(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】無線通信システム及び終端装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/54 20200101AFI20230111BHJP
G01R 31/58 20200101ALI20230111BHJP
H01Q 13/22 20060101ALI20230111BHJP
H04B 3/46 20150101ALI20230111BHJP
H04B 5/00 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
G01R31/54
G01R31/58
H01Q13/22
H04B3/46
H04B5/00 A
(21)【出願番号】P 2019049822
(22)【出願日】2019-03-18
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】芥川 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】中野 雄介
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-015936(JP,A)
【文献】特開2017-096774(JP,A)
【文献】特開2015-177457(JP,A)
【文献】特開昭59-047849(JP,A)
【文献】特開平05-308358(JP,A)
【文献】特開2007-318473(JP,A)
【文献】特開2007-303862(JP,A)
【文献】特開2007-286875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/54
G01R 31/58
G01R 31/08
H01Q 13/22
H04B 5/00
H04B 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局装置に接続された漏洩同軸ケーブルを用いて無線通信を行う無線通信システムにおいて、
前記漏洩同軸ケーブルを終端する終端装置を備え、
前記基地局装置は、無線波に直流電源を重畳して前記漏洩同軸ケーブルに出力し、
前記終端装置は、前記漏洩同軸ケーブルから入力される直流電源の検出結果に基づいて、前記漏洩同軸ケーブルの断線について判定することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記基地局装置に接続された中央局設備を備え、
前記中央局設備は、前記終端装置を指定したポーリング信号に対する前記終端装置の応答に基づいて、前記漏洩同軸ケーブルの状態を監視することを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
請求項2に記載の無線通信システムにおいて、
前記終端装置は、前記漏洩同軸ケーブルから入力される無線波の受信電界レベルを測定し、前記ポーリング信号に対する応答として前記中央局設備に送信することを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の無線通信システムにおいて、
前記終端装置は、互いに異なる基地局装置に接続された2つの漏洩同軸ケーブルを終端し、一方の漏洩同軸ケーブルを断線と判定した場合に、他方の漏洩同軸ケーブルに接続された基地局装置を通じて、前記一方の漏洩同軸ケーブルの断線を前記中央局設備に通知することを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の無線通信システムにおいて、
前記終端装置は、前記漏洩同軸ケーブルから入力される直流電源を用いて動作することを特徴とする無線通信システム。
【請求項6】
基地局装置に接続された漏洩同軸ケーブルを終端する終端装置であって、
前記漏洩同軸ケーブルには、前記基地局装置から無線波に直流電源が重畳して入力されており、
当該終端装置は、前記漏洩同軸ケーブルから入力される直流電源の検出結果に基づいて、前記漏洩同軸ケーブルの断線について判定することを特徴とする終端装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局に接続された漏洩同軸ケーブルを用いて無線通信を行う無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、列車の乗務員と地上の指令員との間の専用の連絡網を実現するために、列車無線システムが実用されている。列車無線システムは保安設備の一部であり、列車事故の発生時などの緊急時の連絡手段として、高い信頼性が求められる。
【0003】
