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<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】カッティングペン
(51)【国際特許分類】
   B26D 7/26 20060101AFI20230111BHJP
   B26D 5/00 20060101ALN20230111BHJP
【FI】
B26D7/26
B26D5/00 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019083872
(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公開番号】P2020179454
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000105062
【氏名又は名称】グラフテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 和宏
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-164821(JP,A)
【文献】特開平08-071980(JP,A)
【文献】特開平08-052685(JP,A)
【文献】特開2013-078813(JP,A)
【文献】特開平11-010595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 7/26
B26D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃が長手方向の一端部から突出する筒状のカッティングペン本体と、
前記刃が通る貫通孔が穿設されたキャップ部を有し、このキャップ部が前記カッティングペン本体の前記一端部から突出する状態で前記カッティングペン本体の中に前記長手方向へ移動自在に挿入された媒体押圧部材と、
前記カッティングペン本体内に設けられ、前記媒体押圧部材が前記カッティングペン本体に対して前記長手方向において予め定めた第1の移動ストロークで繰り返し往復することにより前記カッティングペン本体に対する前記媒体押圧部材の前記長手方向の位置を前記長手方向の他端部側に段階的に変える第1のノック機構と、
前記第1の移動ストロークより長い第2の移動ストロークで前記媒体押圧部材が前記カッティングペン本体に対して前記長手方向の他端部側に移動することにより前記媒体押圧部材を前記長手方向の一端部側に最も移動した初期の位置に一度に戻す第2のノック機構とを備えていることを特徴とするカッティングペン。
【請求項2】
請求項1記載のカッティングペンにおいて、
前記第1のノック機構は、
前記媒体押圧部材が前記第1の移動ストロークで移動して行われる前記媒体押圧部材の往復動作が前記長手方向に延びる軸線を中心とする回転動作に変換されて所定角度だけ予め定めた第1の回転方向に回転し、この回転に伴って前記カッティングペン本体に対する前記長手方向の位置が変わる回転体と、
前記回転体を前記一端部側に向けて付勢し、前記カッティングペン本体によって規制される停止位置に保持する第1のばね部材と、
前記媒体押圧部材が前記回転体に前記一端部側から押し付けられた状態で前記回転体と一体に前記長手方向に移動するように前記媒体押圧部材を前記他端部側に向けて付勢する第2のばね部材とを備え、
前記第2のノック機構は、
前記回転体が前記第1の回転方向に回転することにより弾性変形するねじりコイルばねをさらに備え、前記媒体押圧部材が前記第1のばね部材のばね力に抗して前記第2の移動ストロークで前記カッティングペン本体に対して前記他端部側に移動して前記停止位置から前記他端部側に移動することにより前記ねじりコイルばねのばね力で前記回転体が前記第1の回転方向とは反対方向である第2の回転方向に回転する構成が採られていることを特徴とするカッティングペン。
【請求項3】
請求項2記載のカッティングペンにおいて、
前記第1のばね部材のばね力は、前記媒体押圧部材がカッティング動作により前記カッティングペン本体に対して前記他端部側に移動することを規制する大きさであることを特徴とするカッティングペン。
【請求項4】
請求項2または請求項3記載のカッティングペンにおいて、
前記カッティングペン本体は、前記回転体と同一軸線上に位置する円筒部を有し、
前記円筒部は、前記長手方向とは直交する方向から見て、前記第1の回転方向に向かうにしたがって次第に前記他端部側に位置するように階段状に並ぶ複数の鋸歯状の歯を有し、
前記複数の鋸歯状の歯の各々は、前記第1の回転方向に向かうにしたがって次第に前記一端部側に向かって傾斜する位置決め面と、前記長手方向に延びるガイド面とをそれぞれ有し、
前記媒体押圧部材は、前記第1の回転方向に並ぶ複数のカムを有し、
これらのカムは、前記第1の回転方向に向かうにしたがって次第に前記一端部側に向かって傾斜するカム面を有し、
前記回転体は、前記位置決め面に前記第1のばね部材のばね力によって前記他端部側から押し付けられるとともに、前記カム面が前記第2のばね部材のばね力によって前記一端部側から押し付けられる連結片を有し、
前記媒体押圧部材が前記カッティングペン本体に対して前記第1の移動ストロークで前記他端部側に移動することによって、前記連結片が前記カム面により押されながら前記ガイド面に沿って前記他端部側に移動し、前記ガイド面の先端を越えた状態で前記カム面および前記位置決め面に沿って前記第1の回転方向に移動することを特徴とするカッティングペン。
【請求項5】
請求項4記載のカッティングペンにおいて、
前記媒体押圧部材は、
前記キャップ部が前記一端部に設けられて他端部が前記回転体の軸心部に回転自在に接触する第1の軸部と、
前記回転体を回転自在かつ前記長手方向へ移動自在に支持するとともに前記カム面が設けられた筒状部を有し、前記第1の軸部に前記一端部側へのみ移動自在に支持されて前記第2のばね部材のばね力を受ける第2の軸部と、
前記第2の軸部を前記第1の軸部に対して前記長手方向の他端部側へ付勢する第3のばね部材と、
前記第1の軸部が前記第1の移動ストロークを越えて前記カッティングペン本体に対して前記他端部側に移動することにより前記第2の軸部の移動を規制する規制部材とを備え、
前記第1の軸部が前記第2の移動ストロークで前記他端部側に移動することにより、前記回転体の前記連結片が前記カム面から前記他端部側に離れ、前記回転体が前記ねじりコイルばねのばね力で前記第2の回転方向に回転することを特徴とするカッティングペン。
【請求項6】
請求項4または請求項5記載のカッティングペンにおいて、
前記カッティングペン本体の前記一端部には、前記長手方向へ突出するストッパーが設けられ、
前記長手方向において、前記ストッパーの先端と、前記カッティングペン本体から突出して停止した自然状態にある前記キャップ部の先端との間の距離は、前記第1の移動ストロークに相当する距離であることを特徴とするカッティングペン。
【請求項7】
請求項4~請求項6のいずれか一つに記載のカッティングペンにおいて、
前記複数の鋸歯状の歯は、前記円筒部を周方向に分割する複数の領域にそれぞれ設けられ、
前記連結片は、前記領域毎に設けられていることを特徴とするカッティングペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被切断媒体を切断するカッティングペンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シート状の被切断媒体を所定の形状に切断するにあたっては、例えば特許文献1や特許文献2に記載されているように、カッティングプロッタが用いられている。この種のカッティングプロッタは、刃が突出したカッティングペンを使用して被切断媒体を切断する構成が採られている。
【0003】
特許文献1に開示されているカッティングペンは、円筒状のカッティングペン本体と、このカッティングペン本体の軸線に沿って設けられたカッターと、カッティングペン本体の一端部に螺合した有底円筒状のキャップとを備えている。カッターは、一端部に刃を有し、この刃がカッティングペン本体の一端部から突出する状態でカッティングペン本体に回転自在に支持されている。キャップの底部には、カッターの刃を通すための貫通孔が設けられている。刃は、キャップがカッティングペン本体にねじ込まれることによって、キャップの貫通孔に通されてキャップから突出する。
