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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】帯電装置および集塵装置
(51)【国際特許分類】
   B03C 3/41 20060101AFI20230111BHJP
   B03C 3/40 20060101ALI20230111BHJP
   B03C 3/155 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
B03C3/41 J
B03C3/40 A
B03C3/41 A
B03C3/155 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018159660
(22)【出願日】2018-08-28
(65)【公開番号】P2020032337
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000101617
【氏名又は名称】アマノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100177644
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 和樹
(72)【発明者】
【氏名】西田 政記
(72)【発明者】
【氏名】勝島 慎二郎
(72)【発明者】
【氏名】巻嶋 優治
(72)【発明者】
【氏名】中川 祥平
(72)【発明者】
【氏名】田中 芳浩
【審査官】寺▲崎▼ 遥
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0118284(US,A1)
【文献】実開昭60-042364(JP,U)
【文献】特開平08-112549(JP,A)
【文献】特開昭56-108548(JP,A)
【文献】実開昭56-073545(JP,U)
【文献】特開平11-19534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 3/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含塵空気を流通させながらコロナ放電によって含塵空気に含まれた塵埃を帯電させる帯電装置であって、
支持体に支持されている複数の放電用電極と、
各々の前記放電用電極との間にコロナ放電を発生させるための隙間を挟んで設けられ、各々の前記隙間を流通した含塵空気を通過させる複数の流通穴を有する接地電極と、を備え、
前記接地電極は
数の前記隙間に面して前記隙間に進入する含塵空気の流通方向に対して傾斜した複数の傾斜面部と、
互いに隣り合う前記傾斜面部の間にて含塵空気の流通方向に直交する方向に延設された複数の正対面部と、を含み、
前記接地電極は、前記複数の傾斜面部と前記複数の正対面部とを交互に連続させて波形状に形成され、
前記正対面部に形成された前記流通穴が、前記傾斜面部に形成された前記流通穴よりも小さく形成され、含塵空気の流通方向から見て、前記傾斜面部の前記流通穴と前記正対面部の前記流通穴との投影面積が略同一にされていることを特徴とする帯電装置。
【請求項2】
互いに隣り合う前記傾斜面部は、前記放電用電極を挟んで対向配置されていることを特徴とする請求項1に記載の帯電装置。
【請求項3】
互いに隣り合う前記傾斜面部は、逆方向に傾斜しており、前記放電用電極を対称軸として線対称に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の帯電装置。
【請求項4】
前記傾斜面部は、前記隙間に進入する含塵空気の流通方向に対して20度以上45度以下の範囲で傾斜していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の帯電装置。
【請求項5】
前記放電用電極は、複数の繊維状の線電極を束ねて形成されていることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の帯電装置。
【請求項6】
前記複数の放電用電極は、前記接地電極を挟んで含塵空気の流通方向上流側と下流側の両側において含塵空気の流通方向に直交する方向に配置され、
含塵空気の流通方向に直交する方向に隣り合う前記放電用電極の間隔を1ピッチとした場合に、含塵空気の流通方向上流側に配置された前記複数の放電用電極と、含塵空気の流通方向下流側に配置された前記複数の放電用電極とは、前記1ピッチの半分であるハーフピッチずれた位置で交互に配置されていることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の帯電装置。
【請求項7】
隣り合う前記傾斜面部の間には、略台形状の凹部が形成され、
前記放電用電極の先端部は、前記凹部に進入しており、互いに隣り合う前記傾斜面部に対して等距離となる前記隙間を挟む位置に配置されていることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の帯電装置。
【請求項8】
記放電用電極の先端部は、互いに隣り合う前記傾斜面部と、その間の前記正対面部とに対して等距離となる前記隙間を挟む位置に配置されていることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の帯電装置。
【請求項9】
請求項1ないしのいずれかに記載の帯電装置と、
前記帯電装置よりも含塵空気の流通方向下流側に設けられ、前記帯電装置によって帯電された塵埃を捕集する捕集装置と、を備えていることを特徴とする集塵装置。
【請求項10】
前記放電用電極に高電圧を印加する高圧電源を制御すると共に、含塵空気を外部から前記帯電装置に取り込むために気流を形成する排気ファンを回転制御する制御部を更に備え、
前記制御部は、前記気流の速度を10~20m/sの範囲になるように前記排気ファンを制御することを特徴とする請求項9に記載の集塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電装置および集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コロナ放電によって含塵空気中の粒子を帯電させる帯電装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の予備荷電部の電極部は、支持体に支持された複数の突起状の放電極と、複数の孔を有した平板状の接地極と、支持体に接続される高圧電源と、を備えていた。接地極は、燃料排ガスの流通方向と平行に配置されていた。また、電極部よりも燃料排ガスの流通方向上流側には、仕切りとダンパとが設けられており、ダンパの開度を制御部で制御して燃料排ガスの流通速度(流通量)を変更していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2011/152357号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の電極部では、平板状の接地極が燃料排ガスの流通方向と平行に配置されていたため、接地極に付着したダストを燃料排ガスの流通によって効率良く払い落とすことができない虞があった。このため、上記の電極部では、接地極に付着したダストを払い落とすために、ダンパの開度を制御して燃料排ガスの流通量を増加させなければならなかった。つまり、上記の電極部では、接地極に付着したダストを除去するために、ダンパやこれを制御する制御部等が必要になり、電極部の構造が複雑になっていた。
【0006】
