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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】物品販売機
(51)【国際特許分類】
   G07F 11/00 20060101AFI20230111BHJP
   G07F 11/58 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
G07F11/00 A
G07F11/58 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018163109
(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2020035323
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】722012006
【氏名又は名称】サンデン・リテールシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 昭
(72)【発明者】
【氏名】恩田 健
【審査官】葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02704111(EP,A1)
【文献】特開2000-331232(JP,A)
【文献】特開2007-193724(JP,A)
【文献】特開2008-176497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07F 11/00、11/16
G07F 11/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状のキャビネットの内部に設けられ、物品を収納する棚が上下方向に複数並べて配置された物品収納部と、
販売指令に基づいて前記物品収納部に収納されている物品を前記棚から前方に搬出する搬出機構と、
前記キャビネットの内部の前記物品収納部の前方に上下方向に移動可能に配置され、前記搬出機構によって前記物品収納部から前方に搬出された物品を受け入れて、前記キャビネットの前記物品収納部の下方に設けられた取出口に搬送するバケットと、を備えた物品販売機であって、
前記バケットの上方に配置され、前記バケットに上下方向に所定範囲移動可能に支持された天板と、
前記バケットに対して前記天板を所定位置まで上方に付勢する付勢部と、を備えたことを特徴とする物品販売機。
【請求項2】
前記天板は、前記バケットが前記販売指令を待機する待機状態において、前記物品収納
部における最下段の前記棚の前端部よりも下方に位置することを特徴とする請求項1に記
載の物品販売機。
【請求項3】
前記バケットが上方へ移動して前記天板が最も上方に到達した後に、前記バケットは更
に上方に移動可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の物品販
売機。
【請求項4】
前記天板の後部は、後方に向かって上方に傾斜していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の物品販売機。
【請求項5】
前記天板は、上方へ力を受けた際に、前記バケットに対して前記所定位置よりも上方に移動可能であり、
前記バケットが前記待機状態において、前記物品収納部における最下段の前記棚の底面より上方への前記天板の移動を規制する移動規制部を備えたことを特徴とする請求項2に記載の物品販売機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を自動的に販売する物品販売機において、収納している物品を物品取出口に搬出する物品搬出構造に関する。
【背景技術】
【0002】
箱状のキャビネット内に設けられた棚に複数の種類の物品を収納し、購入者が選択した物品を自動的に搬出する構成の物品販売機が使用されている。例えば、特許文献1に記載された物品販売機(自動販売機)では、キャビネット内に上下方向に複数並べて配置された棚の前方を上下方向に移動するバケット(キャッチャーバケット)を備え、購入者が選択した物品を搬出機構によって棚から前方に押し出し、当該棚の前方に移動したバケットに物品を搬出する。そして、物品を載せたバケットを物品販売機の下部に設けられた物品取出口に相対する下方位置まで移動して、当該物品取出口から購入者が物品を取り出すことが可能な構造となっている。
【0003】
