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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】球形マーカー検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20230111BHJP
   G06T 7/521 20170101ALI20230111BHJP
【FI】
G01C15/00 103Z
G06T7/521
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019037057
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020139891
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】599157284
【氏名又は名称】クモノスコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】下村 孝久
【審査官】飯村 悠斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-239747(JP,A)
【文献】特表2009-536731(JP,A)
【文献】特開2010-250743(JP,A)
【文献】特開2017-100202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
G01B 11/00-11/30
G06T 7/521
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元レーザー光走査装置による測量において使用される球形マーカーの検出方法であって、
球形マーカー形状入力ステップと、
点群データ取得ステップと、
前記点群データ取得ステップで取得した点群データのダウンサンプリングを行うダウンサンプリングステップと、
前記ダウンサンプリングステップで生成された点群データに基づいて反射値画像を作成する反射値画像作成ステップと、
複数の閾値によって複数の二値化された二値化反射値画像を生成する二値化反射値画像生成ステップと、
前記複数の二値化された反射値画像から円を検出する円検出ステップと、
前記円検出ステップで検出された複数の円の重畳または同一を判定する円判定ステップと、
円判定ステップによって円と判定された有効円について円の形状解析を行う円解析ステップと、
前記円解析ステップによって得られた円の形状情報の中から前記球形マーカー形状入力ステップで入力された球形マーカーの形状と一致するものを球形マーカーとして認識する球形マーカー認識ステップと、
を実行し、
前記円解析ステップにおいて、RANSAC処理、LMedS処理、最小二乗法による処理、の順番に処理を行うこと、を特徴とする検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法を用いて球形マーカーを検出する三次元レーザー光走査装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元レーザー光走査装置を用いた測量においてスフィア(球形マーカー)を効率良く検出する方法、およびこれを用いた三次元レーザー光走査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
三次元レーザー光走査装置を用いた測量においてマーカーとよばれる特定形状の物体を測量対象領域に配置して座標上の特定点と扱う。マーカーには色々な種類が有り、平板状のものに市松模様を施したものや、特殊な形状としているものなどがある。
特殊な形状としているものの一例として先行技術文献のようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-184078公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の特定形状のマーカーは形状の特徴が見る角度によって異なるため三次元レーザー光走査装置が認識する上では方位指向性がある。これに対しスフィアはどの方向から見ても球であるためマーカーとしては扱いやすい。このため、マーカーとしてスフィアが歓迎される。
【0005】
ところが、測量対象領域にスフィア以外の球状物体(完全な球面でなくても球面の一部に類似する形状も含む)が存在すると、従来の手法ではスフィアであると誤認識してしまい意図した測量結果が得られないことがある(以降、このようなスフィアでは無いのにもかかわらずスフィアと誤認識される球状物体を偽スフィアとする)。
【0006】
このため、点群データを取得した後に手作業で偽スフィアを除去しなくてはならない。
あるいは事前にスフィアが存在する座標を大まかに設定してそれ以外の座標に存在する偽スフィアをフィルターリングできるようにするなどの作業が必要になる。
どちらにしても偽スフィアを除去するために必要な工数は効率の良い測量作業の妨げとなっていた。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、解決策としてスフィア検出のアルゴリズムを改良して処理を行うことが有用であることを見出し、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の問題を解決すべく本発明が成された。
本発明の三次元レーザー光走査装置による測量において使用される球形マーカーの検出方法は、
「球形マーカー形状入力ステップと、
点群データ取得ステップと、
点群データ取得ステップで取得した点群データのダウンサンプリングを行うダウンサンプリングステップと、
ダウンサンプリングステップで生成された点群データに基づいて反射値画像を作成する反射値画像作成ステップと、
複数の閾値によって複数の二値化された二値化反射値画像を生成する二値化反射値画像生成ステップと、
複数の二値化された反射値画像から円を検出する円検出ステップと、
円検出ステップで検出された複数の円の重畳または同一を判定する円判定ステップと、
円判定ステップによって円と判定された有効円について円の形状解析を行う円解析ステップと、
円解析ステップによって得られた円の形状情報の中から球形マーカー形状入力ステップで入力された球形マーカーの形状と一致するものを球形マーカーとして認識する球形マーカー認識ステップと、を実行し、
円解析ステップにおいて、RANSAC処理、LMedS処理、最小二乗法による処理、の順番に処理を行う」
ことを特徴としている。
さらに三次元レーザー光走査装置においてこの検出方法を用いることを特徴としている。
【0009】
これら特徴により、点群データの中から偽スフィアを除去してスフィアのみを精度よく検出できる三次元レーザー光走査装置を実現できる。