本発明は、上記した課題を解決するため、接地電極に付着した塵埃を自浄作用によって引き剥がすことができる帯電装置および集塵装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の帯電装置は、含塵空気を流通させながらコロナ放電によって含塵空気に含まれた塵埃を帯電させる帯電装置であって、支持体に支持されている複数の放電用電極と、各々の前記放電用電極との間にコロナ放電を発生させるための隙間を挟んで設けられ、各々の前記隙間を流通した含塵空気を通過させる複数の流通穴を有する接地電極と、を備え、前記接地電極は、複数の前記隙間に面して前記隙間に進入する含塵空気の流通方向に対して傾斜した複数の傾斜面部を含んでいる。
【0008】
本発明の第1の帯電装置では、接地電極の傾斜面部が流通方向に対して傾斜しているため、放電用電極と接地電極との間の隙間を流れた含塵空気が傾斜面部に衝突し、且つ複数の流通穴から流通方向下流へ流れて行く。この構成によれば、含塵空気を傾斜面部に衝突させることで、接地電極(傾斜面部)に付着した塵埃を引き剥がすことができ、剥離した塵埃を気流に乗せて流通穴から下流へと流すことができる(自浄作用)。その結果、接地電極に塵埃が堆積することが抑制されるため、安定したコロナ放電の発生を担保することができ、安定した塵埃の帯電を継続して行うことができる。
【0009】
本発明の第2の帯電装置は、上記した第1の帯電装置において、互いに隣り合う前記傾斜面部は、前記放電用電極を挟んで対向配置されていることが好ましい。
【0010】
本発明の第2の帯電装置によれば、放電用電極とその両側の傾斜面部との間でコロナ放電を発生させることができる。これにより、放電用電極の両側に帯電領域を生成することができるため、広範囲に亘る塵埃を帯電させることができる。また、隣り合う放電用電極を仕切るように傾斜面部が配置されるため、隣り合う放電用電極の間での電界干渉を抑制することができる。
【0011】
本発明の第3の帯電装置は、上記した第1の帯電装置において、互いに隣り合う前記傾斜面部は、逆方向に傾斜しており、前記放電用電極を対称軸として線対称に配置されていることが好ましい。
【0012】
本発明の第3の帯電装置によれば、放電用電極を挟む両側の傾斜面部が線対称に配置されているため、放電用電極とその両側の傾斜面部との間の2つの隙間を同じ幅にすることができる。これにより、放電用電極の両側に略均一な帯電領域を形成することができ、塵埃を安定して帯電させることができる。また、2つの隙間を流通する含塵空気の流量や流速を略同一にすることができ、各々の傾斜面部に対して略均一に含塵空気を当てることができる。
【0013】
本発明の第4の帯電装置は、上記した第1ないし第3のいずれかの帯電装置において、前記傾斜面部は、前記隙間に進入する含塵空気の流通方向に対して20度以上45度以下の範囲で傾斜していることが好ましい。
【0014】
本発明の第4の帯電装置によれば、傾斜面部の傾斜角度を20度以上45度以下に設定することによって、傾斜面部に含塵空気を当てながら傾斜面部に付着した塵埃を引き剥がすことができる。
【0015】
本発明の第5の帯電装置は、上記した第1ないし第4のいずれかの帯電装置において、前記接地電極は、前記複数の傾斜面部を連続させた状態に形成されていることが好ましい。
【0016】
本発明の第5の帯電装置によれば、例えば、一枚の金網(板金)を曲げ加工することで、複数の傾斜面部を連ねた接地電極を形成することができる。これにより、接地電極を安価に製造することができる。
【0017】
本発明の第6の帯電装置は、上記した第1ないし第5のいずれかの帯電装置において、前記放電用電極は、複数の繊維状の線電極を束ねて形成されていることが好ましい。
【0018】
本発明の第6の帯電装置によれば、放電用電極に繊維状の線電極を用いているため、太い電極を用いた場合に比べて、低い印加電圧でコロナ放電を発生させることができる。これにより、火花の発生を抑制することができると共に、空気のイオン化に伴うオゾンの発生を抑制することもできる。また、放電用電極に複数の線電極を用いているため、仮に、一部の線電極が摩耗しても、残りの線電極でコロナ放電を発生させ続けることができる。
【0019】
本発明の第7の帯電装置は、上記した第1ないし第6のいずれかの帯電装置において、前記複数の放電用電極は、前記接地電極を挟んで含塵空気の流通方向上流側と下流側の両側で流通方向に直交する方向にハーフピッチずらした位置で交互に配置されていることが好ましい。
【0020】
仮に、接地電極の上流側にのみ放電用電極を配置した場合、隣り合う放電用電極の間に帯電領域を形成することができない場合がある。これに対し、本発明の第7の帯電装置によれば、複数の放電用電極が、接地電極の上流側と下流側の両側に千鳥状に配置されているため、接地電極の上流側と下流側の両側において千鳥状に帯電領域を形成することができる。これにより、例えば、上流側の放電用電極では帯電領域にできない領域を、下流側の放電用電極周りに形成された帯電領域で補うことができる。その結果、含塵空気の略全てが帯電領域を通過することになるため、含塵空気に含まれる塵埃の略全てを帯電させることができる。
【0021】
本発明の第8の帯電装置は、上記した第1ないし第7のいずれかの帯電装置において、前記放電用電極の先端部は、互いに隣り合う前記傾斜面部に対して等距離となり、且つ前記傾斜面部と重なり合う位置に配置されていることが好ましい。
【0022】
本発明の第8の帯電装置によれば、放電用電極の先端部から両側の傾斜面部までの距離が等しいため、放電用電極の両側に略均一な帯電領域を形成することができ、塵埃を安定して帯電させることができる。
【0023】
本発明の第9の帯電装置は、上記した第1ないし第8のいずれかの帯電装置において、前記接地電極は、互いに隣り合う前記傾斜面部の間にて含塵空気の流通方向に直交する方向に延設された正対面部を含み、前記放電用電極の先端部は、互いに隣り合う前記傾斜面部と、その間の前記正対面部とに対して等距離となる位置に配置されていることが好ましい。
【0024】
本発明の第9の帯電装置によれば、放電用電極と一対の傾斜面部との間の帯電領域が形成されることに加えて、放電用電極と正対面部との間に帯電領域を形成することができる。これにより、放電用電極の先端部から均等に離間した傾斜面部と正対面部とを利用して隙間に3方向に帯電領域を形成することができるため、含塵空気に含まれる塵埃の略全てを帯電させることができる。
【0025】
本発明の第1の集塵装置は、第1ないし第9のいずれかの帯電装置と、前記帯電装置よりも含塵空気の流通方向下流側に設けられ、前記帯電装置によって帯電された塵埃を捕集する捕集装置と、を備えている。
【0026】
本発明の第1の集塵装置によれば、帯電装置によって帯電された塵埃を、捕集装置によって捕集することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、接地電極に付着した塵埃を自浄作用によって引き剥がすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1実施形態に係る集塵装置を示す斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る帯電装置の荷電部を流通方向上流側から示す斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る帯電装置の荷電部を流通方向下流側から示す斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る帯電装置の接地電極および放電用電極等を流通方向上流側から示す斜視図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る帯電装置の接地電極および放電用電極等を流通方向下流側から示す斜視図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る帯電装置の接地電極および放電用電極等の一部を示す平面図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る集塵装置の集塵作用を説明するための平面図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る帯電装置の接地電極および放電用電極等を流通方向上流側から示す斜視図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る帯電装置の接地電極および放電用電極等の一部を示す平面図である。