更に、特許文献1には、棚に収納され購入されていない物品を物品取出口から取り出されないように、防盗板が備えられている。防盗板は、最下段の棚の下部前方に設けられ、バケットが下方位置である状態では閉塞して施錠され、物品取出口の扉を開いて手や棒等を入れても棚に到達できない構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-176497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、防盗板を作動及び施錠するアクチュエータを含む防盗板の作動機構を備える必要があり、バケットの移動等に合わせてこのアクチュエータを作動制御する必要がある。また、防盗板の作動機構によって、物品販売機の下部の構造が複雑化するといった問題点がある。
【0006】
一方、物品販売機においては、上下方向に比較的大きな物品を収納している場合には、バケットに物品を受け入れるために上下方向に大きな受け入れ空間を必要とする。しかしながら、バケットの受け入れ空間を上下方向に大きくすると、キャビネット内の上部でバケットの受け入れ空間を確保するためにバケットの上方への移動が規制され、最上段の棚をキャビネット内で上方に設置することができず、物品の収納スペースが制限されてしまうといった問題点がある。
【0007】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであって、簡単な構成で防盗機能を得ることができるとともに、必要に応じてバケットの受け入れ空間を上下方向に拡大縮小して、物品の収納性を向上できる物品販売機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の物品販売機は、箱状のキャビネットの内部に設けられ、物品を収納する棚が上下方向に複数並べて配置された物品収納部と、販売指令に基づいて前記物品収納部に収納されている物品を前記棚から前方に搬出する搬出機構と、前記キャビネットの内部の前記物品収納部の前方に上下方向に移動可能に配置され、前記搬出機構によって前記物品収納部から前方に搬出された物品を受け入れて、前記キャビネットの前記物品収納部の下方に設けられた取出口に搬送するバケットと、を備えた物品販売機であって、前記バケットの上方に配置され、前記バケットに上下方向に所定範囲移動可能に支持された天板と、前記バケットに対して前記天板を所定位置まで上方に付勢する付勢部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記天板を、前記バケットが前記販売指令を待機する待機状態において、前記物品収納部における最下段の前記棚の前端部よりも下方に位置させる。
【0011】
好ましくは、前記バケットが上方へ移動して前記天板が最も上方に到達した後に、前記バケットは更に上方に移動可能である。
【0012】
好ましくは、前記天板の後部を、後方に向かって上方に傾斜させる。
【0013】
好ましくは、前記天板は、上方へ力を受けた際に、前記バケットに対して前記所定位置よりも上方に移動可能であり、前記バケットが前記待機状態において、前記物品収納部における最下段の前記棚の底面より上方への前記天板の移動を規制する移動規制部を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、バケットの上方に天板が設けられているので、バケットが取出口に相対した位置では、取出口からバケット内に手や棒等を侵入させても天板によって遮られ、バケットの上部に位置する物品収納部から物品を盗むことが困難となる。したがって、簡単な構造で防盗機能を得ることができる。
【0015】
また、天板が上下方向に移動可能であるので、必要に応じてバケットの受け入れ空間を上下方向に拡大縮小できる。したがって、キャビネット内でバケットをより上方へ移動させることができ、キャビネット内の最上段の棚を上方に配置して物品の収納スペースを上方に拡大し、物品の収納性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態の物品販売機の概略外部形状を示す斜視図である。
図2】本実施形態の物品販売機の内部構造を示す縦断面図である。
図3】バケットの構造を示す斜視図である。
図4】天板が所定位置に位置する状態におけるバケットの側面図である。
図5】天板の押し上げ状態におけるバケットの側面図である。
図6】天板の押し下げ状態におけるバケットの側面図である。
図7】物品の取出時における物品取出口内部の構造を示す縦断面図である。
図8】最下段の棚からバケットに物品を搬出するときの状態を説明するバケット付近の縦断面図である。
図9】他の実施形態のバケットの底板の後部の形状を示す部分正面図である。
図10】最上段の棚から物品を搬出するときの状態を説明するバケット付近の縦断面図である。
図11】本体ユニットの内部における冷却風の循環を説明するための縦断面図である。
