(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
F15B 21/045 20190101AFI20230111BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20230111BHJP
F15B 11/02 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
F15B21/045
E02F9/22 R
E02F9/22 E
F15B11/02 M
(21)【出願番号】P 2019028735
(22)【出願日】2019-02-20
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 貴雅
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 哲平
(72)【発明者】
【氏名】清水 自由理
(72)【発明者】
【氏名】平工 賢二
【審査官】落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-206415(JP,A)
【文献】特開2015-48899(JP,A)
【文献】特開2006-336673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 21/045
F15B 11/02
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動油を貯留するタンクと、
キャップ室およびロッド室を有する片ロッド式の油圧シリンダと、
前記油圧シリンダに閉回路状に接続された両傾転ポンプからなる閉回路ポンプと、
片傾転ポンプからなる開回路ポンプと、
前記開回路ポンプの吐出ポートと前記キャップ室とを接続する流路の流通と遮断とを切り替えるキャップ側切替え弁と、
前記開回路ポンプの吐出ポートと前記タンクとを接続する流路に設けられ、開口面積をゼロから所定の最大開口面積までの間で調整可能な比例弁と、
前記油圧シリンダの駆動方向および駆動速度を指示するための操作装置と、
前記操作装置を介して指示された前記油圧シリンダの駆動方向が伸長方向である場合に、前記キャップ側切替え弁を開きかつ前記比例弁を閉じた状態で、前記操作装置の操作量に応じて前記閉回路ポンプおよび前記開回路ポンプの吐出流量を制御し、前記操作装置を介して指示された前記油圧シリンダの駆動方向が収縮方向である場合に、前記キャップ側切替え弁を開いた状態で、前記操作装置の操作量に応じて前記閉回路ポンプの吐出流量および前記比例弁の開口面積を制御するコントローラとを備えた建設機械において、
前記作動油の温度を検出する温度センサを備え、
前記コントローラは、前記温度センサで検出された前記作動油の温度が所定の温度よりも低い場合に、前記キャップ側切替え弁を閉じ、前記操作装置の操作方向に応じて前記閉回路ポンプの吐出方向を制御し、前記操作装置の操作量に応じて前記閉回路ポンプの吐出流量を制御する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前
記閉回路ポンプを含む複数の閉回路ポンプと、
前記油圧シリンダを含む複数のアクチュエータと、
前記複数の閉回路ポンプを前記複数のアクチュエータに閉回路状に接続する複数の閉回路切替え弁とを備え、
前記コントローラは、前記温度センサで検出された前記作動油の温度が所定の温度よりも低い場合に、前記複数の閉回路ポンプのそれぞれが前記複数のアクチュエータのいずれか1つに限定して接続されるように前記複数の閉回路切替え弁を開閉制御する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項2に記載の建設機械において、
前記複数の閉回路ポンプのうちの1つの閉回路ポンプに接続されている2以上の閉回路切替え弁のうちいずれか1つの閉回路切替え弁のみを開くことにより、前記1つの閉回路ポンプを前記複数のアクチュエータのいずれか1つに限定して接続する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項2に記載の建設機械において、
車体と、
前記車体に上下方向に回動可能に連結されたブームと、
前記ブームの先端部に上下、前後方向に回動可能に連結されたアームとを備え、
前記複数のアクチュエータは、前記ブームを駆動するブームシリンダと、前記アームを駆動するアームシリンダとを含む
ことを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項1に記載の建設機械において、
前記温度センサは、前記タンクに設けられている
ことを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルなどの建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の建設機械の分野では、油圧シリンダ等の油圧アクチュエータからの戻り油を作動油タンクに戻す油圧回路(以下、「開回路」と称する)を用いた作業機械が主流であるが、近年、燃料消費量低減のために、油圧シリンダ(以下、「シリンダ」と称する)もしくはポンプと油圧モータの油圧回路の絞り要素を減らすとともに、シリンダもしくは油圧モータからの戻り油を両傾転ポンプ(以下、「ポンプ」と称する)に戻し、ポンプとシリンダ、もしくはポンプと油圧モータとを閉回路状に接続した回路(以下、「閉回路」と称する)の開発が進められている。また、開回路と閉回路を併設する油圧回路も提案されている。油圧閉回路を搭載した油圧ショベルの先行技術文献として、特許文献1がある。
【0003】
特許文献1には、両方向に作動油の流出入が可能な2つの流出入ポートを有する少なくとも1つの閉回路用作動油流出入制御部と第1作動油室および第2作動油室を有する少なくとも1つの片ロッド式油圧シリンダとを備え前記閉回路用作動油流出入制御部の2つの流出入ポートが前記第1作動油室および前記第2作動油室に閉回路状に接続された複数の閉回路と、作動油タンクから作動油を流入する流入ポートおよび作動油を流出する流出ポートを有する少なくとも1つの開回路用作動油流出入制御部と前記開回路用作動油流出入制御部から流出される作動油の供給先を切り換える開回路切替え部とを備えた複数の開回路と、前記閉回路用作動油流出入制御部、前記開回路用作動油流出入制御部および前記開回路切替え部を制御するコントローラと、を具備する作動機械の駆動装置であって、前記複数の開回路のうちの少なくとも1つの前記開回路切替え部の作動油が流出される側と、前記複数の閉回路のいずれかに接続された連結管路を具備したことを特徴とする作動機械の駆動装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、閉回路ポンプと開回路ポンプを対で配置している。閉回路ポンプで油圧シリンダのキャップ側に作動油を供給する際に、油圧シリンダの受圧面積差分不足する作動油を、開回路ポンプによって補っている。油圧シリンダのロッド側に作動油を供給する際には、油圧シリンダのキャップ側から排出される作動油を開回路ラインに配置されるブリードオフ弁から排出することで、回路内の作動油の収支のバランスを整えている。また、閉回路ポンプと開回路ポンプを複数配置し、回路内の各切替え弁を切り替えることで、複数のアクチュエータへと作動油を供給できる。