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特許7208004職業性皮膚炎を減少させるためのシステムおよび方法
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  • 特許-職業性皮膚炎を減少させるためのシステムおよび方法 図1
  • 特許-職業性皮膚炎を減少させるためのシステムおよび方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】職業性皮膚炎を減少させるためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/10 20230101AFI20230111BHJP
   G06Q 50/22 20180101ALI20230111BHJP
   G16Y 10/60 20200101ALI20230111BHJP
【FI】
G06Q10/10
G06Q50/22
G16Y10/60
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018515567
(86)(22)【出願日】2016-09-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-10-11
(86)【国際出願番号】 IB2016001362
(87)【国際公開番号】W WO2017051244
(87)【国際公開日】2017-03-30
【審査請求日】2019-08-15
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-30
(31)【優先権主張番号】1517000.4
(32)【優先日】2015-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514198378
【氏名又は名称】デブ アイピー リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ハインズ
(72)【発明者】
【氏名】ディーン リンバート
【合議体】
【審判長】高瀬 勤
【審判官】中野 浩昌
【審判官】相崎 裕恒
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-539087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-99/00
G16Y10/00-40/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
職場での職業性皮膚炎を減少させるためのシステムにおいて、
- 皮膚保護製品を送出するように施設内に構成された1つ以上のディスペンサーと;
- 皮膚清浄用製品を送出するように施設内に構成された1つ以上のディスペンサーと;
- 皮膚コンディショニング製品を送出するように施設内に構成された1つ以上のディスペンサーと;
- 皮膚保護製品を送出するように構成された前記1つ以上のディスペンサー、皮膚清浄用製品を送出するように施設内に構成された1つ以上のディスペンサー、及び、皮膚コンディショニング製品を送出するように構成された前記1つ以上のディスペンサーの利用を監視するための、ディスペンサー利用監視システムと;
を含み、
- 前記のディスペンサーはそれぞれ、前記ディスペンサー利用監視システムと通信状態にあり、前記ディスペンサーの利用を表示する信号を前記ディスペンサー利用監視システムに提供するように構成されており、
- 前記ディスペンサー利用監視システムは、皮膚保護製品を送出するように構成された前記1つ以上のディスペンサー、皮膚清浄用製品を送出するように施設内に構成された1つ以上のディスペンサー、及び、皮膚コンディショニング製品を送出するように構成された前記1つ以上のディスペンサーの利用を、複数のハンド製品の利用を指定するスキンケアレジームを比較するように構成されており、ここで、各ハンド製品は、皮膚保護、清浄、コンディショニングの1つ以上を提供し、かつ、スキンケアレジームは、各ハンド製品を利用する必要がある状況を指定し、前記状況は、作業の前、1つ以上のハンド製品の利用を必要とする特定の作業の後、および作業期間の完了を含み、
- 前記ディスペンサー利用監視システムは、さらに、皮膚保護製品を送出するように構成された前記1つ以上のディスペンサー、及び、皮膚コンディショニング製品を送出するように構成された前記1つ以上のディスペンサーの、所与の期間内の利用の数を、スキンケアレジームにより特定されたハンド製品の利用の数と比較することにより、スキンケアレジームのコンプライアンスを評価するように構成されている、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、労働者の間における職業性皮膚炎(occupational dermatitis)を減少させるためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
