IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士通テン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-レーダ装置 図1
  • 特許-レーダ装置 図2
  • 特許-レーダ装置 図3
  • 特許-レーダ装置 図4
  • 特許-レーダ装置 図5
  • 特許-レーダ装置 図6
  • 特許-レーダ装置 図7
  • 特許-レーダ装置 図8
  • 特許-レーダ装置 図9
  • 特許-レーダ装置 図10
  • 特許-レーダ装置 図11
  • 特許-レーダ装置 図12
  • 特許-レーダ装置 図13
  • 特許-レーダ装置 図14
  • 特許-レーダ装置 図15
  • 特許-レーダ装置 図16
  • 特許-レーダ装置 図17
  • 特許-レーダ装置 図18
  • 特許-レーダ装置 図19
  • 特許-レーダ装置 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】レーダ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/08 20060101AFI20230111BHJP
   H01Q 13/06 20060101ALI20230111BHJP
   H01Q 1/32 20060101ALI20230111BHJP
   H01P 3/12 20060101ALI20230111BHJP
   G01S 7/03 20060101ALI20230111BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20230111BHJP
【FI】
H01Q13/08
H01Q13/06
H01Q1/32 Z
H01P3/12 100
G01S7/03 230
G01S13/931
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018159453
(22)【出願日】2018-08-28
(65)【公開番号】P2020036126
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑原 和也
(72)【発明者】
【氏名】西村 高征
(72)【発明者】
【氏名】生野 雅義
【審査官】高野 洋
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102015207186(DE,A1)
【文献】国際公開第2017/211472(WO,A1)
【文献】特開2012-159349(JP,A)
【文献】特開2012-185029(JP,A)
【文献】特表2007-505298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/08
H01Q 13/06
H01Q 1/32
H01P 3/12
G01S 7/03
G01S 13/931
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体材料から成り、所定面と前記所定面の法線とは異なる法線を持つ端面とを有する基板と、
前記所定面に設けられた導電性パターンにて構成され、前記所定面の法線方向の空間に対して電波の送信又は受信を行う第1アンテナと、
前記基板内に形成された導波路にて構成され、前記端面の法線方向の空間に対して電波の送信又は受信を行う第2アンテナと、
を有し、前記第1アンテナ及び前記第2アンテナは共通の前記基板に設けられているアンテナ装置と、
前記アンテナ装置における前記第1アンテナを用いて所定の第1検知領域内の物標を検出するとともに、前記アンテナ装置における前記第2アンテナを用いて前記第1検知領域と異なる所定の第2検知領域内の物標を検出する処理部と、
を備えたレーダ装置であって、
当該レーダ装置は、路面を走行可能な車両の側面に、前記第1検知領域が前記車両の側面から前記車両の側方に広がり、前記第2検知領域が前記車両の側面から前記車両の斜め下方の路面に向けて広がるように取り付けられ、
前記処理部は、前記第1アンテナを用いて前記第1検知領域内に位置する前記路面上の物標を検出し、前記第2アンテナを用いて前記第2検知領域内に位置する前記路面の段差を検出する、レーダ装置。
【請求項2】
前記第1アンテナはマイクロストリップアンテナであり、前記第2アンテナは基板集積導波路アンテナである、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記第1アンテナのビームパターンにおいて、前記所定面の法線方向に対するゲインは前記所定面の接線方向に対するゲインよりも大きく、
前記第2アンテナのビームパターンにおいて、前記端面の法線方向に対するゲインは前記端面の接線方向に対するゲインよりも大きい、請求項1又は2に記載のレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置及びレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ミリ波帯の電波を利用したレーダ装置では、基板にマイクロストリップアンテナを設けてビームを形成する構造が主流となっている(例えば下記特許文献1参照)。
【0003】
一方、車載の周辺監視用途では、レーダ装置の検知領域の広角化が要求されることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-197811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに対し、基板にマイクロストリップアンテナを設ける構造では、アンテナが向いている方向にしかビームを形成することができないため、広角域検知を単一基板で実現させるには限界がある。広角域検知を可能とするアンテナの構造及びレーダ装置の開発が切望される。尚、複数基板を用いれば全体として広角域検知が可能となるが、複数基板の使用はコスト増大及び装置の大型化を招くため、採用し難い。
【0006】
車載用途に関連して背景技術等を上述したが、広角域検知の実現は車載用途に限定されず、有益である。
【0007】
本発明は、広角域検知の実現に寄与するアンテナ装置及びレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るアンテナ装置は、誘電体材料から成り、所定面と前記所定面の法線とは異なる法線を持つ端面とを有する基板を用いて構成されるアンテナ装置において、前記所定面に設けられた導電性パターンにて構成され、前記所定面の法線方向の空間に対して電波の送信又は受信を行う第1アンテナと、前記基板内に形成された導波路にて構成され、前記端面の法線方向の空間に対して電波の送信又は受信を行う第2アンテナと、を有し、前記第1アンテナ及び前記第2アンテナは共通の前記基板に設けられる構成(第1の構成)である。
【0009】
上記第1の構成に係るアンテナ装置において、前記第1アンテナはマイクロストリップアンテナであり、前記第2アンテナは基板集積導波路アンテナである構成(第2の構成)であっても良い。
【0010】
上記第1又は第2の構成に係るアンテナ装置に関し、前記第1アンテナのビームパターンにおいて、前記所定面の法線方向に対するゲインは前記所定面の接線方向に対するゲインよりも大きく、前記第2アンテナのビームパターンにおいて、前記端面の法線方向に対するゲインは前記端面の接線方向に対するゲインよりも大きい構成(第3の構成)であっても良い。
【0011】
本発明に係るレーダ装置は、上記第1~第3の構成の何れかのアンテナ装置と、前記アンテナ装置における前記第1アンテナを用いて所定の第1検知領域内の物標を検出するとともに、前記アンテナ装置における前記第2アンテナを用いて前記第1検知領域と異なる所定の第2検知領域内の物標を検出する処理部と、を備えた構成(第4の構成)である。