【0004】
このカッティングペンは、刃がキャップから突出した状態で使用される。キャップから突出した刃の突出量は、カッティングペン本体に対してキャップが回されることによって変わる。以下においては、キャップから突出する刃の突出量を単に「刃出し量」という。
刃出し量の調整は、キャップに嵌合する治具を使用し、この治具とともにキャップをカッティングペン本体に対して回して行われる。治具には、カッティングペン本体に設けられた刃出し量毎の目印と合わせるための指標が設けられている。この指標がカッティングペン本体の目印と並ぶ位置まで治具が回ることによって、目印に対応する刃出し量で刃がキャップから突出する。
【0005】
特許文献2に記載されたカッティングペンは、カッティングプロッタに取付けられた状態で刃出し量を変えることが可能なものである。このカッティングペンのキャップには、ピニオンギアが設けられている。このピニオンギアは、キャップの外周面に周方向へ延びる形状に形成されている。
このカッティングペンにおいて、刃出し量の調整は、ピニオンギアがカッティングプロッタのラックに噛合する状態でカッティングペンがラックに沿って移動することによって行われる。ラックは、カッティングプロッタの突起部に設けられている。この突起部は、カッティングペンと同等の高さに形成されており、被切断媒体が載せられる作業ステージの近傍に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-78813号公報
【文献】特開平11-10595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示すカッティングペンでは、刃出し量の精度が低くなるという問題があった。この理由は、刃出し量の調整は、使用者が治具とともにキャップを手で回し、治具の指標をカッティングペン本体の目印に合わせて行われるからである。すなわち、指標が目印と合致したか否かを使用者が目で見て判断しているから、治具が停止する位置が不正確になり、刃出し量の精度が低くなってしまう。刃出し量が少ない場合は、被切断媒体を確実に切断することができないし、刃出し量が多い場合は、刃が破損されることがある。
【0008】
特許文献2に示すカッティングペンは、使用者の判断に依存することなく、カッティングプロッタを使用して刃出し量を調整することができるものである。しかし、このカッティングペンは、カッティングプロッタを使用しなければ刃出し量を正しく調整することができないものである。
【0009】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、使用者の判断に依存することなく、しかも、カッティングプロッタを使用することなく、刃出し量を正確に調整できるカッティングペンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本発明に係るカッティングペンは、刃が長手方向の一端部から突出する筒状のカッティングペン本体と、前記刃が通る貫通孔が穿設されたキャップ部を有し、このキャップ部が前記カッティングペン本体の前記一端部から突出する状態で前記カッティングペン本体の中に前記長手方向へ移動自在に挿入された媒体押圧部材と、前記カッティングペン本体内に設けられ、前記媒体押圧部材が前記カッティングペン本体に対して前記長手方向において予め定めた第1の移動ストロークで繰り返し往復することにより前記カッティングペン本体に対する前記媒体押圧部材の前記長手方向の位置を前記長手方向の他端部側に段階的に変える第1のノック機構と、前記第1の移動ストロークより長い第2の移動ストロークで前記媒体押圧部材が前記カッティングペン本体に対して前記長手方向の他端部側に移動することにより前記媒体押圧部材を前記長手方向の一端部側に最も移動した初期の位置に一度に戻す第2のノック機構とを備えているものである。
【0011】
本発明は前記カッティングペンにおいて、前記第1のノック機構は、前記媒体押圧部材が前記第1の移動ストロークで移動して行われる前記媒体押圧部材の往復動作が前記長手方向に延びる軸線を中心とする回転動作に変換されて所定角度だけ予め定めた第1の回転方向に回転し、この回転に伴って前記カッティングペン本体に対する前記長手方向の位置が変わる回転体と、前記回転体を前記一端部側に向けて付勢し、前記カッティングペン本体によって規制される停止位置に保持する第1のばね部材と、前記媒体押圧部材が前記回転体に前記一端部側から押し付けられた状態で前記回転体と一体に前記長手方向に移動するように前記媒体押圧部材を前記他端部側に向けて付勢する第2のばね部材とを備え、前記第2のノック機構は、前記回転体が前記第1の回転方向に回転することにより弾性変形するねじりコイルばねをさらに備え、前記媒体押圧部材が前記第1のばね部材のばね力に抗して前記第2の移動ストロークで前記カッティングペン本体に対して前記他端部側に移動して前記停止位置から前記他端部側に移動することにより前記ねじりコイルばねのばね力で前記回転体が前記第1の回転方向とは反対方向である第2の回転方向に回転する構成が採られていてもよい。
【0012】
本発明は、前記カッティングペンにおいて、前記第1のばね部材のばね力は、前記媒体押圧部材がカッティング動作により前記カッティングペン本体に対して前記他端部側に移動することを規制する大きさであってもよい。
【0013】
本発明は、前記カッティングペンにおいて、前記カッティングペン本体は、前記回転体と同一軸線上に位置する円筒部を有し、前記円筒部は、前記長手方向とは直交する方向から見て、前記第1の回転方向に向かうにしたがって次第に前記他端部側に位置するように階段状に並ぶ複数の鋸歯状の歯を有し、前記複数の鋸歯状の歯の各々は、前記第1の回転方向に向かうにしたがって次第に前記一端部側に向かって傾斜する位置決め面と、前記長手方向に延びるガイド面とをそれぞれ有し、前記媒体押圧部材は、前記第1の回転方向に並ぶ複数のカムを有し、これらのカムは、前記第1の回転方向に向かうにしたがって次第に前記一端部側に向かって傾斜するカム面を有し、前記回転体は、前記位置決め面に前記第1のばね部材のばね力によって前記他端部側から押し付けられるとともに、前記カム面が前記第2のばね部材のばね力によって前記一端部側から押し付けられる連結片を有し、前記媒体押圧部材が前記カッティングペン本体に対して前記第1の移動ストロークで前記他端部側に移動することによって、前記連結片が前記カム面により押されながら前記ガイド面に沿って前記他端部側に移動し、前記ガイド面の先端を越えた状態で前記カム面および前記位置決め面に沿って前記第1の回転方向に移動してもよい。
【0014】
本発明は、前記カッティングペンにおいて、前記媒体押圧部材は、前記キャップ部が前記一端部に設けられて他端部が前記回転体の軸心部に回転自在に接触する第1の軸部と、前記回転体を回転自在かつ前記長手方向へ移動自在に支持するとともに前記カム面が設けられた筒状部を有し、前記第1の軸部に前記一端部側へのみ移動自在に支持されて前記第2のばね部材のばね力を受ける第2の軸部と、前記第2の軸部を前記第1の軸部に対して前記長手方向の他端部側へ付勢する第3のばね部材と、前記第1の軸部が前記第1の移動ストロークを越えて前記カッティングペン本体に対して前記他端部側に移動することにより前記第2の移動を規制する規制部材とを備え、前記第1の軸部が前記第2の移動ストロークで前記他端部側に移動することにより、前記回転体の前記連結片が前記カム面から前記他端部側に離れ、前記回転体が前記ねじりコイルばねのばね力で前記第2の回転方向に回転してもよい。
【0015】
本発明は、前記カッティングペンにおいて、前記カッティングペン本体の前記一端部には、前記長手方向へ突出するストッパーが設けられ、前記長手方向において、前記ストッパーの先端と、前記カッティングペン本体から突出して停止した自然状態にある前記キャップ部の先端との間の距離は、前記第1の移動ストロークに相当する距離であってもよい。
【0016】
