魚体Wの搬送を行う魚体搬送装置18が設けられている。魚体搬送装置18は、電動ベルトコンベア式のものであり、左右一対のプーリ支持部材20を有する。各プーリ支持部材20は、前後方向に延在し、各々駆動プーリ22、従動プーリ24を垂直軸線周りに回転可能に支持している。各駆動プーリ22と各従動プーリ24との間には左右の各無端ベルト26が掛け渡されている。
【0030】
各無端ベルト26は各駆動プーリ22が各駆動プーリ22に対する個別の電動モータ23によって回転駆動されることにより各駆動プーリ22と各従動プーリ24との間を循環走行する。左右の無端ベルト26は、各従動プーリ24、各駆動プーリ22及び各案内プーリ28に案内されて前後方向に直線状に延在する部分を含み、直線状に延在する部分において左右の間隔をおいて互い対向しており、下部魚体案内部材16上の魚体Wの横腹部を左右から挟んで魚体W前方(
図1及び
図2で見て右側から左側)に向けて搬送する。
【0031】
各プーリ支持部材20は、
図3に示されているように、本体フレーム10に設けられた案内部材30に係合して左右方向に移動可能に取り付けられている。左右のプーリ支持部材20は、リンク部材32及びセクタギア34等によって互いに連結され、互いに同期して左右に変位する。一方のプーリ支持部材20には空気圧シリンダ装置36が各無端ベルト26連結されている。空気圧シリンダ装置36は一方のプーリ支持部材20を左右方向に変位させる。これにより、左右の無端ベルト26の左右方向の間隔が可変設定され、魚体搬送装置18は太さが異なる各種の魚体Wを搬送することができる。
【0032】
各駆動プーリ22は各駆動プーリ22に対する個別の電動モータ23によって回転駆動されるから、搬送方向に異なる何時にある左右の無端ベルト26を個別のタイミングの走行・停止させることができる。これにより、各左右の無端ベルト26に対応する位置にあって搬送方向に列をなす複数の魚体Wの処理を各部において並行して行うことができ、魚体処理装置の稼働率が向上する。
【0033】
本体フレーム10には、
図1に示されているように、魚体検出装置38が設けられている。魚体検出装置38は、ロータリエンコーダ40及びロータリエンコーダ40の取り付けられた魚体検知アーム42を含み、魚体検知アーム42が魚体搬送装置18によって搬送される魚体Wの腹部に当接し、
図1で見て時計廻り方向に回動することにより、魚体Wを検出する。魚体検出装置38は、魚体検知アーム42の回動角によって魚体Wの腹部及び背部の方向の身丈を検出し、魚体検知アーム42の回動持続時間によって魚体Wの前後長を検出する。
【0034】
ロータリエンコーダ40の信号は制御装置15に送られる。制御装置15は、ロータリエンコーダ40の信号を参照して、選択設定された処理対象の魚の種類に応じて各部の動作及び動作タイミングを
図8に示されているように設定する。
【0035】
魚体検出装置38より前側、つまり魚体搬送装置18の魚体搬送方向で見て魚体検出装置38より下流側には、
図1に示されているように、えら元切断・腹部切開装置44が設けられている。
【0036】
えら元切断・腹部切開装置44は、
図3に示されているように、本体フレーム10に取り付けられて上下方向に延在するリニアガイドレール46及びリニアガイドレール46にスライド可能に係合したスライダ48と、スライダ48に取り付けられたベース部材50とを有する。ベース部材50は左右方向に延在するタレット軸(タレット部材)52を水平軸線周りに回転可能に支持している。
【0037】
タレット軸52は、腹部切開装置54とえら元切断装置56とをタレット軸52の中心軸線周りに互いに180度の回転位相差をもって支持している。腹部切開装置54は電動機58によって回転駆動される回転カッタ60を含む。えら元切断装置56は、左右方向に延在する板状の押切り刃62を含む。換言すると、タレット軸52は回転カッタ60及び押切り刃62の双方を支持し、水平軸線周りに180度回転可能である。スライダ48にはタレット用の電動機64が取り付けられている。電動機64は、歯車列(不図示)によってタレット軸52に駆動連結され、タレット軸52を回転カッタ60が下方に位置する回転位置と押切り刃62が下方に位置する回転位置との間に180度回転駆動する。
【0038】
えら元切断・腹部切開装置44は、本体フレーム10の上下2箇所に設けられたブラケット66、68に回転自在に支持された駆動プーリ70及び従動プーリ72を有する。駆動プーリ70と従動プーリ72との間には無端状ベルト74が掛け渡されている。無端状ベルト74にはベース部材50が連結されている。無端状ベルト74は、駆動プーリ70が電動機(不図示)によって回転駆動されることにより、駆動プーリ70と従動プーリ72との間を循環走行し、ベース部材50を上下方向に駆動する。