図12】本体ユニットの前下内部における冷却風の循環を説明するための拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、本実施形態の物品販売機の概略外部形状を示す斜視図である。図2は、物品販売機の内部構造を示す縦断面図である。
【0019】
図1に示すように、物品販売機1は、物品を収納する本体ユニット2と、操作ユニット3を備えている。
【0020】
本体ユニット2は、前面を開口した箱型に形成され、前面開口を覆うドア5を備えた箱状のキャビネット4を有している。また、キャビネット4の内部には、物品を収納する物品収納部6が設けられている。
【0021】
操作ユニット3は、本体ユニット2の側方に隣接して配置され、物品の選択スイッチと、紙幣、硬貨等の受容や釣銭の払い出し、あるいは電子マネー等による料金の決済を行う課金部とを備えている。操作ユニット3は、課金部において料金の決済が行われ、選択スイッチにより物品の選択操作がされることで、販売指令を本体ユニット2に送信する。
【0022】
図1、2に示すように、本体ユニット2のドア5の前面上部には、透明のガラスや樹脂によって形成された透明板10によって内部が視認可能な構成になっている。ドア5の下部には、矩形状の物品取出口11(取出口)が備えられている。物品取出口11には、矩形板状の取出口シャッター12が設けられている。取出口シャッター12は、物品取出口11の上部縁部に前後方向に揺動可能に支持されている。取出口シャッター12は、上下方向に延びる閉塞位置で物品取出口11を閉塞し、この閉塞位置から下部を後方に揺動させることで、物品取出口11が開口する。
【0023】
キャビネット4の内部の物品収納部6は、上下方向に間隔をおき、前部を開口した複数個(例えば6個)の棚13a~13fが配置されて構成されている。物品収納部6における最下段の棚13fは上下方向に収納空間が大きく、例えば500mlのペットボトル飲料のように上下方向に比較的大きい物品を収納する一方、最上段の棚13aは上下方向に収納空間が小さく、比較的小さい物品を収納する。また、夫々の棚13a~13fには、左右方向に並べて複数個の搬出機構14が備えられている。搬出機構14は、例えばスパイラル状の金属棒を回転させる機構やベルトコンベアによって構成されている。棚13a~13fには、搬出機構14毎に前後方向に並べて物品が収納されており、任意の搬出機構14の作動によって、1つずつ棚13a~13fの前方に押し出されるようにして搬出される。
【0024】
棚13a~13fの前端部とドア5の前面である透明板10との間には、バケット30が移動するスペース(以降、バケット移動空間21と言う)が設けられている。
【0025】
バケット30は、棚13a~13fの左右方向と略同一の長さで構成され、バケット移動空間21を上下方向に移動可能に配置されている。バケット30は、キャビネット4の内部に設けられた図示しないアクチュエータによって上下方向に移動し、バケット30の底板31の後端部が各棚13a~13fの底板と略同一の高さとなる位置に移動可能であるとともに、最下方に移動した際に後述するバケット30の天板32が最下段の棚13fの底面よりも下方に位置するように移動可能となっている。なお、最下方に移動したバケット30の位置が待機・取出位置であり、この待機・取出位置において、バケット30の前面に物品取出口11が位置し、取出口シャッター12を開けることで、バケット30内に手を入れることが可能となっている。
【0026】
本体ユニット2の内部には、物品収納部6の下方に機械室22が備えられている。機械室22には、冷媒を循環させる冷却機器における凝縮器23a、凝縮器用のファン23b、圧縮機23cが備えられている。機械室22の前部及び後部は、外部と連通している。また、機械室22と最下段の棚13fとの間には、下部ダクト24が備えられている。下部ダクト24には、冷却機器における蒸発器及23d及び蒸発器23d用のファン23eが備えられている。ファン23eは、下部ダクト24の前方から後方に向けて蒸発器23dを通過させる空気の流れを発生させる。なお、機械室22を除くキャビネット4の内部には、と外部との熱交換を抑制するために断熱材が設けられている。また、ドア5の透明板10については、断熱性の高いものが望ましい。
【0027】
下部ダクト24の後部は、物品収納部6の後方を上下方向に延びる後部ダクト25と連通している。更に物品収納部6の上方には、前後方向に延びる上部ダクト26が備えられている。
【0028】
上部ダクト26の前方の開口部は、バケット移動空間21の上部に向けて開口している。更に、上部ダクト26の前方の開口部の上部縁部には、前方に向かって下方に例えば45度の角度で傾斜する導風板27が設けられている。
【0029】