図10】本発明の第3実施形態に係る帯電装置の接地電極および放電用電極等の一部を示す平面図である。
図11】本発明の第4実施形態に係る帯電装置の接地電極および放電用電極等の一部を示す平面図である。
図12】本発明の第5実施形態に係る帯電装置の接地電極および放電用電極等の一部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、各図に示す「Fr」は「前」を示し、「Rr」は「後」を示し、「L」は「左」を示し、「R」は「右」を示し、「U」は「上」を示し、「D」は「下」を示している。本明細書では、説明の便宜のために方向や位置を示す用語を用いるが、それらの用語は本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0030】
[第1実施形態:集塵装置の構成]
図1を参照して、第1実施形態に係る集塵装置1について説明する。図1は集塵装置1を示す斜視図である。
【0031】
集塵装置1は、含塵空気中の塵埃をコロナ放電によって帯電させて捕集する装置である。例えば、集塵装置1は、プラズマ加工機やレーザ加工機による金属加工を行う工場内に設置されている。また、例えば、集塵装置1は、金属加工時に発生する金属ヒューム等の微細な塵埃を集塵する。なお、集塵装置1は、金属加工工場に限らず、塵埃が発生する場所に設置することができる。集塵装置1が集塵する塵埃は、金属ヒュームに限らず、帯電させて集塵可能な粒子であれば、その種類は問わない。
【0032】
集塵装置1は、帯電装置10と、捕集装置20と、除塵装置30と、を備えている。帯電装置10は、含塵空気を流通させながらコロナ放電によって含塵空気に含まれた塵埃を帯電させる機能を有している。捕集装置20は、帯電装置10よりも含塵空気の流通方向下流側に設けられ、帯電装置10によって帯電された塵埃を捕集する機能を有している。除塵装置30は、捕集装置20に捕集された塵埃を払い落とす機能を有している。なお、以下の説明において、「流通方向」とは、含塵空気が流れる方向を指す。また、「上流」および「下流」並びにこれらに類する用語は、含塵空気の流通方向における「上流」および「下流」並びにこれらに類する概念を指す。
【0033】
[帯電装置]
帯電装置10は、略直方体状の外観を構成する帯電筐体40を備えている。帯電筐体40は、例えば、ステンレス等の金属材料で構成されており、後述する捕集装置20の集塵筐体21の左側面に固定されている。帯電筐体40の内部空間は、仕切板41よって下方の帯電室R3と上方の碍子室R4とに仕切られている。
【0034】
帯電筐体40の左側面(上流側)には含塵空気を帯電室R3に導入するための四角形状の上流側開口部42が形成されている。上流側開口部42には、略四角錐台状の継手42Aを介して円筒状の吸気ダクト42Bが接続されている。帯電筐体40の右側面(下流側)には、帯電室R3を通過した含塵空気を集塵筐体21に向けて排出するための円形状の下流側開口部43が形成されている。帯電筐体40の前面には、帯電室R3を開放する帯電点検開口部40Aが形成されている。また、帯電筐体40には、帯電点検開口部40Aを開閉するための帯電点検扉(図示せず)が取り付けられている(図1では帯電点検扉は取り外されている。)。
【0035】
詳細は後述するが、帯電室R3には、2つの荷電部45が設けられている。各荷電部45は、複数の放電用電極71と接地電極60とを含んでいる。各放電用電極71には、高圧電源(図示せず)が電気的に接続されている。高圧電源は、放電用電極71に数kVの直流電圧を印加することで、放電用電極71と接地電極60との間にコロナ放電を発生させる。
【0036】
[捕集装置]
捕集装置20は、略直方体状の外観を構成する集塵筐体21を備えている。集塵筐体21には、内部空間を上下方向に二分割する金属製(例えば、ステンレス等)の仕切板22が設けられている。集塵筐体21の内部空間は、仕切板22よって下方のダーティルームR1と上方のクリーンルームR2とに仕切られている。なお、図1では、クリーンルームR2の内部を示すために、集塵筐体21の上部を仮想線(二点鎖線)で示している。
【0037】
ダーティルームR1には、6つのフィルタユニット23が仕切板22に吊り下げられた状態で支持されている。フィルタユニット23は、複数の折目をつけたプリーツ状の不織布(合成樹脂繊維製)を含んでいる。不織布は略円筒状に形成されており、フィルタユニット23の上端面には開口部23Aが形成されている。仕切板22には、6つの仕切開口部22Aが前後方向に2列、左右方向に3列に並んで形成されている。6つのフィルタユニット23は、6つの仕切開口部22Aに対応して仕切板22に支持されており、各フィルタユニット23の開口部23Aは、仕切開口部22AからクリーンルームR2に露出している。
【0038】
また、集塵筐体21の前面下側には、ダーティルームR1を開放するフィルタ点検開口部21Aが形成されている。また、集塵筐体21には、フィルタ点検開口部21Aを開閉するためのフィルタ点検扉(図示せず)が取り付けられている(図1ではフィルタ点検扉は取り外されている。)。また、集塵筐体21のダーティルームR1よりも下方には、落下した塵埃を貯留するためのバケット24が設けられている。集塵筐体21には、バケット24を開閉するためのバケット点検扉24Dが設けられている。
【0039】
集塵筐体21の左側面には、帯電筐体40の下流側開口部43に対応する吸気口(図示せず)が開口している。帯電筐体40の内部とダーティルームR1とは、吸気口および下流側開口部43を介して連通している。つまり、帯電筐体40と集塵筐体21とは、ダクト等を介さずに直接接続されて連通状態となっている。なお、帯電筐体40と集塵筐体21とがダクト等を介して間接的に接続されてもよい。
【0040】
また、集塵筐体21の上面にはクリーンルームR2に連通する排気口25が開口しており、排気口25には排気ダクト(図示せず)が接続されている。また、排気ダクト内またはクリーンルームR2内には、集塵筐体21内の空気を排気するための排気ファン(図示せず)が設けられている。なお、排気ダクトを接続しないで集塵筐体21の外部に空気を排気してもよい。
【0041】
[除塵部]
除塵装置30は、ヘッダタンク31と、3つのブローチューブ32と、3つの電磁弁33と、を備えている。除塵装置30は、フィルタユニット23に向かって圧縮空気を吹き付けてフィルタユニット23に捕集された塵埃を除塵する(以下、「逆洗」ともいう。)機能を有している。
【0042】
ヘッダタンク31は、クリーンルームR2内で左右方向に延びた円筒状のパイプである。ヘッダタンク31は、仕切開口部22Aを避けるように仕切板22上の前側に配置されている。ヘッダタンク31の右端部は、集塵筐体21の外部に延びており、工場に備えられたコンプレッサ(図示せず)に連通している。
【0043】
3つのブローチューブ32は、3つの電磁弁33を介してヘッダタンク31に接続されている。3つのブローチューブ32は、左右方向に3列並んだ仕切開口部22Aに対応する位置で、ヘッダタンク31から後方に延設されている。各々のブローチューブ32は、前後方向に並んだ2つの仕切開口部22A(フィルタユニット23)を横断するように配置されている。各々のブローチューブ32の下面には、コンプレッサ(図示せず)から供給された圧縮空気を吹き出すための2つの吹出し口32Aが形成されている。2つの吹出し口32Aは、前後方向に並んだ2つの仕切開口部22A(の略中心)に対応した位置に開口している。