一方、低温環境下で動作させる場合には、切替え弁、およびブリードオフ弁の応答性が悪化し、各バルブの開閉タイミングがずれると、油圧シリンダから作動油が流出し、意図しない動作を行ってしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、閉回路ポンプと開回路ポンプを対で配置した油圧システムを搭載し、低温環境下で切替え弁の応答性が悪化した場合でも安定して動作する建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、作動油を貯留するタンクと、キャップ室およびロッド室を有する片ロッド式の油圧シリンダと、前記油圧シリンダに閉回路状に接続された両傾転ポンプからなる閉回路ポンプと、片傾転ポンプからなる開回路ポンプと、前記開回路ポンプの吐出ポートと前記キャップ室とを接続する流路の流通と遮断とを切り替えるキャップ側切替え弁と、前記開回路ポンプの吐出ポートと前記タンクとを接続する流路に設けられ、開口面積をゼロから所定の最大開口面積までの間で調整可能な比例弁と、前記油圧シリンダの駆動方向および駆動速度を指示するための操作装置と、前記操作装置を介して指示された前記油圧シリンダの駆動方向が伸長方向である場合に、前記キャップ側切替え弁を開きかつ前記比例弁を閉じた状態で、前記操作装置の操作量に応じて前記閉回路ポンプおよび前記開回路ポンプの吐出流量を制御し、前記操作装置を介して指示された前記油圧シリンダの駆動方向が収縮方向である場合に、前記キャップ側切替え弁を開いた状態で、前記操作装置の操作量に応じて前記閉回路ポンプの吐出流量および前記比例弁の開口面積を制御するコントローラとを備えた建設機械において、前記作動油の温度を検出する温度センサを備え、前記コントローラは、前記温度センサで検出された前記作動油の温度が所定の温度よりも低い場合に、前記キャップ側切替え弁を閉じた状態で、前記操作装置の操作方向に応じて前記閉回路ポンプの吐出方向を制御し、前記操作装置の操作量に応じて前記閉回路ポンプの吐出流量を制御するものとする。
【0008】
以上のように構成した本発明によれば、閉回路ポンプと開回路ポンプとで油圧シリンダを駆動する油圧閉回路システムにおいて、油温が閾値より低い場合は、キャップ側切替え弁が閉弁状態に維持され、油圧シリンダが閉回路ポンプのみによって駆動されるため、低温環境下でのキャップ側切替え弁の応答遅れによる油圧シリンダの意図しない動作を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、閉回路ポンプと開回路ポンプを対で配置した油圧システムを搭載した建設機械を、低温環境下で切替え弁の応答性が悪化した場合でも安定して動作させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施例に係る油圧ショベルの側面図である。
【
図2】
図1に示す油圧ショベルに搭載された油圧システムの概略構成図である。
【
図3】
図2に示すコントローラの機能ブロックを示す図である
【
図4】
図2に示すコントローラの制御フローを示す図である。
【
図6A】油温が閾値より高い状態で
図4の制御を実行した場合(通常モード)の動作結果を示す図である。
【
図6B】油温が閾値より低い状態で
図4の制御を実行しなかった場合の動作結果を示す図である。
【
図6C】油温が閾値以下の状態で
図4の制御を実行した場合(暖機モード)の動作結果を示す図である。
【
図7】本発明の第2の実施例における油圧システムの概略構成図である。
【
図8A】
図7に示すコントローラの制御フローを示す図(1/3)である。
【
図8B】
図7に示すコントローラの制御フローを示す図(2/3)である。
【
図8C】
図7に示すコントローラの制御フローを示す図(3/3)である。
【
図9A】油温が閾値より高い状態で
図8A~
図8Cの制御を実行した場合(通常モード)の動作結果を示す図である。
【
図9B】油温が閾値より低い状態で
図8A~
図8Cの制御を実行しなかった場合の動作結果を示す図である。
【
図9C】油温が閾値以下の状態で
図8A~
図8Cの制御を実行した場合(暖機モード)の動作結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械として油圧ショベルを例に挙げ、図面を参照して説明する。なお、各図中、同等の部材には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の第1の実施例に係る油圧ショベルの側面図である。
【0013】
図1において、油圧ショベル100は、左右方向の両側にクローラ式の走行装置8を備えた下部走行体103と、下部走行体103上に旋回可能に取り付けられた上部旋回体102とを備えている。上部旋回体102は、油圧モータである旋回モータ7によって駆動される。
【0014】
上部旋回体102の前側には、例えば掘削作業等を行うためのフロント作業機104が取り付けられている。フロント作業機104は、車体を構成する上部旋回体102の前側に上下方向に回動可能に連結されたブーム2と、ブーム2の先端部に上下、前後方向に回動可能に連結されたアーム4と、アーム4の先端部に上下、前後方向に回動可能に連結されたバケット6とを備えている。ブーム2、アーム4、およびバケット6は、片ロッド式油圧シリンダであるブームシリンダ1、アームシリンダ3、およびバケットシリンダ5によってそれぞれ駆動される。
【0015】
上部旋回体102上には、オペレータが搭乗するキャブ101が設けられている。キャブ101内には、ブーム2、アーム4、バケット6および上部旋回体102を操作するためのレバー41(
図2に示す)が配置されている。
【0016】
図2は、油圧ショベル100に搭載された油圧システムの概略構成図である。なお、
図2では、ブームシリンダ1およびアームシリンダ3の駆動に関わる部分のみを示し、その他のアクチュエータの駆動に関わる部分は省略している。
【0017】
動力源であるエンジン9は、動力を配分する動力伝達装置10に接続されている。動力伝達装置10には、チャージポンプ11、閉回路ポンプ12、および開回路ポンプ14が接続されている。
【0018】
閉回路ポンプ12は、一対の入出力ポートを持つ両傾転斜板機構と、両傾転斜板の傾斜角を調整するレギュレータ13とを備えている。レギュレータ13は、コントローラ40からの信号により、閉回路ポンプ12の両傾転斜板の傾転角を調整する。閉回路ポンプ12は、傾転斜板の傾転角を調整することにより、一対の入出力ポートからの作動油の吐出方向および吐出流量を制御できる。閉回路ポンプ12は、圧油の供給を受けると油圧モータとしても機能する。
【0019】
開回路ポンプ14は、吐出ポートおよび吸込ポートを持つ片傾転斜板機構と、片傾転斜板の傾斜角を調整するレギュレータ15とを備えている。レギュレータ15は、コントローラ40からの信号により、開回路ポンプ14の片傾転斜板の傾転角を調整する。開回路ポンプ14は、片傾転斜板の傾転角を調整することにより、吐出ポートからの作動油の吐出流量を制御できる。
【0020】
チャージポンプ11は、チャージラインとしての流路212に圧油を供給する。
【0021】
閉回路ポンプ12の一対の入出力ポートには流路200,201が接続され、流路200,201には切替え弁20が接続されている。切替え弁20は、コントローラ40からの信号により、流路の連通と遮断を切り換える。コントローラ40からの信号が無い場合は、切替え弁20は遮断状態である。
【0022】
切替え弁20は、流路210を介してブームシリンダ1のキャップ室1aに接続され、流路211を介してブームシリンダ1のロッド室1bに接続されている。コントローラ40からの信号により切替え弁20が連通状態になると、閉回路ポンプ12は、流路200,201、切替え弁20、および流路210,211を介してブームシリンダ1と接続し、閉回路を構成する。
【0023】
開回路ポンプ14の吸込ポートは、タンク33に接続されている。開回路ポンプ14の吐出ポートは、流路202を介して切替え弁21、およびリリーフ弁25に接続されている。開回路ポンプ14の吐出ポートをタンク33に接続する流路203には、比例弁22が設けられている。
【0024】
リリーフ弁25は、流路圧が所定の圧力以上になったときに、作動油をタンク33に逃がし回路を保護する。
【0025】
切替え弁21は、コントローラ40からの信号により、流路の連通と遮断を切り換える。コントローラ40からの信号が無い場合は、切替え弁21は遮断状態である。
【0026】
切替え弁21は、流路204,210を介してブームシリンダ1のキャップ室1aに接続されている。
【0027】