一方、下部ダクト24の前端部には、バックパネル28が設けられている。バックパネル28は、上下方向に延びて、下部ダクト24とその前方のバケット移動空間21とを区画する。更に、バックパネル28の上部は、上方に向かって後方に傾斜する傾斜部28aと、傾斜部28aの上端から後方に向かって例えば数cm延びた上向部28bとを有している。傾斜部28aと上向部28bには、複数の通気孔28cが設けられている。なお、通気孔28cは、傾斜部28aと上向部28bのほぼ全域に亘って、例えば略1cm間隔で前後左右に複数個並べて設けられた直径数mm程度の穴である。
【0030】
図3は、バケット30の構造を示す斜視図である。図4~6は、バケット30の側面図である。図4は天板32が所定位置に位置する状態、図5は天板32の押し上げ状態、図6は天板32の押し下げ状態を示す。
【0031】
図3~6に示すように、バケット30は、左右一対の側板33と、左右の側板33を接続し左右方向に延びる底板31と、側板33に上下方向に移動可能に支持される天板32と、を備えている。
【0032】
側板33は上下方向に延びる略矩形状の板部材である。側板33は、キャビネット4の左右側面の前部内側に設けられた図示しないガイドレールに後部が支持されており、キャビネット4に対して上下方向に移動可能に配置されている。
【0033】
底板31は、側板33の前下端部から側板33の下端部近傍を後端部まで後方に延びるように構成されている。また、底板31の前端部は上方に屈曲して側板33の前下端部を上下方向に延びる底板前部31aを備えている。底板31は、後方に延びるに伴って上方に傾斜している。更に、底板31の左右端部31bは、夫々左右方向外方の側板33に向かって上方に傾斜している。
【0034】
天板32の左右前端部は、上下方向に延びるスライドレール34及びスプリングシャフト35を介して左右の側板33に支持されている。天板32は、例えば透明あるいは半透明の樹脂で形成され、左右長さが棚13a~13fの左右長さと略同一である矩形状の板部材である。天板32は、前端部から後方に水平方向に延び、例えば前後方向長さの1/3程度の後部32aが後方に向かって上方に15度程度傾斜している。天板32の後端は、棚13a~13fの前端に近接する位置まで後方に延びている。また、この天板32の傾斜した後部32aのほぼ全域に亘って、例えば直径数mm程度の通気孔36が略1cm間隔で前後左右に複数個並べて設けられている。
【0035】
また、天板32の前端部には、前板37が支持されている。前板37は、例えば透明あるいは半透明の樹脂で形成された板部材である。前板37は、天板32と左右方向長さが略同一であり、天板32の前端部下面を揺動中心として、左右のスライドレール34の間を前後方向に揺動可能に天板32に支持されている。前板37は、左右の側板33に夫々設けられたストッパ38により、上下方向に延びる位置より前方への移動が規制される。なお、このストッパ38により前方への移動が規制された状態で、前板37と透明板10とは前後方向に数cm離間している。
【0036】
スライドレール34の下部は、左右の側板33の前端部の左右外側に夫々支持されている。スプリングシャフト35は、スライドレール34の後方に隣接してスライドレール34と平行に夫々配置されている。スプリングシャフト35の下部は、側板33に設けられたシャフトガイド39によって、側板33に上下方向に移動可能に支持されている。一方、スライドレール34の上端部及びスプリングシャフト35の上端部は、天板32に固定されている。
【0037】
スプリングシャフト35は、円筒状のガイドスプリング40(付勢部)に挿入されている。ガイドスプリング40は、コイル状のスプリングであり、シャフトガイド39と天板32との間に配置され、圧縮方向に荷重が作用することで下方に縮む。天板32は下方向に荷重が作用することで、側板に33に対して下方に移動可能である。
【0038】
図4に示すように、天板32の自重によって側板33に対し天板32が下方に移動しようとするが、ガイドスプリング40の上方への付勢力と釣り合って下方への移動が規制され、側板に33に対する天板32の上下位置が規定される。なお、このバケット30の底板31に対する天板32の上下位置が本発明の所定位置に該当する。この所定位置において、天板32が側板33の上端部よりも所定距離(例えば5~10cm)上方に位置するように、スプリングシャフト35及びガイドスプリング40の上下長さが設定されている。
【0039】
図5に示すように、所定位置から天板32を押し上げたときには、側板33に対して天板32は所定位置よりも上方に移動する。但し、スライドレール34には上方への移動を規制するストッパ41(移動規制部)が備えられている。このように天板32を押し上げたときに、天板32は所定位置よりも数cm程度上方に移動可能に設定されている。
【0040】