【0012】
上記第4の構成に係るレーダ装置において、前記第1検知領域及び前記第2検知領域は部分的に互いに重なり合い、前記処理部は、前記第2アンテナを用いた前記第2検知領域内の物標の検出結果をも参照して、前記第1検知領域内の物標の検出結果を導出する構成(第5の構成)であっても良い。
【0013】
上記第5の構成に係るレーダ装置において、前記処理部は、前記第1アンテナを用いて前記第1検知領域内の物標の検出結果を導出する際の位相折り返しを、前記第2アンテナを用いた前記第2検知領域内の物標の検出結果に基づいて、評価する構成(第6の構成)であっても良い。この際、前記処理部は、前記第1アンテナを用いて前記第1検知領域内の物標の検出結果を導出する際の位相折り返し誤判定を、前記第2アンテナを用いた前記第2検知領域内の物標の検出結果に基づいて、補正するものであっても良い。
【0014】
上記第4~第6の何れかの構成に係るレーダ装置において、当該レーダ装置は路面を走行可能な車両に取り付けられ、前記処理部は、前記第1アンテナを用いて前記第1検知領域内に位置する前記路面上の物標を検出し、前記第2アンテナを用いて前記第2検知領域内に位置する前記路面の段差を検出する構成(第7の構成)であっても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、広角域検知の実現に寄与するアンテナ装置及びレーダ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るレーダ装置及び車両の模式図である。
図2】本発明の実施形態に係るレーダ装置の構成ブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係るアンテナ装置を構成する基板の斜視図と基板に対して定義される複数の軸を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係り、基板に複数のマイクロストリップアンテナと複数のSIWアンテナが形成される様子を示す図である。
図5】マイクロストリップアンテナの構成図である。
図6】SIWアンテナの構成図である。
図7】注目した1つのアンテナに関わるビームの様子を示す図である。
図8】注目した1つのアンテナに関わるビームパターンを示す図である。
図9】複数のアンテナブロックの構成図である。
図10】本発明の第1実施例に係るレーダ装置の機能ブロック図である。
図11】本発明の第1実施例に係るレーダ装置の検知領域を示す図である。
図12】本発明の第1実施例に係り、マイクロストリップアンテナとSIWアンテナとの合成アンテナのビームパターンを示す図である。
図13】本発明の第2実施例に係るレーダブロックの構成図である。
図14】本発明の第2実施例に係り、検知領域と物標との位置関係を示す図である。
図15】本発明の第2実施例に係り、反射波が複数の受信アンテナで受信される様子を示す図である。
図16】本発明の第3実施例に係り、位相折り返し誤判定に関わる検知領域内の2つの位置を示す図である。
図17】本発明の第3実施例に係り、位相折り返し誤判定の補正方法を説明するための図である。
図18】本発明の第4実施例に係り、車両とレーダ装置と路面の段差との関係を示す図である。
図19】本発明の第5実施例に係り、車両に対し4つのレーダ装置が設置される様子を示した俯瞰図である。
図20】本発明の第5実施例に係り、車両に搭載される運転支援システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量又は部材等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量又は部材等の名称を省略又は略記することがある。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係るレーダ装置及び車両の模式図である。自動車などの車両CRの所定位置にレーダ装置1が搭載される。図1では、レーダ装置1が車両CRの前部に搭載されているが、レーダ装置1は車両CRの任意の箇所に設置され得る。
【0019】
図2に示す如く、レーダ装置1にはアンテナ装置2及び電子回路3が設けられる。アンテナ装置2は、電子回路3から供給される送信信号に基づきミリ波帯の送信波を車両CRの周囲(例えば前方や斜め前方)に向けて送信する。この送信波は、車両CRの周辺に位置する物標(先行車、対向車、固定設置物、路面など)によって反射され、アンテナ装置2は、その反射による反射波を受信する。反射波の受信信号は電子回路3に送られる。電子回路3は、反射波の受信信号に対して所定の信号処理を施すことで物標に関わる物標データを生成する。物標データは複数のパラメータを含み、当該複数のパラメータには、物標からの反射による反射波がレーダ装置1の受信アンテナに受信されるまでの距離(即ち、レーダ装置1及び物標間の距離)、車両CRに対する物標の相対速度、車両CRが前進する際の車両CRの進行方向に対する物標の存在位置の方位、車両CRの前後方向に沿った車両CR及び物標間の距離、車両CRの左右方向に沿った車両CR及び物標間の距離などが含まれていて良い。
【0020】
レーダ装置1では、誘電体材料から成る基板を用いて複数のアンテナを構成する。図3(a)及び(b)を参照して、レーダ装置1の構成要素である基板SUBを説明する。基板SUBは板状の外形を有し、例えば幾何学的には直方体形状を持つ。以下、基板SUBの形状が直方体形状であることを例にして説明を行うが、基板SUBの形状はこれに限定されない。基板SUBは6つの面Pa、Pb、Pc、Pd、Pe及びPfを有する。面Pa及びPbは互いに対向し、面Pc及びPdは互いに対向し、面Pe及びPfは互いに対向する。面Pa及びPbは基板SUBの表面に相当し、面Pa~Pfの内、面Pa及びPbにのみ電子部品を実装可能である。面Pa及びPbの一方を表面、他方を裏面と考えることもできるが、以下では、面Pa及びPbの双方を表面と考える。面Pc~Pdは基板SUBの端面に相当するため、以下、端面とも称され得る。
【0021】
ここでは、説明の明確化上、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸から成るレーダ座標系を定義する。X軸、Y軸及びZ軸は互いに原点Oにて交差する。図3(b)では、基板SUBの中心又は重心に原点Oがとられているが、原点Oは基板SUB内又は基板SUB上の任意の位置に定義され得る。X軸及びY軸に平行な平面、Y軸及びZ軸に平行な平面、Z軸及びX軸に平行な平面を、夫々、XY面、YZ面、ZX面と称する。面Pa及びPbはXY面に平行であり、面Pbは面Paから見てZ軸の負側に位置する。面Pc及びPdはYZ面に平行であり、面Pdは面Pcから見てX軸の負側に位置する。面Pe及びPfはZX面に平行であり、面Pfは面Peから見てY軸の正側に位置する。表面Pa及びPb間の距離は基板SUBの厚さに相当し、端面Pc及びPd間の距離、並びに、端面Pe及びPf間の距離よりも随分と小さい。端面Pc及びPd間の距離と端面Pe及びPf間の距離との大小関係は任意である。
【0022】
基板SUBは任意の誘電体材料にて構成され、例えば、ガラスエポキシ樹脂やポリイミド樹脂などの合成樹脂やセラミックスにて構成されて良い。基板SUBは、表面Pa及びPbにのみ導電性パターンを形成可能な2層基板であっても良いし、基板層とパターン層を交互に積み重ねた構成を有する多層基板であっても良い。基板SUBが多層基板である場合、表面Pa及びPb間にパターン層による1以上の内層が形成され、各内層に所望形状の導電性パターンを設けることができる。基板SUBにおける導電性パターンは導電性を有する任意の金属(例えば銅)にて構成される。後述の導体ポストについても同様である。
【0023】