比例弁22は、コントローラ40からの信号により、開口面積を変化させ、通過流量を制御する。コントローラ40からの信号が無い場合、比例弁22は最大開口面積に保持される。また、切替え弁21が遮断状態の時、コントローラ40は、開回路ポンプ14の吐出流量を最小吐出流量に制御し、この最小吐出流量の作動油がタンク33に排出されるように比例弁22を微小に開口させる。
【0028】
チャージポンプ11の吸込ポートは、タンク33に接続されている。チャージポンプ11の吐出ポートは、チャージライン212を介して、チャージ用リリーフ弁28、およびチャージ用チェック弁30,31に接続されている。
【0029】
チャージ用リリーフ弁28は、チャージ用チェック弁30,31のチャージ圧力を設定する。
【0030】
チャージ用チェック弁30,31は、流路210,211の圧力がチャージ圧力を下回った場合に開弁し、チャージライン212から流路210,211に圧油を補充する。
【0031】
チャージ用チェック弁32は、流路200,201の圧力がタンク圧を下回った場合に開弁し、チャージライン212から流路200,201に作動油を補充する。
【0032】
流路200,201に設けられたリリーフ弁23,24は、流路圧が所定の圧力以上になったときに、作動油をタンク33に逃がし回路を保護する。
【0033】
ブームシリンダ1は、作動油の供給を受けて伸縮作動する片ロッド式油圧シリンダである。ブームシリンダ1の伸縮方向は作動油の供給方向に依存する。
【0034】
流路210,211に設けられたリリーフ弁26,27は、流路圧が所定の圧力以上になったときに、作動油をチャージライン212に逃がし回路を保護する。
【0035】
流路210,211に設けられたフラッシング弁29は、流路内の余剰油をチャージライン212に排出する。
【0036】
レバー41は、オペレータによるレバー操作量をコントローラ40に入力する。
【0037】
温度センサ42は、油圧回路内の作動油の温度(以下、油温)を計測しコントローラ40に入力する。温度センサ42の設置箇所は特に限定されないが、本実施例では、油温が最も低くなると考えられるタンク33に設置している。
【0038】
図3にコントローラ40の機能ブロックを示す。コントローラ40は、動作モード判定部40a、ポンプ割当演算部40b、ポンプ信号出力部40c、切替え弁信号出力部40d、比例弁信号出力部40eから構成される。
【0039】
動作モード判定部40aは、温度センサ42からの情報をもとに動作モード(通常モード、または暖機モード)を判定し、その判定結果に応じた制御信号をポンプ割当演算部40bに入力する。
【0040】
ポンプ割当演算部40bは、レバー41の入力、動作モード判定部40aからの情報をもとに、閉回路ポンプ12と開回路ポンプ14を駆動対象のアクチュエータに割り当て、その割当結果に応じた制御信号をポンプ信号出力部40cに入力する。同時に、各アクチュエータを駆動するための流路を形成するための制御信号を、切替え弁信号出力部40d、および比例弁信号出力部40eに入力する。
【0041】
ポンプ信号出力部40cは、ポンプ割当演算部40bからの制御信号をもとに、レギュレータ13,15に信号を出力する。
【0042】
切替え弁信号出力部40dは、ポンプ割当演算部40bからの制御信号をもとに、切替え弁20,21に信号を出力する。
【0043】
比例弁信号出力部40eは、ポンプ割当演算部40bからの制御信号をもとに、比例弁22に制御信号を出力する。
【0044】
【0045】
コントローラ40は、まず、ステップS101で温度センサ42によりタンク33の油温Tを検出する。続くステップS102で、油温Tが所定の閾値T1よりも低いか否かを判定する。閾値T1については後述する。
【0046】
ステップS102で油温Tが閾値T1よりも低い(YES)と判定した場合は、ステップS103で油圧ショベル100の動作モードを暖機モードに設定し、ステップS104に進む。
【0047】
ステップS104では、閉回路ポンプ12の傾転角をレバー操作量に応じて制御し、切替え弁20を開口させる。続くステップS105で、開回路ポンプ14の傾転角を最小傾転角に制御し、比例弁22を微小に開口させ、切替え弁21を閉口させ、当該フローを終了する。これにより、油温Tが閾値T1よりも低い場合は、閉回路ポンプ12のみでブームシリンダ1が駆動される。その結果、切替え弁21の応答遅れによりブームシリンダ1の作動油が比例弁22を介してタンク33に流出することがないため、ブームシリンダ1の意図しない動作を防止できる。
【0048】
ステップS102で油温Tが閾値T1以上である(NO)と判定した場合は、ステップS106でオペレータによる通常モードへの移行指示があるか否かを判定する。ここで、モード移行指示は、キャブ101内に配置されたスイッチ43(
図2に示す)等の入力手段を介して行われる。
【0049】
ステップS106で通常モードへの移行指示がある(YES)と判定された場合は、ステップS107で動作モードを通常モードに設定する。一方、通常モードへの移行指示がない(NO)と判定された場合はステップS104に進む。これにより、オペレータの許可なく暖機モードから通常モードへの切り替えが実行されることがないため、ブームシリンダ1の操作感が意図せず変化することを防止できる。
【0050】
ステップS107に続き、ステップS108でレバー操作がシリンダ伸ばし操作か否かを判定する。
【0051】
ステップS108でレバー操作がシリンダ伸ばし操作である(YES)と判定された場合は、ステップS109で、閉回路ポンプ12の傾転角をレバー操作量に応じて制御し、切替え弁20を開口させる。続くステップS110で、開回路ポンプ14の傾転角をレバー操作量に応じて制御し、比例弁22を閉口させ、切替え弁21を開口させ、当該フローを終了する。これにより、閉回路ポンプ12および開回路ポンプ14の吐出油がブームシリンダ1のキャップ室1aに供給され、ロッド室1bからの排出油が閉回路ポンプ12に吸収される。
【0052】
ステップS108でレバー操作がシリンダ伸ばし操作ではない(NO)と判定された場合は、ステップS111で、閉回路ポンプ12の傾転角をレバー操作量に応じて制御し、切替え弁20を開口させる。続くステップS112で、開回路ポンプ14の傾転角を最小傾転角に制御し、比例弁22をレバー操作量に応じて閉口させ、切替え弁21を開口させ、当該フローを終了する。これにより、閉回路ポンプ12の吐出油がブームシリンダ1のロッド室に供給され、キャップ室1aからの排出油の一部が閉回路ポンプ12に吸収され、残りの一部が比例弁22を介してタンク33に排出される。
【0053】
図5は、作動油の粘度-温度特性図であり、一般的な作動油の粘度と温度の関係を示している。作動油は、温度が低くなると、粘度が大きくなる。粘度が増大すると、油圧機器の応答性が低下する。本実施例では、作動油の粘度が十分小さくなる温度T1(例えば10℃~30℃)を温度閾値とする。温度閾値T1は、任意に設定できる値であり、ブームシリンダ1等の油圧アクチュエータの動作への影響が小さくなるように、バルブの応答性に合わせて設定される。
【0054】
次に、
図4の制御を実行した場合の動作と実行しなかった場合の動作について説明する。
【0055】
図6Aは、油温が閾値T1より高い状態で
図4の制御を実行した場合(通常モード)の動作結果であり、油温、レバー41の操作量、閉回路ポンプ12の吐出流量、切替え弁20の開口、開回路ポンプ14の吐出流量、切替え弁21の開口、比例弁22の開口の変化を示している。
【0056】
時刻t1にて、ブーム上げのレバー操作が開始される。これに伴い、閉回路ポンプ12の吐出流量が増加する。閉回路ポンプ12とブームシリンダ1間の流路を形成するために、切替え弁20を開口する。また、油圧シリンダの伸長動作であるため、開回路ポンプ14の吐出流量も増加する。開回路ポンプ14とブームシリンダ1間の流路を形成するため、切替え弁21を開口する。比例弁22は、回路内の作動油の流出を防ぐために、閉口状態にする。
【0057】