本発明は、前記カッティングペンにおいて、前記複数の鋸歯状の歯は、前記円筒部を周方向に分割する複数の領域にそれぞれ設けられ、前記連結片は、前記領域毎に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
カッティングペン本体の長手方向において、カッティングペン本体に対する媒体押圧部材の位置が変わることは、キャップ部から突出する刃の突出量である刃出し量が変化することを意味する。このカッティングペンにおいては、媒体押圧部材をカッティングペン本体に対して第2の移動ストロークで他端部側に移動させ、その後に初期の位置に戻すことにより、第2のノック機構によって刃出し量を0にすることができる。
本発明において、刃出し量は、第2のノック機構で刃出し量を0にした後、第1のノック機構によってカッティングペン本体に対する媒体押圧部材の往復動作の回数に基づいて規定される。この往復動作は、キャップ部が押し付けられる被押圧部に第1の移動ストロークだけカッティングペン本体が接近し、その後、カッティングペン本体が初期の位置に戻るノック動作として実施される。このため、使用者が上述したノック動作を適宜繰り返すことにより、刃出し量が正確に調整される。
【0018】
したがって、本発明によれば、使用者の目視による判断に依存することなく、しかも、カッティングプロッタを使用することなく刃出し量が正確に調整されるカッティングペンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明に係るカッティングペンが取付けられたカッティングプロッタの斜視図である。
図2図2は、ペンキャリッジを拡大して示す斜視図である。
図3図3は、カッティングペンの斜視図である。
図4図4は、カッティングペンの断面図である。
図5図5は、図4おけるV-V線断面図である。
図6図6は、カッティングペン本体の分解斜視図である。
図7図7は、媒体押圧部材および第1、第2のノック機構の構成部品の分解斜視図である。
図8図8は、第2のノック機構の要部を拡大して示す分解斜視図である。
図9図9は、第1および第2のノック機構の構成を説明するための模式図である。
図10図10は、第1のノック機構の動作を説明するための模式図である。
図11図11は、第1のノック機構の動作を説明するための模式図である。
図12図12は、第1のノック機構の動作を説明するための模式図である。
図13図13は、第1のノック機構の動作を説明するための模式図である。
図14図14は、第1のノック機構の動作を説明するための模式図である。
図15図15は、第2のノック機構の動作を説明するための模式図である。
図16図16は、第1のノック部を拡大して示す斜視図である。
図17図17は、第2および第3のノック部を拡大して示す斜視図である。
図18図18は、制御系の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るカッティングペンの一実施の形態を図1図18によって詳細に説明する。
<カッティングプロッタの構成>
図1に示すカッティングプロッタ1は、本発明に係るカッティングペン2を使用してシート状の被切断媒体3から図形や文字などを切り出すための装置である。以下において、このカッティングプロッタ1の構成を説明するうえで方向を示すにあたっては、被切断媒体3の搬送方向の上流側を前側(図1においては左下側)とし、搬送方向の下流側(図1においては右上側)を後側として行う。また、以下においては、被切断媒体3の搬送方向とは直交する水平方向を左右方向として説明する。すなわち、このカッティングプロッタ1を被切断媒体3の搬送方向の上流側から見た状態で左側をカッティングプロッタ1の左側とし、右側をカッティングプロッタ1の右側として説明する。
【0021】
この実施の形態によるカッティングプロッタ1は、左右方向の中央部に被切断媒体3が載置される作業ステージ4が設けられている。作業ステージ4は、被切断媒体3の搬送方向に延びるとともに、左右方向に延びるように形成されている。被切断媒体3は、作業ステージ4の上に載置され、作業ステージ4を横切るように設けられたピンチローラ5を含む搬送装置6によって図1において搬送方向の上流側から下流側に送られる。
作業ステージ4の上方近傍には、カッティングペン2を保持するペンキャリッジ7が左右方向へ被切断媒体3の主面(上面)に沿って移動可能に設けられている。被切断媒体3のカッティングは、カッティングペン2が被切断媒体3に刺さった状態でペンキャリッジ7が左右方向に移動するとともに、被切断媒体3が搬送装置6によって駆動されて前側または後側に移動して行われる。
【0022】
作業ステージ4より左右方向の一方側(左側には)、作業ステージ4より上方に突出する第1の凸部11が設けられている。作業ステージ4より左右方向の他方側(右側)には、作業ステージ4より上方に突出する第2の凸部12が設けられている。これらの第1の凸部11の上端部と、第2の凸部12の上端部との間には、左右方向に延びる上部ハウジング13が設けられている。第2の凸部12の表面には操作パネル14が設けられている。第2の凸部12の内部には、制御装置15(図18参照)が設けられている。
【0023】
作業ステージ4の左右方向における一端部には、カッティングペン2の刃出し量を変えるときに使用される第1~第3のノック部16~18が設けられている。
第1のノック部16は、図16に示すように、作業ステージ4の上面4aに開口する円形凹部21と、この円形凹部21の開口縁から下方に延びる一対の溝22とを有している。
第2のノック部17は、図17に示すように、作業ステージ4の上面4aと、この上面4aに開口する小孔23とによって構成されている。第3のノック部18は、図17に示すように、作業ステージ4の上面4aと、この上面4aに開口する長穴24とによって構成されている。長穴24は、左右方向に長く形成されている。第2のノック部17と第3のノック部18は、ペンキャリッジ7に取付けられたカッティングペン2が到達可能な範囲内で左右方向に並べて設けられている。第1~第3のノック部16~18の用途については後述する。
【0024】
搬送装置6は、被切断媒体3をピンチローラ5と協働して挟む駆動ローラ25を有している。駆動ローラ25は、作業ステージ4の中間部を左右方向に横切る状態に配置されており、このカッティングプロッタ1の図示していないフレームに回転可能に支持されている。この駆動ローラ25は、第1のモータ26(図18参照)を動力源とする第1の駆動装置27に接続されており、この第1の駆動装置27により駆動されることによって、正転あるいは逆転する。第1のモータ26の動作は、制御装置15によって制御される。
【0025】
ピンチローラ5は、円筒状に形成されており、回転軸28が貫通する状態で駆動ローラ25の上方に位置付けられている。このピンチローラ5は、回転軸28に固定されている。回転軸28は、駆動ローラ25と平行に配置されており、上述したフレームに回転自在に支持されている。
被切断媒体3は、ピンチローラ5と駆動ローラ25との間に挟まれた状態で駆動ローラ25が回転することによって、作業ステージ4に沿って前後方向に移動する。回転軸28の中間部には、被切断媒体3を上方から押さえるためのローラ(コイルばね)29が設けられている。
【0026】
ペンキャリッジ7は、左右方向に延びるガイドロッド(図示せず)に移動自在に支持されているとともに、駆動用ベルト(図示せず)が接続されている。駆動用ベルトは、ペンキャリッジ7を駆動する第2の駆動装置31(図18参照)の一部を構成するものである。第2の駆動装置31は、第2のモータ32を有し、この第2のモータ32の回転を駆動用ベルトによって往復運動に変えてペンキャリッジ7を左右方向に駆動する。第2のモータ32の動作は、制御装置15によって制御される。
【0027】
また、ペンキャリッジ7は、図2に示すように、カッティングペン2を保持するための第1および第2のホルダー33,34と、これらの第1および第2のホルダー33,34を上下方向に駆動する第1および第2の押圧装置35,36とを備えている。第1および第2のホルダー33,34は、それぞれカッティングペン2を着脱可能に保持する機能を有している。
【0028】