尚、説明の明確化及び具体化のため、ここでは、基板SUBが直方体形状を持つ板状体であることを想定しているが、上述の如く基板SUBの外形形状は直方体形状に限定されない。例えば、上述の形状を基準として、基板SUBの一部に欠けが有っても良いし、何れかの面に部分的に曲面部が設けられていても良い。また、以下に示す内容は、フレキシブル基板のように可撓性のフィルムを用いて作製した基板や、曲面や折れ面を有する基板に対しても適用できる。注目した或る面について当該面が曲面等を内包しうることも考慮すれば、面に対する直交方向(当該面に直交する方向)は、当該面の所定位置(例えばアンテナが配置される位置)における当該面の法線の方向であるとも言え、面の平行方向(当該面に平行な方向)は、当該面の所定位置(例えばアンテナが配置される位置)における当該面の接線の方向であるとも言える。即ち、基板SUBが直方体形状を持つことを前提とした以下の各説明における、面についての直交方向及び平行方向は、当該面が曲面等を内包しうることも考慮すれば、夫々、当該面についての法線方向及び接線方向と解されて良い。当然ながら、面Pa又はPbの法線と面Pc~Pdの法線は互いに異なる。
【0024】
基板SUBにはマイクロストリップアンテナ(以下、MSアンテナと称する)と、基板集積導波路(Substrate Integrated Waveguide)を用いた基板集積導波路アンテナ(以下、SIWアンテナと称する)とが形成され、図4は、その様子を示すイメージ図である。共通の基板SUB(換言すれば単一の基板SUB)に対し、1以上のMSアンテナ10と1以上のSIWアンテナ20が設けられる。図4において、MMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)30は、高周波信号の発振、増幅、変調及び周波数変換といった信号処理を行う高周波集積回路であり、面Pa上に実装されている。但し、MMIC30は面Pb上に実装されていても良い。MMIC30は図2の電子回路3に相当する又は電子回路3の一部である。各MSアンテナ10及び各SIWアンテナ20はMMIC30に接続され、MMIC30からの送信信号を送信波として空間に放射する送信アンテナ又は反射波を受信して受信信号をMMIC30に伝播する受信アンテナとして機能する。ここにおける反射波は、送信波を受けた物標からの、送信波に基づく反射波である。図4に示される複数の楕円は、MSアンテナ10及びSIWアンテナ20から放射される送信波を概念的に示したものである。
【0025】
図4の例では、面Pa上に形成されたアンテナパターンにて構成されるMSアンテナ10が、2つ、基板SUBに形成されている。但し、基板SUBに形成されるMSアンテナ10の個数は2以上であれば任意であり、1でも良い。また、面Pb上にアンテナパターンを有するMSアンテナ10を基板SUBに形成しても良い。同一面上に形成される複数のアンテナパターンは、その面上においてX軸方向に並べて配置される。
【0026】
各SIWアンテナ20に対し、貫通ビアを用いて基板SUB内に導波路(導波管)が形成される。各SIWアンテナ20は、MMIC30から上記導波路を通じて伝搬された送信信号を基板SUBの端面から送信波として放射する、或いは、基板SUBの端面にて受けた反射波を受信信号として上記導波路を通じてMMIC30へ伝搬する。
【0027】
SIWアンテナ20において送信波が放射される又は反射波が受信される端面をアンテナ開口端面と称する。基板SUBの端面Pc~Pfの何れもがアンテナ開口端面となり得る。図4には、端面Pcをアンテナ開口端面とする2つのSIWアンテナ20と端面Pdをアンテナ開口端面とする2つのSIWアンテナ20とが基板SUBに形成される様子が示されている。但し、基板SUBに設置されるSIWアンテナ20の個数は2以上であれば任意であり、1でも良い。即ち、端面Pcをアンテナ開口端面とする1又は2以上のSIWアンテナ20、端面Pdをアンテナ開口端面とする1又は2以上のSIWアンテナ20、端面Peをアンテナ開口端面とする1又は2以上のSIWアンテナ20、及び、端面Pfをアンテナ開口端面とする1又は2以上のSIWアンテナ20を、基板SUBに設けることができる。端面Pcをアンテナ開口端面とする複数のSIWアンテナ20が設けられる場合、その複数のSIWアンテナ20はY軸方向に沿って並べて配置される。端面Pd、Pe又はPfをアンテナ開口端面とする複数のSIWアンテナ20が設けられる場合も同様である(但し、端面Pe又はPfをアンテナ開口端面とする複数のSIWアンテナ20の並び方向はX軸方向である)。
【0028】
図5(a)及び(b)を参照し、1つのMSアンテナ10の構成の例を説明する。図5(a)はMSアンテナ10が形成された基板SUBの斜視図であり、図5(b)はMSアンテナ10を交差する断面による基板SUBの断面図である。上述したようにMSアンテナ10は複数設けられ得るが、図5(a)及び(b)では、図示の便宜上、1つのMSアンテナ10のみを示している。
【0029】
基板SUBにおいて、表面Pa上に導電性パターンであるアンテナパターン11を形成すると共に、アンテナパターン11に対向する位置にグランドパターン12を形成することで、アンテナパターン11とグランドパターン12とから成るMSアンテナ10を構成することができる。図5(b)ではグランドパターン12が面Pbに形成されているが、基板SUBが多層基板である場合には、内層にグランドパターン12を設けても良い。グランドパターン12を含む任意のグランドパターンは固定された所定のグランド電位を有する。アンテナパターン11及びグランドパターン12間に送信信号又は受信信号に応じた電界が形成される。
【0030】
アンテナパターン11は、送信信号又は受信信号を伝送するための伝送線路11aのパターンと、送信波を送信(放射する)又は反射波を受信するアンテナ素子11bのパターンと、を有する。伝送線路11aは概略直線状のパターンであり、伝送線路11aの一端がMMIC30に接続される。アンテナパターン11において伝送線路11aの他端には反射抑制用の終端素子11cが設けられる。終端素子11cは設けられない場合もある。
【0031】
アンテナ素子11bは伝送線路11aの側辺に複数接続され、複数のアンテナ素子11bによりアレーアンテナが形成される。アンテナパターン11における複数のアンテナ素子11bは互いに同相で励振される。
【0032】
送信波を送信する送信アンテナとしてアンテナパターン11を機能させる場合、伝送線路11aは電力を各アンテナ素子11bに供給する給電線路として機能すると共にアンテナ素子11bは送信波を空間に対して放射する放射素子として機能する。この際、アンテナパターン11に接続されたMMIC30は、ミリ波帯の送信信号を発生させる発振部及び送信信号を増幅する増幅部などを備えていて良い。反射波を受信する受信アンテナとしてアンテナパターン11を機能させる場合、アンテナ素子11bは反射波を受信する受信素子として機能すると共に伝送線路11aは受信素子による受信信号を伝送する受電線路として機能する。この際、アンテナパターン11に接続されたMMIC30は、受信信号を増幅する増幅部、受信信号をダウンコンバートする周波数変換部、及び、ダウンコンバートにより得られたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部などを備えていて良い。
【0033】
図6(a)~(c)を参照し、SIWアンテナ20の構成の例を説明する。図6(a)は、端面Pcをアンテナ開口端面とする2つのSIWアンテナ20が設けられた基板SUBの一部の上面図(Z軸の正側から見た基板SUBの平面図)であり、図6(b)は図6(a)のA-A’線に沿った基板SUBの一部断面図であり、図6(c)はB-B’線に沿った基板SUBの一部断面図である。図6(b)及び(c)において、斜線領域は導電性材料が存在する部分を表し、ドット領域(ドットで満たされた領域)は基板SUBを構成する誘電体材料が存在する部分を表す。
【0034】