時刻t2にて、ブーム上げのレバー操作が終了する。これに伴い、閉回路ポンプ12の吐出流量が0になる。開回路ポンプ14の吐出流量は最小吐出流量になり、各ポンプとブームシリンダ1間に設けられる切替え弁20,21を閉口する。比例弁22は、開回路ポンプ14の最小傾転分の作動油を排出するために、開口する。
【0058】
時刻t3にて、ブーム下げのレバー操作が開始される。これに伴い、閉回路ポンプ12の吐出流量が増加する。閉回路ポンプ12とブームシリンダ1間の流路を形成するために、切替え弁20を開口する。また、シリンダ収縮動作であるため、比例弁22を開口するとともに、比例弁22とブームシリンダ1間の流路を形成するために、切替え弁21を開口する。これにより、ブームシリンダ1のキャップ室1aからの作動油がタンク33へ排出されるようになる。
【0059】
時刻t4にて、ブーム下げのレバー操作が終了する。これに伴い、閉回路ポンプ12の吐出流量が0になる。開回路ポンプ14の吐出流量は最小吐出流量になり、各ポンプとブームシリンダ1間に設けられる切替え弁20,21を閉口する。比例弁22は、開回路ポンプ14の最小傾転分の作動油を排出するために、開口状態を保つ。
【0060】
図6Bに、油温が閾値T1より低い状態で
図4の制御を実行しなかった場合の動作結果を示す。
【0061】
時刻t1にて、ブーム上げのレバー操作が開始される。これに伴い、閉回路ポンプ12の吐出流量が増加する。閉回路ポンプ12とブームシリンダ1間の流路を形成するために、切替え弁20を開口する。また、シリンダ伸長動作であるため、開回路ポンプ14の吐出流量も増加する。開回路ポンプ14とブームシリンダ1間の流路を形成するため、切替え弁21を開口する。このとき、油圧回路内の作動油は低温で粘度が高い。そのため、切替え弁20,21の応答性が悪く、暖機終了後と比べて挙動が遅くなる。比例弁22は、回路内の作動油の流出を防ぐために、閉口状態にする。
【0062】
時刻t2にて、ブーム上げのレバー操作が終了する。これに伴い、閉回路ポンプ12の吐出流量が0になる。開回路ポンプ14の吐出流量は最小吐出流量になり、各ポンプとブームシリンダ1間に設けられる切替え弁20,21を閉口する。比例弁22は、開回路ポンプ14の最小傾転分の作動油を排出するために、開口する。油温が低いため、切替え弁20,21の応答性が悪く、要求開口度に対して、挙動が遅くなる。時刻t2では比例弁22も開口する。すなわち、切替え弁21が閉口していない状態で、比例弁22が開口する現象が発生する。このとき、ブームシリンダ1のキャップ室1aとタンク33が連通する状態となるため、ブームシリンダ1のキャップ室1aから作動油が流出し、ブームシリンダ1のストロークが下がり、ブーム2が意図しない動作を行うことになる。
【0063】
時刻t3にて、ブーム下げのレバー操作が開始される。これに伴い、閉回路ポンプ12の吐出流量が増加する。閉回路ポンプ12とブームシリンダ1間の流路を形成するために、切替え弁20を開口する。また、シリンダ収縮動作であるため、比例弁22を開口するとともに、比例弁22とブームシリンダ1間の流路を形成するために、切替え弁21を開口する。これにより、ブームシリンダ1のキャップ室1aからの作動油がタンク33へ排出されるようになる。時刻t3でも油温が低いため、切替え弁20,21の応答性が低下し、暖機終了後と比べて挙動が遅くなる。
【0064】
時刻t4にて、レバー41の操作が終了する。これに伴い、閉回路ポンプ12の吐出流量が0になる。開回路ポンプ14の吐出流量は最小吐出流量になり、各ポンプとブームシリンダ1間に設けられる切替え弁20,21を閉口する。比例弁22は、開回路ポンプ14の最小傾転分の作動油を排出するために、開口状態を保つ。時刻t4でも油温が低いため、切替え弁20,21の応答性が低下し、切替え弁20,21の挙動が暖機終了後と比べて遅くなる。
【0065】
図6Cに、油温が閾値より低い状態で
図4の制御を実行した場合(暖機モード)の動作結果を示す。
【0066】
時刻t1にて、ブーム上げのレバー操作が開始される。この時の油温は閾値T1よりも低い。レバー41の操作量に応じて、閉回路ポンプ12の吐出流量は大きくなる。通常の油圧シリンダの伸長動作では、受圧面積差分の流量を考慮するため、切替え弁21を開口し、開回路ポンプ14からも作動油を吐出するが、油温が閾値T1よりも低いため、開回路ポンプ14の傾転角は最小傾転角に保たれ、切替え弁21は閉口状態である。比例弁22は開口状態であり、開回路ポンプ14の最小吐出流量をタンク33へ排出する。
【0067】
時刻t2にて、ブーム上げのレバー操作が終了する。レバー41の操作の終了に伴い、閉回路ポンプ12の吐出流量も0になる。時刻t1,t2間で油温は上昇するが閾値T1まで上昇していない。
【0068】
時刻t3にて、再びブーム上げのレバー操作が開始され、閉回路ポンプ12の吐出流量が上昇する。
【0069】
通常の油圧シリンダ1の収縮動作では、受圧面積差分の流量を考慮するため、切替え弁21を開口し、比例弁22からタンク33へ作動油を排出するが、油温が閾値T1よりも低いため、切替え弁21は閉口状態であり、比例弁22は開回路ポンプの14の最小吐出流量をタンク33へ排出するために、開口している。
【0070】
時刻t4にて、ブーム下げのレバー操作が終了する。レバー41の操作の終了に伴い、閉回路ポンプ12の吐出流量は減少する。時刻t3,t4間で油温は上昇し閾値T1を上回る。
【0071】
時刻t5にて、再びブーム上げのレバー操作が開始され、閉回路ポンプ12の吐出流量が増加する。時刻t1の時とは異なり、油温が閾値T1まで上昇している。そのため、閉回路ポンプ12から作動油を吐出するのと同時に、開回路ポンプ14からも作動油を吐出する。これに伴い、切替え弁21を開口し、比例弁22は閉口する。
【0072】
時刻t6にて、ブーム上げのレバー操作が終了する。閉回路ポンプ12の吐出流量は0になり、開回路ポンプ14の吐出流量は最小吐出流量になる。切替え弁20,21は、流路を遮断するため、閉口する。比例弁22は、開回路ポンプ14の最小吐出流量をタンク33へ排出するため開口する。
【0073】
本実施例では、作動油を貯留するタンク33と、キャップ室1aおよびロッド室1bを有する片ロッド式の油圧シリンダ1と、油圧シリンダ1に閉回路状に接続された両傾転ポンプからなる閉回路ポンプ12と、片傾転ポンプからなる開回路ポンプ14と、開回路ポンプ14の吐出ポートとキャップ室1aとを接続する流路204の流通と遮断とを切り替えるキャップ側切替え弁21と、開回路ポンプ14の吐出ポートとタンク33とを接続する流路203に設けられ、開口面積をゼロから所定の最大開口面積までの間で調整可能な比例弁22と、油圧シリンダ1の駆動方向および駆動速度を指示するための操作装置41と、操作装置41を介して指示された油圧シリンダ1の駆動方向が伸長方向である場合に、キャップ側切替え弁21を開きかつ比例弁22を閉じた状態で、操作装置41の操作量に応じて閉回路ポンプ12および開回路ポンプ14の吐出流量を制御し、操作装置41を介して指示された油圧シリンダ1の駆動方向が収縮方向である場合に、キャップ側切替え弁21を開いた状態で、操作装置41の操作量に応じて閉回路ポンプ12の吐出流量および比例弁22の開口面積を制御するコントローラ40とを備えた建設機械100において、前記作動油の温度Tを検出する温度センサ42を備え、コントローラ40は、温度センサ42で検出された前記作動油の温度Tが所定の温度T1よりも低い場合に、キャップ側切替え弁21を閉じた状態で、操作装置41の操作方向に応じて閉回路ポンプ12の吐出方向を制御し、操作装置41の操作量に応じて閉回路ポンプ12の吐出流量を制御する。
【0074】
以上のように構成した本実施例によれば、閉回路ポンプ12と開回路ポンプ14とで油圧シリンダ1を駆動する油圧閉回路システムにおいて、油温が閾値T1より低い場合は、キャップ側切替え弁21が閉弁状態に維持され、油圧シリンダ1が閉回路ポンプ12のみによって駆動されるため、低温環境下でのキャップ側切替え弁21の応答遅れによる油圧シリンダ1の意図しない動作を防止することが可能となる。