職場において、手洗い施設を提供することが公知である。一部の環境においては、手洗いが極めて重要性を帯びる場合がある。例えば医療環境においては、疾病または感染の曼延を防止する目的で、手洗いは極めて重要である。工場内などのさらなる環境下では、一定の材料と接触した後に手洗いが求められる。
【0003】
訓練を通して手洗いの重要性についての人々の認知度がさらに高くなる一方で、自動ディスペンサーなどの有効な手洗い機材の提供も増大してきた。しかしながら、繰り返し手を洗う職業においては、手洗い洗剤に対する反復的かつ長期にわたる曝露が、このような労働者間で職業性皮膚炎の増大を招いている。皮膚疾患が最も一般的な職業病であることはほぼ間違いなく、職業性接触皮膚炎(contact dermatitis、CD)は全職業性皮膚疾患の最大で95%を占め、刺激性接触皮膚炎がこれらの症例の大部分を占めている。接触皮膚炎は、勤務日数の損失や雇用に対する脅威を含め、人生の社会的および職業的側面に重大な不利な影響を及ぼす可能性がある。
【0004】
刺激は、洗剤、石けん、溶剤、水、食品成分および切削油または切削液などの刺激物に対する無防備かつ反復的な曝露の結果としてもたらされる場合がある。長い時間にわたってこれらの刺激物は継続的に皮膚を害し、最終的にはアレルギー性CDの素因を提供し、このアレルギー性CDは慢性状態になる。しかしながら、刺激物を除去することは、農業労働者、美容師、化学関係労働者、清掃人、料理人、エレクトロニクス関連労働者、理容師、保健・社会医療労働者、機械オペレータ、機械工、金属加工職人および車両組立工を含めたCDに悩まされている多くの職場において、非現実的かつあり得ない解決法である。したがって、職業性皮膚炎を経験する人がいる場合であっても、感染、疾病の曼延を防止するため、または単にその職務を果たすことができるようにするために、手洗いまたは刺激源に対する手の曝露を継続することが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の問題点のいくつかを克服するために人が良好な衛生および手洗い実践を確実に維持できるようにしながら、職業性皮膚炎を減少させるためのシステムおよび方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
職場での職業性皮膚炎を減少させるためのシステムにおいて、施設内に、作業前ハンド製品を送出するように構成された1つ以上のディスペンサーと;洗浄または清浄用製品を送出するように構成された1つ以上のディスペンサーと;コンディショニング製品を送出するように構成された1つ以上のディスペンサーと;作業後製品を送出するように構成された1つ以上のディスペンサーと;ディスペンサー利用監視システムと;を含み、前記複数のディスペンサーはそれぞれ、ディスペンサー利用コンプライアンスシステムと通信状態にあり、ディスペンサーの利用を表示する信号をディスペンサー利用監視システムに提供するように構成されており、ディスペンサー利用監視システムはスキンケアレジームに反する複数のディスペンサーの利用を判定するように構成されている、システムが提供されている。
【0007】
作業前製品を使用すると、自らの仕事中に使用する手洗い用製品に対する有効なバリヤが提供される。作業後製品を使用することで、ユーザーが仕事の最中に手洗い用製品に曝露されることによってひき起こされる皮膚に対するあらゆる潜在的損傷を修復するための製品が提供される。有利には、この方法により、ユーザーは有効な手洗い手順を継続して行ない、公知の製品を有効なものとして使用することができる。これにより、労働者が皮膚刺激物に対して曝露される可能性のある職場において採用すべき最良の実践ルーチンが識別される。
【0008】
本発明のさらなる態様は、上述の識別された最良の実践3洗浄プロトコルについてのユーザーのコンプライアンスを保証することを目的とする、個別のユーザーおよびユーザー群のための監視システムの使用にある。ユーザーまたはユーザー群が3段階スキンケアプロトコルを遵守していないものとして識別された場合、施設全体にわたり、または1人以上のユーザー群の内部で最良の実践プロトコルとのコンプライアンスを確保する一助となるように、適切な是正措置を講じることができる。
【0009】
ここで、本発明の一実施形態について、単に一例として、添付図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一態様に係る手洗い手法の流れ図である。
図2】本発明の一態様に係る装置の概略的表現である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一態様によると、職業性皮膚炎を減少させるための新規のシステムおよび手法が提供されている。
【0012】