図6(a)又は(b)において、22aは基板SUBの表面Paに設けられた第1導電体による導電性パターンを表し、22bは基板SUBの表面Pbに設けられた第2導電体による導電性パターンを表す(図6(a)において導電性パターン22bは不図示)。導電性パターン22a及び22bは互いに対向し合う位置に形成され、導電性パターン22a及び22bが設けられる領域内に基板SUBの面Pa及びPb間を貫通する貫通ビアが導体ポスト21として複数設けられる。図6(c)は1つの導体ポスト21の断面を表している。各導体ポスト21は導電性パターン22a及び22bを電気的に接続する。また、導電性パターン22a又は22bの所定位置において導電性パターン22又は22bはグランド電位を有する電位点に接続されている。このため、導電性パターン22a及び22bは各導体ポスト21と共にグランド電位を有することになり、故に以下では、導電性パターン22a、22bを、グランドパターン22a、22bとも称する。
【0035】
尚、図6(c)では、貫通ビアとしての導体ポスト21が中空の管形状を有している状態が示されているが、その中空部分は樹脂や金属で満たされていても構わない。また、基板SUBが多層基板である場合には、グランドパターン22a及び22bの内の一方又は双方を基板SUBの内層に設けるようにしても良い。何れにせよ、グランドパターン22a及び22bは誘電体材料を介して互いに対向し合うように形成され、グランドパターン22a及び22b間は複数の導電性ポスト21にて電気的に接続されることになる。
【0036】
X軸に平行な所定軸に対し対称な位置に配置された2つの導体ポスト21の組を、MMIC30からX軸に沿って基板SUBの端面Pcまで複数組設ける。これにより、複数の導体ポスト21とグランドパターン22a及び22bとで囲まれた誘電体材料の部分は共振器として機能してSIWアンテナ20の導波路(導波管)を形成する。SIWアンテナ20の導波路の断面形状は任意であるが、図6(a)の例では、SIWアンテナ20がホーンアンテナと同様の形状を持っている。即ち、端面Pcをアンテナ開口端面とするSIWアンテナ20において、Y軸方向に並ぶ導体ポスト21の間隔がMMIC30から端面Pcに近づくにつれて徐々に大きくなるように各導体ポスト21が配置され、これによって、YZ面に沿った導波路(導波管)の断面積が端面Pcに近づくにつれて広がってゆくホーンアンテナが構成されている。
【0037】
端面Pcをアンテナ開口端面とするSIWアンテナ20を送信アンテナとして機能させる場合、MMIC30は、ミリ波帯の送信信号を発生させる発振部及び送信信号を増幅する増幅部などを備えて、送信信号をSIWアンテナ20の導波路に供給し、これによって端面Pcから送信波を放射させる。端面Pcをアンテナ開口端面とするSIWアンテナ20を受信アンテナとして機能させる場合、SIWアンテナ20は端面Pcにて反射波を受信して受信信号を導波路を通じてMMIC30に伝搬する。この際、当該導波路に接続されたMMIC30は、受信信号を増幅する増幅部、受信信号をダウンコンバートする周波数変換部、及び、ダウンコンバートにより得られたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部などを備えていて良い。
【0038】
端面Pcをアンテナ開口端面とするSIWアンテナ20に特に注目して、SIWアンテナ20の構成及び動作を説明したが、端面Pd、Pe又はPfをアンテナ開口端面とするSIWアンテナ20についても同様である。
【0039】
次に、基板SUBに形成される1つのアンテナを、便宜上、対象アンテナと称して、対象アンテナの特性を表すビームパターン(放射パターン)を説明する。尚、任意のアンテナにおいて、送信波、又は、反射波としての受信波は、ビームと称され得る。図7を参照する。対象アンテナは、面Pa~Pfの何れかである対象面から送信波を送信する又は対象面にて反射波を受信する。対象アンテナは、対象面から対象面の直交方向に向かう向きであって且つ基板SUBから離れる向きをビームの主軸方向とし又は概ねビームの主軸方向とし、対象面の直交方向において電波の送信又は受信を行う。対象面の直交方向において電波の送信を行うとは、対象面の直交方向に電波を送信するだけでなく対象面の直交方向からずれた方向にも電波を送信することを含む概念である。対象面の直交方向において電波の受信を行うとは、対象面の直交方向からの電波を受信するだけでなく対象面の直交方向からずれた方向からの電波も受信することを含む概念である。
【0040】
対象アンテナは、ボアサイト方向とも称され得る主軸方向においてメインローブを有するビームパターンを持ち、主軸方向において対象アンテナのゲインは最大となる。典型的には、主軸方向は対象面の直交方向と一致するが、対象面の直交方向に対して所定角度だけずれることもある。ここにおける所定角度は例えば数度から20度程度であり、45°よりも小さい。
【0041】
図8に対象アンテナのビームパターンの例を示す。図8のビームパターンは、対象面の直交方向における角度を0°としたときの、対象アンテナのゲインの角度依存性を示している。ここにおける角度は、対象面から対象面の直交方向に伸びる軸とビームの伝搬軸との成す角度を指す。但しここでは、対象面から基板SUBに向かう向きのビームの伝搬は無いものとして無視する。そうすると、当該角度は-90°から90°までの180°範囲に限定される。図8の例において、対象アンテナのビームパターンは、角度0°の方向において最も大きなゲインを有し、角度が0°から離れるにつれてゲインは減少してゆく。但し、対象アンテナのゲインが最大となる角度は0°からずれることもある。少なくとも、対象アンテナのビームパターンにおいて、対象面の直交方向におけるゲイン(即ち0°の角度におけるゲイン)は対象面の平行方向におけるゲイン(即ち90°又は-90°の角度におけるゲイン)よりも大きい。
【0042】
面Pa上にアンテナパターンを有して構成されるMSアンテナ10について、対象面は面Paであり、主軸方向は面Paに直交し且つ面PaからZ軸の正側に向かう方向であって良く、面Pb上にアンテナパターンを有して構成されるMSアンテナ10について、対象面は面Pbであり、主軸方向は面Pbに直交し且つ面PbからZ軸の負側に向かう方向であって良い(図3(b)を適宜参照)。
【0043】
面Pcをアンテナ開口端面とするSIWアンテナ20について、対象面は面Pcであり、主軸方向は面Pcに直交し且つ面PcからX軸の正側に向かう方向であって良く、
面Pdをアンテナ開口端面とするSIWアンテナ20について、対象面は面Pdであり、主軸方向は面Pdに直交し且つ面PdからX軸の負側に向かう方向であって良く、
面Peをアンテナ開口端面とするSIWアンテナ20について、対象面は面Peであり、主軸方向は面Peに直交し且つ面PeからY軸の負側に向かう方向であって良く、
面Pfをアンテナ開口端面とするSIWアンテナ20について、対象面は面Pfであり、主軸方向は面Pfに直交し且つ面PfからY軸の正側に向かう方向であって良い(図3(b)を適宜参照)。
【0044】
そうすると例えば、表面Pa上にアンテナパターンを有して構成されるMSアンテナ10は、表面Paの直交方向を主軸方向とし又は概ね主軸方向とし、表面Paの直交方向において電波の送信又は受信を行う(即ち表面Paの直交方向(法線方向)の空間に対して電波の送信又は受信を行う)ことになる。これに対し例えば、端面Pcをアンテナ開口端面とするSIWアンテナ20は、端面Pcの直交方向を主軸方向とし又は概ね主軸方向とし、端面Pcの直交方向(従って表面Paの平行方向)において電波の送信又は受信を行う(即ち端面Pcの直交方向(法線方向)の空間に対して電波の送信又は受信を行う)ことになる。MSアンテナ10及びSIWアンテナ20の他の組み合わせに注目した場合も同様である。
【0045】
表面Pa上にアンテナパターンを有して構成されるMSアンテナ10について、表面Paの直交方向において電波の送信又は受信を行うということは、換言すれば表面Paの直交方向においてビームを形成するということであり、少なくとも、当該MSアンテナ10のビームパターンにおいて、表面Paの直交方向におけるゲイン(即ち、MSアンテナ10にとっての角度0°でのゲイン)が面Paの平行方向におけるゲイン(即ち、MSアンテナ10にとっての角度90°又は-90°でのゲイン)よりも大きい、ことを意味する。表面Pb上にアンテナパターンを有して構成されるMSアンテナ10についても同様である。