地下区間や隧道区間などを含む路線の列車無線システムは、従来、誘導無線方式(Inductive Radio;IR)によるシステムが一般的であった。このIR方式は、線路沿いに敷設された誘導線に数100kHzの交流電流を流し、その際に誘導線から発生する交流磁界によって車両に取り付けられたアンテナとの間で無線結合し、近距離で通信を行う方式である。
【0004】
地震などの自然災害や線路内の保線作業時の作業ミスなどの人為的要因で、誘導線が万が一断線してしまうと、その誘導線を使用する基地局がカバーするエリア全般で通信ができなくなる。このため、IR方式における誘導線は、列車無線を構成する機器と同様に重要な情報伝送媒体であると言える。
【0005】
以上のことから、IR方式のシステムでは、誘導線の断線を検知する仕組みが備えられている。具体的には、誘導線に接続される基地局装置において無線出力の電流値を監視する回路が備えられている。誘導線が断線した際には、その電流値が低下するため、これを検知してシステムの監視装置等に通知することで、迅速な復旧対応が可能であった。
【0006】
IR方式による無線システムは、近距離の通信であるために混信が少ないというメリットがある反面、通話の品質があまり良くないことがデメリットとして挙げられる。また、昨今の列車無線システムでは、通話以外の文字による指令伝達など、システムに要求される機能が高度化している背景もある。このため、現在の列車無線は、VHFやUHF帯の周波数を利用した空間波方式(Space Radio;SR)で、更にデジタル無線方式とするシステム更新の需要が増加してきている。
【0007】
SR方式は、八木式アンテナに代表される空中線から電波を輻射し、車上局との間で通信を行う方式である。地下区間や隧道区間でアンテナから電波を輻射してもエリアがほとんど確保できないため、誘導線と同様に、線路に並行して敷設された漏洩同軸ケーブル(Leaky CoaXial cable;LCX)を用いる場合が多い。LCX方式は、基地局装置から、LCXの端点に取り付けられた終端器に向けて輻射する電波の漏れ電波によって、沿線上の車上局アンテナとの間で通信を行うものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、SR方式の明かり区間において、基地局装置と八木アンテナの間の同軸ケーブルが万が一断線した場合、基地局装置から出力した電波は同軸ケーブルの切断点で全反射し、基地局装置の送信出力の接栓へ戻ってくる。この全反射によって送信機の電力増幅部が破損することを防ぐために、基地局装置の送信機には通常、反射を検出する回路が具備されており、この回路で反射を検出すると、送信を停波する等の保護機構が動作する。この反射波の検出結果をシステムの監視装置へ出力すれば、結果的に基地局装置と八木アンテナの間の同軸ケーブルの断線を検知できると言える。
【0010】
一方、SR方式の地下区間(LCX区間)において、LCXが万が一断線した場合、同様にLCXの切断点で電波は全反射する。ただし、LCXの切断点が基地局装置から遠方で、例えばLCXの終端器近くで断線した場合には、基地局装置へ戻ってくる反射波のレベルが小さくなる。
【0011】
例えば、基地局装置から伝送損失 -11dB/kmの特性を持つLCXが約2km敷設されているシステムにおいて、基地局装置から1.5kmの点でLCXが断線した場合、LCXの切断点による反射波の基地局装置への戻り値は、以下の通りとなる。
-11dB/km×1.5km×2(信号往復分)=-33dB
これは、元の送信出力に対して1/1000以下のレベルに相当し、基地局装置に具備されている反射検出回路で検出することが困難な場合があり、よってLCXの断線を正確に検知することができない。このことは、LCXの切断点から終端器までの区間(上記の例では500mの区間)において通信不可能なエリアが発生している状況を検知できないことを意味し、保安設備として重要な課題といえる。
【0012】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、基地局装置に接続された漏洩同軸ケーブル(LCX)の断線をより正確に判定することが可能な技術を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明に係る無線通信システムは、以下のような技術的特徴を有する。
すなわち、基地局装置に接続された漏洩同軸ケーブルを用いて無線通信を行う無線通信システムにおいて、前記漏洩同軸ケーブルを終端する終端装置を備え、前記基地局装置は、無線波に直流電源を重畳して前記漏洩同軸ケーブルに出力し、前記終端装置は、前記漏洩同軸ケーブルから入力される直流電源の検出結果に基づいて、前記漏洩同軸ケーブルの断線について判定することを特徴とする。