【0039】
えら元切断・腹部切開装置44は、先ず、押切り刃62が下方に位置した状態においてベース部材50が降下移動することにより、魚体搬送装置18によって所定位置まで搬送されて停止している魚体Wのえら元を魚体本体から切断(切り離し)する。えら元の切断完了後にベース部材50が上昇し、回転カッタ60が下方に位置すべくタレット軸52が180度回転し、その後にベース部材50が降下すると共に回転カッタ60が回転し、魚体搬送装置18によって魚体Wの搬送が再開される。魚体Wが所定量搬送されると、ベース部材50が上昇移動し、回転カッタ60の回転が停止し、元の状態に戻る。これにより魚体Wの腹部が頭部から肛門近傍に亘って直線状に所定の深さ(背骨を切断しない深さ)をもって切開される。
【0040】
魚体Wのえら元の切断は、ハマチ等の魚のえら取りの前処理として行われる。処理対象の魚が鯛等の魚の場合には、えら元の切断は省略されてもよい。
【0041】
このえら元切断・腹部切開装置44によれば、回転カッタ60と押切り刃62とで上下移動機構が共用でき、構造を簡素化できる。また、えら元切断と腹部切開とが魚体搬送装置18による魚体Wの搬送方向で見て同一位置で行われるから、魚体搬送装置18による魚体Wの全体の搬送ストロークを短縮で、魚体処理装置をコンパクト化することができる。
【0042】
えら元切断・腹部切開装置44より前側、つまり魚体搬送装置18の魚体搬送方向で見てえら元切断・腹部切開装置44より下流側には、
図1に示されているように、第1の腹開き装置80が設けられている。
【0043】
第1の腹開き装置80は、
図4に示されているように、ブラケット82によって本体フレーム10に垂直に取り付けられた空気圧シリンダ装置84及び空気圧シリンダ装置84のピストンロッド86の下端に水平に取り付けられた空気圧シリンダ装置88を有する。
【0044】
空気圧シリンダ装置88は、並行する2個のシリンダ室(不図示)および各シリンダ室に設けられたピストン(不図示)と、各ピストンを互いに連動させるラック・ピニオン(不図示)とを内蔵したものであり、左右方向に水平に延在するリニアガイド90及びリニアガイド90に各々個別にスライド可能に係合して各ピストンに連結された2個のスライダ92を有し、2個のスライダ92が互いに同期に反転する方向に移動する。
【0045】
各スライダ92には鉤形のアーム94によって左右の腹開きプレート96が取り付けられている。左右の腹開きプレート96は、左右方向に互いに正対し、空気圧シリンダ装置88によって
図4に仮想線により示されている互いに接近した位置と、
図4に実線により示されている互いに離間した位置との間を移動する。
【0046】
第1の腹開き装置80は、左右の腹開きプレート96が互いに近接した位置にある状態で、空気圧シリンダ装置84によって空気圧シリンダ装置88が降下することにより、魚体搬送装置18によって搬送されている魚体Wの切開部、つまり腹腔部に左右の腹開きプレート96が進入し、その後左右の腹開きプレート96が互いに離間した位置に移動することにより、魚体Wの切開された腹部の左右の両身を左右に開く。
【0047】
第1の腹開き装置80より前側、つまり魚体搬送装置18の魚体搬送方向で見て第1の腹開き装置80より下流側には、
図1に示されているように、内臓除去装置100が設けられている。
【0048】
内臓除去装置100は、
図5に示されているように、本体フレーム10に取り付けられて上下方向に延在するリニアガイドレール102と、及びリニアガイドレール102にスライド可能に係合したスライダ(不図示)を含むベース部材104とを有する。ベース部材104は、ボール軸受106によって円筒ブロック108と円筒スリーブ110、112の組立体を左右方向に延在する水平軸線周り回転可能に支持している。
【0049】
円筒スリーブ110の先端(左端)には歯車ボックス114が取り付けられている。歯車ボックス114はボール軸受116及びブッシュ118によって上下方向に延在する中空軸120を垂直軸線周りに回転可能に支持している。中空軸120の下部には爪支持部材122が取り付けられている。爪支持部材122には各々支持軸124によって一対の把持爪126が回動可能に取り付けられている。一対の把持爪126は、支持軸124を中心した回動により、
図5に実線によって示されているように、互いに離間した解放位置と、