端面Pcをアンテナ開口端面とするSIWアンテナ20について、端面Pcの直交方向(従って表面Paの平行方向)において電波の送信又は受信を行うということは、換言すれば端面Pcの直交方向においてビームを形成するということであり、少なくとも、当該SIWアンテナ20のビームパターンにおいて、端面Pcの直交方向におけるゲイン(即ち、SIWアンテナ20にとっての角度0°でのゲイン)が端面Pcの平行方向におけるゲイン(即ち、SIWアンテナ20にとっての角度90°又は-90°でのゲイン)よりも大きい、ことを意味する。端面Pd、Pe又はPfをアンテナ開口端面とするSIWアンテナ20についても同様である。
尚、或る面の直交方向、平行方向におけるゲインとは、当該面の直交方向、平行方向に対するゲイン(当該面の法線方向、接線方向に対するゲイン)とも表現されうる。
【0046】
このように、MSアンテナ10及びSIWアンテナ20を共通の基板SUBに設けることで、互いに直交する方向においてビームの送受信を行うことができ、広角域(広い検知範囲)をカバーするレーダ装置1を構成することが可能となる。レーダ装置1の検知範囲の広角化により、車両近傍の物標を広角域で検知する必要があるようなクリアランスソナーとしてレーダ装置1を利用することも可能である。また、後述されるようなビームの結合又は分離を通じて様々なビーム形状を形成するといったことも可能である。
【0047】
以下の複数の実施例の中で、レーダ装置1の構成例や、レーダ装置1に関わる応用技術、変形技術等を説明する。特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、上述した事項が後述の各実施例に適用される。後述の各実施例において、上述の内容と矛盾する事項については、各実施例での記載が優先されて良い。また矛盾無き限り、以下に述べる複数の実施例の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち複数の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
【0048】
尚、以下では、図9に示す如く、記述の簡略化上、面Pa、Pb上にアンテナパターンを有して構成されるMSアンテナ10を、夫々、符号“10a”、“10b”にて参照し、基板SUBに設けられ得るNa本のMSアンテナ10aをアンテナブロックaと、基板SUBに設けられ得るNb本のMSアンテナ10bをアンテナブロックbと称する。
また、面Pc、Pd、Pe、Pfをアンテナ開口端面とするSIWアンテナ20を、夫々、符号 “20c”、“20d”、“20e”、“20f”にて参照し、基板SUBに設けられ得るNc本のSIWアンテナ20cをアンテナブロックcと、基板SUBに設けられ得るNd本のSIWアンテナ20dをアンテナブロックdと、基板SUBに設けられ得るNe本のSIWアンテナ20eをアンテナブロックeと、基板SUBに設けられ得るNf本のSIWアンテナ20fをアンテナブロックfと称する。
Na~Nfは0以上の整数であり、何れも1以上となり得る。
【0049】
<<第1実施例>>
第1実施例を説明する。図10は、第1実施例に係るレーダ装置1の機能ブロック図である。第1実施例に係るレーダ装置1は、Na本のMSアンテナ10aと、Nc本のSIWアンテナ20cと、Nd本のSIWアンテナ20dと、それらが接続されたMMIC30と、を備える。図10のレーダ装置1において、Na、Nc及びNdは夫々1以上の任意の整数である。上述の図4は“Na=Nc=Nd=2”となる構成に対応している。整数Na、Nc及びNdの一致、不一致は問わない。第1実施例では、整数Na、Nc及びNdが何れも2以上であるとする。
【0050】
レーダ装置1では、MSアンテナ10aによるビームの偏波と、SIWアンテナ20cによるビームの偏波と、SIWアンテナ20dによるビームの偏波を調整することで、それらのビームの分離又は結合を任意に行うことができ、それらの偏波の調整を通じて、様々な指向性を得ることが可能となる。尚、ビームの結合はビームの合成と同義である。
【0051】
[ビームの分離]
MSアンテナ10aによるビームとSIWアンテナ20cによるビームとの分離について説明する。MSアンテナ10aによるビームの偏波の方向とSIWアンテナ20cによるビームの偏波の方向を、それらの相互干渉が生じない程度に又は無視できる程度にずらすことで(例えば90°互いにずらすことで)、MSアンテナ10aによるビームとSIWアンテナ20cによるビームとを分離することができる。MSアンテナ10a及びSIWアンテナ20cの組み合わせに注目してビームの分離について説明したが、同様の考え方が、他のアンテナの組み合わせに対しても当てはまる。
【0052】
MSアンテナ10aによるビームとSIWアンテナ20cによるビームとSIWアンテナ20dによるビームとを互いに分離する場合、以下のような分離使用方法を採用できる。
当該分離使用方法において、Na本のMSアンテナ10aに含まれる1本以上の送信アンテナから送信波が所定の第1検知領域内の物標に向けて放射され、第1検知領域内の物標からの反射波がNa本のMSアンテナ10aに含まれる1本以上の受信アンテナ(望ましくは複数の受信アンテナ)にて受信され、その受信信号に基づきMMIC30は第1検知領域内の物標を検出して検出した物標に関わる物標データを生成する。
一方で、Nc本のSIWアンテナ20cに含まれる1本以上の送信アンテナから送信波が所定の第2検知領域内の物標に向けて放射され、第2検知領域内の物標からの反射波がNc本のSIWアンテナ20cに含まれる1本以上の受信アンテナ(望ましくは複数の受信アンテナ)にて受信され、その受信信号に基づきMMIC30は第2検知領域内の物標を検出して検出した物標に関わる物標データを生成する。
更に、Nd本のSIWアンテナ20dに含まれる1本以上の送信アンテナから送信波が所定の第3検知領域内の物標に向けて放射され、第3検知領域内の物標からの反射波がNd本のSIWアンテナ20dに含まれる1本以上の受信アンテナ(望ましくは複数の受信アンテナ)にて受信され、その受信信号に基づきMMIC30は第3検知領域内の物標を検出して検出した物標に関わる物標データを生成する。
【0053】
このように、分離使用方法では、MSアンテナ10aを用いた物標検出と、SIWアンテナ20cを用いた物標検出と、SIWアンテナ20dを用いた物標検出とが、個別に行われる。
【0054】
図11において、領域DRa、DRc、DRdは、夫々、上記の第1~第3検知領域を表している。ここでは、レーダ装置1のY軸方向における検知角は十分に小さいと仮定し、ZX面上の検知領域DRa、DRc及びDRdについて考える。ZX面上において、第1検知領域DRaはレーダ装置1からZ軸の正側に向けて広がる概略扇型内の領域であり、第2検知領域DRcはレーダ装置1からX軸の正側に向けて広がる概略扇型内の領域であり、第3検知領域DRdはレーダ装置1からX軸の負側に向けて広がる概略扇型内の領域である。但し、第2検知領域DRcはZ軸の正側に向けて若干傾いており、従って詳細には、第2検知領域DRcは、レーダ装置1からX軸成分が正且つZ軸成分が正の位置に向けて広がる概略扇型内の領域であるとする。同様に、第3検知領域DRdはZ軸の正側に向けて若干傾いており、従って詳細には、第3検知領域DRdは、レーダ装置1からX軸成分が負且つZ軸成分が正の位置に向けて広がる概略扇型内の領域であるとする。検知領域DRa、DRc及びDRdは互いに異なる領域である。検知領域DRa、DRc及びDRdは一切互いに重なり合うことの無い領域であっても良いが、ここでは、検知領域DRa及びDRcは領域OVacにて互いに重なり合い、検知領域DRa及びDRdは領域OVadにて互いに重なり合うものとする。重なり領域OVac及びOVadに関わる特徴的な動作については後述される。