図6に示すように、所定位置から天板32を押し下げたときには、天板32がガイドスプリング40を圧縮し、側板33に対して天板32が所定位置よりも下方に移動する。なお、バケット30を上下方向に移動させるアクチュエータによってバケット30を上方に移動させ、天板32をキャビネット4の上壁4aに上方に向かって押し付けた際に、天板32が側板33の上端部まで下方に移動するように、ガイドスプリング40のばね定数が設定されている。
【0041】
図7は、物品Cの取出時における物品取出口11内部の構造を示す縦断面図である。
【0042】
図7に示すように、棚13a~13fから搬出された物品Cを載せたバケット30を最下方の待機・取出位置に位置させたときに、購買者が取出口シャッター12を後方に押すことで、バケット30に乗せている物品Cを取り出すことができる。このとき、取出口シャッター12の下端が物品Cに干渉しないように、バケット30の上下位置や取出口シャッター12の上下長さが設定されている。バケット30が待機・取出位置に到着して取出口シャッター12を開けていない状態では、バケット30に対して所定位置である天板32は、最下段の棚13fの底板の前端部42よりも下方に位置するように設定されている。
【0043】
そして、取出口シャッター12を後方に押して開けることで、取出口シャッター12の後面に設けている突出部12aによって天板32を押して上方に移動させることで、取出口シャッター12を十分に上方に揺動させることができ、バケット30上の物品Cを容易に取り出すことが可能となる。
【0044】
なお、棚13a~13fの前端部42には、棚番号や価格等が記載されている。また、購入操作をしていない待機状態では、図7に示すようにバケット30は最下方の待機・取出位置に位置する。したがって、購入操作をする前の販売指令を待機する待機状態においては、天板32が棚13fの底板の前端部42よりも下方に位置し、前端部42に記載されている棚番号や価格等を視認することができる。
【0045】
一方、天板32が取出口シャッター12の開扉に伴い押し上げられたときには、天板32と最下段の棚13fの底板の前端部42と上下位置が重なってもよい。このように、取出口シャッター12を開いたときには、既に物品Cの購入を決定しているので、前端部42に記載されている棚番号や価格等について、天板32によって視認性が低下したり見えなくなったりしてもよい。
【0046】
更に、取出口シャッター12は、図示しないロック機構により、購入者が物品Cを取り出すことが可能なとき以外には開くことができないように構成されているとよい。
【0047】
図8は、最下段の棚13fからバケット30に物品Cを搬出するときの状態を説明するバケット30付近の縦断面図である。
【0048】
上記のように天板32が側板33の上端部よりも所定距離上方に位置することで、バケット30の底板31と天板32とが上下方向に大きく離間しており、更には天板32の後部32aが後方に向かって上方に傾斜しているので、例えば最下段の棚13fに500mlのペットボトル飲料のように上下方向に比較的大きい物品が収納されていても、当該棚13fから物品Cを前方に搬出したときに、物品Cが天板32に引っ掛かり難くなる。また、天板32と底板31の後端部との上下間隔が、物品Cの上下長さと同等あるいはわずかに狭くても、天板32の後部32aが傾斜していることで、天板32の特に後部32aに接触した物品Cの上部を左右方向に滑動させて、物品Cをバケット30内に受け入れ易くすることができる。
【0049】
なお、図9に示すように、例えば搬出機構14毎にその左右方向の位置に対応して、天板32の後部32aを含む後部に溝43を設けるとよい。この溝43は、バケット30の天板32と底板31との間に押し出されてきた物品Cのキャップ等の上端部を、図9中の矢印に示すように左右方向のいずれか一方に導いて、物品Cをバケット30内に左右方向に向けて転倒させるように設けられる。これにより、例え天板32とバケット30の底板31との上下方向の間隔が短くても、上下方向に大きな物品をバケット30内に左右方向に向けて倒すことができ、バケット30への物品Cの受け入れ性を向上させることができる。
【0050】
図10は、最上段の棚13aから物品を搬出するときのバケット30の状態を説明するための縦断面図である。
【0051】
図10に示すように、バケット30が最上段の棚13aの位置まで上方に移動させようとすると、天板32がドア5あるいはキャビネット4の上壁4aに干渉する可能性がある。しかしながら、本実施形態では、図6に示すように、ガイドスプリング40が圧縮することでバケット30の底板31と天板32との上下間隔を短くすることができる。即ち、バケット30を上方へ移動させて、天板32がキャビネット4の上壁4aに干渉する位置(天板32の最上方位置)に到達しても、ガイドスプリング40が圧縮することで、バケット30が更に上方の最上段の棚13aの位置まで移動可能である。したがって、バケット30の最上段の棚13aから物品Cをバケット30に搬出しようとしてバケット30を最上段まで移動させた際に、キャビネット4内に天板32を受け入れるための空間を大きく確保する必要がない。