第1の押圧装置35は、第1のホルダー33を下方に向けて押すための第1のソレノイド37(図18参照)と、第1のホルダー33を上方に向けて付勢するばね部材(図示せず)とを備えている。第2の押圧装置36は、第2のホルダー34を下方に向けて押すための第2のソレノイド38と、第2のホルダー34を上方に向けて付勢するばね部材(図示せず)とを備えている。この実施の形態による第1のソレノイド37と第2のソレノイド38は、第1および第2のホルダー33,34の移動ストロークおよび押圧力を2段階に変えることが可能なものである。第1および第2のソレノイド37,38の動作は、制御装置15によって制御される。
【0029】
制御装置15は、図18に示すように、カッティング動作制御部41と刃出し量制御部42とを備えており、操作パネル14と、カッティングデータ作成用のパーソナルコンピュータ43とに接続されている。カッティング動作制御部41は、パーソナルコンピュータ43から送られたカッティングデータに基づいて第1および第2の駆動装置27,31と第1および第2の押圧装置35,36との動作を制御する。
刃出し量制御部42は、カッティングペン2の刃出し量をカッティングプロッタ1によって調整するときに第1および第2の駆動装置27,31と第1および第2の押圧装置35,36との動作を制御する。
【0030】
<カッティングペンの構成>
カッティングペン2は、図3および図4に示すように、これらの図において下側となる一端部から刃51が突出する筒状のカッティングペン本体52に後述する複数の部品が組み付けられて形成されている。
刃51は、詳細は後述するが、カッティングペン本体52の長手方向の一端部から突出している。以下において方向を説明するにあたって、その方向がカッティングペン本体52の長手方向と平行な方向である場合は、単に「上下方向」という。また、以下において位置を説明するにあたって、その位置がカッティングペン本体52の一端部側である場合は、単に「下側」といい、これとは反対側の位置を説明するにあたっては、単に「上側」という。
【0031】
<カッティングペン本体の説明>
この実施の形態によるカッティングペン本体52は、図6に示すように、図6において下側に位置する筒状のカッター保持部53と、このカッター保持部53の上端部を閉塞するためのカバー部54とによって構成されている。
カッター保持部53は、上下方向に並ぶ3つの機能部を有している。これらの機能部は、上下方向に最も長く形成された第1の筒状部55と、この第1の筒状部55の上側に設けられたフランジ部56および第2の筒状部57である。
【0032】
第1の筒状部55は、ペンキャリッジ7に取付けられる被取付部で、上述した第1および第2のホルダー33,34に着脱自在に嵌合する機能を有している。この第1の筒状部55は、図4および図5に示すように、円筒状に形成された外筒58と、この外筒58の軸心部に位置する内筒59と、これらの外筒58と内筒59とを接続する仕切板60とによって構成されている。
外筒58と、内筒59と、仕切板60と、後述するフランジ部56および第2の筒状部57は、プラスチックを材料として一体成形により一体に形成されている。
【0033】
外筒58の一端部には、図6に示すように、2つのストッパー61が設けられている。これらのストッパー61は、外筒58の一部が部分的に下方向に突出する形状に形成されている。また、これらのストッパー61は、外筒58を周方向に2等分する位置にそれぞれ設けられている。
【0034】
内筒59は、図4に示すように、仕切板60によって外筒58と同一軸線上に位置付けられている。この内筒59の内部には、上述した刃51を有するカッター62が軸受63,64によって回転自在に支持されている。カッター62は、外筒58および内筒59と同一軸線上に位置付けられ、軸線方向における第1の筒状部55に対するカッター62の位置は固定される。
【0035】
仕切板60には、図5に示すように、3つの貫通穴65が形成されている。これらの貫通穴65は、後述する媒体押圧部材71(図7参照)の3本の爪片72を通すためのものである。これらの貫通穴65は、外筒58を周方向に3等分する位置にそれぞれ形成されている。
【0036】
フランジ部56は、カッティングペン2が第1および第2のホルダー33,34に取付けられるときに第1および第2のホルダー33,34に対するカッティングペン2の上下方向の位置を決める機能を有している。この実施の形態によるフランジ部56は、外筒58より外径が大きくなるリング状であって、第1および第2のホルダー33,34に上方から重なる形状に形成されており、外筒58の上側の端部に接続されている。
【0037】
第2の筒状部57は、円筒状に形成されており、フランジ部56の上側の端部に接続されている。この実施の形態においては、第2の筒状部57が請求項4記載の発明でいう「円筒部」に相当する。この第2の筒状部57は、カバー部54を支持する機能と、後述する第1および第2のノック機構73,74(図7および図8参照)の回転体75と同一軸線上に位置して回転体75を支える機能とを有している。
第2の筒状部57とフランジ部56との境界部分の内周部には、段部76(図4参照)が形成されている。
【0038】
この第2の筒状部57の上側の端部には、図6に示すように、後述する第1のノック機構73の一部を構成する複数の鋸歯状の歯77が形成されている。これらの歯77は、第2の筒状部57の周方向の全域に途切れることなく設けられている。また、これらの歯77は、図9に示すように、上下方向とは直交する方向から見て階段状に並んでいる。これらの複数の歯77によって構成される階段78は、第2の筒状部57の上端部に周方向に空間的に周期的に設けられている。この実施の形態では、階段78は、第2の筒状部57を周方向に4等分する領域にそれぞれ設けられている。図9に示す階段78は、それぞれ10個の歯77によって構成されている。
【0039】
各階段78の鋸歯状の歯77は、傾斜した位置決め面77aと、上下方向に延びるガイド面77bとをそれぞれ有している。位置決め面77aは、階段78とは反対の方向に傾斜している。すなわち、位置決め面77aは、階段78の高さが高くなる方向(図9においては左方)に向かうにしたがって次第に下側に位置する形状に傾斜している。階段78の最も高くなる位置にある歯77と、階段78の最も低くなる位置にある歯77は、第2の筒状部57の周方向に隔壁79を介して互いに隣り合っている。詳述すると、階段78の最も高い位置にある位置決め面77aの最低部は、この階段78と隣接する他の階段78の最も低い位置にある歯77のガイド面77bに隔壁79を介して接続されている。以下においては、第2の筒状部57の周方向において、階段78の高さが高くなる方向(図9においては左方向)を「第1の回転方向」という。
【0040】
第2の筒状部57の外周部であって、周方向の2箇所には、図6に示すように、貫通孔81が形成されている。
カバー部54は、第2の筒状部57に嵌合する有底円筒状に形成されている。このカバー部54の内周部には、第2の筒状部57の貫通孔81に係止される爪82(図4参照)が設けられている。カバー部54は、爪82が貫通孔81に係止されることによって、カッター保持部53に固定される。カバー部54の上下方向の中間部には、図6に示すように、周方向{後述する回転体75(図7参照)の回転方向}に長い貫通穴83が形成されている。
【0041】
カバー部54の上端部内には、図4に示すように、下方に向けて突出する板状突起84が設けられている。
カッティングペン本体52の中には、図4に示すように、このカッティングペン本体52の一端部(下端部)から突出する媒体押圧部材71と、この媒体押圧部材71と上下方向に並ぶ回転体75および第1のばね部材85と、媒体押圧部材71が貫通する第2のばね部材86などが収容されている。
【0042】
<媒体押圧部材の構成>
この実施の形態による媒体押圧部材71は、図7において左側に示すように、5つの部材によって構成されている。これらの5つの部材とは、上下方向に延びる3本の爪を有する第1の軸部91と、この第1の軸部91の下端部に取付けられる円筒状の連結部92と、この連結部92に螺着される有底円筒状の媒体押圧用のキャップ部93と、第1の軸部91の上端部に接続される円筒状の第2の軸部94と、第1の軸部91と第2の軸部94との間に位置する第3のばね部材95などである。
【0043】