【0055】
[ビームの結合]
MSアンテナ10aによるビームとSIWアンテナ20cによるビームとの結合について説明する。MSアンテナ10aによるビームの偏波の方向とSIWアンテナ20cによるビームの偏波の方向を互いに揃えることで(前者のビームの電界方向と後者のビームの電界方向を揃えることで)、MSアンテナ10aによるビームとSIWアンテナ20cによるビームとが結合される(即ち合成される)。この際、MSアンテナ10a及びSIWアンテナ20cを1つのアンテナと見立てることができる。MSアンテナ10a及びSIWアンテナ20cの組み合わせに注目してビームの結合について説明したが、同様の考え方が、他のアンテナの組み合わせに対しても当てはまる。
【0056】
MSアンテナ10aによるビームとSIWアンテナ20cによるビームとSIWアンテナ20dによるビームとを互いに結合する場合、以下のような結合使用方法を採用できる。図12は、当該結合使用方法の採用時における、MSアンテナ10a、SIWアンテナ20c及びSIWアンテナ20dから成る合成アンテナのビームパターンの例を示している。図12では上記合成アンテナのビームパターンの例をZX平面上で示している。
【0057】
当該結合使用方法では、Na本のMSアンテナ10aに含まれる1本以上の送信アンテナからの送信波と、Nc本のSIWアンテナ20cに含まれる1本以上の送信アンテナからの送信波と、Nd本のSIWアンテナ20dに含まれる1本以上の送信アンテナからの送信波とが基板SUB外の空間において合成され、それらの送信波の合成波が所定の検知領域内の物標に向けて放射される。そして、当該検知領域内の物標からの反射波が、Na本のMSアンテナ10aに含まれる1本以上の受信アンテナ、Nc本のSIWアンテナ20cに含まれる1本以上の受信アンテナ及びNd本のSIWアンテナ20dに含まれる1本以上の受信アンテナから成る受信アンテナ群にて受信され、その受信信号に基づきMMIC30は当該検知領域内の物標を検出して検出した物標に関わる物標データを生成する。
【0058】
以下の各実施例において、上記結合使用方法が採用されても良いが、以下では特に記述無き限り、各アンテナブロックに対し上記分離使用方法が採用されるものとする。
【0059】
<<第2実施例>>
第2実施例を説明する。第2実施例では、アンテナブロックa~f(図9参照)の何れに対しても適用可能な信号処理の内容等を説明する。
【0060】
図13に、レーダ装置1に搭載可能なレーダブロック100の構成図を示す。レーダブロック100は、送信部120と、受信部130と、信号処理部140と、を備える。ここでは、周波数変調された連続波であるFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)を用いる構成を例として説明する。
【0061】
送信部120は、信号生成部121及び発信器122を備える。信号生成部121は、信号処理部140の制御の下で、三角波状に電圧が変化する変調信号を生成し、該変調信号を発信器122に供給する。発信器122は、供給された変調信号に基づいて連続波の信号を周波数変調することで、時間経過につれて周波数が変化する送信信号を生成し、該送信信号を送信アンテナ123に出力する。送信アンテナ123は、発信器122からの送信信号を送信波TWとして所定の向きに出力する(即ち空間に放射する)。送信アンテナ123から出力される送信波TWは、所定の周期で周波数が上下するFMCWとなる。送信波TWが物標(人や車両CR以外の車両など)にて反射されると、送信波TWに基づく反射波RWが物標から車両CR(図1参照)に向かうことになる。
【0062】
受信部130は、アレーアンテナを形成する複数の受信アンテナ131と、その複数の受信アンテナ131に接続された複数の個別受信部132と、を備える。各受信アンテナ131に対して個別に1つの個別受信部132が割り当てられる。ここでは例として、受信アンテナ131と個別受信部132の組が、4組分、受信部130に設けられているものとする。受信アンテナ131と個別受信部132の組ごとに、受信アンテナ131は物標からの反射波RWを受信して受信信号を取得し、個別受信部132は対応する受信アンテナ131で得られた受信信号に所定の処理を施す。
【0063】
複数の個別受信部132の構成は互いに同一であり、各個別受信部132はミキサ133及びA/D変換部134を備える。各個別受信部132において、対応する受信アンテナ131で得られた受信信号はローノイズアンプ(不図示)にて増幅された後にミキサ133に送られ、ミキサ133はローノイズアンプを介して供給された受信信号と発信器122からの送信信号とをミキシングすることでビート信号を生成する。ミキサ133は受信信号をダウンコンバートする周波数変換部として機能し、ビート信号は送信信号の周波数と受信信号の周波数との差であるビート周波数を有する。各個別受信部132において、ミキサ133により生成されたビート信号は同期回路(不図示)にて受信アンテナ131間でタイミングを合わせた上でA/D変換部134によりデジタルの信号に変換された後に、信号処理部140に出力される。
【0064】
信号処理部140は、各A/D変換部134から供給される信号に基づき(従って4つの受信アンテナ131の受信信号に基づき)、物標データを生成することができる。複数の受信アンテナ131による反射波RWの受信信号に基づき、上述したような物標データを生成する方法として公知の任意の方法を利用することができる。
【0065】
図13の構成をアンテナブロックaに適用する場合には、5本のMSアンアンテナ10aが送信アンテナ123及び4本の受信アンテナ131に対応することになり、アンテナブロックaに対して、送信部120、各個別受信部132及び信号処理部140から成る信号処理ブロックを設けておくことができる。同様に、図13の構成をアンテナブロックcに適用する場合には、5本のSIWアンアンテナ20cが送信アンテナ123及び4本の受信アンテナ131に対応することになり、アンテナブロックcに対して、送信部120、各個別受信部132及び信号処理部140から成る信号処理ブロックを設けておくことができる。図13の構成を他のアンテナブロックに適用する場合も同様である。各信号処理ブロックにおける送信部120、個別受信部132及び信号処理部140はMMIC30にて実現される。
【0066】
今、図13の構成をアンテナブロックaに適用することを想定して、物標データに含まれる位置情報について説明する。但し、ここにおける位置情報の説明は、図13の構成がアンテナブロックb~fの何れに適用された場合にも当てはまる。図13の構成をアンテナブロックaに適用した場合において、信号処理部140にて生成される位置情報を特に位置情報Daと称する。アンテナブロックaについての検知領域は上述したように検知領域DRaと称される(図11参照)。
【0067】
図14を参照し、位置情報Daは検知領域DRa内に存在する物標の存在位置をアンテナブロックaのレーダ座標系上で表す。図14において、TGは検知領域DRa内に存在する物標を表す。個別受信部132及び信号処理部140を含むMMIC30は、複数のMSアンテナ10aとしての複数の受信アンテナ131の受信信号に基づき、レーダ装置1及び物標TG間の距離dsを示す距離情報と、物標TGの存在位置の方位を示す方位情報とを導出する。位置情報Daにおいて、物標TGの存在位置の方位は、レーダ装置1から見た物標TGの存在位置の方位であり、Z軸からレーダ装置1及び物標TG間を結ぶ直線を見たときの、その直線とZ軸との成す角度θで表される。位置情報Daは距離dsを示す距離情報と方位(角度θ)を示す方位情報を含み、距離ds及び角度θによりレーダ座標系上における物標TGの位置が特定される。
【0068】