詳細には、本発明は、職場に導入でき首尾よく監視できる手法を提供する。本発明は、臨床的証拠、ワークフローへの統合、ユーザー側の高い受入れ度を目的とする訓練可能性、および異なる職場環境への一般的な応用可能性という4つの視点に基づいて、全体論的に課題に取り込むものである(表1)。
【0013】
【表1】
【0014】
本発明の重要な一態様は、刺激物に対する曝露の減少さらには除去が多くの環境下で多くのCD症例を防止すると考えられるものの、刺激物を除去することは非現実的、さらには不可能であるという認識にある。これらの刺激物は、機械整備工場内の油、金属加工液、美容室でのシャンプー、およびクリーニング店施設内における化学物質などのように、日常的作業に固有のものである。いわゆる水仕事における水と洗剤を用いた手洗いでさえ、有害であり得る。
【0015】
図1に示されているような3段階手法が提供されている。
【0016】
したがって、このプロセスは、1ユーザー群全体にわたる職業性皮膚炎のリスクを減少させるかまたは軽減するために遵守すべき最良の実践プロトコルを規定する。この手法は、CDのリスクがあるあらゆる工業的または臨床的環境において実施可能である。
【0017】
ステップS102において、ユーザーは作業前製品を適用する。
【0018】
本発明の一態様は、ユーザーが刺激に曝露される前にユーザーの手に作業前製品を適用することにある。作業前製品は多くの場合バリヤ製品として公知であるが、本発明の訓練および教育的態様の一部としては、作業前製品なる用語を使用することが好ましい。バリヤ製品なる用語は、労働者に対し擬似保護の意味を暗示する可能性があり、その後労働者は職場において適切な安全対策を実践せず、より有効な予防対策に対してさらに無頓着になるという理由から比較的好ましくない。したがって、作業前製品なる用語が好ましい。
【0019】
全てのハンド製品の適用シナリオにおいて、労働者は、製品の適用下で刺激を取り込まないように皮膚に刺激物が付いていないことを保証する目的で、手が洗浄されたばかりであるかまたは予め洗浄された状態になければならないという教育を受けているものと仮定されている。その上、製品は、特に注意深く指間部域および爪床に対して徹底的に適用されなければならない。3モーメントメソッド(3瞬間法、3-moments method)は、職場における測定可能な事象(すなわち、シフトの開始時において作業に入る前、作業中に手を洗った後、および作業シフト後に作業から退出するとき)を反映し、異なる保湿剤タイプと混同されるべきではない。
【0020】
したがって、ステップS102では、刺激に対する職業的曝露を伴うシフトを開始する前に、労働者は、皮膚の防御メカニズムにおける支持層として作業前製品を適用しなければならない。作業前製品は同様に、(以下で定義するステップS104のように)次の手洗い事象において、刺激を捕捉し洗い去ることによる皮膚の表面からの刺激の除去を容易にする。
【0021】
本発明の一実施形態においては、職場における作業前製品の適用を保証するため、全ての作業台に、労働者が入室するときおよび作業ツールまたは材料とのあらゆる接触の前に推奨分量(例えばディスペンサーから求められるポンプ回数によって規定されるもの)を適用するように、労働者に対する目に見える明快な使用説明を伴う作業前製品ディスペンサーが設置される。
【0022】
作業前製品の特定の組成は、いくつかの製品が所与の刺激のための作業前製品として作用する上で他の製品よりもさらに有効であることから、労働者がそのシフト中に曝露される刺激に左右される。好ましい作業前製品の例としては、不水溶性業務用物質、例えば溶剤、金属加工油および樹脂などに対する曝露の場合のTravabon Special PURE(登録商標)、乾燥粉末を含む水性および非水性汚染物質に対する曝露の場合のStokoderm Protect PURE(登録商標)、および油性および水性材料の両方に対する曝露の場合のStokoderm Grip PURE(登録商標)がある。
【0023】
ひとたび労働者が自らの作業前製品を適用したならば、通常の形で作業のシフトが開始される。
【0024】
ステップS104において、労働者は、一日の流れの中で必要とされる時点で手を洗い続ける。
【0025】
毎回作業ツールおよび材料に対し曝露された後、または必要に応じてかつ必要なときに、労働者は、手を洗浄または清浄する。本発明の一態様では、手からひとたび刺激物が清浄された時点で、労働者は、作業前製品を再度適用し作業に戻るか、または、皮膚の無欠性を損ない皮膚の自然の保湿因子および油を枯渇させる可能性のある洗剤および他の研磨剤または皮膚乾燥物質に曝露される皮膚に対してコンディショニング製品を適用する。作業前製品またはコンディショニング製品のいずれを再度適用するかの選択は、手洗い事象と作業復帰の間に介在する時間に基づく。ハンド製品の適用が好ましくは手の洗浄と乾燥の後、そして任意のアルコール系物質での消毒の前に行なわれるという点に留意することが重要である。