このような構成によれば、基地局装置へ戻ってくる反射波のレベルを調べる従来方式に比べ、より正確に漏洩同軸ケーブルの断線を判定することが可能となる。
【0014】
ここで、前記基地局装置に接続された中央局設備を備え、前記中央局設備は、前記終端装置を指定したポーリング信号に対する前記終端装置の応答に基づいて、前記漏洩同軸ケーブルの状態を監視する構成としてもよい。
【0015】
また、前記終端装置は、前記漏洩同軸ケーブルから入力される無線波の受信電界レベルを測定し、前記ポーリング信号に対する応答として前記中央局設備に送信する構成としてもよい。
【0016】
また、前記終端装置は、互いに異なる基地局装置に接続された2つの漏洩同軸ケーブルを終端し、一方の漏洩同軸ケーブルを断線と判定した場合に、他方の漏洩同軸ケーブルに接続された基地局装置を通じて、前記一方の漏洩同軸ケーブルの断線を前記中央局設備に通知する構成としてもよい。
【0017】
また、前記終端装置は、前記漏洩同軸ケーブルから入力される直流電源を用いて動作する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、基地局装置に接続された漏洩同軸ケーブルの断線をより正確に判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】従来方式に係る列車無線システムの概略構成を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る列車無線システムの概略構成を示す図である。
【
図3】
図2の列車無線システムにおける断線監視終端装置(TRM装置)の機能ブロックの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係る列車無線システムの説明に先立ち、従来方式に係る列車無線システムについて説明する。
図1には、従来方式に係る列車無線システムの概略構成を示してある。同図の列車無線システムは、主として中央局に設置される中央局設備10と、列車が走行する線路に沿って配備される第1の基地局装置(BS1)21及び第2の基地局装置(BS2)22と、列車に搭載される移動局装置(MS)40とを備える。
【0021】
中央局設備10は、指令員が操作する指令操作卓11と、通信の交換制御を行う中央装置12と、システム構成品の障害を表示する設備監視装置13とを有する。
基地局装置21,22は、VHF帯もしくはUHF帯の無線送受信機を備え、LCX経由で車上局装置40と通信を行う無線通信装置である。LCXを用いた無線システムは各基地局装置がカバーするエリアの境界が明確であり、基地局装置21はエリアAをカバー範囲とし、基地局装置22はエリアBをカバー範囲とするものとする。
【0022】
基地局装置21に接続されるLCX31は、グレーティング構成によりエリアAをカバーするように配慮され、線路沿いに敷設される。同図のLCX31は、基地局装置21に近い側から順に、LCX31-1、LCX31-2が接続された構成となっている。
基地局装置22に接続されるLCX32も、グレーティング構成によりエリアBをカバーするように配慮され、線路沿いに敷設される。同図のLCX32は、基地局装置22に近い側から順に、LCX32-1、LCX32-2、LCX32-3が接続された構成となっている。なお、後述の事故例では、LCX32-2の途中で断線が発生したケースを示している。
【0023】
終端器33は、LCX31の末端(基地局装置21から遠い側にあるLCX31-2の端部)に接続される終端用の電子部品であり、通常50Ωのインピーダンスを持つ受動素子が使用される。
終端器34は、LCX32の末端(基地局装置22から遠い側にあるLCX32-3の端部)に接続される終端用の電子部品であり、通常50Ωのインピーダンスを持つ受動素子が使用される。
なお、以下の説明では、地上側にある設備10~34を総称して「地上局」と称する。
【0024】
移動局装置40は、列車の屋根上に搭載された列車アンテナとLCXの間での無線結合により地上局と通信を行う無線通信装置であり、車上局とも称される。
なお、デジタルSR方式に代表される無線通信システムにおいては、例えばポーリングセレクト方式により、通話中以外にも地上局と車上局の間で順次通信を行って、各車上局が保有する機器の故障状態や車上局の受信電界値などを定期的に地上側で収集するシステムが多い。
【0025】
ここで、例えば、LCX32-2の途中で断線した場合、エリアBの一部であるエリアB1の範囲(切断点より先の区間)において、車上局と地上局との通信が不通となってしまう。また、先に述べたように、LCX32の切断点が基地局装置22から遠方になるほど基地局装置22へ戻ってくる反射波のレベルが小さくなるので、設備監視装置13での断線の検出が困難となってしまう。