方位情報は、複数の受信アンテナ131の受信信号間の位相差に基づいて導出される。図15は、物標TGからの反射波RWがX軸方向に並べて配置された4つの受信アンテナ131にて共通して受信される様子を示している。4つの受信アンテナ131の受信信号間には角度θに応じた位相差が生じ、MMIC30では、この位相差を検出することで物標TGの方位(即ち角度θ)を導出する。
【0069】
<<第3実施例>>
第3実施例を説明する。上述の位相差の検出範囲は360°であるため、広角域において、位相折り返し誤判定の問題が生じ得る。
【0070】
例えば、図16の位置610に物標が存在していたときの上記位相差が60°であって、且つ、図16の位置620に物標が存在していたときの上記位相差が420°(=360°+60°)である場合、MMIC30は、60°と420°を区別できないため、位置610に物標が存在しているときにも位置620に物標が存在しているときにも同じ位相差を検出することになり、結果、物標が位置610及び620のどちらに存在しているのかを判断できないおそれがある。換言すれば、位置610に物標が存在している場合において、位置620に物標が存在すると誤検知するおそれがあり、或いは、位置620に物標が存在している場合において、位置610に物標が存在すると誤検知するおそれがある。このような誤検知をもたらす物標検出における誤判定は位相折り返し誤判定と称される。
【0071】
第3実施例では、このような位相折り返し誤判定による誤検知を抑制する方法を説明する。第3実施例では、第1実施例(図10参照)に示したレーダ装置1の構成が利用されることを想定すると共に、アンテナブロックa、c及びdの夫々に対して第2実施例に示したレーダブロック100の構成(図13参照)が適用されることを想定する。
【0072】
図17に、図11に示される検知領域DRa、DRc及びDRdと、図16に示される位置610及び620との関係を示す。検知領域DRa及びDRc間の重なり領域OVacと、検知領域DRa及びDRd間の重なり領域OVadは、位相折り返し誤判定が生じ得る領域であり、位置610、620は、夫々、重なり領域OVac、OVad内の位置である。
【0073】
今、位置610又は620に真の物標が存在することを考える。このとき、MSアンテナ10aとして設けられた複数の受信アンテナの受信信号に基づき、MMIC30は、位置610又は620に物標が存在すると推定できるが真の物標が位置610に存在するのか位置620に存在するのか判断できない、或いは、位置610及び620の双方に物標が存在すると推定する。位置610に真の物標が存在する場合において位置620に存在すると推定された物標、及び、位置610に真の物標が存在する場合において位置620に存在すると推定された物標は、位相折り返しによるゴーストである。
【0074】
MMIC30は、アンテナブロックaを用いて位置610に存在すると推定された物標がゴーストであるか否かを、アンテナブロックcを用いた検知領域DRc内の物標の検出結果に基づき判断することができる。具体的には例えば、位置610を中心とし且つ位置610からの距離が所定値以下の領域に物標が存在することが、アンテナブロックcを用いた検知領域DRc内の物標の検出結果(アンテナブロックcに対応する物標データ)にて示されている場合、MMIC30は、位置610に存在すると推定された物標がゴーストでないと判断し、そうでない場合、位置610に存在すると推定された物標がゴーストであると判断する。
【0075】
位置610に存在すると推定された物標がゴーストでないと判断した場合、MMIC30は、位置610に物標が存在することを示す位置情報Daを含んだ物標データを、アンテナブロックaを用いた検知領域DRa内の物標の検出結果として導出する。一方、位置610に存在すると推定された物標がゴーストであると判断した場合、MMIC30は、位置610に物標が存在することを示す位置情報Daを含まない物標データを、アンテナブロックaを用いた検知領域DRa内の物標の検出結果として導出する、即ち位置610には物標が存在していないことを示す検出結果を導出する。つまり、位相折り返しによるゴーストか否かの判定が正しく行われた検出結果が導出されることになる。
【0076】
位置620に存在すると推定された物標がゴーストであるか否かの判断についても同様である。即ち、MMIC30は、アンテナブロックaを用いて位置620に存在すると推定された物標がゴーストであるか否かを、アンテナブロックdを用いた検知領域DRd内の物標の検出結果に基づき判断することができる。具体的には例えば、位置620を中心とし且つ位置620からの距離が所定値以下の領域に物標が存在することが、アンテナブロックdを用いた検知領域DRd内の物標の検出結果(アンテナブロックdに対応する物標データ)にて示されている場合、MMIC30は、位置620に存在すると推定された物標がゴーストでないと判断し、そうでない場合、位置620に存在すると推定された物標がゴーストであると判断する。
【0077】
位置620に存在すると推定された物標がゴーストでないと判断した場合、MMIC30は、位置620に物標が存在することを示す位置情報Daを含んだ物標データを、アンテナブロックaを用いた検知領域DRa内の物標の検出結果として導出する。一方、位置620に存在すると推定された物標がゴーストであると判断した場合、MMIC30は、位置620に物標が存在することを示す位置情報Daを含まない物標データを、アンテナブロックaを用いた検知領域DRa内の物標の検出結果として導出する、即ち位置620には物標が存在していないことを示す検出結果を導出する。つまり、位相折り返しによるゴーストか否かの判定が正しく行われた検出結果が導出されることになる。
【0078】
このように、アンテナブロックa及びcの組み合わせに注目した場合、MMIC30は、アンテナブロックaを用いて検知領域DRa内の物標を検出するとともに、アンテナブロックcを用いて検知領域DRc内の物標を検出する信号処理を行うが、この際、アンテナブロックcを用いた検知領域DRc内の物標の検出結果をも参照して、検知領域DRa内の物標の検出結果を導出する。具体的には、アンテナブロックaを用いて検知領域DRa内の物標を検出する際に生じ得る位相折り返しを、アンテナブロックcを用いた検知領域DRc内の物標の検出結果に基づいて評価する。アンテナブロックa及びdの組み合わせに注目した場合も同様である。アンテナブロックaとアンテナブロックe又はfとの組み合わせ、及び、アンテナブロックbとアンテナブロックc~fとの組み合わせに注目した場合も同様である。
【0079】
本方法により、検知領域の広角化を図る際に生じやすい位相折り返し誤判定を良好に抑制することができ、以って、位相折り返しに基づくゴーストの発生を抑制することができる。
【0080】
<<第4実施例>>
第4実施例を説明する。第4実施例では、レーダ装置1を路面の段差検出に利用する方法を説明する。尚、路面を走行可能な車両CRに注目して、前後左右を以下のように定義する。即ち、車両CRの運転席からステアリングホイールに向かう向きを「前方」と定義し、車両CRのステアリングホイールから運転席に向かう向きを「後方」と定義する。前方及び後方間を結ぶ方向は車両CRの直進進行方向に平行である。直進進行方向は水平面に対して平行であるとする。車両CRにおいて、運転手は前を向いて運転席に座っているものとし、当該運転手の左側から右側に向かう向きを「右方向」と定義し且つ当該運転手の右側から左側に向かう向きを「左方向」と定義する。左右方向は、車両CRの直進進行方向及び鉛直線に対して垂直な方向である。
【0081】
図18は、第4実施例で想定される車両CRへのレーダ装置1への取り付け状況を示す図である。図18に示す例では、Z軸が水平方向を向き且つX軸が鉛直方向を向くようにレーダ装置1が、車両CRの右側面に取り付けられている。もう1つのレーダ装置1を車両CRの左側面に取り付けることもできるが、説明の簡略化上、ここでは、車両CRの右側面に取り付けられたレーダ装置1にのみ注目する。アンテナブロックa~fの内、少なくともアンテナブロックa及びcがレーダ装置1に設けられている。そして、レーダ装置1における基板SUBの端面Pcは端面Pdよりも路面に近いものとする(図3(b)参照)。即ち、路面に対して端面Pcが対向して配置される。そうすると、アンテナブロックaの検知領域DRaは車両CRの右側面から概ね車両CRの右側に向けて広がり、アンテナブロックcの検知領域DRcは車両CRの右側面から車両CRの右斜め下方の路面に向けて広がる。