第1の軸部91の一端部に設けられた3本の爪片72は、上述した仕切板60に形成された貫通穴65に移動自在に嵌合する。これらの爪片72が貫通穴65にそれぞれ通された状態で連結部92の係合穴92aに係止されることによって、第1の軸部91に連結部92が固定される。このため、媒体押圧部材71は、カッティングペン本体52に対して第1の軸部91の周方向に回転できない。しかし、媒体押圧部材71は、カッティングペン本体52の中に、カッティングペン本体52に対して上下方向へ移動自在に挿入される。
キャップ部93の中央部には、刃51を通すために貫通孔93a(図4参照)が穿設されている。
【0044】
第1の軸部91は、図7に示すように、3本の爪片72を有する大径部91aと、この大径部91aの軸心から上方に向けて突出する円柱状の柱状部91bとによって構成されている。柱状部91bの外径は大径部より小さい。第1の軸部91の上端部には、径方向の外側に向けて突出する3つの係合片96と、軸心部から上方に向けて突出する突起97とが設けられている。
【0045】
第2の軸部94は、後述する第1のノック機構73の一部を構成するもので、上方に向けて開口する有底円筒状に形成されている。第2の軸部94の底部(下端部)は、図4に示すように、第1の軸部91の係合片96を通すための3箇所(図4においては1箇所のみが図示されている)の貫通穴94aと、係合片96が上方から嵌合する3箇所(図4においては1箇所のみが図示されている)の凹部94bとが形成されている。第2の軸部94の底部は、第1の軸部91に対して回転が規制された状態で第1の軸部91に上下方向へ移動自在に嵌合するように構成されている。
【0046】
第3のばね部材95は、図4に示すように、第1の軸部91の柱状部91bが内部に挿入され、第1の軸部91の大径部91aと第2の軸部94の下面との間に圧縮された状態で挿入されている。このため、第2の軸部94は、第3のばね部材95のばね力で第1の軸部91の係合片96に下方から押し付けられて第1の軸部91に保持されている。
【0047】
第2の軸部94の外周部であって周方向の2箇所には、図7に示すように、径方向の外側に向けて突出するストッパー片101が設けられている。このストッパー片101は、図4に示すように、第2の軸部94がカッティングペン本体52の中に収容された状態で第2の筒状部57の貫通孔81の中に挿入される。第2の軸部94がカッティングペン2に対して上方に移動してストッパー片101が貫通孔81の上壁に当接することにより、第2の軸部94のそれ以上の上昇が規制される。この貫通孔81を有する第2の筒状部57が請求項5記載の発明でいう「規制部材」に相当する。また、ストッパー片101には下方から第2のばね部材86が接触している。第2のばね部材86は、ストッパー片101と、上述したカッター保持部53の段部76との間に圧縮状態で挿入されている。
【0048】
第2の軸部94の上端部には、図7に示すように、後述する第1のノック機構73の一部を構成する多数のカム102が設けられている。これらのカム102は、図9に示すように、上下方向とは直交する方向から見て断面山形状に形成されており、第2の軸部94の周方向に並んでいる。これらのカム102は、上述した階段78の高くなる方向(図9においては左方)に向かうにしたがって次第に下側(図9においては下側)に向かって傾斜するカム面102aを有している。
【0049】
このカム面102aは、図10に示すように、上下方向とは直交する方向から見て鋸歯状の歯77の位置決め面77aと平行になり、かつ自然状態においてカム102の頂部側の約半部が位置決め面77aと重なる形状に形成されている。ここでいう自然状態とは、キャップ部93が上側に向けて押されていない状態である。
【0050】
<第1および第2のノック機構の構成>
第1のノック機構73は、上述した鋸歯状の歯77およびカム102と、後述する回転体75と、第1および第2のばね部材85,86とによって構成されている。この実施の形態による第1のノック機構73は、詳細は後述するが、媒体押圧部材71がカッティングペン本体52に対して予め定めた第1の移動ストロークで繰り返し往復することにより媒体押圧部材71の上下方向の位置を段階的に変えるものである。
【0051】
回転体75は、図7に示すように、円筒103と、この円筒103の外周部から径方向の外側に向けて突出する複数の連結片104とを備えている。円筒103は、連結片104を有する大径部103aと、大径部103aの下端から下方に突出する小径部103bとによって構成されている。小径部103bは、図4に示すように、第2の軸部94の内周部に移動可能に嵌合するように形成されている。小径部103b内の軸芯部には第1の軸部91の突起97に回転自在に接触する円柱105が形成されている。この円柱105は、回転体75の下端から上端まで延びるように形成されている。
【0052】
円筒103の大径部103aの中には、後述する第2のノック機構74の一部を構成するねじりコイルばね106と、円板状の荷重受け部材107とが設けられている。ねじりコイルばね106の一端部は、図8に示すように、円筒103の内周面に設けられた係合部108に係合する。ねじりコイルばね106の他端部は、荷重受け部材107に設けられた第1の突起109に接触する。このねじりコイルばね106は、回転体75が第1の回転方向(図8においては時計方向)に回転することにより弾性変形してばね力を蓄える。
【0053】
荷重受け部材107は、円筒103の上端部内に回転自在に収容される円板部107aと、円板部107aから上方に向けて突出する2つの位置決め片107bとを有している。円板部107aは、図4に示すように、第1のばね部材85の下端部が当接しており、第1のばね部材85によって下方に向けて付勢されている。第1のばね部材85は、円板部107aとカバー部54の内側底面54aとの間に圧縮状態で挿入されている。第1のばね部材85のばね力は、荷重受け部材107の下面の中心に設けた円錐107cから回転体75の軸心部の円柱105に加えられる。
【0054】
第1の突起109は円板部107aから下方に向けて突出している。円板部107aには、回転体75が第1の回転方向とは反対方向である第2の回転方向に回転したときに回転体75の凸片111(図8参照)に当接して回転体75の回転を規制する第2の突起112が設けられている。
2つの位置決め片107bは、カバー部54の板状突起84を両側から挟む状態で板状突起84と係合する。このため、荷重受け部材107は、カバー部54に対する回転が規制されるとともに、カバー部54に対して上下方向に移動自在になる。第2のノック機構74は、荷重受け部材107と、ねじりコイルばね106と、回転体75と、この回転体75の円柱105に下方から接触する第1の軸部91などによって構成されている。
【0055】
回転体75の連結片104は、円筒103を周方向に4等分する位置にそれぞれ設けられており、円筒103を中心として放射状に延びる板状に形成されている。これらの連結片104は、図8に示すように、カッティングペン本体52の鋸歯状の歯77と、第2の軸部94のカム102との両方に上方から接触できるように形成されている。連結片104の下端部は、図10に示すように、鋸歯状の歯77の位置決め面77aに沿う形状に形成されている。
【0056】
この回転体75は、円筒103が媒体押圧部材71(第2の軸部94)に嵌合するとともに、4枚の連結片104がカッティングペン本体52の鋸歯状の歯77に接触する状態でカッティングペン本体52の中に収容されている。上述したカバー部54の貫通穴83は、このように鋸歯状の歯77に接触する連結片104が露出する位置に形成されている。貫通穴83と対応する位置にある連結片104は、図3に示すように、カバー部54の貫通穴83を通してカバー部54の外から視認することが可能である。このため、連結片104は、回転体75の回転方向の位置を表す指標となる。カバー部54の外周部における貫通穴83に沿う部分には、連結片104と協働してインジケータを構成するラベル(図示せず)が貼り付けられている。このラベルには、刃出し量を示す数字が印刷されている。
【0057】