【0075】
また、本実施例では、温度センサ42を油温が最も低くなると考えられるタンク33に設けている。これにより、暖機終了を確実に判定することが可能となる。
【実施例2】
【0076】
本発明の第2の実施例に係る油圧ショベルについて、第1の実施例との相違点を中心に説明する。
【0077】
図7は、本実施例における油圧システムの概略構成図である。なお、
図7では、ブームシリンダ1およびアームシリンダ3の駆動に関わる部分のみを示し、その他のアクチュエータの駆動に関わる部分は省略している。
【0078】
動力源であるエンジン9は、動力を配分する動力伝達装置10に接続されている。動力伝達装置10には、チャージポンプ11、閉回路ポンプ12a,12b、および開回路ポンプ14a,14bが接続されている。
【0079】
閉回路ポンプ12a,12bは、一対の入出力ポートを持つ両傾転斜板機構と、両傾転斜板の傾斜角を調整するレギュレータ13a,13bとを備えている。レギュレータ13a,13bは、コントローラ40Aからの信号により、閉回路ポンプ12a,12bの両傾転斜板の傾転角を調整する。閉回路ポンプ12a,12bは、傾転斜板の傾転角を調整することにより、一対の入出力ポートからの作動油の吐出方向および吐出流量を制御できる。閉回路ポンプ12a,12bは、圧油の供給を受けると油圧モータとしても機能する。
【0080】
開回路ポンプ14a,14bは、吐出ポートおよび吸込ポートを持つ片傾転斜板機構と、片傾転斜板の傾斜角を調整するレギュレータ15a,15bとを備えている。レギュレータ15a,15bは、コントローラ40Aからの信号により、開回路ポンプ14a,14bの片傾転斜板の傾転角を調整する。開回路ポンプ14a,14bは、片傾転斜板の傾転角を調整することにより、吐出ポートからの作動油の吐出流量を制御できる。
【0081】
チャージポンプ11は、チャージラインとしての流路340に圧油を供給する。
【0082】
閉回路ポンプ12aの一対の入出力ポートには流路300,301が接続され、流路300,301には切替え弁20a,20bが接続されている。切替え弁20a,20bは、コントローラ40Aからの信号により、流路の連通と遮断を切り換える。コントローラ40Aからの信号が無い場合は、切替え弁20a,20bは遮断状態である。
【0083】
切替え弁20aは、流路310,336を介してブームシリンダ1のキャップ室1aに接続され、流路311,337を介してブームシリンダ1のロッド室1bに接続されている。コントローラ40Aからの信号により切替え弁20aが連通状態になると、閉回路ポンプ12aは、流路300,301、切替え弁20a、流路310,311、および流路336,337を介してブームシリンダ1と接続し、閉回路を構成する。
【0084】
切替え弁20bは、流路312,338を介してアームシリンダ3のキャップ室3aに接続され、流路313,339を介してアームシリンダ3のロッド室3bに接続されている。コントローラ40Aからの信号により切替え弁20bが連通状態になると、閉回路ポンプ12aは、流路300,301、切替え弁20b、流路312,313、および流路338,339を介してアームシリンダ3と接続し、閉回路を構成する。
【0085】
閉回路ポンプ12bの一対の入出力ポートには流路302,303が接続され、流路302,303には切替え弁20c,20dが接続されている。切替え弁20c,20dは、コントローラ40Aからの信号により、流路の連通と遮断を切り換える。コントローラ40Aからの信号が無い場合は、切替え弁20c,20dは遮断状態である。
【0086】
切替え弁20cは、流路314,336を介してブームシリンダ1のキャップ室1aに接続され、流路315,337を介してブームシリンダ1のロッド室1bに接続されている。コントローラ40Aからの信号により切替え弁20cが連通状態になると、閉回路ポンプ12bは、流路302,303、切替え弁20c、流路314,315、および流路336,337を介してブームシリンダ1と接続し、閉回路を構成する。
【0087】
切替え弁20dは、流路316,338を介してアームシリンダ3のキャップ室3aに接続され、流路317,339を介してアームシリンダ3のロッド室3bに接続されている。コントローラ40Aからの信号により切替え弁20dが連通状態になると、閉回路ポンプ12bは、流路302,303、切替え弁20d、流路316,317、および流路338,339を介してアームシリンダ3と接続し、閉回路を構成する。
【0088】
開回路ポンプ14aの吸込ポートは、タンク33に接続されている。開回路ポンプ14aの吐出ポートは、流路330を介して切替え弁21a,21b、およびリリーフ弁25aに接続されている。開回路ポンプ14aの吐出ポートをタンク33に接続する流路341には、比例弁22aが設けられている。
【0089】
リリーフ弁25aは、流路圧が所定の圧力以上になったときに、作動油をタンク33に逃がし回路を保護する。
【0090】
切替え弁21a,21bは、コントローラ40Aからの信号により、流路の連通と遮断を切り換える。コントローラ40Aからの信号が無い場合は、切替え弁21a,21bは遮断状態である。
【0091】
切替え弁21aは、流路332,336を介してブームシリンダ1のキャップ室1aに接続されている。
【0092】
切替え弁21bは、流路333,338を介してアームシリンダ3のキャップ室3aに接続されている。
【0093】
比例弁22aは、コントローラ40Aからの信号により、開口面積を変化させ、通過流量を制御する。コントローラ40Aからの信号が無い場合、比例弁22aは最大開口面積に保持される。また、切替え弁21a,21bが遮断状態の時、コントローラ40Aは、開回路ポンプ14aの吐出流量を最小吐出流量に制御し、この最小吐出流量の作動油がタンク33に排出されるように比例弁22aを微小に開口する。
【0094】
開回路ポンプ14bの吸込ポートは、タンク33に接続されている。開回路ポンプ14bの吐出ポートは、流路330を介して切替え弁21c,21d、およびリリーフ弁25bに接続されている。開回路ポンプ14bの吐出ポートをタンク33に接続する流路342には、比例弁22bが設けられている。
【0095】
リリーフ弁25bは、流路圧が所定の圧力以上になったときに、作動油をタンク33に逃がし回路を保護する。
【0096】
切替え弁21c,21dは、コントローラ40Aからの信号により、流路の連通と遮断を切り換える。コントローラ40Aからの信号が無い場合は、切替え弁21c,21dは遮断状態である。
【0097】
切替え弁21cは、流路334,336を介してブームシリンダ1のキャップ室1aに接続されている。
【0098】
切替え弁21dは、流路335,338を介してアームシリンダ3のキャップ室3aに接続されている。
【0099】
比例弁22bは、コントローラ40Aからの信号により、開口面積を変化させ、通過流量を制御する。コントローラ40Aからの信号が無い場合、比例弁22bは最大開口面積に保持される。また、切替え弁21c,21dが遮断状態の時、コントローラ40Aは、開回路ポンプ14bの吐出流量を最小吐出流量に制御し、この最小吐出流量の作動油がタンク33に排出されるように比例弁22bを微小に開口する。
【0100】
チャージポンプ11の吸込ポートは、タンク33に接続されている。チャージポンプ11の吐出ポートは、チャージライン340を介して、チャージ用リリーフ弁28、およびチャージ用チェック弁30a,31a,30b,31b,32a,32bに接続されている。
【0101】
チャージ用リリーフ弁28は、チャージ用チェック弁30a,31a,30b,31b,32a,32bのチャージ圧力を設定する。
【0102】
チャージ用チェック弁30a,31aは、流路336,337の圧力がチャージ圧力を下回った場合に開弁し、チャージライン340から流路336,337に圧油を補充する。
【0103】
チャージ用チェック弁30b,31bは、流路338,339の圧力がチャージ圧力を下回った場合に開弁し、チャージライン340から流路338,339に圧油を補充する。