【0026】
次に、上記のような問題に対する解決策を講じた本発明について、
図2及び
図3を参照して説明する。
図2には、本発明の一実施形態に係る列車無線システムの概略構成を示してある。以下では、主に、
図1に示した従来方式に係る列車無線システムとの相違点について説明する。
【0027】
図2の列車無線システムにおける基地局装置61、62は、主たる機能は従来方式に係る基地局装置21、22と同様である。ただし、基地局装置61、62は、無線波に直流電源を重畳してLCX31、32に出力する電源重畳機能を有する点で、従来方式に係る基地局装置21、22とは異なっている。
【0028】
また、
図2の列車無線システムでは、LCX31、32の末端に、終端器33、34に代えて断線監視終端装置(TRM装置)70を接続してある。断線監視終端装置70は、移動局装置40と近似する機器構成であり、基地局装置61、62によって無線波に重畳された直流電源を自装置の入力電源として動作する。また、断線監視終端装置70は、移動局装置40と同様の機能を有する。すなわち、断線監視終端装置70は、中央局設備10からポーリングで指定されると、自装置が保有する機器の情報や受信電界レベルなどの情報を、ポーリング応答で中央局設備10に返答する機能を有する。
【0029】
図3には、断線監視終端装置(TRM装置)70の機能ブロックの例を示してある。
断線監視終端装置70は、フィルタ部71と、共用器部(DUP)72と、無線部73と、無線制御部(CONT)74と、断検出部75と、電源部(PS)76とを有する。なお、フィルタ部71、共用器部72、無線部73、無線制御部74および断検出部75により構成されるブロックは、LCX31用とLCX32用とで別々に設けられる。すなわち、断線監視終端装置70は、基地局装置61からのLCX31に接続するブロックと、基地局装置62からのLCX32に接続するブロックとを独立に有し、これらを1つの装置に収容した構造となっている。
【0030】
フィルタ部71は、LCXとの接続点であり、LCXから入力される直流電源と無線高周波を分離する第1フィルタ71-1と、第2フィルタ71-2とで構成される。第1フィルタ71-1は、LCXからの入力の直流成分のみを通過させるLPF(Low Pass Filter)が用いられる。第2フィルタ71-2は、LCXからの入力の無線高周波成分のみを通過させるHPF(High Pass Filter)が用いられる。なお、フィルタ部71のLCXから見た入出力インピーダンスは50Ωとされる。これにより、断線監視終端装置70は、終端器33、34の代替えとして機能する。
【0031】
断線監視終端装置70の共用器部72、無線部73及び無線制御部74により構成される部分は、移動局装置40と同一ハードウェア及び同一ソフトウェアで構成される。したがって、無線部73の受信周波数は、移動局装置40の受信周波数と同一であり、送信周波数も、移動局装置40の送信周波数と同一である。このように、断線監視終端装置70は、移動局装置40と同等な構成要素を有する構造となっている。また、断線監視終端装置70は、全ての移動局装置40と異なるユニークな識別番号が設定されており、中央局設備10からポーリングで指定されると、移動局装置40と同様にポーリング応答動作を行う。
【0032】
これにより、断線監視終端装置70は、LCX31、32からそれぞれ入力される無線高周波について測定した受信電界レベルなどの情報を、ポーリング応答で中央局設備10に伝送することができる。したがって、中央局設備10は、断線監視終端装置70の応答結果を蓄積及び集計することで、LCX31、32の経年的な変化を分析することができる。なお、各ブロックの無線制御部74同士が互いに情報の授受が可能なインターフェイスを有しておけば、第1の基地局装置(BS1)61側のLCX31を通じて入力される無線高周波の受信電界レベルを、第2の基地局装置(BS2)62側のLCX32を通じて応答出力することも可能であり、その逆も同様である。
【0033】
電源部76は、フィルタ部71の第1フィルタ71-1を通過した直流電圧を入力電源とし、本装置(断線監視終端装置70)が動作するために必要な内部電源を生成するユニットである。2本のLCX31、32のうちの一方が断線すると本装置用の一部の電源が断たれることになるので、片方が断線した場合も動作できるように、LCX31側の第1フィルタ71-1の出力とLCX32側の第1フィルタ71-1の出力とのダイオードORを電源部76の入力とする。
【0034】