【発明の効果】
【0010】
結果として、偽スフィアの除去にかかる工数を不要とした効率の良い測量作業が三次元レーザー光走査装置によって可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の検出方法の流れを示す5図のうちの第1図である。
図2】本発明の検出方法の流れを示す5図のうちの第2図である。
図3】本発明の検出方法の流れを示す5図のうちの第3図である。
図4】本発明の検出方法の流れを示す5図のうちの第4図である。
図5】本発明の検出方法の流れを示す5図のうちの第5図である。
図6】反射値画像の一例を示す画像である。
図7図6のコントラストを高めた画像である。
図8図7で検出された円を表示した画像である。
【実施例1】
【0013】
以下、本発明の検出方法の流れを、図1から図5に記載の流れ図に基づいて説明する。
図1および図2に記載の流れ図は、本発明の検出方法の処理の流れの全体であり、図1の「各円解析ループ」項でサブルーチンを呼び出す。このサブルーチンの呼び先は図3である。
更にこの「各円解析ループ」処理内で「円の解析」項でサブルーチンを呼び出す。このサブルーチンの呼び先は図5である。
【0014】
改めて図1および図2での流れを説明する。
三次元レーザー光走査装置で取得した点群データとスフィア半径値を入力する。
点群データの品質によっては、アウトライアを除去、フィルターによるノイズ低減処理、を行っても良い。
点群データ数が多い場合や、処理時間を短縮させるために、ダウンサンプリングを行う。
ダウンサンプリングした点群データに基づいて、反射値画像データを作成する。
【0015】
反射値画像データは、例えば図6に示したようなものである。これは本発明の三次元レーザー光走査装置を室内で使用して得られた点群データを視覚化したものである。各点群データの測距点において反射した光の強度をプロットしたものであり、直感的には白黒画像として認識できる。
【0016】
続いて、スフィアの境界が判定しやすいように、反射値画像データに対して、複数の閾値を設定する。その複数の閾値を用いて反射値画像データに対してコントラスト強調処理を行い、複数のコントラスト強調した反射値画像を生成する。
図7は、コントラストを強調した反射値画像データの一例である。図6と同じ点群データに基づいている。結果、複数の閾値を用いてコントラストが異なる度合で強調された複数の反射値画像データが生成される。
【0017】
上述の複数のコントラスト強調処理後の複数の反射値画像データに対して、2次元ハフ変換を行い、円を検出する。通常は複数の円が検出される。
図8は、図7(で示した反射値画像データと他の複数のコントラスト強調処理された反射値画像データ)に基づいて円が検出された様子を示している。
図6および図7にはスフィアが含まれているが、それ以上に偽スフィアに相当するものが検出されている。
【0018】
これらの検出された複数の円に対して、それぞれの円が複数の反射値画像データにおいて重畳しているか、さらには複数の反射値画像データにおいて同一のものか、といった判定を行う。
それぞれの円ひとつひとつについて、図3にある「各円解析」の通り、円の解析を行う。
【0019】
「各円解析」は、検出した円の個数回「円の解析」を呼び出す。
「円の解析」の詳細は図4および図5において流れ図を記載している。
各円についての解析結果の一覧に基づき、座標が同じスフィアは同一と判断する。
【0020】
さらに、図4図5に基づいて、各円についての解析の手順を説明する。
円の中心付近の複数の点について、原点からの距離に対する統計量を計算する。
標準偏差がスフィアと考えられないほど大きい時、その円(点群データ)はスフィアではないと判断し、次の円の処理を行う。
10X10程度大きさに円付近の点群データをダウンサンプリングする。
円の中心付近の点について原点からの距離の平均値に対して、検出するスフィアの直径の範囲内にない点は除外する。これにより、背景などは除去される。
【0021】
残っている点群に対して、RANSAC(RANdom SAmple Consensus)処理を行う。
球を推定するRANSAC処理とは、点群からランダムに4点検出し、
球の式
(x-a + (y-b + (z-c = r
を計算する。この式は、中心座標(a,b,c)、半径rの球を表す。
半径rに対して、最大値rmax1最小値rmin1を設定しておく。
計算したrがrmax1とrmin1の間に入っている時、球の式が有効となる。
球の式が有効でない時は、ランダムに4点を検出するところへ戻る。
半径rに対して閾値sを設定しておく。
±sの範囲内にある点を記録する。
これらの処理を設定した回数分繰り返して行い、最大の点が存在する推定を正しい推定として判断する。
すべての球の式が有効でない時は、その円(点群データ)はスフィアではないと判断し、次の円の処理に進む。
【0022】
RANSAC処理において、r±sの範囲内でない点は除去される。
RANSAC処理後の点の数に対して、閾値tを設定する。RANSAC処理後の点の数が閾値tより少なかった時、その点群データはスフィアではないと判断し、次の円の処理に進む。
RANSAC処理後の点群データに対して、LMedS(Least Median of Squares)処理を行う。
球を推定するLMedS処理は基本的にRANSAC処理と同様な処理を行う。
ただし、繰り返し処理をした後、二乗誤差の中央値が最も小さい時の推定を正しい推定として判断する。
【0023】
入力した点群データからLMedS処理の球の式の中心座標から球の半径+αの範囲内にある点を抽出する。
その点群データに対して、LMedS処理を行う。
LMedS処理後の点群データに対して、最小二乗法で、球の式を計算する。半径に対する誤差の標準偏差σを計算し、±3σに入らない点を除去する。
上記処理後の点群データに対して、再度最小二乗法で球の式を計算し、それをスフィアの座標と半径とする。
【0024】
ノイズに対してのロバスト性は以下の順となる。
1.RANSAC(強い)
2.LMedS
3.最小二乗法 (弱い)
また、正確性については以下の順となる。
1.最小二乗法 (高い)
2.LMedS
3.RANSAC (低い)
【0025】
よって、
1.RANSAC
2.LMedS
3.最小二乗法
の順番に処理を行う事により、ノイズに強く正確なスフィアを推定出来る。
【0026】
以上までに、本発明の原理と効果を説明してきた。
このような方法により点群データに含まれるスフィアを精度よく検出できるため、偽スフィアの除去に工数を裂かれることが無く、効率の良い測量作業を行うことができることとなる。
【符号の説明】
【0027】
無し
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8