【0104】
チャージ用チェック弁32aは、流路300,301の圧力がチャージ圧力を下回った場合に開弁し、チャージライン340から流路300,301に圧油を補充する。
【0105】
チャージ用チェック弁32bは、流路302,303の圧力がチャージ圧力を下回った場合に開弁し、チャージライン340から流路302,303に圧油を補充する。
【0106】
流路300,301に設けられたリリーフ弁23a,24aは、流路圧が所定の圧力以上になったときに、作動油をチャージライン340に逃がし回路を保護する。
【0107】
流路302,303に設けられたリリーフ弁23b,24bは、流路圧が所定の圧力以上になったときに、作動油をチャージライン340に逃がし回路を保護する。
【0108】
ブームシリンダ1は、作動油の供給を受けて伸縮作動する片ロッド式油圧シリンダである。ブームシリンダ1の伸縮方向は作動油の供給方向に依存する。
【0109】
流路336,337に設けられたリリーフ弁26a,27aは、流路圧が所定の圧力以上になったときに、作動油をチャージライン340に逃がし回路を保護する。
【0110】
流路336,337に設けられたフラッシング弁29aは、流路内の余剰油をチャージライン340に排出する。
【0111】
アームシリンダ3は、作動油の供給を受けて伸縮作動する片ロッド式油圧シリンダである。アームシリンダ3の伸縮方向は作動油の供給方向に依存する。
【0112】
流路338,339に設けられたリリーフ弁26b,27bは、流路圧が所定の圧力以上になったときに、作動油をチャージライン340に逃がし回路を保護する。
【0113】
流路338,339に設けられたフラッシング弁29bは、流路内の余剰油をチャージライン340に排出する。
【0114】
【0115】
コントローラ40Aは、まず、ステップS201で温度センサ42によりタンク33の油温Tを検出する。続くステップS202で、油温Tが所定の閾値T1よりも低いか否かを判定する。
【0116】
ステップS202で油温Tが閾値T1よりも低い(YES)と判定した場合は、ステップS203で油圧ショベル100の動作モードを暖機モードに設定し、続くステップS204で、レバー操作がブーム操作を含むか否かを判定する。
【0117】
ステップS204でレバー操作がブーム操作を含む(YES)と判定した場合はステップS205で、閉回路ポンプ12aの傾転角をレバー操作量に応じて制御し、切替え弁20aを開口させる。続くステップS206で、開回路ポンプ14aの傾転角を最小傾転角に制御し、比例弁22aを微小に開口させ、切替え弁21aを閉口させ、当該フローを終了する。これにより、ブームシリンダ1は閉回路ポンプ12aだけで駆動される。
【0118】
ステップS204でレバー操作がブーム操作を含まない(NO)と判定した場合は、ステップS207で、レバー操作がアーム操作を含むか否かを判定する。
【0119】
ステップS207でレバー操作がアーム操作を含む(YES)と判定した場合は、ステップS208で、閉回路ポンプ12bの傾転角をレバー操作量に応じて制御し、切替え弁20dを開口させる。続くステップS209で、開回路ポンプ14bの傾転角を最小傾転角に制御し、比例弁22bを微小に開口させ、切替え弁21dを閉口させ、当該フローを終了する。これにより、アームシリンダ1は閉回路ポンプ12bだけで駆動される。
【0120】
ステップS207でレバー操作がアーム操作を含まない(NO)と判定した場合は当該フローを終了する。
【0121】
ステップS202で油温Tが閾値T1以上である(NO)と判定した場合は、ステップS210で動作モードを通常モードに設定し、続くステップS211で、レバー操作がブーム単独操作であるか否かを判定する。
【0122】
ステップS211でレバー操作がブーム単独操作である(YES)と判定した場合は、ステップS212で、レバー操作がシリンダ伸ばし操作であるか否かを判定する。
【0123】
ステップS212でレバー操作がシリンダ伸ばし操作である(YES)と判定された場合は、ステップS213で、閉回路ポンプ12a,12bの傾転角をレバー操作量に応じて制御し、切替え弁20a,20cを開口させる。続くステップS214で、開回路ポンプ14a,14bの傾転角をレバー操作量に応じて制御し、比例弁22a,22bを閉口させ、切替え弁21a,21cを開口させ、当該フローを終了する。これにより、閉回路ポンプ12a,12bおよび開回路ポンプ14a,14bの吐出油がブームシリンダ1のキャップ室1aに供給され、ロッド室1bからの排出油が閉回路ポンプ12a,12bに吸収される。
【0124】
ステップS212でレバー操作がシリンダ伸ばし操作ではない(NO)と判定された場合は、ステップS215で、閉回路ポンプ12a,12bの傾転角をレバー操作量に応じて制御し、切替え弁20a,20cを開口させる。続くステップS216で、開回路ポンプ14a,14bの傾転角を最小傾転角に制御し、比例弁22a,22bをレバー操作量に応じて開口させ、切替え弁21a,21cを開口させ、当該フローを終了する。これにより、閉回路ポンプ12a,12bの吐出油がブームシリンダ1のロッド室1bに供給され、キャップ室1aからの排出油の一部が閉回路ポンプ12a,12bに吸収され、残りの一部が比例弁22a,22bを介してタンク33に排出される。
【0125】
ステップS211でレバー操作がブーム単独操作ではない(NO)と判定された場合は、ステップS217でレバー操作がアーム単独操作であるか否かを判定する。
【0126】
ステップS217でレバー操作がアーム単独操作である(YES)と判定された場合は、ステップS218でレバー操作がアーム伸ばし操作であるか否かを判定する。
【0127】
ステップS218でレバー操作がアーム伸ばし操作である(YES)と判定された場合は、ステップS219で、閉回路ポンプ12a,12bの傾転角をレバー操作量に応じて制御し、切替え弁20b,20dを開口させる。続くステップS220で、開回路ポンプ14a,14bの傾転角を最小傾転角に制御し、比例弁22a,22bを閉口させ、切替え弁21b,21dを開口させ、当該フローを終了する。これにより、閉回路ポンプ12a,12bおよび開回路ポンプ14a,14bの吐出油がアームシリンダ3のキャップ室3aに供給され、ロッド室3bからの排出油が閉回路ポンプ12a,12bに吸収される。
【0128】
ステップS218でレバー操作がアーム伸ばし操作ではない(NO)と判定された場合は、ステップS221で、閉回路ポンプ12a,12bの傾転角をレバー操作量に応じて制御し、切替え弁20b,20dを開口させる。続くステップS222で、開回路ポンプ14a,14bの傾転角を最小傾転角に制御し、比例弁22a,22bをレバー操作量に応じて開口させ、切替え弁21b,21dを開口させ、当該フローを終了する。これにより、閉回路ポンプ12a,12bの吐出油がアームシリンダ3のロッド室3bに供給され、キャップ室3aからの排出油の一部が閉回路ポンプ12a,12bに吸収され、残りの一部が比例弁22a,22bを介してタンク33に排出される。
【0129】
ステップS217でアーム単独操作ではない(NO)と判定された場合は、ステップS223で、レバー操作が複数のアクチュエータを駆動する操作(複合操作)であるか否かを判定する。
【0130】
ステップS223でレバー操作が複合操作である(YES)と判定された場合は、ステップS224でレバー操作がブーム伸ばし操作かつアーム伸ばし操作であるか否かを判定する。
【0131】
ステップS224でレバー操作がブーム伸ばし操作かつアーム伸ばし操作である(YES)と判定された場合は、ステップS225で、閉回路ポンプ12a,12bの傾転角をレバー操作量に応じて制御し、切替え弁20a,20dを開口させる。続くステップS226で、開回路ポンプ14aの傾転角をレバー操作量に応じて制御し、比例弁22a,22bを閉口させ、切替え弁21a,21dを開口させ、当該フローを終了する。これにより、閉回路ポンプ12aおよび開回路ポンプ14aの吐出油がブームシリンダ1のキャップ室1aに供給され、ロッド室1bからの排出油が閉回路ポンプ12aに吸収される。また、閉回路ポンプ12bおよび開回路ポンプ14bの吐出油がアームシリンダ3のキャップ室3aに供給され、ロッド室3bからの排出油が閉回路ポンプ12bに吸収される。