【0052】
以上のように、本実施形態の物品販売機1では、バケット30は、通常、最下方の待機・取出位置に待機している。そして、操作ユニット3から販売指令に基づいて、バケット30は選択された物品Cを収納する棚13a~13fの上下位置に移動する。そして、選択された物品Cを搬出機構14によって棚13a~13fから前方のバケット30に押し出す。それから、バケット30は最下方の待機・取出位置に戻り、購買者が取出口シャッター12を後方に押して、バケット30に載っている物品Cを取り出すことができる。
【0053】
本実施形態においては、バケット30の上方に天板32が設けられているので、バケット30が待機・取出位置に位置するときには、例え取出口シャッター12を開いて本体ユニット2の内部に手や棒等の器具を侵入させても、天板32によって遮られて最下段の棚13fに届くことができない。したがって、棚13a~13fに収納されている物品の盗難を防止することができる。
【0054】
また、天板32がバケット30の底板31に対し上下方向に移動できるので、通常はバケット30の底板31に対して天板32を上方に位置させて、上下方向に大きい物品Cを後方からバケット30に受け取ることができる一方、バケット30を最上段の棚13aの位置まで移動した際に天板32を受け入れるために、本体ユニット2を上方に大きくする必要がない。このように、天板32がバケット30の底板31に対して上下方向に移動可能とすることで、物品Cの受け入れ及び搬送に必要最小の空間を確保しつつ、必要に応じてバケット30の受け入れ・移動に必要とする空間を拡大、縮小することが可能となる。したがって、本体ユニット2の上下寸法をコンパクトに抑えた上で最上段の棚13aをキャビネット4内で極力上方に位置させ、物品収納部6の上下大きさを大きく確保して物品の収納性を向上させることができる。
【0055】
なお、天板32は、バケット30に対して所定位置よりも上方へ移動可能であるものの、ストッパ41によって上方への移動が規制され、バケット30が待機・取出位置に位置した際に天板32が最下段の棚13fの底板よりも上方には移動しないように設定されている。これにより、待機・取出位置において例え天板32を上方に押して移動させたとしても棚13a~13fに収納されている物品の盗難を防止することができる。
【0056】
また、バケット30には天板32を上方に付勢するガイドスプリング40を備えているので、天板32に荷重が作用しない状態で、ガイドスプリング40の長さによってバケット30の底板31と天板32との間の距離が一定に維持される。これにより、バケット30への物品Cの受け入れ性を確保することができる。また、バケット30の上方の棚13a~13fから物品Cが天板32の上に落下しても、ガイドスプリング40によって衝撃を吸収するので、物品Cの破損や飛散を防止することができる。また、バケット30内に搬出、搬送途中の物品C(商品)が存在するときでも、棚13a~13fから落下した物品Cがバケット30内に存在する商品と衝突することを防止し、バケット30内の商品の破損や変形を防止することができる。
【0057】
また、バケット30の前方に前板37を備えることで、棚13a~13fから押し出された物品Cがバケット30内に搬入される際に、物品Cがドア5の透明板10に直接衝突することを防止して、透明板10の保護を図ることができる。天板32及び前板37は透明あるいは半透明であるので、バケット30内に物品Cが搬入される態様や、バケット30による搬送時において物品Cを購入者が視認することを妨げることはない。なお、前板37については、商品等のロゴを表示して広告に利用してもよい。また、前板37は、少なくともバケット30内に物品が搬入されたことが確認できる範囲で、表面に凹凸やステッカー等により模様も設けたりしてもよい。
【0058】
図11は、本体ユニット2の内部における冷却風の循環を説明するための縦断面図である。図12は、本体ユニット2の前下内部における冷却風の循環を説明するための拡大縦断面図である。
【0059】
図11中の矢印で示すように、冷却機器の各機器を作動させ、下部ダクト24内のファン23eを作動させることで、蒸発器23dを通過して冷却された冷却風が、下部ダクト24から、後部ダクト25、上部ダクト26、バケット移動空間21、そして下部ダクト24の順番に冷却風が循環する。なお、後部ダクト25の物品収納部6側に設けた図示しない通気口から冷却風の一部が棚13a~13fの間を前方に移動して、棚13a~13fに収納した物品を冷却する。