この回転体75が荷重受け部材107を介して第1のばね部材85のばね力によって下側に付勢されることにより、4枚の連結片104が鋸歯状の歯77に上側から押し付けられる。この押圧状態においては、連結片104が鋸歯状の歯77の位置決め面77aに接触する。一方、第2の軸部94が第2のばね部材86のばね力で上方に向けて付勢されることにより、カム102が連結片104に下方から押し付けられる。この押圧状態においては、カム102のカム面102aが連結片104に接触する。
【0058】
第2のばね部材86のばね力は、第1のばね部材85のばね力より小さい。このため、媒体押圧部材71のキャップ部93に押圧力が加えられていない自然状態においては、連結片104が第2のばね部材86のばね力に抗して第1のばね部材85のばね力で鋸歯状の歯77に押し付けられる。この状態においては、図10に示すように、連結片104が第1のばね部材85のばね力で押されて位置決め面77aの最も低い部分に位置付けられるとともに、隣の歯77のガイド面77bに接触する。このように連結片104がガイド面77bに接触する回転体75の位置が「カッティングペン本体によって規制される停止位置」である。
【0059】
媒体押圧部材71のカム102は、ガイド面77bに沿う連結片104にカム面102aの一部が接触する形状に形成されている。このカム面102aの一部とは、断面山形状のカム102の頂部側に位置する一部である。
第1のばね部材85のばね力は、このカッティングペン2で被切断媒体3を切断するときに媒体押圧部材71に加えられる押圧力より大きい。言い換えれば、第1のばね部材85のばね力は、媒体押圧部材71がカッティング動作によりカッティングペン本体52に対して上側に移動することを規制する大きさである。このため、媒体押圧部材71がカッティング時に被切断媒体3に押し付けられた状態でカッティングが正しく実行される。
【0060】
媒体押圧部材71のキャップ部93が第1のばね部材85のばね力より大きい力で上側に向けて押されると、媒体押圧部材71がカッティングペン本体52に対して上側に移動する。このように媒体押圧部材71が移動することにより、刃51がキャップ部93の貫通孔93aを通ってキャップ部93から突出する。このため、カッティングペン本体52に対する媒体押圧部材71の上下方向の位置が変わると、刃51に対するキャップ部93の位置が変わり、キャップ部93から突出する刃51の突出量が変わる。このキャップ部93に対する刃51の突出量が「刃出し量」である。第1のノック機構73は、この刃出し量を変えるためのものであり、第2のノック機構74は、刃出し量を0にするためのものである。
【0061】
<第1および第2のノック機構の動作の説明>
ここで、第1のノック機構73と第2のノック機構74とによって刃出し量を変える手順を図10図15によって説明する。
回転体75の連結片104が複数の鋸歯状の歯77からなる階段78の途中に位置している状態においては、回転体75が第1のばね部材85のばね力によって下方に向けて付勢されているために、図10に示すように、連結片104が位置決め面77aの最も低くなる位置に位置付けられている。また、この状態においては、回転体75がねじりコイルばねのばね力で第2の回転方向に付勢されている。この状態で媒体押圧部材71がカッティングペン本体52に対して上側に移動すると、第1の軸部91と回転体75とが第1のばね部材85のばね力に抗して一体に上側に移動するとともに、第2の軸部94が第2のばね部材86によって押されて追従する。この結果、図11に示すように、カム102が上側に移動し、連結片104に下方から接触する。
【0062】
このとき、連結片104は、傾斜したカム面102aに沿う方向に作用する推力によって、隣接する次の歯77のガイド面77bに押し付けられる。この次の歯77とは、階段78の1段上に位置する歯77である。媒体押圧部材71が更に移動し、媒体押圧部材71の移動ストロークが予め定めた第1の移動ストロークに達することにより、連結片104がガイド面77bの先端を越え、ガイド面77bによる規制が解除される。
【0063】
このように規制が解除されることにより、連結片104がカム面102aを滑り下り、図12に示すように、カム102の最も低い谷部まで移動して停止する。このとき回転体75は、下側に向かう移動が上下方向に延びる軸線を中心とする回転動作に変換され、所定角度だけ回転する。このときの回転体75の回転方向が第1の回転方向である。すなわち、第1の回転方向は、第2の筒状部57の周方向の一方であって、複数の鋸歯状の歯77からなる階段78が高くなる方向である。また、このように回転体75が第1の方向に回ることにより、ねじりコイルばね106が弾性変形し、ばね力を蓄えるようになる。
【0064】
連結片104がカム102の谷部に移動した後、カッティングペン本体52を下方に押す動作を止め、上方に引き上げる。このように操作すると、媒体押圧部材71の移動方向が逆転して媒体押圧部材71がカッティングペン本体52に対して下側に移動する。そして、図13に示すように、カム102の谷部が次の歯77の位置決め面77aより下側に移動する。このとき、連結片104は、次の歯77の位置決め面77aに上側から接触し、この位置決め面77aに沿う方向に作用する推力によってカム102の頂部に押し付けられる。そして、連結片104は、カム102が更に下側へ移動することによって位置決め面77aを滑り下りる。
【0065】
媒体押圧部材71が更に下側に移動し、カム102の頂部が位置決め面77aより下側に移動すると、図14に示すように、カム102の頂部による移動の規制が解除された連結片104が位置決め面77aに沿って更に移動する。この移動は、次の歯77の先に位置する歯77のガイド面77bに連結片104が接触することにより規制される。ここでいう次の歯77の先に位置する歯77とは、階段78の更に1段高くなる位置にある歯77である。このように連結片104がガイド面77bに接触して停止することにより、図10に示す状態と同様の状態になる。
【0066】
このため、媒体押圧部材71がカッティングペン本体52に対して階段78の1段を越えるに足りる長さ(第1の移動ストローク)だけ上側に移動し、その後に初期の位置に戻ることによって、連結片104が階段78の1段だけ高い位置にある歯77に移り、その分だけ回転体75が回転する。すなわち、回転体75は、媒体押圧部材71の上下方向への往復動作が上下方向に延びる軸線C(図4参照)を中心とする回転動作に変換されることにより、所定角度だけ回転し、この回転に伴ってカッティングペン本体52に対して上側に移動する(カッティングペン本体52の長手方向の位置が変わる)。
階段78の1段を越えるに足りる長さとは、図9に示すように、階段78の途中で互いに隣り合う歯77どうしの高低差Hより長くなる長さであって、第2の軸部94のストッパー片101が貫通孔81の上壁に当接することがない長さである。
【0067】
カッティングペン2のストッパー61の先端と、カッティングペン本体52から突出して停止した自然状態にあるキャップ部93の先端との間の距離は、階段78の1段を越えるに足りる長さと等しい。
以下においては、媒体押圧部材71が階段78の1段を越えるに足りる長さだけ上側に移動してその後に戻る往復動作を「第1のノック動作」という。この第1のノック動作が行われることにより、回転体75が階段78の1段に相当する角度だけ回転するとともに、階段78の1段の段差に相当するだけカッティングペン本体52に対して上側に移動する。
【0068】
このため、第1のノック動作が繰り返し行われることにより、媒体押圧部材71の長手方向の位置が長手方向の他端部側に段階的に変わり、刃出し量が段階的に変化する。この実施の形態によれば、鋸歯状の歯77からなる階段78が次第に高くなるように形成されているから、キャップ部93が段階的に上がって刃出し量が段階的に多くなる。刃出し量は、連結片104が階段78の最も高い位置にある歯77に移ることによって最も多くなる。この実施の形態においては、この状態で刃出し量が最大になる。
【0069】
階段78の最も高い位置にある歯77に移動した連結片104は、隣の階段78との境界にある隔壁79に当たる。この隔壁79は、階段78の途中にある歯77のガイド面77bより上下方向に長く形成されている。このため、連結片104は、第1のノック動作でこの高い隔壁79を越えることはない。すなわち、第1のノック動作を繰り返し行った場合は、刃出し量が最大の状態に保たれる。