図5に仮想線によって示されているように、互いに接近した把持位置との間に移動する。各把持爪126の内側面は、えらを含む内臓を確実に把持すべく波形部126Aになっている。
【0050】
中空軸120には作動軸128が上下移動可能に貫通している。作動軸128の下端には作動片130が取り付けられている。作動片130には各把持爪126に形成されている長孔132に係合して一対の把持爪126を互いに連結する連結ピン134が取り付けられている。歯車ボックス114の上部には取付台136によって空気圧シリンダ装置138が取り付けられている。空気圧シリンダ装置138には作動軸128の上端が連結されている。作動軸128は、空気圧シリンダ装置138によって上下方向に駆動され、降下移動することにより一対の把持爪126を解放位置に移動させ、上昇移動することにより一対の把持爪126を把持位置に移動させる。
【0051】
円筒ブロック108と円筒スリーブ110、112の組立体は、内部にボール軸受140、142、144によって回転軸146を同心に回転可能に支持している。回転軸146が歯車ボックス114内に位置する左端部には駆動ベベル歯車148が取り付けられている。中空軸120には駆動ベベル歯車148に噛合した従動ベベル歯車150が取り付けられている。
【0052】
ベース部材104には歯車支持部材152が取り付けられている。歯車支持部材152にはもう一つの歯車支持部材154が取り付けられている。歯車支持部材154には電動機156が取り付けられている。電動機156は、平歯車列158及びベルト式伝動装置160によって回転軸146と駆動連結されている。これにより、爪支持部材122は電動機156によって一対の把持爪126と共に垂直軸線周りに回転駆動される。歯車支持部材152にはもう一つの電動機162が取り付けられている。電動機162は平歯車列164によって円筒スリーブ112に駆動連結されている。これにより、歯車ボックス114は電動機162によって一対の把持爪126と共に頭尾方向に沿う傾斜すべく左右方向に延在する水平軸線周りに回転駆動される。
【0053】
内臓除去装置100は、本体フレーム10の上下2箇所に設けられたブラケット166、168に回転自在に支持された駆動プーリ170及び従動プーリ172を有する。駆動プーリ170と従動プーリ172との間には無端状ベルト174が掛け渡されている。無端状ベルト174にはベース部材104が連結されている。無端状ベルト174は、駆動プーリ170が電動機(不図示)によって回転駆動されることにより、駆動プーリ170と従動プーリ172との間を循環走行し、ベース部材104を上下方向に駆動する。
【0054】
内臓除去装置100は、ベース部材104が降下移動することにより、魚体搬送装置18によって所定位置まで搬送され且つ第1の腹開き装置80によって腹開き状態にある魚体Wの腹腔内に解放位置にある一対の把持爪126が進入し、その後に一対の把持爪126が把持位置に位置することにより、一対の把持爪126が魚体Wのえらを把持する。その後に爪支持部材122と共に一対の把持爪126がえらを把持した状態で垂直軸線周りに所定回数回転し、その後にベース部材104が上昇移動することにより、えら元を切断されているえらが魚体Wの腹腔部の上方に取り出される。そして、歯車ボックス114が一対の把持爪126と共に頭尾方向に沿う傾斜し、傾斜状態で一対の把持爪126が解放位置に戻ることにより、えらが元の位置とは異なる位置に落下する。
【0055】
その後に、第1の腹開き装置80による腹開き状態のままにある魚体Wが魚体搬送装置18によって所定量搬送され、上述のえら取りと同様の動作を内臓除去装置100が行うことによりえら以外の魚体Wの内蔵が除去される。
【0056】
これにより、本実施形態では、頭部付きの魚体Wのえらを含む内蔵の腹腔からの除去が作業者の手作業に依らずに機械的に的確に行われる。
【0057】
内臓除去装置100による内蔵の除去は、処理対象の魚がハマチ等の大型の魚であれば、上述したように、えらの除去とえら以外の内蔵の除去とが個別の動作で行われる。処理対象の魚が鯛等の中型の魚である場合には、えらの除去とえら以外の内蔵の除去とが1動作によって行われてもよい。
【0058】
内臓除去装置100より前側、つまり魚体搬送装置18の魚体搬送方向で見て内臓除去装置100より下流側には、
図1に示されているように、第2の腹開き装置180が設けられている。
【0059】
第2の腹開き装置180は、