【0082】
MMIC30は、アンテナブロックaを用い、上述の方法により検知領域DRa内の物標を検出する(検知領域DRa内の物標についての物標データを取得する)。車両CRの右側に位置する路面上の幾つかの物標は、検知領域DRa内に位置する。このため、MMIC30は、アンテナブロックaを用い、検知領域DRa内に位置する物標であって且つ路面上の物標を検出することができる。
【0083】
MMIC30は、アンテナブロックcを用い、上述の方法により検知領域DRc内の物標を検出する(検知領域DRc内の物標についての物標データを取得する)。車両CRの右斜め下方に位置する路面は検知領域DRc内に位置する。そして、検知領域DRc内の路面に段差が含まれている場合には、その路面の段差形状をアンテナブロックcの受信信号から導出することができる。アンテナブロックcにおける受信アンテナでの受信信号は、アンテナブロックcについての反射波の出所である反射点の位置を特定する情報を含んでおり、レーダ座標系上で、複数の反射点の位置をプロットすることで路面の段差形状を特定することができる。
【0084】
本方法によれば、共通の基板SUBに形成されたMSアンテナ10及びSIWアンテナ20を用いて、路面上の物標の検出だけでなく路面の段差検出を行うことも可能となる。このようなレーダ装置1を用い、例えば、路面上の物標の検出結果及び路面の段差の検出結果を視覚的又は聴覚的に運転手に通知したり、それらの検出結果に基づき車両CRの運転制御を行ったりすることで、路面上の物標との接触等を回避しつつ脱輪を防止することも可能となる。
【0085】
<<第5実施例>>
第5実施例を説明する。第4実施例でも述べた事項に関連するが、車両CRに対し複数のレーダ装置1を設置するようにしても良い。図19は、車両CRに対し計4つのレーダ装置1が設置される様子を示した俯瞰図(車両CRの上方から見た俯瞰図)である。尚、図19では、図示の便宜上、車両CRに対し各レーダ装置を随分と大きく示している。図20は、車両CRに搭載される運転支援システムのブロック図である。運転支援システムは、車両CRの左前端部に設置されたレーダ装置1であるレーダ装置1FLと、車両CRの右前端部に設置されたレーダ装置1であるレーダ装置1FR、車両CRの左後端部に設置されたレーダ装置1であるレーダ装置1BLと、車両CRの右後端部に設置されたレーダ装置1であるレーダ装置1BRと、レーダ装置1FL、1FR、1BL及び1BRに接続されたレーダ統合ECU(Electronic Control Unit)50と、運転支援ECU60と、備える。図19の例では、レーダ装置1FL、1FR、1BL及び1BRの夫々において、図10に示す如くアンテナブロックa、c及びdが設けられることが想定されている。
【0086】
図19において、レーダ装置1FLを起点とする1つの実線曲線内の領域は、レーダ装置1FLにおけるアンテナブロックaの検知領域DRaを表し、レーダ装置1FLを起点とする2つの破線曲線内の領域は、レーダ装置1FLにおけるアンテナブロックc及びdの検知領域DRc及びDRdを表している。レーダ装置1FR、1BL及び1BRについても同様である。レーダ装置1FL、1FR、1BL及び1BRの夫々に対して第4実施例の方法を適用し、各レーダ装置において、アンテナブロックc又はdを用い路面の段差検出を行うようにしても良い。
【0087】
レーダ装置1FL、1FR、1BL及び1BRによる物標の検出結果はレーダ統合ECU50に送られる。レーダ統合ECU50は、レーダ装置1FL、1FR、1BL及び1BRによる物標の検出結果(即ち物標データ)を統合したレーダ統合情報を生成して運転支援ECU60に伝達する。各レーダ装置からの物標データに含まれる物標の位置情報は各々のレーダ座標系における位置情報である。レーダ統合ECU50は、各々のレーダ座標系における位置情報を車両CRを中心とする車両座標系上の位置情報に変換し、当該変換を通じてレーダ統合情報を生成する。
【0088】
運転支援ECU60は、レーダ統合情報に応じた情報を、車両CRに搭載された画像表示部及び音声出力部(双方図示せず)を用いて視覚的又は聴覚的に運転手に通知する通知処理を行うことができる。例えば、各レーダ装置の全検知範囲を包含する領域を車両CRの周辺の監視領域とし、監視領域内の物標及び段差の有無並びに物標及び段差の存在位置を示したグリッドマップを上記画像表示部に表示しても良い。路面に平行な車両CRの全方位をカバーする領域を監視領域とすることもでき、クリアランスソナーとして運転支援システムを利用することもできる。
【0089】
また、運転支援ECU60は、レーダ統合情報に基づき車両CRの運転制御を行うことができても良い。車両CRの運転制御には、車両CRの走行速度の制御(加速、減速の制御を含む)、及び、車両CRの移動方向の制御が含まれる。車両CRの運転手は、車両CRに設けられた操作部材(ステアリング、アクセルペダル、ブレーキベダル等)を手動操作することで車両CRを運転することができるが、レーダ統合情報に基づく車両CRの運転制御は、運転手の手動運転操作に依存せずに実行される自動運転制御であっても良いし、運転手の手動運転操作を支援する運転支援制御であっても良い。例えば、レーダ統合情報に基づく監視領域内の物標及び段差の有無並びに物標及び段差の存在位置に基づいて、縦列駐車のための運転制御を行ったり、車列割り込みのための運転制御を行ったりすることができる。
【0090】
尚、運転支援システムに設けられるレーダ装置1の個数は1以上であれば任意である。レーダ装置1の個数が1である場合、レーダ統合ECU50を省略できる。
【0091】
運転支援ECU60にて実現される機能をプログラムで記述して、当該プログラムを運転支援ECU60に搭載可能なメモリに記憶させておき、運転支援ECU60内のマイクロコンピュータ上で当該プログラムを実行することで、運転支援ECU60の機能を実現しても良い。レーダ統合ECU50についても同様である。
【0092】
<<第6実施例>>
第6実施例を説明する。
【0093】
1つのレーダ装置1において、
MSアンテナ10によるアンテナブロック(a又はb)及びSIWアンテナ20によるアンテナブロック(c、d、e又はf)を結合使用方法で動作させる結合動作と、
MSアンテナ10によるアンテナブロック(a又はb)或いはSIWアンテナ20によるアンテナブロック(c、d、e又はf)を単独で動作させる独立動作とを、
切り替えながら実行するようにしても良い。例えば、アンテナブロックa及びcを結合使用方法で動作させることができるようにレーダ装置1を構成しておき、アンテナブロックa及びcを結合使用方法で動作させる結合動作と、アンテナブロックaを単体で動作させる第1独立動作と、アンテナブロックcを単体で動作させる第2独立動作とを、交互に且つ繰り返し行うようにしても良い。
【0094】
本実施形態ではレーダ装置1を車両CRに搭載することが想定されているが、レーダ装置1は車載用途に限定されず、任意の移動体にレーダ装置1が設置されても良いし、任意の静止物にレーダ装置1が設定されても良い。
【0095】
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 レーダ装置
2 アンテナ装置
3 電子回路
10、10a、10b マイクロストリップアンテナ
20、20c~20f SIWアンテナ
30 MMIC
CR 車両
SUB 基板
Pa、Pb 表面
Pc~Pf 端面
DRa、DRc、DRd 検知領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20