【0132】
ステップS224でレバー操作がブーム伸ばし操作かつアーム伸ばし操作ではない(NO)と判定された場合は、ステップS227でレバー操作がブーム伸ばし操作かつアーム縮め操作であるか否かを判定する。
【0133】
ステップS227でレバー操作がブーム伸ばし操作かつアーム縮め操作である(YES)と判定された場合は、ステップS228で、閉回路ポンプ12a,12bの傾転角をレバー操作量に応じて制御し、切替え弁20a,20dを開口させる。続くステップS229で、開回路ポンプ14aの傾転角をレバー操作量に応じて制御し、比例弁22aを閉口させ、切替え弁21aを開口させ、開回路ポンプ14bの傾転角を最小傾転角に制御し、比例弁22bをレバー操作量に応じて開口させ、切替え弁21dを開口させ、当該フローを終了する。これにより、閉回路ポンプ12aおよび開回路ポンプ14aの吐出油がブームシリンダ1のキャップ室1aに供給され、ロッド室1bからの排出油が閉回路ポンプ12aに吸収される。また、閉回路ポンプ12bの吐出油がアームシリンダ3のロッド室3bに供給され、キャップ室3aからの排出油の一部が閉回路ポンプ12bに吸収され、残りの一部が比例弁22bを介してタンク33に排出される。
【0134】
ステップS227でレバー操作がブーム伸ばし操作かつアーム縮め操作ではない(NO)と判定された場合は、ステップS230でレバー操作がブーム縮め操作かつアーム伸ばし操作であるか否かを判定する。
【0135】
ステップS230でレバー操作がブーム縮め操作かつアーム伸ばし操作である(YES)と判定された場合は、ステップS231で、閉回路ポンプ12a,12bの傾転角をレバー操作量に応じて制御し、切替え弁20a,20dを開口させる。続くステップS232で、開回路ポンプ14aの傾転角を最小傾転角に制御し、比例弁22aをレバー操作量に応じて開口させ、切替え弁21aを開口させ、開回路ポンプ14bの傾転角をレバー操作量に応じて制御し、比例弁22bを閉口させ、切替え弁21dを開口させ、当該フローを終了する。これにより、閉回路ポンプ12aの吐出油がブームシリンダ1のロッド室1bに供給され、キャップ室1aからの排出油の一部が閉回路ポンプ12aに吸収され、残りの一部が比例弁22aを介してタンク33に排出される。また、閉回路ポンプ12bおよび開回路ポンプ14bの吐出油がアームシリンダ3のキャップ室3aに供給され、ロッド室3bからの排出油が閉回路ポンプ12bに吸収される。
【0136】
ステップS230でレバー操作がブーム縮め操作かつアーム伸ばし操作ではない(NO)と判定された場合は、ステップS233でレバー操作がブーム縮め操作かつアーム縮め操作であるか否かを判定する。
【0137】
ステップS233でレバー操作がブーム縮め操作かつアーム縮め操作である(YES)と判定された場合は、ステップS234で、閉回路ポンプ12a,12bの傾転角をレバー操作量に応じて制御し、切替え弁20a,20dを開口させる。続くステップS235で、開回路ポンプ14a,14bの傾転角を最小傾転角に制御し、比例弁22a,22bをレバー操作量に応じて開口させ、切替え弁21a,21dを開口させ、当該フローを終了する。これにより、閉回路ポンプ12aの吐出油がブームシリンダ1のロッド室1bに供給され、キャップ室1aからの排出油の一部が閉回路ポンプ12aに吸収され、残りの一部が比例弁22aを介してタンク33に排出される。また、閉回路ポンプ12bの吐出油がアームシリンダ3のロッド室3bに供給され、キャップ室3aからの排出油の一部が閉回路ポンプ12bに吸収され、残りの一部が比例弁22bを介してタンク33に排出される。
【0138】
ステップS233でレバー操作がブーム縮め操作かつアーム縮め操作ではない(NO)と判定された場合、または、ステップS223でレバー操作が複合操作ではない(NO)と判定された場合は、当該フローを終了する。
【0139】
次に、
図8A~
図8Cの制御を実行した場合の動作と実行しなかった場合の動作を説明する。
【0140】
図9Aに、油温が閾値T1より高い状態で
図8A~
図8Cの制御を実行した場合の動作結果を示す。
【0141】
時刻t1にて、ブーム上げのレバー操作が開始される。これに伴い、閉回路ポンプ12a,12bの吐出流量が増加する。閉回路ポンプ12a,12bとブームシリンダ1間の流路を形成するために、切替え弁20a,20cを開口する。また、シリンダ伸長動作であるため、開回路ポンプ14a,14bの吐出流量も増加する。開回路ポンプ14a,14bとブームシリンダ1間の流路を形成するため、切替え弁21a,21cを開口する。比例弁22a,22bは、回路内の作動油の流出を防ぐために、閉口状態にする。
【0142】
時刻t2にて、アームクラウドのレバー操作が開始される。この時、閉回路ポンプおよび開回路ポンプは全てブームシリンダ1に接続されているため、閉回路ポンプ12bおよび開回路ポンプ14bをアームシリンダ3に接続するために、閉回路ポンプ12bの吐出流量を0にし、開回路ポンプ14bの吐出流量を最小吐出流量にし、切替え弁20c,21cを閉口する。
【0143】
時刻t3にて、比例弁22bは、開回路ポンプ14bの最小吐出流量をタンク33へ排出するため開口する。その後、アームシリンダ3を駆動するため、閉回路ポンプ12bの吐出流量を増加し、閉回路ポンプ12bとアームシリンダ3間の流路を形成するために、切替え弁20dを開口する。シリンダ伸長動作であるため、開回路ポンプ14bの吐出流量を増加し、開回路ポンプ14bとアームシリンダ3間の流路を形成するため、切替え弁21dを開口し、比例弁22bを閉口する。
【0144】
時刻t4にて、ブーム上げのレバー操作が終了する。これに伴い、閉回路ポンプ12aの吐出流量を0にし、切替え弁20aを閉口する。また、開回路ポンプ14aの吐出流量を最小吐出流量にし、切替え弁21aを閉口し、比例弁22aを開口する。アームクラウドのレバー操作が継続しているため、閉回路ポンプ12aの吐出流量を増加し、切替え弁20bを開口する。シリンダ伸長動作であるため、開回路ポンプ14aの吐出流量を増加し、切替え弁21bを開口し,比例弁22aを閉口する。
【0145】
時刻t5にて、アームクラウドのレバー操作が終了する。これに伴い、閉回路ポンプ12a,12bの吐出流量を0にし、切替え弁20b,20dを閉口する。開回路ポンプ14a,14bの吐出流量を最小吐出流量にし、切替え弁21b,21dを閉口する。比例弁22a,22bは、開回路ポンプ14a,14bの最小吐出流量をタンク33へ排出するため開口する。
【0146】
以上の制御により、単独操作、複合操作時に、閉回路ポンプ、開回路ポンプを最大限使用して、油圧ショベル100を動作させることが可能となる。
【0147】
図9Bに、油温が閾値T1より低い状態で
図8A~
図8Cの制御を実行しなかった場合の動作結果を示す。
【0148】
時刻t1にて、ブーム上げのレバー操作が開始される。これに伴い、閉回路ポンプ12a,12bの吐出流量が増加する。閉回路ポンプ12a,12bとブームシリンダ1間の流路を形成するために、切替え弁20a,20cを開口する。このとき、油圧回路内の作動油は低温で粘度が高い。そのため、切替え弁20a,20cの応答性が低下し、暖機終了後と比べて切替え弁20a,20cの挙動が遅くなる。また、シリンダ伸長動作であるため、開回路ポンプ14a,14bの吐出流量も増加する。開回路ポンプ14a,14bとブームシリンダ1間の流路を形成するため、切替え弁21a,21cを開口する。切替え弁21a,21cは、作動油が低温で粘度が高いため応答性が低下し、暖機終了後と比べて挙動が遅くなる。比例弁22a,22bから回路内の作動油が流出するのを防ぐために、比例弁22a,22bは閉口にする。
【0149】