図6に示されているように、ブラケット182によって本体フレーム10に垂直に取り付けられた空気圧シリンダ装置184及び空気圧シリンダ装置184のピストンロッド186の下端に水平に取り付けられた空気圧シリンダ装置188を有する。
【0060】
空気圧シリンダ装置188は、並行する2個のシリンダ室(不図示)および各シリンダ室に設けられたピストン(不図示)と、各ピストンを互いに連動させるラック・ピニオン(不図示)とを内蔵したものであり、左右方向に水平に延在するリニアガイド190及びリニアガイド190に各々個別にスライド可能に係合して各ピストンに連結された2個のスライダ192を有し、2個のスライダ192が互いに同期に反転する方向に移動する。
【0061】
各スライダ192には鉤形のアーム194によって左右の腹開きプレート196が取り付けられている。左右の腹開きプレート196は、左右方向に互いに正対し、空気圧シリンダ装置188によって
図6に仮想線により示されている互いに接近した位置と、
図6に実線により示されている互いに離間した位置との間を移動する。
【0062】
第2の腹開き装置180は、左右の腹開きプレート196が互いに近接した位置にある状態で、空気圧シリンダ装置184によって空気圧シリンダ装置188が降下することにより、魚体搬送装置18によって搬送されている魚体Wの切開部、つまり腹腔部に左右の腹開きプレート196が進入し、その後左右の腹開きプレート196が互いに離間した位置に移動することにより、魚体Wの切開された腹部の左右の両身を左右に開く。
【0063】
第2の腹開き装置180より前側、つまり魚体搬送装置18の魚体搬送方向で見て第2の腹開き装置180より下流側には、
図1に示されているように、血あい除去・清掃装置200が設けられている。
【0064】
血あい除去・清掃装置200は、
図7に示されているように、本体フレーム10に垂直に取り付けられた空気圧シリンダ装置202及び空気圧シリンダ装置202に取り付けられたベース部材204を有する。
【0065】
ベース部材204には左右方向に水平に延在する支持軸206によってアーム208の基端が取り付けられている。アーム208は、支持軸206から下方に延在し、遊端に半円形の血あい取り部材210が取り付けられている。血あい取り部材210は、セレーションを気刻まれた下面210Aを有する。ベース部材204には電動機212が取り付けられている。電動機212は支持軸206を所定の回転角をもって往復回転駆動する。
【0066】
ベース部材204の前側には左右方向に水平に延在する枢軸214によってブラシ支持部材216が回動可能に取り付けられている。ブラシ支持部材216は左右方向に水平に延在する支持軸218によって回転ブラシ220を回転可能に支持している。ブラシ支持部材216には電動機222が取り付けられている。電動機222は回転ブラシ220を回転駆動する。
【0067】
血あい除去・清掃装置200は、ベース部材204が降下移動することにより、魚体搬送装置18によって搬送され且つ第2の腹開き装置180によって腹開き状態にある魚体Wの腹腔内に血あい取り部材210が進入し、血あい取り部材210の頭尾方向に沿う揺動運動により下面210Aが腹開き状態の魚体Wの腹腔部の底部を擦り、血あいの除去を行う。
【0068】
これにより、えらを含む内蔵を除去された魚体Wの清掃が的確に行われる。
【0069】
回転ブラシ220は、回転状態で自重によって血あい除去後の腹開き状態の魚体Wの腹腔部の底部に倣うように当接し、腹腔内の清掃を行う。
【0070】
これにより、えらを含む内蔵及び血あいを除去された魚体Wの腹腔内の清掃が的確に行われる。
【0071】
本体フレーム10には、回転ブラシ220による清掃部に向けて水を高圧噴射する噴射ノズル224が取り付けられている。これにより、回転ブラシ220による清掃部が洗い流される。
【0072】
図8は、処理対象の魚がハマチ等である場合の、上述した実施形態による魚体処理装置の各部の時点Aから時点Nまでの各部の動作タイミングを示している。
【0073】
次に、本発明による魚体処理装置の他の実施形態を、
図9を参照して説明する。なお、
図9において、
図1に対応する部分は、
図1に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0074】
本実施形態では、内臓除去装置100は、一対の把持爪126より魚体Wの上流側に所定の間隔をおいてもう一対の把持爪230を有する。一対の把持爪230は、互いに離間した解放位置と互いに接近した把持位置との間に移動するのであり、把持爪230については回転機構が省略される。
【0075】