【0060】
上部ダクト26からバケット移動空間21に冷却風が移動する際に、導風板27によって冷却風はバケット移動空間21の後部を下方に向けて移動するように導かれる。したがって、冷却風によって棚13a~13fの前面にエアカーテンが形成される。これにより、冷却風がドア5の透明板10に接触することが抑制され、ドア5の透明板10の曇りを抑制することができる。
【0061】
また、図12に示すように、バックパネル28の通気孔28cは、バケット30が待機・取出位置に位置する際に、天板32の通気孔36と相対するように配置されている。バケット移動空間21の下部に到達した冷却風は、待機・取出位置に位置するバケット30の天板32の通気孔36とバックパネル28の通気孔28cとを通過して、下部ダクト24に流入する。これにより、冷却風の循環が維持される。
【0062】
ここで、バケット30が待機・取出位置に位置する際の天板32とバックパネル28によって、冷却風がバケット30内に流入することが抑制される。これにより、冷却風の外部への漏れを低減させ、冷却効率を向上させることができるとともに、バケット30内での結露の発生を抑制することができる。
【0063】
更に、天板32の前部には通気孔36が設けられず、天板32の後部に通気孔36が設けられているので、バケット移動空間21の下後部から循環風が下部ダクト24に移動することになり、エアカーテンがバケット移動空間21の後部に作成されることを助け、特にドア5の下部における透明板10の曇りを抑制することができる。
【0064】
また、バケット30が待機・取出位置に位置する際に、天板32が取出口シャッター12の開扉に伴い押し上げられても、ストッパ41によって天板32の後部32aが最下段の棚13fの前端部42より上方に移動することが規制されるので、天板の後部32aと棚13fの底板の前端部42との間に大きな隙間が形成されることを抑制することができる。これにより、天板32の通気孔36を通過する冷却風の量より多い冷却風が、天板32の後部32aと棚13fの底板の前端部42との間の隙間を通過することが抑制される。したがって、取出口シャッター12を開いたときに、冷気が待機・取出位置にあるバケット30及び物品取出口11を経て外部へ流出することを抑制することができるとともに、外気がバケット移動空間21や物品収納部6内に流入することを抑制することができる。
【0065】
なお、本発明は上記の実施形態に限定するものではない。例えば、上記実施形態の物品販売機1は、冷却機器により物品収納部6に収納した物品を冷却するものであるが、ヒータ―等による加熱機器によって物品収納部6に収納した物品を加熱するものでもよい。あるいは、冷却機器及び加熱機器の両方を備え、キャビネット4の内部で加熱する区画と冷却する区画とで仕切った物品販売機であってもよい。例えば上段の棚(13a及び13b等)を加熱し、下段の棚(13c~13f等)を冷却する物品販売機に本発明を適用してもよい。
【0066】
上下の棚で異なる温度に設定する物品販売機には、例えば特開2007-193724号公報に示すように、バケット移動空間21において温度の異なる区間の上下位置に断熱性を有する仕切り板(補助隔壁)を設ける必要がある。更に、仕切り板の下面にゴムパッキンを上方に押し付けて、仕切り板の上部の空間と下部の空間との間を密閉する構成になっている。したがって、このようにバケット移動空間21に仕切り板を備えた物品販売機に、本実施形態のようにバケット30の上方に天板32を備えた場合には、バケット30を仕切り板より上方に移動させる際に、天板32によって仕切り板を上方に押して、天板32とともに仕切り板を上方に移動させる構造となる。ここで、本実施形態のように、天板32の後部32aが上方に傾斜していると、天板32の後端部で仕切り板の後部を押すことになるので、軽い力で仕切り板を斜め上方に押し出して、バケット30の移動を容易にすることができる。
【0067】
また、飲料、お菓子、弁当等、各種物品を収納し販売する物品販売機に本発明を適用可能である。本発明は、上下方向に複数並べて備えられた棚から搬出される物品を、上下方向に移動するバケットで受けて取出口に搬送する構成の物品販売機に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 物品販売機
2 本体ユニット
4 キャビネット
6 物品収納部
11 物品取出口(取出口)
13a~13f 棚
14 搬出機構
30 バケット
32 天板
32a 後部
40 ガイドスプリング(付勢部)
41 ストッパ(移動規制部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12