【0044】
[帯電装置の構成]
次に、図1ないし図6を参照して、帯電装置10の構成について詳細に説明する。図2は荷電部45を流通方向上流側から示す斜視図である。図3は荷電部45を流通方向下流側から示す斜視図である。図4は接地電極60および放電用電極71等を流通方向上流側から示す斜視図である。図5は接地電極60および放電用電極71等を流通方向下流側から示す斜視図である。図6は接地電極60および放電用電極71等の一部を示す平面図である。
【0045】
図1に示すように、帯電装置10は、2つの給電碍子44と、2つの荷電部45と、を備えている。
【0046】
<給電碍子>
図1に示すように、2つの給電碍子44は、左右方向に並んで碍子室R4に配置されている。各給電碍子44は、陶磁器等の電気絶縁性を有する材料で略円柱状に形成されている。各給電碍子44の下部は、仕切板41を貫通している(図示せず)。各給電碍子44の軸心部には、給電ネジ46を貫通させる貫通孔(図示せず)が形成されている。図2に示すように、各給電碍子44は、上方から下方に貫通孔を貫通した給電ネジ46の先端部を、帯電室R3に配置された給電板47に螺合させることで固定される。給電ネジ46の上部には、ケーブルを介して高圧電源(図示せず)が接続されている。
【0047】
<荷電部>
図1に示すように、2つの荷電部45は、左右方向(流通方向)に並んで帯電室R3に配置されている。2つの荷電部45は、帯電点検開口部40Aから帯電室R3内に着脱可能な構造を有している。なお、2つの荷電部45は同一構造であるため、以下、1つの荷電部45について説明する。
【0048】
図2および図3に示すように、荷電部45は、枠体50と、接地電極60と、5つの支持体70と、複数の放電用電極71と、を備えている。複数の放電用電極71は、各支持体70に支持されている。5つの支持体70と接地電極60とは、枠体50に支持されている。
【0049】
<枠体>
図2および図3に示すように、枠体50は、側方から見て略四角形の額縁状に組み立てられている。枠体50は、例えば、ステンレス等の金属材料で構成されている。枠体50は、一対の側板51と、第1上側アングル部材52Uと、第2上側アングル部材53Uと、第1下側アングル部材52Dと、第2下側アングル部材53Dと、上側シャフト54と、下側シャフト55と、上側固定板56と、下側固定板57と、一対の縦固定板58と、を含んでいる。
【0050】
(側板)
一対の側板51は、正面から見て上下方向に細長い略長方形状に形成され、互いに前後方向に離間した位置で立設されている。一対の側板51は、前後方向外面を開放したトレイ状に形成されている。なお、側板51は、アースに接続された帯電筐体40に接触しており、帯電筐体40を介して接地されている(図2参照)。
【0051】
(第1上側アングル部材、第2上側アングル部材)
第1上側アングル部材52Uおよび第2上側アングル部材53Uは、それぞれ、略L字状断面を有する部材である。第1上側アングル部材52Uは、一対の側板51の左上角部(上部上流側)の間に架設されている。第2上側アングル部材53Uは、一対の側板51の右上角部(上部下流側)の間に架設されている。第1上側アングル部材52Uの水平板と第2上側アングル部材53Uの水平板とは、左右方向に離間している。第1上側アングル部材52Uの垂直板は、第2上側アングル部材53Uの垂直板よりも下方に向かって長く形成されている。
【0052】
(第1下側アングル部材、第2下側アングル部材)
第1下側アングル部材52Dおよび第2下側アングル部材53Dは、それぞれ、略L字状断面を有する部材である。第1下側アングル部材52Dは、一対の側板51の左下角部(下部上流側)の間に架設されている。第2下側アングル部材53Dは、一対の側板51の右下角部(下部下流側)の間に架設されている。第1下側アングル部材52Dの水平板と第2下側アングル部材53Dの水平板とは、左右方向に離間している。第1下側アングル部材52Dの垂直板は、第2下側アングル部材53Dの垂直板よりも上方に向かって長く形成されている。
【0053】
第1上側アングル部材52Uの垂直板と第1下側アングル部材52Dの垂直板とは、上下方向に離間している。一対の側板51と上下一対のアングル部材52U,52Dの垂直板とで囲まれた範囲には、帯電筐体40の上流側開口部42と略同一寸法となる略矩形状の開口が形成される。なお、上流側開口部42の前後方向の寸法は、後述する接地電極60の前後方向の寸法と略同等に設定されている。
【0054】
(上側シャフト)
上側シャフト54は、円形断面を有する棒状の部材である。上側シャフト54は、第1および第2上側アングル部材52U,53Uの水平板よりも下方で一対の側板51の上部の間に架設されている。詳細には、各側板51の左右方向略中央には絶縁碍子59が固定されており、上側シャフト54の前後両端部は、一対の絶縁碍子59にボルトで固定されている。絶縁碍子59は、陶磁器等の電気絶縁性を有する材料で略円柱状に形成されている。絶縁碍子59とボルトの間には押え板59Aが挟み込まれている。なお、荷電部45を帯電室R3に装着すると、上側シャフト54は、給電板47に接触した状態になる(図示せず)。
【0055】
(下側シャフト)
下側シャフト55は、上記した上側シャフト54と同様であって、丸棒状に形成されている。下側シャフト55は、第1および第2下側アングル部材52D,53Dの水平板よりも上方で一対の側板51の下部の間に絶縁碍子59を介して架設されている。
【0056】
(上側固定板、下側固定板)
上側固定板56および下側固定板57は、略水平姿勢となる略板状に形成されている。上側固定板56および下側固定板57は、側板51の左右幅と略同一幅となる略板状に形成されている。上側固定板56および下側固定板57は同一部品であり、下側固定板57は上下方向を逆にして固定されている。上側固定板56および下側固定板57は、後述する縦固定板58に固定されている。上側固定板56は上側シャフト54よりも下方で一対の側板51の上部の間に架設され、下側固定板57は下側シャフト55よりも上方で一対の側板51の下部の間に架設されている。また、上側固定板56は第1上側アングル部材52Uの垂直板の下端よりも上方に設けられ、下側固定板57は第1下側アングル部材52Dの垂直板の上端よりも下方に設けられている。
【0057】
上側固定板56には、上流端から下流に向かって略U字状に切り欠かれた3つの切欠き部56A(図2参照)と、下流端から上流に向かって略U字状に切り欠かれた2つの切欠き部56A(図3参照)とが形成されている。上流側の切欠き部56Aと下流側の切欠き部56Aとは、上側固定板56の左右方向中央で僅かにオーバーラップする程度まで切り欠かれている。上流側の3つの切欠き部56Aと下流側の2つの切欠き部56Aとは、前後方向にハーフピッチずらした位置で交互に形成されている。つまり、5つの切欠き部56Aは、平面から見て千鳥状に形成されている。また、切欠き部56Aが無い上側固定板56の左右両端部は、上方に折り曲げられることで受け片56Bを形成している。上側固定板56の左端部(上流側)に形成された3つの受け片56Bは、第1上側アングル部材52Uの垂直板の裏面に当接し、第1上側アングル部材52Uの垂直板の変形を抑制している(図2参照)。
【0058】
上記した上側固定板56と同様に、下側固定板57には、上流端から下流に向かって略U字状に切り欠かれた3つの切欠き部57A(図2参照)と、下流端から上流に向かって略U字状に切り欠かれた2つの切欠き部57A(図3参照)とが形成されている。また、切欠き部57Aが無い下側固定板57の左右両端部は、下方に折り曲げられることで受け片57Bを形成している。下側固定板57の左端部(上流側)に形成された3つの受け片57Bは、第1下側アングル部材52Dの垂直板の裏面に当接し、第1下側アングル部材52Dの垂直板の変形を抑制している(図2参照)。上側固定板56および下側固定板57は、電気的に接地されている。上側固定板56の上流側の3つの切欠き部56Aと下流側の2つの切欠き部56A、および下側固定板57の上流側の3つの切欠き部57Aと下流側の2つの切欠き部57Aは、後述する高電圧が印加される支持体70と、放電しないように離間して配置されている。