断検出部75は、第1フィルタ71-1の出力の電圧有無を検出する回路である。断検出部75は、第1フィルタ71-1の出力の電圧が、所定の閾値に満たない場合に、第1フィルタ71-1につながるLCXが断線していると判定する。LCXの断線を監視するだけであれば、一方のブロックの断検出部75による検出結果を、他方のブロックの無線制御部74を通じて、隣接する基地局経由で中央局設備10にポーリング応答により通知すればよい。
【0035】
中央局設備10は、移動局装置40と同様に断線監視終端装置70をポーリング対象の機器に含め、ポーリング応答の結果(断線監視終端装置70から通知された情報)を設備監視装置13へ表示する。したがって、中央局において、断線監視終端装置70で検出されたLCXからの受信電界レベルを常時監視してLCXの経年劣化の程度を分析できると共に、LCXが断線した場合にはその事象を直ちに把握することが可能である。
【0036】
以上のように、本例の列車無線システムは、基地局装置61に接続されたLCX31と基地局装置62に接続されたLCX32を終端する断線監視終端装置70を備える。そして、基地局装置61、62のそれぞれが、無線波に直流電源を重畳してLCX31、32に出力し、断線監視終端装置70が、LCX31から入力される直流電源の検出結果に基づいてLCX31の断線について判定し、また、LCX32から入力される直流電源の検出結果に基づいてLCX32の断線について判定する構成となっている。
【0037】
このように、本例の列車無線システムでは、LCXが断線した場合にはLCXの終端側に直流電源が到達しなくなることを利用して、LCXの終端側にある断線監視終端装置70において、LCXから入力される直流電源の検出結果に基づいて断線の有無を判定するので、LCXの断線を正確に検出することが可能となる。
【0038】
また、本例の列車無線システムは、基地局装置61、62に接続された中央局設備10が、断線監視終端装置70を指定したポーリング信号を送信し、断線監視終端装置70からのポーリング応答に基づいて、LCX31、32の状態を監視する構成となっている。したがって、中央局設備10は、LCX31、32の状態を常に把握することが可能となる。
【0039】
また、本例の列車無線システムは、断線監視終端装置70が、LCX31、32からそれぞれ入力される無線波の受信電界レベルを測定し、ポーリング信号に対する応答として中央局設備10に送信する構成となっている。したがって、中央局設備10は、LCX31、32の経年劣化の程度を分析することが可能となる。
【0040】
また、本例の列車無線システムは、断線監視終端装置70が、LCX31を断線と判定した場合には、これとは別のLCX32に接続された基地局装置62を通じてLCX31の断線を中央局設備10に通知し、LCX32を断線と判定した場合には、これとは別のLCX31に接続された基地局装置61を通じてLCX32の断線を中央局設備10に通知する構成となっている。したがって、中央局設備10は、LCX31、32の断線を直ちに認識して警報を発することが可能となる。
【0041】
また、本例の列車無線システムは、断線監視終端装置70が、LCX31、32から入力される直流電源を用いて動作する構成となっている。したがって、断線監視終端装置70用に追加の電源設備を用意する必要がない。また、断線監視終端装置70は、2本のLCXから電源供給を受けることで、片方のLCXが断線した場合にも動作を継続することが可能である。
【0042】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記のような構成に限定されるものではなく、上記以外の構成により実現してもよいことは言うまでもない。また、本発明は、列車無線システムに限定されず、他の形態の無線通信システムに適用しても構わない。
また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法や方式、そのような方法や方式をプロセッサやメモリ等のハードウェア資源を有するコンピュータにより実現するためのプログラム、そのプログラムを記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、基地局に接続された漏洩同軸ケーブルを用いて無線通信を行う無線通信システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
10:中央局設備、 11:指令操作卓、 12:中央装置、 13:設備監視装置、 21,22:基地局装置、 31-1~31-2,32-1~32-3:漏洩同軸ケーブル(LCX)、 33,34:終端器、 40:移動局装置、 61,62:基地局装置、 70:断線監視終端装置(TRM装置)、 71:フィルタ部、 71-1:第1フィルタ(LPF)、 71-2:第2フィルタ(HPF)、 72:共用器部(DUP)、 73:無線部、 74:無線制御部(CONT)、 75:断検出部、 76:電源部(PS)