【0070】
媒体押圧部材71が第1の移動ストロークより長い移動ストロークでカッティングペン本体52より上に移動すると、第2の軸部94のストッパー片101がカッティングペン本体52の貫通孔81の上壁に当たるようになる。ストッパー片101が貫通孔81の上壁に当たった状態で第1の軸部91がカッティングペン本体52に対して更に上側に移動すると、第1の軸部91が第3のばね部材95のばね力に抗して第2の軸部94に対して上側に移動するようになる。このとき、回転体75も第1の軸部91と一体に上側に移動するために、図15に示すように、連結片104がカム102から上方に離間する。このように連結片104がカム102から上方に離間するような媒体押圧部材71の移動ストロークが本発明でいう「第2の移動ストローク」に相当する。
【0071】
連結片104が階段78の途中に位置している場合は、回転体75にはねじりコイルばね106のばね力が作用しているために、回転体75は第1の回転方向とは反対方向である第2の回転方向(図15においては右方向)に付勢されている。このため、連結片104がカム102から上方に離れた瞬間に回転体75がねじりコイルばね106のばね力で第2の回転方向に回転する。この回転は、回転体75の凸片111が荷重受け部材107の第2の突起112に当接することにより規制される。凸片111が第2の突起112に当接することにより、図8に示すように、連結片104が階段78の最も低い位置に一度に戻る。このように連結片104が階段78の最も低い位置に移動することによって、刃出し量が0になる。第2のノック機構74は、媒体押圧部材71を長手方向の一端部側に最も移動した初期の位置に一度に戻す。以下においては、このように媒体押圧部材71が第2の移動ストロークで上側に移動して行われる往復動作を「第2のノック動作」という。
【0072】
<手動による刃出し量の調整>
刃出し量の調整は、手動あるいは自動で行われる。手動で刃出し量を調整するためには、使用者がカッティングペン2を手で持ってカッティングプロッタ1の第1のノック部16に押し付けて行う。
第1のノック部16の円形凹部21は、キャップ部93の下端部が嵌合し、この嵌合状態からキャップ部93が下方へ移動することを規制する。
第1のノック部16の溝22は、カッティングペン本体52の一対のストッパー61を挿入可能な形状に形成され、このストッパー61が作業ステージ4の上面4aより下方に移動することを許容する。
【0073】
カッティングペン2が第1のノック部16に押し付けられると、キャップ部93が円形凹部21の開口縁部に当たる状態でカッティングペン本体52が下がる。カッティングペン本体52のストッパー61は、第1のノック部16の溝22に挿入される。この場合は、媒体押圧部材71に対してカッティングペン本体52が下がった後に上昇することによって、第1のノック動作または第2のノック動作が行われて刃出し量が調整される。
手動による刃出し量の調整は、先ず、第2のノック動作を1回だけ行って刃出し量を0とする。その後、第1のノック動作を所望の刃出し量となるような回数だけ行う。
【0074】
手動で刃出し量を調整する場合は、回転体75が回転して刃出し量が変わったことを、音や、カッティングペン2を持つ手に伝わる振動で知ることができる。音や振動は、カッティングペン本体52が下がる行程と、カッティングペン本体52が上がる行程とでそれぞれ1回ずつ生じる。カッティングペン2が下がる行程においては、連結片104がガイド面77bを越えた後にカム面102aに沿って移動してカム102の頂部に当たったときに音や振動が生じる。カッティングペン本体52が上がる行程においては、連結片104が次の歯77のガイド面77bに当たったときに音や振動が生じる。
【0075】
手動で刃出し量を調整する場合は、カバー部54の貫通穴83から見えている連結片104と、カバー部54に貼り付けられているラベルの数字とを見比べながら上述した第1のノック動作が行われる。刃出し量は、所望の刃出し量となるラベルの数字の位置に連結片104が移動するまでノック動作を行うことによって調整される。
【0076】
<自動による刃出し量の調整>
刃出し量が自動で調整されるときは、カッティングプロッタ1の第2および第3のノック部17,18にカッティングペン2が押し付けられる。
第2のノック部17の小孔23は、キャップ部93が作業ステージ4の上面4aに当接する状態で刃51が挿入可能な形状に形成されている。
第2のノック部17は、キャップ部93と連結部92とが下方へ移動することを規制するとともに、カッティングペン本体52のストッパー61が作業ステージ4の上面4aより下方へ移動することを規制する。
【0077】
第3のノック部18の長穴24は、キャップ部93が作業ステージ4の上面4aに当接する状態で刃51とストッパー61とを挿入可能な形状に形成されている。
第3のノック部18は、キャップ部93と連結部92が下方へ移動することを規制するとともに、ストッパー61が作業ステージ4の上面4aより下方へ移動することを許容する。
【0078】
自動で刃出し量を調整する場合は、カッティングペン2がカッティングプロッタ1のペンキャリッジ7に取付けられ、カッティングプロッタ1の制御装置15がパーソナルコンピュータ43に接続される。そして、目標とする刃出し量を特定可能なデータがパーソナルコンピュータ43から制御装置15に送られる。
制御装置15に目標とする刃出し量が入力されると、制御装置15に予め記憶されている動作手順に基づいて第2の駆動装置31と第1および第2の押圧装置35,36とが動作し、第1のノック動作と第2のノック動作とが実施される。
【0079】
自動で刃出し量を調整する場合は、先ず、ペンキャリッジ7が第2の駆動装置31によって駆動されてカッティングペン2が第3のノック部18の上方に移動し、第2のノック動作が1回だけ実施される。このとき、第1および第2の押圧装置35,36は、カッティング時より大きな押圧力をカッティングペン2に加える。
【0080】
第2のノック動作が行われてカッティングペン2が下がることにより、キャップ部93が作業ステージ4に当たって媒体押圧部材71の下方への移動が規制された状態で、ストッパー61が長穴24に挿入されてカッティングペン本体52が第2の移動ストロークだけ下がる。カッティングペン本体52の下方への移動は、外筒58が作業ステージ4に当たることによって規制される。このため、媒体押圧部材71が第1のノック動作時より大きな長さでカッティングペン本体52に対して他端側に移動することになる。
【0081】
その後、カッティングペン本体52を含めてカッティングペン2の全体が初期の位置まで上昇することにより、第2のノック動作が終了する。次に、制御装置15は、カッティングペン2を第2のノック部17の上方に位置付け、目標とする刃出し量となる回数だけ第1のノック動作を実施する。
第1のノック動作が実施されると、先ず、カッティングペン2が下降し、キャップ部93が作業ステージ4の上面4aに当たる。このとき、第1および第2の押圧装置35,36は、カッティング時より大きな押圧力をカッティングペン2に加える。
【0082】
このようにカッティングペン2が第2のノック部17に押し付けられることにより、刃51が小孔23に挿入される状態でカッティングペン本体52が媒体押圧部材71に対して下がり、ストッパー61が作業ステージ4の上面4aに当たる。カッティングペン本体52の下方への移動は、ストッパー61が作業ステージ4に当たることによって規制される。このようにカッティングペン本体52が下がることにより、上述した階段78の1段を越えるに足りる長さ(第1の移動ストローク)だけ媒体押圧部材71がカッティングペン本体52に対して上側に移動することになる。
【0083】
その後、カッティングペン本体52を含めてカッティングペン2の全体が初期の位置まで上昇することにより、1回分の第1のノック動作が終了する。制御装置15は、目標とする刃出し量となる回数だけ第1のノック動作を実施する。この第1のノック動作により刃出し量が調整されることによって、カッティング準備が完了し、制御装置15が待機状態となる。
【0084】
<実施の形態による効果の説明>