【0059】
(縦固定板)
図3に示すように、各縦固定板58は、側板51と平行で略垂直姿勢となる略板状に形成されている。各縦固定板58は、側板51の左右幅よりも幅狭く形成されている。一対の縦固定板58は、一対の側板51の下流寄りに固定され、且つ上側固定板56と下側固定板57との両端部に連結されている。
【0060】
<接地電極>
図2および図3に示すように、接地電極60は、流通方向に凹凸した形状を前後方向に繰り返した波状に形成されている。接地電極60は、上側固定板56と下側固定板57との間に配置されている。接地電極60の上下両端部は、上下2組の連結ピースP1,P2を介して上側固定板56と下側固定板57とに固定されている。詳細には、上方の連結ピースP1は、接地電極60の上端部を左右両側から挟み込んだ状態で上側固定板56に固定されている。下方の連結ピースP2は、接地電極60の下端部を左右両側から挟み込んだ状態で下側固定板57に固定されている。なお、連結ピースP1,P2の前後両端部は、一対の縦固定板58に固定されている。
【0061】
図4および図5に示すように、接地電極60は、後述する放電用電極71との隙間Gを流通した含塵空気を通過させる複数の流通穴H(網目)を有している。接地電極60は、例えば、ステンレス(SUS304)等の金属製の一枚の金網を曲げ加工することで波状に形成されている。接地電極60の線径は、例えば0.1~1.0mmの範囲に設定することができ、接地電極60の目開き(網目開口径)は、例えば1~5mmの範囲に設定することができ、接地電極60の開口率は、例えば50~70%の範囲に設定することができる。なお、添付の図面では、接地電極60の一部の網目を図示している。
【0062】
接地電極60は、流通方向に対して傾斜した6つの傾斜面部F1と、互いに隣り合う傾斜面部F1の間にて流通方向に直交する方向(前後方向)に延設された5つの正対面部F2と、を含んでいる。互いに隣り合う傾斜面部F1は、異なる方向に傾斜している。6つの傾斜面部F1と5つの正対面部F2とは、前後方向に交互に連設されている。2つの正対面部F2は傾斜面部F1の上流側端部に連設され、3つの正対面部F2は傾斜面部F1の下流側端部に連設されている。
【0063】
図4ないし図6に示すように、接地電極60は、5つの正対面部F2を介して6つの傾斜面部F1を連続させた状態に形成されている(図6では5つ傾斜面部F1を図示している。)。隣り合う傾斜面部F1の間には、略台形状の凹部D1が形成されることになる。接地電極60の上流側には3つの凹部D1が形成され、接地電極60の下流側には2つの凹部D1が形成されている。上流側の3つの凹部D1と下流側の2つの凹部D1とは、前後方向に交互に並設されている。なお、接地電極60の前後両端部には、上流側の正対面部F2と略同一平面上に一対の固定片60Aが形成されている。一対の固定片60Aは、一対の縦固定板58に固定されている(図3参照)。また、接地電極60が枠体50に固定された状態で、上側および下側固定板56,57に形成された5つの切欠き部56A,57Aは、5つの凹部D1に対応する位置に設けられる(図2および図3参照)。
【0064】
<支持体>
図4ないし図6に示すように、5つの支持体70は、接地電極60を挟んで流通方向上流側と下流側とに配置され、上流側の凹部D1と下流側の凹部D1に対向している(図6では4つ支持体70を図示している。)。上流側の3つの支持体70と下流側の2つの支持体70とは、前後方向にハーフピッチずらした位置で交互に(平面から見て千鳥状に)配置されている(図6参照)。
【0065】
各支持体70は、側板51と平行で略垂直姿勢となる略板状に形成されている。各支持体70は、側板51の左右幅よりも幅狭く形成されている。上流側の3つの支持体70の上下両側は下流側(右側)に屈曲しており、下流側の2つの支持体70の上下両側は上流側(左側)に屈曲している。各支持体70の上下両端部には、略U字状の係合凹部70Aが形成されている。各支持体70の上下両側は、上側および下側固定板56,57の切欠き部56A,57Aを貫通し(図2および図3参照)、各支持体70の上下両端部の係合凹部70Aは、上側および下側シャフト54,55に形成された係合溝54A,55Aに係合している(図4および図5参照)。これにより、5つの支持体70は、上側および下側固定板56,57に非接触状態で、上側および下側シャフト54,55の間に架設されている(図2および図3参照)。
【0066】
<放電用電極>
図4および図5に示すように、1つの支持体70には、11個の放電用電極71が上下方向に略等間隔に固定されている。複数の放電用電極71は、5つの支持体70に支持されて、平面から見て千鳥状に配置されている(図6参照)。詳細には、複数の放電用電極71は、接地電極60を挟んで流通方向上流側と下流側の両側で前後方向(含塵空気の流通方向に直交する方向)にハーフピッチずらした位置で交互に配置されている。上流側の支持体70に支持された放電用電極71は、流通方向下流に向かって延設されている。このため、上流側の支持体70に支持された放電用電極71は、その先端部に含塵空気中の塵埃が接触し難い構成となっている。一方、下流側の支持体70に支持された放電用電極71は、流通方向上流に向かって延設されている(図6参照)。つまり、放電用電極71は、流通方向に沿った姿勢で設けられている。
【0067】
各放電用電極71は、複数の繊維状の線電極を束ねてブラシ状に形成されている。線電極は、例えば、直径12μmのステンレス製の繊維状の材料で形成されている。線電極の材質は、非磁性のステンレス等を用いることができ、例えば、耐食性に優れたオーステナイト系ステンレス(SUS304、SUS316等)を用いることが好ましい。各放電用電極71(線電極)は、圧着、接着または植毛等の加工法によって支持体70に固定されている。
【0068】
[接地電極と放電用電極の位置関係]
図4および図5に示すように、上記した接地電極60は、各々の放電用電極71との間にコロナ放電を発生させるための隙間Gを挟んで設けられている。また、接地電極60の6つの傾斜面部F1は、それぞれ、隙間Gに面して形成されている。図6に示すように、6つの傾斜面部F1は、隙間Gに進入する含塵空気の流通方向に対して傾斜している。第1実施形態では、一例として、含塵空気の流通方向と傾斜面部F1とが成す角度θは、約30度に設定されている。互いに隣り合う傾斜面部F1は、逆方向に同一角度で傾斜しており、隙間Gを挟んで設けられた放電用電極71を対称軸として線対称に配置されている。なお、互いに隣り合う傾斜面部F1が逆方向に同一角度で傾斜するとは、厳密に同一であることを要求するものではなく、製造上の誤差を許容する意味である。
【0069】
また、図6に示すように、接地電極60の5つの正対面部F2は、それぞれ、隙間G(凹部D1)に面して形成されている。5つの正対面部F2は、隙間Gに進入する含塵空気の流通方向に対して直交している。
【0070】
放電用電極71の先端部は、(平面から見て)傾斜面部F1と重なり合う位置に配置されている。つまり、放電用電極71の先端部は、凹部D1内に進入している。また、放電用電極71の先端部から一方の傾斜面部F1までの隙間Gの最短距離L1と、放電用電極71の先端部から他方の傾斜面部F1までの隙間Gの最短距離L2とは、同一に設定されている(L1=L2)。また、放電用電極71の先端部から正対面部F2までの隙間Gの最短距離L3は、上記の隙間Gの最短距離L1(またはL2)と同一に設定されている(L3=L1=L2)。なお、放電用電極71の先端部が傾斜面部F1および正対面部F2に対して等距離であるとは、厳密に同一であることを要求するものではなく、製造上の数ミリ程度の誤差を許容する意味である。