【0026】
本発明の一実施形態において、作業前製品およびコンディショニング製品のディスペンサーは両方共、作業施設全体にわたる全ての手洗い部域の近くに、各手洗い後に推奨分量を適用するように労働者に対する目に見える明快な使用説明を伴って組付けられている。したがって、労働者は、ひとたび通常通りに手を洗浄した時点で、作業前製品またはコンディショニング製品のいずれかを必要に応じて適用する。
【0027】
ステップS106では、ユーザーのシフトの終了時点で、ユーザーは、作業後製品としても公知のコンディショニング製品を手に適用する。
【0028】
好ましい作業後製品としては、Stokolan Classic(登録商標)、Stokolan intense(登録商標)、Stokolan Light PURE(登録商標)およびStokolan Sensitive PURE(登録商標)が含まれる。
【0029】
コンディショニング製品または作業後製品を適用することによって、ユーザーは、失われたあらゆる水分および/または油分を補充することができ、こうして皮膚は、作業シフト中の刺激に対する曝露によってひき起こされたあらゆる損傷を再生させ修復することができる。
【0030】
本発明のさらなる一態様は、新しい手洗い提案の理解および受入れ度を監視し、特定の製品の受入れ度または使用のレベルが既定値よりも低い場合には、送出される量を変動させる能力にある。上述の発明は、新規の手法を定義しており、したがって、首尾よく実施するためにはエンドユーザーの挙動変化が求められる。したがって、ユーザー受入れ度の監視および報告は、職業性皮膚炎の割合を確実に削減する上に有用である。
【0031】
監視は、実証された手の衛生コンプライアンス監視モデルを介して行なわれ、以下の3つの基本的監視構成要素が存在する:1)所与の期間内で可能であるハンド製品適用事象の総数として、分母を設定すること;2)所与の期間内に達成された事象数(分子)を測定するための持続可能な方法を開発すること;および3)経時的改善を評価するための基準値を計算すること。好ましくは、一実施形態における監視は、PCT/GB2011/051206に記載のものなどの電子監視システムを介して行なわれる。
【0032】
施設のコンプライアンスは好ましくは、(分子)/(分母)×100として判定される。好ましくは、分子は、監視システムによって判定される作業前および作業後の両方を含むコンディショニング製品適用事象数として定義される。好ましくは、分母は、一実施形態においては手洗い事象数として判定されるハンド製品適用可能事象の総数として定義される。さらなる実施形態において、分母は、同様に、作業期間の始めにおいて行なわれるべきである作業前製品適用回数の指標としての、監視対象部域内に入る従業員数を含んでいてもよい。
【0033】
図2は、本発明の一態様に係る装置の概略的表現である。
【0034】
入口12および出口14を有する施設10が示されている。入口には、作業前製品を送出するように構成された複数の作業前製品ディスペンサー16A、16Bが存在する。作業前製品ディスペンサーの隣に位置するのは、手洗い手法のユーザーに、作業開始前に作業前製品を適用することを忘れないようにするために情報提供する教育用ポスタ18である。
【0035】
施設10内部には、ハンド消毒ローション20A、20Bおよびコンディション製品22A、22Bを送出するように構成された複数のディスペンサーが存在する。好ましくは、消毒ローションおよびコンディションまたは作業後製品ディスペンサーは、互いに隣り合って位置している。さらなる教育用ポスタ18が、ディスペンサーの近くに設置される。
【0036】
施設の出口のそばには、複数のコンディショニング製品または作業後製品ディスペンサー24、24Aおよびさらなる教育用ポスタ18が存在する。
【0037】
施設の内部には、ディスペンサー利用コンプライアンスシステム26が位置設定されている。
【0038】
図2で提供されているレイアウトは、例示的なものであり、施設10のレイアウトに応じて変動する。
【0039】
ディスペンサー16、20、23、24は、好ましい実施形態において、ディスペンサー利用コンプライアンスシステム26と無線通信状態にあるディスペンサーである。ディスペンサーの起動の度毎に、利用事象を表示するためのメッセージがディスペンサーからディスペンサー利用コンプライアンスシステム26に送られる。このような利用監視は、当該技術分野において公知であり、コンプライアンスの監視を可能にする。
【0040】
本発明の一態様は、コンプライアンスを保証し、コンプライアンスレベルが低いものと判定された場合に是正措置を講じる能力である。是正措置は、ユーザーに対する音声/視覚警報;コンプライアンスレベルを詳述するかまたは最良の実践プロトコルについてユーザーに思い起こさせる、特に手洗いステーション近くのポスタの使用;最良の実践プロトコルを補強するための施設のユーザーに対する現地訓練の提供、の形をとることができる。
図1
図2