上述した実施の形態によるカッティングペン2において、刃出し量は、第2のノック機構74によって刃出し量を0にした後、第1のノック機構73による往復動作の回数に基づいて規定される。この往復動作は、キャップ部93が第1または第2のノック部16,17(被押圧部)に押し付けられる状態でカッティングペン本体52が第1または第2のノック部16,17に接近し、その後、初期の位置に戻るノック動作として実施される。このため、使用者が上述したノック動作を所望の刃出し量となる回数だけ実施することにより、刃出し量が正確に調整される。
したがって、この実施の形態によれば、使用者の目視による判断に依存することなく、しかも、カッティングペン2を使用することなく刃出し量が正確に調整されるカッティングペン2を提供できる。
【0085】
刃出し量を調整するにあたってカッティングプロッタ1を使用して行う場合は、キャップ部93を作業ステージ4と同じ高さに位置する第2または第3のノック部17,18に押し付けて行うことができる。このため、目標とする刃出し量となる回数だけカッティングプロッタ1が上述したノック動作を実施することにより、刃出し量が正確に調整される。
これらの第2または第3のノック部17,18は、作業ステージ4の一部を利用して形成することができるから、作業ステージ4に対して被切断媒体3を出し入れする作業の邪魔になることはないものである。
このカッティングペン2は、カッティングプロッタ1の作業ステージ4が広く開放された状態でカッティングプロッタ1を使用して刃出し量を調整できるものである。
【0086】
この実施の形態において、刃出し量を変えるためには、回転体75が回転するために必要な上下方向の移動量以上の動作量(第1の移動ストローク)で媒体押圧部材71がカッティングペン本体52に対して上側に移動しなければならない。このため、刃出し量を変えるために必要な媒体押圧部材71の動作量に実質的に閾値が設けられることになり、不必要に刃出し量が変わることを防ぐことが可能になる。
【0087】
この実施の形態による第2のノック機構74は回転体75が第1の回転方向に回転することにより弾性変形するねじりコイルばね106を備えている。回転体75は、媒体押圧部材71が第2の移動ストロークでカッティングペン本体52に対して上側に移動することにより、ねじりコイルばね106のばね力で第1の回転方向とは反対方向である第2の回転方向に回転する。このため、階段78の途中に連結片104が位置している場合であっても、第2のノック動作が1回だけ行われることにより回転体75を初期の位置に戻すことができる。したがって、刃出し量を速やかに0にすることができる。
【0088】
この実施の形態による第1のばね部材85のばね力は、媒体押圧部材71がカッティング動作によりカッティングペン本体52に対して上側に移動することを規制する大きさである。
このため、カッティング時に刃出し量が不必要に変わることがない。したがって、この実施の形態によるカッティングペン2は、安定したカッティングを行うことができるものとなる。
【0089】
この実施の形態によるカッティングペン本体52は、回転体75と同一軸線上に位置する第2の筒状部57を有している。この第2の筒状部57は、複数の鋸歯状の歯77を有している。これらの歯77は、位置決め面77aとガイド面77bとをそれぞれ有している。
この実施の形態による媒体押圧部材71は、第2の筒状部57の周方向に並ぶ複数のカム102を有している。これらのカム102は、周方向の一方に向かうにしたがって次第にカッティング本体の下側に向かって傾斜するカム面102aを有している。
この実施の形態による回転体75は、上述した位置決め面77aに第1のばね部材85のばね力によって上側から押し付けられる連結片104を有している。
【0090】
この実施の形態によれば、第1のノック動作が行われて媒体押圧部材71がカッティングペン本体52に対して上側に移動することによって、連結片104がカム面102aにより押されながらガイド面77bに沿って上側に移動する。そして、連結片104は、ガイド面77bを越えたときに位置決め面77aとカム面102aとに沿う推力によって第2の筒状部57の第1の回転方向に回る。この推力の源は第1のばね部材85のばね力である。また、第2のノック動作が行われて連結片104がカム面102aより上に離間することによって、回転体75がねじりコイルばね106のばね力で第2の回転方向に回り、初期の位置に戻される。
【0091】
このため、第1のノック動作時や第2のノック動作時に使用者からカッティングペン2に加えられる力の大きさに影響を受けることなく、回転体75が第1のばね部材85のばね力で第1の回転方向に回転し、また、ねじりコイルばね106のばね力で第2の回転方向に回転する。したがって、この実施の形態によるカッティングペン2は、上述した第1および第2のノック動作によって刃出し量が調整されるときの動作の信頼性が高いものとなる。
【0092】
この実施の形態によるカッティングペン本体52の一端部(下端部)には、下方向へ突出するストッパー61が設けられている。このストッパー61は、カッティングプロッタ1の第2のノック部17で作業ステージ4の上面4aに当接するものであり、第3のノック部18の長穴24に挿入可能なものである。このため、この実施の形態によるカッティングペン2は、第1のノック動作と第2のノック動作とをカッティングプロッタ1を使用して行うことができるから、カッティングプロッタ1で刃出し量を変えることが可能なものとなる。
【0093】
また、この実施の形態によるカッティングペン2は、第2のノック動作が行われることにより、連結片104が階段78の最も低い位置に移動する。このため、このカッティングペン2は、刃出し量の調整を開始する以前のカッティングペン2の刃出し量の影響を受けることはないものとなる。
【0094】
この実施の形態による複数の鋸歯状の歯77は、カッティングペン本体52の第2の筒状部57を周方向に分割する複数の領域にそれぞれ設けられている。また、この実施の形態による回転体75の連結片104は、上述した領域毎に設けられている。
この実施の形態による回転体75は、第2の筒状部57に周方向の複数の位置で支持された状態で回転する。このため、回転体75がカッティングペン本体52に対して傾斜することなく円滑に回転する。したがって、この実施の形態によるカッティングペン2は、刃出し量の調整が円滑に行われるものとなる。
【0095】
この実施の形態による回転体75は、カッティングペン本体52の内面と対向する位置に連結片104からなる指標が設けられている。また、カッティングペン本体52における指標と対向する位置に、回転体75の回転方向に長い貫通穴83が形成されている。
回転体75の指標は、カッティングペン本体52の貫通穴83を通して露出する。回転体75の回転方向における指標の位置は、刃出し量と連動して変化する。このため、この実施の形態によるカッティングペン2は、刃出し量を指標の位置に基づいて確認できるものとなる。
【0096】
また、上述した実施の形態においては、被切断媒体3が前後方向に移動する形式のカッティングプロッタ1に使用されるカッティングペン2の一例を示した。しかし、本発明に係るカッティングペン2は、被切断媒体3が移動することがない、いわゆるフラットベッド型のカッティングプロッタにも使用することができる。
【0097】
上述した実施の形態による第1の押圧装置35と第2の押圧装置36は、アクチュエータとして第1および第2のソレノイド37,38を備えている。しかし、第1および第2の押圧装置35,36のアクチュエータは、ソレノイドの他に、モーター、ムービングコイルなどを用いることができる。
【符号の説明】
【0098】
1…カッティングプロッタ、51…刃、52…カッティングペン本体、81…貫通孔、93…キャップ部、71…媒体押圧部材、73…第1のノック機構、74…第2のノック機構、75…回転体、85…第1のばね部材、86…第2のばね部材、106…ねじりコイルばね、57…第2の筒状部(円筒部、規制部材)、77…鋸歯状の歯、77a…位置決め面、77b…ガイド面、102…カム、102a…カム面、104…連結片、91…第1の軸部、94…第2の軸部、95…第3のばね部材、61…ストッパー、
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