【0071】
放電用電極71の先端部と各面部F1,F2との隙間Gの最短距離L1~L3は、印加電圧との関係で適正なコロナ放電を発生させることのできる距離に設定されている。例えば、印加電圧が1~9kV(好適には、4~6kV)の場合、上記の隙間Gの最短距離L1~L3は10~19mmに設定される。
【0072】
[集塵動作]
次に、図1図2図6および図7を参照して、集塵装置1の集塵動作について説明する。図7は集塵装置1の集塵作用を説明するための平面図である。
【0073】
まず、操作者は、所定の操作を行って、帯電装置10や捕集装置20を起動させる(動作開始の準備状態にする)。集塵装置1の制御部(図示せず)は、高圧電源(図示せず)を制御して高電圧を生成させる。高圧電源が生成した高電圧は、給電ネジ46、給電板47、上側シャフト54および各支持体70を経由して各放電用電極71に印加される(図2参照)。すると、図6に示すように、各放電用電極71と傾斜面部F1との間(隙間G)には、コロナ放電が発生して略円錐形状の帯電領域EAが形成される。また、各放電用電極71と正対面部F2との間にも、コロナ放電が発生して略円錐形状の帯電領域EAが形成される。つまり、放電用電極71の先端部から3方向に帯電領域EAが形成される。また、放電用電極71の先端部は、互いに隣り合う傾斜面部F1と、その間の正対面部F2とに対して等距離となる位置に配置されているため、複数の面部F1,F2との間で形成される複数の帯電領域EAを略均一にすることができる。
【0074】
また、制御部は、捕集装置20の排気ファンを回転させる。すると、吸気口から排気口25に向かう気流が形成されるため、含塵空気が外部から吸気ダクト42Bを通過して帯電筐体40内に取り込まれる(図1の太矢印参照)。すると、図7に示すように、含塵空気中の塵埃は、上流側の各放電用電極71と複数の面部F1,F2との間に形成された複数の帯電領域EAを通過する間に帯電され、互いに引き合って凝集して粗大化する(粒径にして20倍以上に粗大化する)。粗大化した塵埃は、接地電極60の流通穴Hを通過して下流側に流れて行く。
【0075】
また、他にも、含塵空気中の塵埃は、接地電極60の流通穴Hを通過し、下流側の各放電用電極71と複数の面部F1,F2との間に形成された複数の帯電領域EAを通過する間に帯電されて粗大化する。
【0076】
ところで、粗大化した塵埃の大部分は接地電極60の流通穴Hを通過して下流側に流れて行くが、粗大化した塵埃の一部は接地電極60(傾斜面部F1と正対面部F2との上流側)に付着する。接地電極60に付着した塵埃は、接地電極60と同じ電位(アース電位)となる。気流が接地電極60上の塵埃に及ぼす力が、接地電極60と塵埃との付着力よりも大きくなると、接地電極60上の塵埃は、接地電極60から引き剥がされ、流通穴Hを通過して下流側に流れて行く。
【0077】
上流から流れてきた塵埃は、接地電極60上の塵埃に付着して数珠状に連なった状態になる(図7に破線で示した塵埃を参照)。接地電極60上で数珠状に粗大化した塵埃は、気流から力を受けやすくなるため、粗大化していない塵埃に比べて、接地電極60から剥がれ易くなっている(図7の細矢印参照)。
【0078】
また、接地電極60の傾斜面部F1は流通方向に対して傾斜し、正対面部F2は流通方向に対して直交しているため、気流は、傾斜面部F1や正対面部F2に衝突し、且つ複数の流通穴Hから流通方向下流へ流れて行く。傾斜面部F1と正対面部F2との上流側に付着した塵埃は、各面部F1,F2に衝突する気流から力を受けて各面部F1,F2から引き剥がされる。
【0079】
なお、帯電筐体40内の気流の速度が低い(例えば10m/s未満)と、塵埃が接地電極60に付着し易くなるため、制御部は、気流の速度を10~20m/sの範囲になるように排気ファンを制御している。
【0080】
帯電・粗大化した塵埃を含む含塵空気は、帯電装置10内から下流側開口部43を通過して捕集装置20のダーティルームR1内に取り込まれる(図1参照)。粗大化した塵埃は、主にフィルタユニット23(不織布)の表面側に捕集される(図7参照)。含塵空気は、各フィルタユニット23を通過する間に塵埃を濾過されて清浄空気になる。
【0081】
清浄空気は、フィルタユニット23の開口部23AからクリーンルームR2内に排気され、クリーンルームR2を通って排気口25から外部に排気される(図1参照)。
【0082】
以上のように、帯電装置10によって塵埃を帯電・粗大化させることによって、塵埃がフィルタユニット23(不織布)の奥深く入り込むことが抑制され、不織布の表面側で塵埃を捕集することができる。これにより、フィルタユニット23の目詰まりを抑制することができる。なお、フィルタユニット23によって捕集されずに落下した塵埃は、バケット24内に堆積する(図1参照)。
【0083】
[除塵動作]
次に、図1を参照して、集塵装置1の除塵動作(逆洗動作)について説明する。
【0084】
制御部は、ダーティルームR1とクリーンルームR2との差圧を検出する差圧計(図示せず)の検出値が閾値を越えたと判断した場合に除塵動作を実行する。また、制御部は、3列に並んだ2つのフィルタユニット23を1列ずつ順番に除塵動作を行う。なお、除塵動作の実行タイミングは、上記に限らず、例えば、集塵装置1が停止した場合に除塵動作を実行してもよいし、予めタイマ設定したタイミングで除塵動作を実行してもよい。なお、差圧の閾値やタイマの時間(間隔)等は、操作者が事前に設定する。
【0085】
除塵動作は、排気ファンを停止させず、含塵空気の吸引を継続しながら行われる。他にも、除塵動作は、排気ファンの回転数を通常時(集塵動作時)よりも低下させた状態で行われてもよい。このように、除塵動作は、排気ファンを停止させずに含塵空気の吸引を継続した状態で行うことが好ましいが、これに限らず、排気ファンを停止させた状態で行ってもよい。
【0086】
捕集装置20が起動すると、電磁弁33は、制御部に制御されて閉弁される。すると、コンプレッサに接続されたヘッダタンク31に圧縮空気が蓄えられる。圧縮空気の圧力は、例えば、0.4~0.7MPaに設定される。
【0087】
制御部は、検出値が閾値を越えたと判断すると、電磁弁33は、制御部に制御されて開弁される。すると、ヘッダタンク31に蓄えられた圧縮空気は、ブローチューブ32を通って、2つの吹出し口32Aから2つのフィルタユニット23の開口部23Aに向けて噴出される。
【0088】
圧縮空気は、フィルタユニット23の径方向中央から外側に向かって逆流し、フィルタユニット23(不織布)に捕集された塵埃を払い落とす。塵埃は、不織布の表面側に捕集されているため、圧縮空気の逆流によって容易に払い落とされる。なお、払い落とされた塵埃は捕集装置20の下部に備えられたバケット24内に落下し、堆積した塵埃は適宜廃棄される。
【0089】
また、フィルタユニット23を通過した圧縮空気は、下流側開口部43を通って集塵筐体21から帯電筐体40内に流れ込み、接地電極60に付着した塵埃を払い落す。
【0090】
なお、制御部は、圧縮空気の噴射開始(電磁弁33の開弁)から所定時間経過後(数十ms~数百ms後)、電磁弁33を閉弁する制御を行う。これにより、ヘッダタンク31に再び圧縮空気が蓄えられる。
【0091】
以上説明した第1実施形態に係る帯電装置10では、接地電極60の傾斜面部F1が流通方向に対して傾斜し、正対面部F2が流通方向に対して直交する構成とした。放電用電極71と接地電極60との間の隙間Gを流れた含塵空気は、傾斜面部F1と正対面部F2とに衝突し、且つ複数の流通穴Hから流通方向下流へ流れて行く。この構成によれば、含塵空気を傾斜面部F1および正対面部F2に衝突させることで、傾斜面部F1および正対面部F2の上流側に付着した塵埃を引き剥がすことができ、剥離した塵埃を気流に乗せて流通穴Hから下流へと流すことができる(自浄作用)。その結果、接地電極60に塵埃が堆積することが抑制されるため、安定したコロナ放電の発生を担保することができ、安定した塵埃の帯電を継続して行うことができる。