本実施形態では、一対の把持爪126及び230が同時に上下動して互いに同期して解放位置と把持位置との間に移動することにより、魚体Wを移動させることなく、一対の把持爪126によるえら除去とえら以外の内蔵の除去とが同時に行われる。これにより、一つの魚体Wの処理時間が短縮される。
【0076】
以上、本発明を、その好適な実施形態について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施形態により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0077】
例えば、回転カッタ60と押切り刃62とは、魚体Wの搬送方向の異なる位置に個別に設けられ、個別の上下動機構によって上下移動するものであってもよい。処理対象の魚が鯛等であれば、えら元切断のための押切り刃62は省略されてもよい。
【0078】
内臓除去時に腹開きを行う第1の腹開き装置80と、血あい除去及び清掃時の腹開きを行う第2の腹開き装置180とが上述の実施形態のように、個別に設けられていると、内臓除去ための腹開きと血あい除去、清掃のための腹開きとを個別の適切なタイミングで行うことができる利点があるが、これは必須でなく、第1の腹開き装置80と第2の腹開き装置180とが魚体Wの搬送方向に長い一つの腹開き装置によって構成されていてもよい。
【0079】
血あい除去・清掃装置の上下動機構がベルト掛け式のものであってもよく、各部の上下動機構は、ベルト掛け式のものや空気圧シリンダ装置に限られることはなく、ラック&ピニオン機構が用いられたものやリニアモータ等によるものであってもよい。
【0080】
また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0081】
10 :本体フレーム
12 :魚体投入台
14 :操作盤
15 :制御装置
16 :下部魚体案内部材
16A :レール部材
16B :レール部材
18 :魚体搬送装置
20 :プーリ支持部材
22 :駆動プーリ
23 :電動機
24 :従動プーリ
26 :無端ベルト
28 :案内プーリ
30 :案内部材
32 :リンク部材
34 :セクタギア
36 :空気圧シリンダ装置
38 :魚体検出装置
40 :ロータリエンコーダ
42 :魚体検知アーム
44 :えら元切断・腹部切開装置
46 :リニアガイドレール
48 :スライダ
50 :ベース部材
52 :タレット軸(タレット部材)
54 :腹部切開装置
56 :元切断装置
58 :電動機
60 :回転カッタ
62 :押切り刃
64 :電動機
66 :ブラケット
68 :ブラケット
70 :駆動プーリ
72 :従動プーリ
74 :無端状ベルト
80 :第1の腹開き装置
82 :ブラケット
84 :空気圧シリンダ装置
86 :ピストンロッド
88 :空気圧シリンダ装置
90 :リニアガイド
92 :スライダ
94 :アーム
96 :腹開きプレート
100 :内臓除去装置
102 :リニアガイドレール
104 :ベース部材
106 :ボール軸受
108 :円筒ブロック
110 :円筒スリーブ
112 :円筒スリーブ
114 :歯車ボックス
116 :ボール軸受
118 :ブッシュ
120 :中空軸
122 :爪支持部材
124 :支持軸
126 :把持爪
126A :波形部
128 :作動軸
130 :作動片
132 :長孔
134 :連結ピン
136 :取付台
138 :空気圧シリンダ装置
140 :ボール軸受
142 :ボール軸受
144 :ボール軸受
146 :回転軸
148 :駆動ベベル歯車
150 :従動ベベル歯車
152 :歯車支持部材
154 :歯車支持部材
156 :電動機
158 :平歯車列
160 :ベルト式伝動装置
162 :電動機
164 :平歯車列
166 :ブラケット
168 :ブラケット
170 :駆動プーリ
172 :従動プーリ
174 :無端状ベルト
180 :第2の腹開き装置
182 :ブラケット
184 :空気圧シリンダ装置
186 :ピストンロッド
188 :空気圧シリンダ装置
190 :リニアガイド
192 :スライダ
194 :アーム
196 :腹開きプレート
200 :血あい除去・清掃装置
202 :空気圧シリンダ装置
204 :ベース部材
206 :支持軸
208 :アーム
210 :血あい取り部材
210A :下面
212 :電動機
214 :枢軸
216 :ブラシ支持部材
218 :支持軸
220 :回転ブラシ
222 :電動機
224 :噴射ノズル
230 :把持爪
W :魚体