時刻t2にて、アームクラウドのレバー操作が開始される。このとき、閉回路ポンプおよび開回路ポンプは全てブームシリンダ1に接続されているため、閉回路ポンプ12bおよび開回路ポンプ14bをアームシリンダ3に接続するために、閉回路ポンプ12bの吐出流量を0にし、開回路ポンプ14bの吐出流量を最小吐出流量にし、切替え弁20c,21cを閉口する。このとき、作動油は低温で粘度が高いため、切替え弁20c,21cの挙動が暖機終了後と比べて遅くなる。
【0150】
時刻t3にて、比例弁22bは、開回路ポンプ14bの最小吐出流量をタンク33へ排出するため開口する。しかし、切替え弁21cが完全に閉じきっていないため、ブームシリンダ1のキャップ室1aから比例弁22bを介してタンク33へ作動油が流出し、ブームシリンダ1が意図しない動作を行ってしまう。
【0151】
時刻t3では、アームシリンダ3を駆動するため、閉回路ポンプ12bの吐出流量を増加し、閉回路ポンプ12bとアームシリンダ3間の流路を形成するために、切替え弁20dを開口する。シリンダ伸長動作であるため、開回路ポンプ14bの吐出流量を増加し、開回路ポンプ14bとアームシリンダ3間の流路を形成するため、切替え弁21dを開口する。このとき、切替え弁20c,20d,21c,21dの応答性が悪く、ブームシリンダ1とアームシリンダ3が連通する。これにより、ブームシリンダ1の圧力がアームシリンダ3の圧力よりも高い場合、ブームシリンダ1からアームシリンダ3へ作動油が流入する。ブームシリンダ1はストローク量が減少し、アームシリンダ3はストローク量が増加し、意図しない動作を行ってしまう。
【0152】
時刻t4にて、比例弁22bからタンク33へ作動油が流出することを防ぐために、比例弁22bを閉口する。切替え弁20c,21cが閉口状態になることで、ブームシリンダ1とアームシリンダ3が連通しなくなり、意図しないシリンダストローク量の増減がなくなる。
【0153】
時刻t5にて、ブーム上げのレバー操作が終了する。これに伴い、閉回路ポンプ12aの吐出流量を0にし、切替え弁20aを閉口する。また、開回路ポンプ14aの吐出流量を最小吐出流量にし、切替え弁21aを閉口し、比例弁22aを開口する。作動油は温度が低く粘度が高いため、切替え弁20a,21aの挙動が暖機終了後と比べて遅くなり、時刻t5’で切替え弁20a,21aは閉口する。切替え弁20a,21aが閉口する前に、比例弁22aが開口することにより、ブームシリンダ1のキャップ室1aから比例弁22aを介してタンク33へ作動油が流出し、ブームシリンダ1が意図しない動作を行ってしまう。
【0154】
時刻t5では、アームクラウド操作が継続しているため、閉回路ポンプ12aは、アームシリンダ3に接続するように制御される。切替え弁21bが開口し、閉回路ポンプ12aとアームシリンダ3とが接続される。
【0155】
時刻t6にて、アームクラウドのレバー操作が終了し、閉回路ポンプ12a,12bの吐出流量が減少し、切替え弁20b,20dは閉口する。開回路ポンプ14a,14bの吐出流量は最小吐出流量になり、切替え弁21c,21dは閉口する。比例弁22a,22bは、開回路ポンプ14a,14bの最小吐出流量をタンク33へ排出するため開口する。作動油は温度が低く粘度が高いため、切替え弁20b,21dの挙動が暖機終了後と比べて遅くなり、時刻t6’で切替え弁20b,21dが閉口する前に、比例弁22a,22bが開口してしまう。その結果、アームシリンダ3のキャップ室3aから比例弁22a,22bを介してタンク33へ作動油が流出し、ブームシリンダ3が意図しない動作を行ってしまう。
【0156】
図9Cに、油温が閾値T1より低い状態で
図8A~
図8Cの制御を実行した場合の動作結果を示す。
【0157】
時刻t1にて、ブーム上げのレバー操作が開始される。これに伴い、閉回路ポンプ12aの吐出流量が上昇する。閉回路ポンプ12aとブームシリンダ1を接続するため、切替え弁20aを開口する。油温は閾値T1以下であるため、開回路ポンプ14aは最小吐出流量、切替え弁21a,21bは閉口状態であり、比例弁22aは開口状態である。
【0158】
時刻t2にて、アームクラウドのレバー操作が開始される。これに伴い,閉回路ポンプ12bの吐出流量が上昇する。閉回路ポンプ12bとアームシリンダ3を接続するため,切替え弁20dを開口する。油温は閾値T1以下であるため、開回路ポンプ14bの吐出流量は最小吐出流量、切替え弁21c,21dは閉口状態であり、比例弁22bは開口状態である。
【0159】
時刻t3にて、ブーム上げのレバー操作が終了する。これに伴い、閉回路ポンプの吐出流量は減少し、切替え弁20aを閉口する。
【0160】
時刻t4にて、アームクラウドのレバー操作が終了し、閉回路ポンプ12bの吐出流量が減少し,切替え弁20dを閉口する。
【0161】
本実施例に係る建設機械100は、複数の閉回路ポンプ12a,12bと、複数のアクチュエータ1,3と、複数の閉回路ポンプ12a,12bを複数のアクチュエータ1,3に閉回路状に接続する複数の閉回路切替え弁20a~20dとを備え、コントローラ40Aは、温度センサ42で検出された作動油の温度が所定の温度T1よりも低い場合に、複数の閉回路ポンプ12a,12bのそれぞれが複数のアクチュエータ1,3のいずれか1つに限定して接続されるように複数の閉回路切替え弁20a~20dを開閉制御する。
【0162】
具体的には、閉回路ポンプ12aに接続されている2以上の閉回路切替え弁20a,20bのうちいずれか1つ(閉回路切替え弁20a)のみを開くことにより、閉回路ポンプ12aをブームシリンダ1に限定して接続し、閉回路ポンプ12bに接続されている2以上の閉回路切替え弁20c,20dのうちいずれか1つ(閉回路切替え弁20d)のみを開くことにより、閉回路ポンプ12bをアームシリンダ3に限定して接続する。
【0163】
以上のように構成した本実施例によれば、複数の閉回路ポンプ12a,12bと複数の開回路ポンプ14a,14bとで複数のアクチュエータ1,3を駆動する油圧閉回路システムにおいて、タンク33内の油温Tが閾値T1より低い場合に、複数の油圧シリンダ1,3が閉回路ポンプ12a,12bのみで駆動されると共に、複数のアクチュエータ1,3に対する閉回路ポンプ12a,12bの繋ぎかえが発生しないため、キャップ側切替え弁21a~21dおよび閉回路切替え弁20a~20dの応答遅れによる油圧シリンダ1,3の意図しない動作を防止することができる。
【0164】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。さらに、ある実施例の構成に他の実施例の構成の一部を加えることも可能であり、ある実施例の構成の一部を削除し、あるいは、他の実施例の一部と置き換えることも可能である。
【符号の説明】
【0165】
1…ブームシリンダ(油圧シリンダ)、1a…キャップ室、1b…ロッド室、2…ブーム、3…アームシリンダ(油圧シリンダ)、3a…キャップ室、3b…ロッド室、4…アーム、5…バケットシリンダ、6…バケット、7…旋回モータ、8…走行装置、10…動力伝達装置、11…チャージポンプ、12,12a,12b…閉回路ポンプ、13,13a,13b…レギュレータ、14,14a,14b…開回路ポンプ、15,15a,15b…レギュレータ、20,20a~20d…閉回路切替え弁、21,21a~21d…キャップ側切替え弁、22,22a,22b…比例弁、23,23a,23b,24,24a,24b,25,25a,25b,26,26a,26b,27,27a,27b…リリーフ弁、29,29a,29b…フラッシング弁、30,30a,30b,31,31a,31b,32,32a,32b…チャージ用チェック弁、33…タンク、40…コントローラ、40a…動作モード判定部、40b…ポンプ割当演算部、40c…ポンプ信号出力部、40d…切替え弁信号出力部、40e…比例弁信号出力部、41…レバー(操作装置)、42…温度センサ、43…スイッチ、100…油圧ショベル(建設機械)、101…キャブ、102…上部旋回体(車体)、103…下部走行体、104…フロント作業機、200~203,210~212,300~303,310,311~317,330~342…流路。