【0092】
また、第1実施形態に係る帯電装置10によれば、放電用電極71を挟む両側の傾斜面部F1が線対称に配置されているため、放電用電極71とその両側の傾斜面部F1との間の2つの隙間Gを同じ幅(同じ最短距離L1=L2)にすることができる。これにより、放電用電極71の両側に略均一な帯電領域EAを形成することができ、塵埃を安定して帯電させることができる。また、2つの隙間Gを流通する含塵空気の流量や流速を略同一にすることができ、各々の傾斜面部F1に対して略均一に含塵空気を当てることができる。また、隣り合う放電用電極71を仕切るように傾斜面部F1が配置されるため、隣り合う放電用電極71の間での電界干渉を抑制することができる。
【0093】
また、第1実施形態に係る帯電装置10によれば、一枚の金網を曲げ加工することで、複数の傾斜面部F1と複数の正対面部F2を連ねた接地電極60を形成することができる。これにより、接地電極60を安価に製造することができる。また、接地電極60は一部品であるため、接地電極60を複数部品で構成した場合に比べて、接地電極60の交換(着脱)作業を容易に行うことができる。
【0094】
また、第1実施形態に係る帯電装置10によれば、放電用電極71に繊維状の線電極を用いているため、太い電極を用いた場合に比べて、低い印加電圧でコロナ放電を発生させることができる。これにより、異常放電による火花(スパーク)の発生を抑制することができると共に、空気のイオン化に伴うオゾンの発生を抑制することもできる。また、放電用電極71に複数の線電極を用いているため、仮に、一部の線電極が摩耗しても、残りの線電極でコロナ放電を発生させ続けることができる。また、放電用電極71が一対の傾斜面部F1の間に配置されているため、隣り合う放電用電極71の間での電界干渉を抑制することができる。
【0095】
また、第1実施形態に係る帯電装置10では、複数の放電用電極71が、接地電極60の上流側と下流側の両側に千鳥状に配置されていた。仮に、接地電極60の上流側にのみ放電用電極71を配置した場合、前後方向に隣り合う放電用電極71(支持体70)の間に帯電領域EAを形成することができない場合がある。これに対し、上記の帯電装置10によれば、複数の放電用電極71が、接地電極60の両側に千鳥状に配置されているため、接地電極60の上流側と下流側の両側で前後方向にハーフピッチずれた位置で交互に(平面から見て千鳥状に)帯電領域EAを形成することができる。これにより、例えば、上流側の放電用電極71では帯電領域EAを形成できない領域を、下流側の放電用電極71周りに形成された帯電領域EAで補うことができる。その結果、含塵空気の略全てが帯電領域EAを通過することになるため、含塵空気に含まれる塵埃の略全てを帯電させることができる。
【0096】
また、第1実施形態に係る帯電装置10によれば、放電用電極71と一対の傾斜面部F1との間の帯電領域EAが形成されることに加えて、放電用電極71と正対面部F2との間に帯電領域EAを形成することができる。これにより、放電用電極71の先端部から均等に離間した傾斜面部F1と正対面部F2とを利用して隙間G(凹部D1)に3方向に帯電領域EAを形成することができるため、含塵空気に含まれる塵埃の略全てを帯電させることができる。
【0097】
また、第1実施形態に係る集塵装置1によれば、帯電装置10によって帯電された塵埃を、捕集装置20によって捕集することができる。また、帯電装置10は、捕集装置20(集塵筐体21)に直接固定され、下流側開口部43を介して連通しているため、逆洗時の圧縮空気を帯電筐体40内に逆流させることができる。これにより、フィルタユニット23の除塵と同時期に、接地電極60の除塵を行うことができる。
【0098】
なお、第1実施形態に係る集塵装置1では、接地電極60が1枚の金網で形成されているため、全域に亘って複数の流通穴H(網目)は略同じ大きさであったが、本発明はこれに限定されない。傾斜面部F1は流通方向に対して傾いているため、傾斜面部F1の流通穴Hは、流通方向から見て、正対面部F2の流通穴Hよりも投影面積が小さくなる。そこで、例えば、正対面部F2に形成された流通穴Hが、傾斜面部F1に形成された流通穴Hよりも小さく形成されていてもよい(図示せず)。これにより、傾斜面部F1の流通穴Hと正対面部F2の流通穴Hとの投影面積を略同一にすることができる。その結果、傾斜面部F1の流通穴Hと正対面部F2の流通穴Hとを通過する含塵空気の流量を略均一にすることができる。また、正対面部F2の流通穴Hを小さくすることで、正対面部F2の流通穴Hを通過する塵埃の量を減らすことができ、正対面部F2の下流側に対向する放電用電極71に塵埃が付着することを抑制することができる。
【0099】
また、第1実施形態に係る帯電装置10では、傾斜面部F1が含塵空気の流通方向に対して約30度傾いていたが、本発明はこれに限定されない。傾斜面部F1は、隙間Gに進入する含塵空気の流通方向に対して20度以上45度以下の範囲で傾斜していればよい。この構成によれば、傾斜面部F1の傾斜角度を上記範囲に設定することによって、傾斜面部F1に含塵空気を当てながら傾斜面部F1に付着した塵埃を引き剥がすことができる。
【0100】
また、第1実施形態に係る帯電装置10では、接地電極60が略台形状の凹凸を連続させた波状に形成されていたが、本発明はこれに限定されない。接地電極60は、例えば、湾曲した凹凸を連続させた波状に形成されてもよい(図示せず)。
【0101】
[第2実施形態]
次に、図8および図9を参照して、第2実施形態に係る帯電装置11(接地電極61)について説明する。図8は帯電装置11の接地電極61および放電用電極71等を流通方向上流側から示す斜視図である。図9は接地電極61および放電用電極71等の一部を示す平面図である。なお、以下の説明では、上記した第1実施形態に係る帯電装置10と同様の構成については同一の符号を付し、同様の説明は省略する。
【0102】
第2実施形態に係る帯電装置11では、接地電極61が略三角形状の凹凸を繰り返した三角波状に形成されている。接地電極61では正対面部F2が省略されており、接地電極61は流通方向に対して傾斜した6つの傾斜面部F1を連続させた状態に形成されている。互いに隣り合う傾斜面部F1は、異なる方向に同一角度で傾斜しており、隣り合う傾斜面部F1の間には、略三角形状の凹部D2が形成されることになる。6つの傾斜面部F1は前後方向に連設されている。上流側の3つの凹部D2と下流側の2つの凹部D2とは、前後方向に交互に並設されている。
【0103】
5つの支持体70は、接地電極61を挟んで流通方向上流側と下流側とに配置され、上流側の凹部D2と下流側の凹部D2に対向している。複数の放電用電極71は、5つの支持体70に支持されて、凹部D2内に延設されている。複数の放電用電極71(5つの支持体70)は、平面から見て千鳥状に配置されている。放電用電極71は、隣り合う傾斜面部F1の間の中心線上に配置されている。放電用電極71の先端部から両側の傾斜面部F1までの隙間Gの最短距離L1,L2は、略同一に設定されている(L1=L2)。また、放電用電極71の先端部から一対の傾斜面部F1の交点(折り曲げ部)までの距離L30は、上記の隙間Gの最短距離L1(またはL2)の2倍程度に設定されている(L30=L1×2=L2×2)。
【0104】
以上説明した第2実施形態に係る帯電装置11では、各放電用電極71とその両側の傾斜面部F1との間にて、コロナ放電が発生して帯電領域EAが形成される。つまり、放電用電極71の先端部から2方向に帯電領域EAが形成される。この構成によれば、第1実施形態に係る帯電装置10(接地電極60)と同様の作用、効果を得ることができる。
【0105】
[第3実施形態]
次に、図10を参照して、第3実施形態に係る帯電装置12について説明する。図10は帯電装置12の接地電極61および放電用電極71等の一部を示す平面図である。なお、以下の説明では、上記した第1および第2実施形態に係る帯電装置10,11と同様の構成については同一の符号を付し、同様の説明は省略する。
【0106】
第2実施形態に係る帯電装置11では、複数の放電用電極71が接地電極61を挟んで流通方向上流側と下流側とに配置されていたが、第3実施形態に係る帯電装置12では、複数の放電用電極71が接地電極61の流通方向上流側に配置されている点で相違する。
【0107】
3つの支持体70は、接地電極61の流通方向上流側の3つの凹部D2に対向配置されている。複数の放電用電極71は、3つの支持体70に支持されて、凹部D2内(下流側)に延設されている。複数の放電用電極71(3つの支持体70)は、平面から見て直線状に略等間隔に配置されている。
【0108】
下流側の凹部D2の谷部(一対の傾斜面部F1の折り曲げ部)には、流通穴Hを塞ぐ流通防止部材72が固定されている。流通防止部材72は、例えば、合成樹脂製または金属製で、凹部D2の谷部に合わせて略三角柱状に形成されている。流通防止部材72は、上流側の放電用電極71では帯電領域EAを形成することができない領域に設けられ、この領域での含塵空気の通過を防止している。
【0109】
以上説明した第3実施形態に係る帯電装置12によれば、第1および第2実施形態に係る帯電装置10,11と同様の作用、効果を得ることができる。
【0110】
[第4実施形態]
次に、図11を参照して、第4実施形態に係る帯電装置13(接地電極62)について説明する。図11は帯電装置13の接地電極62および放電用電極71等の一部を示す平面図である。なお、以下の説明では、上記した第1~第3実施形態に係る帯電装置10~12と同様の構成については同一の符号を付し、同様の説明は省略する。
【0111】
第1~第3実施形態に係る帯電装置10~12では、接地電極60が1枚の金網を折り曲げて形成されていたが、第4実施形態に係る帯電装置13では、接地電極62が分割された4つの接地板62A(金網)で構成されている点で相違する。
【0112】
各接地板62Aは、略平板状に形成されている。4つの接地板62Aは、前後方向に略等間隔で並べられ、各固定板56~58に固定されている。4つの接地板62Aは、流通方向に対して同一方向に傾斜している。各接地板62Aは、平面から見て、流通方向に対して時計回りに回転され、流通方向上流側から下流側に向かって前方に傾斜している。隣り合う接地板62Aの間には空間Sが形成され、接地板62Aと放電用電極71との間には隙間Gが形成されている。また、接地板62Aは、隙間Gに面した傾斜面部F1を構成している。なお、各接地板62A(傾斜面部F1)は、平面から見て、図11とは反対方向に傾斜していてもよい。
【0113】
3つの支持体70は、それぞれ、隣り合う接地板62Aの間の空間Sに配置されている。各支持体70は、流通方向上流側から中央付近まで進入している。複数の放電用電極71は、3つの支持体70に支持されて、空間S内(流通方向下流側)に延設されている。互いに隣り合う傾斜面部F1は、放電用電極71を挟んで対向配置されている。複数の放電用電極71(3つの支持体70)は、平面から見て前後方向に略等間隔で並設されている。放電用電極71の先端部と両側の接地板62Aとの隙間Gの最短距離L1,L2は、略同一に設定されている(L1=L2)。
【0114】
以上説明した第4実施形態に係る帯電装置13によれば、第1~第3実施形態に係る帯電装置10~12(接地電極60,61)と同様の作用、効果を得ることができる。すなわち、放電用電極71とその両側の傾斜面部F1との間でコロナ放電を発生させることができる。これにより、放電用電極71の両側に帯電領域EAを生成することができるため、広範囲に亘る塵埃を帯電させることができる。また、隣り合う放電用電極71を仕切るように傾斜面部F1が配置されるため、隣り合う放電用電極71の間での電界干渉を抑制することができる。
【0115】
[第5実施形態]
次に、図12を参照して、第5実施形態に係る帯電装置14(接地電極63)について説明する。図12は帯電装置14の接地電極63および放電用電極71等の一部を示す平面図である。なお、以下の説明では、上記した第1~第4実施形態に係る帯電装置10~13と同様の構成については同一の符号を付し、同様の説明は省略する。
【0116】
第4実施形態に係る帯電装置13では、接地板62A(隙間G)の流通方向中央付近に、帯電領域EAを形成できない領域(非帯電領域)が存在していた(図11参照)。そこで、第5実施形態に係る帯電装置14では、接地電極63が、流通方向に対して傾斜して配置されている。詳細には、前後方向に並設された4つの接地板62A全体が、個々の接地板62Aの傾斜方向とは逆方向に傾斜した状態で設けられている。具体的には、4つの接地板62A全体は、平面から見て、流通方向に対して時計回りに回転され、流通方向上流側から下流側に向かって後方に傾斜している。なお、4つの接地板62A全体の傾斜方向は、個々の接地板62Aの傾斜方向に応じて変更される。
【0117】
以上説明した第5実施形態に係る帯電装置14によれば、接地板62A(隙間G)の流通方向中央付近にも帯電領域EAを形成することができ、帯電領域EAを形成できない領域を減少させることができる。
【0118】
なお、第1~第5実施形態に係る帯電装置10~14では、2つの荷電部45が帯電室R3に装着されていたが、本発明はこれに限定されない。荷電部45は、1つ以上帯電室R3に装着されていればよい。
【0119】
また、第1~第5実施形態に係る帯電装置10~14では、接地電極60~63として金網が用いられていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、接地電極は、パンチングメタル等、金属板に複数の流通穴Hを開けたものであってもよい(図示せず)。また、接地電極は、一枚の金属板に複数の切り起こしを形成して複数の流通穴Hを開けてもよい(図示せず)。
【0120】
また、第1~第3実施形態に係る帯電装置10~12では、接地電極60,61の傾斜面部F1が6つ形成され、第4および第5実施形態に係る帯電装置13,14では、傾斜面部F1を構成する接地板62Aが4つ設けられていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、傾斜面部F1および接地板62Aは、放電用電極71を挟むように2つ以上設けられていればよい。
【0121】
また、第1~第5実施形態に係る帯電装置10~14では、放電用電極71(の先端部)が、隣り合う傾斜面部F1の間に進入していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、隣り合う放電用電極71が電界干渉を生じさせない間隔で配置されている場合等には、放電用電極71(の先端部)を、隣り合う傾斜面部F1の間に進入させずに、傾斜面部F1に重ならない位置に配置してもよい。
【0122】
なお、上記実施形態の説明は、本発明に係る帯電装置および集塵装置の一態様を示すものであって、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明の技術は、金属や樹脂等の加工機から発生する微粒子を帯電させる帯電装置に利用することができる。また、帯電させた微粒子を集塵する集塵装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0124】
1~5 集塵装置
10~14 帯電装置
20 捕集装置
60~63 接地電極
70 支持体
71 放電用電極
F1 傾斜面部
F2 正対面部
G 隙間
H 流通穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12